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    元スレ男「…へ?」 お嬢「ですから」

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    301 = 1 :

    ~駅に向かうリムジンの中~

    「…」

    お嬢「…なあ」

    「…」

    お嬢「きっと大丈夫だって」

    お嬢「お父様はすごくタフなんだから。な?」

    執事「そうです。男さん」

    「…そうだな」

    お嬢・執事「「…」」

    302 = 1 :

    お嬢「…私も…一緒に行こうか?」

    「…いや、病院に行って様子を見てくるだけだから…」

    お嬢「そっか…」

    「…お嬢、すまない…切符まで用意してもらって…」

    お嬢「そんなことはどうだっていいよ」

    お嬢「それより…お父様の様子がわかったら教えてよ。な?」

    「…わかった」

    執事「駅に到着しました!」

    303 = 1 :

    ~病院~

    「「…」」

    「姉貴!」

    「男!」

    「どうだ?」

    「まだ治療中…」

    「大丈夫だよ。あの人は頑丈だから。あははは」

    「お袋…婆さんは?」

    「婆ちゃんは家で留守番してるよ」

    「そうか…」

    「もうすぐ旦那もくるって」

    304 = 1 :

    「姉貴…子供はどうした?」

    「婆ちゃんが見てくれてる…」

    「じゃあ、姉貴は旦那さんと一旦家に帰って待っててくれ」

    「…うん。ちびのことも心配だしね…」

    ンガー

    一同「「「!?」」」

    医師「御家族の方ですね?」

    「はい」

    「あの!あの人は!あの人は!!」

    医師「御安心ください。命に別状はありません」

    「あ…」ヘナヘナ…

    「よかったね母さん!」グスッ

    305 = 1 :

    医師「…容態を説明しますので、どなたか一緒に…」

    「私が行きます」

    医師「それではこちらへ」

    男父 シュー シュー

    医師「まだ麻酔が効いていますので…」

    「そうですか…それで…」

    医師「…火傷も思ったより広範囲では無く、命に別状はありません。ですが…足に後遺症が残ります」

    「後遺症?」

    306 = 1 :

    医師「こちらの写真で…」

    (レントゲン写真!?)

    医師「…ここ。左膝の関節ですが…骨折してるのが分かりますか?」

    「…え?」

    医師「粉砕骨折しています。退院後も膝に器具をつけていただくことになります」

    「…治らないんですか?」

    医師「骨が元通りの形になれば…でもこれはほぼ不可能でしょう」

    「そうですか…」

    医師「完治はしますが後遺症は…残ります」

    307 = 1 :

    医師「ですので、立ち仕事や足をよく使う作業は出来ないと考えてください」

    「…農作業は…」

    医師「椅子に座るなど、出来るだけ膝に負担をかけないようにすれば出来ますが…」

    「…ムリだということですね」

    医師「…」

    「…わかりました」

    医師「…では、入院同意書などの手続きをしてください」

    308 = 1 :

    ~男の実家・居間~

    「---と言うことなんだ」

    「…まったく抜けてんだから。あの人は」

    「…あのさ」

    「ん?なんだ?」

    「あたし…チビがいるじゃん?だから…ちょっとぐらいなら手伝えるけど…」

    「わかってる。姉貴は婆さんと交代で親父の病院に詰めて欲しい」

    「…ごめんね?」

    「しょうがないさ」

    309 = 1 :

    「大丈夫よ。こっちのことはあたしがやるから。あははは」

    「…うん。今はそれで頼む」

    「まあね、しばらくは水の管理と農薬散布だけだからさ」

    「…母さん、大丈夫か?」

    「大丈夫大丈夫。どうにもならなかったら男に電話するから。あははは」

    「分かった…」

    310 = 1 :

    ~夜中~

    (そうだ。お嬢にも電話しておかないと…)

    Pi Pi Pi  プルッ
    お嬢『もしもし!』

    「出るの早いな」

    お嬢『ずっと待ってたんだぞ!なのに全然電話が来ないから…心配したんだぞ!!』

    「ははは。ゴメンゴメン」

    お嬢(男が笑ってる…大したことなかったのかな)

    お嬢『まったく…それで?』

    「ああ、命には別状は無い」

    お嬢『そっか…よかったな!!』

    「ああ。お嬢や執事さんにも心配かけた」

    311 = 1 :

    お嬢『まあまあ。そんなのはどうでもいいよ』

    「ありがとう。ただ…親父はもう農作業は出来ない」

    お嬢『…え?』

    「膝の関節を骨折しててな。完治しても後遺症が残るそうだ」

    お嬢『そんな…』

    「まったく…親父もドジったな」

    お嬢『…』

    お嬢『…男』

    「なんだ?」

    お嬢『男は…これからどうするんだ?』

    「そうだな…今は考えてない」

    お嬢『…』

    312 = 1 :

    「…落ち着いてからゆっくり考えるよ」

    お嬢『…そっか』

    「今日はいろいろあったから、一晩頭を休めるさ」

    お嬢『そっか…疲れてたらロクなこと考えないもんな』

    「ああ」

    お嬢『…わかった!今日は早く布団に潜って早く寝ろ!!じゃあな』Pi

    「ふぅ…」

    (お嬢のヤツ…相当心配してたみたいだな…)

    (だからこそ…ちゃんと終わらせないと…)

    「…これも…社会勉強か」

    313 = 1 :

    ~三日後・喫茶「はぐるま」~

    お嬢 ズズー…

    ママ・先輩女「「…」」

    後輩「…ねえ」

    男友「ああ…注文してから一言も喋ってないよ…」

    お嬢 フゥ…

    先輩「…男のアホ。連絡ぐらいよこしなさいよ…」

    ママ「きっと忙しいのよ。男ちゃん…」

    先輩「でも…」

    カランカラン

    お嬢 ピクッ

    314 = 1 :

    ママ「あら、いらっしゃい」

    「いつもの」

    お嬢「…あっ」

    ママ「はいはーい」

    お嬢「…」

    「よっ」

    お嬢(男だ!帰ってきたんだ!!)パァアア

    「この間は助かった。ありがとな」

    お嬢「ベ、別に…」ソワソワ

    ママ「…くくっ」

    「ただいま」

    お嬢「…っ!な、なんだ。もう帰って来たのか?もっとゆっくりしてくればいいのに」

    ママ「…あはははは!」

    315 = 1 :

    「どうした?」

    ママ「あはははっ!…ごめんなさい。おかしくって」

    「?」

    ママ「はぁ…お嬢ちゃんね、毎日ここにきて、男ちゃんはまだ帰ってこないのかってみんなに聞いてたのよ?」

    お嬢「!!」

    ママ「それなのにさっきの素気ない態度…もうおかしくって!」

    お嬢「ママ!」

    「…」

    お嬢「…どうしたんだ?」

    「いや…」

    316 = 1 :

    先輩「…」

    お嬢「…なんか元気ないな…疲れてる?」

    「…いや…」

    お嬢「そうかな…」

    「どう切り出すか考えててな」

    お嬢「切り出す?」

    先輩「男…あなたまさか…」

    「…」

    お嬢「よくわかんないけどさ、疲れてるんじゃない?」

    「まあ…な」

    お嬢「今日はもう帰って寝たら?明日から会社だろ?」

    「…明日、辞表を出す」

    一同「「「「「!!」」」」」

    317 = 1 :

    「…田舎に帰ることにした」

    お嬢「…え?」

    後輩「そ、そんな…」

    男友「急すぎるよ…」

    先輩「…」

    「元々30になったら田舎に帰る予定だったんだ。それがちょっと早くなっただけだ」

    お嬢「え?…え?」

    ママ「そっか…いつ帰るの?」

    「仕事の引き継ぎがあるからな」

    先輩「…1ヶ月ぐらい欲しいな…」

    「…わかった」

    お嬢「…」

    318 = 1 :

    「それで、みんなにもお別れを言わないと…て思ってな」

    お嬢「い…だ」

    「ん?」

    お嬢「…嫌だ!」

    「お嬢…」

    お嬢「だって!男と出会って!いろんなこと経験して!!楽しいことがいっぱいあって!!!」

    「いずれは経験するはずだった」

    お嬢「違う!どれもみんな!男がいたから!!男といっしょだから!!!だから!!!」

    「…それは違う」

    お嬢「違わない!」

    「…違うんだ、お嬢」

    お嬢「違わないっ!!」

    319 = 1 :

    「…それは社会勉強だ。俺でなくてもよかった」

    お嬢「違う!そうじゃない!!私は男が!!」

    「それが違うって言ってるんだ!」

    お嬢 ビクッ

    「お嬢は…」

    お嬢「…」

    「…お嬢はようやく世間の見方がわかってきたところなんだ。俺はその取っ掛かりに過ぎない」

    お嬢 キッ

    「…お嬢はこれから先…世間で見聞を広めて…」

    「…自分なりの価値観を作るんだ。だから取っ掛かりにしがみつくな」

    320 = 1 :

    お嬢「…わかった」

    「お嬢…」

    お嬢「…男と一緒に行く」

    「おい!」

    お嬢「男と一緒に行く!私にとって男以上に価値のあるものなんてない!!だから連れてって!!!」

    (俺だってお嬢を連れて行きたい!けど!!)

    ~~~~~~~~~~

      母親「…それにしても変わった会社ね。省エネルギー化コンサルタントなんて。うちでも始めようかしら?」

    ~~~~~~~~~~

    (そんなことをしたら皆に迷惑がかかるんだ!)

    321 :

    「…無理だ」

    お嬢「なんで!」

    「お嬢には農作業は出来ない」

    お嬢「そんなの!やってみないとわかんないだろ!!」

    「あそこは刺激がなさ過ぎる。お嬢はすぐに飽きる」

    お嬢「そんなことない!」

    「…はぁ…」

    お嬢「なぁ…頼むからさぁ…」ポロッ

    「…お嬢」

    お嬢「…」グスッ

    「…俺はお嬢を幸せにする自信がない」

    お嬢「…え?」

    322 = 1 :

    「…お嬢の家は資産家だ。それに気品がある」

    お嬢「…それがなんだよ…」

    「だが、俺はがさつな田舎者だ。俺は…お嬢とはつりあわない」

    お嬢「そんなことないって!」

    「だから…ついてこられても困るんだ!」

    お嬢「!?」

    「…」

    お嬢「…」

    323 = 1 :

    お嬢「…男がそんなふうに考えてたなんて思わなかった…」

    「…」

    お嬢「…わかりました。田舎でもどこへでも行ってください」

    「お嬢…」

    お嬢「そして…もう会うこともないでしょう」

    「…へ?」

    お嬢「ですから」








    お嬢「二度と私の前に現れないでください」

    324 = 1 :

    「…そっか、ごめんな」

    お嬢「…さようなら」

    「うん…さようなら…」

    「ママ。世話になった」スッ

    ママ「…」プイッ

    「…」

    カランカラン パタン

    先輩「…お嬢ちゃん」ソッ…

    ガバッ

    カランカラン バタッ!

    ママ「…馬鹿ねぇ」

    先輩「男も…いっぱいいっぱいだったわ…」

    ママ「ううん…男ちゃんもだけど…あなたもよ」

    ママ「…引き止めたかったんでしょ?」

    先輩「…うん」グスッ

    325 = 1 :

    ~路上~

    トテテテテ

    お嬢「はあ、はあ、はあ」

    お嬢(ちくしょう!ちくしょうちくしょう!!)

    男 スタスタ

    お嬢「はあ…いた!」

    お嬢「…バッカヤロー!!」

    男 ピクッ

    お嬢「てめえは大バカヤローだーっ!!」

    お嬢「一緒に行くって言ってんだろーがっ!!」

    お嬢「私はっ!男が居たらそれでいーんだよーっ!!」

    お嬢「わ、私をっ!ふ…ふっ…振ったことっ!!一生後悔しやがれーっ!!!!」

    男 スタスタスタ…

    お嬢「バ…バッカヤローッ!!!」

    (これでいい…これで…)

    326 = 1 :

    ~リムジンの中~

    お嬢「…」

    ~~~~~~~~~~

      「お嬢の家は資産家だ。それに気品がある」

    ~~~~~~~~~~

    お嬢「…なんで…」

    ~~~~~~~~~~

      「だが、俺はがさつな田舎者だ。俺は…お嬢とはつりあわない」

    ~~~~~~~~~~

    お嬢「なんで私は…あの家に生まれたんだろ…」

    お嬢「…住む世界が違う…」

    お嬢「男は…最初から分ってて…だから“社会勉強”って…」

    お嬢「なのに私は…違う世界を見て…」

    お嬢「…そこに行きたいなんて…夢を見てたんだ…」

    327 = 1 :

    お嬢「これは夢…夢なんだから…」

    お嬢「だから…もう眼を醒まさなきゃ…」

    お嬢「眼を醒まして…いい夢を見たってさ…そう言って笑えばいいんだ…」

    お嬢「夢なんだから…笑えるはずなのに…なんで…」

    お嬢「…なんで涙が…出てくるのかなぁ」ポロッ

    執事「…お嬢様。もうすぐ私めの好きなラジオ番組が始まります」

    執事「音量を上げますので後席との仕切りを上げさせていただきます」

    ウィーン…

    執事「…泣くことは決して恥ずかしいことではありませんよ」

    お嬢「!?」

    ウィーン キュッ

    328 = 1 :

    お嬢「うぅぅ…ヒック…う…うわぁああああん!!!」

    お嬢「うわあああん!!おっ…おとっ…おとこぉおお!!!」

    お嬢「離れたくないっ!離れたくないよぉお!!」

    お嬢「苦労してもっ!ヒック…男と一緒ならっ!!ヒック…がんばれるのにっ!!!」

    お嬢「男とっ!…い、一緒ならっ!!何にも、いらないのにっ!!!全部、捨てられるのにっ!!!!」

    お嬢「うわぁあああん!!うわぁあああん!!!」

    執事(…こちらの道のほうが遠回りですね…)クイッ

    329 = 1 :

    ~1週間後・男の会社~

    カタカタカタカタ

    「このプロジェクトは…クライアントに最終確認を取って…と」

    カタカタカタカタ

    ピリピリピリ ピリピリピリ

    「電話か…嬢姉!?」

    ピリピリピリ ピリピリピリ

    「…」

    ピリピリピリ ピッ

    「…もしもし?」

    『男さん?』

    「ああ。久しぶりだな」

    『そうね…』

    「…」

    330 = 1 :

    『単刀直入に言うわ…あのね?お嬢のことなんだけど…』

    『部屋に閉じこもってて…出てこないの』

    「…」

    『…お嬢ね…先週、家に帰って来たときにはもう…魂が抜けたみたいだったわ』

    『それから部屋に入ったっきり…出てこないの』

    『こんなこと…今までなかったわ』

    男 ズキン

    『さすがに病気になりそうだから無理にでも部屋から連れ出そうと思うんだけど…』

    『…原因が分からないと連れ出してもまた…』

    『だから…男さんに教えてほしいの…』

    331 = 1 :

    「…無理だ」

    『無責任よ!』

    「そうだな」

    『なに他人事みたいに言ってるの!あなたがお嬢に何かしたんでしょ!?』

    「なにもしていない…とは言わない」

    『だったら!それを教えてよ!!このままじゃお嬢、ホントに病気になってしまうわ!!』

    「…お嬢に聞けばいい」

    『出来るならとっくにしてるわ!それができないからあなたに聞いてるんじゃないの!!』

    『あなた、お嬢のことが心配じゃないの!?』

    「…それで?」

    『…え?』

    332 = 1 :

    「俺には何も言えないし、何もできない」

    『…ちょっと!』

    「…母親に聞いてくれ」

    『…え?』

    「言えるのはそれだけだ」

    『…』

    「…」

    『………………』

    『そう…そうなのね…』

    「…」

    『わかったわ…ごめんなさい…』Pi ツーッ ツーッ ツーッ…

    Pi

    333 = 1 :

    「…ふぅ…」

    (余計なことを言ってしまった…)

    「お嬢…」

    「…」

    「…もう…終わったことだ」

    カタカタ…

    334 = 1 :

    ~お嬢の家~

    コンコン

    『お嬢…ちょっといいかな?』

    お嬢「…」

    『さっきね…男さんに電話したの』

    お嬢 ピクッ

    『男さんにお嬢のこと、聞いたんだけど…お母様に聞いてくれって…』

    お嬢「…かあ…さま…!?」

    『…うん…』

    『きっと…お母様が裏で手を回したんだと思うの』

    お嬢「…そっか」ポロッ

    335 = 1 :

    『…ねえ、お嬢…出て来てくれないかな?』

    お嬢「…」

    ガチャッ

    「お嬢…」ギュッ

    お嬢「あ…」

    「辛いのは…あなただけじゃないわ?」

    「…男さんも…辛かったんじゃないかな…」

    お嬢「…うん」ポロッ

    336 = 1 :

    ~数ヶ月後~

    お嬢「…」

    (お嬢…あれからずっと無表情のまま…)

    (お母様も仕事にかこつけて家に帰ってこないし…)

    「…ねえ、どうするの?」

    お嬢「…」

    「…お嬢、あなたはいつまでそうしてるの?」

    「あなたは…男さんに会いたくないの?」

    お嬢「…会いたい」ポロッ

    「だったら…会いに行けばいいじゃない?」

    お嬢「…無理…」

    「どうして?」

    お嬢「…母様が…」

    嬢姉 ピクッ

    337 = 1 :

    お嬢「…母様には…逆らえないよ…」

    「…」

    お嬢「…それに…」

    お嬢「…母様の言うとおり…私は…男の邪魔者…」

    お嬢「…農業も…できないし…田舎で暮らす…自信も…ないし…」

    「そう…」

    執事「…朝食でございます」カタッ

    「あ、ありがとう」

    執事「お嬢様」カタッ

    お嬢「…」

    「…いただきます」

    お嬢「…いただき…ます」

    パクッ

    お嬢「…っ!?」

    338 = 1 :

    「おいしい…」

    お嬢「…執事は…どこ…?」

    執事「お呼びでございますか?」

    お嬢「…この…食事は?」

    執事「和食でまとめてみましたが…お口に会いませんでしたか?」

    お嬢「そうじゃ…なくて…この…食材は?」

    執事「お嬢様のお知り合いから送られてきたものです」

    お嬢「…え…?」

    執事「…GWに田植えをお手伝いされたこと…覚えておられますか?」

    お嬢「…」

    執事「これらはその時のお礼だそうです」

    339 = 1 :

    執事「男父さんからはお嬢様が田植えをした田んぼの米」

    執事「男母さんと男姉さんからは畑の野菜や山で採れた山菜」

    執事「そして…男婆さんからは“米を炊くときに使ってください”とお水を送ってこられました」

    執事「この朝食はそれらの食材で作ったものです」

    お嬢「…いらない…」

    執事「お召し上がりになってください」

    お嬢「いや…です…」

    執事「お嬢様…これらのお礼とともに男婆さんからお手紙が入っておりました」スッ

    お嬢「…読みたく…ありません…」

    執事「…この手紙には男婆さんのお気持ちがあふれております」

    執事「お嬢様は男婆さんのお気持ちを…価値の無いものだといわれるのですか?」

    お嬢「…っ!?」

    340 = 1 :

    執事「…」

    お嬢「…」

    執事「お嬢様…」カサッ

    お嬢「…」

    執事「…お嬢様」

    「お嬢…」

    お嬢「…」カサッ

    341 = 1 :

      「拝啓

      ようやくしのぎやすい季節となりましたが、いかがお過ごしですか。
      こちらは皆元気で過ごしております。
      今年も収穫の季節を迎えましたが、例年になく豊作で皆忙しく働いております。
      お嬢さんの植えた田も豊作で、これもひとえにお嬢さんのお力添えによるものと皆で感謝しております。
      感謝の印に、田畑の実りをお送りさせていただきます。
      少量ではありますがお嬢さんにお箸をつけて頂けたら幸いです。
      季節の変わり目には体調を崩しやすいものです。どうぞ御自愛ください。

      敬具

      P.S. 男姉だよ!また遊びに来てね!!絶対だかんね!!」

    342 = 1 :

    お嬢「…」

    ~~~~~~~~~~

      「しっかりしたいい娘さんじゃないか。ワシがあと20年若かったら口説いとるぞ?」

      「おや。こんな田舎料理なのに、お世辞でも嬉しいねぇ」

      「そっちのも食べてみてよ。そのシーチキンと竹の子の煮物、あたしが作ったんだよ♪」

      「そうかいそうかい。お米はねえ、採れたところの水で炊くのが一番おいしいからねぇ」ニコニコ

    ~~~~~~~~~~

    お嬢「…」ポロッ

    カタッ

    お嬢「…」パクッ

    お嬢「…おいしい…ヒック…」

    ・執事「「…」」
       ・
       ・
       ・

    343 = 1 :

    お嬢「ごちそう…ヒック…さま…」

    執事「お嬢様」

    お嬢 ピクッ

    執事「朝食はいかがでしたか?」

    お嬢「おいしく…頂きました」

    執事「…ではそのように返信しておきます」

    お嬢「はい…」

    執事「…失礼します」

    コツッコツッコツッ

    お嬢「…待って」

    執事「なにか?」

    お嬢「…」

    お嬢「お願いがあります」

    344 = 1 :

    ~3年後・畑~

    「よいしょっ」ヒョコヒョコ

    「無理するなよ?」

    「ん?…ああ…」

    (親父も元気になったな…足以外は)

    「男ー、胡瓜の摘み取り終わったぞ」

    「分かった。車に積もう」

    「…頼む」

    「ああ…」

    345 = 1 :

    ~男の実家~

    「ただいまー」

    近所の人「もうね、こんないい人いないわよ?男ちゃんもいい年なんだしさあ」

    「そうは言ってもねぇ…」

    近所の人「もうね、あたしが紹介できる人の中でも最高なんだから!会うだけでも…ね?」

    「でもねえ…男にその気がないからねぇ」

    「…ただいま」

    「あ、おかえりなさい。男は?」

    「車から胡瓜を下ろしてる。そろそろ入って来るだろ」

    近所の人「え?…じゃ、そろそろ帰るわね。お邪魔様」スタコラサッサ

    346 = 1 :

    「…また見合い話か?」

    「ええ。あの人、前に“しつこい”って男に怒られたから逃げちゃったわ」

    「で…お前はどう思うんだ?」

    「…お相手はいい人だとは思うけど…人の気持ちを考えないからねぇ、あの人は」

    「はは。どれどれ?」

    「何お見合い写真見てるのよ」ジロッ

    「…男には悪いことをしたな…」

    「…」

    「…この子、悪くはないとは思うんだけどな…お嬢ちゃんと比べるとなぁ…」

    「…お嬢ちゃん、どうしてるんだろうねぇ…」

    347 = 1 :

    「ただいま」

    「おう、またお見合い写真が来てるぞ」

    「またか…」

    「見るか?」

    「…そうだな」

    母・「「!?」」

    「ふーん…俺にはもったいないな」

    母・「「…」」

    「ん?どうした?」

    「いや…」

    348 = 1 :

    「…男、どうしたの?今までお見合いなんて全然興味なかったじゃない?」

    「…俺も…もう30過ぎたからな…」

    「そう…」

    「…」

    「…けど、もうちょっと落ち着くまで待ってくれ」

    「じゃあ…この子は断るの?」

    「…この子ならもっといい相手がいるだろう」

    「…わかった」

    349 = 1 :

    ~夕方~

    「男、そろそろ晩御飯にするかえ?」

    「そうだな」

    ヒラヒラ…

    「ん?なんだこれ?」

    「あ、それな。なんかここに工場が建つらしいぞ?」

    「冗談だろ」

    「冗談じゃないらしいよ」?

    「…工場を建てたところで、先にインフラを整備しておかないと人も流通も滞るだろ」

    「そうだな…まあ、今夜この件で寄り合いがあるから、とりあえず行ってくるわ」

    「まあ、揉めるとは思うがな」

    「そうだな」

    350 = 1 :

    ~夜~

    「…ただいま」

    「おかえり。…どうした?」

    「いや…疲れた…」

    「はい、お父さんにビール♪」

    「おお!ありがとな母さん!!」

    「現金な…で、やっぱりもめたか」

    「ああ。いろいろあってな。いくつか問題はあるが掻い摘んで言うと、工場は下の廃村に立つ予定だと」

    「それは田んぼを売るつもりだった連中が黙ってないな」

    「で、なんの工場かって言うと…野菜の工場なんだと」

    「…それは畑をやってる連中が黙ってないな」

    「ああ。それで寄り合いは蜂の巣をつついたような大騒ぎさ」

    「そうか…」


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