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    元スレ男「…へ?」 お嬢「ですから」

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    151 = 1 :

    ~GW~

    お嬢「…ふぅ…」

    お嬢(パリって犬の糞だらけだし…男さんといるときみたいに楽しくない…)

    お嬢「…つまんないな…」

    執事「…」


    ダダダダダ

    「ふぅ…荒代掻きももうすぐ終わりだな」

    (…今頃お嬢さん、何してるんだろ…)

    「…あと少し…頑張ろう」

    152 = 1 :

    ~5月中旬~

    お嬢「今日の映画、面白かったな!」

    「そうか?」

    お嬢「うん!来週も期待してるよ!!」

    「あ、すまん。来週はムリだ」

    お嬢「えーっ!?なんで?」

    「来週は田植えがあるから、有給を取って週の半ばから実家に帰るんだ」

    お嬢「…そっか」

    お嬢(また一人で過ごすのか…寂しいな…)

    チクン

    お嬢「!?」

    153 = 1 :

    「どうした?」

    お嬢「な、なんでもない…そうだ!男さん!!」

    「なんだ?」

    お嬢「私も一緒に行く!」

    「どこへ?」

    お嬢「男さんの実家に決まってるだろ!?」

    ブーッ!

    お嬢「ちょっ!きたないって!」

    「ごほっごほっ…いきなり何言いだすんだ?」

    お嬢「なあ…いいだろ?」

    「いや…」

    (いきなり実家に連れて行くって…色々すっ飛ばしすぎだろ…)

    (…いや、そもそもお嬢さんとはそういうのじゃないから問題ないといえばそうなんだが…)

    154 = 1 :

    お嬢「…これも社会勉強だろ?だからさ…」チラッ

    ドキッ

    (そんな顔するな!心臓に悪いだろ…)

    お嬢「よし!じゃあいろいろ準備しないとなっ!着替えとかなっ!」

    「おい」

    お嬢「なんだよ…今さらダメだって言うなよな!」

    「そうじゃない。ジャージとスウェットも必要だぞ」

    お嬢「やったーっ!ありがとな、男さん!!」

    155 = 1 :

    ~翌週の水曜・特急列車~

    お嬢「…」

    「どうした?」

    お嬢「なんか…狭い…」

    「贅沢言うな。指定席なんだから」

    お嬢「うぅ…いつもはグリーン車なのに…」

    「社会勉強だろ?」

    お嬢「そうだけど…」

    「ほら、窓際に座れ」

    お嬢「あ、うん」

    156 = 1 :

    「荷物を上に上げるから貸して」

    お嬢「あ、はい」

    「よいせっと」ゴソッ

    「…これでいいか」

    スリッ

    お嬢「!!」

    「ん?どうした?」

    お嬢「あ…なんでもない。あはは…」

    お嬢(びっくりした…席が狭いから男さんが動くたびに腕や身体に当たって…)

    お嬢「…あのさ」

    「ん?」

    お嬢「…指定席って言うのも悪くないな!」ニコッ

    「そうか?」

    157 = 1 :

    オベントウニオチャハ~

    「お、車内販売だ。昼飯買っとくか?」

    お嬢「何があるんだ?」ズイッ

    (俺の脚の上で横になるな!お嬢さんからいい匂いが…)

    お嬢「なになに?シュウマイ弁当に幕の内にチキン弁当にとりめしに…」

    「…まだか?」

    お嬢「いいじゃねーか。こういうのは選ぶのも楽しいんだって♪」

    「それはわかるが…」

    (今ここで勃ったらまずい…早くしてくれ…)

    お嬢「…よし!私はオーソドックスに幕の内にするわ。男さんは?」

    「あ。う、うん。俺は…シュウマイ弁当にするか」

    お嬢「もっとゆっくり選べばいいのに」
       ・
       ・
       ・

    158 = 1 :

    お嬢「ごちそうさまー♪」

    「ごちそうさん」

    お嬢「いやー、駅弁って思ってたよりうまい!」

    「満足していただいたようで」

    お嬢「うん!電車の旅行って楽しいな!!」

    「くくく。子供みたいだな」

    お嬢「い、いいだろ!」

    「ああ。楽しむのが一番だ」

    お嬢「むぅ…」

    ♪テンテテコ テンテテコ テンテテコテン♪ マモナクコノレッシャハ…

    「お、そろそろ降りる駅だな」

    お嬢「もう到着か」

    「いや、乗換だ」

    お嬢「そっか」

    159 = 1 :

    ~ディーゼル車~

    お嬢「…うるさい電車だな」

    「電車じゃなくてディーゼル車だ」

    お嬢「どっちでもいいって」

    「ここから先はまだ電化していないからな。ディーゼル車しか走ってないんだ」

    お嬢「ふーん…あっ!」

    「どうした?」

    お嬢「すごい!窓のすぐそこまで木の枝が伸びてる!!」

    お嬢「手を伸ばしたら届きそうだ!よしっ!窓から手を…」

    「やめなさい」
       ・
       ・
       ・

    160 = 1 :

    お嬢「…すごい流れだな…」

    「この辺りは水量が多いからな」

    お嬢「…損してたんだな。私…」

    「どうした?」

    お嬢「うん…いつもさ、長距離の移動は飛行機か新幹線だったからさ…」

    お嬢「途中にある、こういう…いい景色って言うのをいっぱい見逃してたんだろうなーって…な?」

    「いい景色…か」

    お嬢「…のどかだな…」

    「退屈じゃないか?」

    お嬢「ううん。なんか…ほっとする…」

    「…そうか」ナデナデ

    お嬢「あ…」

    「あ、すまん。無意識に撫でてた」

    お嬢「い、いや…」

    お嬢(なんでだろ…気持ちいい…)

    161 = 1 :

    ~バスの中~

    「もうすぐ俺の実家のある村だ」

    お嬢「はーい。あ、川」

    「この川は周りの山の水が流れ込んでくるから、枯れることはないんだ」

    お嬢「へぇー」

    「…夏になるとこの川でよく泳いだな」

    お嬢「え?泳げるの?」

    「ああ。更衣室はないけどな」

    お嬢「…女子の着替えを覗いてたんじゃ…」ジー

    「そうしたいのは山々だったが」

    お嬢「やっぱり」ジトー

    「…女子は家で着替えてきて、濡れたまま家に帰ってた」

    お嬢「…え?」

    「そんなもんだ」

    162 = 1 :

    お嬢「ふーん…にしても…」

    「ん?」

    お嬢「…よく揺れるんだけど」

    「我慢しろ」

    お嬢「お茶が飲めない…次の信号まだ?」

    「信号はしばらくないぞ」

    お嬢「え?」

    「そもそも田舎の一本道だからな」

    お嬢「そういえば…数えるほどしか信号がなかったような…」

    「ここらは人も少ないからな」

    お嬢「…荒地が多いな」

    「過疎化が進んでてな…」

    「俺が小さい頃はこの辺りにも集落があって、住んでる人が結構いてな」

    「けど…今はもう誰も住んでいないそうだ」

    お嬢「…そっか」

    163 :

    ~バス停~

    お嬢「んーっ!」ノビーッ!

    「忘れ物はないか?」

    お嬢「うん。荷物はこの二つだけだし」

    「よし。ちょっと歩くぞ」

    お嬢「えー!?ちょっと休もうよ」

    「…わかった」

    お嬢「やったー!…って言っても…」

    「見てのとおり、バス停のベンチ以外は休めそうなところは無いがな」

    お嬢「だな」クスッ

    164 = 1 :

    お嬢 ♪~

    (ちょっと休憩して…あと20分ほどか…)

    お嬢「おおっ!」

    「どうした?」

    お嬢「すごい!バスが1日に4本しかない!!」

    「ああ。だからこの辺りでは車が無いと生きていけないんだ」

    お嬢「ここに住むなら運転免許証と車は必須ってことか…」

    「そういうこと」

    お嬢(運転免許証ね…)

    お嬢「にしても…」

    キョロキョロ

    お嬢「…もっと田舎かと思ってた。家も結構あるし…」

    「まあ、そんなもんだ」

    165 = 1 :

    お嬢「それに…殆んど車が通らない…」

    「そこの山の向こうには高速道路が通ってるから、この道は地元民しか使ってないだろうな」

    お嬢「そうなんだ…」

    「一応、国道なんだがな」

    お嬢「え?ここって国道なのか?」

    「ああ。そこに標識があるだろ」

    お嬢「え?あっ、ホントだ…気がつかなかった…」

    「…そろそろ行くぞ」

    お嬢「はーい」

    トテトテトテ

    166 = 1 :

    お嬢「あ、あそこの3階建ての建物は?」

    「あれは役場の分署だ。中に農協の分署も入ってる」

    お嬢「へー」

    トテトテトテ

    お嬢「…なあ」

    「ん?」

    お嬢「…お店って無いのか?」

    「あー、うん。今はもう無い」

    167 = 1 :

    お嬢「え?じゃあ買い物は?」

    「食料品は週に一度、農協の巡回スーパーが回ってくるから、そこで買うんだ。」

    「服とかは隣町まで行かないと買えないな」

    お嬢「ふーん。じゃあさ、学校は?」

    「俺たちの頃は小学校まではあそこに見える廃校に通ってたが…今は隣町まで行ってるそうだ」

    お嬢「隣町って?」

    「ディーゼル車からバスに乗り換えたところが隣町だ」

    お嬢「そっか…バスだけで30分ぐらい掛かるな」

    「そんなもんだな。さ、もうすぐだ」
       ・
       ・
       ・

    168 = 1 :

    プチッ

    「ほら」

    お嬢「…なにこれ?」

    「タンポポの茎だ。こうすると…」

    プー

    お嬢「あ、音が鳴る!」

    「やってみるか?」

    お嬢「うん!」

    プスーッ

    お嬢「…あれ?」

    「あははは」

    169 = 1 :

    お嬢「も、もう一回!こうして…こうして…」

    スプーッ

    お嬢「鳴った!」

    「ああ」

    お嬢「へへ。」

    スプーッ
       ・
       ・
       ・

    170 = 1 :

    「どうだ?」

    お嬢「…甘い!」チュパチュパ

    「これはレンゲって言うんだ」

    お嬢(レンゲか…それにしても…)

    お嬢(よく見ると…いろんな花が咲いてるんだ…)

    お嬢(何にもないようでいろんなことができるんだ…)

    お嬢(自然といっしょに生きるってこういうのなんだな…)

    「おうい!」

    お嬢 ビクッ

    「あ、すまん。ちょっと挨拶を…あ、来た来た」

    「おう、おかえり」

    「ああ、ただいま」

    お嬢「こ、こんにちは」

    171 = 1 :

    「おお!こりゃまたすんごいベッピンさんだな。コレか?」

    「違うって!ちょっとした知り合いだ!!」

    お嬢 ツンツン

    「ん?」

    お嬢『だれ?』コソッ

    「ああ。俺のオヤジだ」

    お嬢「え?…ええーっ!」アタフタ

    「ははは。初めまして。男の父の男父です」

    お嬢「あ、お、お嬢と申します。このたびは突然お尋ねして誠に申し訳ありません」

    「いやいや。お気になさらずに。こちらこそ男が世話になっとります」

    お嬢「いえ!お世話になっているのはこちらですわ」

    172 = 1 :

    「謙遜せんでもいいよ。おい、男」

    「ん?」

    「しっかりしたいい娘さんじゃないか。ワシがあと20年若かったら口説いとるぞ?」

    「お袋にチクって来る」

    「チョットマテ」

    「お嬢さん、行くぞ」

    お嬢「あ、はい。それでは後ほど」

    「ああ」

    トテトテトテ

    173 = 1 :

    お嬢「…ぷはあ!緊張したーっ!!」

    「なにが?」

    お嬢「だっていきなりお父様と御対面だよ!?心の準備が…」

    「そうか?余裕があるように見えたが」

    お嬢「余裕なんてないよ!思わずザーマス言葉になっちまったじゃないか!!」

    「ははは」

    お嬢「うぅー、お父様に変なやつだって思われて無いかなぁ…」

    「悩んでるところ悪いが…」

    お嬢「なんだよ」

    「ついたぞ」

    お嬢「…え?」

    174 = 1 :

    「あそこで苗床を軽トラに積んでるのが…」

    「あー、おかえりー」

    「こらー!遅いぞー!!」

    お嬢「え?えっと」

    「最初に挨拶したのがお袋で、背中に赤ん坊を背負ってるのが姉貴だ」

    「ただいま。それとこっちが友達のお嬢さん」

    お嬢「あ、初めまして。お嬢といいます。突然お邪魔してすみません」

    「お、さっきと違うな」

    お嬢「しっ!」

    お嬢(友達…か)

    175 = 1 :

    「いいのいいの。それより、お客さんなのにおもてなし出来なくてごめんね?」

    お嬢「あ、いえ!今日はお手伝いに来たので…」

    「お嬢ちゃんだっけ?可愛いねぇ。うちの子には負けるけど」

    お嬢「うちの子?…あ、何ヶ月ですか?」

    「ようやく10ヶ月。ほら、顔見てやって?」

    お嬢「は、はい…あ、かわいいですねぇ」

    「姉貴、旦那さんは?」

    「旦那は今頃郵便配ってんじゃない?今日は来ないよ」

    「そうか。忙しいみたいだな」

    「まあねー。あの人ひとりでこの辺一帯受け持ってるからねー。なかなか休めないのよ」

    「まあ仕方ないな。じゃあ着替えてくる」

    お嬢「あ、私も」

    「家の中に婆ちゃんがいるから挨拶しなよー」

    176 = 1 :

    ~家の中~

    「おやおや。おかえり」

    「ただいま、婆ちゃん」

    お嬢「こんにちは」

    「おやおや。かわいい娘さんだねえ」

    「あー、こちらh」
    お嬢「友達のお嬢ですっ」

    (こいつ…)

    お嬢(どうだ!“お友達”って言われる気分は!!)

    「元気だねえ」

    「ああ。俺たちこれから着替えるんだ。田んぼの手伝いに行くんでな」

    「そうかいそうかい。婆ちゃんは家で晩御飯の拵えをしておくよ」

    「じゃあ…こっちだ」

    お嬢「あ、うん」

    177 = 1 :

    「ここだ」ガラッ

    お嬢「…広いな」

    「ああ、客間だからな。ここに荷物をおいて着替えるといい」

    お嬢「男さんは?」

    「俺は離れの自分の部屋で着替えてくる」

    お嬢「そっか。あとで男さんの部屋、見てみたいな」

    「夜にでもな」

    お嬢「うん。じゃあ…着替えてくる」

    「ああ」

    お嬢「…覗くなよ?」

    「そういわれると余計に覗きたくなるな」

    お嬢「誰が見せるかよーだ!」ピシャッ

    178 = 1 :

    ~玄関~

    「お嬢さんはまだか…ん?」

    トテテテテ

    お嬢「お待たせしましたー」

    (真っ白なPumaのジャージか…似合ってるな…しかし…)

    お嬢「どうだ?似合うだろー」

    「ああ、けど…」

    お嬢「けど?」

    「…あるのか?胸」

    ゲシッ!

    「いっ!…脛を蹴るな」

    お嬢「うっせえ!」

    「…行くぞ」

    お嬢「ったく…」

    「ん?」

    179 = 1 :

    お嬢「なんだ?」

    「長靴…買うの忘れてたな。田んぼに入れないぞ」

    お嬢「あー、裸足で入るからいいって」

    「ダメだ。ヒルがいる」

    お嬢「ヒル?」

    「ああ。噛みついて血を吸うんだ。その時に細菌に感染すると破傷風になることがある」

    お嬢「げっ」

    「仕方がないな。今日は畦で見学だな」

    お嬢「…うん。ヒル怖いし」

    「よしよし。いい子だ」ナデナデ

    お嬢「…へへっ」

    「じゃあ、苗床を軽トラに積んで田んぼに行くか」

    お嬢「…うん!」

    180 = 1 :

    ~田んぼ~

    キー

    「着いたぞ」

    お嬢「…」

    「どうした」

    お嬢「ここって…さっき男さんのお父様に会ったところと違う…」

    「ああ、田んぼもいくつか持ってるんだ。もうすぐ親父が田植え機を持ってくる」

    お嬢「そうなのか…」

    …ダダダダ

    「おぅーい」

    お嬢「あ」

    「来たな。苗床下ろすぞ」

    お嬢「あ、うん」

    181 = 1 :

    「苗床を8枚セットして…よし」

    「じゃあ行ってくる。お前は手植えを頼むわ」

    「ああ、分かった」

    ダダダダ カチョンカチョンカチョン

    お嬢「ふーん…」

    「ははは。珍しいかね、娘さん」

    お嬢「あ、はい。面白いですね」ニコッ

    「ははは。じゃあ植えてきますよ」

    お嬢「はい、いってらっしゃい」ノシ

    男 ゴソゴソ

    お嬢「ん?何やってるんだ?」

    182 = 1 :

    「ああ。苗束を作ってるんだ」

    お嬢「なえたば?」

    「そうだ。ほらそこ。苗が植わってないところがあるだろ?」

    お嬢「え?…あ、ああ」

    「田植え機で植えると、出入り口や田植え機の幅より狭いところは苗が植えられない」

    「だから、そういうところは手で植えるんだ」

    お嬢「手で?」

    「そうだ。今はその準備をしてる」

    お嬢「ふーん…なあ、私にもその…なえたば?作らせてくれないかな?」

    「結構難しいぞ?きつく縛ると苗が痛むし、緩いと苗が抜けるからな」

    お嬢「やるよ。せっかく手伝いに来たのに、見てるだけじゃつまんないし」

    183 = 1 :

    「わかった。じゃあ苗床から苗を適当に掴みとって」

    お嬢「こ、こうか?」ムシリッ

    「…次はそこの流水で泥を落としながら軽く根っこをほぐして、苗をバラバラにするんだ」

    お嬢「ほぐれろー」ジャバジャバ

    「…苗がバラバラになったら一掴み分をこの紐で縛る」

    お嬢「一掴み…よいしょっと…あれ?」スルッ

    「はは。頑張れ」
       ・
       ・
       ・

    184 = 1 :

    お嬢「で…できた…」

    「じゃあ行くぞ」

    お嬢「…すごいな」

    「ん?」

    お嬢「私は頑張っても2個しか苗束が出来なかったのに男さんは…」

    「年季が違う」

    お嬢「むー…」

    「ふくれてないで。ほら、やるぞ」

    チャポ ズチョ ズチョ…

    「田植え機で植えたところと等間隔になるように…」

    サッ サッ サッ サッ…

    お嬢(すごい…動きがスムーズだ…)

    185 = 1 :

    「おい」

    お嬢「なんだ?」

    「苗束を適当に投げてくれ」

    お嬢 ポイッ

    「違う!軽トラの荷台にじゃなくてこの田んぼの中に投げ込むんだ」

    お嬢「なんだ。だったらそう言えよ」ポイッ パシャン

    「そうそう。じゃあ…」

    サッ サッ サッ サッ…

    お嬢「…腰が痛くなりそうだな…」

    186 = 1 :

    プルプルプル

    お嬢「あ、電話か…もしもし?」

      執事『お嬢様』

    お嬢「…なあに?」

      執事『あからさまに嫌そうな声を出すのはやめてくださいませ』

    お嬢「それで…何か御用かしら」

      執事『いいえ、御報告までに』

    お嬢「報告?」

      執事『はい。私めはいつでもお嬢さまのお近くにおりますので、何かあればお呼びください』

    お嬢「そう…あ、そうだわ!長靴を持ってくるのを忘れてきたの。用意してくださるかしら?」

      執事『はい。今すぐにまいります』

    お嬢「お願いしますわ」Pi

    187 = 1 :

    「…どうした?」

    お嬢「あー、執事が長靴を持ってくるって」

    「そうか。よかったな」

    お嬢「うん、そうなんだけど…なんか過保護って感じが…」

    「それだけお嬢さんのことが心配なんだ。許してやれ」

    お嬢「許すもなにも無いけどさ…」

    ブルルルルン キー

    執事「お嬢様」

    お嬢「早っ!」

    執事「長靴でございます」

    お嬢「あ、ありがとう…その車は?」

    執事「使用感を出すために、あえて中古の軽バンを購入しました」

    お嬢「なぜ?」

    188 = 1 :

    執事「…お嬢様。ここでは私めのことを“叔父”と呼んでください」

    お嬢「どうして?」

    執事「その方が面倒が無いと思いますので」

    お嬢「?」

    執事「…お嬢様は御自身のことを、どのようにご紹介なされるおつもりですか?」

    お嬢「どうって…普通に…」

    執事「それで男さんの御家族はどのように振舞われるでしょうか」

    お嬢「…え?」

    執事「…男さんの御家族が信用できないということではありません」

    執事「評判を聞く限り、男さんの御家族は良い人たちのようですので」

    執事「…御気を使わせないために、こうしたほうがいいかと」

    お嬢「…わかったわ」

    執事「男さんもそれでお願いします」

    「了解です」

    189 = 1 :

    「おーい…えっと、どなたさん?」

    執事「あ、お嬢の叔父です。このたびはお嬢がお世話になりまして」ニコニコ

    お嬢・((変わり身すごっ!))

    執事「お嬢が長靴を忘れてましたんで、持ってきたんですよ」

    「あーそうですか。そりゃ遠いところからご苦労様です」

    執事「いえいえ。それじゃ私はこれで」

    「今から帰るんじゃ大変でしょう。どうですか。今夜はうちに泊まってもらって」

    執事「あ、いやいや!そんなご迷惑をかけるわけには…」

    「いいじゃないですか。にぎやかで」

    お嬢「え?」

    190 = 1 :

    執事「そうおっしゃるのなら…お世話になります」ペコリ

    「じゃあ、ゆっくりしていってください」

    執事「ありがとうございます」

    「男、家に電話しといてくれ。ワシは隣の田んぼ植えてくるから」

    「わかった」Pi Pi Pi…

    お嬢(なんだよ…せっかく監視が無くなったって思ったのに…)

    「…何むくれてるんだ?」

    お嬢「べーつーにー?」

    「そうか?じゃあ…田植え、してみるか?」

    お嬢「あ、うん!」

    「じゃあ…いいか?指を3本使ってこうやって~~~」
       ・
       ・
       ・

    191 = 1 :

    お嬢「…ふぅ。こ、腰が…」

    「無理するな。腰が立たなくなるぞ」

    お嬢「けど…男さんより全然遅れてるし…」

    「初めてだったらそんなもんだ」

    執事 ソワソワ…

    「…どうしました?」

    192 = 1 :

    執事「…男さん、私めもお手伝いしてよろしいですか?」

    「あー、じゃあお嬢さんは休憩して、しt、叔父さんに代わってもらったらどうだ?」

    お嬢「…そうするわ。ちょっと腰を伸ばさないと…」

    執事「では、失礼して…」ズチャ

    「あまり無理せずに」

    執事「…さて」

    シバババババ!

    お嬢「…すごい…」

    「やるなあ」
       ・
       ・
       ・

    193 = 1 :

    「…よし。もう終わりか?」

    執事「こちらも終わりましたよ」

    「思ったより全然早かったな。しつj…叔父さんのおかげです」

    執事「いえいえ」

    「お嬢さん、退屈してたんじゃないか?」

    お嬢「ううん。そんなこと無い。初めての体験で楽しいよ」

    「そうか…まだ日が高いな…」

    194 = 1 :

    「おぅーい。そっちはどこまで行った?」

    「ああ。もう終わったよ」

    「なんだ、今年はずいぶん早いな」

    「ああ。あのふたりのおかげだよ」

    お嬢「そんなこと無いです。男さんのお邪魔ばっかりしてて…」

    「ははは。それじゃ明日するはずだった田んぼも前倒ししてやっちまうか!」

    「そうだな」

    お嬢「えっ」

    執事「腕が鳴りますわい」

    お嬢「ええっ!?」

    195 = 1 :

    ~男の実家~

    「ただいま」

    お嬢「た、ただいま…」

    執事「お邪魔します」

    「おかえりー。頑張ったわねえ」

    「ただいまー。お嬢さんと叔父さんのおかげで、残りの田んぼも全部終わっちまったよ」

    「あらあら、すみませんねえ。ありがとうございます」

    執事「いえいえ。こちらこそお嬢さ…がお世話になりまして」

    「なんにも無いけど、今夜はゆっくりしていってくださいね」

    執事「ありがとうございます」

    196 = 1 :

    「お袋。あっちの風呂、まだ使えるか?」

    「え?母屋のお風呂にしたら?スイッチポンッですぐに入れるわよ?」

    「いや、せっかくだからお嬢さんたちに五右衛門風呂を体験させたくてな」

    お嬢「ごえもんぶろ?」

    執事「おおっ!それは珍しい!!まだあるんですか!?」

    「ええ、ありますよ。もっとも最近は母屋のお風呂しか使ってないけどね」

    「じゃあ風呂の支度してくる。姉貴は?」

    「中でお乳あげてると思うけど?」

    「じゃあ、姉貴に五右衛門風呂の浸かり方をお嬢さんに教えるように言っといてくれ」

    「いいわよ」

    197 = 1 :

    お嬢「あの…お風呂ぐらいひとりで入れるけど?」

    執事「いやいや、入り方を間違えると火傷をしますから」

    お嬢「そうなの!?」

    「けど、ほかの風呂とは比べ物にならないくらい気持ちいいぞ?」

    執事「そうです」ウンウン

    お嬢「そ、そっか…」

    「じゃあ風呂を沸かしてくる。30分ほどで沸くから」

    お嬢「うん、楽しみにしてるわ」ニコッ

    198 = 1 :

    ~五右衛門風呂~

    お嬢「んーっ!ほんっとに気持ちいいなーっ!!」

    『湯加減はどうだー?』

    お嬢「んー、ちょうどいい加減だわ」

    『そりゃよかった』

    お嬢「ふー…そろそろ上がるわ」

    サバァ

    『次はしt…叔父さんだな』

    お嬢「ん、服着たら呼んでくる」

    ガラララ ピシャ

    199 = 1 :

    (もっと文句を言うだろうと思ってたけど…結構楽しんでるみたいだな…)

    (俺も…お嬢さんが一緒で楽しいし…)

    (でもなぁ…)

    ガラララ

    執事「男さん、お先に頂きます」

    『どうぞー』

    200 = 1 :

    ~居間~

    お嬢(畳の上に大きな机が置いてある…)

    「はいはーい。ちょっとどいてね」

    お嬢「あ」

    ドンッ

    お嬢「…いい匂いですね」

    「ふふふ。母ちゃん特製ワラビの卵とじだよっ。他のおかず持ってくるからちょっと待っててね」

    お嬢「あ、私も手伝います」

    「いいのいいの。お客さんなんだから、座って待ってて。ね?」

    「母ちゃん、取り皿これでいい?」

    「いいわよ」

    お嬢「でも…手伝いたいんです」

    「…じゃあ、台所からご飯運んできてくれる?」

    お嬢「はい」

    トテトテトテ


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