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元スレ八幡「そして冬休みになった……」 雪乃「……」
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『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』8巻以降の話です。
ネタバレ有りです。
原作といろいろ違うでしょうがそこはスルーで……
SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1385465099
ネタバレ有りです。
原作といろいろ違うでしょうがそこはスルーで……
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「今日はもう終わりにしましょう」
いつものようにこう言って雪ノ下雪乃は本を閉じた。
本日の奉仕部もこれで店仕舞い、さっさと帰るとするか。
「おう、じゃあな」
「ゆきのん、ヒッキー、また明日」
「さようなら、由比ヶ浜さん、比企谷くん」
12月19日、終業式前日。
本格的に冬が到来した。
特別棟4階の廊下はひんやりとした冷気にすっかりと覆われてしまっていた。
底冷えする寒さに思わずブルッと身震いしてしまう。
冬至を目前に控え、灯りの点っていない廊下は薄暗い。
空には満月から数日たった下弦の月が登り始めていた。
廊下には教室のドアにある円形の覗き窓からわずかに月明かりが差し込む。
そして、うっすらとところどころを白く照らし出していた。
それは、とても頼りげがなく今にも消え入りそうなはかなさを持つ弱々しい灯りだった。
「ねー、ヒッキー……」
後ろを歩く由比ヶ浜が声をかけてきた。
「おう、なんだ」
振り返らずそう答えた。
話の詳細はわからないがなんとなく雰囲気で何の話題かわかってしまったからだ。
「先に言っておくけど、明日部活行けないから……」
含みのある口ぶりだ。
やっぱり、あの話題か。
「おう、わかった」
俺が聞いたところでどうにもならないが、話かけられた以上聞かないわけにはいかない。
ちょうどどこかの教室の前を通ったようだ。
まだ空に姿を現したばかりの月がわずかに照らし出す足元を探るように視線を落としたまま返答した。
「明日、優美子たちと2学期の打ち上げするんだ……」
「おう、そうか」
リア充は節目節目に何かと理由をつけはて打ち上げだとかパーティをしたがる。
たいそうご苦労なこった。
その点ぼっちは、誰にも余計な気遣いすることなく一人静かに好きなように過ごすことができる。
大枚叩いてまで他人に気を遣わねばならないリア充ってなんなんだろうね。
「ゆきのん、結局選挙の時からあんな調子のままだし。冬休みに入る前に何とかしたかったけど、
やっぱり無理だった……。明日は2学期最後の日だからゆきのんと一緒に過ごしたかったけど誘いを
断れなかったんだ。ヒッキーごめんね……」
「別にお前が謝ることじゃねーよ。俺だっていろいろ悪かったと思っているし、そんなこと考えて
いても仕方がない。だから気にすんな」
生徒会役員選挙に関する依頼で、奉仕部は崩壊寸前の状態に陥った。
一月ほど前のできことだ。
俺も雪ノ下も由比ヶ浜も三者三様の考え方を互いに譲ることも互いに歩み寄ることもできないまま、
バラバラに動き出してしまった。
このときは結局、依頼そのものをなかったことにする方法で一応は表面上の対立は解消した。
しかし、全てをうやむやにするそのやり方はとても円満な解決方法だったとはいえず、雪ノ下との間
に大きな禍根を残してしまった。
俺と由比ヶ浜は利害が一致したおかげで、なんとなく以前のような関係に戻ることができた。
だが、俺も由比ヶ浜も雪ノ下との間に生じた大きな溝を埋めることは未だできていない。
表面上は以前と同じように過ごしているものの欺瞞に満ちたうわべだけの関係でしかない。
とりわけ、俺と雪ノ下との溝は由比ヶ浜のものに比べて深くて大きい。
修学旅行の一件のほとぼりが冷めぬ間に起きてしまった生徒会役員選挙での一連の出来事がその
深刻さを決定的なものにしてしまった。
「ヒッキー、本当に心苦しいんだけど、ゆきのんのことお願いね……」
俺がお願いされたところでどうにもならない。
そんなことは、由比ヶ浜もわかっている。
俺と雪ノ下を2人きりにしてしまうことに罪悪感を感じているのだろう。
さっきも由比ヶ浜に言ったが、別にこいつが悪いわけではない。
玄関に着いた俺たちは、それぞれの方向に向かって別れた。
明日は終業式か。
そして、明後日からは冬休み。
楽しいことでも考えて気を紛らわせるとするか。
× × ×
ファー……。
ちょうど小説を読み終えた俺は2学期の疲れから解放されたという安堵感からか大きく伸びをした。
ふと窓に目を向けると空は真っ暗だ。
今日はまだ下弦の月は空に姿を現してはいない。
既に太陽はいずこかに消えてしまったが、窓の向こうは雲の無い穏やかな天気が広がっているようだ。
部室のある4階の窓からは、湾岸エリアのまばゆい光の向こうにポツリポツリと船の灯が点っている。
それらがいつもよりはっきりと見えている。
冬の空気が澄んだ日は寒い。
きっと今日も寒いんだろうな。
「もうそろそろ終わりにしないか」
窓辺で本に向かう雪ノ下に声をかけた。
「ええ、そうね。でも、私はもう少しで切りのいいところになるからそこまでは読んでいくわ。
だから、先に帰ってくれて構わないわ」
視線を動かすことなく雪ノ下はそう答えた。
せっかくの部長様のお言葉だ。
手早く身支度を整え、下校体勢に入った。
「じゃあな」
「さようなら」
これが、冬休み前── 今年最後に雪ノ下雪乃と交わした会話だった。
ここは「良いお年を──」と形式的にでも言うべきだったのかもしれない。
しかし、奉仕部の部室はもうこれ以上うわべだけの言葉なんて必要としていなかった。
この部室にはそれほどにまで欺瞞が満ち溢れてている。
そんな飽和状態の部室にこれ以上、余計なものを添加してしまおうものなら、嘘偽りで真っ黒く染まった結晶でも
生じてしまいそうだ。
雪ノ下は俺を見送ることもなく、俺は俺で振り返ることなく後ろ手でドアを閉めて一年の最後の別れをした。
人気のない特別棟の廊下は今年一番の冷え込みだった。
思わず「さぶっ!」と独り言が出てしまう。
何度も何度も寒さに身震いしながら、暗く長い廊下を歩いていった。
外に出ると一段と冷え込んでいた。
その冷え込みと引き換えに空気は澄んでおり、頭上にはいつもより多く星が瞬いていた。。
しかし、それらをまじまじと見つめるつもりはない。
じきに月が悠然と空を登ってくることだろう。
満月を過ぎたとはいえ、まだまだ月は誇るようにその明るさを保っている。
そんな月が現れるや否や、急に存在感が薄れてしまう星たちの輝きが偽りのものに思えたからだ。
自転車にまたがると迷うことなく校門へと向かった。
明日からはしばらくの間学校がない。
誰にも会うこともなく誰にも咎められることもなく自分一人だけの自由な時間を味わいたい。
そんなことを考えながら校門を抜け出すと俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「比企谷……」
確かにそう呼んでいた。
これは空耳だと無かったことにしたかったが、無理だった。。
暗闇の中にも拘わらずバッチリと目と目が合ってしまったのだ。
さすがにこれは無視するわけにはいかない。
一度は通り過ぎてしまったものの声の主のもとへと戻った。
そこには中学の同級生の折本かおりがいた。
× × ×
「比企谷、こないだはゴメン」
「別に謝られることなんかねーよ。それよか、葉山なら知らねーぞ。俺はあいつのこと嫌いだし」
何だってこんなところに居やがるんだ。
また葉山との間を取り持ってくれだとかは勘弁願いたい。
「……。いや、そうじゃないんだ。こないだのことをちゃんと謝りたくて……」
クシュン!
くしゃみをした折本が話題を変えた。
「ところで比企谷、部活やってんの?」
「ああ」
「だから、こんな遅くまで学校に居たんだ」
比企谷のくせにこんな時間まで待たせやがってと文句を言いたいのだろうか。
それにしても、こいつは一体いつから校門の前で待ってたんだ。
こんなことされたら、こいつをこのまま置いて立ち去れなくなるだろ。
「はー……。何の用だが知らないが、いつまでもこんなところに居たら風邪ひくぞ。だから場所替えるけどいいか?」
やっと2学期が終わったと思ったら、最後の最後にまた厄介ごとが一つできてしまった。
それよりもさっさとここから移動した方が良さそうだ。
こうしているうちに雪ノ下がやってくるかもしれない。
この間の葉山の時とのこともある。
あの時、雪ノ下は一体誰を咎めていたのか、一体何を咎めていたのか知らない。
だが、あんな目で睨まれるのはもう御免だ。
これ以上、事を厄介なものにするのはもう御免だ。
「駅の近くの喫茶店でいいか?」
「そこでいいよ」
俺は自転車を降りると押しながら駅の方向に向かった。
折本は無言で俺の跡をついてきた。
どうやら今日はこの冬一番の寒さだ。
顔にまとわりつく潮風がいつもより一段と冷たく感じられた。
× × ×
「店の中ってやっぱあったかいねー」
「ああ、そうだな」
窓に面したカウンター席に並びながらコーヒーを啜る。
俺としてはこいつと話すことなど何もないが、校門の前で長時間待たせてしまっていたのだから仕方がない。
ここは割り切ることにした。
とにかく俺から話すことはない。
しばしの沈黙が訪れた。
コーヒーの湯気が消えかかった頃、折本が口を開いた。
「比企谷、こないだは気分を害することをしてゴメン」
「別に気にしてねーよ」
「でも、葉山君があんなに怒っていたし」
葉山が怒ったから謝るだと。
こいつは上位カーストの人間である葉山が怒ったという事象にのみ理由を求めているではないか。
葉山という存在を権威づけしていなければそこに謝る理由はないと言っているようなものだ。
結局、俺のような下位カーストの人間をゴミ扱いしているほかならない。
こいつは何もわかっていない。
こんなのは謝罪と言わない。
表立った悪意がなくとも潜在的な悪意を含んでいるといってもいいだろう。
言った本人がわかっていないのだからなおさら性質が悪い。
たちまち心の底から不愉快になった。
今にも心ない言葉をぶつけてしまいそうだ。
ぐっとこらえようとカップの中のコーヒーを一気に流し込む。
その苦味にむせてしまいそうだ。
「あらー、比企谷くん、奇遇ねー」
甘ったるい鼻に着いた声が聞こえてきた。
振り返りたくなかったが、仕方なくその方向に顔だけは向けた。
もうわかりきったことではあったが、目の前に現れたのは雪ノ下陽乃だった。
「比企谷くん、雪乃ちゃんほっぽりだしてその子とデートなの? それに浮気だとはお姉さん感心しないなぁ」
「違います。デートじゃありません。それに雪ノ下とも付き合っていません」
思わず語気を荒げてしまった。
「やだなー、比企谷くん。そんな怖い顔をしなくたって」
ただの冗談じゃないのなんて顔をしてこう切り返してきた。
相変わらず喰えない人だ。
むやみに肉体的接触をしてこようものなら、今日という今日はキレてしまいそうだ。
どういうわけか今日の俺は冷静じゃない。
あからさまに怒りをむき出した表情を見せてしまった。
「フフフ。怒った顔もなかな素敵じゃない。だって怒ったときは目が腐っていないんだもん」
売り言葉に買い言葉か。
あからさまに挑発してくる。
雪ノ下陽乃は不敵かつ好戦的な笑みを見せている。
彼女の目は笑っていない。
自分の妹よりも冷たい冷気を放つ鋭い眼光だ。
ひょっとしたら、俺もとうとうこの人を敵に回してしまったのかもしれない。
もしそうであれば、葉山の言うようにこれから徹底的に潰しにかかってくるのだろう。
ならばその時は俺も徹底抗戦あるのみだ。
20歳にもなりながら高校生に刃を向けてくるようなガキにも劣る大人にいいようにされてたまるものか。
自然とさらに強い怒気をこめた表情になっているのが自分でもわかった。
「あら怖いわね、比企谷くん。残念ながら今日は待ち合わせしているからもうキミのお相手はもうできないの……」
氷のような笑みを浮かべ、それ以上に冷淡な口調で話した彼女は、ここまで言うと急に視線をずらした。
そして、その先をしっかりと捉えてこう続けた。
「── ねっ、雪乃ちゃん?」
「!!」
自分でも驚くくらいの速さで体を反転させると目の前に雪ノ下雪乃が立っていた。
雪ノ下は苛烈な眼差しで俺を見ていた。
「雪乃ちゃん、比企谷くんたちのデートを邪魔しちゃ悪いから、さぁ行きましょ」
雪ノ下はそう言い放つ姉にさらに強い不快感をぶつけるような眼差しを差し向ける。
しかし、それはほんの一瞬のことで、急に身を翻したと思うと足早に立ち去って行った。
「あらぁ、比企谷くん。雪乃ちゃんのこと追いかけなくていいのかなぁ。雪乃ちゃんが冬休みに家に帰って
くるなんて急に言い出すものだから、なんかあったのかなと心配に思ってさっきメールしてみたんだー」
雪ノ下陽乃は悪びれずにこう言った。
意地悪を通り越して悪意の塊にしか見えない下卑た笑みを浮かべながら。
「それに、めぐりに聞いてみたら雪乃ちゃん選挙に出ようとしていたんじゃない?」
雪ノ下陽乃の表情はもはや腹黒さを隠そうともせず、醜悪なものだった。
「どうやら今の反応から見るに比企谷くんが雪乃ちゃんを潰しちゃったようね。あら、雪乃ちゃんを追いかけ
なきゃ。バイバーイ」
最後にかけられた言葉は悪意そのものだった。
しかし、彼女の言葉は何一つ間違っていない。
それは全てれっきとした事実だ。
俺の心の中にとんだ置き土産をしてくれたもんだ。
「ひ、比企谷……」
折本かおりの顔からはすっかりと血の気が引いて蒼白になっていた。
「……あの子のこと追わなくていいの? わ、私のせいで……、私のせいで本当にごめんなさい」
今のこの謝罪には悪意は全く感じられなかった。
むしろ本心とみて間違いないだろう。
しかし、それは恐怖による外発的動機付けがそうせたものだ。
そんなものに意味はないし、俺自身意味を求めてはいなかった。
折本はただただ怯えていた。
一番の被害者は雪ノ下姉妹とは全く無関係な折本だろう。
「俺の方こそ、変なことに巻き込んでしまって悪かった」
さっきは折本の言動に腹を立ててしまった。
しかし、それ以上にこいつに嫌な思いをさせてしまったのだ。
今は自分が立腹してしまったことを恥じている。
こいつとはもう二度と顔を合わすこともないだろう。
だが、こいつは俺のことを思い出すたびにこうしてトラウマとして蘇ってくるに違いない。
「私、帰るね。比企谷、さようなら」
「ああ、じゃあな」
コーヒーをもう一杯飲んでから店を出た。
もちろん、そこには雪ノ下姉妹と折本の姿はない。
別に誰かが待っていることを期待していたわけではない。
ついこんなことを考えてしまったのは、いつの間にか姿を見せていた下弦の月が目に入ってしまったからだ。
右半分が抉られながらも無理に球形に見せようとしているいびつな姿の月にゾッとしたのだ。
それはあたかも俺とその周囲の人間関係のようだった。
そして、それは満月のように輝くリア充でありながら、いびつな人格形成がなされている雪ノ下陽乃の姿ともぴったり重なった。
海からの寒風が目を覚まさせるように吹きつけてきた。
ズキン……。
頭が痛い。
この夜、どこでもらったのかさっぱり身に覚えのないインフルエンザを発症した。
40度を超える高熱の中、幾度も幾度もこの夜の出来事から派生した幻覚にうなされることになった。
× × ×
冬休みも残すところあと3日となった。
終業式の晩に大きなうねりがあったが、それ以降は波穏やかに過ごしている。
強いてあげれば、その晩と次の日に由比ヶ浜からメールが来ていたことだろうか。
インフルエンザに苛まれていた俺は、さらに一日遅れで罹患している旨を返信した。
熱が下がってから3日間は出歩けない。
それきりクリスマスの誘いのメールもぴったり止んだ。
あとは、小町と大晦日の晩に除夜の鐘を突きに行った。
そして、ついでにそのまま初詣に行ってきたことくらいだろうか。
家を出てから由比ヶ浜から初詣の誘いのメールが届いていたが、人ごみの中で気づくことはなかった。
帰宅するとすぐに布団に潜っていたので、夕方まで放置した形になった。
それにしても由比ヶ浜はやたらとイベント好きだ。
さすがはリア充といったところか。
ことごとくイベントを避けているぼっちのことをちっともわかっていない。
こいつは将来、イベント企画会社にでも就職すればいい。
そういえば、まだあったな。
今年は何とこの俺に年賀状が届いたのだ。
一体何年振りだろう。
相手は平塚先生だ。
面倒だったので無視しようと思ったが、自分の命はどうしても惜しい。
だって、人の命は地球よりも重いって言うんだぜ。
仕方ないから小町から一枚ハガキを貰って返信した。
冬休みに入ってからあったことといえばそんなところだ。
そして、今日は材木座に誘われて明日までの2日間の短期のアルバイトをしている。
材木座の紹介だから胡散臭さを感じたが、これはがなかなか良いバイトだ。
春からは週に1、2回放課後に予備校に通おうと思っている。
数学の成績が壊滅的な俺はいくら文系教科の成績が良いとはいえスカラシップを取る望みは薄い。
親に言えば金くらい出して貰えそうだが、小町の高校進学と時期が重なってしまう。
一時的な出費とはいえ、決して少ない額ではないので予備校に安泰に通えるかどうかはわからない。
だからこうして、貯蓄しようと考えたのだ。
「時に八幡よ、その後の奉仕部はうまくいっているのか?」
バイトの休憩中に材木座が尋ねてきた。
「そのことだがバイト上がったら聞いてもらえないか?」
「うむ……。合点承知した」
材木座には奉仕部がうまくいっていないことが伝わったようだ。
「悪いな。時間をとらせてしまって」
「何を言う八幡! 我とうぬの間柄ではないか」
材木座はノータイムで答えた。
話し方がいちいちキモいがこいつはいつも俺の頼みごとを嫌な顔一つせずに聞いてくれる。
選挙の時もこいつにはかなり世話になった。
だからこいつには奉仕部のその後について聞く権利がある。
いや、俺が聞いて欲しいだけなんだが。
藁にも縋る思いで材木座に相談に乗ってもらうことにした。
× × ×
「ふむ。話の流れは相分かった」
バイトを終えた俺と材木座はサイゼでテーブルを挟んで向かい合っている。
ちょうど事の顛末を話し終えたところだ。
相変わらず暑苦しいしゃべり方をする奴だか、俺の話を真剣に聞いてくれる。
だからこれくらいは目をつぶらないといけないな。
「ところで八幡……」
材木座の声が急に拍子抜けしたものになった。
「何だ材木座?」
「あの……、これってそんな複雑なことですか……?」
材木座には理解しがたい内容だっのだろうか。
困惑の表情を浮かべた材木座はすっかり素の話し方になっていた。
「へっ?」
俺も釣られて困惑してしまった。
一体どういうこと?
「言いにくいのだが、これってうぬら2人に拗ねただけじゃないの……?」
「へっ?」
俺はますますわからなくなって上ずった声で訊き返してしまった。
「……つまり、雪ノ下は俺と由比ヶ浜に拗ねているってことか?」
「そうだ。考えてみるがよい、八幡よ。うぬはツイッターのプリントアウトを見せた時、何と言われた?」
記憶の糸を手繰り寄せるまでもなく雪ノ下の言葉はすぐに出てきた。
何度も頭の中でプレイバックしていたので、暗唱できるまでだ。
「ああ、確か……『わかっていたものだとばかり、思っていたのね……』だったな」
しかし、スラスラと言えてしまうことに何か引っかかるものを感じてしまった。
一生懸命思い出しているフリをしながら答える。
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