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    元スレ男「…へ?」 お嬢「ですから」

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    101 = 1 :

    ~翌日~

    「こんちわ」

    お嬢「こんにちは」

    ママ「いらっしゃい」ニコッ

    「カウンターでいいか?」

    お嬢「うん…うわっ!」

    「どうした!?」

    お嬢「なんかいる!」

    「なんかって?…あ」

    男友 ドヨーン…

    102 = 1 :

    「男友だ。どうしたんだ?」

    先輩「さっきからこうなのよ…」

    「おい男友」

    男友「ん?…男か…」

    「闇を発散してるぞ。どうしたんだ?」

    男友「…昨日さ…ゲーセンに行く途中で…高ビー女に会っちゃって…」

    お嬢「高ビー女?」

    「前にコンパで会ったことのあるオンナだ。確か大学生だったな」

    お嬢 ジー…

    103 = 1 :

    「な、なんだ?」

    お嬢「…男さんも参加してたの?」

    「ま、まあ…人数調整要員でな」

    お嬢「ふーん…」

    男友「…続き…話していいかな?」

    「ああ、悪いな。話の腰を折って」

    男友「…でな?」

    104 = 1 :

    ~~~~~男友の回想~~~~~

      後輩「今日は負けませんからね!」

      男友「ははは。今のとこ全敗のくせに」

      ドンッ

      男友「あ、すいません…あ」

      高ビー女「気をつけなさい!…あら?誰かと思ったら、貧乏人じゃないの」

      後輩「びっ、貧乏人!?」

      高ビー1「ねえねえ、この人、高ビー女の知り合い?」

      高ビー女「冗談じゃないわ!こんなのと知り合いだなんて恥ずかしいもの」

      高ビー2「そうなの?確かに軟弱そうだけどねー」

      後輩「なっ!」

      男友「いいから!…行こう?」

    105 = 1 :

      後輩「ちょっと!いきなり失礼じゃない!!」

      高ビー女「あら、本当のこと言っただけよ?」

      後輩「男友先輩のどこが貧乏人なのよ!」

      高ビー女「だって」

      高ビー女「車はともかく、今どき免許も持ってないような貧乏人じゃない」クスクス

      後輩「なっ!」

      高ビー女「あなたもこんなオトコやめて、もうちょっとマシな男に乗り替えたら?」

      後輩「そんなことない!男友先輩は!!」

      高ビー女「でもコイツは認めてるわよ?」

      後輩「…え?」

      男友「…」

    106 = 1 :

      高ビー女「ほら、何も言い返してこないじゃない?」

      高ビー’s クスクスクス

      後輩「…このっ!」

      男友「やめろって…もういいから。行こう!」グイッ

      後輩「あっ」

      高ビー女「どこかで会っても、二度と声をかけないでね?恥ずかしいから。じゃあねー」クスクス

      後輩「~~~!!!!」
         ・
         ・
         ・
      男友「その…ごめんな?恥ずかしい思いさせて…」

      後輩「男友先輩!なんで言い返さないんですか!!」

      男友「免許が無いのはホントだし…貯金もあんまりないし…」

      後輩「…情けないです男友先輩!!」ポロッ

      トテテテテ…

      男友「あっ…」

    ~~~~~~~~~~

    107 = 1 :

    男友「俺さあ…なんでこんなに情けないんだろ…」

    カランカラン

    ママ「いらっしゃい…あら?」

    後輩女 |ω・`)

    「あ」

    先輩女 オイデオイデ

    後輩女 ソー…

    男友「高ビー女にさ…あんなに言われても反論もできなくてさ…」

    男友「…後輩女に…恥ずかしい思いさせちまった…」グズグズ

    お嬢「おい」

    男友「え?」

    スパーン!

    108 = 1 :

    男友「痛っ!?」

    (後頭部をスリッパで…って、ママが渡したのか?)

    ママ「♪~」

    後輩「ちょっと!いきなり何するんですか!!」

    男友「え?…後輩女?…なんで?」

    後輩「あ…いえ、その…昨日は先に帰っちゃったから…謝ろうと思って…」

    お嬢「…へっ。ちょうどいいや。おいっ!」

    後輩女・男友 ビクッ

    お嬢「さっきから聞いてりゃウジウジウジウジとぉ!テメエも男ならシャキッとしろやぁ!!」ドン!

    男友「ひぇっ!」

    109 = 1 :

    後輩「お、男友さんは優しいだけです!だから我慢してるんです!!」

    お嬢「ふんっ。我慢してどうなったよ!?後輩女さんに恥かかしただけじゃねーか!!ああ!?」

    男友「うぅ…」

    後輩「あたしは恥ずかしいなんて思ってません!男友先輩が落ち込んでるのが心配なんです!!」

    お嬢「なんでこんなやつの心配するんだよ!」

    後輩「好きだからに決まってるでしょ!!」バン!

    男友「…え?」

    お嬢「はい?」

    ママ・先輩女・男「「「…」」」

    後輩「え?…………あっ!」

    (いや、今更口を押さえたってなぁ…)

    110 = 1 :

    後輩「ち、違うんです!じゃなくて!!ええっと…いえその…」

    男友「…そうだよなぁ…こんなやつ、好きになるはずないよなぁ…」

    後輩「…男友さん」

    男友「ゴメンな、恥ずかしい思いさせちゃって」

    後輩「…男友さんはあたしのこと…どう思ってますか?」

    男友「え?」

    後輩「あたしは男友さんが好きです。男友さんは?」

    男友「お…俺は…」

    後輩女 ジー

    男友「…俺も好きだ!後輩女のことが大好きだ!!」

    後輩「じゃあ、あたしと…付き合ってください」

    男友「…ありがとう!!」ガバッ ギュッ

    後輩「きゃっ!」

    111 = 1 :

    男友「こちらこそだよ!よろしくお願いします!!」

    お嬢「ったく…とんだ茶番だな…」

    「まあまあ。よかったじゃないか」

    先輩「“雨降って地固まる”ね」

    男友「ありがとう、お嬢さん」

    お嬢「…ありがとうじゃない!」

    男・後輩女・男友「「「え?」」」

    お嬢「おい、男友さん。このままでいいのか?」

    男友「え?…え?」

    お嬢「…復讐だ」ニヤッ

    112 = 1 :

    「おいおい、穏やかじゃないな」

    お嬢「だってさぁ…仲間が馬鹿にされたんだぞ?このままじゃ腹の虫が納まらないし。なあ!?」

    男友「えっと…その…」

    お嬢「協力するからさ。その…高ビー女?に一泡吹かせてやろうぜ。な?」ニヤリ

    後輩女・男友 ゾクッ!

    「…ほどほどにしとけよ?」

    113 = 1 :

    ~数日後の夕方・高ビー女の大学の前~

    後輩「…あ、来ました!…お仲間と一緒です。…はい。じゃあ」Pi

    高ビー’s ペチャクチャ

    高ビー「今日のコンパはレベルが高いわよぉ?気合入れていかなきゃ!…あら?」

    後輩「あ、こんにちは」ニコッ

    高ビー「あの貧乏人といっしょにいたオンナじゃない。こんなところで何をしてるの?」

    後輩「男友先輩を待ってるんです」ニコッ

    高ビー「なあに?あなたまだあの貧乏人と付き合ってるの?」

    後輩「あははー。そうですよー♪」

    高ビー「はっ!物好きな!!あんな貧乏人と付き合うなんて苦労するわよ?」

    後輩「そうかなー?」ニコニコ

    114 = 1 :

    高ビー「何ヘラヘラしてるのよ!馬鹿にしてるの!?」

    高ビー1「何熱くなってんの高ビー女?」

    高ビー2「うちらこれからコンパだし。こんなの相手にしてないでさっさと行こうよ」

    高ビー「…そうね。こんな馬鹿なオンナ、相手にしたって時間の無駄ね」

    ブロロロロ キー…

    高ビー「…え?何このリムジン!?」

    執事「到着しました」

    ガチャ

    男友「おそくなった。ごめん(棒)」

    高ビー「え?ええ?…えーっ!?」

    115 = 1 :

    先輩(秘書役)「後輩女様、どうぞ中へ」

    後輩「はーい♪」

    バタン ウィーン

    後輩「それj」
    高ビー「ちょっ!ちょっと待ちなさい!!」

    グイッ

    男友 ビクッ

    高ビー「ちょっとアンタ!どう言う事よこれは!!それにアンタ達誰よ!!」

    先輩「秘書です」

    お嬢「メイドです」

    高ビー「秘書お?メイドお?なにそれ!?アンタ何様なの!?」

    高ビー「アンタ車も免許も持ってない貧乏人でしょ!?なんでこんな車に乗ってるのよ!!」

    男友「あ…え…」

    116 = 1 :

    お嬢「男友様、このような不躾なオンナにお答えする必要はありませんわ」

    高ビー「なっ!な…なんですってぇえええ!!!!」

    お嬢「あなたは以前男友様に、二度と口を聞かないようにおっしゃった方ではありませんか?」

    高ビー「っ!!」

    お嬢「代わりに私めがお答えしましょう。この車は(私の)お家のもので男友様のものではありませんわ」

    お嬢「それに(私の)専属の運転手がいますので免許証など不要ですわ」

    高ビー女 パクパク

    お嬢「では、出発しますので車から離れてくださいまし」

    後輩「それじゃあね。ふふんっ♪」ドヤッ

    ブロロロロ…

    高ビー’s ポカーン

    117 = 1 :

    高ビー1「…ねえ、今の何?」

    高ビー2「コンパ行かないの?」

    高ビー「…」

    高ビー1「なんか馬鹿にされた気分なんですけどおっ!」

    高ビー2「行くの?行かないの?」

    高ビー「あ゛―っ!!!五月蝿い五月蝿い五月蝿いうるさーい!!!!」

    高ビー「あたしだって知りたいわよっ!何がなんだかわかんないわよっ!!」トテテテテ

    高ビー1「あっ!どこに行くのよ!!」

    高ビー「ついて来ないで!!」

    高ビー2「コンパどうするんよ!?せめて場所だけでも教えなさいよ!!」
      ・
      ・
      ・

    118 = 1 :

    ~リムジンの中~

    お嬢「…ぶっ」

    一同「「「「あはははは!!!」」」」

    お嬢「あははは。やったなあ、おい!」

    後輩「やりましたねっ!」

    先輩「ふふふ。楽しかったわ」

    男友「ありがとな、みんな…」

    男友「けどさ…これって騙しじゃん?」

    お嬢「誰も嘘は言ってないって。もっとも、勘違いしたかもしれないけどな!」

    後輩「なんでもいいです!スカッとしました!!でも、お嬢さんノリノリだったね。ザーマス言葉でさっ!」

    お嬢「当たり前ですわ。これでも資産家の娘ですもの。おーっほっほっほっほっ」

    後輩「あはははは!先輩女さんも元々クールなだけあって秘書役バッチリでしたねっ!」

    先輩「そう?殆んど何もしてないわよ?」

    119 = 1 :

    お嬢「でもスーツ姿でそのメガネだと、どこから見てもやり手秘書ですよ。なあ?」

    後輩女・男友「「うんうん」」

    先輩「あなた達…どういう目で私を見てるの?」

    お嬢「そう言う目でしょ?」

    先輩「…お嬢ちゃん?」ニッコリ

    お嬢「…す、すみません…」ガクブル

    男友「あははは。でも…」

    後輩「なあに?」

    男友「…高ビー女たちのコンパの予定を調べるのも…車も衣装も…全部お嬢さんがやってくれて…」

    男友「…俺、自分じゃ何もしてないし…やっぱ情けないなぁ…」

    お嬢「おい」

    120 = 1 :

    男友「はい?」

    お嬢「これも男友さんの実力のうちなんだって」

    男友「…へ?」

    お嬢「私と男友さんは仲間だろ?仲間っていうのは人脈ってことだろ?」

    男友「…人脈?」

    お嬢「人脈ってのはさ、自分の財産なんだ。今回のはそれをちょっと使っただけ」

    お嬢「だから男友さんも、もっと自信持てよ。な?」

    先輩「そうよ」

    後輩「そうそう。ここまでしてくれる仲間なんて、なかなか居ないんだからねっ!」

    男友「うん…ありがとう、みんな…グスッ」

    121 = 1 :

    ~リムジン・前席~

    アハハハハ

    (みんな…喜んでるみたいだな…)

    執事「男さん、後ろの席に行かれますか?」

    「あ、いや。ここでいいです」

    執事「ははは。こんな爺の隣でいいとは、男さんも変わっておられる」

    「…執事さんには感謝しています。調査や衣装まで準備していただいて…」

    執事「私めは指示を出しただけでございます」

    執事「それに…男さんにはお嬢様がお世話になっておりますゆえ、ご恩返しの意味もあります」

    「それでも…ありがとうございます」

    122 = 1 :

    執事「にしても…男さんも運がない。あの女性に顔を知られていなければ後ろで一緒に楽しんでおられたのに」

    「はは。そうですね」

    お嬢『よーし!祝杯だぁ!!』

    執事「お嬢様、またお言葉が乱れて…まあ、今日だけは目をつぶりましょう」

    「…ありがとう」

    執事「お礼を言うのはこちらのほうですよ、男さん」

    「え?」

    執事「男さんに出会ってから…お嬢様はよく笑うようになりました」

    執事「お嬢様は御幼少のころから社交界に出ておられました」

    執事「ですが…ご成長なさるにつれ、本音を隠し建前で話す社交界に心を病まれ…」

    執事「元々素直なお嬢様はそういった“裏を読みながら”人とお付き合いをすることを避け…笑うことが少なくなりました」

    執事「そして部屋にこもりがちになり…テレビドラマの口調を真似てみたり…」

    (あの口の悪さはテレビの影響か…)

    執事「ですが男さんと社会勉強をなさるにつれ…本当に楽しそうにお笑いになるのです」

    「…」

    123 = 1 :

    執事「おそらく男さんが裏の無い御仁でおられるからでしょう」

    「…そんなことはないですよ。俺も垢にも塵にもまみれてますから」

    執事「そうかもしれませんが…拝見したところ、男さんはお嬢様といっしょのときは、お嬢様に正直に相対しておられる」

    執事「ですから私めも男さんを信用することができるのです」

    「そんなに簡単に信用したら痛い目に遭いますよ?」

    執事「その時は私めが全力で阻止しましょう」

    「ははは。怖いですね。そうならないように注意しときましょう」

    執事「…そろそろお店が見えてきましたよ」

    124 = 1 :

    ~焼き鳥屋「ひよこ」~

    一同「「「「「かんぱーい!」」」」」

    「今日は男友のおごりだぞ」

    男友「ちょっ!…いや、そうだな!今日は奢るぞーっ!!」

    一同「「「「ごちそうさまでーす!」」」」

    後輩「じゃあ、紫蘇梅巻きとモモと皮とネギマとナンコツを塩で!」

    オヤジ「あいよ」

    男友「ちょ…ちょっとは遠慮して…ね?」

    先輩「ふふふ。〆のお茶漬けも忘れないでね?」

    後輩「了解でーす!」

    「…大丈夫か?」

    男友「…カードもあるし、大丈夫だよ。はは…」

    「どれぐらいある?」

    男友「…3万ぐらいかな?」

    125 = 1 :

    「そうか…すいません、この5人で二万円以内に抑えられます?」

    男友「え?」

    オヤジ「おう、できるよ」

    「じゃあ、お願いします」

    オヤジ「はいよ」

    「…これで支払いの上限が決まったし、安心して飲めるだろ?」

    男友「…ありがとう!助かった!!」

    後輩「あーっ!お嬢さんが皮を独り占めしてるー!!」

    お嬢「だってうまいんだもん!そういう後輩女さんだって紫蘇梅巻き独り占めしてるし!!」

    先輩「ナンコツおいしー♪」

    「…俺たちも食うか」

    男友「そうだな!」

    126 = 1 :

    ~数日後~

    ブロロロロ…

    執事「お嬢様、本日はどちらへ向かいますか?」

    お嬢「そうね。男さんは今週は出張中ですし…「はぐるま」にでも行こうかしら」

    執事「承知いたしました」

    127 = 1 :

    ~喫茶「はぐるま」~

    カランカラン

    ママ「あら、いらっしゃーい♪」

    お嬢「今日は一人で来ました」

    ママ「そういえば男ちゃん、出張中だったわね」

    お嬢「はい。…でもなんで知ってるんですか?」

    ママ「あの子から聞いたの」

    お嬢「…あ」

    先輩「こんにちは」ニコッ

    ママ「ご注文は?」

    お嬢「あ、いつものやつで」

    ママ「はーい。もう入れ始めちゃってるけどね」

    お嬢「さすがですね」ニコッ

    ママ「あ、そういえば」

    お嬢「はい?」

    128 = 1 :

    ママ「男友君のこと…ありがとね」

    お嬢「え?なんでママが?」

    ママ「…このお店にはね、私が気に入ったお客さんしか入れないの」

    ママ「だからね、男友君も私のお気に入りなの」

    ママ「もちろんお嬢ちゃんもお気に入りだから。ね?」

    お嬢「…なんで?私、ママの気に入るようなことしてないのに?」

    ママ「私が気に入ったらそれでいいの♪」

    お嬢「あ…」

    ~~~~~~~~~~

      お嬢「…面白いやつだな」

    ~~~~~~~~~~

    ママ「お嬢ちゃんにも覚えがあるでしょ?」

    お嬢「…はい」ニコッ

    129 = 1 :

    ママ「ふふふ。これからは男ちゃんが居なくても来てちょうだいね」

    お嬢「はい」

    お嬢(すごく居心地がいい…男さんが“隠れ家”って言ってた意味が分かる気がする…)

    お嬢「あ、そういえば男友さんと後輩女さんは?」

    ママ「今日はデートじゃない?たぶん。夜には来ると思うけど」

    お嬢「そうですか…」

    ママ「ふふふ。退屈だったらあの子とお話してれば?」

    お嬢「え?」クルッ

    先輩「ん?」

    お嬢「…あの」

    先輩「なあに?」

    130 = 1 :

    お嬢「…そっち行っていいかな?」

    先輩「いいわよ?」

    お嬢「じゃ…」

    先輩「いらっしゃい」ニコッ

    お嬢「ども」

    先輩「この間は面白かったね」

    お嬢「ああ、男友さんの?」

    先輩「そう。なかなかできることじゃないわよ?」

    お嬢「あれは…仲間がバカにされたら頭に来るでしょ?」

    先輩「でも、あれだけのお芝居をすぐに思いつくなんて、なかなかやるわね」クスッ

    お嬢「男友さんの話を聞いてたらなんか…思いついちゃって」

    先輩「普通は思いついてもやらないわよ?」

    お嬢「そうかな?」

    先輩「…お嬢ちゃんは仲間思いの優しい子だね」ニコッ

    131 = 1 :

    お嬢「そんなことないよ」

    先輩「ううん。そんなことあるわよ。ふふ」

    お嬢(先輩女さん…聞くなら今しかない)

    お嬢「…あのっ!」

    先輩「どうしたの?」

    お嬢「聞きたいことがあるんだけど…」

    先輩「どんなこと?」

    お嬢「あの…先輩女さんは…どこで男さんと知り合ったの?大学?」

    先輩「私は短大卒だからそれはないわ」

    お嬢「じゃあ…」

    先輩「私が勤めてる会社に男が入社してきたの。それからよ」

    お嬢「そうなんだ」

    132 = 1 :

    先輩「あ、誤解の無いように言っておくけど、年は私のほうが一個下なのよ?」

    お嬢「え?」

    先輩「私が就職した次の年に、男が大卒で入社してきたからね」

    お嬢「そっか…」

    お嬢「あの…男さんは…彼女とか居るのかな?」

    先輩「あら。どうしてそんなこと聞くの?」

    お嬢「あ、いや…いつも休みの日に付き合ってもらってるし…もし彼女さんが居るなら悪いなって…」

    先輩「…私の知っている範囲ではいないわね」

    お嬢「そうですか…」

    お嬢(そうじゃなくて!本当に聞きたいことがあるだろ!!)

    お嬢「あの…」

    先輩「また質問?」クスッ

    お嬢「はい。その…すみません…先輩女さんは男さんのこと…好きなんじゃ…」

    先輩「…」

    お嬢 ジー

    133 = 1 :

    先輩「…実はね」

    お嬢「うん…」

    先輩「…告白したこと…あるの」

    お嬢 ドクン!

    先輩「でもね、フられちゃった」

    お嬢「え?」

    先輩「…」

    お嬢「…」

    先輩「…びっくりした?」

    お嬢 コクン

    先輩「そう…」

    134 = 1 :

    お嬢「…ごめんなさい」

    先輩「どうして?」

    お嬢「言いたくないこと…言わせちゃったから…」

    先輩「いいのよ」ニコッ

    お嬢「けど…」

    先輩「もうずいぶん前のことだもの。大丈夫よ」

    お嬢「…なんで…」

    先輩「…私ね、足を怪我してるの」

    お嬢「え?」

    先輩「だから…男は自分を気遣ってくれたんだ…」

    135 = 1 :

    お嬢「…どういうこと?」

    先輩「お嬢ちゃん、ここ見て?」

    お嬢(え?左ひざを指さして…あ)

    先輩「…分かった?」

    お嬢「それって…」

    先輩「サポーターよ」

    お嬢「あ…」

    お嬢(そう言えば先輩女さん、いつもロングスカートかパンツだった…サポーターを隠すためだったんだ…)

    先輩「…高校の時にね、バスケ部だったんだけど…」

    先輩「クロスプレーで靭帯を痛めちゃってね…」

    お嬢「…」

    先輩「普通に歩いたりはできるんだけど…農作業みたいに膝に負担がかかる作業はできないの」

    お嬢「…農作業?」

    136 = 1 :

    先輩「え?ひょっとして…知らないの?」

    お嬢「うん…なんのこと?」

    先輩「男ったら…肝心なこと言ってないじゃない!」

    お嬢「あの…」

    先輩「あ、ごめんなさい」

    お嬢「いや…その…どういうこと?」

    先輩「…あのね、男は農家の長男なの。だから…」

    先輩「30歳になったら…実家に戻って農家を継ぐの」

    お嬢 ドキッ!

    先輩「…男はね、きっと悩んだと思うわ?私は田舎に行っても農作業が出来ないから…」

    お嬢「…」

    先輩「振られたあとね、いろいろ考えたのよ?それで…男についていったら男の負担になるって…」

    先輩「だから…これでよかったんだって、最近思うようになったの」ニコッ

    お嬢「…」

    137 = 1 :

    先輩「…あ~あ、なんで男は農家の長男なのかなぁ…」

    お嬢「…先輩女さんは…今でも男のことが好きなんじゃ…」

    先輩「…ううん」

    先輩「もうね、自分の中では気持ちに折り合いがついてるの」

    先輩「だから今は、こうして普通に話すことが出来てるのよ?」

    お嬢「…」

    先輩「ねえ?…神様ってさ…」

    お嬢「え?」

    先輩「…神様って…意地悪だよね」

    お嬢「…」

    先輩「…もし、男が家業を継ぐ必要がなかったら…本当に好きな人と結婚できたのになぁ…」

    お嬢「それは…男さんが?」

    先輩「ううん」

    先輩「…私が…よ」

    138 = 1 :

    お嬢「…」

    先輩「…さ。そろそろ買い物して帰らなきゃ」

    お嬢「あ、あのっ!」

    先輩「なあに?」

    お嬢「…ありがとうございます。その…話したくないことを話してもらって…」

    先輩「…いいのよお嬢ちゃん。それとね?」

    お嬢「はい?」

    先輩「…男の事、よろしく頼むわね」ニコッ

    お嬢「…え?」

    先輩「じゃあ、ごちそうさま」

    ママ「は~い。まいど~」

    先輩「それじゃ、またね」ノシ

    お嬢「あ、はい」ノシ

    パタン

    お嬢「…はぁ…」

    139 = 1 :

    ママ「どうしたの?ため息なんかついちゃって」

    お嬢「あ、いや…自己嫌悪です。それと…先輩女さんってすごいなって…」

    ママ「それはあの子に失礼よ?」

    お嬢「え?」

    ママ「あの子はそうなりたかったわけじゃないの。だから…」

    お嬢「そう…ですね」

    ママ「ふふ。お嬢ちゃん、やっぱりいい子ね」

    お嬢「そんなことないです」

    ママ「あら?コーヒー冷めてるんじゃない?入れ直そっか?」

    お嬢「あ、はい。お願いします」

    140 = 1 :

    ママ「…ねえ」

    お嬢「あ、はい」

    ママ「お嬢ちゃん、この店の名前、どう思う?」

    お嬢「あー、ちょっと変わってますよね。なんかこう…機械っぽいっていうか」

    ママ「ふふ。大抵の人はそう言うわね」

    お嬢「違うんですか?」

    ママ「…歯車ってね?ちゃんと噛み合ってないとうまく回らないでしょ?」

    お嬢「はい」

    ママ「このお店はね、私に噛み合う人が来るようなお店にしたかったの」

    ママ「お客さんが私と噛み合う人ばっかりだったら、お客さん同士も噛み合う」

    ママ「そうしてみんなが噛みあえば…とっても楽しいじゃない?」

    お嬢「そうですね」クスッ

    141 = 1 :

    ママ「私ね、このお店が好き。このお店に来る常連さんたちも好き」

    ママ「だからこのお店の名前、気に入ってるの♪」ニコッ

    お嬢「…いいですね。そうやって好きって言えるものがあって」

    ママ「ふふ。…少し昔話をしよっか」

    お嬢「え?」

    ママ「…男ちゃんをここに連れてきたのは先輩女ちゃんだったの」

    ママ「最初の頃はね、会社の先輩と後輩って感じで、全然そんな感じじゃなかったのよ?」

    ママ「それが男ちゃん、すぐに仕事を覚えて自信をつけていってね」

    お嬢「…」

    ママ「それで先輩女ちゃんといい感じになっていったの。でもね…」

    ママ「…2年ぐらい前にね、ふたりともここに来なくなって…」

    ママ「それで、男友君に聞いたら…ね?」

    お嬢「…」

    142 = 1 :

    ママ「でもね、それから1年ほどして、また二人でここに来てくれるようになったの」

    ママ「それからはずっとあんな感じ。つかず離れずで落ち着いてるわ」

    お嬢「そうですか…」

    ママ「あら、面白くなかった?」

    お嬢「いえ、そうじゃなくて…自分も男さんと似てるのかなって」

    お嬢「私も…詳しくは言えないけど、いろいろあるんです…だから…」

    ママ「そっか…」

    ママ「だから魅かれあうのかもね」

    お嬢「でもそれは…辛いですよ…」

    143 = 1 :

    ママ「でもね、その辛さを知らないでいるのは不幸なことよ?」

    お嬢「そう…ですね」

    ママ「人は辛い思いをした分だけ、人には優しくできるわ」

    ママ「それに、まだ完全にダメってわけじゃないでしょ?」

    お嬢「はい…」

    ママ「だったら、諦めずに頑張りましょ?ね?」ニコッ

    お嬢「そうですね…ママさんはさすがです」ニコッ

    ママ「あら、それはどういう意味かしら?ふふふ」

    お嬢「憧れですね。あははは」

    144 = 1 :

    ~翌週・男のアパート~

    ピンポーン

    「はーい」

    ガチャ

    お嬢「お久しぶりー」スチャ

    「あー、ちょっと待ってくれ。出張の荷物を片付けないといけなくてな」

    お嬢「挨拶ぐらい返せよゴルァ!」

    「…久しぶりだな」

    お嬢「それでいいんだよ。で、今日はどこに行く?」

    「悪いが洗濯物がまだ干せてない。終わるのは昼頃になるから、昼飯を食いに行って、そこで考えよう」

    お嬢「ん、わかった。じゃあお邪魔しまーす」

    「勝手に入るな」

    145 = 1 :

    お嬢「手伝うって。洗濯物、干すんだろ?」

    「パンツとかもあるぞ?」

    お嬢「ぱ…ぱんつ…//」

    「…じゃあ任せた。俺は他の荷物を片付ける」

    お嬢「お、おう…」

    (お嬢さん、なんか積極的だな…)
      ・
      ・
      ・

    146 = 1 :

    お嬢「…ほ、干し終わった…//」

    「お、ありがとうな。ほら」

    お嬢「…なにこれ?」

    「出張土産。御当地名産のストラップだ」

    お嬢「じゃなくて!もっとマシなもんよこせ!!」

    「時間がなかったんだ。これで我慢しろ」

    お嬢「…ちっ。ダサいなあ…」

    「イヤなら返せ」

    お嬢「やーだねっ」

    お嬢(男さんから貰った…初めてのプレゼントだもん)

    147 = 1 :

    ~数週間後~

    ママ「はい、おまちどうさま」

    「ありがとう」

    お嬢「ども」

    ズズー

    お嬢「はあ~…おいし♪」

    ママ「ふふっ」

    お嬢「あ、そうだ。男さん?」

    「ん?」

    お嬢「男さんはパスポートは持ってる?」

    「ああ、一応な」

    お嬢「よしっ!」

    148 = 1 :

    「なんだ?」

    お嬢「あ、いや…もうすぐGWだろ?」

    「ああ、そうだな」

    お嬢「…予定、ある?」

    「ああ。実家に帰るんだ」

    お嬢「実家に?なんで?」

    「お嬢さんには話してなかったな。うち、農家なんだ」

    お嬢「あー…」

    「だからGWは荒代掻きがあるから実家に帰るんだ」

    お嬢「あらしろかき?」

    「ああ。田植えの準備だ」

    お嬢「そっか…」

    149 = 1 :

    「…実家…か」

    お嬢「ん?」

    「いや、なんでもない」

    お嬢(田植えか…そういや先輩女さんが言ってたな…男さんは農家の長男だって)

    お嬢「ま、そういうことならしょうがないな」

    150 = 1 :

    ~帰りのリムジンの中~

    お嬢「執事」

    執事「なんでございましょう」

    お嬢「GWのヨーロッパ行き、一人分キャンセルして下さる?」

    執事「…男さんの分でございますか?」

    お嬢「ええ。予定が変わりましたの」

    執事「…かしこまりました」


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