元スレ苗木「ゲームをしようよ。闇のゲームをね……」
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301 = 294 :
「あれってさ…どんなゲームでも、キミは勝てるって捉えてもいいんだよね?」
十神「当然だ。……フン、そういう事か。お前はいやしくも、愚民の分際でこの俺の鼻を折るつもりで勝負を挑みにきたわけだな?」
「飲み込みが早くて助かるよ…どうかな、もちろん受けてもらえるよね?」
「こんな何の取り柄もない最低で最悪な人間との勝負、"超高校級の完璧"であるキミにとっては勝って当たり前なんだからさ!」
ゾクッ
十神(何だ…!? 昼間とはまるで人が変わったようだ……これが苗木の本性、なのか…?)
十神(いや、相手が誰であろうと変わらん。勝つのはこの俺だ…!)
十神「いいだろう。この十神白夜が時間を割いてやるんだ…せいぜい楽しませるんだな」
「ふふふ……それじゃあ始めようか」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「"闇のゲーム"の時間だ…」
302 = 294 :
「ルールは簡単だ。勝負には、このカードを使う」
そう言うと、狛枝は懐から10枚のカードを取り出した。
裏へ全て同じ模様で、表には、「皇帝」「平民」「奴隷」を示す絵と英文字が描かれている。
内訳は「皇帝」と「奴隷」がそれぞれ1枚ずつ、残る8枚が「平民」だ。
「"Eカード"って言うらしんだけど…まぁ名前はどうだっていいよね」
十神「それで? このカードでどんなゲームをすると言うんだ?」
「慌てない慌てない、すぐに説明するからさ…」
そして、狛枝は簡潔にルールを説明をしていく。
まずプレイヤーは「皇帝」側と「奴隷」側に別れる。
「皇帝」側は「皇帝」カード1枚と「平民」カード4枚を、
「奴隷」側は「奴隷」カード1枚と「平民」カード4枚を手にする。
次に「皇帝」側プレイヤーがテーブルの上に裏向きのままカードを1枚セットする。
この際、無作為に選ぶ事は禁止される。最低でも1度はセットするカードを自分で見て決めなくてはならない。
そして、「皇帝」がカードをセットし終えた後、同様に「奴隷」側プレイヤーがカードをセットする。
お互いのカードがセットされたら、そこでテーブル上のカードを表にし、勝敗を決める。
「皇帝」は「平民」に勝つ。
「平民」は「奴隷」に勝つ。
そして、「奴隷」は「皇帝」に勝つ。
いわゆる3すくみ、じゃんけんのようなものだ。
こうして勝敗が決したら、次はカードを先に出すプレイヤーを交代し、ゲームを続ける。
手札がなくなるまで…全部で5回の勝負を行い、勝ち数が多い方がそのラウンドの勝者となる。
これを1ラウンドとして、ラウンドが終わるごとに「皇帝」側と「奴隷」側を交代し、計12ラウンドを行う。
最終的な勝利ラウンド数が多い方が真の勝者となる…!
303 = 294 :
訂正
>>302
×裏へ全て同じ模様で、表には、「皇帝」「平民」「奴隷」を示す絵と英文字が描かれている。
↓
○裏は全て同じ模様で、表には、「皇帝」「平民」「奴隷」を示す絵と英文字が描かれている。
304 = 294 :
「どうかな…? ボクなんかの説明じゃ、わかりにくかったとは思うけれど…」
十神「なるほどな… 大方把握した。それで…お前はさっきこれが"闇のゲーム"だと言ったな? あれはどういう意味だ?」
「さすがは十神クン、記憶力も"超高校級"だね。その通り、このゲームはただのお遊びなんかじゃないよ…」
そう言うと、狛枝は食堂からくすねてきたのか、いきなり包丁を取り出し、躊躇いなくテーブルに突き差した!
十神「…ッ!?」
「ボクが負けたら、負けたラウンドの数だけこの指を切り落とそう…」
十神「な、なんだと…!?」
「ただし十神クン、キミが負けたらその時は"罰ゲーム"を受けてもらう!」
ビシッ☆
「敗者には"罰ゲーム"が待ち受ける……それが"闇のゲーム"さ」
ゾクッ ゾクッ
十神「…………」
「どうしたの? まさかこんな事で怖気づいちゃった…? いや、そんなわけないよね?」
「だってキミは…"希望"溢れる"超高校級の才能"を持っているんだからさ…」
「勝利を宿命付けられたキミなら…"超高校級の完璧"である十神クンなら…こんなゲーム、勝って当然なんだ!」
十神「……面白い。面白いぞ。命懸けのゲーム、これこそ俺が求めていたゲームだ」
「ふふふ、そうこなくちゃ!」
十神「いいだろう。そこまで言われたからには、このゲーム、俺が必ず勝つ!」
十神「…十神の名に賭けてな!」
ドンッ☆
こうして、二人の"闇のゲーム"の火蓋は切って落とされた……!
…To be continued?
305 = 294 :
―嘘☆次回予告―
もうやめようよ、こんな事! 超高校級の絶望能力で、十神クンを焼き払われたら、
闇のゲームで仲間と繋がってる苗木クンの精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないで苗木クン! キミが今ここで倒れたら、舞園さんや霧切さんとの約束はどうなっちゃうの?
希望はまだ残ってる。これを耐えれば、キミ達の希望はもっと輝けるんだから!!
次回、「苗木死す」。デュエルスタンバイ!
306 :
乙
そういやダンガンロンパ新情報きたな
307 :
>>306
詳しくお願いしたい
308 = 306 :
たしか新作で主人公は苗木妹
309 :
妹のもあるが3も開発決まったぞ
何年後かは知らないが
310 :
ルールを守って楽しくデュエル()
311 :
フィールを使って相手を戦闘不能にしたり不思議パワーでエクストラデッキに新しいカード追加したりするのはありですか?
312 :
勝てばよかろう
バレなきゃイカサマじゃない
それを地で行くのがギャンブルよ
313 :
Eカードと聞いて、映画のカイジ思い出したのは俺だけだろうか?
314 :
>>313
原作嫁よ
315 :
>>313恥ずかしい奴だな 絶望したかい?
316 = 312 :
それはもう……カイジに出てきてるEカードそのものですから……
317 :
Eカードと聞いて、エロフラッシュを思い出したのは俺だけだろうな
318 :
原作の闇遊戯なら無茶苦茶な理屈でEカードのルールを覆す
319 :
市民も集まれば王に勝てる!とかいって四枚出したりとか
320 :
十神には罰ゲームとして鼻とアゴを尖らせてあげよう
321 :
>>317
あれ何回やってもクリアできない
322 :
いま丁度カイジの一挙放送やってる
323 :
図書室のテーブル越しに、向かい合う二つの人影。
そのうちの一人、狛枝凪斗が口を開く。
「それじゃ、早速始めようか」
十神「待て。念のため始める前に、細工がないか調べさせてもらう」
「さすがに用心深いね……いいよ。けど、ボクは何もしてないよ?」
十神「どうだかな……」
受け取った"Eカード"を念入りに調べる十神。
しかし、狛枝の言った通り、特に手が加えられた様子はない。
「ほら、言ったとおりでしょ? ボクみたいなゴミクズが、キミを出し抜けるわけないんだって!」
十神「フン…どうやらそのようだな。まあいいだろう。…始めろ」
「ふふふ…ゲームスタートだ!」
十神「先攻は貰うぞ!」
第一ラウンドは、十神が『皇帝』、狛枝が『奴隷』。
324 = 323 :
十神(さて…まずはどう出るか…)
十神(1ラウンド中、見かけの上では勝負は5回だが…)
十神(お互い5枚中4枚が『平民』である以上、勝敗が付くのは『皇帝』か『奴隷』が出された場合のみ)
十神(そして、『皇帝』側プレイヤーは4枚ある『平民』のどれかを撃ち抜けば勝ち…)
十神(逆に『奴隷』側プレイヤーは1枚しかない相手の『皇帝』を狙い撃ちしなければ勝ち目はない)
十神(つまり、『皇帝』側で白星をいかに稼ぎ、『奴隷』側でいかに黒星を減らすか…そこがポイントになるはずだ)
「しょっぱなから随分考え込んでるようだね」
十神「そう急かすなよ、愚民が……」
十神(挑発のつもりだろうが、この俺には通用せん。普通なら無難に『平民』で様子見、と行く所……だが、俺は違う)
十神「セットだ」
裏向きのままテーブルに出されたカードは『皇帝』。十神は速攻を仕掛ける算段だ。
「それじゃ、ボクもセットするよ」
対する狛枝は、少しも悩む様子を見せず、すぐさまカードを出す。
まるで、最初からそのカードに決めていた、と言わんばかりに。
325 = 323 :
「「オープン!」」
『皇帝』VS『平民』……『皇帝』を出した、十神の勝ちだ。
「あ、あれ……まいったな。いきなり『皇帝』を出されるとは、思ってなかったよ」
そう言いつつも、狛枝の表情はまだまだ余裕そうだ。
「十神クンならもう気づいてるとは思うけど…この時点で第一ラウンドはキミの勝ちだ」
十神「言われるまでもない。俺は残り『平民』4枚に対して、お前は『平民』3枚と『奴隷』1枚。2勝3分けだな」
「さすがは十神クン! …開始して間もないのに、もうゲームの本質を理解しているなんて、素晴らしいよ!」
悔しがるどころか、対戦相手を褒め称える狛枝の姿に、十神は得体の知れない恐怖を感じる。
十神「苗木、お前……どういうつもりだ? なぜそんなにヘラヘラとしていられる!?」
ただのゲームであれば、それも理解の範疇ではあったはずだ。
しかし、これは"闇のゲーム"……負ければ相応の代価を失う、文字通りの真剣勝負だ。
にもかかわらず狛枝は、自らを切り刻む事など何とも思っていないようだった。
「どういうつもりも何も……ボクはキミの"希望"の輝きを、純粋に喜んでいるだけだよ」
「キミなら……ボクを倒して、"超高校級の希望"になる事ができるかもしれない、ってね…」
クロとシロが入り混じった眼が、"超高校級の御曹司"を見つめる。
いや、狛枝が見ているのは十神ではなく、彼の"超高校級の才能"と…それが行き着くかもしれない"希望"だけだ。
326 = 323 :
十神「"超高校級の希望"、だと?」
「そう。どんな"絶望"にも打ち勝つ、絶対的な"希望"さ」
「この"闇のゲーム"も、ボク自身の命ですら、"希望"の為の踏み台にすぎないんだ…!」
そう言い放つ目の前の狂人を、十神白夜は侮蔑に満ちた瞳で見下す。
十神「とうとうおかしくなったのか?」
「それは違うよ…」
「このコロシアイ学園生活を生き残るには…いや、誰一人死なずにみんながここから出る為には、"希望"が必要なんだ…!」
「それは、苗木クンの"願い"でもあるんだよ……」
十神「苗木、だと? お前…苗木ではないな。いったい何者だ!?」
声を荒らげ問い詰める十神に、眼前の男は嬉しそうに答える。
「ふふふ…ようやく気付いてもらえたね。いいよ…なんの捻りもセンスもない名前だけど、教えてあげるよ」
「ボクの名前は狛枝凪斗。……"超高校級の幸運"さ」
十神「狛枝…凪斗……?」
そう名乗ってみせた狛枝は、姿こそ紛れもなく苗木誠だった。
けれど、普段は尖っている頭のアンテナは…まるで炎のように揺らめいていた。
327 = 323 :
「さて…このラウンドはボクの負けだから…」
狛枝は机に突き刺さった包丁を抜き、ぺろり、と舌で舐めてみせる。
「さっそく、左手から切り落としていこうか」
十神「お、おい」
自らの左手を、掌を上にして置く狛枝。
「まずは…小指かな?」
そして、躊躇いなく包丁が振り下ろされた! ……と思われた。
十神「ま、待てッ!!」
咄嗟に十神が制止する。
間一髪、小指に刃が食い込むかどうかの所で、包丁は止まった。
不思議そうに首をかしげながら、狛枝は問いかける。
「…どうして止めるの? 負けた者が罰を受ける。当然の事じゃないか」
十神「……ッ!」
確かに、その通りだった。
十神白夜には止める理由もなければ、義理もない。
目の前で苗木誠が指を失おうが、自分は痛くも痒くもない。
十神自身が知る十神白夜とは、そういう人間だった。
十神家の正統なる後継者となる為、あらゆる手を使い、肉親ですら蹴落としてきた彼にとっては…自分以外全てが敵だった。
それは、この学園に来てからも変わることはない。彼にとって、他の14人の同級生は…"仲間"などではなかった。
コロシアイという"ゲーム"を楽しむ為に、出し抜き、叩き潰すべき敵にすぎないはずだった。
328 = 323 :
十神(それなのに……なぜだ? なぜ俺は……ヤツが傷つく事を止めた?)
十神(まるで、俺の知らない俺自身が、急ブレーキをかけたような感覚だった…)
十神(…時間を共有するうちに、愚民に情でも湧いたか?)
十神(わからない。…馬鹿な! 俺自身の事なのに、どうして俺はわからないんだ!)
混乱のあまり、十神は沈黙を余儀なくされる。
「まぁ、いいよ。まだ完全に勝負がついたわけじゃないし…少し早まった真似だったね」
「"罰ゲーム"は最終的な勝者が決まってからでも、遅くない、か…」
「けど驚いたよ。まさかあの十神クンが…ボクなんかの身を案じてくれたなんてさ…」
本当に驚いた、という顔をする狛枝に、十神は淡々と言葉を吐く。
動揺する心を、気取られぬように。
十神「……思い上がるなよ、愚民が」
十神「このテーブルは、俺が読書に使う。…お前のような愚民の血で汚していい代物じゃない…ただ、それだけだ」
「あはは、十神クンらしいや! そうだよね、ボクなんかの為に止めてくれたわけがないよね!」
そういいながら、テーブルに置かれたカードを、嬉々として狛枝は集める。
「…それじゃ、ゲームを続けようか」
十神「フン、望むところだ」
329 = 323 :
「…ところでさ、一つ提案なんだけど」
十神「何だ? 今なら降参を認めてやってもいいぞ」
無論、狛枝は降参などするわけがない。
「実は…このゲームのルールを少し変更したいんだ」
十神「変更だと?」
「安心してよ。"十神クンには"有利にしか働かないルール変更だからさ…」
十神「含みのある言い方をするじゃないか。言ってみろ」
「…ゲームを始めてから気付いたんだけど、十神クンの持つ"才能"は…"超高校級の御曹司"だよね」
「だから、『奴隷』なんてカードはキミには似合わないと思うんだ」
十神「愚民にしては解ってるじゃないか。…だがそれがゲームのルールである以上、異存はない」
「そう言われちゃうと身も蓋もないんだけど、ボクが提案したいのは……」
「"十神クンがずっと『皇帝』側で勝負しよう"、って事なんだ」
十神「…は?」
あまりに定石を無視した狛枝の提案に、思わず十神から呆けた声が出る。
十神「狛枝、とか言ったな。…お前、自分が何を言っているのか解っているのか?」
基本的に、このゲームは『皇帝』側プレイヤーが有利である。
『皇帝』は5枚の中から4枚ある『平民』を討てれば勝利する。つまり、『皇帝』側の単純な勝率は80%だ。
ラウンド毎に『皇帝』と『奴隷』を交代するからこそ、ゲームの公平性は維持される。
にもかかわらず、狛枝は残り11ラウンド全てを自分が『奴隷』で行う、と言い出したのだ。
これがどれほど異常な提案かは、火を見るより明らかだ。
330 = 323 :
「もちろん……ボクが圧倒的に不利になるのは間違いないよね」
「でも、思い出して欲しいんだ。ボクの"超高校級の才能"をさ…」
狛枝凪斗の持つ"超高校級の才能"、それは…
十神「"超高校級の幸運"、か…」
「大正解! 自分で言うのもおこがましいんだけど……ボクはツイてるんだ」
「この条件でやっても、9割9分9厘ボクが勝てると思うよ…」
十神「…舐められたものだな」
怒りを通り越し、呆れる十神。
「気を悪くしたのなら謝るよ。ゴメン。…でも、正直運まかせの勝負なら、ボクは負けるはずがないんだ」
「だってボクは……"超高校級の幸運"だからね…」
「ホントはさ…十神クン、キミなら最初から『皇帝』を出してくる、そうボクは思っていたんだ」
十神「今更負け惜しみか? …見苦しいぞ」
「まあ、後からならなんとでも言えるよね。…それなら、もう一つ、ルールを追加しようか」
「これならボクが本気だってわかってもらえるだろうからね…」
ゾクッ ゾクッ
ただでさえ狛枝は不利に立たされるのに、更に驚くべきルールを付け加える。
「残りは確か、11ラウンドか……ねぇ、十神クン。キミがあと1回でも勝てたら、このゲームはキミの勝ちでいいよ」
十神「な、なんだとッ!?」
驚愕に十神の眼が見開かれる。
もはや公平性どころか、ゲームとして成り立っていなかった。
この条件における、狛枝の勝率はわずかに20%の11乗……0.000002048%にすぎないのだ。
「これでようやく五分五分、…いや、まだボクが有利かな?」
にもかかわらず、まだ自分には勝機が充分にある、と狛枝は平然と言ってのける。
十神「ふざけるな!」
テーブルに握り拳を振り下ろし、激昂する十神。そんな彼を狛枝は真っ直ぐ見つめている。
「ふざけてなんかないよ。ボクは…何よりも信じてるのさ……ボク自身の"超高校級の幸運"をね」
曇一つもない、確信に満ちた瞳。けれど、その視線は氷のように冷たい。
正気の沙汰とは思えない狛枝の言動に、十神の怒りや呆れは次第に恐怖へと姿を変えていく。
十神(俺は……恐れている……? いや、違うな…こんな愚民に、俺が負けるわけがないんだ!)
見え隠れする恐怖という感情。それを認めたくないという一心で、十神は狛枝の提案を呑む。
十神「いいだろう、すぐに後悔させてやる」
十神(そうだ、恐れる事はない。ゲームは俺の圧倒的優位なんだ……!)
「そうこなくちゃ。それでこそ…キミの"希望"は輝くんだから…!」
331 = 323 :
しかし…
「「オープン!」」
「あれ、またボクの勝ちだね……ふふふ」
「さっきまでの威勢はどこへやら…ひょっとして、ボクの見込み違いだったのかなぁ」
十神「だ、黙れッ! 次こそは…俺が勝つ…!」
けれど、ゲームを続行すればするほど、十神の思考は混乱と恐怖を極めていく。
速攻をかけ、初手から『皇帝』を出そうとも……
最後まで『皇帝』を出さずに、狛枝の自滅を待ってみても……
3回、4回と連続で『皇帝』を同じタイミングで出してみても……
…狛枝は必ず『奴隷』で『皇帝』を撃ち抜いてきた。
もはや、超能力で思考を読んだと言われても不思議ではない。
十神がいかなる戦略で挑もうとも、狛枝は持ち前の"幸運"でそれを凌駕する。
そうして、最初こそ余裕だったはずの十神は、精神的にも追い込まれていった。
残るゲームは……後1回。
「あれ…もうファイナルラウンドか…」
「なんだかガッカリだなぁ…憧れの人の"希望"の限界を見るのは寂しいもんだよ」
「夢を壊された気分とでも言うのかな…」
十神「……ッ!」
もはや、十神には狛枝の言葉に反論する余裕すらなくなっていた。
最後の勝負に負ければ、待つのは運命の"罰ゲーム"……そんな最悪の事態すら脳裏を過る。
十神(れ、冷静になれ……そうだ、落ち着け。落ち着くんだ)
十神(まだ勝率は4/5もある。ヤツが『平民』を出した時に『皇帝』を出す…それで終わりなんだ)
最後の戦略を考え始める。
速攻か、それとも最後まで『皇帝』を握ったままでいくか……
とそこまで考えて、十神はふと別の"可能性"を思いつく。
332 = 323 :
十神(……いや、待て)
十神(俺はもしかしたら、とんでもない"勘違い"をしていたんじゃないか?)
十神(自分の優位性を確信するあまり、普段なら見落とすはずのない"可能性"を見落としていたんじゃないか?)
フル回転する"超高校級の完璧"の頭脳。
十神はこれまでのゲームを振り返りながら、状況を分析していく。
十神("罰ゲーム"……"『皇帝』側の固定"……そして、"1度でも勝てば俺の勝ち"……)
十神(そうか、もしかしたら!)
思わず、十神の口元が緩む。そしてその様子を狛枝は見逃さなかった。
「あれ…どうしたの? さっきまでの"絶望"に満ちた顔とは大違いだね…」
十神「…どうだかな。だが、これまでとは違うぞ」
そう言うと、十神は裏向きのままテーブルに5枚のカードを並べ、じっくりと目を通す。
「おや、とうとう最後は運任せかい?」
「でもダメだよ十神クン。最低でも1度はセットする前に確認しないと…それがルールなんだから」
十神「お前に言われるまでもない。これはただの"確認"だ」
「ふーん…ま、いいけどね。もうボクの勝ちは決まったようなものだし」
余裕綽々な狛枝はそう挑発するが、十神は耳を貸さない。
十神(この自信、最初は自分の"超高校級の幸運"を絶対的に信頼しているからだと思っていたが…)
十神(ようやく…尻尾を掴んだぞ…!)
十神(最後には…この俺が勝つ。十神の名にかけてな!)
333 = 323 :
そして、ファイナルラウンドが始まった。
「それじゃ、始めようか……さあ、十神クン。キミの番だ」
十神「フッ…その手には乗らん。…お前の企みはもうわかっている」
「…何の事かな?」
十神「とぼけても無駄だ。お前の"イカサマ"の事だ」
「"イカサマ"だって? 十神クンも人聞きが悪いね…まさかボクなんかがキミを出し抜いてみせたっていうのかい?」
十神「そうだ。この俺の眼は誤魔化せんぞ!」
「それは違うよぉ…だって【カードに細工がない】事は、調べたキミが一番よく知っているじゃないか」
十神「それは違うぞ!」
B R E A K!!
「"違う"…何が違うのかな?」
十神「確かにカードは調べた。だがそれは、ゲームを始める前の事だ」
十神「今は……この通りだ!」
そう言って十神は『皇帝』のカードの裏を指差す。
十神「わずかだが、縁の部分が赤黒く変色している……明らかに他のカードとは違う!」
334 = 323 :
「おやおや……言われてみれば確かに。どうやら"血"のようだけど…」
十神「まだシラを切るか。…お前には『皇帝』のカードにマーキングをするチャンスがあったんだ」
「チャンス?」
十神「そうだ。狛枝…お前が、包丁で指を切断しようとしたあの時だ」
十神「俺が止めようが止めまいが、お前は最初から血を流すつもりだった…」
十神「そして、次のゲームに向けてカードを集める際に、俺の目を盗んで『皇帝』のカードの裏側に、自らの血を塗りつけた…」
「そ、そんなのただの偶然だよっ! だってあれは、十神クンが最初に勝ったから、そうなっただけじゃないか…」
十神「指を切り落とそうとするタイミングは、いつでもよかったんだ。俺が1勝した時点でなら、いつでもな」
十神「それに、あの凶行には、お前の"異常性"を俺に印象付けさせ、次の作戦に移行しやすくする狙いもあった」
「…次の作戦?」
十神「2つのルール変更だ。あれには、俺にずっと『皇帝』側でいさせるという目的があった…が、それだけじゃない」
十神「そうする事で、俺に『自分が圧倒的に優位に立っている』と思わせ、油断させる狙いもあったんだ」
十神「冷静な判断力を奪い、マーキングの発覚を防ぐという狙いがな……!」
十神「そう考えれば、お前のあの狂信的なまでの自信にも納得がいく」
335 = 323 :
「…………」
十神「図星のあまり、だんまりか?」
「…………あはっ…!」
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」
十神「な、何がおかしい?」
「…結論から言うと大正解! あははっ、十神クンのファインプレーだね!」
「『皇帝』のカードに血のマーキングを付けたのも、それをキミに使わせる為にルールの変更をしたのも、ボクの仕業さ…」
十神「…認めるんだな。不正を」
「うん、すべて正解だよ…ただ1点だけを除いてね」
十神「ただ1点だけ?」
「確かにカードには細工をさせてもらった…けど、ボクはマーキングなんか見ちゃいなかったんだ」
十神「…は?」
「マヌケな事に、ボクは自分で付けた印が自分でも判らなくなってしまったのさ…」
「そりゃそうだよね…"超高校級の完璧"であるキミが、やっとの事で見つけられたほど、小さな小さなマーキングだったんだ」
「節穴にも劣るボクの眼なんかじゃ…見分ける事も出来やしない…。ボクは…"イカサマ"すらできなかった最低なヘタレだったんだよ…」
十神「何を…言っている…?」
十神「だったら、あの連勝は一体なんだったというんだ!? イカサマでないなら…!?」
「そっか…そりゃ覚えてないよね。たかがボク如きの才能なんてさ…」
「さっきも言ったけど…ボクは自分の"幸運"を信じただけなんだ。これしか信じられるものがないからね…」
十神「嘘だ! 運だけで…運任せで勝てるわけが……」
「あるんだよ。それが」
十神「ッ…!!」
336 = 323 :
「まあいいけどね……不正がバレてしまった以上、この勝負はボクの負け、かな」
急激に熱が冷めてしまったように、意気消沈していく狛枝。
「それじゃ、今度こそ指を…」
包丁を手にしようとする狛枝を、十神は再び止める。
十神「待てッ! まだ最終ラウンドは終わっていないはずだ…!」
「あれ…もうキミの勝ちでいいって言ってるのに…どうしてそんなに食い下がるのさ?」
「せっかくボクが勝ちを譲るって言ってるのに、さ」
確かに、不正を見抜いた時点で、ゲームは十神の勝ちだった。
だが、それを良しとするほど、十神白夜のプライドは…王者のプライドは安くない。
十神「こんな形で勝利しても…なんの意味もない。これがゲームである以上、最後まで戦うべきだ…俺も…お前も」
十神「全力のお前を、全力で倒してこそ、勝利に意味がある!」
「……十神クン」
「どうやらボクは……キミの事を見くびっていたようだよ。キミの持つ"希望"は……今、輝いている」
「素晴らしいよ……"希望"が溢れている……」
うわごとのように、喜びの言葉を吐く狛枝。
「そんなキミのために、ボクができる事は……キミの"希望"の踏み台になる事だけ…」
「いいよ。勝負をしよう……最後の勝負をね」
十神「フン…元よりそのつもりだ。決着をつけるぞ!」
そして、運命のファイナルラウンドは幕を開ける!!
337 = 323 :
「…そうだ、最後の勝負はカードの裏面も見えないようにしよう」
「勝負に出す順番をあらかじめ決めておいて、5枚重ねた状態のまま、手で覆ってテーブルに出す…そして上から順番に勝負していくんだ」
「これなら、カードの裏は見えないし、不正のしようがないでしょ?」
「それでも…勝率が20%ならボクが勝ってしまうとは思うけどね……」
十神「……いいだろう。お前の"幸運"と、俺の"完璧"…どちらが優れているか、シロクロはっきりさせようじゃないか」
そう言うとカードの裏面を見せないように気をつけながら、十神はカードを選んでいく。
「ふふふっ…ボクはもう決まったよ」
十神「奇遇だな。俺も今決まったところだ」
「それじゃ、勝負といこうか」
十神「…いくぞ!」
「「セット」」
「「オープン!!」」
その結果は……
338 = 323 :
「……これはまた……ファンタスティックだね」
1枚目 十神『平民』 狛枝『平民』
2枚目 十神『平民』 狛枝『平民』
3枚目 十神『平民』 狛枝『平民』
4枚目 十神『平民』 狛枝『平民』
5枚目 十神『皇帝』 狛枝『奴隷』
…勝者は、狛枝凪斗だ。
339 = 323 :
十神「……俺の、負け、か……」
十神(負けるのは、いつ以来だろうか?)
十神(いや、物心がついてから、負けた事は一度たりともなかったはずだ)
十神(これまで、あらゆるゲームに勝利してきた、この俺が…)
十神(人間性を捨て、肉親ですら踏み台にしてきた、この俺が…)
十神(まさかこんなヤツに黒星をつけられるとは、な…)
十神(悔しさも、憤りも、屈辱もある…これが、敗者の味か…)
十神(確かに最悪な気分だ…けれど不思議と…悪い気はしない)
十神(全力を出して負けたんだ……後悔はないさ)
「さすがにヒヤっとしたよ……いつ『皇帝』が出てくるんじゃないかってね…」
十神「減らず口を……だが、吠えるのは勝者にのみ与えられた特権。今は黙して引こう…」
「十神クン……」
340 = 323 :
十神「"罰ゲーム"でも何でも、好きにしろ。…俺は、逃げも隠れもしない」
覚悟を決める十神に、無言のまま狛枝は右手を差し出す。
十神「…何のつもりだ?」
「ボクと…握手、してもらえないかな? それが……"罰ゲーム"、って事でさ…」
屈託なく微笑む狛枝。
「そもそも、本来ならボクの反則負けだしさ…引き分けみたいなものじゃない?」
彼の朗らかな笑顔は、苗木誠の"それ"とそっくりで…まるで憑き物が落ちたような錯覚すら感じさせる。
その様子に釣られたのか、十神もいつもの調子に戻っていく。
十神「……フン、仕方ないな。この俺と握手できるなんて、そうそうない機会だぞ。…光栄に思うんだな」
十神は力強く、狛枝の右手を握る。
「あはは…確かにそうだね。ありがとう、十神クン!」
交わされる握手。
十神「…次は、俺が勝つ。十神の名にかけてな…!」
「ふふふ…それは楽しみだよ」
そう狛枝が言うと、薄暗かったはずの図書室は、光に包まれ……十神白夜は意識を失った。
「さて、お次はと…」
独り言をつぶやきながら、狛枝は部屋を後にする。
彼の行方は、誰も知らない。
…To be continued?
341 = 323 :
今日はここまで。
343 :
舞ってた!
乙
344 :
死の体験くるかと思ってた乙
345 :
闇のゲームだったのになんか爽やか!
346 :
これは生き残りますわ……
乙!
347 :
来ないな
348 :
―NIGHT TIME―
深夜の娯楽室に人影があった。
その人物とは……"超高校級の格闘家"大神さくらだ。
彼女は誰かを待っているのか、時折周囲を気にしながら椅子に腰掛けていた。
大神「……」
そこに、パーカーを羽織った少年がやってきた。
いつものに比べると少しトーンダウンした声で、彼は大神さくらに話しかける。
「やあ、大神さん」
大神「苗木か。……いや、違う。お主、何者だ?」
「何者って、ひどいな。見ての通りボクは苗木誠だよ」
大神「侮るでない。姿こそ苗木だが……今のお主からは、禍々しい邪気のようなものを感じる」
「……さすがは"超高校級の格闘家"、大神さくらさんだね」
「その通り、ボクは苗木誠であって苗木誠ではない」
ドンッ☆
「今のボクを差す名前があるとすれば……それは"狛枝凪斗"さ」
大神「狛枝…凪斗…? まさか、二重人格……?」
「ま、そんなところかな。それよりさ、こんな夜中に何してたんだい?」
大神「…………」
「だんまりか。まぁいいさ。言いたくないなら言う必要もないしね」
349 = 348 :
「……けど、朝日奈さんなら来ないよ」
大神「今、なんと?」
「彼女なら来れないって言ったんだ。……だって、今"彼女は動けないから"ね」
そう言うと狛枝は、ピンク色のデジタルカメラを投げ寄越す。
カメラの液晶を目にした途端、普段なら大半の事では動じない大神が、驚愕の声を上げる。
大神「あ……朝日奈!?」
そこに映るのは、椅子に縛り付けられた"超高校級のスイマー"朝日奈葵の姿だった。
写真の彼女は、気を失っているのかうつむいており、表情は読み取れない。
褐色の膝の上には目覚まし時計のような物が置かれ、赤青緑と様々な色の配線がそこから伸びている。
大神「これは、まさか!?」
「そう、ご想像の通り……"爆弾"さ。爆発すればただじゃ済まないだろうね」
大神「き、貴様ァ!!」
狛枝に向かって鋭く伸びる筋骨隆々の腕。だが彼は、身をよじりあっさりと躱す。
「おっと、今ここでボクを殺すのはあまり得策とは言えないよ」
「あの爆弾は手作りでね……ボクなんかが見よう見まねで作ったから、セオリーなんて無視した構造になってるんだ」
「……解除できるのはボクだけだよ」
大神「くっ……望みは何だ?」
大神「殺すなら……我をやれ。朝日奈は……朝日奈は関係ない!」
「……何を勘違いしているのかな。別にボクは、キミや朝日奈さんに死んでほしいわけじゃないよ」
「"希望"の象徴であるキミ達を、ボクなんかが殺せるわけもないしね」
「むしろ望みはその逆、ボクを踏み台にして、キミ達の"希望"を輝かせて欲しいんだ……!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「"闇のゲーム"でね……!」
大神「ゲーム、だと!?」
350 = 348 :
「今回は、これを使う」
そう言って狛枝が懐から取り出したのは、毒々しいラベルが貼られた茶色の瓶だ。
中には白い粉末が入っており、おそらくは毒薬の類だろう。
「見ての通り、毒薬だ。それもスプーン1杯分くらいで致死量の猛毒さ」
大神「猛毒……」
「あとは、これも」
そして、狛枝はテーブルの上に、紙コップを6つ置いた。それには既に水が注がれている。
瓶の蓋を開け、おそるおそる毒薬の粉をスプーンで掬い出し……1つのコップにそれを入れた。
大神「まさか、"ゲーム"というのは……」
「ご想像の通りさ。いわゆる"ロシアンルーレット"ってやつだよ」
「このままだと、どのコップに毒が入っているかすぐ判ってしまうから、シャッフルさせてもらう」
そう言うと狛枝は、大神に後ろを向くように指示する。
「……ふう、こんなものかな。さあ、次は大神さんがシャッフルする番だよ」
「ついでにボクが不正をしてコップに目印をつけていないか、チェックもお願いするよ」
そう言うと狛枝は後ろを向き、耳を塞ぐ。
対する大神は何かを決意したように、頷いた。
大神「……わかった」
そうして、着々と"闇のゲーム"の準備は整っていく。
「ふう、それじゃ準備はできたようだね。今更説明する必要もないとは思うけど……一応ね」
「ルールは簡単だ。順番を決め、お互いにコップを1個ずつ選び、飲んでいく」
「見事毒入りを飲んでしまった方の負け……どうかな、シンプルなゲームでしょ?」
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