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    元スレ苗木「ゲームをしようよ。闇のゲームをね……」

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    451 :

    スーダン2のネタバレがあります。
    未プレイの方でここまで読んだ人はいないと思いたいけど、いるならブラウザバックで。


    では、投下します。

    452 = 451 :


    -シ〃ヵ冫フ乂ィ-


    十神「記憶と意識だけを……過去に?」

    苗木「ちょ、ちょっと待ってよ……キミは誰?」

    『…………えーっと……ここで説明してもいいんだけど、"ある場所"に来てもらえるかな?』

    霧切「"ある場所"?」

    『……うん、そこなら……もっとちゃんとした説明ができるから』

    十神「……それはどこだ?」

    『…………えっと、2つ目の島に"遺跡"みたいな場所があったでしょ?』

    苗木「遺跡?」

    十神「希望ヶ峰学園にそっくりな建物の事か?」

    『うんうん、それそれ。そこで待ってるから…………』

    苗木「待ってよ。そこはパスワードがないと入れないって、さっき十神クンが……」

    『…………あー、そうだったっけ。うん。パスワードだね』

    『パスワードは……"11037"……だと思うよ?』

    十神「なんで疑問形なんだ……まあいい。そこへ行けばいいんだな?」

    『うん……待ってるから。けど、なるべく急いでね…………』

    『もう、この世界はそう長くは持たないかラ……』

    意味深な言葉を残して、謎の声は消える。
    苗木達は、すぐさま4つ目の島を後にした。

    453 = 451 :


    そして、走ること数分。

    苗木「……ここが……"遺跡"」

    霧切「確かに……希望ヶ峰学園にそっくりね」

    十神「ああ。行くぞ……時間がないらしいしな」

    三人は、扉の前に立つ。

    苗木「"11037"、だっけ……どういう意味があるんだろう?」

    十神「さあな、パスロックをかけた奴に聞け。もっとも……生きていればの話だが」

    パネルに数字を入力していく。慎重に、だが手早く。
    そして、轟音とともに……扉は開く。

    現実の希望ヶ峰学園の扉も、このパスワードで開けばいいのにな、と苗木は密かに思うが、口にはしなかった。

    霧切「行きましょう。真実は……この中にあるわ」

    苗木「うん! 行こう!」

    開かれた扉をくぐる苗木達。
    中は暗く、何も見えない……かと思われた。

    だが、彼らが中へと入った途端、明かりがついたのか、建物の中が明瞭になる。

    霧切「ここは……裁判場?」

    そこは、証言台のようなものが、円を描くように配置された、広場のようだった。

    「待ってたよ……」

    先程と同じ、ふわっとした感じの女性の声だ。
    声の主は、苗木達の目の前に立っていた。

    年格好は苗木達と同じくらい、制服に可愛らしいリュックサックを背負った少女だった。

    苗木「キミは……?」

    「…………私は……七海千秋。この世界ノ……"管理者"だよ」

    454 = 451 :


    十神「"管理者"?」

    七海「うん。…………"千年パズル"の……正確ニは"超小型思考制御式タイムリープマシン"のね」

    苗木「タイムリープ……マシン?」

    霧切「やっぱり……それじゃ狛枝君は……」

    七海「うん。彼は未来からやっテ来たんだよ。正確には、彼の記憶と意識のコピー、だケどね」

    十神「コピー?」

    七海「そう。人間の肉体をそノまま過去に送れるほど高性能なタイムマシンは……作れなかったから」

    そうして、七海千秋と名乗った少女は、苗木達に説明をしていく。

    彼女の説明によれば、全ての事の始まりは、こうだ。

    希望ヶ峰学園を舞台としたコロシアイ学園生活が、苗木達6人の勝利で終結した数年後、
    彼らは未来機関と呼ばれる、反"絶望"を掲げる組織の一員となった。

    そして、彼らは未来機関で活動する中で、ある集団を保護する。
    ……狛枝凪斗を含む15人の"超高校級の絶望"の残党、希望ヶ峰学園第77期生である。
    彼らは、江ノ島盾子から強い影響を受け、"絶望"に堕ちてしまっていたのだ。
    苗木達が未来機関から受けた指示は、彼らの抹殺。
    一度"絶望"となってしまったものは、危険因子として世界から排除されるべきだというのだ。

    もちろん、それに反対した苗木達は、彼らを現実世界のジャバウォック島に連れてきた。
    そこで、彼らをあるプログラムにかけるために。
    『新世界プログラム』……未来機関が開発した、"絶望"に堕ちた人間を元に戻すプログラムだ。
    強制的に記憶を上書きするという、ハイリスクな方法ではあったが、苗木達にはこれしか方法がなかった。
    しかし、いざ狛枝達をプログラムにかけた時、予想外の事態が起きた。

    なんと、死んだはずの江ノ島盾子は、実は生前に自身のAI……通称"江ノ島アルターエゴ"を作成し、それを日向創ことカムクライズルに持たせていたのだ。
    ウィルスとして『新世界プログラム』の世界に侵入した"江ノ島アルターエゴ"は、狛枝達にコロシアイ修学旅行を強要した。
    江ノ島の目的は、生きた人間である"絶望の残党"の身体を乗っ取り、彼らを通して現実世界に再び絶望をバラまく事。
    だが、『新世界プログラム』の管理者である七海とウサミ、命がけで救助にやってきた未来機関の苗木、霧切、十神、
    そして、覚醒した日向創によって再び江ノ島盾子の計画は阻止される。

    こうして、再び世界の危機は回避された。
    プログラム世界から脱出した日向達は、苗木達と共に行動をともにすることを提案されるが、島に残る事を決意した。
    プログラムの世界といえど、脳が自らの死を認識すれば、それは現実世界での死に限りなく近い。
    植物人間状態となったコロシアイ修学旅行の犠牲者……第77期生の仲間達が目覚めるのを、日向達は島に残り待つことにしたのだ。
    ……"奇跡"が起きるのを。

    455 = 451 :


    十神「なるほどな……そんな事が……」

    苗木「…………それで、狛枝君達はどうなったの?」

    七海「うん。そレでね……結論から言うと、"奇跡"は起きたんだ」

    "奇跡"という言葉に、苗木達は嬉しさを隠せない。
    たとえ……未来の出来事でも。
    だが、七海はこの話には続きがあると言う。

    七海「けど……日向君達が、ジャバウぉック島で過ごしている間に、また世界に異変が起きてたんだ」

    いったいどんな方法を使ったのか、なぜそんな事になったのか。
    それは、ジャバウォック島という外界からは隔離された場所にいた彼らには、わからない。
    だが、狛枝達が目を覚ますという"奇跡"が起きたその時、世界は再び"絶望"に見舞われる"不運"が起きていた。
    そして、世界に残された"希望"は……彼らだけとなってしまった。

    苗木「そんな……未来機関は……」

    七海「島にいた日向君達には、何が起こッたのかは分からなかったみたいだよ」

    七海「もチろん、バックアップデータから復元してもラった私も……」

    十神「…………俺達も、やられたというのか?」

    七海「…………多分。連絡が途絶えタだけだから、まだどこかで生きてるかモしれない、日向君はそう言っテたけど……」

    苗木や十神、霧切にとっては……決して、信じたくない話だった。
    未来で自分達が"絶望"に敗北するなど、思いたくはなかった。
    けれど、霧切は冷静に七海の話を理解しようとする。

    霧切「……狛枝君が、こうして過去の世界に来た。それは曲げようのない事実……だったら、その話も信じるしかないわ」

    霧切「信じたくはないけれど……」

    456 = 451 :


    文字通りの"絶望"的な未来に、押し黙る苗木達。

    苗木「…………」

    七海「ごめんね……」

    十神「お前が謝る必要はない。……それから、どうなったんだ?」

    残された日向達は、考えた。
    どうすれば、世界を元通りにすることが、未来を"創"っていくことができるのか、と。
    "超高校級の才能"を持つ彼らに、何ができるのか、を。
    そして、導き出された結論が……

    霧切「タイムリープマシンを使い、過去を変える……」

    七海「うん。"超高校級のメカニック"である左右田君が、マシンのほとんドは作ってくれたんだけど……」

    だが、タイムマシンの完成が間近に迫った時、島を再び"絶望"が襲った。
    ゆっくりではあるものの、ジャバウォック島にもその魔の手は忍び寄っていたのだ。

    七海「本当は、ちャんと全部完成してから、日向君が過去に行くハずだったんだけど……」

    その日向創も……"絶望"に殺されてしまい、"幸運"にも狛枝だけが、生き残ってしまったのだ。
    だからこそ、彼が過去を変えるという大役を引き受けた……いや、引き受けざるを得なかった。
    そして、未完成のタイムリープマシンだったからこそ……
    時を遡る最中にパズルはバラバラに砕け、"現在"の狛枝凪斗の手には渡らず、彼の記憶すら正確には送ることができなかった。

    ……最終的には、"幸運"な事に苗木の元に渡ったのだが。

    苗木「それをボクが……完成させたから」

    七海「苗木君には、本当に悪い事をした……ト思うよ。本来なら狛枝君の肉体に、狛枝君の意識と記憶を載せルはずだったのが……こんな事になってしまって」

    苗木「いや、いいんだ。狛枝君が来てくれなかったら、今のボク達はないんだし」

    459 = 451 :




    "うん……でも使えるのは……狛枝君だけ"

    "だから……彼を説得して……"


    "お願い"



    "未来を……変えて"












    ――強制シャットダウン。




     

    460 = 451 :



    ―NOON TIME―


    「へぇ……これがモノクマの言ってた赤い扉か」

    「『せっかくだから俺はこの赤の扉を選ぶぜ』……ゲーマーの彼女がこの場にいたら、そう言うのかな」

    戦刃「……彼女?」

    「いや、こっちの話さ……」

    「それじゃ、行こうか。"絶望"を殺しに」

    赤い扉を両手で開こうとした狛枝。
    そこに、"仲間"が駆けつける。

    朝日奈「苗木ッ……!」

    "超高校級のスイマー"・朝日奈葵と……

    大神「間に合ったか……!」

    "超高校級の格闘家"・大神さくらだった。

    「おや、見送りかい? ボクなんかの為に、勿体無いよ……」

    どこまでもネガティブな応対に、朝日奈と大神はすぐに彼が苗木ではない事を確信する。

    大神「……狛枝か?」

    「……そうだけど?」

    朝日奈「変な放送がしたから急いで来たんだよ! これって絶対罠だよ、行かない方がいいよ!」

    「罠である事は……百も承知さ。けどボクは……行かないと」

    「こんな茶番はもう……誰かが終わらせるべきなんだよ!」

    狛枝の覇気の篭った声に、二人はたじろぐ。

    461 :

    わぁぁぁぁぁあ!
    わたしたち一つに繋がってるのね!!夢じゃないのね!!
    苗木クンの吐息が首筋にぃ!!たまらないわぁぁぁあ!!
    あっあっあぁぁあっー!!駄目よぉぉぉ!!そんなに激しくしないでぇぇぇ!
    やぁぁぁん!!おっ、奥に当たってるぅぅ!!うふんっ!!あひんっ!!
    擦れてるぅぅぅ!!苗木クンのが擦れてるぅぅぅーーぅう!!
    あはぁぁあんぅっ!!あたしぃ…!!もう頭がおかしくなりそうよぉぉ…!!
    もっと突いてぇ苗木クン!!あたしをもっと!!もっと壊してぇ!!
    あっあっあぁぁあぁっー!!もうだめぇぇええぇぇ!!ひゃあぁぁああ!!
    あらっっ…!!ちょっとぉぉ…!!今ドクンドクンってなったわよぉぉ……!!
    もし赤ちゃんデキちゃったら……どうするのよぉぉ……んもぉ!!
    しょうがないわねぇ……責任だけはちゃんと取ってよね……ひゃあぁ!!
    あひゃう!!んくぅっ!?再開しちゃうのぉぉ!?うあぁぁぁーーぁあ!!
    ひゃああぁぁぁ!また膣内で苗木クンの特濃ミルクぴゅっぴゅしてるぅぅぅ!!
    あはっ、ぬふ、ぬは、ぬほぉぉ!しゅごいぃぃぃ!妊娠確実よぉぉぉーーっ!!
    好きよ!好きよぉ!心の底から愛してるわ苗木クうぅぅぅぅぅうン!!!!!!

    462 = 451 :


    大神「お主……まさか死ぬ気か?」

    「…………だったらどうする?」

    朝日奈「止めるよ! 力づくでも!」

    「やれやれ……ボクが"超高校級の希望"になるのが、そんなに気に入らないのかい?」

    大神「……何を言っている?」

    「それはこっちの台詞だよ。ボクは……今から黒幕と勝負する。文字通り命がけの"ゲーム"でね」

    「そして、ボクが勝てば……黒幕は死に、キミ達はここから開放される。ボクが負けてもボクが勝手に死ぬだけだから、キミ達には何のリスクもないんだよ」

    「もちろん……負けるつもりなんて微塵もないけどね」

    朝日奈「そんな……そんな言い方ってないじゃん!」

    朝日奈「私達、仲間でしょ! 友達じゃん! 勝手に死ぬなんて、許さないんだから!」

    「"仲間"か……ボクなんかには勿体無い言葉だよ。ボクには……キミ達の"仲間"を名乗る資格なんて、ない」

    「だからこそ……ボクはなるんだ。"超高校級の希望"に。そうすれば……胸を張って、キミ達の仲間だと言えるようになるからさ!」

    「その為に行くんだよ……!」

    大神「………お主………」

    朝日奈「……わかんないよ。狛枝が何を言ってるのか」

    「わからないんだったら……わからないまま、終わればいいよ……知らない方が、幸せな事だって世の中には山ほどある」

    「けど、これ以上邪魔するなら……」

    そこまで言って狛枝の言葉は、さらなる来訪者に遮られる。

    463 = 451 :


    「待てやコラァ!!」

    石丸「待つんだ、苗木君!!」

    不二咲「ま、待ってよぉ……」

    邪魔をされ、ため息をつく狛枝。

    「やれやれ……次はキミ達か。止めないでよ」

    「……俺はとやかく止める気はねえよ。ただ、"活"を入れに来ただけだ。それがダチってもんだろ?」

    朝日奈「ッ! あんた、何言ってんのさ! 死ぬかもしれないんだよ!?」

    石丸「そうだぞ! たとえ"学園長"の呼び出しであっても、いたずらに命を危険に晒す事はこの僕が許さない!」

    不二咲「そうだよぉ……苗木君が……し、死んじゃったらどうするのさぁ……」

    「……兄弟、不二咲、これは"漢"の約束なんだ。"漢"にはよ……たとえ命を賭けてでも、やり遂げなきゃならねえ事があるのさ」

    「し、しかし……」「で、でもぉ……」

    「行かせてやってくれ。今が、"その時"なんだろ……苗木よぉ?」

    「……大和田クン」

    「だが、犬死だけは許さねーぞ。もし負けて死にやがったら、俺がブッ殺す!」

    「あはは……相変わらず厳しいね。大和田クンは」

    「大丈夫さ……負けるつもりなんて、さらさらないよ」

    「その意気だぜ! よし、チャッチャと行ってこい! そして、黒幕のヤローをブッ潰してこい!」

    石丸「そういう事なら……僕も全力で応援しよう! 苗木君! 必ずや勝利するのだぞ!」

    不二咲「苗木君……負けないでね! 絶対だよ!」

    朝日奈「あんた達……」

    セレス「……苗木君なら、大丈夫ですわ」

    次にやって来たのは、セレスと山田、そして葉隠だ。

    464 = 451 :


    セレス「苗木君が"ゲーム"で負けるなど……ありえませんわ」

    山田「ええ。苗木誠殿は……"超高校級の幸運"。加えて"スキル:主人公補正S+"ならば、向かうところ敵なしでしょうなー!」

    葉隠「おう! 俺の占いでも苗木っちが勝つって出てるべ! 間違いないべ!」

    朝日奈「それって……7割負けるって事じゃん!」

    「セレスさん……山田クン……葉隠クン……」

    セレス「それに、命を賭けた一世一代の勝負を邪魔するなんて野暮な真似は、美しくありませんわよ?」

    朝日奈「けどさ……セレスちゃん」

    セレス「ガタガタ抜かしてんじゃねーぞビチグソがッ! いいから黙って見送りやがれですわよッ!」

    朝日奈「ひっ……」

    葉隠「セレスっち……怖いべ……」

    セレス「……あら、これは失礼。ですが、お忘れなく。苗木君、貴方を"ゲーム"で倒すのはこのわたくし、セレスティア・ルーデンベルクですわ」

    セレス「その時までは、ほかの誰かに負けるなど、許しませんわよ?」

    「ふふふ……それは楽しみだね。けど、ボクに勝てるかな?」

    セレス「勝ちますわ……次は、必ず!」

    「……そうかい。ふふふ、ますます負けるわけにはいかなくなったね……」

    朝日奈「苗木……」

    「そういうことさ。朝日奈さん。……ボクは、負けないよ。だから、信じて待っててほしい」

    朝日奈「……わかったよ。けど、絶対負けないで! 負けたら許さないんだから!」

    「大丈夫さ……みんなはこんなにも"希望"に溢れているんだもん……」

    「……ボクは……勝つよ。それに……ボクがもし負けても……キミ達なら……」

    そう言い残すと、狛枝は扉をくぐる。

    465 = 451 :


    戦刃も、その後を追う。

    大神「江ノ島……?」

    「ああ、"江ノ島"さん、いや、戦刃さんには全てを見届けてもらう事にしたから……」

    石丸「戦刃さん? 誰だねそれは?」

    石丸の疑問に、狛枝は背中で答える。

    「説明は……十神クンか霧切さんにでも頼んでよ。きっと知ってるから」

    「それじゃ。また――」

    そして、扉の奥へと狛枝は消えていく。手を振りながら。

    「お、おい!」

    大和田が追いかけようとするが、突然扉が閉まる。

    「クソッ、ロックされたぞ……どういう事だよ……?」

    大神「十神か霧切に聞け……と言っていたが」

    山田「そういえば、あの二人と、桑田怜恩殿と舞園さやか殿がおりませんな……」

    葉隠「腐川っちもだべ!」

    と噂をすると……

    ジェノ「呼ばれて飛び出てジャジャッジャーン!!まーくんの応援に上がりましたァー!」

    朝日奈「…………腐川ちゃん?」

    ジェノ「ありゃ、もしかしてアタシ……出遅れちゃった系?」

    「つかオメー……誰だよ?」

    466 = 451 :





    霧切響子は意識を取り戻した。
    ようやく、閉じ込められた狛枝凪斗の"記憶の部屋"から脱する事ができたのだ。

    霧切「ここは……」

    その疑問に答えたのは、舞園さやかだった。

    舞園「苗木君の部屋ですよ」

    霧切「……舞園さん。いつからここに?」

    舞園「ついさっきです。苗木君達がいないって、桑田君が気付いて、一緒に探してたんですよ」

    そう言うと、桑田怜恩も横から声をかける。

    桑田「ええ、見つかったものの、二人とも意識がないから心配したッス」

    霧切「そう……苗木君は?」

    苗木の身体を借りた、狛枝凪斗の凶行を阻止しなければならない。
    そう考えた霧切は行方を尋ねる。
    先に目を覚ましていた十神白夜がそれに答える。

    十神「奴なら、もうここにはいないぞ」

    霧切「十神君……」

    十神「二人からだいたいの事情は聞いたし、説明もしておいた。お前が眠っている間にな」

    舞園「ええ……苗木君に、狛枝君という人の人格が入り込んでるって話ですよね」

    桑田「正直、マユツバもんだと思ったけど……あの豹変ぶりなら、納得ッス」

    467 = 451 :


    霧切「それで、彼は今はどこに?」

    十神「どうやら一足先に向かったらしい。1階奥の赤い扉、そこに呼び出されてな」

    淡々と答える十神に、霧切は苛立ちながら立ち上がる。

    霧切「……! こんなところでのんびりしてる場合じゃないじゃない!」

    そう言うと霧切は部屋を飛び出していた。
    後を追う、十神。走りながら、彼は言う。

    十神「……ハァ……意識のない……お前を……ハァ……部屋に放置するのは……危険だと判断した。……ハァ……仕方ないだろう」

    霧切「……それなら、ハァ……いえ、それでも……ハァ……私より、狛枝君を……ハァ……止めるべきだったわ!」

    十神「それは……ハァ……余計なお世話だったな……ッ!」

    息を荒げながら、扉の前に到着する二人。
    けれど、そこに苗木誠の姿はなかった。
    いたのは、他の"超高校級"の高校生達だけだ。
    落胆する二人に、朝日奈が声をかける。

    朝日奈「あ、十神! 霧切ちゃんも!」

    十神「……クソ、やはり遅かったか」

    霧切「苗木君は?」

    「この扉の中さ……江ノ島もだ」

    十神「江ノ島……いや、姉の戦刃むくろの方か……」

    「それだよそれ、戦刃って誰だよ? 苗木がお前らに聞けっつーからよ……」

    遅れて舞園と桑田も到着する。

    舞園「今は……説明してる場合じゃないんです。苗木君が……危ないんです!」

    石丸「危ないといっても……扉が開かないのだ」

    大神「我の拳を以てしても……開かんとは……」

    十神「マズいな……どうする?」

    霧切「私に一つ、考えがあるわ」

    霧切響子が、口を開く。
    "超高校級のプログラマー"・不二咲千尋の方を向きながら。

    468 = 451 :



    二人を乗せたエレベーターは降りていく。
    ごうん、ごうん、とうるさく音を立てながら。

    「……前々から思ってたんだけどさ……このエレベーターは悪趣味にもほどがあるよ」

    「"絶望"的にセンスがないね」

    狛枝凪斗は、かつてこれと似た昇降機に乗った時の事を思い出していた。
    弱者を吊るし、正義を騙る、究極の自己正当化ゲーム……"学級裁判"を。
    "絶望"が"絶望"を糾弾する、彼にとってはなんの意味もない"ゲーム"に怒りがこみ上げてくる。
    けれど、その感情を外に出すことなく、横にいた戦刃に話しかける。

    「……キミもそう思わない?」

    戦刃「…………」

    戦刃むくろは、答えない。
    ただじっと、前を見つめていた。
    これから始まる死闘を、瞬き一つせずに見届ける為に、精神統一しているのだろうか。

    返事のない彼女をツマラナさそうに見てから、改めて前を向く狛枝。
    そして、ぶつぶつと嬉しそうに独白する。
    まるで、子どものように。

    「ま、いっか。これに乗るのも……これで最後だしね」

    「あぁ……楽しみだなぁ…………ようやくこの手で…………」

    「"超高校級の絶望"を殺せるなんて…………」






    「やっぱり、ボクは"幸運"だよ!」







    エレベーターは止まり、扉は開かれる。

    いよいよ始まる。

    命がけの騙し合い…命がけの勝負…命がけの対決…命がけの決闘…

    命がけの…"闇のゲーム"が……!

    …To be continued?

    469 = 451 :

    今日はここまで。
    ラストバトルは一気に書き切りたいので、次の更新は少し遅れます。

    470 :

    おつ

    471 :

    新世界プログラムにコピーライト付けるとはお茶目だなww

    472 :

    乙乙
    盛り上がって参りましたな

    473 :

    乙頑張って

    475 :

    いよいよ最終回。
    泣いても笑ってもこれが最後。投下します。

    476 = 475 :


    ―TIME UNKNOWN―


    開かれた扉の先にあったのは、裁判場だった。

    証言台が円を描くように設置されていた。
    入口から見て正面の一番奥に、玉座のような装飾を施された椅子がある。

    そして…このコロシアイ学園生活の首謀者・江ノ島盾子が操るモノクマは、そこにふんぞり返っていた。

    モノクマ「遅かったじゃん。"絶望"的に退屈で待ちくたびれちゃったよ」

    モノクマ「てっきりビビって逃げ出したのかな、なーんて思っちゃったけど、意外と根性はあるんだね…うぷぷ」

    「逃げ出す…? 面白い事を言うね。キミこそボクから逃げなかった事は、褒めてあげるよ」

    モノクマ「言うねぇ…人間風情が…まさか、ボクに本気で勝てるとでも思っちゃってるわけ?」

    モノクマ「だとしたらとんだお笑い種だよ。…苗木クン、キミなんて、雑魚だよ。雑魚。たまたま希望ヶ峰学園に選ばれただけの……なんの才能もない、絶望的に平凡な一般人さ」

    「それは違うよ…」

    未だに対決する相手が、苗木だと思っているモノクマのために、狛枝はわざわざ名乗りを上げる。

    「ボクは……苗木クンであって、苗木クンでない。今のボクを示す名前があるとすれば…それは…」

    「超高校級の幸運・"狛枝凪斗"さ」

    ドンッ☆

    477 = 475 :


    モノクマ「……狛枝クン? ぶっひゃっひゃっひゃっひゃ!!」

    「何がおかしいのさ?」

    モノクマ「ごめんごめん、あまりにも絶望的にツマラナイ冗談でさ……ついつい笑っちゃったよ」

    モノクマ「そっか、記憶を取り戻したから、狛枝クンのことも知ってるんだっけ」

    「まぁキミがどう思おうが勝手だけどさ…とりあえず、今のボクは狛枝凪斗だ」

    モノクマ「はいはい。わかったわかった。…苗木クンだろうが狛枝クンだろうが、ボクには関係ないよ」

    モノクマ「というか笑えるよね……うぷぷ。ボクに敗れて"絶望"に染まった雑魚…いや、苗木クン以下のゴミがボクに挑もうなんてさ…」

    これでもか、と煽るモノクマ。
    だが、相手の感情を引き出す技術に関しては、狛枝も決して引けを取らない。

    「そのゴミに、今からキミは負けるわけだけど…?」

    モノクマ「それこそ笑えない冗談だよ。売れないピン芸人より笑えないよ。…まあいいや、それよりさ…」

    モノクマ「なんで残姉ちゃんがここにいるのかな?」

    戦刃「……ッ!」

    それこそ、ゴミを見るような目でモノクマはいう。
    実の姉であろうと、不要だと判断した人間には"絶望的"に容赦がない。
    江ノ島盾子は、そういう人間だった。

    478 = 475 :


    何か言い返そうとしても、戦刃むくろにはその為の言葉がない。
    代わりに狛枝が言う。

    「ああ……彼女には、キミが無様に"絶望"しながら死んでいくのを見届けてもらう役を引き受けてもらったんだよ」

    「ボクにしてはなかなか気が利くだろう? それに、"ゲーム"には公平な審判が必要じゃないか」

    モノクマ「なるほど……そういうことね。まぁ残姉の一人や二人増えたところでボクの敵じゃないのは判りきってるから、いいよ別に」

    「ふふ…強がっちゃって…」

    モノクマ「そっちこそ!」

    モノクマ「まぁ、そろそろ狛枝クンを煽るのも飽きてきたところだし……」

    モノクマ「やっちゃいますか…? やっちゃっていいですかね…? "闇のゲーム"ってヤツを」

    「望むところさ…ボクだって、いい加減キミと言葉を交わすのにうんざりしてたところだよ。やっぱり本物の"絶望"は吐き気がするね」

    「それこそ"ゲロ以下の匂いがプンプンする"よ……」

    モノクマ「イライラ。…ま、いいや。それじゃ、"ゲーム"の説明をするよ」

    モノクマ「無意味で無価値な"希望"を振りかざす、哀れな狛枝クンのために……スペシャルな"ゲーム"を、用意しました!」

    モノクマ「その名も…"希望と絶望、どっちが世界に必要? この際シロクロはっきりつけちゃおうぜ"ゲーム!」

    「…………」

    戦刃「…………」

    479 = 475 :


    「全く、本当にキミはセンスがないね…それこそ"絶望"的だよ」

    モノクマ「うるさいなぁ……もういいよ、無視してルールを説明するからね」

    モノクマ「まずは……"コレ"」

    モノクマがそう言うと、狛枝の目の前の床が正方形をくり抜いたように盛り上がり、下から何かが出てくる。

    「……これは、拳銃かい?」

    黒光りする、重量感のある物体がそこには置かれていた。
    狛枝にとっては見覚えのある、リボルバー式の拳銃だ。

    モノクマ「見ればわかるでしょうが…それとも、拳銃も知らないのかい? きみはじつにばかだなあ」

    「聞いてみただけさ。それで? これでボクに何をさせようっていうのかな」

    「ま、大体想像はつくけどね…」

    モノクマ「まぁ、お約束って奴だよね…そう、1つ目のゲームは『ロシアン・ルーレット』さ」

    「はぁ…ワンパターンすぎてあくびが出るよ」

    「で? まさかこんなツマラナイゲームでボクを倒せるなんて、思ってないだろうね?」

    モノクマ「もちろんさ! 狛枝クンには絶望に絶望して絶望的に死んでもらいたいからね!」

    モノクマ「ワックワックドッキドキのゲームが目白押し。あくまでもこれはその余興さ」

    モノクマ「まさかこんなところで死ぬようじゃ、ボクを倒すなんて到底できっこないしねぇ…」

    「ふーん、なるほどね。それで……何発弾を込めればいいのかな?」

    モノクマ「最低1発! ただし、たくさん弾が入っている状態でクリアできたら、それなりの"特典"を用意させてもらうよ!」

    モノクマ「まぁ…チキンなキミは1発だって込めたくはないだろうけどね…コケコッコ!」

    480 = 475 :


    すると狛枝は、迷うことなく一発だけ弾を抜き……シリンダーを元に戻す。

    「舐められたものだね……まさかとは思うけど、ボクの"才能"を忘れられちゃ困るよ」

    「たかだか1/6の確率が引けなくて、何が"超高校級の幸運"だよ。…ボクは、5発装填するよ」

    モノクマ「ほほう……本当にそれでいいのかなぁ……?」

    「…異存はないよ。それじゃ…始めるよ」

    こめかみに銃を突きつけ、狛枝は引き金に手を伸ばす。
    まるでそうするのが当然であるように…つまらなさそうに撃鉄を引く。

    戦刃「……待って」

    だが、それを戦刃は止める。

    「言ったはずだよ。邪魔をするなら、ボクは容赦しない、って」

    戦刃「銃を調べさせて。…私は"審判"なんでしょ?」

    「……わかったよ」

    そう言うと、狛枝は肩を降ろし、リボルバーを戦刃に手渡す。
    彼女は銃を受け取るやいなや、慎重な手つきでそれを調べていく。
    手馴れた動きだったのは、さすがは"超高校級の軍人"といったところか。
    あっという間に銃はバラバラに分解され……すぐさま元通りに組み上がった。

    戦刃「……細工はない」

    最低限の言葉を口にすると、狛枝に改めて銃は返される。

    481 = 475 :


    モノクマ「当たり前じゃん! まさかボクがセコい手を使うとでも…? これだから残姉はさぁ…ぶつぶつ」

    「…ま、いいじゃないか。これで安心してゲームに臨めるよ」

    改めて弾数を確認し、シリンダーを回転させながら狛枝は言う。

    「それじゃ……仕切りなおして」

    再び、こめかみに拳銃を突きつける狛枝。
    引き金が……引かれる。






    カチッ…







    モノクマ「ドカーン!……なんてね」

    482 = 475 :

    「残念ながら、そうはならなかったようだけど?」

    モノクマ「チッ…ま、この程度なら余裕でクリアしてくると思ってたよ……狛枝クンだもん」

    「キミに褒められるとさ…寒気と虫唾とじんましんが走るからやめてほしいんだけど…」

    「ま、いいや。さて……お次はなんだい?」

    モノクマ「まぁまぁ、そう焦らない焦らない。急いでるときほど深呼吸、深呼吸」

    意趣返しのつもりか、神経を逆撫でするモノクマ。
    けれど、狛枝はそれに苛立つことなく、次なるゲームを求める。

    「そんな安い挑発……ボクには通じないよ」

    モノクマ「おおこわ。思わずブルっちまうけど……2つ目のゲームは……"これ"さ!」

    そう言うと、モノクマは突然動くのをやめる。

    「……? 故障かい? それとも、お得意の壊れたフリかな」

    首をかしげながらモノクマを見つめる狛枝。
    だが、次の瞬間……状況は一変する。

    警告音。

    サイレンのような、本能的に危険を感じる音が響く。
    そして…モノクマの左目が、赤く点滅していた。
    咄嗟に、危機を察知した戦刃が、弾かれたように飛び出す。

    戦刃「危ないッ!」

    彼女はすぐさまモノクマを掴み、はるか遠くへ放り投げる。
    そして、地面にそれが落ちる前に――


    爆風。

    舞う埃。

    火薬の匂い。

    483 = 475 :


    咳き込む二人は、少なからず驚きを隠せなかった。

    モノクマは……突如自爆したのだ!



    モノクマ「うぷぷ……驚いているみたいだね。第2のゲーム、それは『ドキドキモノクマだいばくはつ』ゲームさ」

    今度は、二人の背後からモノクマが現れる。
    …それも、1体だけではない。



    「うぷぷぷぷ」

    「「うぷぷぷぷぷぷぷぷ」」

    「「「うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ」」」

    「「「「うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ」」」」



    「……これはまた、"絶望"的な光景だね」

    だが、言葉とは裏腹に狛枝は動揺を見せない。
    いや、目の前の"ゲーム"を楽しんですらいるようだった。

    484 = 475 :


    那由他とまではいかないが……モノクマは数十体はいる。
    そしてそのどれもが、嫌味な声で高笑いしていた。

    モノクマ「ルールは…簡単。鬼ごっこと同じだよ。……鬼が爆発する事を除けばね」

    戦刃「……ッ!!」

    驚く戦刃を尻目に、別のモノクマが言う。

    モノクマ「ボクは今からキミ達を追いかける。…ま、ハンデとして幾多の鮭を狩ってきたボクの爪は、使わないでおいてあげるけど……内蔵された爆弾で道連れにしちゃうよ…ワイルドだろぉ?」

    次に話すのも、また別のモノクマだ。

    モノクマ「ボクが全てやられるのが先か、それともキミ達がバラバラになるのが先か…それがこの"ゲーム"さ」

    戦刃「そんな……」

    あまりにも、一方的なゲームだった。
    いや、ゲームという名を借りた"虐殺"、そう言っても過言ではない。
    けれど、狛枝は言ってのける。

    「なるほど……面白いよ」

    戦刃「…正気? この数相手に…」

    モノクマ「気に入ってもらえたようだね。それじゃさっそく……」

    485 = 475 :


    「待った。これだけボク達に不利なゲームなんだ」

    「それなりの"見返り"を要求させてもらっても、罰は当たらないよね?」

    モノクマ「"見返り"?」

    「そうさ…もしこのゲームにボクが勝ったら…その時はさ。そろそろキミに出てきてもらおうかな」

    モノクマ「……"ボク"?」

    「こんな玩具みたいなヌイグルミじゃなくてさ……本物の"絶望"にご登場願うんだよ」

    「江ノ島盾子…キミにね」

    モノクマ「…………ぶっひゃっひゃっっひゃ。面白い、面白いクマ。いいよ。いいですとも! けど、キミが勝てたらね」

    「その言葉に偽りはないね?」

    モノクマ「もっちろん。クマに二言はありません!」

    モノクマ「ま、勝てるわけないけどね。狛枝クゥン、戦いは数、数が全てだよ」

    「それはどうかな? どんなゲームだって、やってみないと分からないものさ…」

    モノクマ「減らず口を……でもまあ、それももう聞けなくなると思うと、不思議と寂しく……ならないね」

    モノクマ「うぷぷぷぷ…それじゃ…始めよっか……"ゲーム"をさ!」

    「望むところさ……ゲームスタートだ」

    狛枝は駆け出す。
    死の鬼ごっこが、始まった。

    486 = 475 :


    決して早くはないが、遅くもない速度で、テケテケとモノクマは歩み寄ってくる。
    先程と同じ、爆発をカウントダウンする警告音を発しながら。

    当然、戦刃むくろも走り出す。
    江ノ島盾子は彼女をも狙ってきたのだ。

    「……ッ! まったく……しつこいな」

    逃げる狛枝。それを追いかけるモノクマ。

    だが、裁判場自体がそこまで鬼ごっこに向いた場所ではない。
    隠れる場所もなければ、それほど広くもないのだ。
    普通にやれば、すぐに囲まれてしまうだろう。

    そこで、狛枝は考える。
    パーカーのポケットを弄りながら、一旦走るのをやめ、モノクマを待ち伏せする。

    「……全部が全部倒すのは、さすがに骨が折れるからね」

    そして、やって来た最初のモノクマに向かって、殴りかかる!

    モノクマ「ぎゅむ……ボクへの暴力は、校則違反だよぉー!!」

    叫びとともに鳴り響く警告音。爆発まで猶予は残りわずかだ。
    しかし、焦ることなく狛枝はモノクマを掴み、別のモノクマに向かって投げつけた!

    「……ふんっ」

    爆音。

    どん、どん、ずどん、とうるさい音を立て、誘爆するモノクマ達。
    ボウリングのピンのように、1体の爆風が、別のモノクマの爆発を誘発させたのだ。
    数が多すぎるのが、仇となっている。

    「ゴホゴホ……まったく…汚い花火だよ」

    487 = 475 :


    爆風によって舞い上がった土埃が、裁判場を満たしていた。
    視界を覆い、目の前すら満足に見渡せない。

    「ま、これで少しは数が減ったか……なッ!?」

    突然の出来事に、狛枝は驚く。

    モノクマ「クーマァーーーー!」

    なんと、砂埃のなかからモノクマがこちらに向かってきたのだ。
    しかも、1体だけではない。

    「……この視界で動けるのかい……?」

    モノクマ「舐めてもらっちゃ困るよ……うぷぷぷぷぷぷ」

    もう一度、モノクマを殴り倒し、どこかに投げようとする狛枝だが……

    モノクマ「同じ手は、二度は効かないよーだ!」

    どこまでも平均的な力とスピードしかない苗木誠の身体では、モノクマを捉えきれない。
    モノクマはひょい、と狛枝の拳を躱し、逆に伸ばされた腕に纏わり付く。

    「ッ!! しまった……」

    狛枝から余裕の表情が消える。
    このまま爆発すれば…腕を持って行かれてしまう。

    必死にモノクマを床に叩きつけ、なんとか振りほどく狛枝。
    だが、爆発から退避する猶予は残されていなかった!


    再び、爆音。

    488 = 475 :


    モノクマ「うぷぷぷ…結構あっけない幕切れだったね……まったく、絶望的だよ」

    再び空気中に散らばった砂埃が、徐々に落下して視界が晴れてくる。
    モノクマは、爆殺した狛枝を確認しようとトテトテと歩いていくが……

    モノクマ「……いない?」

    狛枝がいたはずのその場所に、誰もいない。

    モノクマ「……跡形もなく吹っ飛ばしちゃった? あちゃー、ボクとしたことが…」

    そう自問するモノクマだったが、次の瞬間、
    ヌイグルミの視界を横切る、一筋の黒い光がそれは誤りだと告げる。
    その正体は……"超高校級の軍人"・戦刃むくろだ。

    モノクマ「ムムム…残姉かッ!」

    モノクマが叫ぶと同時に、今度は何かが転がってくる。
    コロコロコロ、とモノクマの目の前に。

    そして、投げ込まれた"それ"は……回転が止まるやいなや大量の煙を噴き出した。
    突然の出来事に、驚きを隠せないモノクマ。

    モノクマ「ゲホゲホゲホ……これは…スモークグレネード? チッ、生意気な!」

    あの瞬間、戦刃むくろは、狛枝を背負い、爆発から逃れていたのだ。
    そして、戦況は不利と判断した彼女は、苗木誠の肉体を抱えたまま場内をひた走る。

    二人が逃げ込んだのは、裁判場から"オシオキ"部屋に続く、通路の中だ。

    モノクマ「あれあれ…そんなところへ逃げるのかい? うぷぷぷぷぷぷ」

    敗走する二人を、モノクマは嘲笑う。

    モノクマ「アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」

    489 = 475 :



    「ハァ……ハァ……」

    息を荒くして、壁によりかかる狛枝。
    対して"超高校級の軍人"・戦刃むくろは落ち着いている。
    だが、周囲への警戒は怠らない。

    追い打ちをかけてくるモノクマを、何体かは始末したものの、未だに状況は不利だった。
    いつ次なるモノクマが来るとも限らないからだ。

    やがて少しずつ呼吸の乱れが収まりつつあった狛枝は、憤慨しながら言う。

    「何するのさ! キミは手出ししないって約束だったじゃないか!」

    狛枝凪斗にとって、この戦いはただの"ゲーム"ではない。
    自らの命を賭けて"超高校級の絶望"に挑み、そして勝利する。それも誰の手も借りずにたった一人で。
    そのプロセスこそが彼にとって重要であり、全てなのだ。
    ……彼がずっとずっと憧れていた、"超高校級の希望"になる為に。

    礼こそ言われても、怒りをぶつけられるとは思わなかった戦刃は、内心驚きつつも、淡々という。

    戦刃「あのまま私が飛び込まなかったら……あなたは死んでいた」

    「そんなこと…わかってるよ」

    苛立ちながら、狛枝は言う。
    その怒りの矛先は、自分を助けた戦刃ではなく、不甲斐ない彼自身だった。

    「けど、あんなところで死ぬなら、ボクはその程度の"希望"に過ぎなかったってことなんだよ…!」

    「まったく……自分の情けなさに死にたくなるよ」

    せっかく拾った命を粗末に言う狛枝に、戦刃は……


    バシッ!


    ビンタをお見舞いしていた。

    490 = 475 :


    一瞬、何が起こったのかわからない、という顔をする狛枝。
    だが、次の瞬間にはいつもの気だるそうな表情に戻り、気だるそうに言う。
    まるで痛みなど感じていないように。

    「……何のつもりさ?」

    戦刃「…………」

    だが、戦刃むくろは答えない。じっと、狛枝の頬を叩いた右手を見つめるだけだ。
    なぜなら、彼女にもどうしてそうしたのか……はっきりとした理由がわからなかったのだ。
    目の前の男を励まそうとしたのか、それとも、せっかく身を危険に晒してまで助けた命を、蔑ろにする彼に憤ったからなのか。
    苗木誠が、そんな言葉を吐くのが許せなかったのかもしれない。

    そもそも、狛枝凪斗をなぜ助けたのか、それは一番戦刃むくろ自身が疑問に思っていたことだ。
    立場で言えば、狛枝と戦刃は、決して味方と言える間柄ではない。
    江ノ島盾子に見捨てられた今となっては、敵でこそないが、肩入れする理由もないはずだった。
    モノクマの自爆に巻き込まれ、四肢がバラバラになろうが知ったことではない。
    仮に彼が敗れようとも、代わりに自分が妹を殺し……"絶望"させれば良いだけなのだから。

    だが実際は、"ゲーム"が始まる前、そしてつい先程も…2回も彼を助けている。
    思考と行動がうまくかみ合っていないのだ。
    自分のことでありながら、自分がわからない。だからこそ戦刃は、何も言うことができなかった。
    もし、"超高校級の分析力"でもある、江ノ島盾子ならば……今の彼女の状況ですら分析できたのかもしれないが。

    491 = 475 :


    あえて理由付けをするとすれば……戦刃にも狛枝にも考えつかない一つの理由を挙げられる。
    もしかしたら、彼が苗木誠の肉体を借りていること自体が、咄嗟に戦刃が助けに動いた理由だった、という可能性だ。

    "超高校級の幸運"・苗木誠。どこまでもお人好しで、どこまでも前向きな少年。
    希望ヶ峰学園での2年間の生活で、戦刃むくろが江ノ島盾子以外でおそらく一番接する機会があった人物。
    自身の才能に縛られることなく、誰にでも分け隔てなく接する、学園では稀有な存在だ。
    そんな彼に、戦刃むくろはどこかしら惹かれるものがあったのかもしれない。

    もちろん、江ノ島盾子だけを愛し、江ノ島盾子だけしか見ていない彼女にとって、そんなことは"絶望"的に起こりえないはずだったのだが…。
    かつて江ノ島盾子が描いたシナリオの中で、間接的にとはいえ苗木誠の命を救ったのもまた事実だった。
    目の前で苗木が死ぬ姿を見たくない、そんな無意識的な感情が、咄嗟に戦刃を動かしたとしても不思議ではない。
    …その気持ちに、気付いてすらいないからこそ、戦刃むくろは"残念"だと言われるのだが。

    その話は別にしても、彼女にはひとつだけ解ったことがあった。

    戦刃「私は……盾子ちゃんの"絶望"を見届ける。そう言ったはずだよ」

    戦刃「あの子を理解してあげられるのは、私だけ…そして、あの子に"絶望"を与えるのも、私の役割」

    戦刃「だから、今は…あなたに協力する」

    戦刃むくろは思う。
    狛枝凪斗が狂気的なまでに憧れ、振りかざす、"希望"……それは江ノ島盾子が最も嫌うもの。
    もしその"希望"が、江ノ島盾子の"絶望"を打ち破った時、江ノ島盾子が体得できる"絶望"はどれほどのものだろう。
    決して相容れず、心の底から嫌いな宿敵に、勝利を確信したはずのゲームで敗れ……
    失望し、見捨てた自分の最大の理解者である姉にまで裏切られながら死んでいく……
    これほど"絶望"的なシナリオがあっただろうか?
    いや、それは…戦刃むくろが考えられる限りで、最大限の"絶望"だった。

    そう、戦刃むくろは…実の妹を…江ノ島盾子を"絶望"させるためだけに存在している。
    狛枝凪斗にとっての"希望"がそうであるように、
    江ノ島盾子にとっての"絶望"がそうであるように、
    戦刃むくろにとって、"江ノ島盾子の絶望"こそが全てなのだ。

    だからこそ、眼前のこの男にすら、協力を惜しまない。
    たとえ最愛の妹を裏切ることになったとしても、それが江ノ島盾子の…さらなる"絶望"に繋がるのだとしたら。

    492 = 475 :


    そんな彼女の"希望"を知ってか知らずか…狛枝凪斗は意外な返答をする。

    「…それが、キミの"希望"なら……構わないさ」

    戦刃「えっ?」

    てっきり固辞すると思っていたものだから、戦刃も拍子抜けといった感じだ。

    「もしかして、驚いてる? ……実はボクもさ」

    「いや、正直にいうとね…少し参ってるんだ。今回ばかりはね」

    珍しく、狛枝が弱気な言葉を発する。
    いつも不敵な笑みを浮かべ、負けることを知らないこの男が。

    「さすがにあの数を相手にするとなると……いくら"超高校級の幸運"であるボクでも、荷が重いよ」

    戦刃は、それが狛枝の本心からの言葉なのかがわからない。
    どこまでも、表情や仕草から考えていることが読めない、つかみどころがない狛枝。
    かと思えば、今度は前向きな独白を吐いてみせる。

    「……いや、"超高校級の希望"になろうっていうのに、こんなところで躓いてちゃ話にならないか」

    「そうだよね! まだ負けたわけじゃないんだ。こんなボクの頭でも、死ぬ気になれば何か反撃の策が浮かぶかもしれない…!」

    津波よりも起伏の激しい狛枝の喜怒哀楽に一々反応することをやめ、戦刃は問う。

    戦刃「……何か、手はないの?」

    「うーん……あるにはあるっていうか……」

    言葉を濁す狛枝。

    493 = 475 :


    「……キミが煙幕を投げたあの時、一つだけ気付いたことがあるんだ」

    戦刃「…気付いたこと?」

    「そうさ。一応確認しておくけどさ…モノクマの操作って、手動だよね?」

    戦刃「……うん。そのはずだけど」

    戦刃むくろは、妹が希望ヶ峰学園の旧校舎を改造するところを手伝っている。
    その記憶が正しければ、モノクマは専用の操作ルームがあり、江ノ島盾子はそこで操作しているはずだ。
    もっと言えば、モノクマの操作とカメラでの監視は、部屋が別であり、その二つを同時にこなすことはできない。
    そう戦刃が狛枝に告げると、

    「……なるほどね」

    一人でうなずき、一人で納得する狛枝。

    戦刃「…?」

    戦刃は質問の意図がわからない。
    いや、狛枝凪斗という人間が、今何を考えているか、まるで見当もつかなかった。
    そんな彼女を尻目に、彼は自信有りげに言うのだ。

    「ようやく…このゲームの勝ち筋が見えてきたよ」

    戦刃「…本当に?」

    「うん……決してこれは勝ち目のない"ゲーム"なんかじゃなかったのさ」

    494 = 475 :


    戦刃「…どういうこと?」

    疑問ばかり投げかける戦刃に、はあ、とため息をつく狛枝。

    「少しは自分の頭で考えなよ…と言いたいところだけど、状況が状況だしね」

    「いいよ…説明してあげる」

    狛枝は、どこか楽しげに、得意げに説明する。

    「あのさ……煙幕で視界の塞がったあの場所で、どうしてモノクマはボクらが通路に逃げたってわかったと思う?」

    戦刃「それは……」

    言葉に詰まる戦刃。
    監視カメラやモノクマに内蔵されたカメラは、もはや使い物にならないと言ってもいい。
    それなのに、モノクマは見えていなくても、狛枝と戦刃の位置を正確に把握しているようだった。
    実際、追撃してくるモノクマが何体もいたのが、それを物語っている。
    まるで、"見えない足跡"を辿っているかのごとくモノクマは追ってきたのだ。

    「動体センサーやサーモグラフィって線も当然あるとは思うけど……ボクが出した答えは、もっと"単純な事"さ」

    戦刃「"単純な事"?」

    「そもそも、"審判"として来たキミまで巻き込むなんて、江ノ島盾子らしくないと思ったんだ」

    「苗木クンの部屋でキミの正体をバラした時には、"もうどこにでも行ってしまえ"と突き放していたくせにさ…」

    「今度はうってかわってキミも殺しに来た。興味のなくなったはずの…用済みのキミをね」

    戦刃「…ッ!」

    辛辣な狛枝の言葉は、戦刃の真新しい心の傷を抉る。
    けれど、狛枝の話は、お構いなしに続く。

    「それはさ……彼女がボク"だけ"を狙えなかった、そう考えれば納得がいくんだよ」

    戦刃「あなただけを?」

    495 = 475 :


    「そうさ。…ところで戦刃さん、スモークグレネードってまだ持ってる?」

    戦刃「?…スモークならあと1個だけあるけど…どうするの?」

    「まぁ、見てなって……」

    そう言うと狛枝は、戦刃からグレネードを受け取り、おそるおそる通路を歩いていく。

    そして、入口から顔を覗かせ……ピンを抜き、大きく振りかぶって裁判場の中に向かって投げ入れた。
    …未だに煙で充満する裁判場の中に。
    飛翔し、部屋の中央付近で止まった手榴弾は、またしても煙をそこら中に撒き散らす。

    すると……

    「「「うぷぷぷぷ!!」」」

    なんとモノクマは、狛枝達の今いる場所ではなく、グレネードが転がった方へと向かっていくではないか。
    一連の動作を目の当たりにして、戦刃もようやく察する事ができたようだ。

    戦刃「…! そっか、これって…」

    「ご名答。…ボクらを追うためにモノクマが使った"見えない足跡"の正体…それは"音"さ」

    「あれだけ大量にいるモノクマも、そのほとんどは実際に操作されているわけではない…いわばただの"木偶の坊"さ」

    戦刃「"木偶の坊"…」

    「例えば…"働きアリ"をイメージしてもらえばわかりやすいかな」

    「働きアリは、一匹一匹が自分で考えて行動しているわけじゃない。たまたま餌を見つけたアリがフェロモンを発することで、そのアリを先頭としてほかのアリ達が列を作るんだ…フェロモンに誘われてね」

    そして、この場合の"餌"とは…狛枝達の会話する"声"や、歩く"音"。
    カラクリさえわかれば、単純明快な答えだった。
    それゆえにモノクマは、狛枝凪斗だけを狙い撃ちにすることができなかったのだ。

    496 = 475 :


    「もちろん、これだけならすぐにカラクリがバレてしまうから…"本命"は別にある」

    戦刃「"本命"?」

    「このゲームの勝敗を分ける鍵…江ノ島盾子自身が操作している"モノクマ"さ…!」

    「情けないことに、数に圧倒されて気づけなかったんだけどさ……」

    「大量のモノクマを同時に動かすなんて芸当、いくら"超高校級の絶望"・江ノ島盾子でも一人では難しい」

    「専用のプログラムを組めば、ある程度は可能だろうけど……それでもせいぜい3、4体が限度のはずだ」

    戦刃「…ほかの"超高校級の絶望"の仲間がいるって可能性は?」

    「えっ…いるの?」

    戦刃「…私以外いない、と思うけど」

    「なんだか含みのある言い方だね……まあいいけど」

    「それにしたって、こういった"勝負"の時は……割と正々堂々と、自分一人の力で戦おうとするのが彼女さ」

    「変に凝り固まったプライドやこだわりを持つのが彼女だからねえ……まさに"絶望"的だよ」

    旧知の仲のように話す狛枝。
    実際彼は、江ノ島盾子とは切っても切れない因縁めいた関係にあるのだが。

    そんな狛枝に対して、戦刃は思う。
    この男は……姉である自分以上に、江ノ島盾子という人間を、"絶望"を知り尽くしているかもしれない、と。
    彼女にとってそれは驚くべきことであり、同時に妬ましいことでもあった。

    497 = 475 :


    「けど、だからこそ彼女の性格から考えて"絶対にクリアできない"ゲームで挑んでくるとは…どうしても思えないんだ」

    「たとえわずかであっても、相手に勝てる可能性を……いや、自分が負けて"絶望"する可能性か……それを残す。彼女のやり方さ」

    戦刃「…………」

    言葉にこそ出さないが、その意見には戦刃も"賛成"だった。
    江ノ島盾子は、妹は自身の"絶望"すら求める、究極の"絶望"フェチといっても過言ではない。

    「そう考えれば、自ずからこのゲームの勝利条件は見えてくるのさ……」

    それは…江ノ島が自ら操作するモノクマを破壊すること。

    「敵将さえ落とせば、後は音に反応するだけのただのオモチャ…烏合の衆だからね」

    戦刃「……なるほど」

    納得する戦刃。
    明らかに眼前のこの男は、こういった頭脳戦に長けている。
    数多くの戦場を、直感と反応速度だけで駆け抜けて来た自分よりも。
    やはり、自分の妹を、江ノ島盾子を真に"絶望"させることができるのは、この男なのかもしれないと思う。

    戦刃「でも、そんなこと…できるの?」

    「……できなくはないし…やるしかないんだよ。…幸いさっきのゲームで手に入れた"特典"もあるしね」

    そう言うと、狛枝はいつの間にかパーカーのポケットにしまっていた拳銃を取り出す。
    1つ目のゲームのクリア特典とは、この2つ目のゲームで、ロシアン・ルーレットで装填した弾の数だけ、銃を使えるという事だったのだ。

    「結果論で言うと、キミがわざわざ分解までして調べてくれたおかげで助かったよ。発信機でも仕込まれていたら、それこそ"絶望"的だったからね」

    498 = 475 :


    「…どうかな、"審判"であるキミにお願いするのも気が引けるけど…ゲームに巻き込んで来たのは向こうが先だ」

    「この際安いプライドは捨てることにする。どんな手を使ってでも負ける訳にはいかないからね…!」

    「今だけ…協力してもらえないかな?」

    「もちろんボク一人でも、やるつもりだけど。"希望"を持ったキミに死なれるのは、少しばかり後味が悪いからね」

    狛枝は、ニヤっと笑ってみせる。
    やはり、心の底から"ゲーム"を楽しんでいるようでもあった。

    そんな彼に対する、戦刃の答えは決まっていた。
    彼女の"希望"は、妹の勝利などではなく、妹の"絶望"なのだから。

    戦刃「…何をすればいい?」

    「ボクが"本命"を見極めて、狙い撃つ。キミは……今から言うように動いて欲しいんだ」

    「いや、正確には見極める必要なんてないんだけどね…」

    戦刃「…どういうこと?」

    「ボクの"才能"さ。"超高校級の幸運"……もしボクが本当に"幸運"なら、撃った弾が必ず"本命"に当たるはずなんだ」

    戦刃「…………」

    「あっ、今馬鹿にしたでしょ? ま、そうだよね…こんなゴミクズみたいな才能、あってないようなものだし…」

    戦刃「そ、そんなことないよ」

    「そう? そう言ってもらえると助かるんだけど…まあいいや。とにかく、適当に狙っても"本命"に向かって飛んでいく、そう過程して…」

    「…問題は別のところにあるんだよね」

    戦刃「別のところ?」

    「そう…考えてもみなよ。キミの妹、江ノ島盾子は…"超高校級の絶望"にして"超高校級のギャル"。そして…"超高校級の分析力"だ」

    「ボクが"幸運"を頼りに反撃してくることくらい、分析によって予想済みってことさ」

    499 = 475 :


    戦刃「そんなことが……」

    「できるのさ。だからこそ、ボクはかつて、彼女に敗れた……」

    ギリッ、と苦虫を噛み潰したような、悔しさのにじみ出る顔をする狛枝。

    「例えば今回のゲームで言えば…ボクと"本命"のモノクマの間に、常に身代わりになるモノクマを置く、とか」

    「あるいは銃自体を使えなくするために、ボクの腕を狙ってきたり、とか」

    "腕"という言葉に、ハッとなる戦刃。

    戦刃「まさか…!」

    実際、モノクマは狛枝の腕を爆破しようとしていた。
    たまたま狛枝が殴りかかってきたからこそ、モノクマは腕にまとわりついたのだと思っていた戦刃は、改めて妹の凄さに驚かされる。

    「とにかく、ただ単純に撃てば当たる、撃てば勝てるってわけにはいかないのさ…」

    戦刃「じゃ、じゃあ…どうするの?」

    「…少し、話を整理してみようか」


    ―ロジカルダイブ・開始―


    Q.1 江ノ島盾子自身が操るモノクマは、何の情報を頼りに動いている?

    「視覚情報と聴覚情報」
     「聴覚情報のみ」
     「監視カメラの映像」

    Q.2 江ノ島が直接操っていないモノクマは、通常時何の情報を頼りに動いている?

     「視覚情報と聴覚情報」
    「聴覚情報のみ」
     「監視カメラの映像」

    Q.3 江ノ島盾子にはあって、モノクマにはない"隙"…それは何か?

    「視覚情報に対する異存度が高い点」
     「聴覚情報に対する異存度が高い点」
     「"絶望"に対する異存度が高い点」


    「…推理は、繋がったようだね」


    ―COMPLETE !!!―

    500 = 475 :


    「モノクマといっても弱点はボクらと同じさ…」

    戦刃「…同じ?」

    「モノクマのメインカメラを通して見ている映像、江ノ島盾子はそれに依存している」

    「…ボクたちが目から得ている"視覚情報"に依存して日常生活を送っているようにね」

    「だとすれば、"隙"を作れるのは……」

    狛枝は、作戦を組み立てていく。



    ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


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