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    元スレ春香「いつからだろう」

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    901 = 898 :

    春香「…えぇと」

    まずは衣装に着替えようかな

    最初はソロだから、ソロ用の衣装に…
    念のために全体用の衣装も確認してた方がいいよね


    私は用意してある衣装を取り出すと、手に持ったまま鏡を見ながら、すっ…と合わせる

    衣装は問題ないし、そろそろ着替えを…

    …その時、私の横の席からガタッと音がした

    春香「伊織…もう行くの?」

    伊織「会場に慣れておくのよ…それよりあんたも早く来なさいよね、リハーサルがあるんだから」

    伊織はそのまま控え室から部屋の外へ出て行く

    春香「……」

    …私も、早く準備してしまおうかな

    私はその後無言で準備を進めた

    902 = 898 :


    …奥にはステージ

    私は、小走りでそこへ向かっていた


    控え室で気がついたら私一人

    千早ちゃんはとっくに準備を済ませていたらしく、私より後に来た亜美と真美も既に居なかった


    …ちょっと長くなり過ぎたかな


    私は少し息を切らしながらステージに着いた


    903 = 898 :

    ステージには、千早ちゃんがソロのリハーサルを始めていて、亜美と真美が次に並んでいる

    …そこまで遅れてなかったみたいだね


    私はホッとしながら隅にいる皆の所へ向かった

    春香「おまたせ~」

    「お…来たな」

    雪歩「似合ってます、春香さん」

    私は皆に笑いながら応える

    春香「よかったぁ、遅れたかと思っちゃった…」

    本音なのか冗談なのか分からないようなことを言うも、皆の顔を見ながら少し異変を感じた

    …なんか、暗いような

    「あぁ…それなんだけどな」

    別にそこまで気にすることもないんだけど…
    と、言いにくそうな顔をする響ちゃんの横に伊織がやってくる


    伊織「あずさが来てないのよ」

    904 = 898 :

    伊織は腕を組みながら冷たく言い捨てる

    伊織「電話も入れてみたけど、出ないし連絡もないし…もう、何してるのよ」


    伊織の言葉に多少皆も不安の色を見せる

    ……

    少しの間だけ、沈黙が走った

    千早「春香…次、空いてるわよ」

    春香「え?」

    私は千早ちゃんの報告を聞いて、ステージに目を移す

    …今は亜美と真美がリハーサル中

    千早ちゃんは今リハーサルから戻って来たようだった

    春香「うん…じゃあ、私行ってくるね」

    私は手を振って、皆から離れて行った

    905 = 898 :


    ………………

    今はまだ昼過ぎ

    実際、集合時間にすらなっていない

    まだ来ていないとはいっても、遅れているという表現はどうなのだろう


    …でも、電話に出ない連絡もない

    そのことが少し気にかかった

    まるで、いつかの貴音さんのような



    ……………………


    私のリハーサルが終わっても、あずささんは会場に来なかった

    皆リハーサルを終え、一応やることはやり終えたなか、何もすることがないままライブ会場を静寂が包む

    伊織「…出ないわね」

    時折電話をかけるものの、やっぱり繋がらない

    そうこうしているうちに、どんどん時間は過ぎていく

    906 = 898 :


    ………集合時間

    あずささんはまだ来ない


    伊織「ちょっと… 遅刻じゃない!」

    皆の顔も不安になっていく

    流石にこれ以上はまずいかも…!


    その時、会場に足音が鳴り響いた


    「遅れました~」

    あずささんが遠くから息を切らしながら走ってくる

    あずさ「ほんとにごめんなさい、すぐに準備します~」

    私達の前で必死に謝るあずささんに、伊織が言う

    伊織「理由は後で聞くわ、早く準備しなさい」

    あずさ「…はい~」


    あずささんは控え室に速足で向かっていく

    ……

    私の前を通り過ぎる時、ちらっと見たあずささんの顔が、とても焦っているように見えた

    907 = 898 :

    時間が経ち、あずささんがやって来てようやく会場に全員が揃う


    伊織「皆リハーサルはもう終わってるから、早くしなさい…あずさが終わった後、ラストの所のリハーサルやるわよ」


    伊織に頷いたあずささんは、ごめんね、とひとこと言ってステージに向かう

    そのままあずささんのリハーサルが始まり、会場は久しぶりに賑やかになった

    908 :

    春香「あずささん、何かあったのかな…道に迷ったとは思わないけど」

    伊織「分からないわ」

    あずささんの歌声が会場に響くなか、伊織は腕を組み、じっと前を見ながら答える

    伊織「でも、何かあったに違いないわ」

    伊織「昨日、亜美とあずさには口酸っぱく言ったつもりよ…遅れてくるなんてありえない」

    春香「…うん」

    さっきも言ったけど後であずさには聞くつもりよ、と伊織は言う

    …私は軽く頷いた

    大事じゃなければいいけど


    やがて、あずささんのリハーサルも終わり、ステージに全員が集まった

    909 = 898 :

    伊織「私達だけでもリハーサルを終わらせといて良かったわね」

    皆が輪になっているなか、伊織が言う

    集合時間に遅刻しても、それから掛かった時間はあずささんのリハーサルだけで、実際はまだまだ時間に余裕はある


    …偶然? だけど早めに来ておいてよかったのかな


    あずさ「ほんとにごめんなさ~い」

    申し訳なさそうに謝るあずささんに、真美が応える

    真美「そういうこともありますよ、気にしないでください…!」

    真美に笑顔を向けるあずささんを見て、私は少しほっとした

    …それにしても、ライブの練習の時も真美は私を励ましてくれたりしたね

    まだまだイタズラっぽい所もあるけど、なんか気が利くようになったというか…


    …その時、伊織がまた口を開いた

    910 = 898 :

    伊織「さっき皆のリハーサルの様子を見てたけど、真は少しずれてる所があったわね」

    「えっ…あ、うん…ボクも自覚はしてるから…本番じゃ、ちゃんと合わせるよ」

    少し戸惑ったように話す真を見て、伊織は腕を組みながら、言う

    伊織「それならいいけど…あんた、トップバッターなんだから頼むわよ」

    頷く真を見て、伊織は目線を変える

    伊織「真とペアの雪歩は、私が見る限り問題なかったわ…それと、」

    ぺらぺらと話す伊織を見て、私は少し申し訳ないような気持ちになる

    …ほんとは、こういうことはリーダーの私が言わないとだめなんだけど…

    私がリハーサルに来た時には、皆はもうリハーサルを終えていたし…じゃあ、何々するよとかのひとことはどうなのって…それも伊織に言われるし


    なんかごめんね…伊織

    伊織「それじゃ、全体のリハーサル始めるわよ」

    私の横で伊織が合図した

    911 = 898 :

    皆がそれぞれの位置に着くなか、伊織が私に声を掛ける

    伊織「あんた、さっきからなに下向いてるのよ」

    春香「えっ」

    伊織は鋭い目つきで私に話す

    伊織「何度も言わせんじゃないわよ、あんた…リーダーなのよ」

    春香「…ごめん」

    うぅ…今そのことについて考えてました

    伊織「…まぁ今更そんなことはどうでもいいわ」

    伊織「多少あんたにも事情はあるだろうし、皆緊張してるわ…今のうちに慣れておきなさい、下を向くんじゃないわよ」

    伊織は、私に背を向けて自分の位置に歩いていく

    春香「…うん」

    私はステージの中心へと歩いていった

    912 :

    ………………………

    伊織「結構動きやすかったわ…感触は良かったわね」

    全体でのリハーサルも終わり、ライブまで完全に待機する状態になった所で、また皆で輪になっていた

    その中で伊織が話している

    伊織「やよいも大丈夫そうじゃない」

    ちらっと伊織がやよいを見ると、やよいは照れたように笑う

    …やよいと伊織がこんなやりとりをするのを見るのは久しぶりだね

    913 = 912 :

    伊織「それで…一応やることは終わったわけだけど」

    伊織が腕を組みながら考え込むように話すと、響ちゃんもそれに合わせて、言う

    「……終わったな」

    「うん…」

    皆、やることがなくなり黙り込む

    ……

    もし、リーダーの私が何か言うとして、こういう時は…どうすればいいんだろう

    私もやることはもうないんだけどね…
    あとはライブまで集中することくらいかな

    そんな時、雪歩が話を切り出した

    雪歩「あのぉ…リハーサルの終了までまだ時間あるので、少しだけステージを使ってもいいですか?」

    千早「ええ…私もお願いしたいわ」

    雪歩に続いて千早ちゃんも希望する

    それに続いてどんどん皆も口を開き始めた

    914 = 912 :

    「あ、それなら自分もう一回だけ軽くダンスやっておきたいな…なぁ、貴音」

    貴音「わたくしは構いませんが…」

    伊織「そうね…私は私でしなければいけないことがあるから……私は休憩をとりたいわね」

    亜美「ねぇ…どうする~」

    真美「う~ん」

    リハーサル、休憩、考え中…

    それぞれの意見が出るなか、私も何かすることがないか考える

    ………

    うぅ…何も思いつかないけど
    あえて言うなら、今は控え室にいたいかな

    そんな時、珍しく美希が真面目な顔で私に聞いてきた

    美希「どうするの…春香?」

    春香「えっ…」

    伊織も私をじっと見ている

    …こういうことは、やっぱりリーダーが決めないといけないのかな

    それじゃぁ…

    春香「じゃあ、今から自由で…」

    伊織「…そうね、それがいいわね」

    伊織は小さく頷くと、

    伊織「あずさ…!」

    あずささんを呼びながら、ステージから降りていく

    …やがて皆もそれぞれ行動に移り、ステージの上は数人だけとなった

    915 = 912 :

    千早「すみません…マイクお願いします」

    千早ちゃんの声を背景に、私はステージを降りて控え室に向かう

    …控え室に行っても、何もすることはないんだけどね

    私は、たくさん椅子が並んでいる広い会場を横目で見ながら、狭い通路へと足を踏み入れた

    ……

    「ああ…それで、」

    通路を歩いていると、何やら話し声が聞こえてくる

    …なんだろう、控え室のほうからだけど

    そう思った私は、今向かっている控え室の方へ、曲がり角を曲がる

    律子「あら…春香、リハーサルはもう終わったの?」

    春香「律子さんにプロデュ……!」

    曲がり角の先には、律子さんとプロデューサーさん…

    それから、小鳥さんが立っていた

    916 :

    千早がハリウッド行ったら太って帰ってきたSS思い出した
    あれはギャグっぽかったが、両方とも価値観が歪曲してるという共通点があるのが面白いな
    しかし、何が正しいか誰にも分からなくなってきてるな
    やよい・響・あずさ・春香あたりが本当に怖いことになってきてるがここからどうなるのやら
    とにかく期待

    917 :

    小鳥「ふふ…」

    小鳥さんはニコニコ顔で私に微笑む

    ……三人で揃って話なんて、
    やっぱり、プロデューサーさん達にとっても…このライブは重要なものなんですね


    とりあえず私は、質問に答えた

    春香「あ…はい、リハーサルは終わりました」

    律子「そう」

    律子さんは頷くと、私の後ろ側をキョロキョロと見て、言う

    律子「皆は…どうしたの?」

    春香「えっ…あ、それは…」

    私は、今わけあって自由時間にしていることを伝える

    918 = 917 :

    律子「そうねぇ…」

    すると、律子さんは少し考えるそぶりを見せた

    律子「もうライブまで二時間もないわ、ライブが始まる一時間前には、会場に人が入るようになってるの……さっき、ちらっと外を見たけど、もう既に人が並んでたわ」

    律子「だから、早めにリハーサルを終わらせて会場の設備を見直さないと…会場に人を入れることができないのよ」

    春香「わっ…じゃあ私、皆に言ってきます」

    律子「いや、春香はここに居なさい、ライブ前は控え室に集合することになってるし……それに、私は今からステージ側に行かないといけないから」


    丁寧に話す律子さんは、プロデューサーさん達にひとこと告げると、ステージ側へと走っていく

    ……

    私と、プロデューサーさんと、小鳥さんだけがその場に残った

    919 = 917 :

    静まり返った空間で、しばらく沈黙が続く

    ……

    そして、ふとプロデューサーさんが口を開いた


    P「春香…ちょっといいか?」

    プロデューサーさんはそう言うと、私に背を向けて歩いていく

    小鳥さんも、私に意味あり気な顔を見せると、頷いて歩いていく

    春香「…はいっ」

    …なんだろう

    私は二人の背中を追いながら歩いていく

    …連れて来られたのは、
    ステージのすぐそばにある、スタンバイ用の場所だった

    920 = 917 :

    ステージの上で千早ちゃんが歌っている

    …その隅の方で、雪歩達が順番を待っている


    その様子をしばらく見ていたプロデューサーさんは、やがて、ステージとは別の方向に歩き出し、階段を登っていく…

    P「こっちだ」

    小鳥さんも階段を登り、私もその階段を登る

    …辿り着いたのは、密室だった

    921 = 917 :

    P「…入るんだ」

    春香「はい……あれっ」

    部屋に入った瞬間、会場に響いていた千早ちゃんの歌声が聞こえなくなり、周りは不思議なほど静かになる

    その不思議なくらい静かな部屋で、私とプロデューサーさんと、小鳥さんの三人だけとなった


    ……

    ………………

    P「…よく見えるだろう?」

    プロデューサーさんはカーテンを開けると、小さな枠からガラス越しにステージを見る

    春香「…はい」

    私もガラスからステージを見降ろす

    …そこには、千早ちゃんがステージから降りて行く姿や、

    響ちゃんがステージの中心へと歩いていく姿が、はっきりと見えた


    ……こんな場所があったなんて

    922 = 917 :

    P「ここは…ライブの状況確認、音声操作、いろいろなことに使っている…この会場じゃ、ここで音源の管理をしているんだ」

    そう言って、プロデューサーさんは別のカーテンを開ける

    P「音が聞こえないから、何か事故があった時は…ここからスタンバイ側のサインを見て、音を止める」

    静かに話していたプロデューサーさんは、開けたカーテンを全て閉めると、私の方に向きを変える

    P「ここに来たのは他でもない……春香には、伝えておかないといけないからな」

    そう言って、プロデューサーさんは真面目な顔になった

    P「ライブの間…俺や小鳥さんはほとんどこの部屋かスタンバイ場にいる」

    P「律子は控え室の方にいるが、ずっといるわけじゃない……俺や小鳥さんも、ちょくちょくそっちに向かうが、だいたい控え室は春香達だけだと思ってくれ」

    真面目な顔で話していたプロデューサーさんは、ひとこと…こう言った

    P「そっちは…任せてもいいか?」

    春香「……」

    P「お前達のステージを、俺は見届けなければいけない」

    …私は黙る

    923 = 917 :

    P「この一週間の練習で、俺はお前達に驚かされたんだ……辛いだろうと思った練習も、お前達はこなしてきた」

    P「春香…過酷な練習をさせてすまない」

    P「でもだな…それをこなすだけの思いがあるのなら……最後に、その思いを…このステージで見せてくれないか?」

    春香「プロデューサーさん……」

    静かに話すプロデューサーさんから…

    何かを願うようなものが、私に伝わってきた

    ……

    プロデューサーさんの素直な気持ちを聞いたのは…久しぶりな気がする

    今…ちょっとだけ、昔のプロデューサーさんを見た気がします

    「……」

    私は、静かに返事した

    924 = 917 :

    「…ふふ、少し昔の話でもしましょうか!」

    その時、静かだった部屋に…ポンッという音が鳴る

    春香「うわぁ」

    ニコニコ顔の小鳥さんが、両手を揃えて笑っていた

    春香「ちょっと…びっくりしたじゃないですか…!」

    小鳥「いいじゃない春香ちゃん、前はあんなに暗い顔をしていたのよ」

    珍しくハイテンションで話す小鳥さんが私の目の前に映る

    小鳥「そうね…あれは、プロデューサーさんが事務所にやってきた日のことだったわ……」


    最近静かに話す小鳥さんしか見てなかった気がするけど…元々は、こんなふうに話してたっけ…

    その後、心地いいとも言える小鳥さんの長話が、密室の中で続いた

    925 = 917 :

    ………………

    ………………

    小鳥「ごめんなさい春香ちゃん! つい話し込んじゃって…」

    春香「いえ…じゃあ、私行ってきますね!」

    時は経ち、私は少し焦り気味に部屋を出る

    あまりにも小鳥さんの話が長くなってしまい、気がついたらとっくにライブ開始一時間前を過ぎている始末

    聞き入ってしまった私も悪いんだけど…

    プロデューサーさんが気づかなかったらどうするんですか…皆、もう控え室に集まってますよ!!

    そう思いながら、階段を降りている時だった


    ……ワイワイ……ガヤガヤ……


    春香「…あれっ」

    私は足を止めて、ステージの方を眺める

    ちらっと見えたステージ前の客席は、既に人が埋まっていた


    春香「そうなんだ…もう会場は開いてるんだね」

    密室にいたから気がつかなかったけど…

    会場の雰囲気は、ガラリと変わってとても賑やかになっている

    ……ほんとに集中しないといけないね

    私は、体が重くなるのを感じ、気を引き締めて控え室へと向かった

    926 :

    俺はPが海外研修から帰ってきたら化け物が事務所があるエリアにいて出入りができなくなってたSSを思い出した

    927 :

    伊織「あんた…どこにいたのよ…!」

    控え室に戻って早々、私は伊織に怒鳴られる

    うぅ…ごめん

    春香「ごめん…ちょっと話があって」

    伊織「話…?」

    伊織は私の言葉に少し考えるそぶりを見せると、納得したような顔をした

    伊織「今、ライブの順番の確認をしているのよ…もう先に始めてるわ」

    そう言って、伊織は紙をペラペラと空中で揺らす

    壁に立ててある時計を見ると、もう既にライブ開始の40分前…

    …ほんとにごめん

    私は、集まってる皆のところに割って入る

    928 = 927 :

    伊織「いい、最初は真と雪歩のペア…次が響と貴音、それから…」

    急ぐように伊織は話し、確認がものすごい速さで進んでいく

    …ちょっと速すぎないかな

    私は、少し焦り気味にも見える伊織をちらっと見た

    伊織「そして、最後は私とやよいで前半は終わりよ」

    伊織は一通り皆の名前を呼び終えると、さっと目線を私に向ける

    春香「……っ」

    …なにかな

    929 = 927 :

    伊織「…中盤の最初はあんたなんだから、頼んだわよ」

    鋭い目で私を見ていた伊織は、
    静かに…でも、よく通る声で私に言った

    伊織「いい流れならそのまま…万が一のことがあったらこの中盤の最初で立て直す…あんたのポジションは、とても大事なんだから」

    伊織「トークでできるだけ盛り上げるつもりよ…その後のあんたのステージで、一気にファンの人達を盛り上げてくれないかしら」

    春香「……うん」

    私は、じっと私を見る伊織に頷く

    プレッシャー…覚悟…
    自分でもいろいろと感じるような返事だった


    いつも真剣な表情をしているけど、今の伊織はもっと真剣な顔をしているね

    なんか頼られたの久しぶりな気が…って、そんなことはいいの

    私、頑張らないと……

    …でも、

    伊織……なにか、焦ってないかな

    その時、伊織は足をツカツカさせながら腕を組み、落ち着かない様子で、言った

    930 = 927 :

    伊織「それで…律子達は何してるのよ」


    春香「……え?」


    私は控え室を見渡した

    1…2…3.............数人足りない?

    何度か数え直しても、周りに集まってるのは10人も居なかった

    ……どういうこと?

    急いでいたから気がつかなかったけど、皆まだ集まってないのかな

    戸惑う私を見て、伊織は更に戸惑ったように言う

    伊織「…あんた、知ってるんじゃないの?」

    春香「えっと…よく分かんない、律子さんに他の皆は…まだ、ここに集まってないのかな」

    ちょっと…と、
    伊織は気の抜けたような声を出す

    伊織「あんたが言ってた話って、なんだったのよ」

    春香「えっ…それはプロデューサーさんの」

    よく状況が分からないなか、控え室のドアが開いた

    931 = 927 :

    律子「ごめんなさい…待たせたわ!」

    律子さんに、雪歩、響ちゃん、千早ちゃんに……

    他にも、ステージを使っていた人達がぞろぞろと入ってくる

    伊織「律子…?」

    何があったの、というような顔で、伊織が話しかける

    律子「今から話すわ」

    早口で話す律子さんの横で、響ちゃんが焦ったように話す



    932 = 927 :

    「そんなに大きく取り上げなくても…自分は大丈夫だぞ」

    雪歩「響ちゃん…」

    千早「…今はそんなことを言っていられない」

    律子「ちょっと黙ってなさい…!」

    少し揉め合うように話す皆を、律子さんは止めると私達に目を向けて、言った

    律子「遅れてごめんなさい」

    律子「…ええと、そんなに身構えなくていいわ…私の思い違いかもしれないから」

    律子「さっき…リハーサルの途中で、響のダンスが一時中断して、リズムがずれたから…私が足を見ていたのよ」

    春香「……………えっ」


    律子さんが話す横で、響ちゃんが俯いた

    933 :

    やっぱり足完治してなかったのか?

    934 = 927 :

    伊織「足って…それで、どうなのよ」

    律子「…そう言われても」

    伊織の問いに、口ごもる律子さんは力なく答える

    律子「痛み止めで痛みを止めてるだけなんだから、良いわけないじゃない…この前も言ったけど、立っていられるのが不思議だわ」

    「だから…」

    俯いていた響ちゃんが、顔を上げて強く言う

    「自分は大丈夫だぞ…今だってこうして立ってるんだし、それに…練習の時だって何ともなかったじゃないか…!」

    律子「それは…そうだけど」

    「心配かけてるのは悪いと思ってる…でと、ほんとに大丈夫なんだ」

    伊織「ダンスが中断したってどういうこと?」

    「それは…」

    響ちゃんが話すには、こうだった

    935 = 927 :

    ステップを踏みながら前に歩き、前から後ろに下がる時に…後ろに下がらず、そのまま前に歩き出てしまったらしい

    …後ろに下がれなかった?

    「ダンスの振りが…少し飛んだんだ」

    本人はそう話す

    そんな響ちゃんを、伊織はじっと見る

    「…ほんとなんだ」

    響ちゃんも、伊織をじっと見る

    ………

    お互いに目を離さないまま時間が過ぎる

    「……っ」

    そして、響ちゃんが目をそらしかけた時だった

    貴音「…もういいでしょう、響」

    「…えっ」

    律子さん達の後ろにいた貴音さんが、前に出てきて、言った

    貴音「嘘はよくありません」

    936 = 927 :

    「た…貴音まで」

    戸惑う響ちゃんに、貴音さんは優しく話しかける

    貴音「心配をかけたくないという思いは十分伝わってきます……ですが、嘘というものは、より人を不安にさせるもの」

    貴音「…ほんとうのことを話すのです…何よりわたくしには、ただ振り付けを忘れたようには見えませんでした」

    「……」

    下を見て黙っていた響ちゃんは、やがて、言った

    「少しだけ…痛かった」

    貴音「……」

    「でも一瞬だけなんだ…久しぶりに痛くなったから、びっくりしてダンスを止めただけだぞ」

    律子「ちょっとステップを踏んでみなさい」

    「…分かった」

    ……タタッ……タッタタッ……

    響ちゃんは華麗にステップを踏んで見せる

    …意外と、大丈夫そうだね

    「ほら…大丈夫だぞ」

    手を広げて、大丈夫というように響ちゃんは視線を送る

    律子さんは、黙ったままその様子を見ていた

    937 :

    伊織「とは言っても…ステージに立ったら、また足が痛むかもしれないじゃない」

    「それは…もしそうなっても、絶対に踊りきる」

    何を言っても、響ちゃんはライブに出ることだけは譲らなかった

    そんななか、控え室に放送が流れる

    控え室の外からも、同じ放送が流れる

    …その放送は、会場全体に流れているようだった

    「まもなく開演いたします。開演に先立ちまして、皆様にお願い致します」

    「会場内での飲食、喫煙は……」

    えっ…という声が、控え室で飛び交った

    …私も、驚いたように言った

    律子さんが腕時計を見る

    律子「もう15分前じゃない…」

    「どうしよう…ボク、もう行かなきゃ」

    雪歩「わ、私も…」

    皆、焦ったように口々に話し始める

    938 = 937 :

    律子「もう変更も効かないわ……とにかく、最初に出番が回ってくる人はスタンバイ場に行きなさい」

    「は、はい…!」

    真に続き、雪歩も返事する

    …なんか、すごい緊張が


    その時、響ちゃんが言った

    「自分は二番目だから、もう行くぞ」

    律子「響…ほんとに、大丈夫なのよね」

    心配そうに話す律子さんに、伊織が言う

    伊織「律子…今何を言ってももう遅いわ…それより、締まらないわね」

    伊織「ちゃんと送り出してあげなさい」

    律子「伊織…」

    律子さんは、頭を抱えると…分かったわ、と顔を上げた

    939 = 937 :

    律子「私たちが弱気になってたら、ライブを見に来ている人達に思いが伝わらないわ…今はライブのことに集中するのよ」

    律子「それじゃあ…」

    律子さんは、軽く息を吸うと…強く言い放った

    律子「…行ってきなさい!」

    響ちゃん達は頷いて控え室から出て行く


    …今は、ファンの人達に最高のステージを見せることに集中しよう

    正直、私も余裕はないかも

    なんか久しぶりかな…こんなに緊張するのは


    ドタバタするなか、ライブが幕を開けた


    …って、始まったばかりなのに焦っちゃダメだね

    まずは、控え室にいる私達が落ち着かないとね…

    940 :

    あんだけ足痛めてたのにそうそう治るわけないもんな

    942 = 941 :

    「みんな~~~…今日は、ライブを見に来てくれてありがとう!」


    …ワー!!

    …ワー!!


    控え室で待機の状態にある私含めて皆、

    モニター越しに、ライブの様子を見る

    真っ暗なステージから、真の声が会場全体に響く


    …なんか、始まってもないのに…すごく盛り上がってるね


    「今日は皆で盛り上がろう!!」


    ??~~~~

    ワーーーーー!!!!

    ワーー!!!ワーーーーー!!!

    キャーー!!!


    真のかけ声と共に、ライブの最初を飾る曲が流れ始めた


    待ちに待った、というように会場全体が湧き上がる

    それにしても…

    春香「…すごい、熱気だね」


    始まったばかりにしては尋常じゃないほど騒がしい会場の雰囲気が、モニター越しにも伝わってきた

    943 = 941 :

    伊織「なによこれ……何で、こんなに盛り上がってるのよ」

    伊織もあっけにとられて、モニターを見つめている

    …なんか、急に緊張してきたような

    思ってた以上に会場は盛り上がってるよ

    正直、中継を見ていただけでも…勢いに押されちゃったかな

    春香「……」

    真と雪歩…大丈夫かな


    プレッシャーに飲まれるには十分と言えるほどの歓声が上がったなか、ステージにライトが照らされた


    ………



    「CHANGIN’ MY WORLD!!

    変わるせかい~~輝け!」


    ワーーーーー!!

    ライトと共に真と雪歩の姿がステージに現れ、会場は更に盛り上がる

    944 = 941 :

    ハイ!!ハイ!!ハイ!!……

    「CHANGIN’ MY WORLD!!

    私のせかい~~」

    大量のペンライトが会場に揺れる

    律子「まずいわね…」

    律子さんが厳しい表情で口ずさんだ


    うぅ…真と雪歩、完全に声が上ずってるよ


    律子「ファンの人達からのちょっとしたサプライズかしら…多分、勢いをつけようとしてくれてるんだわ」

    律子「でも…これはちょっと、あの二人には逆効果だったかもしれないわね」


    律子「最初はちゃんとしたステージを披露しないと…ファンにとっても、私達にとっても、後につなげにくい所があるわ」

    亜美「そんな…」

    真美「うう…がんばってください…!」

    やよい「真さん…雪歩さん…」

    律子「難しいわね…後の人達で立て直すしか」

    そんな時、落ち着いた声が控え室に響いた

    ……

    美希「私のモノ チェンジー……」

    静かで楽しそうな歌声

    その声に、控え室は静かになる

    945 = 941 :

    律子「美希…」

    美希「あはっ…賑やかで楽しいの」

    美希は、モニターから少し離れた所の椅子に座り、輪っかのようなものを指でクルクルさせながら、言う

    美希「ファンの人達が楽しんでるなら、ミキ達も楽しめばいいと思うなー…」


    美希は、鼻歌交じりに真達の歌に合わせる

    美希「そのほうが、キラキラで…ワクワクするの」

    その姿は、とても落ち着いていた

    伊織「気楽なものね」

    そんななか、伊織が言う

    伊織「言いたいことは分かるけど…ファンがここまでしてくれてるんだから、それにちゃんと応えないでどうするのよ」

    律子「そうねぇ…」

    そんななか、

    律子さんは、しばらく考えるように首を傾げ、考えをまとめながら喋るように、言った

    946 = 941 :

    律子「どっちにしても、出だしで躓いてしまったことに変わりはないわ」

    律子「ファンがとても好意的にこのライブを迎えてくれるなら、私達もそれにのってライブを盛り上げればいいかもしれない」

    律子「でも…」

    律子「どうであれ、ファンを盛り上げるのは私達なの…この先は、私達自身でライブを盛り上げていかないといけないわ」

    とはいえ……と律子さんは眼鏡を軽く触る

    律子「上がってしまったなら仕方ないわね…二人が戻ってきたら、温かく迎えてあげなさい」

    真達はどうにか歌い終え、ステージは真っ暗になる

    ……

    会場の雰囲気は、可もなく不可もなくって反応だね

    大事にはならなかったみたい

    947 = 941 :

    伊織「この様子じゃ…響達も雰囲気に飲まれてるかもしれないわ」

    伊織は腕を組みながら言う

    ……立て直すとしたら、ここにいる私達でどうにかしないと

    伊織「だから……」

    次の瞬間、伊織はくるっと向きを変え、その先にいる人物を見た

    伊織「亜美…真美」

    亜美「はい…」

    真美「……」

    伊織「あんた達二人にかかってるんだから、頼んだわよ」

    ライブはまだまだ長いんだから、思いっきりやりなさい、と伊織は言う

    亜美「は…はいっ」

    真美「がんばります…」

    948 = 941 :

    真美「じゃあ…行ってきます」

    亜美も真美も、すっかり会場の雰囲気に飲まれているようだった

    …無理もないかな

    私も圧倒されちゃったし、こんな時に順番が回ってきたら、私だってとても緊張する

    …でも、亜美……真美……

    亜美「…大丈夫かな」

    真美「…がんばらないと」

    …なんでだろう

    私には、スタンバイ場へと控え室のドアに向かう二人の姿が、とても弱々しく見える


    二人は一緒!


    そんなふうにいつも一緒にいた亜美と真美は

    時にはいたずらしたりするけど、悪気があってしてるわけじゃない

    949 = 941 :

    どれもこれも、楽しむためにやっていて…そして、それは亜美と真美だからできること

    何をやる時も二人で支え合ってきたんだよね

    ……ねぇ、亜美…真美

    敬語や話し方とか、いろいろ意識する気持ちは大事だと思う

    でも、亜美と真美自身も変わらなくちゃいけないのかな…

    そんなに…思い詰める必要無いんじゃないかな


    春香「待って」

    亜美「え……」

    真美「……」


    ドアの前で、亜美と真美が振り向いた

    950 = 941 :

    春香「ほ…ほらっ」

    私は二人の元に走り寄る

    春香「笑おうよ…もっとこう…楽しもうよ」

    真美「春香…さん?」

    春香「はるるんだよ、真美」

    真美「えっ……」


    真美は戸惑ったように、目をおろおろとさせる

    春香「自然体、自然体…もっと、気楽でいいから」


    やっぱり私は、以前の亜美と真美のままで居て欲しい


    …だめ…かな?


    亜美「はる…」

    亜美と真美はしばらく黙ったまま、私を見ていた


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