元スレ男「……いよいよメラが使える様になるとか末期だな俺は」
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751 :
おつおつ
752 :
復活しててうれしい
乙
753 :
復活乙
巨大な氷塊を落下させる魔法、どこかで見たな……と思ったらネギまか。
確か質量攻撃だけじゃなく、砕けた氷の潜熱を利用して大規模な冷却範囲を作るんだったか。
757 :
エビルマージ「…………」
店員「……?」
数瞬の沈黙。
ふと、店員はエビルマージが緑衣の中で何かを呟いた事に気付いた。
エビルマージ「……それで勝ったつもりか」
エビルマージ「意識が抜けていないのだな……く、く……」
店員「……」
店員「意識、とは?」
瀕死の筈なのに、突如笑い始めたエビルマージに店員は問い掛けた。
何が余裕を生ませているのか。
それとも、決定的に何かエビルマージは店員達とは別の視点を持っているのか。
そう考えた瞬間、店員は次のエビルマージが放った言葉に硬直する事になる。
エビルマージ「””これはゲームで遊んでいるのではないぞ?””」
758 = 757 :
店員「……」
< 「……セイバー?」
周囲から聴こえてくる仲間の声が、上手く店員の耳に入ってこなかった。
彼女は恐ろしい程の目眩を覚えていた。
決して有り得ないとすら思っていた事が目の前で起きている。
現実に存在する筈のない幻想が侵食してくる感覚。
今、店員という人間は初めて不確かで曖昧な気配に狼狽えていた。
店員「それは……どういう意味ですか」ザッ…
エビルマージ「この『ニホン』以外の国にも何人もいた……くく、我々を『ゲーム』から出てきたキャラクターだとな」
店員「まさか本当に……!?」
エビルマージ「くく……くははッ……そんなわけがないだろうに、お前達異世界の人間はそうして根本的に間違えてきた……」
エビルマージ「認めよう! ハハハハッ!! あれは、あの『ドラゴンクエスト』は我々の世界の全てを見事に描いている! これ以上ないほどの奇跡だとな!!」
エビルマージ「だがゲームのつもりで戦っている貴様らでは我々に勝てるわけがないだろう!! 嘗めるなよ人間、これは『命』と『未来』を奪い合う闘争……戦争なのだッ!!」
< キィィィインッッ!!
エビルマージが鮮血の混ざる冷気を散らして吼えた瞬間、店員の全身が魔法の気配を察知する……!
< 「これは……!」
店員「ッ、しまっ ─────── 」
何らかの魔法が襲ってくる事に気付くも、間に合わないと悟った彼女は衝撃に備えて構える事しか出来なかった。
759 :
うおお乙
760 :
それは、店員が身構えた刹那に動いた者の思考。
(『ブレードガード』で防ぐには数が多い、更にブラッドソードがほぼ戦闘不能)
(ここがセイバーの限界だな)
一定のレベルを越えた者の思考速度は凄まじい回転と反応を見せる。
同時に、店員を中心に二重の渦が冷気を巻き上げた。
パガァンッッ!!
────── 片や、身構える店員を八方向から挟むように突き上がる氷の刃。
ドゥッ・・・ンッ!!
────── 片や、白銀の軌跡のみを残して店員を抱えて跳躍する者。
それらは、エビルマージを押し潰していた氷山に亀裂が入る程の衝撃波であった。
ただ質量を生み出し弾く、叩きつける、突き上げるのみならず。
店員を襲った氷の刃は……その特性から如何に自在に形を変えて凶悪な武器となるのかを物語る。
そう、数十メートルの距離を取ってから、自身の立っていた位置を切り裂いた氷の刃を見て理解した。
店員の視線が魔法を撃った者を捉えて。
< スタッ……
店員「……これは、どういう事ですか…………何故、他に……!?」
シュルルルルッッ……
ここに来て初めて危機感に満ちた声をあげた店員を補足するように、彼女の『身に纏っていた白のドレス』が宙に飛翔した。
今まで消されていた気配と、変えていた姿形が露となる。
シルバーマント「『八魔将』を名乗るからには、ただの魔導師ではなかったという事だろう」
シルバーマント「そうだろう? エビルマージ」
エビルマージB「…………」
エビルマージC「…………」
761 :
乙
ヤバい状況だね。
ザオリク使える奴が大量に出るとは…
マホトーンかマホカンタ使えないとキツいな。
762 = 760 :
多少の余裕はあったとはいえ、それでもブラッドソードが戦闘不能になる必要があった程の相手。
その実力に狂いはなく、店員が聞かされていた『八魔将』の名に値する脅威だった。
しかし。
エビルマージは『一人ではなかった』。
エビルマージD「まさか儀式場を邪魔されない為に配置した『私』が敗北するとは、些かこちら側の人間を嘗めていたか」ザッ…
エビルマージB「それだけではない、幾つかの報告にあった未知のモンスター……先の『ヒャダイン』を回避したのを見るに相当の熟練者だ」
緑衣から放たれる重圧感と耳に残る低い声。
エビルマージC「エレメント系か……いや、純粋なエレメント系とは違い性質は亡霊に属する者に近い」
エビルマージC「呪文も扱えるとして、さて……『私達』を相手にどこまで堪えられるかな?」
嘲笑するかに見えて、その実、決して警戒を怠らずに能力を考察する。
店員が見ている新たな緑衣の魔導師は、確かに一人一人が先程まで戦っていたエビルマージと同一の存在だった。
仕草から、その視線の動きに至るまでが同じ。
僅かに後退りする店員を引き止めたのは白銀のマントのみで浮遊する、仲間のモンスターだった。
シルバーマント「あれの戦い方がいまいち支援型に見えていたが、なるほどこういったタイプのモンスターか」
店員「リリィ……ここは撤退しよう」
シルバーマント「駄目だ」
店員「……何故?」
リリィと呼ばれたモンスターは、虚空から同じく白銀の剣を取り出す。
シルバーマント「男と主任、あの二人ではエビルマージ一人にすら勝てないだろうな」チャキッ
シルバーマント「であれば私とセイバーがやるべきことは見えている」
店員「…………」
シルバーマント「私の力を全く借りずに、あくまでも自身の限界と向き合って戦ってきたお前なら分かるはずだ」
シルバーマント「ここで、お前はエビルマージと戦うべきなのだ」
シルバーマント「ブラッドソードの奴がお前を買っているのも、セイバー……いや、店員、お前が特別だからだ」
シルバーマント「見せつけてみろ、私に、そしてお前が憎んできた『出来ないこと』に」
シルバーマント「逃げずに戦い続けてきたお前の強さを奴等の脳髄に切り込んでやれ」
店員「…………」
763 = 760 :
────────── ッ・・・ォォン
男「……っ!」
遠くから聴こえてきた轟音に、それまで雨の音を聞いていた体が反応する。
俺は、主任を追いかける事が出来ずに何をしているのだろう。
男「ぁぁぁ……あああああっ!!!」
男「どうしろってんだよ!! どうすりゃいいんだよ!!」
分かっている、分かっているのに、ここに来て俺は壊れてしまった。
思えば最初から俺は英雄願望や主任のような復讐の為に戦っていたのではない。
俺は、全てをゲームとして見てきていた。
だってその筈だ、これはドラゴンクエストだ。
スライムと戦った。
ドラキーと戦った。
さまようよろいとも、ホイミスライムとも戦った。
どのモンスターも、化け物だったし、どの戦いも痛かったし苦しかった、何度も心臓が止まるかと思った。
死ぬ事が怖くて、死なないように慎重にレベル上げをしていた。
改めて旧作から新作に至るまでのドラゴンクエストシリーズを調べた。
改めてゲームをプレイした。
俺は、『ずっと自分ではない者として生きていた』。
男「お、俺は……っ、俺はぁ!!」
俺は、『ずっと一人で戦っていた』。
男「糞ォ……くそぉ……ッ!!」ガクッ
なのに、どうしたらいいのだろうか。
いつの間にか独りで居た部屋から、見知らぬ部屋に連れ込まれた。
そんな中で俺は何を為せば良いのだろう?
何がしたかったのだろう。
男「もう……俺は……」
764 = 760 :
━━━━━━━━ 【同時刻……主任】
< キィン……キィン……
主任「…………」
主任(……あれは何をしてるの?)
主任(見たことの無いモンスターばかり……それも凄い数、彼等があの光の柱に入って消えていく)
主任(阻止すべきなのかしら……)スッ
< パキッ
主任(っ! しまった……)チラッ
ラゴンヌ【グゥルルルル……ッ】ピクンッ
< 「どうした」
ラゴンヌ【…………】
主任「……!! ……!!」バッ
主任(息を、止めないと……今ここで戦闘になったら……!)
765 = 760 :
< 「何をしているのだ、早くしろ」
< 「まさか……我が王の命に背く気か」
ラゴンヌ【ッ……クゥン……】フルフルッ
< 「それでいい、お前達は此度の戦いにて最大の要となるのだ」
< 「私では意味がないのでな」
主任(……?)スッ
主任(…………アイツ、は……!)
エビルマージ「ラゴンヌを始めとして、残りの『指揮官』は全員入水しろ」
エビルマージ「既に此方側の国々で計画は始動している、この『ニホン』も今日をもって陥落するのだ」
エビルマージ「さぁ、今こそ儀式の時、行け戦士達よ!!」
< 【【「【 グルゥオオオオオオオオオオオオッ!!!! 】」】】
主任(儀式? 計画? ……日本が、これで終わる?)
主任(それに、なんであそこにエビルマージが……!? 店員さん、彼女は……!)
主任(彼女までアイツに殺られたの? 待って、男さんは……私が置いて来てしまった彼は……)
主任「…………ッ」ギリッ
766 :
おつおつ きててうれしい
767 :
エビルマージ「……ほう、確かに此処へ汚いネズミが入らぬよう配置していた『私』が敗れたのは知っていたが」
────────── ヒュンッ
パシッ!!
エビルマージ「毒の塗り方も知らぬようなこちら側の人間に突破を許すとはな、『私』も少々驕りが過ぎていたかな?」
エビルマージは多くのモンスター達が光の柱へ入っていく中、木々の隙間から飛来した小刀を振り返りもせず、素手で掴み取る。
そして間髪入れずに小刀を放り投げると、上下から氷塊が生み出されて粉々にそれを砕いてしまう。
緑衣の中から視線を背後の森林に向け、その先の木陰にいた人間の女を見た。
長い黒髪は乱れ、前に垂れて表情は見えないが、女の全身から伝わる気配は認識出来ていた。
そこにあるのは殺意。
エビルマージ「仲間も無しによくもここへ姿を現せたものだ」
エビルマージ「それでどうするのだ? ナイフを投擲して終わりか?」
パキパキパキッ……!!
エビルマージ「儀式を続けろ、あの人間は私が『観客』に仕上げてやる」
周囲のモンスター達がエビルマージの様子に一瞬気をとられるも、その言葉で光に包まれては消えていく。
その光景に、左右に氷塊を生み出したエビルマージを主任は睨み付けた。
主任「…………」ザッ…ザッ…
主任「『ピオリム』、『スカラ』」キィンッ
全身を光の膜で包み主任はついに森林を抜けてエビルマージに向かっていく。
その手にはベルトから引き抜いた新たなナイフが握られていた。
768 = 767 :
エビルマージ(あれで『私』を倒したとは考え難い、他の地区から集まった他の『私』が敵を消している頃の筈)
エビルマージ「……まぁ良い、あの女にはこの儀式による絶望を直に味わえばいい」
エビルマージ「それこそが我が王の意思なのだから」
補助呪文を唱えて近付いてくる主任を捉えて、エビルマージの左右に浮いていた氷塊が動き出す。
主任「『ヒャダルコ』ォォッ!!」
ザザァッ……!!
攻撃に移ろうとする事を予感した主任が、即座に咆哮した。
─────── キィンッ!!
エビルマージ「ほう、『ヒャダルコ』を唱えられるとは我等の知識を扱える者か」
天を仰ぎ見たエビルマージは静かに感心を示す。
エビルマージ「だが所詮は使うだけが限界の凡人よな……?」
空気中の水分が微かに震え、エビルマージの頭上にサッカーボール大の氷結晶が生み出される。
直後に襲うのは無数の氷の刃が爆発的に辺りを満たすのみ。
それを、エビルマージは ” 知っていた ”
770 :
< バキィッ……
ガシャァアッ!!
エビルマージ「『ヒャド』」ズザァッ
主任の『ヒャダルコ』による魔法を緑衣の魔導師は涼しげに一蹴する。
その際に使った呪文は氷結系最下位の『ヒャド』。
左右に浮いていた氷塊がエビルマージの居た位置を細い氷柱を無数に広げる事で、『ヒャダルコ』による刃を全て防いだのだ。
< ダッ!!
主任「『バギ』ィッ!!」
防がれる事を予想していた主任の手がタクトを振るように薙がれる。
エビルマージ「『ヒャド』」
指先の軌跡に合わせて発生する風の刃が突風を撒き散らしてエビルマージを捉えた。
しかし、そこに割り込む形でエビルマージの前に氷の壁が地中から突き出た。
───────── ガシャンッ!!
相殺である。
主任の放った『バギ』では傷一つ付けられず、エビルマージに氷壁の破片を散らす事しかできない。
だが粉砕された氷壁の向こうから飛び出したのは。
エビルマージ「……!」
主任「うぁぁぁぁッ!!」バッ……!
ビュッッ!!
771 = 770 :
主任は一つ、エビルマージを誤解していた。
それまでの彼女にとって、エビルマージというモンスターは自分よりも遥かに呪文に長けていて、恐るべき強さだと認識していた。
その上に油断もしない。
主任の使える魔法の悉くを撃ち落とし、余裕を持って撃破しようとするだろう。
そこまでは彼女の認識で間違いなかったのだ。
その先である。
「遅い」
主任「っ!?」
< ガシィッ
既に疲弊し、魔力が尽きかけた彼女は全力で魔法を撃つことでエビルマージの視界を奪う。
その隙に彼女は接近戦を挑もうとしていたのだ。
ステータスは調べていた、エビルマージの近接戦となった場合の能力は恐らくレベル10程度の戦士のパラメーターらしいと。
故に主任はエビルマージを捉えてそこへ一撃を加えた。
それこそが間違い。
主任(は、離れない……引き剥がせない!?)
< ミシミシミシ……ッ
魔法使いのイメージと、ネット上にある『あくまで解析されただけのデータ』。
そんな物で八魔将の一人を量った事が、そもそもの間違いだったのだ。
エビルマージは『弱くない』。
ドゴッ!!
主任「げ……ッぁ、うぁ……ッ……」グラッ……!
772 = 770 :
ドサァッ!
エビルマージ「ふむ、私を相手に接近戦で挑む発想は買ってやろう」ザッ…ザッ…
エビルマージ「だが貴様では力不足だったな?」
呪文すら使わずに魔力を溜めて至近距離で撃っただけ、その光弾だけで主任の意識が途絶えようとしていた。
主任「ぐぅ……ッ、げほっ! ガフッ! ……え、エビルマージ!」
< チャキッ
それでも、主任はナイフを手放す事なくその切っ先を向けた。
エビルマージ「ふ……なら」
緑衣の中から伝わる嘲笑。
エビルマージ「『メラミ』」
直後。
主任の眼前で 太陽が弾けた 。
ギュボォッ・・・!!
主任「ぇ ッ ッ
────────── ドッッ…… ゴォォオッ!!
自身の出した悲鳴が耳に届かない程の爆発と、全身を殴られたような激痛、そして浮遊感。
津波に飲まれたかのように投げ出され転がっていく彼女が止まった時、既にその意識は切れていた。
773 :
己の力を過信しすぎたな
776 :
━━━━━━━━ 【其処に居た者】
男「もう……俺は…………」
「大丈夫だよ」
男「……俺は、大丈夫……?」
「大丈夫」
「ほら、ゆっくり……深く息を吸って……」
男「…………すー……」
「ゆっくり吐いて……」
「そうだ、雨降ってるんだから空を見上げて深呼吸したほうが良いよ」
「君は ”いつも” 追い詰められた時、自分が~とか、それに対して理由が~とか、考え過ぎだよ」
男「…………」
「ね、人を助ける時に頭で考えながら助けようとしてない?」
「男くんは何でも頭で考えてから行動しようとする」
「一ヶ月以上前、ホテルで女の人を助けたよね? あの時は何も考えずに動けてたじゃない」
「あれで良いんだよ」
男「……だけど、俺は主任のような戦う理由なんて……」
「ほら、直ぐ理由を探しちゃう」
男「……!」
「確かに君は最初の一ヶ月は色々な人を見殺しにしたかもしれないね」
「きっと一人くらいは君が手を引けば助かったかもしれない」
「でもね、きっとその結末は酷い事になってたの」
「だから私が君の心に干渉した」
「全部私のせいなんだよ、男くん」
男「…………」スッ
男「君は……誰だ…………」
──────────・・・
男(……誰も、いない……)
男「…………」
777 = 776 :
───── 体が、冷たい…… ─────
───── 手足の感覚が無い……? ─────
主任「…………ぅ……ぁ、ああぁ……!!」ビクッ
主任「やだ……何これ、体が氷の中に……や、やだ……動かない……!?」ググッ……
< 「動かぬ方が身のためだぞ? 人間の女よ」
主任「……っ、エビルマー…ジ!」
エビルマージ「貴様には特別席を作ってやったのだ、そこでこの儀式を見届けるがいい」
主任「殺してやる!! 絶対に、皆の仇を……ッ! あぁあぁあああ!! 体が、動かない、なんでなんでなんで……!!」グググ……
エビルマージ「威勢が良いな、そして何より貴様のような怒りと憎しみに満ちた人間は実に我が王の好みでもある」
エビルマージ「くく……さぁいよいよだ、『門』はこれで最後の鍵が解かれる事になる」
エビルマージ「今日この日によって、世界は我が王の物となるのだ! さぁ、今こそ此処に!」バッ!
──────── カッッ!!
主任(エビルマージが、自分から光の中に……!?)
778 :
まだ続いてたんだなこのスレ…
779 = 776 :
━━━━━━━━ 【数多くの力を持った者達よ】 ━━━━━━━━
━━━━━━━━ 【異界にて血を流し倒れた者達よ】 ━━━━━━━━
━━━━━━━━ 【そして、『それを知った』人間達よ】 ━━━━━━━━
━━━━━━━━ 【我等を率いるは死の果てを夢に見し真の絶望を知る者】 ━━━━━━━━
━━━━━━━━ 【闇の奥深くに飲まれた者】 ━━━━━━━━
━━━━━━ 【我が王、そしてかつて我等を生んだ『ゾーマ』の二つの名の下に完全なる顕現を果たせ】 ━━━━━━
━━━━━━━━ 【来たれ、『八魔将』ども……!!】 ━━━━━━━━
780 = 776 :
【アメリカ・ニューヨーク】
兵士「軍曹! ビル上空にあった球体、さっきから光ってたと思ったら……空に『穴』が!!」
軍曹「援軍はまだなのか……こっちゃ、戦車歩兵全滅、支援無しであのフロストマンと戦ってるってのに!」
軍曹「『エビルマージ』なんてふざけた名前しやがって!! アメリカ陸軍の力を見せてやるぜあのやろう!」
中佐「それ以前の問題だ……」
軍曹「は?」
中佐「あれを見ろ……」
兵士「……」ガシャッ
軍曹「な……」
軍曹「なんだ、ありゃ…………」
781 = 776 :
【イギリス・ロンドン】
魔物使い「……なるほど、あれが魔王軍最高幹部にして最強戦力かね」
魔物使い「どう思う、スラリン」
スラリン「ボク達のいた世界のモンスターじゃないと思う」
魔物使い「そうなのかい」
スラリン「『アイツ』はね、本体の親玉だけならボク一匹で大丈夫だと思う」
スラリン「けど、どう見ても『アイツ』は単騎の強さが売りじゃないよ」
魔物使い「だろうね」
魔物使い(まだレベルの低い女児殿と父親殿には避難して貰ったが、数の不利を覆すには必要だったか)
魔物使い(だが)
< ザッ……
魔物使い「貴方の出番の様です」
魔物使い「『サマルトリア王子』」
サマル王子「ああ、後方支援は任せたよ」
魔物使い「イギリス王室の方々は何か言っていましたか?」
サマル王子「いつも通りだよ、『頼む』ってね」
サマル王子「勿論、答えは『はい』さ」ニッ
782 = 776 :
【エジプト・カイロ】
エビルマージ「ば、馬鹿な……何故ここに貴様等がいる! こちら側に来るには力が大きすぎる筈だ!」
< 「そうですね、確かに今の私や他の『王子達』も力が半減しています」
< 「でもそれだけですから、その程度なら私達は必ず貴方達を倒して見せる」
エビルマージ「おのれおのれェッ……!! だが果たしてそうかな? 既に儀式は完成しているのだからなぁ!」
< 「!」
< 「『衣の残滓』……? 何故、あんなに広がって……」
エビルマージ「『マヒャド』ォッ!!」
< 「『イオナズン』」キィンッ
━━━━━━━━ ドドドドドドドォォオオオッッ・・・!!!
エビルマージ「が……ハッ…………」
< ドサッ
< 「……」
< (全身がピリピリする)
< (恐らくは魔王軍の最高戦力、『八魔将』ですね)
< (私一人でどうにか出来るとは思えないけど、大丈夫……)
< (きっと、『彼』が何とかしてくれる)
783 = 776 :
─────── 空が割れる光景を見たことのある者が、いったいどれだけ居るだろうか。
天高く伸びる光の柱。
見る者全てが畏怖を、或いは荘厳な光景に感動すら覚えていた。
その光が何を糧として輝いているのかも知らずに。
キィイイイイッ
建物に隠れていた者、布団に潜っていた者、モンスターと戦っていた者。
何処にいようと、耳を塞ごうと、誰もがその金属を引き裂く様な音を聞いていた。
当然、中には何事かと外を見る者が現れる。
そして誰もが皆、自分の目を疑うことになるのだ。
主任(光の柱の頂点が黒くなって……っ!? そこから空が割れて……!?)
眼前で眩い極光を放つ柱と、その遥か上空で曇り空に塗られる異物感に、主任は息を飲む事しか出来ないでいた。
何か恐ろしい事が起きているのは間違いないのに、何も出来ず見ているだけしか出来ない。
主任は冷たくなっていく身体を必死に動かそうとしながら唇を噛み締める。
そして、その時。
何かが音も無く大気を激しく揺さぶって、闇に裂かれた天空から飛び出した。
784 = 776 :
ビュッッ・・・ゥゥゥンッ ━━━━━━━━
━━━━━━━━ ズンッ・・・!!!
降り立った巨大な岩山、主任の目に映ったのはそんな馬鹿げた光景だった。
数十メートルの距離が開いていたにも関わらず、天空から降ってきたその巨体を中心に土砂の津波が周囲を巻き込み吹き飛ばしていく。
その衝撃波によって、主任を拘束していた氷の結晶が粉砕される。
しかし、彼女の華奢な肉体も周囲の樹木や土砂と同じく、為す術も無く投げ出されてしまう。
主任「きゃぁぁあっ!!」
手足の感覚が未だ重度の凍傷により麻痺していたせいで、受け身を取ることもできず数回に渡って全身を打ち付けながら森林公園の出入口近くまで吹き飛ばされてしまった。
凄まじい衝撃波による破壊の波は森林公園の樹木をほぼ全て薙ぎ倒していた。
785 = 776 :
< ゴゴゴゴォ・・・ォォ・・・
地響きが雨の降る街に響き渡る。
衝撃波は既に止んでいたが、何かが降り立った位置を中心に広がって倒れていった樹木がまだ転がっていたのだ。
< ズズッ……ドシャッ
その土砂と枝葉に埋まった小さな丘の中から、髪も服も血と泥に塗れた主任が這い出てくる。
主任「はー……はー…………」
主任(途中から訳も分からずに『ホイミ』を連続で唱えたのに、身体中が痛い……)
主任(……さっきのは、何? 空から、なにが……)ググッ…
ズンッ
ズンッッ……
不意に、それは背後から聴こえてきた。
主任「…………」
主任「……え」
見上げるまでもない。
振り向くまでもない。
うっすらと自身を覆う巨大な影のシルエットで分かってしまったのだ。
そして、彼女は間抜けな声を漏らして背後へと首を回した。
ダークトロル「何だ、まだ生きているじゃないか」
786 = 776 :
主任「……っ…、っ……」
初めてだった。
かつて、二ヶ月前に彼女は人生初めての『死』を間近に感じた時。
あの時は自身を守る事とエビルマージが見せた信じ難い非日常を受け止めるので精一杯だった。
そんな主任は今、まさにそれを遥かに上回る恐怖に直面していた。
耳元で鳴り響く「ひゅー……ひゅー」という音が、自身の喉から鳴っているものとは気付かない程に。
ダークトロル「その臭い、『アークマージ』の奴の魔法かァ?」
ダークトロル「グフハハハ!! 確か下位種の『エビルマージ』だった筈だろォ! やはりその程度かこちら側の奴等ってのァよ!!」
ジェット機の轟音に匹敵する程の声で笑う巨人。
そう、主任の目の前に居たのは決して敵わないと理解出来る程の巨体。
その体格、体長、約二十メートル以上。
”” 全身が黒く変色した、深緑の肉体 ””
彼女はそれを一度だけ目にしている。
エビルマージを調べていれば、当然の如く目にする同作品における最強のモンスター達。
その中に、確かに居たのだ。
『ボストロール』『トロルキング』『トロルボンバー』、いずれも超える最強種。
主任「ダーク……トロ…ル……」
787 = 776 :
(動けない……)
主任「……ヒュー……」
(モンスターは全て根絶やしにしてみせる)
(そう、私はあの夜に約束したのに)
主任「ヒュー……」
(無理だ)
(私は死にたくない、死にたくないよ)
(いやだよ、助けて)
主任「は、は……ははは…………」ポロポロ…
ダークトロル「……戦う意志も無いムシケラか、つまらんなァ」
< ズシッ……
(逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ)
主任「はは…は……戦わなきゃ、たおさな……きゃ……」
(無理だよ逃げなきゃ死んじゃう、あの時に見た『あの人達』みたいな死に方はいやだよ)
主任「ひ、ヒャダルコ……」
(もう魔力もないのに、勝てるわけない)
(手が、せまってきてる……よ……)
主任「っ……! わあぁぁぁっ!!!」ガバッ
788 = 776 :
───────── 【『兜割り』】!! ─────────
ドゥンッッ!!
< ズザザァァッ……!
主任「…………っ」ガタガタガタ…ッ
主任「……?」ガタガタ…ッ
(まだ……生きてる……?)
(なんで、誰が助けてくれたの…………)
< 「……」
< 「すんません、遅れました主任」
主任「え……?」スッ…
男「追いかけるの、遅くなってすいません」
男「時間は俺が稼ぎます……どのくらい稼げるかは分かんないッスけど、主任が逃げる時間はどうにかするんで」チャキッ
主任「お……男さん、生きてたんですか……」
男「酷いなその反応、いやまぁさっきの爆風で死にかけはしましたけどね」
男「まあとりあえず……行ってくれ、主任」
主任「…でも………私」ポロポロ…
男「……ほんと、ごめん、すいませんでした」
男「後は任せろ」
790 :
……突然の爆風によって巻き上がった土砂と樹木が殺到してきた時は、流石にそれまでの出来事を忘れて肝を冷やした。
ただ、おかげで頭の中がよりスッキリしたのも確かだった。
やるべき事も、その為に必要な物が何なのかも。
だから俺はこうして主任の前に立っている。
男「さて……」ギシッ
今日ほど手の中にある鋼の剣が頼り無いと思ったことは無い。
それこそ戦車とかミサイルが欲しい。
先程の爆風がこのボストロールらしきモンスターの仕業なら、まず勝ち目は無い。
そもそもの次元が違う。
まず第一に、さっき主任を庇う為に放った『兜割り』だ。
気配を探る様子も無く、倒壊した樹木の陰から一気に跳躍しての奇襲だったのだ、あれは。
それを何の冗談なのかガンダムみたいな巨体で瞬時に後方へ回避されてしまったのだ。
男(……話が違うぜ、おい)
男(じごくのよろいが嘘を言ったとして、そこにメリットは無い)
男(八魔将なんて如何にも低レベルじゃ勝てない相手の情報を偽ったって、意味無いだろうしな)
男(…………つまり、八魔将の存在を隠すだけじゃなく、対策すらされないようにしてやがったわけだ)
男(勇者対策か? にしても……トロル系ってのはこんなデカイのかよ……巨デブかと思ってたっての)
男(あの巨体で俺より速いとか……)
791 :
サイズ差で狙われ難いのがせめてもの利点か
793 :
乙
791はゲームやアニメの見過ぎだぞ。
サイズ差あるなら小さい方は大きい方より速く動けないと、攻撃範囲から脱出できない。
人間が蟻に攻撃しようとして、避けられるようなもんだぞ。
795 :
どっかの16体の虚像ぐらいだったらワンチャンあったかもだけどなぁ。
トランザムしてるガンダムとなるとキツイか?
でも相手ガンダムみたいなやつなら、どうなんだろうか...w
799 :
ダークトロル「……お前、何者だァ」
< ズッ……ンッ
ダークトロル「ただの人間じゃ無いのは確かだ、てめえ……」
不意に、話し掛けてきたボストロールらしきモンスターを前に。
俺は思わず聞いてしまった。
男「もしかして見えてるのか、俺のレベルが……?」
ズンッッ……
ゴッッ!!!
───────── それが油断を誘う言葉だと気付くよりも先に、足元が揺らいだ。
男(マ…ジ……か……ッ!?)
反射的に全身を奮い立たせて右へ跳躍。
だが、それすら遅い。
黒い巨人が踏み込んできたと思った瞬間。
たったそれだけで、莫大な衝撃を撒き散らして俺の真横に巨体が飛んできたのだ。
────────── ズンッ・・・ゴゴゴゴォォッ!!
男「うぉおおおおぁぁあっ!!?」ブワァッ
男(速い、しかもただの体当たりがなんだこの威力……ッ!?)ドザァァッ…!
視界が二転三転と、地面とボストロールらしきモンスターを映しながら身体を打ち付ける。
頭に響くような鈍痛。
それを上回る化け物の脅威。
今このとき、俺は間違いなく追い詰められていた。
男(……けど、そこまで絶望的じゃない)
800 = 799 :
ギュッ……
────────── ォォオンッッ!!
横殴りの暴風が迫るのが分かった時、俺は体勢を立て直す。
そちらへ視線を向ける事は諦めて祈るように再び宙へ身を躍らせた。
< ゴォッッ!!
男「ッ……!! 全力で避けても、飛ばされっ……っ!」ブワァッ
周囲に倒されていた樹木と土砂が巻き上がり、それらに弾かれるように俺も吹き飛ばされてしまう。
だがこれで、確認したい事は確認出来た。
当たり前だと言われればそれまで。
しかし『無駄撃ち』が避けられるならば、この状況から逃走する事が容易になるのだから。
< ガツッ……!
ドサッ! ゴロゴロッ……ズサァッ…!
男「嘗めるなよ、ボストロールゥッ!!」バッ!
奴から受ける攻撃を悉く俺が回避できたのは、速さとは別に『大きいからこその出方』を予測出来たからに他ならない。
単純に考えれば見えてくる。
俺がこの八魔将から逃げ切るのに必要なのは ”” 視界から逃れる事 ”” が先決なのだ。
蹴るべき小石が視界から消えれば蹴るのを断念するように。
虫を踏み潰そうとして予期せぬ目潰しに会って見失うかのように。
男「『メラミ』ィィッ!!」
俺と巨人の八魔将の間に、十数メートルに伸びる業火の柱が立ち上る ────── !!
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