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元スレ幼馴染「……童貞、なの?」 男「」.
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>>753
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いいか、このスレ埋めちまえば、次スレいかざるを得ないだろ?
パートスレたったら早々には終われないはずだ
パートスレたったら早々には終われないはずだ
>>758
1000行ったら放置。なんて終わり方もあるしな
1000行ったら放置。なんて終わり方もあるしな
恋は唐突なものだとよく言うけれど、大抵の場合は恋心に気付く瞬間が唐突なだけだ。
恋自体は既に存在する、という場合が多い。
そんなようなことを誰かから聞かされたことがある。
たぶん、小学校の頃ひそかに憧れていた近所のサチ姉ちゃんだ。当時十六歳。
今は二十三歳くらいだろうか。まだまだ若い。
美人で綺麗で黒髪ロングヘアだった。
男が好きそうな仕草をわざと選んだりしていて、自分の可愛さを分かってる感じがあった。
黒髪ロングヘアも狙っていたところがありそうだったが、かといってそのことが男の気持ちを醒ましたかというとそうではない。
むしろ学校では人気があったらしい。
県内でも有数のバカ高校に通っていた彼女の周囲にいる女と言えば、茶髪、マスカラ、ピアス、煙草、酒好き。
あるいは、陰気、野暮眼鏡、オタ女、腐女子(特に最後の種族は机の中に男子を必殺する薄い本を保管している)。
好きになろうとするなら数週間にわたるコミュニケーションが必要になるタイプが多かった。
そんな中、多少あざとくは見えても、男子から見ても「可愛い」女子であるサチ姉ちゃんはまさに掃き溜めに鶴。
女に縁がない男たちが亀の頭をもたげて鶴たる彼女に求愛した。後に言う鶴亀合戦である(てきとう)。
そんな彼女に俺が夢を見れていた時間は、一週間もなかった。
サチ姉ちゃんは俺を、薬局の入り口に置いてあるカエルの置物か何かと勘違いしていたらしい。
いわば愚痴聞き機。腹を割った付き合いといえば聞こえはいいが、大概の本音なんて聞くに堪えない。
たまに帰り道で見かけたとき、彼女はクラスメイトと思しき男子(茶髪・雰囲気イケメン)を連れていたことがあった。
その次にサチ姉ちゃんと会ったとき、俺はその男子に対する文句や愚痴を延々と聞かされるのである。
息が臭いとか髪が長くてうっとうしいとか自意識過剰で気持ち悪いとか勘違い野郎とかそういう類の言動を。
夕方に公園のブランコにまたがって、日が暮れるまで。
子供だった俺には彼女の気持ちなんてろくに分からず、
「そんなに嫌なら、はっきり嫌だって言えばいいんじゃないの?」
と、突き放そうとしたことも一度や二度じゃない。
そのたびにサチ姉ちゃんは、
「歳をとったら君にも分かる」
少し強張った声でそう語った。
たしか、あれは暑い夏の日のことだったと思う。その日の彼女の言葉がやけに印象に残ったのだ。
「だいたいさ、おかしいのよ。ぶりっ子ぶりっ子って、ぶりっ子のどこが悪いのよ」
彼女は心底不満そうに毒づいた。
「どうせ人と関わりあっていかなくちゃならないんだから、嫌われるより好かれたほうが都合いいじゃない!」
魂の叫びだった。
男を舐め腐ったような安い上目遣いにも、彼女なりの理念があったのだな、と考えさせられた。
「可愛く見せて何が悪いっつーのよ! 何の努力してないよりマシでしょ!? むしろ努力しないで彼氏欲しいとか言ってる奴はどんだけ自分に自信があんのよ!」
その言葉だけはやけに俺の心を打った。
自分をよく見せようとするのも、理にかなったことなのかもしれないな、と。
そう思えば、身だしなみを整えたり、髪形を気に掛けたり、やけに鏡を確認したりするのも、自然に思えた。
単なるナルシズムではなく、自分に自信がないことの表れだったのかもしれない。
今でも数ヶ月に一回くらい、サチ姉ちゃんと街で遭遇することがある。
近所にある寂れたコーヒーショップに入って、気取った古臭い環境音楽をバックに、彼女の愚痴を聞かされる。
そして彼女は、いつも最後に、「ごめんね」「ありがとう」と二つの言葉を並べる。
たぶんそれが彼女なりの礼儀なのだろう。
なぜこんなことを今思い返しているかと言うと。
ひょっとしてこれが恋か? 的な感情が俺の胸の中で急激に膨らみ始めたからである。
三姉妹と幼馴染とタクミが我が家に泊まった翌日のこと。
雨はまだぽつぽつと降り続いていたけれど、風はだいぶ弱くなった。
それでも誰も家には帰ろうとせず、ただ時間が流れるのに任せて、取り留めのない話を続けている。
気持ちは分かる。
泊まりの翌日の寂しさ。
友達の家に泊まったことがないのでそんな気持ちは分からないけれど。
なんとなく想像はつく。
だから、あんまり急かすことはないだろうと考えていた。
のだが。
一晩泊まって怖いものなしになったのか、皆が我が家に馴染んだようで、やたら無防備になっていた。
くわえて、雨のせいで窓が開けられず、蒸し暑い。おかげでみんな薄着。
正直目のやり場に困る。
るーは薄着すぎて、ちょっと動くたびに見えてはいけない部分が見えそうになった。
小学生相手なのでさすがに困ったことにはならないが、それでも動揺はしてしまう(童貞だから)。
後輩はさすがにしっかりとしていて、姿勢や服装が乱れることはなく、むしろ周囲を諌める立場だった。
それを残念に感じてしまうあたり、俺という人間の低俗さがよく分かる。死ねばいいのに。
幼馴染と妹は服装からしてアウトだった。ノースリーブ。その時点でなんかもう挑発してるんじゃないかって気になる。性癖。
幼馴染は暑さに耐えられなくなったようで、髪を結んだ。
正面にいたため、腋が見える。
何かに目覚めそうになる。
マエストロが腋とか膝裏とか騒いでたことを思い出した。これか。
髪を結ぶと今度はうなじが見える。
女って怖い。魔性。
妹はみんなにお茶を出したりしていた(なぜか熱いお茶を飲みたくなって、みんなにも入れた。暑い中で飲むと意外に美味い)。
よく動くせいで、服があんなことやこんなことになる。
具体的に言えば、屈んだ拍子に胸元から下着が見えたりする(が、毎年のことではある)。
エロス的な意味ではなく、背徳感から心臓が揺さぶられる。
意外な成長が垣間見えたりするのも、それに一役買っていた(気付くと意識させられる)。
屋上さんはというと、特に動くわけでもなく、ソファに座っている。
疲れたのは、あるいは気を回すのが馬鹿らしくなったかは分からないが、彼女は昨日寝たときと同じ格好をしていた。
シャツ、ジャージ。
ジャージのハーフパンツって、なんというか、こう、一種の魔力を持っていて。
しかも、彼女の姿勢がその魔力を強めた。
体育座りというか三角座りというかはどうでもいいが、それに近い座り方をしている。
実際に見てみると分かるものの、正面からだとやたら太腿がまぶしい。
こうしていろいろ考えると、なんだか嫌な方面でばかり自分が大人になっていくのを感じる。実質的にはまだまだ子供なのに。
とにかく、そんな光景がリビングの至るところで繰り広げられるわけで。
やたらと胸がときめく。どきどきする。
これが恋か、と微妙に納得した。
なんだろう、この、もどかしいような心地良いような気恥ずかしいような感覚は。
恋です。
雨が止んだので、コンビニにジュースを買いにいくことにした。
一人で行こうと思っていたら、屋上さんがついてくる。
「……その格好で?」
「ダメかな」
ダメじゃないけど、それじゃほとんど寝巻きです。
仕方ないので俺のジーンズを貸して着替えさせた。
「なんか服借りてばっか」
「なんかまずいですか」
「着心地悪くないし、別にいいよ。ていうか、お礼言う側だし、私」
最近、屋上さんの態度が微妙に軟化している気がする。
言動が優しくなってる。
最初はあんなに無愛想だったのに。
まさかただの人見知りだったとか。
微妙になつかれてしまった感がある。
猫的な。
家を出るとき時計を見ると、まだ九時にもなっていなかった。
いつの間にか雨は上がっていた。灰色の雲が裂けて、太陽の光が遠くに差し込んでいる。
天使の梯子。何かの本で読んだ。
幻想的ではあるのだけれど。
ふとした瞬間に目の当たりにすると、少し寂しい気持ちにさせられる。
それは綺麗というより、悲しげで、示唆的だ。儚さの。だからあんまり好きじゃない。
コンビニを目指す途中で、屋上さんは不意に足を止めた。どうしたのかと視線の先を追うと、公園がある。
「どうしたの?」
「いや、うん」
昔ここで遊んだな、って。屋上さんはそう言った。
「え?」
「え?」
「昔って、いつの話?」
「……小学校入るまえだから、四、五歳の頃だと思うけど」
「四、五歳の頃?」
その頃なら、俺と幼馴染もここに来て遊んでいたはずだ。
ひょっとして、と思う。
まさか、と思う。
記憶がおぼろげで思い出せない頃だから、とても困る。
確信がもてない。
祖父母の家に預けられていたのが、三、四歳の頃。
五歳の頃には母が面倒を見ていた。
俺は母に連れられて、幼馴染や妹と一緒にこの公園に来ていた。
そこで、屋上さんに会ったことはなかっただろうか?
――三度。
見知らぬ女の子と一緒に遊んだ記憶があるような。
何をして遊んだかはよく覚えていないけど、たしか、結構仲良くなって、そして、ある日、来なくなった。
「屋上さん、小学校はどこだったの?」
「親戚の家から」
彼女はそこで一拍置いた。
「小一から中三まで、親戚の家」
その答えを聞いて、少しのあいだ考え込んだ。
そして驚愕する。九年間。
俺はそれまで考えていたことを横において、その年数に愕然とした。
「その頃、るー、生まれたばっかりじゃん」
「あー、うん」
彼女は困ったみたいに笑った。
「実は、また一緒に暮らすようになったのも、今年の頭からだから」
その言葉で、自分が馬鹿な質問をしたことに気付いた。
いつのまにか踏み込んでいた。我を忘れて、距離をとるのを忘れていた。
失敗した。
謝ろうかと思って、やめる。そうするのが嫌だったからだ。
俺を落ち込ませようとか、謝ってほしいからとか、そういった理由で彼女は質問に答えたのではない。
謝ってしまうのは、とても身勝手に思えた。
そもそも質問自体が身勝手だったのだけれど。
あまり暗くなってもしかたない。
もう何も訊かないことにして、自分の中の感情に区切りをつけた。
俺は失敗もするし嘘もつくけれど、できるかぎり失敗しないように努力しているし、嘘をつかないでいようと思っている。
一度した失敗は二度と繰り返さないように努力する。それでも失敗することもあるけれど、そのときはさらに注意する。
そういうふうにありたいと思っている。
馬鹿らしいかもしれないけど。
似たようなことを繰り返さないように心に留めながら、考える。
気付くと歩調がずれはじめていて、彼女は俺の少し先を歩いていた。
「ねえ」
声をかけると、屋上さんは不思議そうな顔で振り返った。
「俺と結婚の約束ってした?」
まさかな、と思いながら訊く。
声が微妙に震えているのは、気のせいだと信じたい。
「約束はしてないけど、申し込まれた」
「いつ?」
「こないだ」
「……バーベキューのときですか?」
「うん」
まぁそうだよな、と納得する。
さすがにそんな少女漫画みたいな展開はない。
まさか、そんな、ねえ?
それに。
そんな約束、もししてたとしても、今となっては時効なわけで。
いつまでも気にする方が馬鹿げてる。
誰も覚えてないことだし。
うん。
「でも、そういえば」
屋上さんは言葉をつないだ。
「子供の頃、公園で、近所の男の子と、そんな話をしたような」
……まさか、そんな、ねえ?
でも。
この近所、俺たち以外には同年代があんまり住んでないんですけど。
コンビニで買ってきたアイスをみんなに配る。るーとタクミはひとつのアイスを取り合って喧嘩していた。
最終的に分け合うことになったらしい。素敵な話。泣けてくる。
椅子に座って買ってきたジュースを飲む。後輩が話しかけてきた。
「ちい姉と、何話してきたんですか?」
「何って、結婚の約束の話だけど」
俺は正直に話した。
「まじで?」
後輩の言葉から敬語が取れた。
俺には聞き返される意味が分からない。
「マジでも何も」
そのままの意味です。
「兄さん」
妹に呼びかけられる。なぜか呼び方が普段と違う。
「その言い方は語弊があると思います」
なぜか敬語がついていた。
「正確に言ってみてよ」
「……屋上さんが、子供の頃、近所の男の子と結婚の約束をしたことがあるそうな」
へえ、と後輩は感心したように頷いた。
なんだったんだ、さっきの態度は。
「現実にあるんですね、そういうの」
え、ないの?
――とはさすがに言えず。
「あるみたいだね」
他人事のように返すことしかできなかった。
「私たちもあるしね」
妹が不意に言った。
「誰と?」
「お兄ちゃん」
「……まじで?」
「まじで」
まじでか。後輩がからから笑っていた。どう反応すればいいか分からない。
「お嫁さんにしてくれるって言った」
「言ったっけ」
「言ったのです」
子供の頃の俺っていったい何者だったんだろう。
深く考える気にはなれなかった。
だらだら過ごしても仕方ないので、昼過ぎに出かけることになった。といっても、またファミレスなのだが。
全員で座る。七名。大人数向けの席に案内された。
注文を済ませる。家の中にいると忘れそうになるが、外に出ると夏を感じる。
夏休みも、半分近く消化した。そこそこ充実した毎日だったんじゃないだろうか。
課題も終わらせたし、憂いはない。
後は遊ぶだけなのだが、最近は遊びに行くというよりも、みんなでがやがや騒いでいるばかりだ。
というか、だいたいのイベントは消化してしまったため、何をして遊べばいいか分からない。
残っている目ぼしいイベントなんて、夏祭りくらいしかなかった。
どこにいたって、七人もいると、話に入れない奴は出てくる。
俺だ。
幼馴染、妹、屋上さん、後輩、るー、タクミ。
それぞれ二つぐらいに分かれて話をしている。
混ざろうと思えば混ざれなくはない、が、なんとなく憚られる。
仕方なくドリンクバーに立った。どれにしようかと悩んでいると、肩を叩かれる。
振り返ると茶髪がいた。
「よう」
声を掛けられる。
「よう」
驚きながらも返事をする。
茶髪の後ろには、部長もいた。
ホントに仲いいんだ、この人たち。
せっかくなので一緒するかと思って、席に連れていく。
追加注文。昼時の忙しい中、店員さんには申し訳ないことをした。
「なに? この人数」
茶髪はまず最初にそこに触れた。七人。子供二人、女四人、男一人。そりゃあ戸惑う。
「この女たらし」
不本意なあだ名をつけられた。
茶髪と久しぶりに話をすると、なんだかひどく落ち着く。
部長はメロンソーダをすすりながら俺と茶髪の話を聞いて、時折口を挟んだ。
話の内容はもっぱら会わなかった間のことで、どんなことがあったのかとかを互いに話した。
茶髪はろくに出かけなかったし、ろくに課題もしていない、と言う。
彼女は自分がバーベキューに誘われなかったことにひどく憤っていた。たしかに好きそうだけど。
部長の方もほとんど同じだったようだ。とはいえ、勉強などは忙しかったらしいが。
食事を終えてさあ帰るか、となったとき、彼女ら二人も俺の家に来ると言い出す。
……九人。
多ければいいってもんじゃない、と俺は思う。
結局その日は夕方まで騒いだ。
遊んだり喚いたりしながら時間を過ごし、帰るときにはみんな疲れきっていた。
夜、数日後に夏祭りが迫っていることを思い出す。
期間は三日間。それが終わると、今度は隣街で大きな祭りがある。
全部行く気にはなれないが、それだけ続くとなると気分が盛り上がるのも仕方ないだろう。
少しだけ楽しみだったけど、今のところ誰とも約束はしなかった。
今のままなら、たぶん、みんなで集まることになるだろうけど。
それを思うと、少しだけ気分が楽になる。次がある、というのは、ある種の安心を産む。
その夜はひどく蒸し暑く、夜中に何度も目が覚めた。起きるたびにキッチンに行って水を飲む。
なんだか落ち着かない。
その日、眠れるまでだいぶ時間がかかった。
ここらへんで夏祭りと言えば、駅前の商店街で開催されるものを言う。
最近では商店街自体が寂れはじめているので、どことなく哀愁漂う祭りではあるが、まぁ地方の祭りなんてそんなものかもしれない。
商店街全域に出店が立ち並んでいる。その列はやたらと長い。
人々は浴衣を着たりして、家族や友人や恋人と一緒にやってくる。
やたらと高いカキ氷やらお好み焼きやら焼きそばやらを食べて、「美味しい」という。
商店街から脇道を逸れて街中を歩いてみると、家々の立ち並ぶ道の間に、石造りの水路があることに気付く。
水路が街中を貫いて存在している雰囲気は、なんとなくいい感じ。昔風で美しい。
しかもそれに沿って桜の木が伸びていたり。
歩くと癒される。
夜。
俺たち(七人)は、賑わいだ雑踏から遠くの、そんな道を歩いていた。
祭りに行く人数が多かったので、アキラさんに車を出してもらったのだが、当然、駐車場なんてなかなか空いていない。
そんなわけで、割と遠くで下ろしてもらって、そこから歩いていくことになったのだ。
ちなみにアキラさんとユリコさんは今日は二人で夏祭りを楽しむらしい。仲が良いのはよいことだ。
女子勢は浴衣率が高かった。
着ていないのは屋上さんと後輩の二人。妹と幼馴染はせっかくなのでと浴衣を着ていた。
巾着まで持って草履まで履く徹底ぶり。懐からがま口財布でも出しかねない。
空には月が出てきたが、街灯の明かりが周囲を照らしていた。
なんとなくしんみりする。
るーとタクミは祭りに行くのが楽しみで仕方ないらしく、ずっとは騒いでいる。
それを見て、後輩と幼馴染があんまりはしゃいで、はぐれないように、と諌める。
妹と屋上さんはその少し後ろを歩いている。少しずつ馴染んでいるようで、ふたりだけでも話をするようになった。
いまいちどんな話をしているのかは想像できないのだけれど。
出店のある通りに辿りつく。人の話し声が連なって、周囲を覆っていく。
ともすれば隣を歩く人の声も聞こえないような喧騒。
通るのに難儀するほどではないものの、それでも多くの人が祭りにやってきていた。
浴衣を着ていたり、水ヨーヨーを持っていたり。
射的だのくじ引きだのが並んで、広場ではステージの上で和太鼓の演奏がされていた。
食べ物を食べたり、ステージを眺めたり、遊んでみたり。
女性陣がタクミとるーを連れて盛り上がったので、俺はひとり置き去りになる。
こういうときのテンションだと、あんまり話に入れない。なんとなく。
仕方ないのでフランクフルトやアメリカンドッグやチョコバナナやお好み焼きをひとりで食べた。
すぐに腹がつらくなった。
「なにやってんだ俺は……」
もはや自身を犠牲にしたギャグにしかならない。
出店の中には普段見ないようなものもあった。
最たるものとして、飴細工が挙げられる。割り箸大の一本の棒に、干支の動物の形をした飴を作って売る出店。
注文を受けてから作り始めるため、待ち時間は長いが、物珍しさも相まって人は列を作る。
るーとタクミが欲しがって、長時間待たされることになる。
出店なんて多少は待たされるものだし、そうすることが祭りのメインなのだから、あんまり苦にはならない。
慌てたっていいことはない。
人波の中を歩いても、夜なので少し涼しい。
買ってきた飴を舐めながら、ふたりは笑いながら歩いていた。なんか癒される。
でも。
後輩と幼馴染はその少し後ろを歩いていて、
妹と屋上さんは、さらに後ろを歩いていて、
俺は、一番後ろを一人で歩いている。
なんだかなぁ、という気持ち。
結局、集団の中にいても、俺は取り残されている気がする。
馴染めていない気がする。自分だけ。
置いてけぼりの気持ち。
子供っぽい疎外感。
綿飴でも食うかな、と思って立ち止まる。
携帯があるし、はぐれたらはぐれたでなんとかなる。
出店に並んで、綿飴を頼む。
少し待たされる間、手持ち無沙汰になる。
そのとき、服の裾を引かれた。
「なにやってんの?」
屋上さんがやたらと近くにいた。
遠くでみんなも立ち止まっている。
なんだろうねこれは。
この微妙にうれしい感じ。気恥ずかしい感じ。なにやってんだ俺は、という感じ。
「綿飴、私も欲しい」
屋上さんがそういうので、二つ目を注文する。ちょっと待って、受け取って、一緒にみんなを追いかける。
なんか。
ちょっとうれしかった。
置いてかれてないや、っていう。
まぁ、それだけのことなのだけれど。
ちょっとどきっとした。
そろそろ帰る頃合かな、と思って引き返そうとすると、妹が屈みこんだ。
「どうした?」
と、見てみると、草履の鼻緒に擦れたのか、指と指の間が赤くなっていた。
「痛い」
まぁ、こういうこともある。
「ほれ。おんぶ」
「なんで?」
「痛いんだろ」
「でも浴衣だし」
「……何か問題が?」
「恥ずかしいです」
埒が明かないので、強引に負ぶった。
「この馬鹿兄。周りの目を少しくらい気にしろ」
なぜか怒られる。
後輩が微笑ましそうにこっちを見ていた。
……なんで一番年上みたいな雰囲気をかもし出しているんだ、あいつは。
どうせ駐車場までだし、ちょっとくらい我慢してもらおう。
来た道を遡って駐車場に戻る。大人ふたりには幼馴染が電話した。
なんとなく落ち着かない。
「どうしたの?」
そわそわしていると、背中に乗る妹に声を掛けられた。肩越しに返事をする。
「浴衣って帯とかで胸が当たらないもんだと思ってたんだけど、意外と当たるんだな」
「最低だこの兄」
比較的真面目な意見です。
それでも妹は、強引に離れようとはしなかった。疲れてるらしい。
しばらく歩くと、不意に背中にかかる重みが増した。
寝たっぽい。
「……この状況でよく寝れるなこいつは」
呆れる。
三分かからないって。
世界中の赤ん坊がこうだったら、育児ノイローゼも半数がなくなるだろう。
駐車場につくと、ユリコさんたちは既に車に乗っていた。
帰りの道の途中で、るーとタクミは眠ってしまった。
妹も目を覚まさないまま幼馴染の家につく。アキラさんは家まで送ると言ってくれたが、近いので断ることにした。
屋上さんたちはアキラさんに送られていくことにしたらしい。それがいい。
別れ際、屋上さんと目が合った。
なんか、変な気持ち。
そわそわする。
家に帰って妹をベッドに寝かせようとしたところで、浴衣のままではまずいだろうと気付く。
どうすることもできないので、とりあえず起こすことにした。
妹はしばらく眠そうにしていたけれど、やがてしっかりと起きたようだった。
自室に戻ってベッドに倒れこむ。
疲れた。
人の多いところはあまり得意じゃないし、騒がしい場所にいると混乱する。気疲れもあった。
でもまぁ、楽しかった。
明日も行ってみようかな、と思う。
全身がほどよく疲れていたら、その日は心地良く眠ることができた。
>>1
次回作書くなら是非教えてください!乙でした
次回作書くなら是非教えてください!乙でした
屋上さんがどんどん強くなっていってるなww
乙楽しみに待ってる
乙楽しみに待ってる
高校の終わりから大学の始めにかけて、作中と似た二択を迫られたことがあった。
結局俺は作中で言うところの幼馴染と付き合ったけど、二年ほどで別れてその後音信不通(俺が東京の大学行ってそのまま就職したせいもあるが)
作中で言うところの屋上さんとは、付き合うことはなかったが今でも友達付き合いが続いてる。さすがに今更付き合ってくれとは言えない。
人生どうなるか分からんもんだ、ということをしみじみ思い出した。
結局俺は作中で言うところの幼馴染と付き合ったけど、二年ほどで別れてその後音信不通(俺が東京の大学行ってそのまま就職したせいもあるが)
作中で言うところの屋上さんとは、付き合うことはなかったが今でも友達付き合いが続いてる。さすがに今更付き合ってくれとは言えない。
人生どうなるか分からんもんだ、ということをしみじみ思い出した。
まさかの幼馴染だとおもったら屋上さんだったオチ
やっぱ屋上さんかわええなぁ
そして妹の胸の感触を楽しむ男ェ……
やっぱ屋上さんかわええなぁ
そして妹の胸の感触を楽しむ男ェ……
>>797
リア充爆は(ry
リア充爆は(ry
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