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元スレ京太郎「牌のおねえさんフォーエバー」
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……が、甘かった。色んな意味で。
一口サイズのきなこ餅……控えめな甘さで上品な味わい。中の餡子も上手い具合に調和していて飽きさせない。
よもぎ餅……爽やかな風味に加えて良い香りがお茶によく合う。
チーズケーキ……酒かすを使用したチーズケーキ。
単なる香り付け程度のものかと思っていたが、いざ口にしてみるとしっかりした日本酒の味が口の中に広がる。
かと言ってチーズケーキの味も上手く主張されていて、バランスの良い甘味が完成されている。
マロンケーキ……ラム酒の香りが栗の旨味を引き立て、しっとりしたタルトの生地が食感をベストのモノに仕上げている。
大仏カプチーノ……ラテ・アートで描かれたデフォルメされた大仏。可愛らしい絵柄が食事を楽しく演出する。
抹茶パフェ……言うまでもなく抹茶のパフェ。強いて言うならファミレスのものに比べて1.5倍ほどのボリュームがある。
京太郎「あの……照さん?」
照「?」
京太郎「えーっと……宿まで後どれくらいですか?」
照「到着は夕方を予定してるから……まだまだかな。それに、寄りたいところもたくさんあるから」
照さんがカバンから取り出した和菓子・スイーツを紹介している雑誌。
貼り付けられた付箋の数を見るに、まだまだこのお菓子巡りの旅は続くのだろう。
照「いくつかはお土産にも良さそうなのあったし……うん、帰る前にまた来ようか」
俺も甘い物は好きだ。対局中は脳をフル回転させるわけで、勝負に勝った後の甘味は最高だ。
先ほど食べた甘味の数々も非常に素晴らしかった……が、積み重なってくると非常に重い。砂糖とクリームの暴力である。
照「ほら、早く行こう?」
俺の手を引いて歩く照さんに、胸焼けという言葉は無縁であるらしい。
もしかして、摂取した糖分は全て麻雀の力に変換されているのだろうか――なんて、半ば現実逃避気味にそんなことを考えた。
もしかしたら旅館で出される食事もデザート祭りなのか?……甘味巡りの道中で、そんな疑惑が浮かんできたけれど。
玄関で出迎えてくれた女将さんを見た瞬間、恐れの気持ちは胸焼けと共に吹き飛んだ。
「ようこそいらっしゃいました!」
玄関で俺たちを迎えてくれた人のおもち。
すばらしい。牌のおねえさん程の大きさは無いが、形の良いおもちをお持ちだ。
それは実に、この旅行に来て良かったと思わせる――
照「……早く、部屋の案内を」
照さんが一歩前に出る。
どこか苛立ちがあるような声音に思考が中断される。
京太郎「照さん?」
照「……」
声をかけたら目を逸らされた。
よくわからないが、何かがこの人を挑発してしまったらしい。
旅館の人に先導されて廊下を歩く途中も照さんは一切返事をしてくれない。
彼女が企画してくれたからこそこの旅行があるわけで、どうにか機嫌を直して欲しいところだけど。
案内されて部屋に着いても、照さんの無表情が変わることはなかった。
京太郎「あの、照さん?」
照「……」
京太郎「……むう」
正直、お手上げである。
淡ならヘソを曲げててもわかりやすいのだが、この人の場合はどうすればいいのか今一わからない。
いつものお菓子を使う手段も、先ほどまでで散々堪能したわけだから効果はないだろう。
京太郎「……夕飯前に、風呂いってきますね」
問題の先延ばしとも言うけれど、少し考える時間が欲しい。
汗を流して気分転換すれば何か良い案が浮かぶかもしれない。
洗面用具一式と旅館の人に渡された浴衣を手にとって、露天風呂に向かうことにした。
照「……」
京太郎「ほぉ……」
戸を開けた瞬間に思わず零れる溜息。気分転換のために訪れた露天風呂は、悩む気持ちを一変させた。
湯船や床には高級な高野槇がふんだんに使われているとの説明通りで、足元からは木のぬくもりが伝わってくる。
落ち着いた雰囲気の中に優雅な雰囲気を感じさせる、この旅館ならではの趣があった。
京太郎「……くしゅっ」
感動してぼーっと突っ立っていたが、吹いてきた風に身を震わせる。
この後にすぐ他の客が入ってくるかもしれないし、旅行に来て風邪をひいたら笑えない。
早く体を洗って体の底から温まることにしよう。
京太郎「……っと、ボディーソープは」
「はい、これ」
京太郎「あ、ありがとうござ――え?」
シャンプーで頭を洗い、次は体を洗おうと思ったところで、ボディソープの容器を渡してきた白い腕。
あまりのベストタイミングに驚きつつもお礼を言って、振り向くとそこには――
照「? 体、洗わないの?」
バスタオルを体に巻きつけて、小首を傾げる照さんの姿があった。
戸を開けた瞬間に思わず零れる溜息。気分転換のために訪れた露天風呂は、悩む気持ちを一変させた。
湯船や床には高級な高野槇がふんだんに使われているとの説明通りで、足元からは木のぬくもりが伝わってくる。
落ち着いた雰囲気の中に優雅な雰囲気を感じさせる、この旅館ならではの趣があった。
京太郎「……くしゅっ」
感動してぼーっと突っ立っていたが、吹いてきた風に身を震わせる。
この後にすぐ他の客が入ってくるかもしれないし、旅行に来て風邪をひいたら笑えない。
早く体を洗って体の底から温まることにしよう。
京太郎「……っと、ボディーソープは」
「はい、これ」
京太郎「あ、ありがとうござ――え?」
シャンプーで頭を洗い、次は体を洗おうと思ったところで、ボディソープの容器を渡してきた白い腕。
あまりのベストタイミングに驚きつつもお礼を言って、振り向くとそこには――
照「? 体、洗わないの?」
バスタオルを体に巻きつけて、小首を傾げる照さんの姿があった。
京太郎「ど、どどど……」
照「……童貞?」
京太郎「違います! どうしてここに!?」
動転して上手く言葉が出なかったが、照さんの言葉に突っ込みを入れることで言葉を出すことが出来た。
照「ここ、貸切だから。私も入ろうと思って……あ、そうだ。背中流してあげようか?」
京太郎「いやいやいや……」
バスタオルに包まれているとはいえ、照さんがその下に何も身に付けていないことは明らかである。
なんせ、タオルが湿って均整のとれた綺麗な体のラインが浮かび上がって――じゃなくて!
京太郎「とにかく! 先、上がりますから!」
いくら何でもこれはまずい。
目線を逸らし、白い手を跳ね除けて立ち上がる。
京太郎「あっ」
照「あっ」
だが、慌てていた上に足元を確認しなかったせいで。
流しきれていなかったシャンプーに足元をとられ、バランスを崩してしまい――
照「……童貞?」
京太郎「違います! どうしてここに!?」
動転して上手く言葉が出なかったが、照さんの言葉に突っ込みを入れることで言葉を出すことが出来た。
照「ここ、貸切だから。私も入ろうと思って……あ、そうだ。背中流してあげようか?」
京太郎「いやいやいや……」
バスタオルに包まれているとはいえ、照さんがその下に何も身に付けていないことは明らかである。
なんせ、タオルが湿って均整のとれた綺麗な体のラインが浮かび上がって――じゃなくて!
京太郎「とにかく! 先、上がりますから!」
いくら何でもこれはまずい。
目線を逸らし、白い手を跳ね除けて立ち上がる。
京太郎「あっ」
照「あっ」
だが、慌てていた上に足元を確認しなかったせいで。
流しきれていなかったシャンプーに足元をとられ、バランスを崩してしまい――
……小さくても、柔らかかった。
それ以上のことは語らない方が、お互いの名誉は守られるだろう。
照「美味しいね、これ」
露天風呂でのことなんて、まるで気にしていない風に旅館の人に用意された夕食を淡々と進める照さん。
どうしてあんなことをしたのか、何でさっきは怒っていたのか。
聞きたいことはあるけれど。
京太郎「……そうですね。見た目も味も飽きさせない、まさにおもてなしって感じの」
……きっと、この人自身にもわかっていないような気がする。
赤い瞳に俺の姿はどう映っているのか。
この旅行の中で、もう少し彼女のことを理解する必要があるかもしれない。
そして、彼女に俺のことを分かってもらう必要も。
京太郎「刺身もいいですね。山葵の辛味が生臭さを上手く消して、魚の旨味を引き立てています」
照「……辛いのは苦手」
京太郎「はは、ちょっとだけですから。せっかくだしチャレンジしてみてもいいかも?」
そんなことを考えながら、少しずつ箸を進めた。
それ以上のことは語らない方が、お互いの名誉は守られるだろう。
照「美味しいね、これ」
露天風呂でのことなんて、まるで気にしていない風に旅館の人に用意された夕食を淡々と進める照さん。
どうしてあんなことをしたのか、何でさっきは怒っていたのか。
聞きたいことはあるけれど。
京太郎「……そうですね。見た目も味も飽きさせない、まさにおもてなしって感じの」
……きっと、この人自身にもわかっていないような気がする。
赤い瞳に俺の姿はどう映っているのか。
この旅行の中で、もう少し彼女のことを理解する必要があるかもしれない。
そして、彼女に俺のことを分かってもらう必要も。
京太郎「刺身もいいですね。山葵の辛味が生臭さを上手く消して、魚の旨味を引き立てています」
照「……辛いのは苦手」
京太郎「はは、ちょっとだけですから。せっかくだしチャレンジしてみてもいいかも?」
そんなことを考えながら、少しずつ箸を進めた。
照ルート3話、旅行編その1でした
1話で終わらせる予定の旅行編が思ったより長引きそうです
照ルートに>>49のリボンの子とか出したいけどいつになることやら……
それでは、今回はここで中断します
今回もありがとうございました
1話で終わらせる予定の旅行編が思ったより長引きそうです
照ルートに>>49のリボンの子とか出したいけどいつになることやら……
それでは、今回はここで中断します
今回もありがとうございました
【この人】
照「京ちゃん……」
するりと、肩からずり落ちる浴衣。
真っ白な肌を月明かりが照らす。
照「熱いよ……」
朱に染まった頬、潤んだ瞳。
その視線の意味することは――
京太郎「すいません、ちょっと失礼しますね」
照「……?」
照さんの髪をかき上げて額に手を当てる。
確かに、熱い。
京太郎「……旅館の人に、風邪薬貰ってきますか」
38度、完全に風邪である。
照「ごめんね……」
京太郎「いえ、ゆっくり休んでてください」
幸いにも酷い頭痛や吐き気はないようだ。
旅館の人に貰った風邪薬を飲ませて、温かい格好で横になってもらっている。
京太郎「ふぅ……」
慣れない土地を歩き回って、普段の疲れが出たのだろうか。
初めは申し訳なさそうにしていた照さんだったが、やがて薬が効いてきたのか、すうすうと寝息を立てて眠り始めた。
その様子を見届けると、俺も肩の力を抜いて胡坐をかく。
京太郎「……」
――少しだけ、長い夜になりそうだ。
『妹が、お世話になりました』
『私がまた、咲と話せてるのは……君の、お陰だから』
『だから』
『ありがとう』
この人は、俺にとっては、ちょっと天然が入った先輩で。
あのへっぽこ幼馴染の姉で。
よく一緒に食事をするご近所さんで。
照「……んっ」
……本当に、それだけなんだろうか。
こうして、強い力で手を握ってくるのは。
本当に、俺が弟分だからという、それだけの理由なんだろうか。
京太郎「……なんか、なぁ」
この人について考えれば考えるほど、分からなくなってきた気がする。
照「京ちゃん……」
ギュッと、握られた手から伝わる力が一瞬だけ強くなった。
その寝顔はさっきまでよりも楽そうなものになっている。
京太郎「……一体、どんな夢を見ていることやら」
微かに口角が上がっている。
営業スマイルとは違う、『彼女らしい』微笑み。
照さんの夢の中で、一体俺は何をしているのだろうか。
照「……えへへっ」
京太郎「っ」
――えへへっ……って。
あの照さんが、えへって。
思わず軽く噴出しそうになったが辛うじて堪える。
こんなことで彼女を起こしてしまうのはあまりにも失礼だ。
京太郎「……しかしなー」
この子どものような寝顔だけを見れば、照さんが俺よりも年上のお姉さんだとは到底思えない。
そして更に、こんなナリして実力的には麻雀の頂点に近い位置にいるのだというのだから驚きだ。
この人と健夜さんと同卓に着いた時は正直、麻雀辞めたくなった。
あの時、隣にはやりさんがいなかったら、プロとしての俺はいなかっただろう。
本当に、人は見た目に寄らない。
……いやまぁ、見た目や普段の言動と強さが結びつかない人なんて、魔物クラスの女子にはごまんといるんだけれど。
京太郎「……男はそうでもないんだけど」
――ククク……。
――御無礼。
――……打つか。
男の場合は、何だか見るからに『それらしい』オーラが出ているのだ。
……そして何故かは知らないが、そういう人たちは表舞台には上がって来ないんだけど。
トッププロ、だなんて持て囃されてても俺が調子に乗れないのはこういう人たちがいるからってのもあったりする。
宮永照。
元インハイチャンプにして、現トッププロ。
幼馴染の姉で、天然だけど頼れる先輩で、よく分からない人。
照「ん……京、ちゃん……」
京太郎「はいはい、京ちゃんはここにいますよ」
この人のこんな寝顔を見られる男は、世界広しと言えども俺だけだろう。
改めて色々と考えてみると、ちょっとした優越感に浸れるような気がした。
元インハイチャンプにして、現トッププロ。
幼馴染の姉で、天然だけど頼れる先輩で、よく分からない人。
照「ん……京、ちゃん……」
京太郎「はいはい、京ちゃんはここにいますよ」
この人のこんな寝顔を見られる男は、世界広しと言えども俺だけだろう。
改めて色々と考えてみると、ちょっとした優越感に浸れるような気がした。
――数日経ち、旅行最終日。
照さんの体調もすっかり良くなって、休日明けからの仕事も問題なさそうだ。
すっかりお世話になった女将さんに照さんと二人で頭を下げて、旅館を後にする。
「旅館の人たち、良い人ばかりでしたね」
「うん」
「今度、宣伝しちゃいましょうか。ラジオとかで」
「そうだね」
「……照さん?」
「大丈夫。ちゃんと聞いてるから」
考え事をしているのか、妙に歯切れが悪い。
買ったお饅頭を食べるペースも非常にゆっくりだ。
俺と同じように、照さんも色々と考えることがあるんだろうか。
……そうだ。
京太郎「照さん」
照「?」
京太郎「一つ、俺にもくださいよ。お饅頭」
照「……」
京太郎「……照、さん?」
-─===‐-ミ
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ト、.: .:|/⌒ 、_| | | | ト、`〉、|/
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京太郎「……たべっちゃったんですね、全部」
……案外。
何も、考えてないのかもしれない。
そうして、新幹線に乗って、変わり行く景色を眺めながら。
思い出とお土産を抱えて、東京に戻ってきた俺が最初に見たものは――
京太郎「嘘……だろ……?」
――火事になって燃え盛る、我が家の姿だった。
というわけで照ルート4話でした
今回はここで中断します
それでは、ありがとうございました
>>873
放火魔のことを咲ちゃんって言うのやめろよぉ!
放火魔のことを咲ちゃんって言うのやめろよぉ!
>>883
完全犯罪ってことですね(錯乱)
完全犯罪ってことですね(錯乱)
【はっぴーばーすでー】
長い髪の先をクルクルと指で弄くりながら、我らが牌のおねえさんこと――瑞原はやりが、ぽつりと口を開いた。
はやり「不思議だなーって思うんだよね」
誕生日祝い、ということで予約して二人で訪れたレストラン。
窓ガラスに反射して映るはやりの頬は、ほんのりと赤い。
その原因はアルコールだけではないのだろう。
はやり「昔は早く大人になりたいなー、なんて思ってたのに」
駄目な大人にはなりたくないけど、立派な大人の女性になりたい。
そう思って年齢を重ねて、成長して。
ある一定の年を越えたら『我らが牌のおねえさんも御年3×歳か』だなんて言われるようになって。
はやり「誕生日が、ちょっとだけ憂鬱な日になったと思ってたら」
いっしょに手を握って、誕生日を喜んでくれる人が、来てくれた。
はやり「だからね、今年の誕生日は、きっと」
――はやりの人生の中で、一番幸せな日なんだよねっ☆
【びふぉー】
『誕生日ケーキ、買って来たぞー!』
『パパ、ありがとー!!』
テレビから聞こえてくる、幸せな家族の風景。
その画面の前の私は一人ぼっち。
『今年も7月13日がやってきました』
『牌のお姉さんも今年で御年3×歳か……』
『はやりんは今年も17歳だろ! いい加減にしろ!!』
ネットで好き勝手に盛り上がる掲示板。
その画面の前の私は一人ぼっち。
はやり「はあぁぁ……」
結婚できないということを気にしていないと言えば嘘になるが、そこまで悲観しているわけでもない。
今の仕事は楽しいし、絶対に辞めたくない。
だが、こうもネタとして扱われたり、同期の友人たちが幸せな家庭を次々と築いていく姿を見るのは――中々、心にクるものがある。
はやり「いいもん……」
はやり「はやりにだって、まだお友達はいるし……」
すこやちゃんやはるえちゃんが送ってくれた祝いの品があるし、今日のお夕飯はとても豪勢――なのだけれども。
つい奮発して買ってしまった高級ワインは、一人で飲むには、少し量が多かった。
【あふたー】
はやり「大人になると、誕生日が特別な日じゃなくなるのは、きっと」
「隣でいっしょに祝ってくれる人がいないからなんだろうね」
はやり「はやりはもう、おばあちゃんだけど」
「こんなに、しわくちゃな手でも」
「キレイだねって、毎日褒めてくれる人がいるから」
はやり「子どもの頃よりも、今の方が」
はやり「ずっと、ずーっと、誕生日が待ち遠しいんだ☆」
ハッピーバースディはやりん
牌のおねえさんスレなのに牌のおねえさんの誕生日に投稿できなかったというこの体たらく
私生活の方も落ち着いてきたので照ルートも近いうちに投稿……できたらいいなぁ
牌のおねえさんスレなのに牌のおねえさんの誕生日に投稿できなかったというこの体たらく
私生活の方も落ち着いてきたので照ルートも近いうちに投稿……できたらいいなぁ
乙
ばーちゃんになっても若々しいはずのはやりんの手がしわしわってことは米寿(88年ぶり2回目)とかか
ばーちゃんになっても若々しいはずのはやりんの手がしわしわってことは米寿(88年ぶり2回目)とかか
【中学生未満】
家が火事になってしまい、途方に暮れていた俺に――
『なら、家に来ればいい』
『ご近所さんだし。仕事も今まで通りにできる』
『うん。それがいい』
――有難くかけられた照さんのお言葉によって、俺は照さんの家に一時的に住まわせて貰っている。
元々、照さんの家は一人で住むには少し広い家だった。
二人暮らしで増えた光熱費その他諸々についても、俺と照さんの場合は大した問題ではない。
照さんも家事は一通りできるし、俺も一人暮らしをしていた大学生時代にハギヨシさんに色々と教えてもらったので、生活面で足を引っ張りあうこともない。
お互い、付き合いも長いので信頼もある。
ただ一つ、この同棲生活に問題があるとすれば、
照「……京ちゃん? 大丈夫? 疲れてる?」
京太郎「あ、ああ、はい。大丈夫です」
つい、この人のことを、目で追ってしまうこだろう。
俺と照さんが出合ったのは高校1年生のインターハイの頃。
『……なに?』
『お願いです。あいつと、咲と会ってやってくれませんか』
咲と仲直りして、俺たちにぺこりと頭を下げる照さんの姿は、未だにハッキリと覚えている。
『妹が、お世話になりました』
その日から、今までの時間を埋めるように、咲と照さんは連絡を取り合うようになった。
休日にはわざわざ時間を作ってまで長野にまで来ることもあった。
『私がまた、咲と話せてるのは……君の、お陰だから』
『君が……咲を、麻雀部に連れてきてくれたんでしょ?』
『だから……ありがとう』
そして、俺も咲と一緒にちょくちょく面倒を見てもらった。
俺が高校3年の時にインターハイで上位の成績を取れたのは、照さんに度々指導してもらったお陰でもある。
『ここは、あえて安手でこう打った方がいい。そのほうが揺さぶりが大きいから』
親切に色々と教えてくれる先輩で、実の姉のように接してくることもあった。
『京ちゃん……うん、この呼び方はしっくり来る』
……だけど、今の俺の中での照さんは。
頼りになる先輩ともちょっと違うし、姉貴分というのもしっくりこない。
かといって友達というのもまた、違うような感じだ。
何だかんだで付き合いは長いけど――この前の旅行を通して、一緒に暮らすようになって、俺の中の照さんのイメージが、確かに変わった。
思えば、大学時代もこの人にはお世話になることが何度かあった。
そして、今。
照「……」
助手席に座って、携帯を操作している照さんの仕草の一つ一つを、つい目で追ってしまっている。
一緒に暮らすようになって、毎朝毎日、照さんと顔を合わせるようになって――正直、少しずつ、照さんに惹かれ始めている俺がいる。
照「京ちゃん? 信号、変わったよ」
京太郎「……はい。ありがとうございます」
……朝は、寝起きに不意打ちだったから驚きが勝ったけど。
今、あんな風に密着されたら――
京太郎「いやいや……」
照「?」
軽く頭を振って、照れる気持ちを誤魔化すように、アクセルを踏み込んだ。
車で訪れた先は、近所のスーパー。
切れた牛乳やら、その他諸々の生活用品やらを補充しにきたのである。
照さんとはご近所さん同士であったが、こうして二人で買い物に来るというのは、初めてかもしれない。
照「うん。前に買ったこの牛乳は美味しかったね」
京太郎「そうですね。ちょっと値はあがっちゃいますけど、こっちにしますか」
好みだったり、値段だっだりこうして二人で一緒にアレコレと買い物をするのは楽しい。
この光景は、まるで――
照「……」ヒョイヒョイ
京太郎「お菓子は没収です」
照「……!」
京太郎「そんな顔しても駄目ですよ」
――子どもと買い物に行く親だよなぁ、うん。
……いい人なんだけど、基本的に真面目な人なんだけど、少し天然さんで。
そこにお菓子が加わると、その天然っぷりは更に加速する。
京太郎「第一、家にまだまだストックあるじゃないですか。奈良で買ったのもまだ残ってるし」
照「それは別腹」
京太郎「まったくもう……」
何というか。
一瞬、変なことを妄想してしまった自分が恥ずかしい。
「あーっ!!」
京太郎「……ん?」
照「うん?」
照さんと二人で食品コーナーの棚を眺めていると、広いスーパーの中に響く大きな声。
何だ何だと振り向くと、喜色満面のオーラを全開にしてこちらへ駆け寄る一人の後輩。
この年になっても未だにリボンが似合う、度々中学生と間違われるその子は――
マホ「先輩!! お久しぶりですっ!!」
――夢乃マホ。
俺を慕ってくれている、あのアナウンサーにはリボンの子と紹介された後輩である。
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