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元スレ上条「白いワンピース」
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「……お前何の用だ。こいつを知ってるような口振りだがこいつは俺らの獲物だ、どけ」
「獲物って……。でもこいつLevel5だぜ? しかも第一位の」
「んなことは知ってんだよ。こいつを倒したら俺らの強さの評価も上がるってもんだろ?」
「出来んのかよそんなこと」
「お前知らねえのかよ。なんでもこいつLevel0に負けたらしいじゃねえか。こいつを肩に担いでるやつを見たってやつがいるんだよ。じゃあ俺たちでも勝てるってことだろ?」
「あー……」
一方通行の方を見る。
「……」
目を逸らすな!
「今の反応見たかよ!? やっぱり噂はマジなんじゃねえか!」
「おいおいマジかよ!」
「やめとけって」
「うっせえな、こんなチャンス滅多にねえだろうが!」
「でもLevel0に負けたからってこいつが弱くなった訳じゃねえだろ?」
「……関係ねえな、というかお前さっきから何様のつもりなんだよ。まずはお前からやるか?」
「やめろって」
「……何でこいつこんなに余裕ぶってんだ? ……ってあ!」
「おい、どうしたよ?」
「なあ、Level5に勝ったLevel0ってやつの特徴覚えてるか?」
「……たしかツンツン頭で、ウニみたいだとかなんとか…」
「ウニじゃねえよバカ野郎!」
「……」
「……」
「……あ」
「……何やってンだ」
「おいお前ら、まずはこいつからだ! こいつを倒したら第一位を倒した男の更に上だぜ! 今日はラッキーだな!!」
「よっしゃあああああああ!!!」
「ちょ、ああもう一方通行!!」
「ほら、オマエの欲しがってたブラック一本やるから頑張って逃げろ」
「ふざけんな!! ……不幸だああああああ!!!」
今度会ったら絶対ビームしてやる……。
そんな感じで本日二回目の逃走。
────────
──────
────
──
また、何とか巻いて。
炭酸はもう物凄いことになってたから捨てて、家は目の前。
「ただいまー……」
「おかえりー……ってすごい汗かも!?」
「まあ、ちょっとな……」
「……だいたい分かったんだよ、お疲れ様」
「いや、今回は俺が追いかけられたんだ」
「? 昨日もそうじゃなかった?」
「今日は標的が俺だったってこと」
「何でなのかな?」
「俺が一方通行を倒したLevel0ってのがばれたんだよ」
「え、でもとうまは今……」
「他言無用、って言ったろ? 俺はその辺ではいつもと変わらぬLevel0なんだよ」
「それじゃ外に出るのも危ないかもしれないんじゃ……」
「かもな。まあ何とかなるだろ。いざとなったら一方通行を連れてくる。ふふふ、あいつ覚えとけよ……」
「とうまがなんだか黒いオーラを……」
「あ、そうだインデックス。アイス買ってきたから溶けないうちに冷凍庫いれといて」
「わあ、おっきいの買ってきたんだね」
「御坂妹が遊びに来てるかもしれないと思ったからな」
「今日は来てないね」
「そっか、まあまた来た時にでもあげてやってくれ」
「了解なんだよ!」
さて、どうすっかな……。
……とりあえず宿題しよう、焦っても仕方がないしな。
昼食をとった俺は早速宿題に取り掛かることにした。
「とうま、お勉強?」
「ん? ああ、学校の宿題な」
「テレビ消した方がいい?」
「いや、気にすんなよ」
「ありがとう。……宿題見せてもらってもいい?」
「いいけど……」
「うーん」
「どうした?」
「よし、この教科なら何とかなりそうだね」
「?」
「とうまがね、学校に行ってる間暇だったから本棚にある教科書見せてもらったんだけどね」
「あーなるほど、全部覚えちまったってことか」
「うん。だから私も手伝おうと思って」
「マジ?」
「うん、ついでに英語も教えてあげるんだよ」
「それはありがたい、英語話せるようになんねえと今後困るしな」
「その今後っていうのはいつ? 社会に出てからってこと?」
「いやもうすぐだけど?」
「……やっぱりやめようかな、とうま危ないことしに行くみたいだし」
「お、おい。頼むってインデックスさん!」
「……じゃあ約束。何があっても絶対帰ってきてね」
「ん、もちろん」
何を今更。
こっちは最初からそのつもりだ。
『じゃあ今から英語で話すんだよ、ちゃんと話せるようになろうね、とうま』
「英語でいきなり話されてもわかんねえよ!!」
「甘いんだよとうま! 教科書見たけど、あんなのできたところでろくに話せないかも。逆に言えば、話せたら学校の授業なんてちょちょいのちょいなんだよ!!」
「だからっていきなり……」
『さあとうま、頑張ろうね? ……ところでお腹空いたんだよ』
「晩ご飯まで我慢しなさい」
「……え? 聞こえてたの?」
「さすがの上条さんもそれくらいは分かるわ!!」
『ふーん、まあいいけどとうまはバカだからね。もう一回繰り返すけどバカだからこれくらいの英語だともう何言ってるか分からないんじゃないのかな? ……この際不満をぶちまけてあげるんだよ。まず何で夏休みなのに学校行ってるのかな!? それに帰りには女の子を助けてばっかり……。ここ3日間毎日汗だくで帰ってきちゃってさ。見てるこっちの身にもなって欲しいんだよ。ああまたかって思っちゃうよね!! 危ないことにもすぐに首を突っ込む癖も何とかならないのかな?』
なんか分からんがインデックスの動きから馬鹿にされていることだけは分かる。
英語も大事だけど、ボディーランゲージも大事なんだなとしみじみ思った。
『って聞いてるのとうま!? 聞いてないみたいだね……。もう文句はいいんだよ、聞いてないなら……』
はあ、不幸だ……。
『いつもありがとう。恥ずかしくて英語でしか言えないけど、いつも感謝しています。ずーっと一緒にいてね。大好き、とうま』
……いや、そんなこともないかもしれない。
そしてやっぱりお前は俺を馬鹿にしてるな?
俺だって"I love you"の直訳くらいは分かるぞ、インデックス。
「ありがとうな、インデックス。英語と暗記科目はインデックスに教えてもらうことにするよ」
「分かったんだよ」
「アイス食べながらでもいいぞ、とって来いよ」
「いいの? とうまはどうする?」
「俺の分もインデックスが食べてもいいぞ、ほんのお礼だ 」
いつか、今のセリフが全部聞き取れるようになれるといいな。
インテックスの母国語で、インデックスの伝えたいありのままのニュアンスで本音が聞けるようになりたい。
「ほんとに!? ありがとう、とうま!!」
「どうだ、おいしいか?」
「うん!! えへへ……」
だから、ちょっと頑張ってみようかな。
インデックスの頭をなでながら、そう思う。
ありがとう、インデックス。
prrrrrr……
……っと、誰だよこんな時に。
「げっ……」
「どうしたの? とうま」
「ああいや、電話だよ電話」
ディスプレイには何も書かれていなかった。
「……今度はなんだよ」
『君は本当に馬鹿だな。よくも余計なことをやってくれたものだ』
「…お前もか!!」
「……英語の勉強になると思ったんだが……迷惑だったか」
「ああ迷惑だね!! で、用件は?」
「さっき言っただろう」
「は? ……ってだから英語分かんねえって」
「君は本当に馬鹿だな。よくも余計なことをやってくれたものだ。と言ったのだが」
「はあ?」
「心当たり、あるだろう」
「そんなもの……」
ねえよ、と言いかけて気づく。
「……あ」
「気づいたか」
「……俺、学園都市で生きていけるかな」
「全く。自分から名乗り出るとはまるでウニのような奴だな」
「うるせえ!! なんだよウニみたいなやつって!!」
「……まあいい。このままでは君の顔が学園都市で一番有名になる日が近いかもしれない。一旦学園都市の外に出てきたまえ。時期も夏休みだ、ちょうどいい」
「で、でも俺補習とかもあるし……」
「なんだ、君は自分の命より補習が大事だと言いたいのか」
「いや、そうは言わねえけどさ」
「では、その件に関してはこちらで何とかしておこう。行き先、許可証などを含めてすべての連絡は明日学校で聞くといい」
「……わかった」
両親には悪いけど、連絡はしないでおこう。
またあんなことが起きては困る。
「こちらの用件は以上だ。出発は明日。何か聞きたいことは」
「特にはねえよ」
ブツッ。
電話が切れる。
「……ふう」
「……誰からだったの?」
「学園都市のお偉いさんだよ、明日から学園都市の外へ旅行だと」
「旅行!? どこに行くのかな?」
「うーん、知らされてねえな」
「なんか楽しみだね!」
「そうだな……」
海、なんだろうか……。
────────
──────
────
──
次の日。
「いってきます」
「いってらっしゃーい」
午前7:30、俺は家を出た。もちろん学校へ向かうためだ。
今日の朝が早かったために、まだ用意はしていない。
というかそもそも旅行期間がどれだけなのか聞くのを忘れていたから、昨日から用意が出来ていないのだ。
一応2、3日分は用意しておいたけど、情報の隠蔽にどれだけかかるか分からない。
何しろ今回は噂でなく、本人(俺)が直々に認めてしまったのだから。
そんなことを考えていると、学校に……
というほど学校が近いわけでもなく、ふと殺気を感じて振り返ると後方に見つけたのは不良様方。
前方じゃなくて良かった。非常によかった。
と、いうわけで、今日も
「不幸だああああああああ!!」
夏休み何回目か分からない、鬼ごっこ。
「はあはあ……あー」
「……随分と走ってきたようね」
「ん? ああ吹寄か。……って何でここに?」
「何よ。あたしがいちゃ悪いって言うの?」」
「いや悪いとかじゃねえんだけどさ。吹寄、補習ないだろ?」
「自習のために来たのよ。家にいてもサボりがちになっちゃうでしょ」
「へー」
「で、貴様はどこへ行くの? そっちは教室じゃないと思うんだけど」
「ちょっと職員室にな」
「何、貴様また何かやらかしたの!?」
「またってまだ何もしてねえよ」
「本当かしら」
「本当だよ!」
「まあいい。ちょうどあたしも月詠先生に用事があるし、一緒に行ってあげる」
「えー……」
「文句言わないの。何かやましいことでもあるの?」
「いやねえけどさ……」
今回のことはあんまり知られたくねえんだよな……。
特に今回小萌先生には俺の事情話そうと思ってるし。
「ならいいじゃない。……ところで上条。貴様は噂聞いた?」
「噂?」
「第一位をLevel0が倒したって話」
Levelがアップするとかいう食べ物などに興味がある吹寄だ。
こんな話、やっぱり気になるのだろう。
「あー……」
「やっぱり知らないの、貴様は」
「いや、知らねえっつうか……」
「何よ、はっきりしなさい」
6人、だったよな、俺が俺のことを言っていい数って。
インデックス、一方通行、御坂。
そうするとあと三人。
で、今回小萌先生には言うつもりだから、後二人として。
……吹寄には言うべきか?
確かにクラスメイトには一人知ってもらった方がやりやすいし、それなら吹寄が一番いいと思う。
土御門は俺と同じく学校にいない時が多いからな。
でも本当にいいのか?
小萌先生はなんだかんだ言って見逃してくれているところがあった。
魔術も一応体験したために、俺が何かをしていることはわかってくれていたようだ。
今回は魔術のことなど何も知らないと思うけど、それでも見逃してくれそうではある。
ただ、吹寄は違った。何も知らないがために、逆に深くまで入り込んで来る。
ここで教えてしまったとして、さらに深く調べようとしてしまうかもしれない。
それでは非常にまずい。
ただ、クラスに一人だけでいい。自分の事情を知ってくれている人がいたら、どんなに楽か。
「……どうしたのよ?」
「……なんでもねえよ。多分職員室でその話も出るだろうから、その時に全部話すよ、全部な」
……決めた。
全部話した上で、守る。
……何迷ってんだ、最初に決めたじゃねえか。
今回は自分も含めて笑顔でいる、と。自分だけが犠牲になればいいってのは俺を待ってくれている人が悲しむからって。
だから、話そう。
俺の事情を知ってもらって、それでいてこっち側には来させない。
それだとまた俺が犠牲になるから、俺の仕事は、自分を犠牲にせずに敵を倒すこと。
難しいがやるしかない。
学校では小萌先生、吹寄を始め、クラスメイト。家ではインデックス。
俺の居場所は何があっても守る。
絶対に────────。
「「失礼します」」
「あ、上条ちゃんに吹寄ちゃん、おはようございます」
「おはようございます、先生。今日補習の後教室を使わせて欲しいんですけど……」
「了解なのですよ、じゃあ開けておくのですー」
「じゃあ次俺なんですけど……」
「上条ちゃん、何をしたのですかー? 上条ちゃんに一週間の学園都市の外への外出届、そして補習の免除。そんなの聞いたことないのです!」
「……まあいろいろあるんですよ」
「……貴様本当に何もやってないの?」
「そ、それなんだけどな……」
一旦唾を飲み込む。
深呼吸をして……
「小萌先生は、第一位がLevel0に負けたって話、聞いたことありますか?」
もう、戻れない。
「あ、はい。聞いたことあるのですよ。それがどうかしたのですか?」
「……そのLevel0が俺って話です」
「……は?」
「ちょ、ちょっと待つのです!! それはいつのことなのです?」
「つい最近ですよ、噂が出始めた頃です。当たり前だけど」
「貴様、ふざけてるの?」
「大真面目だよ」
「でも貴様何も能力ないじゃない。Level5、しかもその中の第一位なんてどうやって倒すのよ」
「能力ないっていうか……。正確には学園都市の機械じゃ測れないっていうか……」
「……どういうこと?」
「俺の右手には幻想殺しってのがある。どんな能力かっていうと、どんな異能の力でも打ち消すって能力だ。だから学園都市の機械じゃ測れないし、打ち消してしまうからどんなに能力開発したってそれが芽生えることはない。ちなみに第一位の能力だって消せる、例外なくな。だから倒せたってわけ」
「……それが本当だとして、何で学園都市の外へ出ないといけないのです?」
「今では第一位って友達なんですけど、あいつと話してた時にあいつを狙おうとしてる奴らに俺のことがばれちゃって……。俺の命が危ないからって避難命令ってことらしいです」
「じゃあその前に何で第一位なんかに喧嘩売ったのよ。まさか貴様もその第一位を狙う奴らの一員だってこと?」
「それはねえよ。詳しくは話せねえが、あいつや第三位の──御坂美琴の妹を助けただけだ」
「貴様第三位も知り合いだっていうの!?」
「まあな」
「か、上条ちゃんがどんどん遠い存在になっていくのです……」
「で、もう一つ。さっきはLevel0って言ったけど、第一位を倒した後、統括理事長から電話があってさ。Level5の第六位になったんだ」
「……」
「……どこから突っ込めばいいか分からないんだけど」
「でもそこの外出届が何よりの証拠だぜ? 何かあいつが全部用意してくれたらしいし」
「……まあ確かに」
「……というわけでお願いなんですが、このことは秘密にしておいて欲しいんです。他言無用って言われてるんで」
「じゃあ何であたしに言ったのよ」
「先生には元から言おうと思ってたし吹寄にはクラスメイト代表として知っておいてもらいたいと思ったんだ。実質クラスまとめてるのってお前だろ? だからそういう人に言った方がいいと思ってさ」
「……そ」
「あと先生。学園都市の能力かすら分からない俺の能力ですけど、ちゃんと開発の授業も受けますしそれの補習も受けます。ただ、俺の事情だけは知っておいて欲しかったんです。開発はできないってことを」
「……分かったのです」
「あともうひとつ。連絡しないで学校休んでしまうことがあるかもしれないけど、それについての補習もちゃんと受けるつもりですから心配しないでください」
「どこか行くつもりなの?」
「困っている人がいたら手を差し伸べる、ただそれだけだ」
「……何を言っても無駄そうね」
「悪いな、必ず帰ってくるから大丈夫だ。クラスのこととか多少手伝えなくなるかもしんねえけど……」
「分かってるわ。サボったりやる気がないとかじゃないならいいの。それくらいならあたし達だけで何とかできる。その代わり絶対にその困ってる人達は助けて、貴様は元気に帰ってきなさい、約束。いや、命令よ」
「分かった、必ず守るよ」
「……先生にも約束してください。危なかったらちゃんと先生に言うのですよ?」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ上条ちゃん、今日ももう帰っていいのです」
「今日の補習も無しってことですか?」
「はい。明日からの準備もいろいろあると思うのです」
「……ありがとうございます」
「……じゃああたしは教室行きます。上条も職員室出るわよ」
「はいはい。じゃ、先生。迷惑かけますけど……」
「任せるのです。それよりも明日はご両親も来てくださるそうなので今日はしっかりと体を休めてくださいね」
「……え?」
「はい早く行くわよ」
「ちょ、吹寄! 引っ張んなって!! こ、小萌先生! その話詳しく……」
「失礼しました」
ピシャリ。
「……じゃ、上条。家に帰る時に死なないようにね」
「……妙にリアルなこと言うなよな、んじゃ」
……ややこしいことになってしまった。
今から両親にくるなというのはおかしい気がする。
いや、それでもあんな術が起きてしまうよりはマシなはずだ。
携帯を手に取る。
prrrrr……
「もしもし、当麻さん?」
「あ、母さんか? 今どこにいる?」
「今は……ええっと、近くのスーパーかしら。とりあえず買い物を済ませて、刀夜さんが帰ってきたら向かうつもりだけれど……」
「ということは、もう家出てるんだな?」
「はい、そうですよ」
「分かった、ありがとう。じゃ」
やばい。
二人とも出ているとなると手遅れだ、魔術が発動する可能性がある。
今さら止めたところで変わらない。
……じゃあやることは一つ。
インデックスがあんな悲惨なことになってはいけない!!
家に向かって全力で走る。
……この時俺はインデックスの悲劇を思い浮かべて焦っていたが、大切なことに気づいていなかった。
父親は仕事で家をあけている。ここまではいい。
その時に母親は絶対に家にいるのかと言われたら、そうではない。さっきのように買い物に行っている可能性もあるのだ。
つまり何が言いたいかというと。
あの時のが別にいつも通りの行動だった場合、あの時来るのを止めておけばまたこんな魔術は起こらなかったかもしれなかったということだ。
だって週に何回も世界に影響を与えるような大魔術が起きたりはしていないんだから。
それに気づいたのは土御門から俺の家に起きた魔術の詳細をもう一度説明されてからだった。
「インデックス!!」
「おかえり、とうま。早かったんだね」
「無事か!?」
「……何が?」
「良かった……」
急いで家に帰った俺はまずインデックスの状態を見た。
良かった、何もなってない。
「……どうしたの、そんなあわてて」
「いや、何もなかったならいいんだ」
「変なの」
「ところでさ、何か大魔術が起こりそうな予感とかしない?」
「うーん……特にはね。何、なにか起こるの?」
まあ確かにこの間の時も気づいてなかったみたいだしな、などと考えながら伝えるべきことを伝える。
「おそらくもうすぐ起こる。いいか、インデックス。旅行は一週間だ。俺たちが準備したのは2、3日分。だから今から用意をする」
「う、うん」
「そこで俺は対策として今から力を俺とお前の周りに放出し続ける。だから」
「歩く教会は入れない、着ない?」
「そういうこと。悪いな、足りなかったら向こうで買えばいいし母さんに買ってきてもらうこともできる」
「そっか、分かったんだよ」
「じゃあ準備するか」
「うん」
「ちなみに行き先はここ。海だってさ。水着も買わないとな」
先生に貰ったプリント類を全部見せる。
場所はこの前と同じ。
「うわあ、何か良さそうなところだね。……って何このとうまのサインだらけの資料」
「Level0でも学園都市の外へ出るのは大変なんだよ」
それからしばらく用意をして、終わったので寮を出る。
タクシーはあらかじめ呼んでおいた。
「じゃあインデックス。忘れ物ないか?」
「うん、もともと持ってくるものも少ないからね」
「おう、じゃあ行くか!」
「うん!」
タクシーに乗り込む。
行き先はと聞かれたのでとりあえず学園都市の外の駅名を言っておいた。
そこからは電車だ。
学園都市は普段はあまりそうは思わないが、こう車で移動したりするとやはり小さい。
思っていたよりもすぐにゲートのところまで来てしまった。
インデックスともそんなに話していない。
……まあそれもそうか。景色の話をしようにも、まだ見慣れた景色なのだから。
インデックスのゲストIDも難なく認められ、駅到着。
ここからは電車だ。
インデックスと電車に乗るのは初めてだ。
「電車まだかな?」
「遅れない限りもうすぐだ。……ほら来たきた」
電車は割とすぐに来た。
乗り込むと、ちょうど二人席が空いていたので、座る。
「ふいー。ねえとうま、電車ってどれくらい乗るの?」
「うーん、着く予定時間から考えて一時間半から二時間くらいじゃねえかな」
今は12:30。着くのはちょうど暑い時間帯の予定だ。
「それよりインデックス。腹減ってない?」
「とっても減ったんだよ」
「正直俺も何か食べたいんだよな……。弁当もう食うか」
「それがいいと思うんだよ!」
海の家に着いたら何か食べれると思っていたが、一応作っておいた弁当。
あり合わせのものだけど、インデックスは美味しそうに食べてくれる。
「おいしいんだよ、とうま!」
「そりゃ良かった。向こうついたらもっとうまいもん食おうな」
「うん!」
さて、俺も食うか。
……あ、容器はちゃんと使い捨てのやつです。
一週間も上条さんのバッグに弁当箱入れておいたらどうなるか分かったもんじゃない。それに荷物にもなるし。
「「ごちそうさま」」
「食べ終わっちゃったね」
「だな、どうしよう……暇だな」
「そうだね……」
「何する?」
「にゃにしょ……」
……そういえば、さっきから周りに変化がない。
まだあの魔術は起こっていないようだ。
一応対処法は考えてあるにはあるんだけど……。
……まあ今は考えたって仕方ないか。
両親は二人とも家を空けてるみたいだし、もうすぐなのは確かなんだ。
それよりも今は
「なあインデックス。またちょっと英語を教え……」
ぽすん
「すぅ……」
インデックスの頭が俺の肩に乗る。
心地よい香りがする、とても落ち着く。
俺まで眠たくなってくるが、経験からしてここは絶対に寝てはいけない。
寝過ごすかもしれないし、何より一番怖いのは起きた時俺の肩に寄りかかってるのが青髪ピアスだったらと思うとゾッとする。
……想像したら眠たくなくなってしまった。
これはこれで結果オーライ。
インデックスの頭をなで続けて到着を待つ。
────────
──────
────
──
「おーい、インデックス。起きろ、次の駅だぞ」
「……うにゃ。……はっ!? ごめんね、寝ちゃってて……。暇だったでしょ?」
「いやいや。確かに暇だったけどインデックスの寝顔見れたからそれはそれでオッケー」
「うー。またとうまはそうやって恥ずかしいことを……」
「あれ、俺何か恥ずかしいこと言った?」
「いいや、別に何もないかも」
「そ、そうか」
「あ、……とうま!! 綺麗な海が見えるんだよ!!」
「ああ、確かに綺麗だな」
さっきから俺は見てるけど、なんて言ったら今度こそ怒られるに決まってる。
「さて、降りるか」
「うん。楽しみだね、とうま!!」
「ああ。とりあえずまず駅前のこのデパート行くか。インデックスの水着買わねえとな」
「え? いいの?」
「何言ってんだ、せっかく海に来たのに入れないなんて嫌だろ?」
「えへへ……ありがとう」
……何か照れる。
デパートはそこら辺にあるものとほとんど変わらず、女性用の水着売り場はすぐに見つかった。
男子高校生の上条さんとしては、下着売り場に続いて入りにくい店だ。
「ねえとうま、どれがいいかな?」
「好きなのにしろよ、一応お金は多めに持ってきたから」
「むう。そうじゃなくてとうまに選んで欲しいの!」
「……いいのか? 俺のセンスを当てにするなよ?」
「とうまが選んでくれたのなら何でもいいの!」
「わ、分かったよ……」
インデックスは譲ってくれそうもないので、ここは引いて俺が選ぶことにする。
つってもなあ、水着映えする体型とはお世辞にも言いにくいし……。
あと数年もしたらどうなるかは分からんけどさ。
ふむ……。
「……何か失礼な目線かも」
「い、いやあ、そんなことはないぞインデックス。……ほ、ほらこれなんかどうだ?」
たまたま手にとったのを渡してみる。
「うーん……何か微妙かも」
「微妙ってお前……。インデックスが選べっつったんだろ?」
「そうだけど……」
「何か気に入らないのか?」
「うーん……」
お気に召さないようだ。
別にインデックスならどれ着てもちゃんと似合うと思うんだけどな。
……あ?
「ちょっと待っててインデックス」
「ん? どうしたの?」
……見つけた。
前にインデックスに買ったのと同じ。
たまたま向いた方向でこれを見つけるとはなかなか運がいいかもしれない。
よし、これにしよう。前も可愛かったし、きっと気に入ってくれるだろう。
「インデックス、これこれ。これなんかどうだ?」
「わあ、可愛いかも……」
「良かった……。それにするか? それともまだもうちょい見てく?」
「いや、これにするんだよ」
「そっか、じゃあ早速レジ行くか」
インデックスの水着、無事購入。
さっきは母さんに頼めばいいやと思っていたが、どうせデパート来たんだからとインデックスの服と下着を買った。
それにしてもやっぱり下着売り場は恥ずかしかった。
インデックスは下着も俺に選ばせようとしたが、それは丁重にお断りさせていただいた。
「インデックスの肌のこととかはき心地とか、本人じゃないと分からないだろ? 俺が変に選んだせいでインデックスがはけないなんてことがあるかもしれないからな」
っていう言い訳は、今後も使えそうだ。我ながらナイスだったと思う。
代わりに服は全力で選んだ。
これも我ながらナイスだったと思う。インデックスは俺が選んだものにとても満足してくれた。
そうこうしている内に一時間半はデパートの中にいて、出たのは15:30過ぎだった。
そこからは宿まではまあまあ近いので、そこまで盛り上がった会話もなく。
わあ綺麗だね、くらいのもんで目的地に到着。
「……うーん! やっと着いたか」
「ねえとうま、いっぱいご飯食べれるかな?」
「多分な、とりあえず入ろう」
「すいませーん!」
「あ、これはこれは」
「あの、予約してた上条ですけど……」
「はあ。……失礼ですがお客様は5人だと」
「あれ、まだ両親は来てないんですか?」
「まあ、はい。連絡取りましょうか?」
「いや、部屋に行ったら自分達で連絡することにしますよ」
受け答えをしてくれたのは、御坂妹になるはずのあの人だ。
二階の部屋に行き、自分達の荷物を置いて、早速電話をかける。
「あ、母さん?」
「あら、当麻さん。どうしたんですか?」
「あ、いや俺今着いたからってのを一応連絡しておこうと思って」
「そうなんですか? ……えーっと、困りましたね。まだ刀夜さん帰ってないのだけれど……」
「いやごめん急がせるつもりはないんだ。俺の報告したかっただけだし」
「そうかしら。じゃあ刀夜さんが帰ってきたらまた連絡しますね」
「はいよ、んじゃ」
「お母さん?」
「え、まあな。上条詩菜ってんだ。父さんは上条刀夜。5人って言ってたからあとは多分従妹がくるはず」
「ふーん……」
「……?」
「あ、いや、ごめんね。何でもないんだよ」
「……あ。大丈夫だよ、インデックスも俺の家族さ。な?」
「……ありがと」
「……じゃあ両親はまだみたいだし、海いくか?」
「いいねそれ!」
「んじゃあ上条さんは脱ぐだけだから、インデックスはゆっくり着替えてから来いよ」
「分かったんだよ」
「じゃ、先行ってる」
「うん」
そっか……。
俺の記憶は無くならなかったし、インデックスも助けられたけど、それでもあいつは一年以上前のことは覚えてないんだもんな……。
これからはいろんなところ連れて行って、いろんなもの食べて、たくさん楽しもう。
海に出て浜辺でパラソルを立てていると、インデックスはやってきた。
「おまたせ」
「おっ、早かったじゃねえか……って」
「何……? そ、そんな見なくても……」
「あ、いやごめん」
「……どう、かな?」
「似合ってるよ、かわいい」
「ほんと!?」
「ああ、さすが上条さんが選んだものなだけある」
「えへへ、ありがとうね」
「ほら、いいから遊んで来いよ。俺は見てるから」
「えー。とうまも遊ぼうよ」
「でもなあ……」
「一人じゃ寂しいかも」
「分かったよ……」
こうして海へと連れられる俺。
出来れば何も起きませんように……。
特に何が起こるわけでもなく、気がつくとすっかり日も傾いていて、この季節だと18:00前といったところだろうか。
「インデックス、そろそろあがるぞ。もう海も冷えて来るし晩飯もそろそろだろ」
「晩ごはんどんなだろうね?」
「さあな。……あー腹減った」
「とうやとしいなはまだかな? 見たことないけど」
「んー、まだっぽいな。とりあえず中入ろうぜ」
「あ、あの……」
「ん? あ、はい」
「えーっと、お連れ様がもう1時間もすれば到着なさるようです」
「あ、どうも」
「夕食はどうなされますか?」
「あー。インデックス、どうする? 先食うか?」
「……いや、みんなで食べる方がおいしいんだよ」
「んじゃ、待つか」
「では二人ともお連れ様が到着なさってからということでいいんですね?」
「はい、よろしくお願いします」
「おい、インデックス。よかったのか、先食べなくて」
「いいんだよ。さっきも言った通り、みんなで食べる方がおいしいから」
「じゃあどうする? インデックスは風呂でも入ってくるか?」
「そうするんだよ。汗と海水でちょっとベタベタだからね」
「確かにな。んじゃ風呂。ちょうどいい時間になってるだろ、女の子はお風呂長いと思うし。家ではあんま気にしてなかったけどさ」
「分かったんだよ。じゃあいってくるね」
「おう、ゆっくりして来いよ」
インデックスが風呂へ向かうのを見て俺も風呂の入り口までは向かう。力の範囲はまだいまいち分かっていないからだ。
でもここは男湯女湯の区別がないから入りはしない。
インデックスが上がった後、まだ時間があれば俺も入ればいい。
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- 八幡「もしもボックス?」 (122) - [47%] - 2015/10/30 5:45 ○
- 穂乃果「癒し処ホノケイア」 (526) - [47%] - 2015/1/8 4:30 ☆
- 上条「旅に出るわ」 (964) - [46%] - 2011/1/3 11:15 ★★★×6
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