元スレさやか「全てを守れるほど強くなりたい」
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551 :
乙
ん?杏子の普段着が修道服?
煤子さんの影響で願いさえ変わってるのか?
気になってしかたないな
552 :
さやか「ッしぃ!」
杏子「!」
お手本のような二段突き。
しかし杏子は身を横に翻して、易々とかわしてみせる。
杏子「やっと乗り気になったか!?いいねぇその感じ!もっと本気を出しなよ!」
頭に被った紅のヴェールが髪留めの小さな炎に燃やされ、灰になって消えてゆく。
さやか(なんだ、あの炎は)
私は一歩退き、剣を二刀流に構えた。
二つを重ねるようにして両手で包み込めば、大剣アンデルセンに変化する。
ただ、今この状況でそれは躊躇われた。
杏子「お?あのでっかいのは出さないの?」
さやか「これでいいの」
アンデルセンを振り下ろして発動する“フェルマータ”は、いわばマミさんが使う一撃必殺の技、“ティロフィナーレ”と同じような攻撃だ。
一撃は大きいが、重く機敏とは言いがたい。素早く動き回れるであろう杏子に通用するかといえば疑問だ。
それに、この場所は路地裏。
大して狭いわけではないにせよ、建造物にブチ当たる可能性は高い。
となれば威力も弱まるし、隙も出来るだろう。
二刀流から手数でこちらの勝負に持ち込むことが先決だ。
杏子「ま、そっちがそう来るってんなら構わないけど……ね!」
槍を多節棍に切り替え、切っ先が私に襲い掛かる。
553 = 552 :
さやか(いける!)
二刀流は得意ではない。
剣道をやっていた事とは関係はない。単に私が一刀流に向いていたのだ。
しかし今の状況下――多節棍の節や槍先が周囲から迫る攻撃――においては、圧倒的に二刀流での立ち振る舞いが有利だった。
邪魔な棒を弾く、いなす、槍は二本で受け止め流す、それらの防御の間に足をとめることはない。
先日は猛攻とも感じられた杏子の多節槍も、今はかなり楽だ。
杏子「くっ……!?」
さやか「狭い環境で、思いっきり武器を回せないっていうのも響いたかもね!」
左手のサーベルを杏子の腹に突きたてるが、咄嗟に防御として差し出された持ち手の節に防がれてしまった。
とはいえ、収穫はあった。
杏子「……にゃろう」
槍の柄はぱらりと砕けて、そこから連鎖するように槍全体が崩れ消え去った。
どうやら、槍の部位によって強度も違うらしい。
そして、その強度の差を突けば……一撃で槍を破壊することも可能だ。
さやか「へん、どうしたの杏子、昨日みたいな手ごわさを見せてみなよ」
杏子「ぁあ!?」
恭介をバカにされたこともある。この場で容赦なく襲い掛かり後頭部へ一撃を加えることも可能だったが、あえて私は挑発する。
負けられない。けどそれ以上に、あっさりとは勝ってやれない。
嫉妬から私の道着を埃まみれにした剣道部の先輩のように、私がじっくり稽古をつけてやらなくてはなるまい。
私が剣道部を退部せざるを得なくなった理由、サディスティックさやかちゃん稽古のハードさを思い知らせてやる!
554 :
このさやかはいいさやかだが
あんこちゃんあんあん!
555 :
サディスティックさやかちゃん!!!!!!
556 :
このさやかちゃんは宝くじが連続40回当たるくらい稀なレベル
あとシスター姿のあんこちゃんの参考画像をはよ
557 :
バンッ!!
558 :
バトルシスターきょうこってどこのオラクルシンクタンクだww
560 :
杏子と煤子は破面習得してるけどさやかの破面化はまだかー
561 :
怒りに呼応するように、髪留めの火力が一段と強くなった。
杏子「超……ウゼェ!」
新たな槍を出現させた杏子が突進してくる。その素早さは、先ほどまでのものとは一味も二味も違うように感じた。
気迫は凄まじいが、私は慌てずに二本のサーベルを構える。
さやか(わかったぞ……杏子の髪留めの炎、あれは無意味な飾りじゃない)
今やシスターのヴェールを全て燃やし尽くしてしまい、ただの魔法少女の姿となっている。
ヴェールは普通の物質で、だからこそ髪留めの炎で容易く燃えた。あれには宗教的な意味しかないだろう。
では髪留めが発する炎は?あれも飾りか?といえば違う。
あの炎はコスチュームの一部とするには浮いているし、一定の大きさで燃えているわけでもない。
そしてあの炎が燃え盛るとき、それはおそらく……。
杏子「はぁッ!」
さやか「おっと!?」
私の二刀流のリーチに踏み込む直前に横へ飛び、壁を蹴って上から襲い掛かってきた。
とはいえ私の剣は二本。サイドから垂らされる槍の一撃でも、容易く受け止めることはできる。
反応もできるし受けも取れるのだが……。
さやか「ぐっ!?」
杏子「ハハン!片手で相手とは良い度胸だなオイ!」
空中からの槍の奇襲攻撃。
相手の体勢も無茶で、接地してる私ならば受けきれるはずなのに、一撃が重い。体が大きくよろめく。
562 = 561 :
杏子「昨日の勢いだあ!?おう、見せてやるとも!昨日のアタシよりも強くなってやるけどな!」
空中の槍、片手の防御。
私の体は浮いた。
さやか(嘘ぉん……!?)
怒りに身を任せて放った一撃。
火事場のなんたらでは説明できない法外な威力に、私の体は向かい側の壁に勢い良く叩きつけられた。
さやか「……ったたた…」
杏子「休ませも小細工もさせないよ!」
さやか「ちっ!」
ダウンした私が起き上がるのを待たずに、杏子の槍は追撃をしかけてくる。
半分砕けた壁に背を預けていた私は咄嗟に地を蹴り、人生で一度もやったことのない壁バックステップで回避する。
杏子の槍はそのまま壁をぶち壊し、刃全てをその中に埋め込んだ。
槍が動かない今こそ、私は空中ではあるが、チャンスだ。
さやか「隙有り!」
杏子「ねーよ!」
杏子の真上から二刀流で襲い掛かる。
だが杏子は、壁に埋まった槍をあっけなく引き抜き、そのまま防御に使ってしまう。
奇襲のつもりが、まんまと不利な体勢での戦いにもつれこんでしまったのだ。
さやか「くっ!」
杏子「ハハハ!串刺しになるまで浮かせてやるよ!」
私は上から、杏子は下から突きや斬りを繰り出す。
地面に降りて懐に潜りたいところだが、杏子の素早い槍はそれを許さない。
長いリーチの的確な攻撃から身を守るために、空中で動けない私は“槍を支えに”戦っているようなものだった。
できれば地面から攻撃したい。けれどその前に、杏子の攻撃は防がなければならない。防ぐためにはそれなりの防御を取らなくてはならない……。
人間として生きていれば普通は有り得ない現象だが、今の私は剣と槍のぶつかり合いだけで空中に留まっていた。
563 :
追い付いたぜ、肉まんじゅう
565 :
魔法少女の格好にシスターのヴェール被ってる感じなのか
んで、変身前は修道服と
566 :
承太郎が戦っているときみたいな安心感があるなあ…サヤカッコイイ
567 :
杏子「いつもより多く回っております」
さやか「これでギャラは同じ」
568 :
上手い奴と格ゲーやるとマジで滞空時間が終わらないからな
さやかちゃん頑張れ!
569 :
さやか(なんとか、なんとか降りるんだ……!)
煤子さんの特訓を受けたであろう杏子に上から攻撃を仕掛けたのは大失敗だった。
何度も言われていたのに私はほんとバカか!
跳ぶということは、真っ直ぐ動きますと言うこと。
跳んでいる間は動きませんと言うこと。
あんなに「派手な動きはダメ」といわれていたのに私は……!
さやか(魔法少女の能力として、一応空中を蹴る能力はあるみたいだけど)
それではあまりにも遅いし、隙も大きい。
展開している間に、それこそ串刺しにされてしまうだろう。
さやか(なら、杏子の槍を側面から叩いて、真下でなくても離れた位置に落下するようにすれば!)
私は剣の一本を大きく構えた。
杏子「おおっと!?ダメダメ!許さないよ!」
さやか「ぐ!?」
しかし私の動きを読んだ杏子は、すかさず離れた位置に鋭い突きを繰り出す。
私はその防御のために、大振りを断念し、防御に回った。
私の体は、またしても浮く。
570 = 569 :
杏子「オイさやかァ!昨日聞きそびれたことを今聞かせてもらうよ!」
さやか「はぁ!?」
今はそれどころじゃないってーの!
杏子「ほむらって名乗った女!あのほむらって奴は、煤子さんの妹なのかい!?」
さやか「違うッ……!」
話しかけている隙を突き、昨日と同様に切っ先の衝突による間合い取りを試みる。
が、今度は相手も油断なんぞしてくれないらしく、あっさりかわされ、断念せざるを得なくなった。
さやか「……と思うッ!」
杏子「なんだそりゃ!」
さやか「本人はッ、煤子さんのこと、ちっとも知らないッ、風だったけど!私には、わからない!」
あと少し……少しでも高く浮くことができれば…!
ほんの少しでも攻防に合間を作れれば……!
杏子「にしたって似すぎってやつだろうが!アタシはあの人の姿を覚えてるぞ!」
さやか「へえ!あんたも、慕ってるんだ!?」
杏子「当ったり前だ!煤子さんはたった一人……!」
さやか(今だッ!)
杏子の槍の動きに力が込められた。
それはほんの少しの加減の揺らぎ。
動きは正確でも、力が大きければ結果もかなり変わってくる。
私の剣は、そんな杏子の“違う一発”にあわせ、それ相応に強い剣戟を加える。
私の体は通常の攻防のときよりも高く宙に浮かんだ。
さやか「“アンデルセン”ッ!」
杏子「しまっ――」
二本の剣を重ね、巨大な一本の大剣を成す。
空中で稼いだ僅かな隙は、剣を生み出す時間となった。
さやか「はぁっ!」
杏子「うぐおっ……!」
槍と同等のリーチに変化した武器を振るい、その力任せを受けようとした杏子は路地に沿って吹き飛ばされていった。
がこん、と鉄管がへこみ、朱色のタイルがぱらりと落ちる。
571 :
地面に降りてから、ようやく自分の体の無茶に気付いた。
さやか「ぐぅ……!」
空中での全身を使った気の抜けない攻防は、魔法少女とはいえ私の全身に多大な疲労を溜め込んでいたようだ。
追撃に出ようと踏み出す体が鉛のように重い。
このままでは杏子の下へたどり着く前に事切れてしまいそうだ。
杏子「て~……めぇ~……!」
そうこうしている間に、髪飾りをより強く燃やした杏子が起き上がってしまった。
槍の柄を支えにもせず、腕一本で立ち上がるそのスタミナには敬意を表したいところだ。
……私の体力を回復させるために、時間を稼がなくてはならない。
572 = 571 :
さやか「杏子……あんたの魔法の能力、見破ったよ」
杏子「!」
しばらく口車に乗ってくれれば、私のふくらはぎは大いに助かるのだが……。
杏子「ほぉ……で?」
さやか「あんたの魔法は……願いとかは知らない……ただ能力だけはわかる」
震えを隠し、素早く無駄のない動きで右腕を上げ、杏子を指差す。
さやか「その燃える髪留め……それが効果を発揮するのか、効果がそこに現れているのかは知らない、けどそれを見て答えは出た!」
杏子「……だから?」
さやか「魔法少女のあんたは、状況に合わせて髪留めの炎が強まって、動きの速さ、力が強化さ……」
杏子「だぁぁああからァ!それが理解ったからって何なんだってぇーーーーの!」
さやか「!」
私のまるっとお見通し推理を最後まで聞かずに、全快した杏子が襲い掛かってきた。
髪留めの炎は迸り、火の粉を振りまいてこちらへ接近する。
さやか「ああ、もうッ……!」
体は万全ではないけど、大剣アンデルセンのリーチを信じるしかない。
573 :
すっげー今更だが煤子さんが集めてた砂って盾の砂時計の砂か、もしかして
574 = 571 :
相手に勢いがあるからといって、すぐに防御に徹するわけがない。
こちらも負けじとアンデルセンを突き出し、突撃する。
杏子「おらおらァ!アタシが強いのがわかりましたーってハイだからどーしたってぇ!?」
さやか「うわっ!」
力任せの一直線な槍の一突きかと思いきや、私の剣に当たる前にグンと後ろへ引き戻され、再び素早く、別の位置から突いてきた。
剣の先端から中心までを鮮やかにかわした槍の先が向くのは、きっと私の心臓だ。
さやか「うおおぉおッ!」
こちらも大剣を引いて、根本でなんとか槍を受け止める。
が、槍は簡単に受け流すことはできなかった。
その逆、平たい大剣の面に深く刺さり、尚もこちらに向かって突き進んでくるのだ。
杏子「おらおらおらおら!貫いてやるよっ!」
さやか(無茶な……!)
槍の先端が大剣を貫き、私の腹に狙いを定めている。
そして恐ろしいことに、杏子は槍を引き抜こうとはせず、地面をがりがりと削るように走り、槍を押し込んでくる。
さやか(ほ、本気だ……この子は本気で、大剣ごと私を貫こうとしてる……!)
杏子の尋常でないパワーに圧され、踏ん張る靴もむなしく地面を擦り、後退してゆく。
さやか(まずい!壁際まで追い詰められたら本当に……“貫かれる”…!)
杏子「らぁああああぁあッ!」
絶望的な予想の恐怖から、杏子の髪留めの猛火が暴走列車の機関部にも見えてきた。
さやか(抜け出さないと!)
不要なイメージを振り払い、頭を冷やす。
575 = 571 :
アンデルセンでは戦えない。
リーチも威力もある、いざという時には“フェルマータ”も放てる必殺武器だが……今の燃える杏子を相手にしては、単純にスピードやパワーで劣ってしまう。
さやか(リーチと打ち合いの力強さを犠牲にしても……速さに賭けるしかない!)
突撃を続ける杏子の片足が浮いたタイミングを見計らって、大剣アンデルセンを分解する。
杏子「!」
さやか(もっかい、二刀流だ!)
アンデルセンは槍を中心に二つに分かれ、元の二本のサーベルへと変化した。
素早く二本の柄を握りこみ、今だ突進体勢のままの杏子に肉薄する。
杏子「おっとテメ…」
さやか「っらァ!」
杏子「ぐほぉ!?」
相手は私のサーベルでの切り返しが間に合わないであろうことを笑おうとしたのだろうが、それは大きな読み間違いだ。
確かに、アンデルセンを解除してサーベルに戻しても、相手の意表をついているとはいえ、髪留めの炎で能力を強化した杏子に切りかかる隙があるかといえば……ない。
サーベルを構えてからでは、斬るにも突くにも僅かなロスが生じるからだ。
だから……ハンドガードで、殴る!
さやか「もう一発!」
杏子「ぐぁ!」
一発は顔面、二発目は怯んだ隙を狙ったが、逸れて肩を強打できた。相当痛いに違いない。
魔法少女の強烈はパンチは、杏子を大きく吹っ飛ばした。
576 :
武士沢ブレード!
579 :
面白いな
一気に読んでしまった
580 :
煤子さんの影響かこのさやかは恭介にそこまで恋愛感情を持ってないのかな?
一方恭介の方は本編と比較してさやかへの好感度が高い様子。そしてさやかは仁美が恭介に恋愛感情を持っていることに気づいているっぽい
ここまで人間関係に変化をもたらすとは……これが煤子マジック!
581 :
むしろ恭介がさやかに惚れてる(憧れてる)印象
582 :
>>1無事か?
583 :
(瓦礫) ……
584 :
>>1のTwitterが見れなくなってたのだが…
最近来てないもんだから不安だわ
585 :
更新が・・・止まった。
>>584
kwsk
586 :
>>585
Twitterでフォローしてて最近ツイート見ないなーと思って、プロフィールページに行ったらアクセス権が消えてた
俺がブロックされただけなら別にいいんだが…可能性の一つでアカウントが消えてる可能性がある
587 :
俺達はループに取り残されたのか……
588 :
Twitter消えてたね
でも中の人は健在だと思うから、気長に待とう
589 :
ページが見つかりません、だから垢削除したんだろう
だが15日にはもうなかったような
携帯を変える前にブクマを確認してて気付いたので確かだと思う
その後も投下されてるから戻ってくると思いたい
590 :
生存報告だけでもしてほしいなぁ
このssかなり楽しみにしてるんだ
592 :
来たか…ガタッ
593 :
生きてたのか、良かった良かった
594 = 590 :
生存報告してほしいって言ってからわずか3分かよw
ご無事なようで何よりです
595 = 591 :
さやか「ハンドガード……使える」
遠距離はアンデルセン。
近距離はサーベル二刀流。
最接近はハンドガード。
この三種類を上手く扱うことが出来れば、杏子相手でも互角に戦えそうだ。
杏子「なかなか強いじゃんか……今のは効いたぜぇ、さやか」
壁にめり込みかけた杏子がタイルを零しながら復帰する。
さやか「ダウンしてる振りして不意打ち打とうなんて考える前に、もっかい正面から来なよ」
杏子「!」
手を煽って挑発する。
いわゆる指の“チョイチョイ”だ。
……剣道じゃこんな真似できないから、一度やってみたかった。
杏子「……いいぜさやか!乗ってやるよ……私の次の攻撃を凌ぎ切れたら、アンタの勝ちにしてやる!」
さやか「おっ、気前がいいじゃん!そっちにも同じ勝利条件をあげようか!?」
杏子「いらねーよ、んなもん」
さやか「……!」
杏子は槍を右手に預けると、
もう左手にも、同じ槍を出現させた。
嫌な予感がした。
596 = 591 :
杏子「“これ”を使って生きてた魔女はいねーんだ……悪いがさやか、“良くて病院送り”だからな」
燃え盛る髪留め。
両手の中で自在に取り回される二本の槍。
さやか「槍の、二刀流……!?」
杏子「んな器用なマネはしねえ、小細工なしのパワーゲームさ」
鮮やかに舞っていた二本の槍が、杏子の手の中で重なり合う。
すると槍は赤いオーラを零しながら溶け、輝く靄は一本の得物に変化した。
それは、武器だ。けど一般的ではない。
私はその武器をあらわす正式な名前を知らなかった。
たとえるならばそれは、カヌーなどで使われるような、カヤックパドルに近い。
2つのオールを組み合わせたような、そんな槍。
両剣。両槍。
アンデルセンを2つ繋げたような無骨で巨大なその武器を、杏子は頭の上で3回転させ、力強くガシリと構えた。
向けられる赤黒い不吉な刃に、不覚ながら、私の脚は一歩退いた。
杏子「さあ!ガツンと行くよ!」
見たことも聞いたこともない、つまり対処法なんてこれっぽっちもわからない武器を振りかぶって、杏子が突進してくる。
597 = 591 :
さやか(来る!いや、落ち着け!)
相手にしたことの無い、全く未知な形状の武器だ。
何も知らない武器を持った相手と戦うことが恐ろしいと言っているわけではない。事はそう単純ではない。
扱う相手が杏子だから不味いのだ。
素人相手ならいざ知らず、同じ煤子さんの特訓を受けた彼女が扱う武器ならば、それを扱う技術は達人級であることは疑いようがない。
だから私は、その対応が、同じ達人級でなくてはならない。でないと防ぎきれないのだ。
達人相手に素人では太刀打ちできない。
だから私はすぐに、この武器を扱う杏子と対等に渡り合う技術を習得しなければならない……!
さやか(リーチは槍よりも短い!柄は両端の刃に挟まれている!)
さやか(両手武器!巨大で重く片手では扱えないが威力は高い!)
さやか(そして手数はおそらく私の二刀流以上!)
まず、あの武器の範囲内に近づかないこと。リーチに入ればおしまいだ。
そして不用意に打ち合わないこと。私のサーベルが破壊されても可笑しくないような……そんな力強さを感じるのだ。
杏子「おらおらっ!」
さやか「うわっ!」
予想通り二本の刃はパドルのように振るわれ、コンクリの地面を水面のように削り斬った。
杏子「逃げるなよ、そっちだって二刀流だろ?」
さやか「……」
杏子「おいおいしらけるだろーが!どんどんいくぞ!?」
武器は重いらしく両手でしか扱えないようだが、それとは関係無しに攻め難い。
たとえ一本の刃を防いだとしても、隙を突くための反対側に、もう一つの刃があるのだ。
杏子「ほら脚なくなんぞ!」
さやか「うわっ!」
相手が攻勢のときはもっとタチが悪い。
二本の刃で水面を漕ぐように、しかし不規則に暴れまわって私を追い詰めようとする。
左右から二刀流のように飛び出してくる刃を相手に、情けないが私は、どうしようもなかった。
598 = 591 :
かつん、と呆気ない音に、私のサーベルの一本は遥か彼方へ飛ばされていった。
杏子が大振りしたカヤックパドルが、ほんの少しだけサーベルの刃を掠めたのだ。
それだけでサーベルは弾かれ、見えないところまで吹き飛んでしまった。
そして私の手が痺れている。
杏子の扱う武器の威力を悟ると共に、“良くて病院送り”が嫌な真実味を帯びてきた。
さやか「くぅうう……!」
杏子「へい、リーチだぞ!」
一本になったサーベルを両手で握り締め、私は路地を駆けた。
さやか(なんてやつ……!あれじゃ隙なんて無いよ!)
隙はあるかもしれないが、未だにそれを見出せていない。
まさか遠く離れてからフェルマータで狙い撃ちなんて、そんな生ぬるい方法が通じる相手とも思えないし。
だから今は逃げるしかなかった。逃げて、逃げて、対処法を考えるしかないのだ。
と、思っていたけれど。
さやか「……!」
目の前に立ちはだかる“KEEP OUT”の落書き。
高い壁、三方向全部壁、つまり行き止まり。
杏子「おっ?おおっ?お~良いねぇ神様、祈ってる甲斐があるってもんだよ」
さやか「嘘っ……」
杏子「上手く都合良く戦えるような場所まで出ようと思っていたみたいだが……へへ、こいつは、どうも……」
そして唯一引き返すことができる路地の先には、両剣を構える杏子の姿が。
杏子「悪いね、大当たりだ」
さやか「……へへ、ほんとだよ……」
覚悟を決め、サーベルを構える。
599 = 591 :
(瓦礫) ))) ガラッ ガラガラ・・・
600 :
乙!
鳥の方はどうするんだ
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