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    元スレ八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」

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    601 = 63 :


    小学生とは怖い生き物だ。というか子供が怖い。
    なんであんなに思った事をそのまま言っちゃうの? せめて本人のいない所で言ってほしい。泣いちゃう。つーかあん時は小学生だったからホントに泣いていたんじゃ……?


    と、俺が過去のトラウマに悶々とし始めていると、朝食の準備を終えた小町が向かいに座る。
    そのエプロンを自然に椅子の背もたれに掛ける所が、妙に自然で、何と言うか、良いですね。

    そうアホな事を考えていると、小町はクスッと笑って言ってくる。



    小町「でもでも、それでもお兄ちゃんは、待つ事はやめなかったんでしょ?」


    八幡「……まぁ、な」



    それだけ聞くと凄い一途な人みたいだが、実際は信号待ちをしているだけだ。



    小町「なら良いじゃん。お兄ちゃんのそういう所、小町は好きだよ? あ、今の小町的にポイント高ーい♪」


    八幡「……あ、っそう」

    602 = 63 :


    そりゃこっちの台詞だ、パカタレ。
    八幡ポイント高過ぎて攻コスト以外にも振り分けたくなるだろーが。

    全く。そんな事を言うから、こんな立派なシスコンになっちまったんだぞ?
    こりゃ、当分嫁には出せんな。うん。



    そんなこんなで朝食終了。


    小町が後片付けをしてくれている間にネクタイを締める。

    ……なんか、いつの間にかスーツにも慣れてきたな。
    嫌だ嫌だ。文化祭の時もそうだったが、俺は働き始めると存外社畜っぷりを発揮してしまうらしい。
    こ、このままではシンデレラプロダクションに永久就職なんて事も……!?



    八幡「……いや、それは無いか」



    この企画の中に、優秀な人材を発掘するという目的が少なからずあるのは薄々分かってはいた。しかしその敷居の高さは、アイドルに勝るとも劣らないだろう。

    そのまま正社員に抜擢されるような人材なんて、100人中10人いたら多い方じゃないか?
    確かにそう言う意味では、このプロデューサー大作戦は良い選抜方法なのかもな。より実践的に手腕を測る事が出来るのだから。もしかしたら、これこそがその企画の本当の狙いなのかもしれない……それは考え過ぎか。


    ま、どちらにせよ俺には関係の無い事だ。

    抜擢される事は無いだろうし、万が一されるような事になっても、断るだろう。

    603 = 63 :


    しかし疑問は残る。

    一年後の総選挙で決められるシンデレラガール。
    そのプロデューサーは、果たしてどうなるのか?

    実際の所、明言はされていない。
    何か表彰でもされるのか、景品が貰えるのか、もしくはーー



    八幡「まさか、強制的に正社員になるって事はねぇよなぁ……?」



    それは勘弁していただきたい。
    まぁ、今の段階じゃ要らぬ心配か。
    捕らぬ狸のなんとやらだ。そんな事は、凛がシンデレラガールになってから考えればいい。



    八幡「……ん?」



    今何か、違和感を感じた。
    それは別に病気の予兆とか、前兆の感知なんてものでもない。俺に幻想はぶち殺せない。

    何と言えば良いのか、自分自身の思考に対する違和感、とでも言えばいいのか?

    うーむ謎だ。

    604 = 63 :


    八幡「……」

    小町「およ。どうしたのお兄ちゃん。ネクタイ締めたまま固まっちゃって」



    俺が思考の渦に巻き込まれていると、支度を終えた小町がやって来た。いつの間にやら、家を出る時間になっていたようだ。



    八幡「なんでもねぇよ。さっさと出るか」

    小町「そだね。……あ! そうだった、お兄ちゃんに言っときたい事があったんだ」



    玄関に向かっている最中、急に思い出したように言う小町。なんか嫌な予感がするんですが……



    小町「お兄ちゃんの担当アイドルの……えぇーっとー…凛、さん? だっけ? 今度家に連れて来てよ!」

    八幡「ええー……やだよ」



    いや普通に嫌だ。ハズイし。
    つーか、別に呼ぶ理由なくなくない?



    小町「良いじゃーん、小町も挨拶しときたいし。それに、新たな嫁候補だよ? これが会わずにしてどうしろと!」

    八幡「どうもしなくていい。つーか担当アイドルと結婚するとか、そんな簡単にセーラー服は脱がせねぇんだよ!」

    605 = 63 :


    凛はにゃんにゃんなんてキャラじゃないしな。
    ていうか何。この子、なんでこんなにテンション上がってんの? 萌えじゃなくて燃えなの?



    小町「でも、結衣さんと雪乃さんとは会ったんだよね?」



    そして何故知っているし。いやまぁどうせ由比ヶ浜あたりから聞いたんだろうが。
    女子の情報網とはかくも恐ろしいものである。



    小町「良いなー。なんで小町も呼んでくれなかったの? そんな面白そうな場面に立ち会えなかったなんて……くっ! 小町一生の不覚!」

    八幡「別になんも面白くもない。つーかお前を呼ばなかった事は八幡一生の功績だったな」



    もしも呼んでいたらどうなっていた事か。それならばまだ卯月や本田が一緒の方がマシである。……いや、どうだろう。それはそれでウザイな。


    どうにか別の話にそらしつつ、小町と雑談しながら家を出る。

    小町は学校、俺は会社へ行く為駅へ。うわぁ、なんか俺、父親になった気分だ……
    どちらにせよ小町は嫁に出さんがな(迫真)。

    606 = 63 :


    通勤&通学している途中、ふと横断歩道にさしかかる。信号は赤。
    青になるのを待っている中、思い出すのは今朝の会話。


    そして、この交差点は一年前の……




    小町「お兄ちゃん」



    小町の一言で我に帰る。
    少しばかり考え込んでしまっていたみたいだ。



    八幡「どうした?」



    小町の方を向くと、何故かは知らんが、笑っていた。





    小町「いつか、一緒に隣で待ってくれる人と出会えるといいね」




    607 = 63 :









    「もちろん小町は一緒に待つけどね。だってお兄ちゃんの妹だし。あ、今の小町的にポイント高ーい☆」


    そう言い残して小町は学校へ向かっていった。
    今日は朝から高ポイントの連続だな。そろそろ守コストにも振り分けるか。


    嫌な事も良い事もあった朝を過ごし、我がシンデレラプロダクションへと出社する。我がとか言っちゃったよ完全にリーマンじゃんオレェ……


    事務所には数人のアイドルと一般Pがいた。各々が仕事のスケジュール確認や、仕事前の支度へと勤しんでいる。うむ、何故だか頭が痛くなってくるな。

    そんな中を颯爽と突っ切り、自分のデスクへと向かう俺。
    というか、勝手に使ってるだけなのだが。

    いや、でも輝子よりマシじゃない? あいつデスクの下にキノコ栽培してんだぜ?
    しかもこの間思わず蹴ってしまったら怒られたし。怖い。キノコ怖い。

    608 = 63 :


    事務スペースには既にちひろさんがいた。ご苦労様ですな。

    ……前々から思っていたのだが、こうして仕事をしているちひろさんを見ていると、なんか既視感があるんだよなぁ。何でだろう。



    八幡「おはようございます」

    ちひろ「あら。おはようございます比企谷くん」



    動かしていた手を止めて挨拶を返してくるちひろさん。



    ちひろ「昨日話したオーディションの件、考えてくれましたか?」

    八幡「ええ、まぁ」



    例のオーディション。
    まだ出るかどうかは決めていないのだが、俺の一任では決められない。



    八幡「やっぱり、本人たちの意思に任せようかと」

    ちひろ「そうですねぇ……それが一番良いのかもしれません」

    609 = 63 :


    頷くように応じるちひろさん。
    意外だな。てっきり投げやりだなんだと言われるかと思っていた。

    そんな俺の気持ちが伝わったのか、ちひろさんは笑いながら補足するように話していく。



    ちひろ「比企谷くんだって、ちゃんと色々と考えてその結論だったんでしょう? それくらいは分かりますよ。私だって伊達にアイドル事務所の事務員をやっていませんよ」

    八幡「そんなもんですか」

    ちひろ「ええ。そんなものです。デレプロ奉仕部の事だって、比企谷くんの事を信用しているから頼んだんですよ?」

    八幡「ダウト」

    ちひろ「残念! 本当です♪」



    冗談で誤摩化す作戦だったのに、更に返されてしまった。や、やりおるなこの事務員……!
    どうにか冷静を保ちつつ、なんて事ない風を装う。



    八幡「……まぁ、そう言う事にしておきますよ。けど、良いんですか? 特定のアイドルに肩入れはしないって言ってたのに。席まで使わせてもらってるし」



    本当に今更だが、大丈夫なのだろうか。後になってインチキとか言われたらどうしよう。

    610 = 63 :


    ちひろ「前にも言いましたけど、デレプロ奉仕部を請け負ってくれているお礼ですよ。むしろこれでも見返りが少ないと思っているくらいです」


    これで見合ってないって、この人、この先どれだけの臨時プロデュースをさせるつもりなのだろう……
    俺が戦慄していると、ちひろさんは照れたように笑った。




    ちひろ「って言っても、本当には近くに置いておきたいだけなのかもしれませんね。あなたたちは、見ていて面白いから」


    八幡「っ!」




    ーーあぁ、そうか。


    今の台詞を聞いてようやく分かった。
    この人を見て既視感を覚える理由が。


    似ているのだ。

    我が担任であり、生活指導でもあり、俺たち総武高校奉仕部の顧問でもある。


    あの人に。

    611 = 63 :


    ちひろ「? どうかしたんですか?」

    八幡「……いえ」



    性格も、容姿も、全然違うのに。

    それでも、何処か似ていた。



    八幡「ちひろさん」

    ちひろ「はい?」

    八幡「今度、ラーメンを食べに行きましょう」



    おせっかいで、お人好し。
    もしかしたら、ちひろさんも教師に向いているのかもな。



    ちひろ「よく分かりませんが……是非♪」



    その笑顔を見て、そう思った。





    ……あ、あと独身ってとこも似てるな。やっぱ仕事に生きているからだろうか。
    これは言わないでおこう。

    この人にまで手を出されるようになったら、俺の身が保たないしな。


    612 = 63 :








    「出るよ。もちろん」


    即答であった。
    確かに凛はそう言うだろうと思ったけど、本当に早い。どれくらい早いかってーと、野球部の返事がニンバス2000なら凛はファイアボルトくらい早い。クィディッチ出れるレベル。いや出るのはオーディションだけども。




    輝子「……で、出たい、とは、思う…」


    遅かった。というか曖昧だった。
    大丈夫? お前の箒折れてんじゃない?
    こりゃ、クィディッチには出れそうもないな。いや出るのはオーディションだけれども。




    八幡「……じゃあ、二人とも出るって事で良いんだな?」


    「うん」

    輝子「う、うぅん……」



    今のは返事なのか微妙な所である。

    613 :

    つまり嫁ぎ遅れると

    614 = 63 :


    ちひろ「まぁ最初は書類選考ですし、気軽な気持ちで応募してみるのも良いと思いますよ」


    ちひろさんがフォローしてくれた。
    まぁ実際その通りだ。まずは書類選考、それを通った後に面接だ。一次で落ちたら話にならない。



    輝子「そ、そっか……書類選考があるのか……フヒヒ」



    おい。何でちょっと嬉しそうなの? 完全に落ちたら落ちたで良いと思ってるよね?
    そんな輝子も心配だが、ある意味ではもう一人の少女も心配だ。



    「……」



    あからさまに緊張している。
    どう見ても緊張している。誰が見ても緊張している。



    八幡「……大丈夫か?」

    「え? あ、あぁうん。大丈夫だよ」



    大丈夫な奴はそんなどもらねぇよ。ソースは俺。
    見ろ、こうしている今だって油断するとカタカタと手が震えてくる。たぶん営業行く前とか生まれたての子鹿みたいになっちゃうぞ。

    615 = 63 :


    八幡「あまり無理はすんなよ。頑張るのと無理するのは別物だからな」

    輝子「フフフ……八幡は、良い事を言う…」

    八幡「お前は多少無理をするくらいで丁度いい」



    つーか、話しにくいからいい加減机の下から出てこないか? 他の人が見たら地震でも起きたのかと勘違いするぞ。もの凄く今更だが。



    ちひろ「お二人ともオーディションを受けるという事なので、説明を始めたいと思いますね。お願いします助手さん♪」



    え、72? 助手? ティーナでもいるの? 



    卯月「はーい♪ 助手の島村卯月です!」



    違った。むしろ83だった。

    いきなり現れた島村はどっからかホワイトボードを引っ張ってくる。
    そのホワイトボードには、大きく「オーディション概要」と書いてあった。

    お前、プロデューサーいないからって普段こんな事やってんのか……なんか涙が出てきた。



    ちひろ「まず最初に言っておくと、このオーディションはシンデレラプロダクション、つまりウチの会社にのみ持ってこられたお仕事です」

    616 = 63 :


    ちひろさんが説明をすると、島村がホワイトボードにかいつまんだ内容を書いて行く。すげぇ丸文字だ。



    ちひろ「要は“プロデューサー大作戦”に便乗して、話題を作るために回して頂いた仕事なわけですね。こっちとしても採用されれば知名度は一気に上がるし、向こうとしても会社のPRには持ってこいです。win-winな関係って事ですね♪」



    出たwin-win。なんかこういう仕事ってその言葉よく使いそうだよな。
    けど俺から言わせてもらえば、そんなの厳密にはあり得ないと思うけどな。
    自分の利益と相手の利益が完全に一致する事など無い。どこかでどちらかは妥協しているのだ。それが無ければそんな関係など出来っこない。

    それって、本当に“自分も勝ち、相手も勝つ”と言えるのだろうか。


    いや今はそんな事はどうでもいい、オーディションだオーディション。



    ちひろ「ここで重要なのが、他のプロダクションのライバルはいないという事です。これは若手ばかりのウチとしては大変良い事なのですが、裏を返せば、同じプロダクションの子がライバルという事でもあります」



    力強く「ライバル!」と書く島村。ドヤ顔可愛い。



    ちひろ「勝っても負けても恨みっこナシ! 大きな仕事としては、これがプロデューサー大作戦が始まって初の対決になりますかね~。ここまでで何か質問はありますか?」

    617 = 63 :


    「はい」


    隣の凛が手を挙げた。
    もう気分は学校の授業である。ホントに先生になっちゃったねちひろさん。



    ちひろ「はい、凛ちゃん」

    「今の所、オーディションを受ける人数はどれくらいですか?」



    ちひろ「そうですねぇ……ざっと30人くらいですかね」



    へぇ、意外だな。もっといるかと思ってた。
    シンデレラプロダクションには100人以上のアイドルが所属している。つまりこのオーディションに参加しようとしているのは、全体の三分の一以下という事になる。



    ちひろ「まぁ、その実態はプロデューサー不足というのもありますが……やっぱりアイドルの方向性を考えているんでしょうね。イメージタレントの募集ですから、厳密にはアイドルの仕事とは違いますし」

    八幡「はぁ……成る程」



    違いがよう分からんな。



    ちひろ「お二人はもちろん、受けるからにはこの会社の事はある程度調べているんですよね?」

    「うん。食品会社だよね」

    輝子「フヒヒ…ここのお吸い物は美味しい……松茸」

    618 = 63 :


    そう。今回受けるこの会社は食品会社だ。
    主にインスタント食品や冷凍食品。スーパーによく売られているあーゆーのである。



    ちひろ「その通り。つまりこの会社のイメージタレントという事は、食品関係のPRをするのが仕事になるわけです。CMとかで「この冷凍食品、冷凍とは思えない☆」なんて風にね」



    妙に芝居がかってたな今。ちょっとやりたいんじゃないの?
    ちひろさん、普通に見た目は奇麗だからなぁ。
    あと島村、その台詞は別に書かなくていいから。



    ちひろ「なので、そういう方面に向いてないと判断する所もあるって事ですね」

    「……私たちって、どうなのかな」



    出るって言った後にそれ言う?
    まぁ何事にも挑戦するってのは良い事なのかもしれんが。
    あまり深くは考えてなかったらしい。俺も。



    八幡「良いんじゃないか。今は兎に角色々やってみるのも」

    ちひろ「そうですね。無駄な経験なんてありません。自分の可能性を広げるという意味でも悪くないかと」

    輝子「……」

    619 = 63 :


    あのー輝子さん? 黙りこくってると怖いんですが……

    ま、まぁ、色々思う所もあるのだろう。今はたくさん悩ませとこう。



    八幡「んじゃ、オーディションは出るっつう事で。書類は出しておくから、お前らは一次通った時の為に面接練習しとけよ」

    「うん。わかった」

    輝子「……」

    ちひろ「それじゃあ、私が面接官役でお相手しますよ。他のアイドルの子たちも一緒に練習しようと思っていたので」



    着々と準備が進んでいく。

    さて、俺は少しでも有利になるように、会社の事でも調べますかね。



    とりあえず最初は『○○会社 ブラック』で検索だな。


    620 = 63 :









    八幡「足りない心を~♪ 満たしたくて駆け出す~♪」



    帰宅なう。
    夕方の千葉は良い。思わず歌いたくなる程な。

    オーディションまで一週間程。
    しばらくはその対策に追われそうだ。
    あいつらも頑張ってるし、俺も挨拶回りに……


    ……また違和感だ。何なんだ一体?


    自分で自分に違和感を感じるとか、情緒不安定なのか俺は。

    ま、考えたってしょうがない。早く帰って風呂にでも入ろう。




    八幡「見上げた空から~♪ 跡辿っt…」

    「あれ? 比企谷か?」

    八幡「…ッ!」

    621 = 63 :


    ま、また歌ってる所を聴かれてしまった。
    今度は何、765プロにでもスカウトされるの? やよいちゃんに会えるならそれもやむなし。

    しかしそんな事はもちろん無く、その上、聴かれたのは知り合いだった。



    「やけに上機嫌だな。良い事でもあったのか?」

    八幡「……別にそんなんじゃねぇよ。葉山」




    葉山隼人が、そこにいた。




    葉山「ハハ、悪い悪い。別にからかうつもりはなかったんだ。ただ……」



    苦笑混じりに話す葉山。どこか躊躇っているようにも見える。



    葉山「元気にやってるみたいで、安心したよ」

    八幡「……お前」

    葉山「……ごめん、平塚先生に聞いたんだ。あのテレビでやってた、プロデューサーやってるんだろう?」

    622 = 63 :


    あ、あの人、言ってやがったのか!
    雪ノ下と由比ヶ浜には言ってないんじゃなかったの? もしかして面白がって黙ってたのか……



    葉山「俺には教えとくって、言ってくれたんだ。安心してくれ、他の皆には言い触らしたりしてないから」

    八幡「……そうかよ」



    まぁ、別にそこは心配していない。コイツの事だ。特に口止めなんてしなくても、黙っているだろう。



    葉山「なぁ、比企谷」



    急に神妙な顔つきで話しかけてくる葉山。
    な、なんだよ。イケメンがそんな顔するときゅんとしちゃうだろ。





    葉山「どうして、プロデューサーなんてやってるんだ?」




    八幡「…………あ?」






    思わず呆けてしまう俺を見て、葉山は慌てて取り繕うに言う。



    葉山「ああいや、別に嫌な意味で言ったんじゃないんだ。ただ、なんて言うか……不思議だったんだ」

    八幡「不思議?」

    葉山「あぁ。……俺としては、比企谷がそうやって物事に前向きに取り組んでるの良い事だと思ったし、嬉しいと思った」

    623 = 63 :


    お前は俺の親か。
    思わずツッコミそうになったが、堪えて続きを待つ。



    葉山「けど何か……らしくない、とも思ったんだ。言っちゃ悪いが、お前は進んでそういう事をする柄じゃないだろう?」



    本当に言っちゃ悪いな。
    確かに自分でもそんな柄ではないと思うけども。



    葉山「だから気になったんだ。比企谷。どうしてプロデューサーなんてやっているんだ?」



    葉山はさっきと同じ質問を繰り返した。


    どうして、俺はプロデューサーをやっている?




    八幡「……」




    あぁ、そうか。


    違和感の正体はこれか。


    葉山のおかげで分かった。
    俺はずっと引っかかっていたんだ。

    いつの間にか、プロデュースする事を当然だと思っている自分に。

    624 = 63 :




    なんで、俺はプロデューサーをやっている?


    社長にスカウトされたから?

    平塚先生に勧められたから?

    担当アイドルが付いたから?



    どれも、違う。



    ならなんで、俺は……










    「今は、私の隣にいて」









    ふと、思い出す。


    625 = 63 :












    「隣で私のこと……見ててね」










    ーーそっか。


    そういう、事か。





    八幡「……裏切られても良いと思ったんだ」


    葉山「え?」


    626 = 63 :




    自惚れかもしれない。過信かもしれない。いつもの、勘違いかもしれない。



    それでも。



    俺は確かにあの時、彼女の言葉を嬉しく思った。

    彼女の思いに、応えたいと思ってしまった。

    例えそれがいつもの勘違いで、いつのものように俺が傷つく事になったとしても。




    俺は、凛をプロデュースしたいと思った。




    彼女を信じずに、彼女が傷つくくらいなら。

    俺が裏切られて、俺が傷つく方がマシだ。


    627 = 63 :




    八幡「頼られてるなんて不覚にも思っちまったから、やるんだよ。それが勘違いだったんなら、俺がダメージ負うだけですむからな」



    だから、俺はやりたいようにやるだけだ。



    葉山「……そうか」



    ぽつりと言葉を零す。
    葉山は何かを諦めたような、そんな表情を浮かべていた。




    葉山「君は変わらないな。相変わらず好きにはなれそうにない。けど…」


    八幡「……」


    葉山「嫌いにも、なれそうにない」



    それでも、何処か清々しさを感じさせる笑みだった。



    八幡「……俺もだよ。馬鹿野郎」


    628 = 63 :




    その後無言で帰る。

    つーか、お前もこっちの道なのかよ。
    葉山は部活の帰りらしかった。



    八幡「ん……」



    人通りも、車の通りもない交差点。
    そこの横断歩道の前。

    信号は、赤だった。



    葉山「っと、赤か……」



    少しばかり気づくのが遅れたのか、後ずさるように止まる葉山。
    思わず、その様子をジッと見てしまった。

    629 = 63 :




    八幡「……」


    葉山「どうしたんだ比企谷? そんな意外そうな顔して」


    八幡「……いや。信号、待つんだな」


    葉山「? 赤なんだから当たり前だろ?」




    ホントに不思議そうな顔をする葉山。

    ……んだよ、俺が変みてぇじゃねぇか。




    葉山「比企谷?」


    八幡「……何でもねぇよ」




    苦笑と共に、ため息をもらす。

    俺が足を踏み出すと、葉山が慌てて追いかけてくる。




    信号は、青だった。





    630 = 63 :

    今日はここまで! 一応言っておきますが1はホモでも腐ってもいません。

    次回はホントのホントにキノ子編ラストです!

    631 :


    或る街の群青すき

    633 :

    おつおつ

    635 :

    おつおつ
    このヒッキーはなんつーか序盤の、かっこ悪く周りを助けるとこがかっこいい、って感じが強くて好きだわ

    636 :

    いいね、こーゆーの待ってたわ。
    乙、次も楽しみにしてる。

    637 :

    比企谷はホモ(確信)

    638 = 593 :

    >>637
    海老名さんはお帰りください

    639 :

    凛ちゃんのプロデューサーは……ぐふふ

    640 :

    >>639
    大西も帰ろう

    641 :

    葉山がただのかませ扱いじゃなかったしいろんなフラグが多かったし今後の展開が楽しみだわ。

    642 :

    ホモ臭い・・・
    いやいいんだけどね
    割と好きなんだけど
    ホモ臭い・・・

    643 :

    >>638
    海老名さんは春菜に捕獲されている可能性が微レ存

    644 :

    男2人になっただけですぐホモ扱いする奴はホントどうにかならんのか

    645 :


    きの子ラストか…次のアイドルはもう決まってるのかね?
    何にせよ楽しみだわ

    646 :

    呼び方が比企谷か
    葉山が八幡をどう思ってるから分からん

    647 = 635 :

    ところで葉山って今はもうヒッキーの事、比企谷って呼んでるんだっけ。

    648 :

    >>644
    わかる、海老名さんはホントどうにかして欲しい

    649 :

    >>647
    日常会話や周りに人がいるときはヒキタニ君
    八幡と一対一の真面目な話のときだけ比企谷
    のはず

    650 = 635 :

    >>649
    おっマジで
    もやもやが取れたわ。ありがとう


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