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元スレ幼馴染「……童貞、なの?」 男「」.
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いやああああ幼馴染がああああ
といって屋上さんもいいからなあ
妹もね
といって屋上さんもいいからなあ
妹もね
幼なじみが屋上さんに、告白した事を告げる→屋上さんも告白(主人公と幼なじみが一緒にいるときか、三人でいる時か幼なじみと屋上さんが一緒に現れて屋上さんが告白 …etc)
→これからはライバルだね!
(幼なじみと屋上さんが主人公を取り合う)
的な展開でww
長々とすいませんが後悔はしていない!!
奇行ばっかしてたのが嘘のようだな
先が物凄く気になるが別ルートも見てみたい
先が物凄く気になるが別ルートも見てみたい
話が動き出しましたな
後半幼馴染みの描写薄かったからこうなる気はしていたが……(´Д`)
後半幼馴染みの描写薄かったからこうなる気はしていたが……(´Д`)
まあ幼なじみを振ったうえで屋上さんに振られる可能性もあるわけで
>>862
そんな最悪な展開があってたまるか
そんな最悪な展開があってたまるか
>>862
そして妹へ
そして妹へ
乙
予想ばっかりは>>1にプレッシャーしか掛けないよん
予想ばっかりは>>1にプレッシャーしか掛けないよん
チェリーと友達になりてぇ……
屋上さんとか妹が見られると考えると畜生め
屋上さんとか妹が見られると考えると畜生め
幼馴染派であり屋上さん派でもある俺はこの思いをどこに向ければいいんでしょうか
>>868
キンピラくん
キンピラくん
>>868
俺がすべて受け止めてやろう
俺がすべて受け止めてやろう
>>868
お前童貞だろ?
お前童貞だろ?
>>875
サラマンダーよりはやーい
サラマンダーよりはやーい
>>877
やめてくださいしんでしまいます
やめてくださいしんでしまいます
>>862
その場合妹√だな胸熱
その場合妹√だな胸熱
>>876
なおとじゃないよナオくんだよ
なおとじゃないよナオくんだよ
何かを言わなければならない、と決意はしたものの、どこから手をつけたものか分からない。
結局悩みに悩んだ挙句、誰にも何も言えずに、タクミが帰る日になった。
俺と妹は一緒に幼馴染の家に行って、別れを惜しんだ。三姉妹も来ていた。俺と幼馴染は一言も話せなかった。
何かを言わなければならない、のだけれど、何をどう言ったものか、分からない。
タクミは平気そうな顔をしていた。何を考えているのか、つくづく分からない奴だ。
それでも、初めて会ったときのようにゲームを手放さないなんてことはなくなっていた。
るーは後輩の背に隠れて、何かを言いたそうにしている。寂しそうな表情。
タクミはそれを見て困った顔をする。
暑さがおさまり始めた昼下がりに、タクミたちの両親は幼馴染の家を出た。
タクミはるーを手招きして呼び寄せて、小声で何かを言った。
それを聞いたるーがくすくすと笑う。ふたりはそれっきり話をしなかった。
「またな」
と俺が言った。うん、とタクミは頷いた。
そのまま車に乗ってしまうのかと思ったら、彼は、今度は俺を呼び寄せた。
「なに?」
「ねえ、姉ちゃんと早めに仲直りしときなよ」
諭されてしまう。やっぱりこいつは大人だ。
「けっこう、落ち込んでたよ」
なんというか。まぁ、そうなのだろうけれど。
「まぁ、がんばるよ」
苦笑しながら答える。どうなるかは分からないし、どう言えばいいかも分からないけど。
でもまぁ、がんばる。
彼は最後に、俺たちに向かって小さくお辞儀をした。大人だ。もうちょっと子供っぽくてもいいのに。
タクミを乗せた自動車は、あっという間に見えなくなった。
蜃気楼が道の先を歪ませていた。うっとうしいような蝉の声だけが、いつまでもそこらじゅうに響いている。
少し、落ち着かない空気が流れる。ユリコさんが、それを吹き飛ばそうとするみたいな大きな声をあげた。
彼女は俺たちを家の中に招こうとしたけれど、全員が断った。
なんとなく、もうちょっと黙っていたいような気分だった。
全員で俺の家に向かい、リビングで寝転がる。誰も何も言わなかった。
やがて、るーはソファに寝転がって顔を隠したまま眠ってしまった。
後輩は困ったみたいに笑った。
「るー、泣きませんでしたね」
彼女は少し意外そうだった。るーもタクミも、強がりなタイプで、弱いところを見せたがらない人種だ。
まだ子供なのに、俺よりもずっと大人だ。参る。
幼馴染も、俺たちの家にやってきていたけれど、俺とはちっとも言葉を交わさなかった。
黙っているというわけではなく、終始、妹に話を振っている。
このままじゃまずい、と思う。
窓の外から、まだうるさい蝉の声が続いている。
腹を決めるしかない。
タクミに言われてしまったわけだし。
幼馴染を誘ってコンビニに行く。彼女は少し緊張したような顔つきでついてきた。
こういうことはどう伝えるべきなのだろう。
下手に取り繕っても無意味だという気がした。
けれど、実際に考えを口に出す段階になると、どうしても躊躇してしまう。
蝉の鳴き声。赤く染まりかけた西の空。揺れる木々。かすかに肌を撫でる風。
隣り合って歩く。
言葉というものは、考えれば考えるほど混乱していく。
だから思ったことを単刀直入に言うべきなのだ。
でも。
言うとなると、難しい。
結局、コンビニに着くまで何も話すことができなかった。飲み物とアイスを買って店を出る。また並んで歩く。
帰りに公園に寄った。幼馴染は黙ってついてくる。
ブランコに座る。落ち着かない気持ち。
考えても仕方ないし、ずっとこうしていても仕方ない。
「俺さ」
幼馴染が息を呑んだ気がした。
間を置くのもわずらわしい気がして、はっきりと告げる。
「屋上さんのこと、好きだ」
声に出してみると、その言葉は俺の頭の中にすっと融けていった。いま言ったばかりの言葉が、心に自然に馴染む。
好きだ。
なんかもう、そうなってしまっている。
手遅れな感じ。
惚れたからにはしかたない。
長い時間、沈黙が続いた気がした。幼馴染の方を見ると、顔を俯けていて表情がよく分からない。
「私は」
と、しばらくあとに彼女は口を開いた。
「やっぱり、家族なの?」
否定しようとして、口をつぐんだ。どう言ったところで同じことだ。
俺は何も言わなかった。胸が痛む。緊張のせいか、息苦しささえ覚える。
そうじゃない。
家族だと思っているからとか、そういうことじゃない。
でも、それを言ったところで、何も変わらない。
彼女はじっと俯いたまま動こうとしなかった。ふと、トンボが飛んでいることに気付く。
それを追いかけていると、視線が上を向いた。夕月が青白く澄んだ空にぼんやりと浮かんでいる。夏の終わりが近付いていた。
不意に、幼馴染が、今までに聞いたことがないほどはっきりとした声で言った。
「納得いかない」
「……は?」
「納得いきません」
納得いかないらしい。
何が?
「だって、ずっと一緒にいたでしょ、私たち」
「はあ」
「人生の半分以上の時間を共に過ごしてるわけで」
「……いやなんつーか」
「その間中、私はずっと好きだったわけで」
「……ずっと好きだったんですか」
「ずっと好きだったんです」
頭の中で斉藤和義が歌っていた。
なんか、開き直ったっぽい。
「ね、屋上さんにふられたら、私と付き合ってくれる?」
「何言ってんだおまえは」
「いいじゃん。保険。キープ」
こいつ、自分で何言ってるのか分かってるんだろうか。
「あのな、仮に振られたとして」
言いかけて考え込む。
そういえば、振られるかもしれないんだった。
何も解決してない。
「……いや、それは今はいい。仮に振られたって、あっちがダメだったからこっち、みたいな真似できるわけないだろ」
「なんで? 別に私はいいけど」
「いいけど、って」
「だから、別にそういう扱いでもいいよ、って」
ダメだ。
言葉が通じなくなってしまった。
「なんなら二号さんでもいいよ!」
……あれ?
なんか二股できる感じの雰囲気?
いや違うだろう。
「ダメだって」
何が悲しくて、こんなことを必死に否定しなければならないのか。
「でも、それじゃ私、告白し損じゃん。もし君が先に屋上さんに告白して、それで振られてたら、私にもチャンスがあったわけでしょ?」
「いや、え?」
「先に告白しちゃったから付き合えませんって、どう考えてもおかしいよ」
……いや、なんつーか。
「振られる前提で話を続けないでください」
そこまで自信がないので。
「いいじゃん、振られてよ」
無茶を言う。そこは俺の意思でどうにかなる部分じゃないです。
言ってることがむちゃくちゃだ、さっきから。
「いや、だからさ――」
「あ、アイス溶けてる」
「――あっ」
「もう帰ろうよ」
言うが早いか、幼馴染はブランコから跳ね上がるように立ち上がった。
「いや待てって」
「もう何も聞きたくないです」
結局、その後は何を言っても聞いてもらえなかった。
家に帰ってからドロドロに溶けたカップアイスを冷凍庫に突っ込む。
幼馴染はその後すぐに帰ってしまったので、あの態度にどういう意図があったのかが分からない。
本気で言っていたのか、ただの強がりだったのか。
まさか、とは思う。
でも、もし本気で言っていたら、少し気が楽になるのに。
どう考えても希望的観測。
もう以前通りとはいかないだろう。
……そのはず、だ。うん、たぶん。
その後すぐに、幼馴染は自分の家に帰った。三姉妹も同様に、揃って帰路につく。
特別騒がしかったわけではないはずなのに、妙に静かになったように感じる。
困る。
台所で洗い物を始めた妹が、不意に俺に声をかけた。
「ねえ、お姉ちゃんの何かあった?」
鋭い。
が、どう答えるべきか迷う。
何も言うべきではない気もするし、何かを言っておくべきだという気もする。
結局、何も言わなかった。
「いいんだけどさ」
ちょっと拗ねたみたいに、妹は言った。
部屋に戻ってベッドに寝転がる。
さて、どうしたものか。
ひとまず、幼馴染に自分の考えを伝えることはできた。
なんだか、非常に疲れる結果になったけれど、まぁ贅沢は言わない。
妙に気に掛かるところではある。が、今は気にしてたって仕方ない。
――で。
これからどうすればいいんだろう。
告白?
というのは、唐突だ。
別に、今すぐ急いでどうにかしようとしなくても、なんとかなるんじゃないかな、と思う。
サチ姉ちゃんもそんなこと言ってた。
……いいのか、それで。
どうなんだろう。
でも、今日は疲れた。とりあえず眠りたい。
ここのところずっと考えてばかりだったから、少し休んでいたい。
その日は何の考えも浮かばないまま眠る。
翌日になって、サチ姉ちゃんが実はエスパーなのではないかと疑いたくなるような出来事が起こった。
前日、早めに眠りについたにもかかわらず、ぐっすりと眠って十時過ぎに起床した俺は、起きてすぐ携帯を手に取った。
メールが来ているのに気付く。慌てて開くと、屋上さんからのものだった。十五分ほど前のもの。
心臓の鼓動がやけに騒がしいことに、気恥ずかしい気持ちを覚えながら本文を読み進める。
内容は単純で、近々後輩の誕生日が来るため、プレゼント選びを手伝って欲しい、という内容。
二人でお出かけしませんか、的なお誘い。
「うおお……」
喜んだりする前に、強く動揺した。どうしよう。
とりあえず深呼吸をする。深く息を吸って、息を吐く。
後輩の誕生日って夏だっけ、と考える。思い出そうとしたけれど、記憶に引っかかるものはない。
夏休み中に誕生日が来ていたなら、知らなくても無理はない。
でも、なんで俺なんだろう。
幼馴染とか、妹の方がいいんじゃないだろうか。後輩、女の子だし。
とはいえ、そんなことを言ってせっかくの機会を棒に振ることになるのも嫌だったので、即座に了解の返事を打った。
サチ姉ちゃんはエスパーです。
その日。
俺は朝五時半に目覚めた。むしろほとんど眠れなかった。やけに緊張していた。たぶん受験のときより緊張している。
眠れなかったからといってベッドにすがりついていても仕方ないので、さっさと起き上がる。
準備を終えて時間に余裕ができる。三時間以上。
そわそわする。
「……どうしたの?」
妹に心配される。
「なんでもない」
「なんでもないなら貧乏ゆすりをやめて」
無意識です。
時間になってから、忘れ物がないかを確認して家を出る。一応、決めた時間に迎えに行くことになっていた。
結構距離がある、が、毎日のように三姉妹は歩いてきていたわけで。恐るべし。
幸いなことに、暑さはそこまでではなかった。
相変わらずでかい家だった。
玄関でインターホンを鳴らす。やっぱり緊張する。でも押さなきゃならない。怖い。ジレンマ。
呼び出しベルが鳴った後、家の中からどたばたという物音が聞こえた。
がらりと引き戸が開いて、なかば飛び出すみたいに屋上さんが出てくる。
「……どうも」
「あ、うん」
言葉が途切れる。
なんか言わなきゃ、的な空気が飽和する。
でも、互いに言葉はない。
困った。
というか、困っている。
そういえば屋上さんとふたりきりになるなんて久々なわけで。
一緒に出かけるなんて初めてなわけで。
そう考えると目すら合わせられない。彼女の方を見るのが怖い。
なぜか普段と雰囲気が違って見えるし。
なんかこう。
……どうしたものか。
持て余す。いろいろ。
ずっとそうしていても仕方ないので、とりあえずモールに向かって歩く。言葉がない。
何を言えばいいやら。
今までどんな話をしていたんだっけ。
……平然とセクハラまでしていたような。
何者だ、以前の俺。
ていうか、ぱんつまで覗いてたような。
……なんだろうね、この気持ち。
なんていうか、昔の自分に腹が立ってくるよね。おまえ、どんだけ調子乗ってんだ馬鹿野郎っていう。
見詰め合ってなくても、素直におしゃべりできません。
馬鹿みたいだけど。
モールに着くまで、結局会話らしい会話はほとんどなかった。
「何か考えてるのはあるの?」
「え?」
「プレゼント」
「あ、ああ」
突然話しかけたからか、屋上さんは少しきょとんとしていた。
「何も考えてない」
「……何も考えてないのに、とりあえずモールに来たの?」
「……うん」
深くは追及するまい。
とにかく、店を回る。後輩の趣味を屋上さんに訊ねながら店を回る。
「ぬいぐるみとか好きかも」
まじかよ。
予想外でした。
「鞄に小さめのストラップ付けてる。いつも」
そういえばそんなのもあった気がする。
ちょっと想像してみる。ぬいぐるみ的ストラップをつけた鞄を背負う後輩。
――なんか普通にスタイリッシュだ。チューインガム噛んでそう。
もう何をやってもスタイリッシュなんじゃなかろうか、あの子。
ともかく、小物が置いてある店とか、ぬいぐるみ系統の店とかを回る。
男の居心地の悪さは女性向け服飾店にも劣らない。
適当に歩いてみるものの、これだというものは見つからないらしい。
仕方ないので他の案を探すついでに店を回ってみることになった。
雑貨屋。マグカップ、写真立て。このあたりは経験則的に悪くないが、誰かに贈ったものを提案するのも気が進まない。
ああでもないこうでもないと言い合いながら、いろいろ見て回る。
結局目ぼしいものが見つからないまま昼になり、とりあえず昼食をとることにする。
フードコートのなかのハンバーガーショップ。学生の財布にやさしい場所。
妹ときたときとまるで同じルートって、自分の行動範囲の狭さを自分で示しているような。
なんとなく生まれる後ろめたさ。
いや、深く考えないようにしよう。
対面に座ってハンバーガーをかじる屋上さんの顔を覗き見る。
特に退屈ではなさそう、では、あるのだが。
気を遣う。
なんか、こう、ねえ。
下手打ってないかな、とか、まずいことしてないかな、とか、失敗してないかな、とか、全部同じ意味なんだけど。
気付くと、屋上さんがこっちを見ていた。
「……なに?」
「え?」
「見られてると食べにくい」
「あ、はい」
無意識でした。
とはいえ。
どこに目を向けたものか困る。普段はどうしていたんだっけ。
ああなんかもう、おかしくなってる。
軽い食事を終えた後、次はどこの店を回ろうかと考えはじめたところで、屋上さんがゲームセンターで足を止めた。
UFOキャッチャー。
たしかにぬいぐるみはあるけれども。
以前の失敗が頭を過ぎる。今はタクミもいないのです。
でもまぁ、仕方ないので筐体に小銭を突っ込む。
「え」
と屋上さんは変な声をあげた。
「どれ?」
「いや、いいって」
「もう入れちゃったし」
「……それ」
彼女が指差したぬいぐるみの位置を確認する。
難しくはない、が。
一度やってみるしかない、と思う。
失敗する。
屋上さんが居心地悪そうに体を揺すった。
「こういうのは最初に一、二回失敗するものなのです」
本当はあんまり詳しくないけど、それっぽいことを言う。
また硬貨を投入する。二度目。失敗する。位置と向きが変わる。
三回目。取る。
「はい」
ぬいぐるみを受け取るまで、彼女はずっときょとんとしていた。
「エアホッケーしようぜ!」
ついでだから誘う。あっさり負けた。
他の店を適当に見て回る。特に心惹かれるものもなく、無難に浮かぶものもない。
役に立ててるんだろうか、俺。
「なんも思いつかないっす」
「うん」
無口になる。なんか言わなきゃ、的な雰囲気。でも言うことねえや。
なんかもう、ね。
何を言えばいいやら。今までどんな話をしていたやら。
ちょっとした会話はあっても、話が弾むことはない。
居心地悪いわけではないんだけど。
これはこれでいいのかもしれないけど。
あと一歩、という感じの。
結局、特に何があるわけでもなく、夕方近くに帰ることになった。
並んで帰る。ひょっとして今じゃね? って思う。
何かを言うにはちょうどいい時間。
どうしたものか。隣を歩く屋上さんは、UFOキャッチャーで取ったぬいぐるみを抱えて視線を落ち着かないように彷徨わせていた。
考え事をしながら歩く。
それでも結局、何もいえない。肝心のところでダメ人間。
あーあー。
どうにかせねば、と焦る。なんか言わなきゃ。
会話がないまま道を歩く。夕方。トンボが飛んでる。蝉の声。
どうしたものか。
距離を測りそこねている。
屋上さんの家につく頃には、四時半を回っていた。
なんか言わなきゃ、が、ずっと頭の中でぐるぐる巡っている。
そうこうしているうちに、屋上さんは一歩踏み出した。
「それじゃ」
短く言って、彼女は歩いていってしまう。
ああもうめんどくさい。言っちゃえよ。
衝動に従う。
「ストップ」
屋上さんは戸惑ったみたいに立ち止まった。振り返った彼女の表情が、今までで見たことのないものに思える。
さて、何でもありません、とは行かない。
何かを言わなきゃならない。
とはいえ。
どう伝えたものやら。
「あのさ」
ひとまず何かを言おうと口を開く。
でもダメだった。何も浮かばない。混乱する。言いたいことは明快なはずなのに、言葉が出てこない。
自分が、怖がっていることに気付いた。
心臓が鳴る。どうしたもんか。正面から屋上さんの顔を見ることができない。どうしようもない。
「あのさ」
……繰り返しになる。
馬鹿みたいに見えるかもしれない。
でも、仕方ないんです。
告白なんて初めてなんです。
「あー」
何も言えなくて、焦る。時間だけが過ぎていく気がする。このまま何も言えずに、彼女が帰ると言い出してしまったらどうしよう。
ていうか、仮に言えたって、振られるかもしれないわけで。そっちのほうがむしろ可能性としては濃厚だ。
「ごめん、ちょっとまって」
彼女は困ったみたいな顔で頷いた。表情が少し強張っている。緊張が伝染したのかもしれない。
逃げたい。
嫌な想像ばかりしてしまう。
変な汗をかいてる。どうしよう。
「おまえ、考えすぎるタイプだもんな」
頭の中で、誰かが言った。
そうなんです。
考えすぎて、足を取られて、身動きが取れなくなるタイプなんです。
好きだ、っていうのは、なんか偉そうだし。
好きです、っていうのも、なんか馬鹿らしいし。
付き合ってください、だと、意味が通じないし。
でも、完璧な告白文なんてものがあれば、みんながそれを使う。
結局、どれを選んだって、自分の気持ちをそのまま表現することなんてできないのだ。
壊れるほど愛しても三分の一も伝わらないわけですし。
だったらとりあず、後先考えずに言葉にしてみるしかない。
「好きだ」
言った。
時間が止まった気がした。
そのまま続ける。
「付き合ってください」
なんか間抜けだった。
でもしょうがない。言うしかなかった。
屋上さんは間もおかず、
「は、はい」
即座に返事をした。
「……え?」
「え?」
お互い、きょとんとする。
いやなんつーか。
反応早すぎじゃね?
こういうのって、永遠にも思える五秒、とかそんなんじゃないの?
なんか、一秒なかったんですが。
というか、「付き合ってください」の「さ」のあたりで既に「はい」って言ってたんですけど。
「……え、あ、いや、え、なに?」
屋上さんも屋上さんで、俺がなぜ硬直しているかが分からないらしく、混乱していた。
「……ひょっとして、返事する準備してた?」
「え、あ……」
彼女は「ああ」とか「うう」とか唸りながら顔を真っ赤にして俯いた。
いやなんつーか。
「……うん」
雰囲気でだいたい感じ取れるものなのかもしれないけど、もし違う話だったらどうするつもりだったんだろう。
いつのまにか、さっきまで全身を支配していた緊張がどこかに消えていることに気付く。
この人には敵わない。
「えっと、それってさ」
とりあえず、話をまとめてしまおう、と口を開く。
「つまり、その……」
口に出すのが照れくさくてどうにもまずい。
言ったあと、実は違う意味でした、みたいに言われたら、目も当てられない。
また緊張する。
「うん」
屋上さんは、今にも逃げ出してしまいそうなほど真っ赤になって、小さな声で頷いた。
「その」
どうにか、必死に言葉を寄せ集めるみたいな顔をして、
「よろしく、おねがいします」
告げた。
なんていうか。
なんていうか。
なんだろう、この可愛い生き物。
「えっと。……こちらこそ?」
現実感がない。
はっとして、夢オチを疑う。
頬をつねる。
「……なにやってんの?」
呆れられる。
痛かったけど、痛いからって現実とは限らない。
どうしましょうか。
頬が勝手に持ち上がる。
「いや、どうしたもんかねこれ」
手のひらで自分の頬をこね回して表情を戻そうとする。でも、どんなに抵抗しても無駄だった。
どうしたものか。
不意に、屋上さんが笑った。
「顔、真っ赤だけど」
お互い様です、とは言わないでおいた。
なんかもう夢でもいいや。
でもやっぱ夢じゃ嫌だ。
頭が回らない。
その日、どのタイミングで屋上さんと話すのをやめて、どのように家に帰ったのかがどうしても思い出せない。
そのあとの記憶がひどく曖昧で、次に目をさましたとき、ひょっとして全部夢だったんじゃないかと疑った。
あんまりにも不安になったので、屋上さんにメールを送った。
――昨日の出来事は夢でしたか?
返信は少し遅かった。
――夢じゃないみたいです。
夢ではないらしい。
乙!
もう終わりか……濃い2週間ちょいだった……あ、後輩は貰っていきますね
もう終わりか……濃い2週間ちょいだった……あ、後輩は貰っていきますね
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