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元スレ晴人「宙に舞う牙」
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オチとかゲートで色々言われてる九官鳥回だけど、凛子と瞬平っていう晴人に希望をもらった二人がゲートの希望として奔走していて個人的には好きなんだ
クウガやアギトを経た警察組織とかだったらこの世界の警察がものすごい有能になったりするんだろうか
平成ライダー世界が一緒になったら
風都から振り切る人が0課に出向するだろうww
風都から振り切る人が0課に出向するだろうww
散々迷った挙句、ようやく目的地にたどり着いた渡は一人の男に連絡をとっていた。
「そうか。やはり強硬派は鳥居坂に来ていたか」
「はい。だから、僕はもう少しこの街で色々と調べてみようと思います」
「わかった。滞在費に関しては会の方で出そう。また正夫くんに寂しい思いをさせてしまうのは心苦しいが」
「大丈夫です。正夫には皆さんがいてくれますから。何より……」
「君も色々と大変だったようだね」
渡は思わず苦笑いを浮かべた。
確かに自分の最愛のパートナーと結ばれるまでいくつも波乱があった。
特に相手の両親への説得には苦労した。
安定した収入があるわけでもない。おまけに自分は『お化け太郎』と呼ばれ、地元では根も葉もない噂もあった。
渡は相手の両親を説得するために、恋人に向けて作ったバイオリンの曲を聞かせた。
恋人への純粋な想いが込められたその曲は両親の心を打った。結果的に恋人の両親は二人の結婚を認めた。
今では一人息子の正夫を設け、周りの助けも借りて一緒に暮らしている。
「すまないとは思っているんだ。こういうことは一度や二度ではないのに。だが、我々には君の力が必要だ」
「いいんです。これは僕が望んでやっていることですから」
「やはり君はお父さんの息子だな」
「父さんに?」
「自分の望むことを一途にやり続ける。君のお父さんはそういう男だったよ」
「……」
「とにかく何かわかったら連絡してくれ」
「わかりました」
ケータイを切ってホテルのロビーへと歩き出す。すると向こうから来た一人の青年とすれ違った。
青年は渡と同じ今時珍しいガラケーを耳に押し当てたまま喋っていた。
「へえ、もう調べ終わったのか。流石に仕事が早いな、国安さまは」
青年は右中指に大きな指輪をしていた。操真晴人だった。
・
・
・
警視庁捜査課には1課、2課、3課とあり、それぞれ違う役割を当てられている。
1課ならば殺人や傷害などの凶悪事件、2課なら汚職や詐欺・横領といった知能犯罪、3課は窃盗などの盗犯というように。
しかし、時としてファントムのような怪物が絡んだ常識を越えた事件が起きることがある。そういった通常の課では対処できない事件に対して国が設立した課があった。
国家安全局0課。通称『国安0課』は、ファントムの活動が活発な鳥居坂にも設立されている。
0課の警視、木崎はデスクに積まれた膨大なファイルの1つを眼鏡を通して舐めるように見ていた。
木崎は視線をファイルから動かすことなく自分の元へ来た晴人に言った。
「お前は風都を知っているか?」
「風都? ああ、知ってるさ。風の街だろ? テレビでもたまに取り上げられるし」
確かその時は風麺という屋台が紹介されていたはずだ。街のいたる所に風車があるのが印象的だった。
何年か前にテロ紛いなことが起きて、街の象徴である風都タワーが爆破された事件は新聞の一面にも取り上げられたほどだ。
「風都警察署には『超常犯罪捜査課』という課が独自にあってな。今回の消失事件について、そこが持っている過去のデータと照合させてみたが該当するものはなかった」
だが……、と木崎は続ける。
「奈良瞬平の言うファンガイアという言葉から過去の0課の資料を漁ってみたら、ごく僅かながら資料が見つかった」
「それでファンガイアって何者なんだ?」
「ファンガイアとは人類が誕生する以前から存在する1つの種族だ。普段は人間に姿を変えているが、時として人間を捕食する」
「捕食……人を食うのか?」
「ファンガイアは人間の生命力を自分たちの命、ライフエナジーに変換して吸うようだ。その時に使われる手口が」
「宙に舞う牙ってことか。まるで吸血鬼だ」
「ああ、全くだ。だが、ファンガイアは5年前の内乱をきっかけに人類と共存する道を選んだそうだ」
「ちょっと待ってくれ。じゃあ、どうしてファンガイアは人を襲ったんだ?」
「それはわからん。言っただろう、ごく僅かな資料だと」
木崎はファイルをデスクにやや乱暴に投げると、メガネを取り外して目を休ませるように何度か瞬きをする。
苛立っているのは見て取れた。
(こりゃあ触らぬ神に祟りなしだな)
聞きたいことは聞けたので、晴人は木崎の執務室を出ようとする。
去っていく晴人の背中に木崎は「待て」と声をかけた。
「お前が保護した女性、時田奏美はバイオリン奏者らしいな」
「ああ。音楽には詳しくないけど、すごくいい音楽だった」
「ファンガイアの多くは美しい物や芸術などに目がないそうだ。だから……警戒しておけ」
意外な言葉に晴人はおもわず振り返った。
警戒しておけ、まさか木崎から自分を気遣うような言葉を聞けるとは思わなかった。
もちろん、それを指摘すれば否定するだろうが。
「木崎、あんたって不器用だな」
晴人の言葉に木崎は黙ったままお茶をすすった。
「そうか。やはり強硬派は鳥居坂に来ていたか」
「はい。だから、僕はもう少しこの街で色々と調べてみようと思います」
「わかった。滞在費に関しては会の方で出そう。また正夫くんに寂しい思いをさせてしまうのは心苦しいが」
「大丈夫です。正夫には皆さんがいてくれますから。何より……」
「君も色々と大変だったようだね」
渡は思わず苦笑いを浮かべた。
確かに自分の最愛のパートナーと結ばれるまでいくつも波乱があった。
特に相手の両親への説得には苦労した。
安定した収入があるわけでもない。おまけに自分は『お化け太郎』と呼ばれ、地元では根も葉もない噂もあった。
渡は相手の両親を説得するために、恋人に向けて作ったバイオリンの曲を聞かせた。
恋人への純粋な想いが込められたその曲は両親の心を打った。結果的に恋人の両親は二人の結婚を認めた。
今では一人息子の正夫を設け、周りの助けも借りて一緒に暮らしている。
「すまないとは思っているんだ。こういうことは一度や二度ではないのに。だが、我々には君の力が必要だ」
「いいんです。これは僕が望んでやっていることですから」
「やはり君はお父さんの息子だな」
「父さんに?」
「自分の望むことを一途にやり続ける。君のお父さんはそういう男だったよ」
「……」
「とにかく何かわかったら連絡してくれ」
「わかりました」
ケータイを切ってホテルのロビーへと歩き出す。すると向こうから来た一人の青年とすれ違った。
青年は渡と同じ今時珍しいガラケーを耳に押し当てたまま喋っていた。
「へえ、もう調べ終わったのか。流石に仕事が早いな、国安さまは」
青年は右中指に大きな指輪をしていた。操真晴人だった。
・
・
・
警視庁捜査課には1課、2課、3課とあり、それぞれ違う役割を当てられている。
1課ならば殺人や傷害などの凶悪事件、2課なら汚職や詐欺・横領といった知能犯罪、3課は窃盗などの盗犯というように。
しかし、時としてファントムのような怪物が絡んだ常識を越えた事件が起きることがある。そういった通常の課では対処できない事件に対して国が設立した課があった。
国家安全局0課。通称『国安0課』は、ファントムの活動が活発な鳥居坂にも設立されている。
0課の警視、木崎はデスクに積まれた膨大なファイルの1つを眼鏡を通して舐めるように見ていた。
木崎は視線をファイルから動かすことなく自分の元へ来た晴人に言った。
「お前は風都を知っているか?」
「風都? ああ、知ってるさ。風の街だろ? テレビでもたまに取り上げられるし」
確かその時は風麺という屋台が紹介されていたはずだ。街のいたる所に風車があるのが印象的だった。
何年か前にテロ紛いなことが起きて、街の象徴である風都タワーが爆破された事件は新聞の一面にも取り上げられたほどだ。
「風都警察署には『超常犯罪捜査課』という課が独自にあってな。今回の消失事件について、そこが持っている過去のデータと照合させてみたが該当するものはなかった」
だが……、と木崎は続ける。
「奈良瞬平の言うファンガイアという言葉から過去の0課の資料を漁ってみたら、ごく僅かながら資料が見つかった」
「それでファンガイアって何者なんだ?」
「ファンガイアとは人類が誕生する以前から存在する1つの種族だ。普段は人間に姿を変えているが、時として人間を捕食する」
「捕食……人を食うのか?」
「ファンガイアは人間の生命力を自分たちの命、ライフエナジーに変換して吸うようだ。その時に使われる手口が」
「宙に舞う牙ってことか。まるで吸血鬼だ」
「ああ、全くだ。だが、ファンガイアは5年前の内乱をきっかけに人類と共存する道を選んだそうだ」
「ちょっと待ってくれ。じゃあ、どうしてファンガイアは人を襲ったんだ?」
「それはわからん。言っただろう、ごく僅かな資料だと」
木崎はファイルをデスクにやや乱暴に投げると、メガネを取り外して目を休ませるように何度か瞬きをする。
苛立っているのは見て取れた。
(こりゃあ触らぬ神に祟りなしだな)
聞きたいことは聞けたので、晴人は木崎の執務室を出ようとする。
去っていく晴人の背中に木崎は「待て」と声をかけた。
「お前が保護した女性、時田奏美はバイオリン奏者らしいな」
「ああ。音楽には詳しくないけど、すごくいい音楽だった」
「ファンガイアの多くは美しい物や芸術などに目がないそうだ。だから……警戒しておけ」
意外な言葉に晴人はおもわず振り返った。
警戒しておけ、まさか木崎から自分を気遣うような言葉を聞けるとは思わなかった。
もちろん、それを指摘すれば否定するだろうが。
「木崎、あんたって不器用だな」
晴人の言葉に木崎は黙ったままお茶をすすった。
小説版のキバだったら静香は高校生だし渡と結ばれてもいいと思うんだけどね
おつおつ
つまりここでは妻は不明、というか詳細を明かさず書くのね
つまりここでは妻は不明、というか詳細を明かさず書くのね
奏美は鳥居坂公園でバイオリンを弾いていた。
体の力を抜き、全身で街に流れる音楽を聞く。
流れには逆らわず、一体に。
(うん。やっぱり、このバイオリンが合う)
渡に任せたバイオリンの修理は完璧だった。奏美が望む鳥居坂の音を見事に表現してくれる。
美しい音色が風にのって遠くへと流れていく。
晴人はベンチに座りながら、奏美の演奏をBGMにプレーンシュガーのドーナツを食べていた。
最初は外での練習は危険だ、と言ったが奏美は聞かなかった。
「狙われているなら何処で練習していても同じでしょ?」
それを言われると晴人は何も言いかえさなかった。
いくら危険だとか命が狙われているだとか伝えても、相手には相手の生活がある。
(誰にだって譲れないものはあるしな)
それを蔑ろにしてまで誰かの希望にはなりたくなかった。
だから今もこうして奏美を拘束するようなことはせずに見守っている。
晴人はチラリと視線を横に流す。
そこには奏美のいう隠れたるバイオリン修復の名人、紅渡がいた。
自分と同い年か少し年上に見える青年は静かに、奏美が奏でる街の音楽に耳を傾けていた。
「どうかしら?」演奏を終えた奏美が晴人に聞いてくる。
「ああ、悪くない。むしろ前よりも良くなってる気がする」
「あら、分かるの?」少し嬉しそうな奏美。
「何となくだけどね」
晴人の答えに奏美は小さく笑った。
「あなたはどう?」
気を良くした奏美は同様の質問を今度は渡にする。
渡は考えるように頭を掻いて言った。
「もっと強く弾いてみたらどうですか」
「強く? どういう意味かしら?」
奏美はほんの少し眉根を寄せた。渡は気づかないまま続ける。
「音は綺麗なんですけど、それだけって言うか。奏美さんの音楽が聞こえてこないんです」
奏美が明らかに不機嫌そうな顔になった。
おいおい……と晴人は思った。
何も今そんなことを言わなくてもいいだろ。
渡の発言に奏美は食ってかかった。
「私の音楽ってどういうことよ?」
「それは僕にもわかりません。でも、奏美さんには奏美さんの音楽があります。それを閉じ込めるのはもったいないと思います」
奏美の勢いに萎縮し、渡の声は尻すぼみになった。だが、渡の感じたままの言葉に奏美は微かに動揺していた。
私が自分の音楽を閉じ込めている?
一瞬、頭の中に昔の光景がフラッシュバックする。
小さかった頃の自分。楽器を弾くのが楽しくて仕方なかった。
そんな自分を遠くから見つめてくる暗い視線と声。
ちょっと上手いからって、でしゃばりすぎ。
あんたが出来るせいで、比べられる私たちが怒られるのよ。
周りに合わせてよ。
空気読んで欲しいんだけど。
奏美は慌てて脳内のイメージを振り払った。
「街の音楽が……誰にでも受け入れてもらえる音楽が私の音楽よ」
力強く自分に言い聞かせるように奏美は言い切ると、その場から去っていこうとする。
「どこに行くんだい、奏美さん」
「練習場所を変えるだけよ。ついてこないで」
「……ふぃ」
晴人はため息をつくと指輪をはめながらハンドオーサーにかざす。
ユニコーン!
空中に四角い魔法陣が描かれ、無数の青い破片が飛び出し、カチャカチャと集まっていく。
破片はプラモンスターの1体『ブルーユニコーン』を形成した。
晴人は召喚に使った指輪を青い使い魔にはめて、奏美の追跡を指示する。
「今のは……」
「俺、魔法使いなんだ」
不思議そうに見る渡に晴人は指輪を見せた。
体の力を抜き、全身で街に流れる音楽を聞く。
流れには逆らわず、一体に。
(うん。やっぱり、このバイオリンが合う)
渡に任せたバイオリンの修理は完璧だった。奏美が望む鳥居坂の音を見事に表現してくれる。
美しい音色が風にのって遠くへと流れていく。
晴人はベンチに座りながら、奏美の演奏をBGMにプレーンシュガーのドーナツを食べていた。
最初は外での練習は危険だ、と言ったが奏美は聞かなかった。
「狙われているなら何処で練習していても同じでしょ?」
それを言われると晴人は何も言いかえさなかった。
いくら危険だとか命が狙われているだとか伝えても、相手には相手の生活がある。
(誰にだって譲れないものはあるしな)
それを蔑ろにしてまで誰かの希望にはなりたくなかった。
だから今もこうして奏美を拘束するようなことはせずに見守っている。
晴人はチラリと視線を横に流す。
そこには奏美のいう隠れたるバイオリン修復の名人、紅渡がいた。
自分と同い年か少し年上に見える青年は静かに、奏美が奏でる街の音楽に耳を傾けていた。
「どうかしら?」演奏を終えた奏美が晴人に聞いてくる。
「ああ、悪くない。むしろ前よりも良くなってる気がする」
「あら、分かるの?」少し嬉しそうな奏美。
「何となくだけどね」
晴人の答えに奏美は小さく笑った。
「あなたはどう?」
気を良くした奏美は同様の質問を今度は渡にする。
渡は考えるように頭を掻いて言った。
「もっと強く弾いてみたらどうですか」
「強く? どういう意味かしら?」
奏美はほんの少し眉根を寄せた。渡は気づかないまま続ける。
「音は綺麗なんですけど、それだけって言うか。奏美さんの音楽が聞こえてこないんです」
奏美が明らかに不機嫌そうな顔になった。
おいおい……と晴人は思った。
何も今そんなことを言わなくてもいいだろ。
渡の発言に奏美は食ってかかった。
「私の音楽ってどういうことよ?」
「それは僕にもわかりません。でも、奏美さんには奏美さんの音楽があります。それを閉じ込めるのはもったいないと思います」
奏美の勢いに萎縮し、渡の声は尻すぼみになった。だが、渡の感じたままの言葉に奏美は微かに動揺していた。
私が自分の音楽を閉じ込めている?
一瞬、頭の中に昔の光景がフラッシュバックする。
小さかった頃の自分。楽器を弾くのが楽しくて仕方なかった。
そんな自分を遠くから見つめてくる暗い視線と声。
ちょっと上手いからって、でしゃばりすぎ。
あんたが出来るせいで、比べられる私たちが怒られるのよ。
周りに合わせてよ。
空気読んで欲しいんだけど。
奏美は慌てて脳内のイメージを振り払った。
「街の音楽が……誰にでも受け入れてもらえる音楽が私の音楽よ」
力強く自分に言い聞かせるように奏美は言い切ると、その場から去っていこうとする。
「どこに行くんだい、奏美さん」
「練習場所を変えるだけよ。ついてこないで」
「……ふぃ」
晴人はため息をつくと指輪をはめながらハンドオーサーにかざす。
ユニコーン!
空中に四角い魔法陣が描かれ、無数の青い破片が飛び出し、カチャカチャと集まっていく。
破片はプラモンスターの1体『ブルーユニコーン』を形成した。
晴人は召喚に使った指輪を青い使い魔にはめて、奏美の追跡を指示する。
「今のは……」
「俺、魔法使いなんだ」
不思議そうに見る渡に晴人は指輪を見せた。
おっつおっつ
いいよ、ゆっくりでも
丁寧で安心するから、待ってられる
いいよ、ゆっくりでも
丁寧で安心するから、待ってられる
晴人はベンチの背もたれに体を預けると、奏美の去った方を悲しそうに見つめる渡に声をかけた。
「紅……渡さんだっけ?」
「渡でいいです。えっと」
「操真晴人。晴人でいいよ。あのさ、渡」
「なんですか晴人さん?」
気さくに話しかける晴人と対照的に渡はやや固い敬語のままだ。
「渡はやっぱり音楽を習っているのか?」
会話のきっかけとしては妥当だろう。
バイオリンの修復をやっている人間なのだから音楽を嗜んでいるに違いない。
「いいえ、特には。昔、友達に薦められてギターを少しやった位です」
「……そうか」予想を裏切る答えに内心驚きつつも晴人は相槌を打つ。
「あと僕、本業はバイオリン作りなんです。修理はついでみたいなもので」
「でも、バイオリン作りとなると随分と専門的だろ。やっぱり誰かから教わったのか?」
「えっと……最初は見よう見まねでした」
「は?」
今度こそポーカーフェイスを保てず晴人は思わず真顔になった。
渡は晴人を驚かせてしまったことに申し訳なさそうに説明する。
「僕の家には父さんが作りかけたバイオリンがいくつかあったんです。多分、途中で失敗だとわかってやめた物だと思います。初めはそういった作りかけのバイオリン同士を組み合わせて、作りました。でも、線……板の形が合わないから、すごく歪なバイオリンができたんですけど」
数をこなしていくと既に出来ている板に沿って線を描くことから自分で線を描いてみた。
他にも板につかう木片やバイオリンに塗るニスの材料を探したりもした。
そうして色々と試していく内に、いつの間にかバイオリンを作る技術を身につけてしまった、と渡は語った。
普通なら有り得ないと鼻で笑い飛ばせるが、渡が嘘をついているようには見えない。
恐らく真実なのだろう。
晴人は感嘆の息を漏らした。
「要するに独学ってことか」
「一度すごい先生に教わったことはあったんですけど」
一瞬、渡は青い空を見上げる。寂しそうな顔をしていた。
晴人はあえて触れず、はんぐり~の袋からプレーンシュガーを出すと渡に差し出した。
「やるよ。お近づきの印だ」
「あ……どうも」
「あまり暗い顔をするもんじゃない。って、喋らせちゃったのは俺の方だな。わるい」
晴人は軽く謝ると自分の分のプレーンシュガーを出してかじった。
渡も晴人の気遣いにあえて触れず、
(いくつ買ってあるんだろう?)
そんなことを思いながら貰ったドーナツを口に含む。美味い。
揚げた生地の柔らかさとまぶされた粉砂糖の程よい甘さがハーモニーを奏でている。
行きつけの喫茶店『カフェ・マル・ダムール』で出すコーヒーが合いそうだ。
「美味いだろ? 俺の一推しだ」
「はい。美味しいです」
自分のことのように得意になる晴人に渡は素直に答える。それまで固かった渡の雰囲気が和らいだ。
「さっき言っていた奏美さんの音楽が聞こえてこないってどういう意味だ?」
「人間は皆、音楽を奏でているんです。僕はその音楽を大事にして欲しい」
「えっと、つまり……奏美さんは自分に嘘をついているって言いたいのか」
「奏美さんは心の声に耳を傾けていない。塞いでいる気がします」
「自分の音楽……心の声ねえ」
言わんとしていることは分かるが随分と抽象的だ。
もっとも芸術に携わって生きている人間というのは普通の人とは別の層で生きているイメージがあるし、案外そういうものなのかもしれない。
晴人は不意に渡を試したくなった。
「俺の音楽はどう聞こえるんだ?」
「……とても強い意思を感じます。大切な何かを守ろうとする」
「なんだか胡散臭いな」
「そ、そんなことは」
「冗談だ。当たっている」
「ホッ……」
「渡にもあるのか? 守りたいもの」
「ありますよ。たとえ世界の全てを敵に回しても守りたい人が」
歯が浮きそうな程に恥ずかしい台詞を静かに言う渡を晴人は茶化さなかった。
渡の瞳には表には出さないが自分と同じ、傷ついたとしても何かを成そうとする覚悟のようなものが見えたからだ。
「紅……渡さんだっけ?」
「渡でいいです。えっと」
「操真晴人。晴人でいいよ。あのさ、渡」
「なんですか晴人さん?」
気さくに話しかける晴人と対照的に渡はやや固い敬語のままだ。
「渡はやっぱり音楽を習っているのか?」
会話のきっかけとしては妥当だろう。
バイオリンの修復をやっている人間なのだから音楽を嗜んでいるに違いない。
「いいえ、特には。昔、友達に薦められてギターを少しやった位です」
「……そうか」予想を裏切る答えに内心驚きつつも晴人は相槌を打つ。
「あと僕、本業はバイオリン作りなんです。修理はついでみたいなもので」
「でも、バイオリン作りとなると随分と専門的だろ。やっぱり誰かから教わったのか?」
「えっと……最初は見よう見まねでした」
「は?」
今度こそポーカーフェイスを保てず晴人は思わず真顔になった。
渡は晴人を驚かせてしまったことに申し訳なさそうに説明する。
「僕の家には父さんが作りかけたバイオリンがいくつかあったんです。多分、途中で失敗だとわかってやめた物だと思います。初めはそういった作りかけのバイオリン同士を組み合わせて、作りました。でも、線……板の形が合わないから、すごく歪なバイオリンができたんですけど」
数をこなしていくと既に出来ている板に沿って線を描くことから自分で線を描いてみた。
他にも板につかう木片やバイオリンに塗るニスの材料を探したりもした。
そうして色々と試していく内に、いつの間にかバイオリンを作る技術を身につけてしまった、と渡は語った。
普通なら有り得ないと鼻で笑い飛ばせるが、渡が嘘をついているようには見えない。
恐らく真実なのだろう。
晴人は感嘆の息を漏らした。
「要するに独学ってことか」
「一度すごい先生に教わったことはあったんですけど」
一瞬、渡は青い空を見上げる。寂しそうな顔をしていた。
晴人はあえて触れず、はんぐり~の袋からプレーンシュガーを出すと渡に差し出した。
「やるよ。お近づきの印だ」
「あ……どうも」
「あまり暗い顔をするもんじゃない。って、喋らせちゃったのは俺の方だな。わるい」
晴人は軽く謝ると自分の分のプレーンシュガーを出してかじった。
渡も晴人の気遣いにあえて触れず、
(いくつ買ってあるんだろう?)
そんなことを思いながら貰ったドーナツを口に含む。美味い。
揚げた生地の柔らかさとまぶされた粉砂糖の程よい甘さがハーモニーを奏でている。
行きつけの喫茶店『カフェ・マル・ダムール』で出すコーヒーが合いそうだ。
「美味いだろ? 俺の一推しだ」
「はい。美味しいです」
自分のことのように得意になる晴人に渡は素直に答える。それまで固かった渡の雰囲気が和らいだ。
「さっき言っていた奏美さんの音楽が聞こえてこないってどういう意味だ?」
「人間は皆、音楽を奏でているんです。僕はその音楽を大事にして欲しい」
「えっと、つまり……奏美さんは自分に嘘をついているって言いたいのか」
「奏美さんは心の声に耳を傾けていない。塞いでいる気がします」
「自分の音楽……心の声ねえ」
言わんとしていることは分かるが随分と抽象的だ。
もっとも芸術に携わって生きている人間というのは普通の人とは別の層で生きているイメージがあるし、案外そういうものなのかもしれない。
晴人は不意に渡を試したくなった。
「俺の音楽はどう聞こえるんだ?」
「……とても強い意思を感じます。大切な何かを守ろうとする」
「なんだか胡散臭いな」
「そ、そんなことは」
「冗談だ。当たっている」
「ホッ……」
「渡にもあるのか? 守りたいもの」
「ありますよ。たとえ世界の全てを敵に回しても守りたい人が」
歯が浮きそうな程に恥ずかしい台詞を静かに言う渡を晴人は茶化さなかった。
渡の瞳には表には出さないが自分と同じ、傷ついたとしても何かを成そうとする覚悟のようなものが見えたからだ。
先日、小説電王が届いた時に「クライマックスからのフィナーレ」という安直な発想をした
練習場所を変えて演奏する奏美の顔色は優れなかった。
明らかに音が乱れている。心もだ。
原因はわかっている。さきほど、渡に言われた言葉だった。
自分の音楽を閉じ込めている。それは奏美がずっとやってきたことだった。
奏美が小学校六年生の頃、道徳の時間に宿題が1つ出た。
内容は「親に自分の名前の意味を聞いてみましょう」といったものだ。
家族三人の夕食の時に聞いてみると両親は答えた。
「まだ奏美がお母さんのお腹の中にいなかった頃なんだけどね」
「父さんと母さんが二人で浜辺に行った時、男の人が海に向かってバイオリンを弾いていたんだ。その演奏がすごくてな」
「とても優しくて綺麗だったの。今でも忘れられないわ」
「奏美には、あの男の人の演奏のような、美しい音色を奏でて誰かを優しい気持ちにさせられる子になって欲しいんだ」
そんな願いをこめて父親が奏美と名付けたそうだ。
幼い奏美は地元のアマチュアオーケストラに所属しており、自分の音楽を表現していた。
奏美の奏でる美しい音色は、人を癒す優しいものだった。
周囲の人は奏美の演奏を手放しに褒めてくれた……一部を除いて。
それは自分より四、五つほど年の離れた高校生たちだった。
彼女たちは自分より年下の奏美の演奏に対して尊敬よりも嫉妬が先走った。
小学生の癖に生意気だ。
自分たちが練習で失敗すると何かと指揮者から奏美と比較される。
ウザったい。こっちもこっちなりにやっているのに言ってくる指揮者もそうだが、それ以上に演奏を完璧にこなす奏美が。
いつしか奏美は彼女たちからいじめを受けだした。
暴力や楽譜を隠される、といったものではなく、暗い視線と声。
それは奏美にとって黒い絵の具だった。
自分を褒めてくれる大人たちの言葉で嬉しくなった気持ちを上から全て真っ黒に塗りつぶされた。
幼い奏美には彼女たちの悪意を耐えるには荷が重すぎた。
心が痛くて辛い。
でも、バイオリンを弾くのは好きだし、誰かに褒められるのは嬉しい。
なまじ、そういった救いがあったから続けられたのか、抜け出せなかったのか。
奏美にはわからなかった。
ただ奏美はあることを学んだ。
出しゃばってはいけない。自分の弾くバイオリンは誰かの気持ちを乱してしまうのだ。
音楽は楽しいだけじゃない。それを理解した瞬間、奏美は自分の音楽に鍵をかけた。
それから奏美は自分の音楽は表現せず、ただひたすら周囲にあわせた。
全身で、その場の音楽を聞いて、流れには逆らわず、一体に。
やがてプロになった奏美はソロで演奏する道を選んだ。
独りなら、きっと自分の好きなように思いっきりバイオリンを弾けるはずだという希望があった。
しかし奏美の心の奥底には暗い視線と声への恐怖がへばりついていた。
もし、聴衆に自分の音楽を拒絶されたら?
痛くて辛い。
もちろん、そんな仮定は自分の考えすぎでしかないと理解していた。
それでも一度、頭の中で描いてしまったものはいつまでもしつこく残った。べったりと。
結局、奏美は自分の音楽を解き放てず、今まで通りの演奏スタイルをとった。
こっちの方が長くやってるからやりやすいし……そうやって自分を肯定させた。
やることは特別変わらない。
流れには逆らわず、一体に。
ただ、自分が聞く音楽が集団から街へとシフトしただけだ。
奏美はそれを『街の音楽』と名づけた。
明らかに音が乱れている。心もだ。
原因はわかっている。さきほど、渡に言われた言葉だった。
自分の音楽を閉じ込めている。それは奏美がずっとやってきたことだった。
奏美が小学校六年生の頃、道徳の時間に宿題が1つ出た。
内容は「親に自分の名前の意味を聞いてみましょう」といったものだ。
家族三人の夕食の時に聞いてみると両親は答えた。
「まだ奏美がお母さんのお腹の中にいなかった頃なんだけどね」
「父さんと母さんが二人で浜辺に行った時、男の人が海に向かってバイオリンを弾いていたんだ。その演奏がすごくてな」
「とても優しくて綺麗だったの。今でも忘れられないわ」
「奏美には、あの男の人の演奏のような、美しい音色を奏でて誰かを優しい気持ちにさせられる子になって欲しいんだ」
そんな願いをこめて父親が奏美と名付けたそうだ。
幼い奏美は地元のアマチュアオーケストラに所属しており、自分の音楽を表現していた。
奏美の奏でる美しい音色は、人を癒す優しいものだった。
周囲の人は奏美の演奏を手放しに褒めてくれた……一部を除いて。
それは自分より四、五つほど年の離れた高校生たちだった。
彼女たちは自分より年下の奏美の演奏に対して尊敬よりも嫉妬が先走った。
小学生の癖に生意気だ。
自分たちが練習で失敗すると何かと指揮者から奏美と比較される。
ウザったい。こっちもこっちなりにやっているのに言ってくる指揮者もそうだが、それ以上に演奏を完璧にこなす奏美が。
いつしか奏美は彼女たちからいじめを受けだした。
暴力や楽譜を隠される、といったものではなく、暗い視線と声。
それは奏美にとって黒い絵の具だった。
自分を褒めてくれる大人たちの言葉で嬉しくなった気持ちを上から全て真っ黒に塗りつぶされた。
幼い奏美には彼女たちの悪意を耐えるには荷が重すぎた。
心が痛くて辛い。
でも、バイオリンを弾くのは好きだし、誰かに褒められるのは嬉しい。
なまじ、そういった救いがあったから続けられたのか、抜け出せなかったのか。
奏美にはわからなかった。
ただ奏美はあることを学んだ。
出しゃばってはいけない。自分の弾くバイオリンは誰かの気持ちを乱してしまうのだ。
音楽は楽しいだけじゃない。それを理解した瞬間、奏美は自分の音楽に鍵をかけた。
それから奏美は自分の音楽は表現せず、ただひたすら周囲にあわせた。
全身で、その場の音楽を聞いて、流れには逆らわず、一体に。
やがてプロになった奏美はソロで演奏する道を選んだ。
独りなら、きっと自分の好きなように思いっきりバイオリンを弾けるはずだという希望があった。
しかし奏美の心の奥底には暗い視線と声への恐怖がへばりついていた。
もし、聴衆に自分の音楽を拒絶されたら?
痛くて辛い。
もちろん、そんな仮定は自分の考えすぎでしかないと理解していた。
それでも一度、頭の中で描いてしまったものはいつまでもしつこく残った。べったりと。
結局、奏美は自分の音楽を解き放てず、今まで通りの演奏スタイルをとった。
こっちの方が長くやってるからやりやすいし……そうやって自分を肯定させた。
やることは特別変わらない。
流れには逆らわず、一体に。
ただ、自分が聞く音楽が集団から街へとシフトしただけだ。
奏美はそれを『街の音楽』と名づけた。
「いい曲ですね」
奏美の音が乱れた演奏が終わると若い男性が話しかけてきた。
年齢は二十歳を過ぎたあたりで奏美より年下に見える。
「聞いたことがないですけど、タイトルはなんて言うんですか?」
「……街の音楽よ」奏美は少し素っ気なく答えた。
「あっ、なるほど」青年は納得したように両手を合わせて頷いた。
「道理で心にすっと入ってくるわけで」
「あなた、この街の人?」
「最近、越してきたんです。あっ、僕、西代大地って言います。西に代わるに、大地で西代大地です」
「大地?」
奏美はさっと大地の全身を見渡す。
大地の体は細い。安っぽい長袖のシャツから見える白い手にはうっすら骨の造りが見える。
大地なんていう力強そうな名前から遠く離れている外見だ。
「あなた、随分と細いわね」
「そうですか? あまり気にしたことはないんですけど」
大地はフーッと鼻息を荒くしながら右手の指を動かしてコキコキ鳴らす。
力強さをアピールしているつもりかもしれない。
だが、奏美には骸骨がカチャカチャと指の骨を動かしているように見えた。
「あなた最近、この街に越してきたって言ったわよね。それなのに街の音楽がわかるの?」
「いや、全然」大地は首を横に振りながらサラリと答えた。
「でも、その曲を聞いて何となく……いいなって思いました。音楽って、そういうものじゃないですか」
「そうね」奏美は小さく頷いた。
誰が奏でたではなくて、聴く人がどう感じたか。そういうものなのかもしれない。
晴人も大地も自分の音楽にいい評価をしてくれた。
鳥居坂で暮らしている人が街の音楽を肯定してくれた。
その事実に奏美は、やはり自分は間違っていないと結論づける。
渡の言葉も決して間違いではない。でも、自分が奏でるのは街の音楽でいい。
例え、偽りの音楽でも周囲が認めてくれるなら、それでいい。
「鳥居坂にはやっぱりコンサートを?」
「ええ、そうよ。近いうちにね」
「たくさん人が来るといいですね。僕も行きたいです。あっ、でもチケットとかってもう売り切れですか?」
「大丈夫よ」
奏美はポケットから紙の束を取り出し、その内の一枚を陸人に渡す。
大地は紙に大きく書かれた文字を読み上げた。
「時田奏美・バイオリンソロコンサート……」
大地に手渡したのは奏美のコンサートチケットだ。
「私の演奏を褒めてくれたお礼よ。日にちは大丈夫かしら?」
「ええ、バッチリですよ。というか、これを聞くためにだったら他に用事があったとしても、こっちを優先します」
「褒めすぎね。悪い気はしないけど」
「あっ、でも僕って、けっこう飽きっぽいんですよ。すぐに満足できなくなってしまうというか」
「私の演奏もすぐに飽きてしまうと言いたいの?」
「それは奏美さん次第です」
大地は不健康そうな体つきには少し似合わない朗らかな笑顔で言った。
失礼な物言いだが、それが大地からの声援だと奏美はすぐに分かった。
「また機会があったら聞きにきますね」
「その時はもっといい演奏を聴かせてあげるわ」
大地はもう一度笑うと行ってしまう。
奏美は大地が見えなくなるまで見送ると練習を再開した。
不思議と乱れた演奏はすっかり元に戻っていた。
(西代大地か)
また聞きにくると言っていたが、実際どうなのだろうか。ただの社交辞令かもしれない。
それでも何となく、彼の期待に応える演奏を聴かせてやりたいという想いが湧いてくる。
奏美は静かに目を閉じて、街の音楽に耳を傾けた。
明るくて希望に満ちた素晴らしい音楽が聞こえてくる。
「……えっ?」
不意に奏美の背中に悪寒が走った。
鳥居坂の音楽に何かが混ざっている。この街には存在しないはずの音。
それは注意して聞かないと聞き逃してしまうような小さな音だが、確かに奏美の耳に聞こえた。
音はどんどん大きくハッキリと聞こえるようになっていき、合わせて悪寒が強くなっていく。
奏美は不協和音が聞こえてくる方へと視線を移した。視線の先では景色の一部が陽炎のように揺らめいている。
やがて、その上から人の形が浮かび上がってくる。だが、それは人ではない。
ファンガイアだった。
奏美の音が乱れた演奏が終わると若い男性が話しかけてきた。
年齢は二十歳を過ぎたあたりで奏美より年下に見える。
「聞いたことがないですけど、タイトルはなんて言うんですか?」
「……街の音楽よ」奏美は少し素っ気なく答えた。
「あっ、なるほど」青年は納得したように両手を合わせて頷いた。
「道理で心にすっと入ってくるわけで」
「あなた、この街の人?」
「最近、越してきたんです。あっ、僕、西代大地って言います。西に代わるに、大地で西代大地です」
「大地?」
奏美はさっと大地の全身を見渡す。
大地の体は細い。安っぽい長袖のシャツから見える白い手にはうっすら骨の造りが見える。
大地なんていう力強そうな名前から遠く離れている外見だ。
「あなた、随分と細いわね」
「そうですか? あまり気にしたことはないんですけど」
大地はフーッと鼻息を荒くしながら右手の指を動かしてコキコキ鳴らす。
力強さをアピールしているつもりかもしれない。
だが、奏美には骸骨がカチャカチャと指の骨を動かしているように見えた。
「あなた最近、この街に越してきたって言ったわよね。それなのに街の音楽がわかるの?」
「いや、全然」大地は首を横に振りながらサラリと答えた。
「でも、その曲を聞いて何となく……いいなって思いました。音楽って、そういうものじゃないですか」
「そうね」奏美は小さく頷いた。
誰が奏でたではなくて、聴く人がどう感じたか。そういうものなのかもしれない。
晴人も大地も自分の音楽にいい評価をしてくれた。
鳥居坂で暮らしている人が街の音楽を肯定してくれた。
その事実に奏美は、やはり自分は間違っていないと結論づける。
渡の言葉も決して間違いではない。でも、自分が奏でるのは街の音楽でいい。
例え、偽りの音楽でも周囲が認めてくれるなら、それでいい。
「鳥居坂にはやっぱりコンサートを?」
「ええ、そうよ。近いうちにね」
「たくさん人が来るといいですね。僕も行きたいです。あっ、でもチケットとかってもう売り切れですか?」
「大丈夫よ」
奏美はポケットから紙の束を取り出し、その内の一枚を陸人に渡す。
大地は紙に大きく書かれた文字を読み上げた。
「時田奏美・バイオリンソロコンサート……」
大地に手渡したのは奏美のコンサートチケットだ。
「私の演奏を褒めてくれたお礼よ。日にちは大丈夫かしら?」
「ええ、バッチリですよ。というか、これを聞くためにだったら他に用事があったとしても、こっちを優先します」
「褒めすぎね。悪い気はしないけど」
「あっ、でも僕って、けっこう飽きっぽいんですよ。すぐに満足できなくなってしまうというか」
「私の演奏もすぐに飽きてしまうと言いたいの?」
「それは奏美さん次第です」
大地は不健康そうな体つきには少し似合わない朗らかな笑顔で言った。
失礼な物言いだが、それが大地からの声援だと奏美はすぐに分かった。
「また機会があったら聞きにきますね」
「その時はもっといい演奏を聴かせてあげるわ」
大地はもう一度笑うと行ってしまう。
奏美は大地が見えなくなるまで見送ると練習を再開した。
不思議と乱れた演奏はすっかり元に戻っていた。
(西代大地か)
また聞きにくると言っていたが、実際どうなのだろうか。ただの社交辞令かもしれない。
それでも何となく、彼の期待に応える演奏を聴かせてやりたいという想いが湧いてくる。
奏美は静かに目を閉じて、街の音楽に耳を傾けた。
明るくて希望に満ちた素晴らしい音楽が聞こえてくる。
「……えっ?」
不意に奏美の背中に悪寒が走った。
鳥居坂の音楽に何かが混ざっている。この街には存在しないはずの音。
それは注意して聞かないと聞き逃してしまうような小さな音だが、確かに奏美の耳に聞こえた。
音はどんどん大きくハッキリと聞こえるようになっていき、合わせて悪寒が強くなっていく。
奏美は不協和音が聞こえてくる方へと視線を移した。視線の先では景色の一部が陽炎のように揺らめいている。
やがて、その上から人の形が浮かび上がってくる。だが、それは人ではない。
ファンガイアだった。
渡の耳に父の作ったバイオリン『ブラッディローズ』の奏でる旋律が聞こえる。
それはファンガイアが人を襲っていることを知らせる合図だった。
「すみません……ちょっとトイレ」
渡は晴人に小さく頭を下げるとその場から離れる。
渡が去っていくと、ほぼ同時に晴人の足元で物音がした。
下を覗いてみるとアスファルトを突き破ってブルーユニコーンが出てくる。
追跡に出した使い魔が帰ってきた。奏美に巻かれたとも思えない。
ならば、可能性として考えられることは……
「奏美さんに何かあったんだな?」
ユニコーンは「そうだ」と言わんばかりに嘶く。
晴人はすぐさまウィザードライバーを展開すると
「変身!」
左中指につけた黄色の指輪をかざした。
ランド! プリーズ! ドッ・ドッ・ドッドッドッドッ! ドッドッドッドッ!
地響きを思わせる力強い詠唱と共に黄色の魔法陣が晴人を包んでいく。
揺るがない大地のように強い意思を秘めた魔法使い、仮面ライダーウィザード・ランドスタイルが姿を現した。
「ユニコーン、お前が掘ってくれた道を使わせてもらうな」
ドリル! プリーズ!
ウィザードはその場で体を激しく回転させて地中へ潜った。
それはファンガイアが人を襲っていることを知らせる合図だった。
「すみません……ちょっとトイレ」
渡は晴人に小さく頭を下げるとその場から離れる。
渡が去っていくと、ほぼ同時に晴人の足元で物音がした。
下を覗いてみるとアスファルトを突き破ってブルーユニコーンが出てくる。
追跡に出した使い魔が帰ってきた。奏美に巻かれたとも思えない。
ならば、可能性として考えられることは……
「奏美さんに何かあったんだな?」
ユニコーンは「そうだ」と言わんばかりに嘶く。
晴人はすぐさまウィザードライバーを展開すると
「変身!」
左中指につけた黄色の指輪をかざした。
ランド! プリーズ! ドッ・ドッ・ドッドッドッドッ! ドッドッドッドッ!
地響きを思わせる力強い詠唱と共に黄色の魔法陣が晴人を包んでいく。
揺るがない大地のように強い意思を秘めた魔法使い、仮面ライダーウィザード・ランドスタイルが姿を現した。
「ユニコーン、お前が掘ってくれた道を使わせてもらうな」
ドリル! プリーズ!
ウィザードはその場で体を激しく回転させて地中へ潜った。
ファンガイアがゆっくりと奏美に近づいてくる。
(殺される―)
ファンガイアが宙に舞う牙を放ち、奏美が死を覚悟した瞬間、
ディフェンド! プリーズ!
突然、地面が隆起し壁を造りあげて奏美を牙から守った。
次いで地面が小刻みに揺れ始めた。それは徐々に激しさを増していく。
奏美は体勢を崩してしゃがみこみ、ファンガイアは辺りを見渡した。
「さあ……ショータイムだ!」
そんな台詞が聞こえると、ファンガイアの目の前で激しく土埃が巻き起こる。
土埃と共にウィザードが現れ、ファンガイアをソードガンで切り裂いた。
「ファンガイアか。確かに木崎の言った通りだな」
ウィザードはソードガンを構えて相手を見据える。
ファンガイアは頭部に鳥の嘴のように鋭く丸み帯びた逆三角形が二つあり、飛び出した両目の様に見える。カメレオンファンガイアだ。
カメレオンファンガイアは唸り声を上げるとウィザードへ突っ込んでくる。
ウィザードは身を素早く動かしてカメレオンファンガイアの猛攻を躱す。
「せっかちだな。もっとゆっくりしていけよ」
距離を取り、右の指輪を右に反転させたハンドオーサーにかざす。
チョーイイネ! グラビティ!
詠唱が終わるとウィザードは右手をファンガイアに向かって突き出した。
するとファンガイアの全身に凄まじい重力が掛かり、その場にうずくまった。
ウィザードがゆっくりと右手をあげる。ファンガイアの体が宙に浮く。重力がゼロになっているのだ。
ウィザードの右手の動きに合わせて、ファンガイアの高度が上がっていく。
右手を上に伸ばしきると、ファンガイアの位置はそこでピタリと止まった。
「そらっ!」
ウィザードが右手を大きく振り下ろす。
宙高くに浮かされたファンガイアに圧倒的な重力が加わり、猛スピードで落下していく。
ドゴーン!
カメレオンファンガイアの体が激しく地面に叩きつけられた。
晴人は右の指輪を外し、別の指輪をはめる。指輪には龍と人の足の模様が彫られていた。
決めるなら、今……
必殺の指輪をかざし、トドメを刺そうとする。
「危ない!」
奏美がウィザードに向かって叫んだ。
奏美は感じとったのだ。不協和音がもう1つ近づいてくる。
しかし、遅かった。
空から別のファンガイア―レディバグファンガイアがウィザードを攻撃した。
「ぐあっ!」
攻撃をもろに食らってしまいウィザードは呻き声をあげた。
レディバグファンガイアはすかさず衝撃波を放ち、ウィザードを吹き飛ばす。
今度はレディバグファンガイアとカメレオンファンガイアがウィザードにトドメを刺そうとする。
「ギャラリーが多い方がショーの魅せ甲斐があるな」
おちゃらけるウィザードだが、内心では自分の劣勢を理解していた。
先ほどの不意打ちのダメージも残っている。
ウィザードと二体のファンガイアの距離が徐々に詰まっていく。
その時だった。奏美の耳に音楽が聞こえてきた。
http://www.youtube.com/watch?v=Yx1ShuXYUDc
それはファンガイアと同じこの街の音楽には存在しない不協和音だった。
しかし、その不協和音はとても美しい音色を奏でていた。
悲痛な響きがある一方で、とても力強い。
奏美にしか聞こえない音とは別に鎖が擦れる音が聞こえてくる。
その音が聞こえてくる方に奏美、二体のファンガイア、そしてウィザードが顔を向ける。
「あれは……」
ウィザードは唖然とする。
光沢を放つそれは鎧に見えた。
鎧はファンガイアの様に黒い体をしていたが、ファンガイアとは異質な造形だった。
色鮮やかな模様はなく胴体の紅が目立つ。
今はウィザードの舞台であるはずなのに、主役のウィザードを含め誰もが鎧に魅入られていた。
キバが舞台へと上がった。
(殺される―)
ファンガイアが宙に舞う牙を放ち、奏美が死を覚悟した瞬間、
ディフェンド! プリーズ!
突然、地面が隆起し壁を造りあげて奏美を牙から守った。
次いで地面が小刻みに揺れ始めた。それは徐々に激しさを増していく。
奏美は体勢を崩してしゃがみこみ、ファンガイアは辺りを見渡した。
「さあ……ショータイムだ!」
そんな台詞が聞こえると、ファンガイアの目の前で激しく土埃が巻き起こる。
土埃と共にウィザードが現れ、ファンガイアをソードガンで切り裂いた。
「ファンガイアか。確かに木崎の言った通りだな」
ウィザードはソードガンを構えて相手を見据える。
ファンガイアは頭部に鳥の嘴のように鋭く丸み帯びた逆三角形が二つあり、飛び出した両目の様に見える。カメレオンファンガイアだ。
カメレオンファンガイアは唸り声を上げるとウィザードへ突っ込んでくる。
ウィザードは身を素早く動かしてカメレオンファンガイアの猛攻を躱す。
「せっかちだな。もっとゆっくりしていけよ」
距離を取り、右の指輪を右に反転させたハンドオーサーにかざす。
チョーイイネ! グラビティ!
詠唱が終わるとウィザードは右手をファンガイアに向かって突き出した。
するとファンガイアの全身に凄まじい重力が掛かり、その場にうずくまった。
ウィザードがゆっくりと右手をあげる。ファンガイアの体が宙に浮く。重力がゼロになっているのだ。
ウィザードの右手の動きに合わせて、ファンガイアの高度が上がっていく。
右手を上に伸ばしきると、ファンガイアの位置はそこでピタリと止まった。
「そらっ!」
ウィザードが右手を大きく振り下ろす。
宙高くに浮かされたファンガイアに圧倒的な重力が加わり、猛スピードで落下していく。
ドゴーン!
カメレオンファンガイアの体が激しく地面に叩きつけられた。
晴人は右の指輪を外し、別の指輪をはめる。指輪には龍と人の足の模様が彫られていた。
決めるなら、今……
必殺の指輪をかざし、トドメを刺そうとする。
「危ない!」
奏美がウィザードに向かって叫んだ。
奏美は感じとったのだ。不協和音がもう1つ近づいてくる。
しかし、遅かった。
空から別のファンガイア―レディバグファンガイアがウィザードを攻撃した。
「ぐあっ!」
攻撃をもろに食らってしまいウィザードは呻き声をあげた。
レディバグファンガイアはすかさず衝撃波を放ち、ウィザードを吹き飛ばす。
今度はレディバグファンガイアとカメレオンファンガイアがウィザードにトドメを刺そうとする。
「ギャラリーが多い方がショーの魅せ甲斐があるな」
おちゃらけるウィザードだが、内心では自分の劣勢を理解していた。
先ほどの不意打ちのダメージも残っている。
ウィザードと二体のファンガイアの距離が徐々に詰まっていく。
その時だった。奏美の耳に音楽が聞こえてきた。
http://www.youtube.com/watch?v=Yx1ShuXYUDc
それはファンガイアと同じこの街の音楽には存在しない不協和音だった。
しかし、その不協和音はとても美しい音色を奏でていた。
悲痛な響きがある一方で、とても力強い。
奏美にしか聞こえない音とは別に鎖が擦れる音が聞こえてくる。
その音が聞こえてくる方に奏美、二体のファンガイア、そしてウィザードが顔を向ける。
「あれは……」
ウィザードは唖然とする。
光沢を放つそれは鎧に見えた。
鎧はファンガイアの様に黒い体をしていたが、ファンガイアとは異質な造形だった。
色鮮やかな模様はなく胴体の紅が目立つ。
今はウィザードの舞台であるはずなのに、主役のウィザードを含め誰もが鎧に魅入られていた。
キバが舞台へと上がった。
キバは駆けるとカメレオンファンガイアを殴り飛ばした。
その様子に動揺するレディバグファンガイア。
ウィザードはその隙を逃さず、ソードガンで突く。
二体のファンガイアは分断され、キバはカメレオンファンガイアと、ウィザードはレディバグファンガイアと相対する形になった。
(助けてくれたのか?)
ウィザードは背中越しに立つキバを見る。
キバは視線を気にすることなく、構えをとりファンガイアへと攻撃を仕掛ける。
ファンガイアへ攻撃をする以上、ファンガイアの敵なのだろう。
敵の敵は味方というほど単純ではないが、少なくともファンガイアの相手をしてくれるならウィザードとしては助かる。
ウィザードはレディバグファンガイアにソードガンを向ける。
とりあえず、目の前の敵を倒すことを優先することにした。
レディバグファンガイアが衝撃波を飛ばす。
ディフェンド! プリーズ!
ウィザードは土の壁を造りだし、衝撃波を防ぐ。ガラガラと壁が崩れる間にソードガンを銃に変えて発砲した。
だが、ファンガイアは羽を広げて空中へと逃げる。
連続して銃弾を放つが、ファンガイアの空中における素早い身のこなしには当たらない。
ファンガイアはウィザードを「ここまで来てみろ」と言いたげに見下ろす。
「だったら……」
リクエストに答えてやろう。
ウィザードは左の指輪を黄色から緑色へと変えて、かざす。
ハリケーン! プリーズ! フーッフーッ! フーッフーッフーッフーッ!
一陣の風が吹き抜けるとウィザードの姿が緑色に変わった。
希望を運び、絶望を吹き飛ばす風の魔法使い。仮面ライダーウィザード・ハリケーンスタイルだ。
ウィザードはソードガンを剣へと戻すと地面を蹴った。
そのまま風を操り、ウィザードの体が空を飛ぶ。
速い。突風のようだ。それまで開いていたファンガイアとの距離が一気に詰まる。
すり抜けざまに逆手にもったソードガンで一太刀を浴びせる。
ファンガイアが悲鳴をあげる。
ウィザードはスピードを活かし、ファンガイアの周囲を縦横無尽に飛び回り、切り刻む。
ファンガイアはウィザードを撃ち落とそうと衝撃波を飛ばす。
だが、ウィザードは身をひねると竜巻のように回転しながら舞い上がった。
美しい華麗な舞にファンガイアは一瞬、心を奪われる。
「フィナーレだ!」
ウィザードは右の指輪をかざす。
チョーイイネ! キックストライク! サイコー!
脚部に魔力を集中させる必殺のキック『ストライクウィザード』を発動させる。
更にウィザードはファンガイアを確実に仕留めるために魔法の重ね掛けをした。
チョーイイネ! サンダー!
魔力の集中した足に電撃が纏う。
ファンガイアへ目掛けて落下していくウィザード。
雷が落ちるように一瞬だった。
ストライクウィザードが炸裂し、そのまま地面に激突する。
魔法陣が浮かび上がるとファンガイアは爆裂霧散した。
「ふぃ……」
ウィザードは地面を見た。
膨大な魔力に雷の力を加えたからだろう。
地面には魔法陣が焼け焦げる形で残っていた。
ウィザードはカメレオンファンガイアと戦うキバの方へと視線を移す。
「さてと……あんたはどんなショーを見せてくれるんだ?」
その様子に動揺するレディバグファンガイア。
ウィザードはその隙を逃さず、ソードガンで突く。
二体のファンガイアは分断され、キバはカメレオンファンガイアと、ウィザードはレディバグファンガイアと相対する形になった。
(助けてくれたのか?)
ウィザードは背中越しに立つキバを見る。
キバは視線を気にすることなく、構えをとりファンガイアへと攻撃を仕掛ける。
ファンガイアへ攻撃をする以上、ファンガイアの敵なのだろう。
敵の敵は味方というほど単純ではないが、少なくともファンガイアの相手をしてくれるならウィザードとしては助かる。
ウィザードはレディバグファンガイアにソードガンを向ける。
とりあえず、目の前の敵を倒すことを優先することにした。
レディバグファンガイアが衝撃波を飛ばす。
ディフェンド! プリーズ!
ウィザードは土の壁を造りだし、衝撃波を防ぐ。ガラガラと壁が崩れる間にソードガンを銃に変えて発砲した。
だが、ファンガイアは羽を広げて空中へと逃げる。
連続して銃弾を放つが、ファンガイアの空中における素早い身のこなしには当たらない。
ファンガイアはウィザードを「ここまで来てみろ」と言いたげに見下ろす。
「だったら……」
リクエストに答えてやろう。
ウィザードは左の指輪を黄色から緑色へと変えて、かざす。
ハリケーン! プリーズ! フーッフーッ! フーッフーッフーッフーッ!
一陣の風が吹き抜けるとウィザードの姿が緑色に変わった。
希望を運び、絶望を吹き飛ばす風の魔法使い。仮面ライダーウィザード・ハリケーンスタイルだ。
ウィザードはソードガンを剣へと戻すと地面を蹴った。
そのまま風を操り、ウィザードの体が空を飛ぶ。
速い。突風のようだ。それまで開いていたファンガイアとの距離が一気に詰まる。
すり抜けざまに逆手にもったソードガンで一太刀を浴びせる。
ファンガイアが悲鳴をあげる。
ウィザードはスピードを活かし、ファンガイアの周囲を縦横無尽に飛び回り、切り刻む。
ファンガイアはウィザードを撃ち落とそうと衝撃波を飛ばす。
だが、ウィザードは身をひねると竜巻のように回転しながら舞い上がった。
美しい華麗な舞にファンガイアは一瞬、心を奪われる。
「フィナーレだ!」
ウィザードは右の指輪をかざす。
チョーイイネ! キックストライク! サイコー!
脚部に魔力を集中させる必殺のキック『ストライクウィザード』を発動させる。
更にウィザードはファンガイアを確実に仕留めるために魔法の重ね掛けをした。
チョーイイネ! サンダー!
魔力の集中した足に電撃が纏う。
ファンガイアへ目掛けて落下していくウィザード。
雷が落ちるように一瞬だった。
ストライクウィザードが炸裂し、そのまま地面に激突する。
魔法陣が浮かび上がるとファンガイアは爆裂霧散した。
「ふぃ……」
ウィザードは地面を見た。
膨大な魔力に雷の力を加えたからだろう。
地面には魔法陣が焼け焦げる形で残っていた。
ウィザードはカメレオンファンガイアと戦うキバの方へと視線を移す。
「さてと……あんたはどんなショーを見せてくれるんだ?」
>>90
7話でキックストライク+ドリル重ねがけしたよ
アルティメイタムでも同様に、フォーゼと並んでダブルドリルキックかました
でも魔法付与はもっとバリエーション見たかったな
それこそライトニングブラストよろしくキック+サンダーとか、シューティングストライク+バインドで拘束→キックとか
7話でキックストライク+ドリル重ねがけしたよ
アルティメイタムでも同様に、フォーゼと並んでダブルドリルキックかました
でも魔法付与はもっとバリエーション見たかったな
それこそライトニングブラストよろしくキック+サンダーとか、シューティングストライク+バインドで拘束→キックとか
そうなのかサンクス
ウィザードはスラッシュやシューティングストライク含めてもっといろいろ見てみたかったな
そこらへんも期待しちゃうぜ
ウィザードはスラッシュやシューティングストライク含めてもっといろいろ見てみたかったな
そこらへんも期待しちゃうぜ
カメレオンファンガイアの体が揺らめく。ファンガイアの姿が周囲に溶け込んで消えた。
キバは辺りを警戒する。
突然、背中に痛みが走った。ファンガイアが攻撃してきたのだ。
攻撃された方を向いて襲撃に備えるが、今度は横殴りに吹っ飛ばされた。
敵が見えない以上、どこから攻撃が来るか予測不能だ。
せめて大体の位置さえ掴めれば勝機はあるはずだ。
「渡、使うか?」
キバットの声と共にキバの目の前に紫の笛が現れる。
一瞬の思考。
キバは紫の笛をフエスロットに戻した。
代わりに蒼い笛を取り出しキバットに吹かせた。
「信用するぜ……ガルルセイバー!」
・
・
・
洋風建築の大広間。広さの割にほとんど物がない。
ただ目立つものはあった。
椅子だ。
装飾の凝らした椅子がある。周りには深紅の薔薇の花弁がいくつも散りばめられていて、妖しい雰囲気を椅子に纏わせていた。
その椅子は選ばれた者しか座ることを許されない玉座だ。
玉座から少し離れた所でカードに興じる三人がいた。
「……ストレート」
燕尾服を着た巨漢『リキ』が自分の手札を見せる。
「フルハウス!」
セーラー服を着た中性的な少年『ラモン』は出来上がった役を自慢するように見せた。
最後の一人、タキシードを着崩している男『次狼』は自分のカードを見た。
明らかに前の二人よりも弱い手だ。だが、勝負事に負けるのは癪だ。
なんとかならないかと思った時、部屋に笛の音が響いた。
ナイスタイミング。次狼は口端を上げた。
「どうやら、ご指名のようだ。悪いがゲームは無効だ」
次狼はカードをテーブルの上に置くと椅子から立った。
ラモンが次狼のカードをめくって手を見る。
「スリーカード。最下位だね」
「次狼……逃げた。セコイ」
後ろから聞こえてくる二人の言葉を無視して次狼は歩く。
「ねえねえ、次狼」
ラモンが次狼へ向かってカードを一枚投げる。
キャッチして、カードを覗く次狼。
カードにはマークも数字も描かれておらず、代わりにウィザードの姿が映っていた。
「それ何だと思う?」
「人間の可能性という奴だろうな」
「かのう……せい?」
「人間は十三魔族の中で最も異質な存在だ。故に様々な可能性を秘めている。人であって人を越えてしまった存在がいてもおかしくあるまい」
そう言って、次狼は熱い息を漏らした。
目が爛々と紅く輝き、歯が鋭い牙になる。
青白い炎が全身を覆っていく。
次狼の姿が蒼い人狼、十三魔族の一つであるウルフェン族の『ガルル』へと変わった。
ガルルとなった次狼の姿は更に変化していく。
体が縮んでいき、炎の様に揺らめく体毛で覆われた全身が無機質な物になる。
ガルルは小さな彫像になった。
宙に浮く蒼い彫像はまるで意思を持っているかのように動き出すと広間から消えた。
キバは辺りを警戒する。
突然、背中に痛みが走った。ファンガイアが攻撃してきたのだ。
攻撃された方を向いて襲撃に備えるが、今度は横殴りに吹っ飛ばされた。
敵が見えない以上、どこから攻撃が来るか予測不能だ。
せめて大体の位置さえ掴めれば勝機はあるはずだ。
「渡、使うか?」
キバットの声と共にキバの目の前に紫の笛が現れる。
一瞬の思考。
キバは紫の笛をフエスロットに戻した。
代わりに蒼い笛を取り出しキバットに吹かせた。
「信用するぜ……ガルルセイバー!」
・
・
・
洋風建築の大広間。広さの割にほとんど物がない。
ただ目立つものはあった。
椅子だ。
装飾の凝らした椅子がある。周りには深紅の薔薇の花弁がいくつも散りばめられていて、妖しい雰囲気を椅子に纏わせていた。
その椅子は選ばれた者しか座ることを許されない玉座だ。
玉座から少し離れた所でカードに興じる三人がいた。
「……ストレート」
燕尾服を着た巨漢『リキ』が自分の手札を見せる。
「フルハウス!」
セーラー服を着た中性的な少年『ラモン』は出来上がった役を自慢するように見せた。
最後の一人、タキシードを着崩している男『次狼』は自分のカードを見た。
明らかに前の二人よりも弱い手だ。だが、勝負事に負けるのは癪だ。
なんとかならないかと思った時、部屋に笛の音が響いた。
ナイスタイミング。次狼は口端を上げた。
「どうやら、ご指名のようだ。悪いがゲームは無効だ」
次狼はカードをテーブルの上に置くと椅子から立った。
ラモンが次狼のカードをめくって手を見る。
「スリーカード。最下位だね」
「次狼……逃げた。セコイ」
後ろから聞こえてくる二人の言葉を無視して次狼は歩く。
「ねえねえ、次狼」
ラモンが次狼へ向かってカードを一枚投げる。
キャッチして、カードを覗く次狼。
カードにはマークも数字も描かれておらず、代わりにウィザードの姿が映っていた。
「それ何だと思う?」
「人間の可能性という奴だろうな」
「かのう……せい?」
「人間は十三魔族の中で最も異質な存在だ。故に様々な可能性を秘めている。人であって人を越えてしまった存在がいてもおかしくあるまい」
そう言って、次狼は熱い息を漏らした。
目が爛々と紅く輝き、歯が鋭い牙になる。
青白い炎が全身を覆っていく。
次狼の姿が蒼い人狼、十三魔族の一つであるウルフェン族の『ガルル』へと変わった。
ガルルとなった次狼の姿は更に変化していく。
体が縮んでいき、炎の様に揺らめく体毛で覆われた全身が無機質な物になる。
ガルルは小さな彫像になった。
宙に浮く蒼い彫像はまるで意思を持っているかのように動き出すと広間から消えた。
魔笛が鳴ると同時にキバの手元に蒼い狼の彫像がやってくる。
キバは彫像を左手で掴む。
彫像は魔獣剣『ガルルセイバー』に変形した。
キバの中に野生のパワーが流れ込んでくる。
キバはガルルセイバーとなったガルル自身を掴むことで、ガルルの力をその身に宿す。
その影響だろうか。
紅い胸と黒い左腕、輝く目、加えてキバットの目が蒼く変化した。
「うぅ……」
蒼い魔獣、仮面ライダーキバ・ガルルフォームが本能のままに唸る。
「うがあああああああああああッ!」
キバは天高くに向かって吠え、狩りの始まりを告げた
キバは彫像を左手で掴む。
彫像は魔獣剣『ガルルセイバー』に変形した。
キバの中に野生のパワーが流れ込んでくる。
キバはガルルセイバーとなったガルル自身を掴むことで、ガルルの力をその身に宿す。
その影響だろうか。
紅い胸と黒い左腕、輝く目、加えてキバットの目が蒼く変化した。
「うぅ……」
蒼い魔獣、仮面ライダーキバ・ガルルフォームが本能のままに唸る。
「うがあああああああああああッ!」
キバは天高くに向かって吠え、狩りの始まりを告げた
没
「人間は十三魔族の中で最も異質な存在だ。故に様々な可能性を秘めている。人であって人を越えてしまった存在。お前たちも知っているだろ?」
「これとか?」
ラモンはカードの山から一枚、スペードのエースを取り出す。手元でクルリと回すと絵柄がジョーカーへと変わった。
リキは白いチェスの馬を象った駒―ナイトを出現させて手の中で握りつぶす。
手を広げると、粉々になったチェスの駒が灰の様に舞った。
「人間は十三魔族の中で最も異質な存在だ。故に様々な可能性を秘めている。人であって人を越えてしまった存在。お前たちも知っているだろ?」
「これとか?」
ラモンはカードの山から一枚、スペードのエースを取り出す。手元でクルリと回すと絵柄がジョーカーへと変わった。
リキは白いチェスの馬を象った駒―ナイトを出現させて手の中で握りつぶす。
手を広げると、粉々になったチェスの駒が灰の様に舞った。
>>97
人間・ファンガイア・キバット・ウルフェン(ガルル)・マーマン(バッシャー)・フランケン(ドッガ)・ドラン(キャッスルドラン)・サガーク・レジェンドルガ・マーメイド・ホビット・ゴースト・ギガント
以上が設定されている十三魔族。
ソースはWiki。
人間・ファンガイア・キバット・ウルフェン(ガルル)・マーマン(バッシャー)・フランケン(ドッガ)・ドラン(キャッスルドラン)・サガーク・レジェンドルガ・マーメイド・ホビット・ゴースト・ギガント
以上が設定されている十三魔族。
ソースはWiki。
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