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元スレ晴人「宙に舞う牙」
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>>700
嬉しい
嬉しい
ふと疑問 ありえないけどもし渡のアンダーワールドに入ったら一体いつの出来事が映し出されるんだろうか…?
おとーやんとの共闘かな?
おとーやんとの共闘かな?
騒がしい街中を出て、少し歩いた所でソラは女に目隠しをしてくれと頼んだ。
どうして? 女の質問にソラは屈託の無い笑顔で「僕のサロンは秘密の場所にあるんです。あまり人に知られたくないんで」と答えた。
秘密というワードは女の興味を掻き立てると同時にそこに招かれる自分が選ばれた存在だと感じさせて優越感を与えた。
いいじゃない。女は目隠しを受け入れた。
黒い布で遮られた視界は一切の光も入らず何も見えない。女は闇の中を自分の手を握るソラの手が引く方向へ転ばないようにゆっくりと歩く。通り抜ける風の音と二人分の足音がよく響いた。
やがて女を導くソラは歩くのを止めて女から手を離した。女の後ろで布を引く音が聞こえる。周囲から音はほとんど聞こえなくなった。
「着いた……のかしら」
「そういうことです」
「目隠しまでしたんだから期待していいわよね?」
「もちろんです。ようこそ僕のサロンへ」
ソラは楽しそうな声で女の目隠しを外した。
暗闇の晴れた女の視界には赤い幻想的な空間が広がっていた。
赤は部屋一面に張られた艶やかで上品なワインレッドの壁紙やカーテンによるものだった。
上からチリンと音が聞こえる。
見上げると天井からは硝子製だったり色とりどりのビーズで飾られたオシャレなドアベルが吊るされている。揺れる度に風鈴のような綺麗な音を鳴り、心を落ち着かせてくれる。
ソラのサロンには温かみがあった。鉢の中で優雅に泳ぎ回る金魚たち。つぶらな瞳で見上げてくる愛くるしい犬の置物。生物を――命を感じることで癒されていく。
「気に入ってくれました?」
「ええ、とても」
女は期待以上のものを見せられ満足そうに頷いた。これだけのセンスを持つ人間ならさぞやいい腕をしているに違いない。
恐らくこの人間は極上のライフエナジーを持っている、と直感した。
私は運がいい。女は知らずのうちに生唾を飲み込んでいた。
「どうぞ座ってください」
ソラは女を椅子に座らせると女の長い髪をそっと触る。
「いい髪ですね。よく手入れされてる」
「ふふっ、私の自慢よ」プロに褒められて女は上機嫌に返した。
「髪の毛は人を魅了する程に美しいパーツです。それこそ人を狂わせてしまうくらいに」
「狂わせる?」
「はい。ルイジ・ロンギという人を知っていますか? 彼は幼い頃から髪を洗うことがとても好きだったそうです。それこそ理容店のシャンプーとカツラを盗んでしまう程に」
「そんなになの……」
「やがてロンギは成長して働き始めると収入を得ます。その収入……何に使ったと思います?」
「カツラとかシャンプーかしら?」
女は部屋の隅にさらし首のように並んでいるカットウィッグを見ながら答えた。
「ざんね~ん。正解は女性の洗髪でした。道行く女の人に声をかけては、お金を払うから洗髪させてくれと頼んだらしいですよ」
ソラは喋りながらよく手入れがされたシザーがいくつも収納された革製のケースを腰につけた。
「そこまで来ると頭の病気ね」
「実際その手の診断はされていたそうです。そんなロンギはある日ヒッチハイクをしていた女性を自宅に連れ込んで洗髪をしました。ここまでだったらロンギにとってはいつものことなんですが」
「どうなったのよ?」
ソラが語る髪の毛に異常な執着を示す男の物語の続きが気になって女は話を急かした。
「ロンギはまた髪を洗いたいという衝動にかられました。でも、もし彼女に拒まれたら? そう考えたロンギは彼女を縄で縛り、猿轡をかませたんですよ。動けなくなった彼女にロンギは衝動……いや欲望でしょうか。とにかく自分の心ゆくままにシャンプーをしました。洗ってはすすぎ、洗ってはすすぎを繰り返してやがてシャンプーが切れてしまうと今度は代わりに蜂蜜やサラダドレッシング、オリーブオイルなどを使いました。その内彼女が必死に逃げようと暴れだすので逃がさないために首を絞めたそうです。まあ、結果は」
「女性は死んだのね」
「はい。ロンギは遺体を壁に塗りこめて石灰で固めたそうです。その後、屋根の修繕に来た職人に見つかったらしいですけど」
「狂っているわね」女は嫌悪感で吐き捨てるように言った。
「はい、ロンギは間違いなく狂っていました。でも僕には彼の気持ちが分かる気がします。きっとロンギが殺した女性は何度も洗いたくなる程にとても美しい髪の毛をしていたんでしょうね」
「成程そういう見方もあるわけね」
「僕も綺麗で長い髪を持っている女の人は僕の手で整えてあげたいです。お姉さんのような髪は特に」
ソラは恍惚とした表情で女の髪をやさしく手櫛しながらシザーケースからシザーを一つ取り出して髪を添える。
次の瞬間、女の髪はバッサリと切り落とされた。
どうして? 女の質問にソラは屈託の無い笑顔で「僕のサロンは秘密の場所にあるんです。あまり人に知られたくないんで」と答えた。
秘密というワードは女の興味を掻き立てると同時にそこに招かれる自分が選ばれた存在だと感じさせて優越感を与えた。
いいじゃない。女は目隠しを受け入れた。
黒い布で遮られた視界は一切の光も入らず何も見えない。女は闇の中を自分の手を握るソラの手が引く方向へ転ばないようにゆっくりと歩く。通り抜ける風の音と二人分の足音がよく響いた。
やがて女を導くソラは歩くのを止めて女から手を離した。女の後ろで布を引く音が聞こえる。周囲から音はほとんど聞こえなくなった。
「着いた……のかしら」
「そういうことです」
「目隠しまでしたんだから期待していいわよね?」
「もちろんです。ようこそ僕のサロンへ」
ソラは楽しそうな声で女の目隠しを外した。
暗闇の晴れた女の視界には赤い幻想的な空間が広がっていた。
赤は部屋一面に張られた艶やかで上品なワインレッドの壁紙やカーテンによるものだった。
上からチリンと音が聞こえる。
見上げると天井からは硝子製だったり色とりどりのビーズで飾られたオシャレなドアベルが吊るされている。揺れる度に風鈴のような綺麗な音を鳴り、心を落ち着かせてくれる。
ソラのサロンには温かみがあった。鉢の中で優雅に泳ぎ回る金魚たち。つぶらな瞳で見上げてくる愛くるしい犬の置物。生物を――命を感じることで癒されていく。
「気に入ってくれました?」
「ええ、とても」
女は期待以上のものを見せられ満足そうに頷いた。これだけのセンスを持つ人間ならさぞやいい腕をしているに違いない。
恐らくこの人間は極上のライフエナジーを持っている、と直感した。
私は運がいい。女は知らずのうちに生唾を飲み込んでいた。
「どうぞ座ってください」
ソラは女を椅子に座らせると女の長い髪をそっと触る。
「いい髪ですね。よく手入れされてる」
「ふふっ、私の自慢よ」プロに褒められて女は上機嫌に返した。
「髪の毛は人を魅了する程に美しいパーツです。それこそ人を狂わせてしまうくらいに」
「狂わせる?」
「はい。ルイジ・ロンギという人を知っていますか? 彼は幼い頃から髪を洗うことがとても好きだったそうです。それこそ理容店のシャンプーとカツラを盗んでしまう程に」
「そんなになの……」
「やがてロンギは成長して働き始めると収入を得ます。その収入……何に使ったと思います?」
「カツラとかシャンプーかしら?」
女は部屋の隅にさらし首のように並んでいるカットウィッグを見ながら答えた。
「ざんね~ん。正解は女性の洗髪でした。道行く女の人に声をかけては、お金を払うから洗髪させてくれと頼んだらしいですよ」
ソラは喋りながらよく手入れがされたシザーがいくつも収納された革製のケースを腰につけた。
「そこまで来ると頭の病気ね」
「実際その手の診断はされていたそうです。そんなロンギはある日ヒッチハイクをしていた女性を自宅に連れ込んで洗髪をしました。ここまでだったらロンギにとってはいつものことなんですが」
「どうなったのよ?」
ソラが語る髪の毛に異常な執着を示す男の物語の続きが気になって女は話を急かした。
「ロンギはまた髪を洗いたいという衝動にかられました。でも、もし彼女に拒まれたら? そう考えたロンギは彼女を縄で縛り、猿轡をかませたんですよ。動けなくなった彼女にロンギは衝動……いや欲望でしょうか。とにかく自分の心ゆくままにシャンプーをしました。洗ってはすすぎ、洗ってはすすぎを繰り返してやがてシャンプーが切れてしまうと今度は代わりに蜂蜜やサラダドレッシング、オリーブオイルなどを使いました。その内彼女が必死に逃げようと暴れだすので逃がさないために首を絞めたそうです。まあ、結果は」
「女性は死んだのね」
「はい。ロンギは遺体を壁に塗りこめて石灰で固めたそうです。その後、屋根の修繕に来た職人に見つかったらしいですけど」
「狂っているわね」女は嫌悪感で吐き捨てるように言った。
「はい、ロンギは間違いなく狂っていました。でも僕には彼の気持ちが分かる気がします。きっとロンギが殺した女性は何度も洗いたくなる程にとても美しい髪の毛をしていたんでしょうね」
「成程そういう見方もあるわけね」
「僕も綺麗で長い髪を持っている女の人は僕の手で整えてあげたいです。お姉さんのような髪は特に」
ソラは恍惚とした表情で女の髪をやさしく手櫛しながらシザーケースからシザーを一つ取り出して髪を添える。
次の瞬間、女の髪はバッサリと切り落とされた。
「何をするの!?」
頭が軽くなった女は椅子から立ち上がりソラと対峙した。ソラは熱い息を漏らしながらカットされた女の髪をペットにそうするように愛おしそうに撫でていた。
「いい手触り。引っかかりもない綺麗な髪……でも」ソラの声が冷たくなる。「お姉さんみたいなバケモノには勿体無いから僕が貰ってあげるよ」
「貴様あっ!」
女は激昂すると宙に舞う牙をソラに向かって飛ばした。
「クフフ……」
ソラはグレムリンに姿を変えると二本の剣――ラプチャーで牙を叩き割った。
「最初から私がファンガイアだって知っていて近づいたのね」
「そうだよ。ハッキリ言って君たちは邪魔だからね。教えてもらうよ。君たちファンガイアがヘルズ・ゲートで何をしようとするのか。それとあのバイオリニストの人がどう関わってくるのか、全部ね」
グレムリンは素早い動きで女の元に近づくとラプチャーを喉元に突きつけた。
しかし女は脅されているのに恐怖で顔を歪めることすらしない。目の前のグレムリンなど存在していないかのような態度だ。全く気に留めていない。
女は襟足に手をやる。そこにはもう長く美しい髪はない。
「最悪ね。ファントムなんかが私の髪を触れて、あまつさえ切るなんて。まったく……」
女はグレムリンを睨みつける。
髪が短くなっても女本人が持つ美しさは決して損なわれなかった。むしろスッキリしたおかげで刃物のように鋭い美しさが増している。
女は全身から怒りのオーラを発してグレムリンをサロン一帯ごと吹き飛ばす。
サロンの残骸と一緒に外の廃工場の床を転がるグレムリン。
ワインレッドの壁紙とカーテンはグレムリンが流した血のように辺りに散らばった。
残骸に混じってボロボロになって中身をぶちまけているカットウィッグがいくつか転がっていた。
あれはまだ使えたし楽しめたのに。後でグールに始末させよう。
グレムリンは舌打ちをしながら立ち上がって体勢を立て直した。
「ライフエナジーもない家畜以下の残りカスが、万物の頂点に座するファンガイアを何と心得る?」
残骸の起こした土煙の中から黒いシルエットが浮かび、女の声が聞こえてきた。
ソラはシルエットに向かってラプチャーの衝撃波を放つ。煙の中に消えた衝撃波は弾かれた様な音を立てるだけだった。
煙が晴れていくとシルエットが明らかになっていく。
「答える必要はないわ。どうせあなたはここで死ぬんだもの」
それは全身が蘭の花のように美しいピンク色のファンガイア――オーキッドマンティスファンガイアの姿だった。
頭が軽くなった女は椅子から立ち上がりソラと対峙した。ソラは熱い息を漏らしながらカットされた女の髪をペットにそうするように愛おしそうに撫でていた。
「いい手触り。引っかかりもない綺麗な髪……でも」ソラの声が冷たくなる。「お姉さんみたいなバケモノには勿体無いから僕が貰ってあげるよ」
「貴様あっ!」
女は激昂すると宙に舞う牙をソラに向かって飛ばした。
「クフフ……」
ソラはグレムリンに姿を変えると二本の剣――ラプチャーで牙を叩き割った。
「最初から私がファンガイアだって知っていて近づいたのね」
「そうだよ。ハッキリ言って君たちは邪魔だからね。教えてもらうよ。君たちファンガイアがヘルズ・ゲートで何をしようとするのか。それとあのバイオリニストの人がどう関わってくるのか、全部ね」
グレムリンは素早い動きで女の元に近づくとラプチャーを喉元に突きつけた。
しかし女は脅されているのに恐怖で顔を歪めることすらしない。目の前のグレムリンなど存在していないかのような態度だ。全く気に留めていない。
女は襟足に手をやる。そこにはもう長く美しい髪はない。
「最悪ね。ファントムなんかが私の髪を触れて、あまつさえ切るなんて。まったく……」
女はグレムリンを睨みつける。
髪が短くなっても女本人が持つ美しさは決して損なわれなかった。むしろスッキリしたおかげで刃物のように鋭い美しさが増している。
女は全身から怒りのオーラを発してグレムリンをサロン一帯ごと吹き飛ばす。
サロンの残骸と一緒に外の廃工場の床を転がるグレムリン。
ワインレッドの壁紙とカーテンはグレムリンが流した血のように辺りに散らばった。
残骸に混じってボロボロになって中身をぶちまけているカットウィッグがいくつか転がっていた。
あれはまだ使えたし楽しめたのに。後でグールに始末させよう。
グレムリンは舌打ちをしながら立ち上がって体勢を立て直した。
「ライフエナジーもない家畜以下の残りカスが、万物の頂点に座するファンガイアを何と心得る?」
残骸の起こした土煙の中から黒いシルエットが浮かび、女の声が聞こえてきた。
ソラはシルエットに向かってラプチャーの衝撃波を放つ。煙の中に消えた衝撃波は弾かれた様な音を立てるだけだった。
煙が晴れていくとシルエットが明らかになっていく。
「答える必要はないわ。どうせあなたはここで死ぬんだもの」
それは全身が蘭の花のように美しいピンク色のファンガイア――オーキッドマンティスファンガイアの姿だった。
そういえば本編にマンティスファンガイアいたなぁ… カマキリってより死神だったが…
あれの色違いでいいのか?
あれの色違いでいいのか?
ファンガイアがファントムを嫌う理由って、恐怖の対象であるレジェンドドルガを彷彿とさせる姿というのもあるんだろうな。とか思ったり
どっちにもメデューサいるし
どっちにもメデューサいるし
すまん、かなり遅れてる
1ヶ月以内に投下しないと消えるんだっけ?
1ヶ月以内に投下しないと消えるんだっけ?
1ヶ月間一切の書き込みが無いか、2ヶ月以上作者の書き込みが無い場合にHTML化対象になる
ファンガイアから見てグロンギとかオルフェノクとかイマジンとか、一応は人間の括りに入りそうな種族ってどういう風に捉えているんだろうな。
大ショッカーでは仲良しさんだったけど
大ショッカーでは仲良しさんだったけど
どっかでたっくんがウルフェン族と間違えられる作品を見た気が…
ファンガイアから見た他人間系怪人って13魔族みたいに単品カウントじゃね?
グロンギ→そのままグロンギ族的な
アンデットもいるとしたらファンガイアの祖となる個体とかもいるのかな。アンノウンは逆にファンガイアが狩られ、ミラモンや魔化魍とは餌の取り合いしてそう
ファンガイアから見た他人間系怪人って13魔族みたいに単品カウントじゃね?
グロンギ→そのままグロンギ族的な
アンデットもいるとしたらファンガイアの祖となる個体とかもいるのかな。アンノウンは逆にファンガイアが狩られ、ミラモンや魔化魍とは餌の取り合いしてそう
>>722
そいつらは人間の変異種でしかないから
ドーパントやらゾディアーツ同様、基本的に『人間』として扱うだろうね
ファントムが人間ですらない『残りカス』なら、グリードは何なんだろう
人間の生んだ産物でしかないから蔑まれてるんだろうけど
そいつらは人間の変異種でしかないから
ドーパントやらゾディアーツ同様、基本的に『人間』として扱うだろうね
ファントムが人間ですらない『残りカス』なら、グリードは何なんだろう
人間の生んだ産物でしかないから蔑まれてるんだろうけど
ファンガイアはステンドグラス模様の大鎌を出現させるとグレムリンに向かって、生者の命を刈り取る死神のように大鎌を振り下ろす。
グレムリンが横に跳んだ瞬間、背後にあったコンクリートの柱が少しの抵抗もなく逆袈裟に切り裂かれた。
「クフフ……すごいね」
「ありがとう。とは言ってもファントムに褒められても嬉しくないわ」
相手を小馬鹿にした笑いをするソラ。涼しい声で返すファンガイア。
ファンガイアは言葉も態度も余裕だが、一方グレムリンは言葉と裏腹に内心戦慄していた。
あの大鎌をくらってしまえばファントムの強靭な身体をもつ自分でもタダではすまない。
グレムリンはラプチャーに魔力を込めて数度振るった。二対の剣からはエメラルドグリーンの魔力の刃が放たれてファンガイアを襲う。
ファンガイアは巧みな鎌さばきで魔力の刃を全て叩き落とした。
その隙を狙って今度はグレムリンが斬りかかる。
「ダメダメね」
ファンガイアは一歩も動くことなくグレムリンの攻撃を軽くいなし、返す刀で大鎌を振るがグレムリンもラプチャーを交差させることで防御した。
お互いの武器がぶつかり合い火花を散らせながら激しい攻防が繰り広げられる。
崩れた天井の穴から差し込む青白い月の光がファンガイアの肢体を照らしていた。
大鎌を振り回す度にピンクを基調としたステンドグラス模様の光を反射する角度が変わり全身を色鮮やかに変えていく。
同じ配色のパターンが来ることはない。一瞬一瞬その時その場所でしか見ることの出来ない色になる。
瓦礫の転がる寂れた灰色の廃工場の中で、オーキッドマンティスファンガイアの存在はまるで荒野に咲く一輪の――この世に二つとない、おとぎ話に出てくるような虹色の花だった。
ファンガイアが大鎌を突き出すとグレムリンはヒラリと軽やかに避けた。
そのまま素早い動きで懐に潜り込み、ラプチャーをファンガイアの首元に当てる。
「はーい、僕の勝ち」
「おバカなファントムさん」
ファンガイアは不敵に笑うと大鎌を持つ手首をくるりと回して柄を手前に引く。
グレムリンの背中に猛烈な悪寒が走った。物体をすり抜ける力を使って潜り込むように床に沈むグレムリン。
その場から消えるとグレムリンのいた場所には大鎌の刃があった。
あと少し逃げるのが遅かったら背中からバッサリと両断されていただろう。
「さっきのあなた滑稽だったわ。まあ、ファントムにはお似合いかもね」
床から上半身だけを出しているグレムリンを見下ろすようにしてファンガイアは嘲笑した。
「ファントム、ファントムってさあ」
自分が抱えている負の部分を刺激されたグレムリンは苛立ちながらファンガイアに斬りかかった。
「僕は人間だ。ファントムなんかと一緒にしないでほしいな」
「人間? どこが? その醜い姿、非力な人間には無い力、そしてライフエナジーもない。生きているかも死んでいるかも分からない憐れな亡霊。それがあなた達ファントムよ」
「!?」
ファンガイアの言葉にグレムリンが動揺した瞬間、ファンガイアの横薙の一撃がグレムリンを捉えた。
グレムリンは腹部に猛烈な熱さを感じると両手のラプチャーを落とし、ソラの姿に戻ると頭から後ろへ倒れた。
「無様ね」
「あ……ぐぅ……」
ファンガイアが倒れたソラを踏みつけると肺が潰れそうな圧迫感が襲った。
ソラは反撃を試みようと近くに落ちたラプチャーを拾おうと手を伸ばす。
届け……こんな人間でもないキラキラのバケモノ相手に死んでたまるか。僕にはまだやらなくちゃいけないことがあるんだ!
人間に戻って、僕が味わった絶望を――愛していた人に捨てられた時の、死にたくなるような程の深い絶望をもっともっとたくさんの女の人に知ってもらうんだ。
床に転がっているカットウィッグが視界の隅に映る。
君たちみたいにね……だから届けえっ!
懸命に伸ばすがソラの手はラプチャーに届かない。やがてソラの手が力なく地面に伏した。
「ファントムでなければライフエナジーを吸ってあげたのにかわいそうな人」
ファンガイアはソラの死を確認しようとしたが、元々ライフエナジーがゼロの死人と同義であるファントムの死を判断することは難しかった。
片手でソラを掴みあげて顔を覗いてみる。ソラはなんの反応もなく呼吸もしてなかった。
ファンガイアがソラの体を放り投げるとソラの体は綺麗な放物線を描き、瓦礫の中に派手な音を立てながら捨てられた。
グレムリンが横に跳んだ瞬間、背後にあったコンクリートの柱が少しの抵抗もなく逆袈裟に切り裂かれた。
「クフフ……すごいね」
「ありがとう。とは言ってもファントムに褒められても嬉しくないわ」
相手を小馬鹿にした笑いをするソラ。涼しい声で返すファンガイア。
ファンガイアは言葉も態度も余裕だが、一方グレムリンは言葉と裏腹に内心戦慄していた。
あの大鎌をくらってしまえばファントムの強靭な身体をもつ自分でもタダではすまない。
グレムリンはラプチャーに魔力を込めて数度振るった。二対の剣からはエメラルドグリーンの魔力の刃が放たれてファンガイアを襲う。
ファンガイアは巧みな鎌さばきで魔力の刃を全て叩き落とした。
その隙を狙って今度はグレムリンが斬りかかる。
「ダメダメね」
ファンガイアは一歩も動くことなくグレムリンの攻撃を軽くいなし、返す刀で大鎌を振るがグレムリンもラプチャーを交差させることで防御した。
お互いの武器がぶつかり合い火花を散らせながら激しい攻防が繰り広げられる。
崩れた天井の穴から差し込む青白い月の光がファンガイアの肢体を照らしていた。
大鎌を振り回す度にピンクを基調としたステンドグラス模様の光を反射する角度が変わり全身を色鮮やかに変えていく。
同じ配色のパターンが来ることはない。一瞬一瞬その時その場所でしか見ることの出来ない色になる。
瓦礫の転がる寂れた灰色の廃工場の中で、オーキッドマンティスファンガイアの存在はまるで荒野に咲く一輪の――この世に二つとない、おとぎ話に出てくるような虹色の花だった。
ファンガイアが大鎌を突き出すとグレムリンはヒラリと軽やかに避けた。
そのまま素早い動きで懐に潜り込み、ラプチャーをファンガイアの首元に当てる。
「はーい、僕の勝ち」
「おバカなファントムさん」
ファンガイアは不敵に笑うと大鎌を持つ手首をくるりと回して柄を手前に引く。
グレムリンの背中に猛烈な悪寒が走った。物体をすり抜ける力を使って潜り込むように床に沈むグレムリン。
その場から消えるとグレムリンのいた場所には大鎌の刃があった。
あと少し逃げるのが遅かったら背中からバッサリと両断されていただろう。
「さっきのあなた滑稽だったわ。まあ、ファントムにはお似合いかもね」
床から上半身だけを出しているグレムリンを見下ろすようにしてファンガイアは嘲笑した。
「ファントム、ファントムってさあ」
自分が抱えている負の部分を刺激されたグレムリンは苛立ちながらファンガイアに斬りかかった。
「僕は人間だ。ファントムなんかと一緒にしないでほしいな」
「人間? どこが? その醜い姿、非力な人間には無い力、そしてライフエナジーもない。生きているかも死んでいるかも分からない憐れな亡霊。それがあなた達ファントムよ」
「!?」
ファンガイアの言葉にグレムリンが動揺した瞬間、ファンガイアの横薙の一撃がグレムリンを捉えた。
グレムリンは腹部に猛烈な熱さを感じると両手のラプチャーを落とし、ソラの姿に戻ると頭から後ろへ倒れた。
「無様ね」
「あ……ぐぅ……」
ファンガイアが倒れたソラを踏みつけると肺が潰れそうな圧迫感が襲った。
ソラは反撃を試みようと近くに落ちたラプチャーを拾おうと手を伸ばす。
届け……こんな人間でもないキラキラのバケモノ相手に死んでたまるか。僕にはまだやらなくちゃいけないことがあるんだ!
人間に戻って、僕が味わった絶望を――愛していた人に捨てられた時の、死にたくなるような程の深い絶望をもっともっとたくさんの女の人に知ってもらうんだ。
床に転がっているカットウィッグが視界の隅に映る。
君たちみたいにね……だから届けえっ!
懸命に伸ばすがソラの手はラプチャーに届かない。やがてソラの手が力なく地面に伏した。
「ファントムでなければライフエナジーを吸ってあげたのにかわいそうな人」
ファンガイアはソラの死を確認しようとしたが、元々ライフエナジーがゼロの死人と同義であるファントムの死を判断することは難しかった。
片手でソラを掴みあげて顔を覗いてみる。ソラはなんの反応もなく呼吸もしてなかった。
ファンガイアがソラの体を放り投げるとソラの体は綺麗な放物線を描き、瓦礫の中に派手な音を立てながら捨てられた。
「汚れてしまったわ」
ファンガイアは女の姿に戻ると服についた埃を軽く払い、身なりを整えて帰ろうとソラを投げた方とは逆の方向へと歩き出した。
その時だった。
「クフフ……」闇の中でソラの笑い声が不気味に木霊した。
ファンガイアの女がハッとして後ろを振り向いた時には既に一振りの剣が女を貫いていた。
女を刺したのはボロボロになって死にかけているソラだった。しかし、その目は深手を負った瀕死のものとは思えないくらいにギラギラしていた。
「生きているかも死んでいるかも分からない。まったくその通りだよ」
「あの一撃は……確かに手応えがあったはずよ」
「そうだね。気を抜いて眠ったら二度と起きなかっただろうね」
「騙した……わね……死んだふりなんて……浅ましい。やはりファントムは家畜にも劣る存在ね」
「僕は人間だよ。その証拠に僕自身が、自分は人間だって信じている」
ファントムは自分がファントムであることを疑わない。ファントムだからだ。
自分は人間だというソラの発想は人為らざるファントムのものではなかった。
だから自分は人間だ。
どれだけ人間から外れてしまっていても自分が人間だと強く思う気持ちがあれば、それは希望となってソラを妖しく輝かせる。
ファントムであるソラの心の中で光る希望の輝きは間違いなく人間そのものだった。
「そんな……嘘よ……ファンガイアである私が家畜以下の残りカスであるファントムなんかに負けるなんて」
「化物には分からないだろうから教えてあげるよ」
ソラは自分の血で濡れた手に握られたラプチャーを根元までファンガイアの女の体に沈ませて一気に引き抜く。
そして、さっきとは逆にソラが倒れたファンガイアの女を見下ろす形になるとこう言った。
「これが人間の意地ってやつさ」
ファンガイアは女の姿に戻ると服についた埃を軽く払い、身なりを整えて帰ろうとソラを投げた方とは逆の方向へと歩き出した。
その時だった。
「クフフ……」闇の中でソラの笑い声が不気味に木霊した。
ファンガイアの女がハッとして後ろを振り向いた時には既に一振りの剣が女を貫いていた。
女を刺したのはボロボロになって死にかけているソラだった。しかし、その目は深手を負った瀕死のものとは思えないくらいにギラギラしていた。
「生きているかも死んでいるかも分からない。まったくその通りだよ」
「あの一撃は……確かに手応えがあったはずよ」
「そうだね。気を抜いて眠ったら二度と起きなかっただろうね」
「騙した……わね……死んだふりなんて……浅ましい。やはりファントムは家畜にも劣る存在ね」
「僕は人間だよ。その証拠に僕自身が、自分は人間だって信じている」
ファントムは自分がファントムであることを疑わない。ファントムだからだ。
自分は人間だというソラの発想は人為らざるファントムのものではなかった。
だから自分は人間だ。
どれだけ人間から外れてしまっていても自分が人間だと強く思う気持ちがあれば、それは希望となってソラを妖しく輝かせる。
ファントムであるソラの心の中で光る希望の輝きは間違いなく人間そのものだった。
「そんな……嘘よ……ファンガイアである私が家畜以下の残りカスであるファントムなんかに負けるなんて」
「化物には分からないだろうから教えてあげるよ」
ソラは自分の血で濡れた手に握られたラプチャーを根元までファンガイアの女の体に沈ませて一気に引き抜く。
そして、さっきとは逆にソラが倒れたファンガイアの女を見下ろす形になるとこう言った。
「これが人間の意地ってやつさ」
よーやく投下できた、
>>725
下賎な人間の欲望で塗り固められた動く泥人形……とかかな
800年前なら過去キン健在かどうかは分からんがグリードと過去のオーズの戦いに暇つぶし感覚で割り込むみたいな話できそうだね(書くとは言ってない)
>>725
下賎な人間の欲望で塗り固められた動く泥人形……とかかな
800年前なら過去キン健在かどうかは分からんがグリードと過去のオーズの戦いに暇つぶし感覚で割り込むみたいな話できそうだね(書くとは言ってない)
おつです
ソラの歪な人間性がいい感じ。ウィザードまた見たくなってきた
ソラの歪な人間性がいい感じ。ウィザードまた見たくなってきた
(一体どういうつもりだ……)
灰色の雲の間で煌々と輝く月の下で晴人はマシンウィンガーを走らせながらフルフェイスのヘルメットの下で困惑していた。
凛子に面影堂まで送ってもらった後、自室で眠りながら魔力を回復させていると以前と同じようにプラモンスターがファンガイアを見つけたらしく、それを水晶玉で確認したコヨミに起こされた。
ただ今回は以前と状況が違った。コヨミの話ではファンガイアとファントムが戦っていたという。
戦っているファントムはエメラルドグリーンのファントム――グレムリンだった。
何故ファンガイアとファントムが戦うのか。その理由を晴人は知らなかった。
しばらくして水晶玉に映っていた廃工場へたどり着いた。廃工場の中を進むと椅子に縛りつけられた女性がいた。
「ハロー、晴人くん」
その近くにはソラもいた。
「グレムリン……」
「だから違うよ、僕の名前はソラ。そこの所、間違えないでほしいな」
「お前、また女の人を」
「ストップ! この人、ファンガイアだよ」
ソラは素早く指輪をつけて変身の構えをする晴人を手で制した。
晴人は女性の方を見る。肘掛けのついた椅子に全身を拘束された女性は虚ろな目でどこか疲れきった様子だ。
この人がファンガイア?
女性は見間違えることなく人間の女の外見だった。けしてステンドガラス模様の怪物の姿をしていなかった。
「人間に化けているんだ。ファントムと一緒だよ」
ソラの言葉を聞いて、晴人は納得した。
「同じ怪物同士、よく分かってるな」
「君も自分の中に飼っているじゃないか。変わらないさ」
「それもそうだな」
晴人は自嘲気味に笑う。
「どうしてこんなことをするんだ?」
「聞きたいことがあってさ。そうだ、折角だし君も何か聞いていったら?」
ソラはシザーを手に取ると刃を開いてファンガイアの女の喉元にゆっくり押し当てた。
冷たい金属の感触に女は身を硬くした。
「ねえ、ファンガイアは何が目的なんだい? ヘルズ・ゲートとあのゲートの関連性は?」
すると女は鼻で笑った。
「下等な人間と、その残りカスに教えてあげることなんて何もないわよ」
「ふ~~ん、そっか……じゃあ仕方ないか」
挑発されたソラは激昂することなく淡々とした様子で女に押し付けたシザーを下ろした。
晴人はあっさりと引き下がったソラに言いようのない不安を感じた。
「綺麗だね」
ソラは肘掛けに縛りつけられた女の左手を取り、その先にある指をじっくりと見る。
白魚のように美しい指は柔らかく滑らかな手触りだった。
ソラは女の薬指に結婚指輪をはめるように、開いたシザーをそっと添える。
「クフフ……」
子供のように無邪気だけれど悪意の込められた笑顔と背筋が冷たくなってしまう笑い声。
直後、パチンッと何かが閉じた音がした。
広い廃工場中に女の高くて悲痛な叫びが木霊した。
赤く染まっていくソラの手の中には真っ白な女の薬指があった。
灰色の雲の間で煌々と輝く月の下で晴人はマシンウィンガーを走らせながらフルフェイスのヘルメットの下で困惑していた。
凛子に面影堂まで送ってもらった後、自室で眠りながら魔力を回復させていると以前と同じようにプラモンスターがファンガイアを見つけたらしく、それを水晶玉で確認したコヨミに起こされた。
ただ今回は以前と状況が違った。コヨミの話ではファンガイアとファントムが戦っていたという。
戦っているファントムはエメラルドグリーンのファントム――グレムリンだった。
何故ファンガイアとファントムが戦うのか。その理由を晴人は知らなかった。
しばらくして水晶玉に映っていた廃工場へたどり着いた。廃工場の中を進むと椅子に縛りつけられた女性がいた。
「ハロー、晴人くん」
その近くにはソラもいた。
「グレムリン……」
「だから違うよ、僕の名前はソラ。そこの所、間違えないでほしいな」
「お前、また女の人を」
「ストップ! この人、ファンガイアだよ」
ソラは素早く指輪をつけて変身の構えをする晴人を手で制した。
晴人は女性の方を見る。肘掛けのついた椅子に全身を拘束された女性は虚ろな目でどこか疲れきった様子だ。
この人がファンガイア?
女性は見間違えることなく人間の女の外見だった。けしてステンドガラス模様の怪物の姿をしていなかった。
「人間に化けているんだ。ファントムと一緒だよ」
ソラの言葉を聞いて、晴人は納得した。
「同じ怪物同士、よく分かってるな」
「君も自分の中に飼っているじゃないか。変わらないさ」
「それもそうだな」
晴人は自嘲気味に笑う。
「どうしてこんなことをするんだ?」
「聞きたいことがあってさ。そうだ、折角だし君も何か聞いていったら?」
ソラはシザーを手に取ると刃を開いてファンガイアの女の喉元にゆっくり押し当てた。
冷たい金属の感触に女は身を硬くした。
「ねえ、ファンガイアは何が目的なんだい? ヘルズ・ゲートとあのゲートの関連性は?」
すると女は鼻で笑った。
「下等な人間と、その残りカスに教えてあげることなんて何もないわよ」
「ふ~~ん、そっか……じゃあ仕方ないか」
挑発されたソラは激昂することなく淡々とした様子で女に押し付けたシザーを下ろした。
晴人はあっさりと引き下がったソラに言いようのない不安を感じた。
「綺麗だね」
ソラは肘掛けに縛りつけられた女の左手を取り、その先にある指をじっくりと見る。
白魚のように美しい指は柔らかく滑らかな手触りだった。
ソラは女の薬指に結婚指輪をはめるように、開いたシザーをそっと添える。
「クフフ……」
子供のように無邪気だけれど悪意の込められた笑顔と背筋が冷たくなってしまう笑い声。
直後、パチンッと何かが閉じた音がした。
広い廃工場中に女の高くて悲痛な叫びが木霊した。
赤く染まっていくソラの手の中には真っ白な女の薬指があった。
「グレムリン!」
晴人は普段の飄々とした態度とは違い珍しく感情を顕にした叫びをあげるとソードガンをソラに向けた。
ソラは、やれやれと呆れたようにため息をつくと突きつけられたソードガンを不満げに見つめる。いい所で水を刺された気分だった。
「危ないから栓をしとくよ。指には興味ないしね」
ソラはわざと晴人によく見えるように切断した女の左の薬指を手に取るとソードガンの銃口にズブリとはめて栓をする。
銀色の銃口から小さく細い女の指が生えた。
その間抜けでイカれた絵面になったソードガンにソラはおもわず小さく噴き出した。
晴人の全身に凄まじい不快感とソラの悪趣味を越えた狂気に対する怒りが駆け巡り、感情のままに引き金をひきそうになった。
だが晴人の理性は指を抑えた。こんな挑発にのってしまうのは操真晴人らしくない。
「悪趣味だな」
晴人は平静を装い銃口にはまっている女の指を引き抜いて捨てた。
柔らかい肌の中にある固い骨の感触。指輪をはめる都合、指を触ることは多いが人の指の感触がここまでおぞましいと感じたことはなかった。
「指を切るなんてやりすぎだ」
「このファンガイアは人間を襲って殺したんだ。許す気はないでしょ?」
「……ああ」晴人は静かに断言した。
「だったら何をしたっていいじゃないか。それとも人間の姿をしていたら君の良心が痛むかい?」
「なぶり殺しは趣味じゃないってだけさ」
「僕は好きだけどね。人が痛みや死の恐怖で絶望していく様を見られるから」
「やっぱり悪趣味だよ、お前」
「似た者同士なのになんで意見が合わないかなあ」
ソラは女に尋問を続けようと女と向き合い、さきほどの質問と同じ質問をした。
失った左指の激痛と熱さで息を荒くする女はソラを睨みつける。
「私たちファンガイアには誇り高い魂がある。それがこの体にある限りどれだけ苦痛を与えても無駄よ」
「だったら試してみようか」
あくまで頑な態度を崩さない女にソラは嗜虐的な笑みを浮かべると別の指を切り落とそうとした。わざとらしくシザーを鳴らして恐怖を煽る。
「やりすぎだって言っただろ?」
晴人はそれを黙って見過ごすことはしない。ソードガンを剣に変形させて構える。
「邪魔しないでよ」
苛立たしげに言うソラの体からエメラルドグリーンの不気味な魔力のオーラが煙のように上がるとソラはグレムリンに変身した。同じように晴人も赤い指輪でウィザードに変身した。
グレムリンはラプチャーを構えてウィザードと対峙するが、それはポーズでしかなく戦う気はなかった。
今の自分ではウィザードには勝てない。適当にあしらった所でファンガイアの女を連れ出して別の所で尋問を続けよう。
張りつめた空気が弾けて、両者がぶつかり合おうとすると銃声が響いた。
グレムリンとウィザードの間で爆発が起こり両者は距離をとった。
続けて銃声が二度三度響く。連続する狙撃にグレムリンとウィザードは床の上を転がされ、女から離される形になった。
一つの影が廃工場の外から射す月明かりから飛び込んで女の側に着地した。影はステンドグラス模様の銃を持っていた。
「貴方は……」
女は影の正体に覚えがあった。ステンドグラス模様が散りばめられた黒い体――自分と同じ種族、そして自分と同じ主であるルークに仕えているファンガイアだった。
「無事のようだな」
トンボのような外見をしたファンガイア――ドラゴンフライファンガイアは早々に女の拘束を解こうとする。だが女は静かに首を横に振った。
「私ね……ファントムに負けたの。油断した所をね」
「悪い冗談だな。我々はファンガイアだぞ?」
「だったらこんな惨めな姿を晒している?」
「…………」
女の問いにファンガイアは指が足りない女の手を見た。
椅子に縛られ、指を失い、苦しそうに喘ぐ。誇り高く自信に溢れたファンガイアいう種としての面影はどこにもなかった。
「ファントムなんていう残りカスに負けて、おめおめ生きながらえるなんて私の魂は耐えられないわ」
「しかし」
ファンガイアが迷いをみせると女は幼子を諭す母親のような穏やかな口調で言った。
「貴方も同じ立場なら同じことをするでしょう? だって私達は誇り高きファンガイアだもの」
「わかった」ファンガイアは小さく頷く。
「私はファンアガイアの汚点になんかなりたくないのよ」
「ああ、そうだろうさ。ファンガイアならな」
女の覚悟を受け取ったファンガイアは銃を構える。女は薄く笑い瞳を閉じた。
「その身を穢されたファンガイアの魂にやすらぎを」
銃声と共に女の眉間に風穴が開くと女の体は色とりどりのガラス片になって砕け散った。
晴人は普段の飄々とした態度とは違い珍しく感情を顕にした叫びをあげるとソードガンをソラに向けた。
ソラは、やれやれと呆れたようにため息をつくと突きつけられたソードガンを不満げに見つめる。いい所で水を刺された気分だった。
「危ないから栓をしとくよ。指には興味ないしね」
ソラはわざと晴人によく見えるように切断した女の左の薬指を手に取るとソードガンの銃口にズブリとはめて栓をする。
銀色の銃口から小さく細い女の指が生えた。
その間抜けでイカれた絵面になったソードガンにソラはおもわず小さく噴き出した。
晴人の全身に凄まじい不快感とソラの悪趣味を越えた狂気に対する怒りが駆け巡り、感情のままに引き金をひきそうになった。
だが晴人の理性は指を抑えた。こんな挑発にのってしまうのは操真晴人らしくない。
「悪趣味だな」
晴人は平静を装い銃口にはまっている女の指を引き抜いて捨てた。
柔らかい肌の中にある固い骨の感触。指輪をはめる都合、指を触ることは多いが人の指の感触がここまでおぞましいと感じたことはなかった。
「指を切るなんてやりすぎだ」
「このファンガイアは人間を襲って殺したんだ。許す気はないでしょ?」
「……ああ」晴人は静かに断言した。
「だったら何をしたっていいじゃないか。それとも人間の姿をしていたら君の良心が痛むかい?」
「なぶり殺しは趣味じゃないってだけさ」
「僕は好きだけどね。人が痛みや死の恐怖で絶望していく様を見られるから」
「やっぱり悪趣味だよ、お前」
「似た者同士なのになんで意見が合わないかなあ」
ソラは女に尋問を続けようと女と向き合い、さきほどの質問と同じ質問をした。
失った左指の激痛と熱さで息を荒くする女はソラを睨みつける。
「私たちファンガイアには誇り高い魂がある。それがこの体にある限りどれだけ苦痛を与えても無駄よ」
「だったら試してみようか」
あくまで頑な態度を崩さない女にソラは嗜虐的な笑みを浮かべると別の指を切り落とそうとした。わざとらしくシザーを鳴らして恐怖を煽る。
「やりすぎだって言っただろ?」
晴人はそれを黙って見過ごすことはしない。ソードガンを剣に変形させて構える。
「邪魔しないでよ」
苛立たしげに言うソラの体からエメラルドグリーンの不気味な魔力のオーラが煙のように上がるとソラはグレムリンに変身した。同じように晴人も赤い指輪でウィザードに変身した。
グレムリンはラプチャーを構えてウィザードと対峙するが、それはポーズでしかなく戦う気はなかった。
今の自分ではウィザードには勝てない。適当にあしらった所でファンガイアの女を連れ出して別の所で尋問を続けよう。
張りつめた空気が弾けて、両者がぶつかり合おうとすると銃声が響いた。
グレムリンとウィザードの間で爆発が起こり両者は距離をとった。
続けて銃声が二度三度響く。連続する狙撃にグレムリンとウィザードは床の上を転がされ、女から離される形になった。
一つの影が廃工場の外から射す月明かりから飛び込んで女の側に着地した。影はステンドグラス模様の銃を持っていた。
「貴方は……」
女は影の正体に覚えがあった。ステンドグラス模様が散りばめられた黒い体――自分と同じ種族、そして自分と同じ主であるルークに仕えているファンガイアだった。
「無事のようだな」
トンボのような外見をしたファンガイア――ドラゴンフライファンガイアは早々に女の拘束を解こうとする。だが女は静かに首を横に振った。
「私ね……ファントムに負けたの。油断した所をね」
「悪い冗談だな。我々はファンガイアだぞ?」
「だったらこんな惨めな姿を晒している?」
「…………」
女の問いにファンガイアは指が足りない女の手を見た。
椅子に縛られ、指を失い、苦しそうに喘ぐ。誇り高く自信に溢れたファンガイアいう種としての面影はどこにもなかった。
「ファントムなんていう残りカスに負けて、おめおめ生きながらえるなんて私の魂は耐えられないわ」
「しかし」
ファンガイアが迷いをみせると女は幼子を諭す母親のような穏やかな口調で言った。
「貴方も同じ立場なら同じことをするでしょう? だって私達は誇り高きファンガイアだもの」
「わかった」ファンガイアは小さく頷く。
「私はファンアガイアの汚点になんかなりたくないのよ」
「ああ、そうだろうさ。ファンガイアならな」
女の覚悟を受け取ったファンガイアは銃を構える。女は薄く笑い瞳を閉じた。
「その身を穢されたファンガイアの魂にやすらぎを」
銃声と共に女の眉間に風穴が開くと女の体は色とりどりのガラス片になって砕け散った。
ファンガイアは誰もいない椅子の上に散らばる女の残骸を一掴みすると固くかたく握り締めた。
拳の中でガラス片が割れて掌が切れた。だがこんな痛みは同胞が受けた痛みに比べたら微々たるものだ。罰にすらならない。
同じ主の下で同じ理想を目指している者を助けられなかった不甲斐なさ、討たなければならなかったやるせなさ、同胞を傷つけた相手への憎しみ。
様々な感情が混ざり合うとファンガイアは怒り狂い、ウィザードとグレムリンに発砲した。
「ちぇ、死んじゃった……もう付き合いきれないね」
グレムリンは面倒くさそうに呟くと床をすり抜けてその場から姿を消そうとした。
「待て! グレムリン!」
「待つわけ無いでしょ。そうだ……似た者同士のよしみで教えてあげるよ。あのゲートには間違いなく何かあるよ」
「奏美さんに」
「ほら、来るよ。よそ見はしちゃダメ」
床から上半身だけを出しているグレムリンが指差す方を見るとファンガイアの弾丸が迫っていた。
ウィザードは華麗な剣さばきで叩き落とすが、接近したファンガイアに蹴りを入れられた。ファンガイアは続けてグレムリンにも銃撃する。
「バイバ~~イ」
だがグレムリンは小馬鹿にするように手を振ると完全に床の向こう側へ沈んで消えていく。ファンガイアのターゲットがウィザードだけになった。
「グレムリンのやつ俺に押しつけやがった……」
ウィザードはファンガイアの放つ弾丸を黒いコートをはためかせながら避けると廃工場の外へ飛び出した。
着地した瞬間に足元で爆発が起こる。ファンガイアの空からの攻撃だった。
ウィザードは攻撃を食らうまいと走った。その後を追うようにして弾丸が地面に着弾する。
執拗なファンガイアの攻撃をかいくぐりながらウィザードはドラゴタイマーで青いコートを纏う自分自身を呼び出した。
「分かってるよな?」
「もちろん!」
ウィザードは青のウィザードに合わせるように指輪を使って黒いコートから真っ赤なコートに着替えた。
二人のウィザードは同時に指輪をかざした。
ディフェンド! プリーズ!
詠唱の終了と同時に掌に魔力が集中し、赤のウィザードには火の壁が、青のウィザードには水の壁が出来上がる。
赤と青のウィザードは作り出した壁を合わせた。すると白い闇が起こった。
白い闇は辺り一体にどんどん広がりウィザードの姿を完全に隠してしまう。
火と水、相反する二つのエレメントが重なり猛烈な勢いで霧を造り出した結果だった。
濃霧に阻まれたファンガイアはウィザードの姿を見失い、狙いが少しもつけられなくなった。
このまま逃げる気か? それとも反撃してくるか? どちらでもいい。次に姿を捉えたら射抜いてやる。
ファンガイアは上空から銃を構えて霧が散るのを静かに待つ。霧の中で小さな光とそれが照らす黒い人影が見えた。
馬鹿なやつ!
ファンガイアは人影に弾丸を撃ち込みまくった。人影がよろよろと動くと力なく倒れた。
人影を照らしていた光が消えてファンガイアの視界にはまた白い闇の世界だけが映る。
その白い闇の中から突如として弾丸が飛んできてファンガイアに直撃した。ファンガイアは体から地面に墜落した。
「どっから攻撃が来たかさえ分かればさ。後はそこにな」
霧散していく白い闇から出てきた赤のウィザードは二丁の銀色の銃を持っていた。
側では青のウィザードが魔法陣に包まれ消えていく姿があった。その指にはライトの魔法の指輪がはめられていた。
一人残った赤のウィザードは銃を剣に切り替えるとハンドオーサーに指輪を読み込ませて、体勢を立て直すファンガイアに一気に近づいた。
フラッグのように炎をはためかせる銀色の剣を振りおろす。
赤く燃える刃が届く黒とステンドグラスの体を焼き切ろうとする瞬間ファンガイアは翼を大きく広げて空へ逃げた。
剣を銃にかえてファンガイアの消えた空に銃を向けるがファンガイアは既に夜空にある無数の星の一つに混じっていた。
ファンガイアを見失ってしまったウィザードは空を翔けて追いかけるべきか悩んだ。ハリケーンスタイル、更にその上位のスタイルでありドラゴンの翼を発動したハリケーンドラゴンの常識外れなスピードなら追いつけるかもしれない。
だが既に見失っている相手を闇雲に追いかけて見つかるだろうか。いたずらに魔力を無駄にするわけにもいかない。
その時だった。エンジン音と共に深紅のバイクに跨ったキバがやってきた。
「遅いぜ、キバ…………ん?」
ウィザードは肩を落としながら愚痴るように呟くがキバの様子が妙だった。
キバはファンガイアの消えた空を凝視していた。キバの――渡の耳にはファンガイアに導く音楽が確かに聞こえていた。
「もしかしてファンガイアの居場所が分かるのか?」
ウィザードの問いかけにキバはフエッスルを取り出し、キバットに吹かせる。
「ブロンブースター!」
三連ホーンのような軽快な音色が響くと巨大な黄金の魔像『ブロン』が現れた。
ブロンは横に割れるとそれぞれがマシンキバーの前部と後部に合体した。合体の瞬間、ブロンに内蔵されている膨大な魔皇力の余波で地面がひび割れた。
元々大型のバイクであるマシンキバーはブロンと融合したことで更にスケールアップし、重機のような圧倒的な雰囲気を醸し出した。
前部には深紅の角『ブレイカーホーン』、後部には合計14発ものブースターユニットからなる『マオーブーストエンジン』を備えた重装鉄馬『ブロンブースター』が誕生した。
キバはウィザードの方を見ると何も言わず自分の跨っているシートの後ろ側を軽く叩いた。
「男と相乗り……ねえ。悪くないかもな」
ウィザードはキバの後ろにすばやく乗った。
今にも暴れだしそうなブロンブースターを制御するようにキバはエンジンを吹かす。やがてブロンブースターは一度フロントを大きく上げるとブースターから火を噴かせながら猛発進した。
拳の中でガラス片が割れて掌が切れた。だがこんな痛みは同胞が受けた痛みに比べたら微々たるものだ。罰にすらならない。
同じ主の下で同じ理想を目指している者を助けられなかった不甲斐なさ、討たなければならなかったやるせなさ、同胞を傷つけた相手への憎しみ。
様々な感情が混ざり合うとファンガイアは怒り狂い、ウィザードとグレムリンに発砲した。
「ちぇ、死んじゃった……もう付き合いきれないね」
グレムリンは面倒くさそうに呟くと床をすり抜けてその場から姿を消そうとした。
「待て! グレムリン!」
「待つわけ無いでしょ。そうだ……似た者同士のよしみで教えてあげるよ。あのゲートには間違いなく何かあるよ」
「奏美さんに」
「ほら、来るよ。よそ見はしちゃダメ」
床から上半身だけを出しているグレムリンが指差す方を見るとファンガイアの弾丸が迫っていた。
ウィザードは華麗な剣さばきで叩き落とすが、接近したファンガイアに蹴りを入れられた。ファンガイアは続けてグレムリンにも銃撃する。
「バイバ~~イ」
だがグレムリンは小馬鹿にするように手を振ると完全に床の向こう側へ沈んで消えていく。ファンガイアのターゲットがウィザードだけになった。
「グレムリンのやつ俺に押しつけやがった……」
ウィザードはファンガイアの放つ弾丸を黒いコートをはためかせながら避けると廃工場の外へ飛び出した。
着地した瞬間に足元で爆発が起こる。ファンガイアの空からの攻撃だった。
ウィザードは攻撃を食らうまいと走った。その後を追うようにして弾丸が地面に着弾する。
執拗なファンガイアの攻撃をかいくぐりながらウィザードはドラゴタイマーで青いコートを纏う自分自身を呼び出した。
「分かってるよな?」
「もちろん!」
ウィザードは青のウィザードに合わせるように指輪を使って黒いコートから真っ赤なコートに着替えた。
二人のウィザードは同時に指輪をかざした。
ディフェンド! プリーズ!
詠唱の終了と同時に掌に魔力が集中し、赤のウィザードには火の壁が、青のウィザードには水の壁が出来上がる。
赤と青のウィザードは作り出した壁を合わせた。すると白い闇が起こった。
白い闇は辺り一体にどんどん広がりウィザードの姿を完全に隠してしまう。
火と水、相反する二つのエレメントが重なり猛烈な勢いで霧を造り出した結果だった。
濃霧に阻まれたファンガイアはウィザードの姿を見失い、狙いが少しもつけられなくなった。
このまま逃げる気か? それとも反撃してくるか? どちらでもいい。次に姿を捉えたら射抜いてやる。
ファンガイアは上空から銃を構えて霧が散るのを静かに待つ。霧の中で小さな光とそれが照らす黒い人影が見えた。
馬鹿なやつ!
ファンガイアは人影に弾丸を撃ち込みまくった。人影がよろよろと動くと力なく倒れた。
人影を照らしていた光が消えてファンガイアの視界にはまた白い闇の世界だけが映る。
その白い闇の中から突如として弾丸が飛んできてファンガイアに直撃した。ファンガイアは体から地面に墜落した。
「どっから攻撃が来たかさえ分かればさ。後はそこにな」
霧散していく白い闇から出てきた赤のウィザードは二丁の銀色の銃を持っていた。
側では青のウィザードが魔法陣に包まれ消えていく姿があった。その指にはライトの魔法の指輪がはめられていた。
一人残った赤のウィザードは銃を剣に切り替えるとハンドオーサーに指輪を読み込ませて、体勢を立て直すファンガイアに一気に近づいた。
フラッグのように炎をはためかせる銀色の剣を振りおろす。
赤く燃える刃が届く黒とステンドグラスの体を焼き切ろうとする瞬間ファンガイアは翼を大きく広げて空へ逃げた。
剣を銃にかえてファンガイアの消えた空に銃を向けるがファンガイアは既に夜空にある無数の星の一つに混じっていた。
ファンガイアを見失ってしまったウィザードは空を翔けて追いかけるべきか悩んだ。ハリケーンスタイル、更にその上位のスタイルでありドラゴンの翼を発動したハリケーンドラゴンの常識外れなスピードなら追いつけるかもしれない。
だが既に見失っている相手を闇雲に追いかけて見つかるだろうか。いたずらに魔力を無駄にするわけにもいかない。
その時だった。エンジン音と共に深紅のバイクに跨ったキバがやってきた。
「遅いぜ、キバ…………ん?」
ウィザードは肩を落としながら愚痴るように呟くがキバの様子が妙だった。
キバはファンガイアの消えた空を凝視していた。キバの――渡の耳にはファンガイアに導く音楽が確かに聞こえていた。
「もしかしてファンガイアの居場所が分かるのか?」
ウィザードの問いかけにキバはフエッスルを取り出し、キバットに吹かせる。
「ブロンブースター!」
三連ホーンのような軽快な音色が響くと巨大な黄金の魔像『ブロン』が現れた。
ブロンは横に割れるとそれぞれがマシンキバーの前部と後部に合体した。合体の瞬間、ブロンに内蔵されている膨大な魔皇力の余波で地面がひび割れた。
元々大型のバイクであるマシンキバーはブロンと融合したことで更にスケールアップし、重機のような圧倒的な雰囲気を醸し出した。
前部には深紅の角『ブレイカーホーン』、後部には合計14発ものブースターユニットからなる『マオーブーストエンジン』を備えた重装鉄馬『ブロンブースター』が誕生した。
キバはウィザードの方を見ると何も言わず自分の跨っているシートの後ろ側を軽く叩いた。
「男と相乗り……ねえ。悪くないかもな」
ウィザードはキバの後ろにすばやく乗った。
今にも暴れだしそうなブロンブースターを制御するようにキバはエンジンを吹かす。やがてブロンブースターは一度フロントを大きく上げるとブースターから火を噴かせながら猛発進した。
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