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    元スレ八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」

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    701 = 63 :



    輝子「……八幡…?」

    八幡「いいか輝子。今から、俺の知り合いの友達の兄貴の話をしてやる」

    「……ねぇ、それって…」



    凛がまさかという表情で見てくる。
    感の良い子は嫌いだよ。



    「それって、プロデューサーの…」

    八幡「いいから聞いとけ。為になる話だぞ?」

    「……分かった。とりあえず突っ込まずに聞いておく」



    渋々といった様子で聞きに入る凛。凛だけに。
    うむ。聞き分けの良い子は好きだぞ。




    八幡「そいつには、魔法少女の知り合いがいたんだそうだ」

    「絶対嘘でしょ!?」



    言った側から突っ込まれた。
    おいおいまだ一言目だぞ。

    702 = 63 :



    ちひろ「まぁまぁ、聞くだけ聞いてみましょう?」

    「はぁ…」



    酷い言われようである。
    まぁいい。続きだ。



    八幡「その魔法少女はな、ある願いを叶える為に魔法少女になったんだ」

    輝子「ね、願い……?」

    八幡「あぁ。想い人の、動かなくなった腕を治す為にな」



    ここまで聞いた所で、凛が何か思い当たったような表情をする。なに、知ってんの? ネタバレはしない方向でお願いします。



    八幡「その想い人の腕は無事治った。けど、そのおかげで少女は、毎日命がけで戦う日々を送るはめになった」

    輝子「……」

    八幡「しかも、想い人は何やら他の女と良い雰囲気になってるし、自分は戦う為に人間離れした身体になってるし、踏んだり蹴ったりだ」

    703 = 63 :


    ちひろ「うわぁ……」



    何とも言えない表情をするちひろさん。
    今度DVD貸してあげますよ。



    八幡「結局、少女は最後に後悔してる自分に絶望して、身を滅ぼした。想いを告げる事も無く、な」

    輝子「……」


    八幡「俺は、はっきり言ってその少女が嫌いだった」




    俺は、輝子に向かって言う。




    八幡「確かに結果的に彼女は後悔した。正義の為にとか言っておきながら、結局は自分の為だったんだと。後悔している自分が、誰よりも許せなかった。……けどな」

    輝子「……?」


    八幡「それがどうした?」




    俺は、彼女が自分の事を肯定してやれないのが許せない。




    八幡「例えそれが結果的に自分の為だったんだとして、やった事に後悔したとして、それでも、彼女がやったことは正しい事だったんだ。誰にでも出来ない事をやったんだよ」

    704 = 63 :


    下心があった。あわよくばと思った。
    それでも、悪い事をしたわけじゃない。絶対に良い事をしたんだ。
    恥じる事なんてない。胸を張っていい。

    彼女は確かに、正しい事をした。



    八幡「大体、あんな男の為に何であそこまで……!」

    「プロデューサー、ホントはそのキャラ好きでしょ」



    当たり前だ。魔法少女に嫌いな奴なんていない。
    ていうか、キャラって言うなキャラって。

    ……話が逸れたな。




    八幡「とにかく、別に後悔したっていいんだよ。輝子」

    輝子「……え…?」


    八幡「確かに失敗しかもしれん。けどお前は挑戦した。噛み噛みでも、転びまくっても、お前はやったんだよ」




    不安で、怖くて、やめようかと何度も思ったのだろう。
    それでも、彼女は劇に出た。
    後悔したくないと、行動した。

    705 = 63 :



    八幡「お前は出来る事をやったんだ。後悔したとしても、その時のお前を否定するな。お前は、胸を張っていいんだよ」



    否定するな。過去の自分を、肯定してやれ。


    お前は、頑張ったんだ。




    輝子「…ッ……八…幡」




    俯きながら震えている様子の輝子。

    ……え? ちょっ! お前何泣いてんだ!?




    「……あーあー…」

    ちひろ「比企谷くん、泣ーかせたー」



    ジト目をこちらを責めてくる女子二人。
    やめて! そんな小学生みたいな煽り方しないで! 昔のトラウマ思い出しちまうだろ!


    俺がどうしていいか分からずにおどおどしていると、輝子がデスクの下から出てくる。

    706 = 63 :



    輝子「……八幡」


    八幡「お、おう」



    澄んだ声に、思わずたじろぐ。



    輝子「わ、私、やってみる……」


    八幡「!」




    ……なんだよ、そんな顔も出来るんじゃねぇか。


    キノコは、置いていた。

    いつもの頼りない笑みはそこには無く。



    アイドルとして立つ、一人の少女の顔だった。



    707 = 63 :




    八幡「……んじゃ、早速練習始めるか」

    「…うんっ。そうだね」

    ちひろ「それじゃあ、待機してもらってる二人にも準備してもらいますね♪」



    あの二人ずっと待っててもらってたのかよ……
    もうなんか、本当、ごめんなさい。



    輝子「あ、あの……」

    八幡「ん? どうした?」



    遠慮がちに申し出る輝子。
    そういう所は変わらんね。まぁ輝子らしいが。



    輝子「れ、練習だけど、私、明日から出られない……」

    八幡「出られない? それってどういう…」

    輝子「準備が……ある」

    八幡「……」

    708 = 63 :


    オーディション本番まであと三日たらず。
    はっきり言って今の状態で面接練習無しは相当ヤバいだろう。
    ……けど。



    八幡「分かった。本番のオーディションには遅れるなよ」

    「いいの? プロデューサー」



    不安げな表情で訊いてくる凛。



    八幡「何か考えあっての事なんだろ。だったら、止めるわけにもいかねぇだろ」



    輝子の顔見りゃ分かる。
    あれはもう、逃げたりしない。……たぶん。



    「……そうだね」



    頷く凛。
    けどなんか、俺に対する含み笑いを感じる。なんだよおい。



    ちひろ「なんて言うか、らしくなってきましたね、比企谷くん」



    ニッコニコーと笑いながら俺を見るちひろさん。
    ほっとけ。こっちにも色々あったんだよ。

    さて、覚悟は決まった。
    果たしてどうなる、オーディション。


    709 = 63 :











    オーディション、当日ですよ! 当日!

    というわけで当日なのだが……輝子がまだ来てません。
    俺と凛は会社の外の広場で待機中。
    あと15分程で集合時間なのだが、大丈夫だろうか。

    凛はと言うと、さっきからその辺をウロウロしながらケータイをしきりに弄っている。落ち着け。



    「遅いな輝子……まさか事故にあったりとかしてるんじゃ…」



    そんな思い詰めた表情で不吉な事を言わんでくれ……
    けど、逃げたんじゃないかと思わないあたりは輝子を信じてるのが見て取れる。



    八幡「とりあえず座っとけ。お前が慌てても何も変わらん」

    「……そう、だね」

    710 = 63 :


    俺が座るよう促すと、凛は俺が座っているベンチに腰掛ける。すぐ隣に。
    何? なんでそんな近くに座るの? どこのガハラさんだよお前は。

    今度は俺が慌てるはめになった。
    とりあえず落ち着くため、さっき買ったMAXコーヒーを飲む。

    ……うむ。この甘さが俺を癒してくれる。

    すると凛がこちらを見ている事に気づく。なんぞ。




    「……喉乾いたから、一口貰える?」


    八幡「え? いや、まぁ、良いけど……」




    良いわけねぇだろ! 思わず了承しちゃったけど、良いわけねぇだろ!
    心の中でとはいえ、二回も言ってしまった。大事なことだからね。

    そんな俺の気持ちも知ってか知らずか、コーヒーを受け取った凛は缶を一秒程見つめた後、一口飲む。
    つーかお前、前に飲んだ時甘いとか言って不味そうな顔してなかったっけ? 喉乾いたんならジュースくらい買ってやんぞ。もう遅いけど。

    711 = 63 :



    「……ん。ありがと」



    コーヒーを返してくる凛。どうせなら全部飲み干してほしかった……飲み辛いだろーが。
    しかしここで捨てるのも勿体無いし、何より凛に良い印象を与えないだろう。

    くっ……仕方ねぇか……!

    俺は、迷いを振り払うかのように一気に口へと運んだ。





    「あっ!」


    八幡「ブゥーーーーッ!!」





    飲んだ瞬間に凛が声を上げるので、思わず吹き出す。

    な、なに、やっぱ不味かった!?



    八幡「え、あぁ、い、いや、ゴメン! でも勿体なかったし! ほら、食べ物を祖末にするのはいけないと言いますか、飲み物だけどと言いますか……」オロオロ

    「なに言ってるの……? それよりも、ほら、あれ輝子じゃない?」



    どうやらさっきの声は俺に対するものではなかったらしい。紛らわしいからやめてよね!

    712 = 63 :

    気を取り直して凛が指差す方向を見る。
    すると一台のタクシーが止まる所だった。



    八幡「あぁ。たぶんそうだな」



    もう時間もあまり無いし、おそらく間違いないだろう。
    俺たちはタクシーの近くまで寄り、人が降りてくるのを待つ。

    そして、彼女は降りてきた。



    八幡「遅かったな、輝k…」








    輝子「ヒャッハァァァァァァ!!!! 待たせたな二人共ォッ!!」







    八幡「」

    「」









    ……だれ?




    713 = 63 :




    輝子「フヒヒヒフハハハハアッハッハァーッ!!! これが! 私の! 真の姿だぁ!! ……あ、お代ですね。すいません今出します…」




    輝子だった。


    お代を受け取るとすぐさま走り去っていくタクシー。
    まぁそりゃさっさと降ろしていきたいよなぁ……コイツは。


    今の輝子の格好は……何と言うか、一言で言うなら、パンク? 

    黒を基調とした世紀末を想像させる派手な衣装。
    灰色の長髪には赤と青のメッシュが入っており、顔にはカラーペイント。

    ヘビメタのバンドでボーカルをやってそうである。

    ど、どうしてこうなった……




    輝子「フ、フヒヒ……ど、どうかな……八幡」

    714 = 63 :


    しかし中身はちゃんと輝子のようだった。

    まさか、お前にこんな一面があったとはな。プロデューサーびっくり。
    つーか、準備ってこういう事だったのね……



    八幡「う、うん。良いんじゃないか? め、目立つし」



    俺が苦し紛れにそう言うと、輝子は目を輝かせて喜ぶ。輝子だけに。



    輝子「目立ててる? 目立ててる? フフ…」



    そ、そんなに目立ててるのが嬉しいのか。
    なるほど。この格好にはそういって輝子の思いが現れてるんだな。

    そんで、凛さんはどう思います?




    「」




    まだ固まってた。



    輝子「り、凛ちゃん」

    「ふぇっ!? あ、な、何?」

    輝子「ど、どう。これ……?」

    715 = 63 :


    困った顔で俺を見る凛。
    安心しろ。俺も大分困ってる。



    「……輝子は、どう思ってるの?」



    逆に凛がそう訊くと、輝子は一瞬驚いたような顔を見せた後、微笑んだ。




    輝子「こ、こういうの、ちょっとだけ憧れてた。周りの目なんて気にしないで、思いっきり自分を表現してるみたいで……フフ……や、やっぱり、変かな…?」


    「……ううん。そんな事ない」




    凛は首を振った後、輝子の手を握る。



    「正直最初は驚いたけど……輝子が、自分が好きでそうしてるんなら、私は良いと思うよ」

    輝子「り、凛ちゃん……」

    「プロデューサーもそう思うでしょ?」



    そこで俺に振るんかい。

    まぁ、でもあれだな。大体の事は凛に言われちゃったし、俺から言える事は一つだな。

    716 = 63 :


    八幡「当たり前だろ。お前らはお前らのやりたいようにやれ。俺はそれを応援してやる。……プロデューサーだからな」



    言わせんな、恥ずかしい。



    「あはは、デレたね」

    輝子「フヒヒ、うん……デレた」



    うるせぇよ。



    八幡「ほら、もう時間ギリギリだから行くぞ!」

    「あ、待ってよプロデューサー!」

    輝子「フハハハ!! やるぜぇ! オーディション!!」



    会社の中へと歩んでいく三人。
    正直上手くいく予感なんて全然しないが……

    けど妙に自信満々で、俺たちはオーディションに向かったのだった。




    717 = 63 :











    八幡「さぁ、久々に反省会やるぞー」

    「う、うん」

    輝子「フ、フヒヒ……」

    ちひろ「まぁ結果は残念だったんですけどね……」



    そんなハッキリ言わんでください。

    そう、結果は惨敗。二人とも面接で落とされてしまった。


    まぁなぁ……ぶっちゃけそんな気はしてた。
    面接が終わるのを待っている間、俺は廊下で待機していたんだが……


    「アッハッハッハ!! シイタケ! エリンギ! ブナシメジ! キノコ!」


    って聞こえてきた瞬間に「あ、これダメだな」って思ったもん。

    718 = 63 :


    輝子「フヒヒ……お題がお吸い物じゃなかったのは盲点だった……」

    「敗因はそこなんだね……」



    けど、落ちたというのに輝子はどこか嬉しそうだ。
    オーディションに挑んだ自分に、胸を張っているよう見えた。

    ……それだけで、今回は儲けもんだったな。


    あと、何気に凛が普通に落ちた事に落ち込んでいた。
    まぁこれからチャンスはいくらでもある。始めから上手くはいかないだろう。



    八幡「次があるってのは、それだけで恵まれてんだ。落ち込んでるヒマなんてねぇぞ」

    「……うん。ありがと、プロデューサー」



    いや、何もお礼を言われるような事は言ってないんだが……
    深読みすんなよ。俺はそんなキャラじゃない。

    719 = 63 :


    ちひろ「さて、これでお仕事は一回終わったので、臨時プロデュースは終了ですね。お疲れ様でした」



    ちひろさんが場を取り締めるように言う。

    なに、臨時プロデュースってそういうルールあったの?
    けど確かに島村と本田の時も宣材写真一回で終わりだったな。仕事と言えるかは微妙だけど。



    輝子「フフフ……い、今まで、お疲れ様でした……」



    深々と頭を下げる輝子。
    やめろ、デスクの下でそんな事されると女の子に土下座させてるように見えちゃうだろうが。
    つーか、最後までお前はそこだったな。
    輝子らしいっちゃ、輝子らしいが。



    八幡「……大丈夫か?」

    輝子「……うん。プロデューサーがつくまで、な、なんとか頑張る……それに」


    八幡「それに?」



    輝子「プロデューサーじゃなくなっても、八幡は……と、友達だから」


    720 = 63 :


    珍しく照れたように言う輝子。
    あぁくそ、可愛いな!



    八幡「ま、前にも言ったが、俺はお願いされて友達には…」

    輝子「うん。だから、勝手になる」




    輝子は、どもりもせず、キョドりもせず、ハッキリと言った。





    輝子「私は、八幡の事、親友だと……思ってるから」





    その目にはもう、不安の色も、諦めの色も、無かった。




    八幡「……勝手にしろ」


    輝子「うん。勝手にする……フヒヒ」




    畜生。
    まさか俺が、輝子に言い負かされるなんてな……

    721 = 63 :



    輝子「も、もちろん凛ちゃんの事は親友だとずっと思ってたけどな……フヒッ」

    「輝子……」



    輝子「……また、キノコ食べ放題行こう…」

    「それは嫌かな」




    そこは嫌なんですね。
    凄い感動した顔をしていたのに、その話題になった途端にこれである。
    余程あのキノコ地獄が効いたと見える。



    ちひろ「よぉーし! それならばオーディションの打ち上げって事で、焼き肉行きましょうか! デレプロ奉仕部顧問として、私奢りますよ!」

    「えっ!?」

    輝子「ヒャッハァーー!! テンション上がってキターーーーッ!!!」



    やっぱりちひろさん顧問だったんですね。
    つーか、あんたが飲みたいだけでしょそれ……

    722 = 63 :


    ちひろ「いやー久々に美味しいビールが飲めそうです♪」

    輝子「フヒヒハハハ……何から食べよう……シイタケ…?」

    「ねぇ、行くのは焼き肉だよね? そうだよね!?」


    八幡「……やれやれ」



    騒がしく姦しい。

    けれどこの環境に、慣れてしまっている自分がいる。
    それでも、気分は悪くない。


    この感じは、奉仕部を通して出会った連中と一緒にいる時と、何処か似ている。

    プロデューサーになって、疲れる事や嫌になる事も多い。


    けど、それでもーー




    後悔なんて、していなかった。




    723 = 63 :

    というわけでキノ子編終了! まだ登場するとは思うけどな!

    次回はラーメン回かなー。

    724 = 682 :

    乙!
    凜ちゃん順調にデレてんなー
    たまらんなー

    725 = 63 :

    もう人ほとんどおらんとは思いますが、凛ちゃん誕生日記念でおまけ投下したいと思います。
    もう朝だ!

    726 = 63 :


    オマケ

    「やはり俺の誕生日サプライズはまちがっている。」





    ある夏の日。

    シンデレラプロダクションの事務スペース。
    そこに二人はいた。



    八幡「……あちぃな」

    「……うん」



    私こと比企谷八幡と、その担当アイドル渋谷凛である。



    「プロデューサーは、何やってるの?」



    いつものカーディガンを脱ぎ、ネクタイを緩め、シャツの襟口をパタパタとしている凛。
    やめてくれませんかね。目のやり場に困る。



    八幡「一般Pのやる定時報告書だよ。やっとかねぇと後がうるせぇんだ」

    727 = 63 :


    主に前の席に座っている鬼とかな。
    ちなみにその鬼は用事にていない。



    八幡「これが終わったら、その後は帰るよ」

    「……ふーん」



    興味無さげに応える凛。ホントに興味無さそうだな……



    八幡「お前こそ、今日は仕事もレッスンも無いだろ。何してんだ?」

    「別に。ただ何となく、ヒマだったから」

    八幡「そうか」



    ここにいる方がヒマな気もするけどな。
    ま、それは言わぬが花だろう。



    八幡「……」カタカタ(パソコンを打つ音)

    「……」

    八幡「……」カタカタ

    「……ねぇ」

    728 = 63 :


    手持ち無沙汰なのか、話しかけてくる凛。
    俺、一応作業中なのだが。



    八幡「なんだ?」カタカタ

    「今日って、何の日か知ってる?」

    八幡「……いや」カタカタ

    「……そう」



    それで会話終了。
    凛、若干膨れっ面の様子。

    なんなんだ一体……



    八幡「……」カタカタ

    「……」

    八幡「……」カタカタ

    「……ねぇ」

    729 = 63 :


    今度はなんだ。
    頼むから答えやすい話題にしてくれ。



    八幡「どうした?」カタカタ

    「プロデューサー、私のプロフィールとか読んでる?」

    八幡「まぁ、一応」カタカタ

    「……あ、そう」



    またも会話終了。
    凛、目に見えて不機嫌なご様子。

    ホントなんなんだ……



    八幡「それがどうしたんだ?」カタカタ

    「別に、何でもないよ」



    あからさまに何でもなくねぇだろ。
    そんなムスッとした顔して。お団子でも入ってるんですか?

    730 = 63 :


    「……もういい」

    八幡「え?」カタk

    「帰る。じゃあね」



    そう言ってスタスタと去っていく凛。

    いや、ちょっ、あぁもう!



    八幡「ちょっと待った」

    「…ッ!」



    直ぐさま回り込んで、凛を制する。
    ったく、もうちょいだったってのによ。



    八幡「ほら、これ」

    「え?」

    八幡「プレゼントだよ。……誕生日おめでとう」



    顔を背けながら、ポケットに入っていた小包を渡してやる。
    凛は最初面食らっていたようだが、その後顔を赤くして取り繕う。

    731 = 63 :



    「誕生日? あぁ、そっか。ふーん、プロデューサーもお祝いしてくれるんだ…ありがと」



    何今思い出しましたみたいな顔してんだよ。さっきまで気づいてほしいアピールびんびんだったじゃねーか。



    「…あらためてお祝いされると、変な感じだね」

    八幡「本当はもう少ししたら、ちひろさんたちがプレゼント用意して押し掛けてくる予定だったんだよ。それをお前が帰ろうとするから……」

    「だ、だってプロデューサーが……」ブツブツ

    八幡「あ?」

    「何でも無い!」



    またもそっぽを向く凛。
    喜んだり不機嫌になったり、忙しい奴だな。



    「……これ」

    八幡「へ?」

    「……プレゼント。二日遅れちゃったけど、誕生日おめでとうプロデューサー」

    732 = 63 :


    お返しとばかりに小包を渡されてしまう。あ、誕生日って、そっか。



    「二日前はお休みで会えなかったから、今日渡そうと思って……プロデューサー?」

    八幡「あぁいや、そうか……俺もう誕生日過ぎてたんだな」

    「忘れてたの!?」



    だってここ最近忙しかったし、特に誰にもお祝いされなかったし……いかん涙が出て来た。



    八幡「ま、まぁとにかく……ありがとな、凛」

    「……うん。どういたしまして」



    笑顔で応じる凛。
    ……やっぱ、笑ってる顔が一番良いな、お前は。



    「そうだ。プロデューサー、来年は8月9日にお祝いしようよ」

    八幡「はぁ? なんでだよ」

    「……だって」

    733 = 63 :



    凛は少しだけ言い淀んだ後、髪をかき上げ、照れたようにまた笑みを浮かべる。




    「それなら、二人で誕生日を祝えるでしょ? 間をとってさ」




    ……ホント、勘違いするからやめてくれ。



    八幡「……今度からお前の事は、ぼっちキラーと呼ぼう」

    「なんで!?」



    お互いに交わす、他愛の無い会話。

    来年もこうしてお互い祝えるような関係でいられるのだろうか。
    それは分からない。

    けどそれでも、今は隣にいる。


    なら、今はそれで良いか。

    734 = 63 :



    ちなみに俺が貰ったのは、ネクタイピンだった。

    こんなオシャレアイテム、俺に似合うか心配だったが、凛が選んでくれたからな。
    使わない理由はない。つーかこれと小町のネクタイが合わさって最強コンボじゃね?


    そして俺があげたのは、アイオライトのネックレス。
    決して高価なものではないが、凛は喜んでくれたし、まぁいいか。




    アイオライト。

    夢や目標、自分らしさへと導く石。




    何だか気恥ずかしいので意味は言わなかったが……
    ま、しばらくは黙っておくとしよう。

    少なくとも、来年までは、な。





    おわり


    735 = 63 :

    というわけで凛ちゃん、ヒッキー、誕生日おめでとう! もう8月11日だけどね!

    感想もらえると調子乗って投下量も増えると思うでの、よろしくお願いします。

    736 :

    乙、面白かった。

    凛ちゃん誕生日おめでとう!

    737 :

    八幡の誕生日は知ってたが、凛と近かったんだな

    738 :

    おつおつ

    凛ちゃんかわいいよ

    739 :


    あなたならもっと書けるはずはずなのだけれど

    740 :

    乙である
    けぷこんけぷこん凛かわいい

    741 :

    面白かったよ!
    本編もボリュームあったし、番外編も投下してくれるなんてメタボッ腹だぜ!
    でも卯月ちゃんと未央ちゃんの暇だからついでに参加します感が切ない(´;ω;`)

    742 :

    おっつおっつおっつ~♪ きらりの出番はまだかにぃ~?

    743 :

    早く楓さんに大人の余裕で翻弄されるところが見たい
    それに嫉妬する凛ちゃんも

    745 :

    星輝子(15) アイドルとして輝きだした!
    面接中はきっとこんな感じ

    746 = 743 :

    合成した瞬間の驚きといったら……

    747 :

    雪乃と凛で修羅場モードとかどうよ

    748 :

    もう一戦目は終わったよ。
    次は小町と絡むか未央ちゃん総武高前に出没とか期待してる。

    749 :

    八幡Pは責任持って一生キノコの面倒を見るように

    750 :

    好きな大人組はあいさんと楓さんな1です。

    今日は投下出来ませんが、次回のラーメン回の参考までに安価を。
    ラーメンが好きそうなモバマス勢アイドルって誰ですかね? ご協力お願いします!


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