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    元スレ麦野「ねぇ、そこのおに~さん」

    SS+覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★★×4
    タグ : - 黄泉川 + - むぎのん + - コラッタ + - バカテス + - フレンダ + - ブリス + - 上条 + - + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    901 :

    男達がとても良いww
    ていとくんマジイケメン

    902 :

    ていとくんのかっこつけマンめ!

    903 = 887 :



    ていとくんになら…

    904 :

    ていとくんにも穴はあるんだよな・・・

    905 = 900 :

    おまえらwwwwwwwここは麦スレだぞwwwwwwwwwww

    でもいじられキャラでも暴走キャラでも敵でもないイケメンていとくんなんて…このていとくんになら抱かれてもいい

    906 :

    麦スレなのにていとくんの方がイイ感じで存在感があるww

    907 = 890 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。垣根帝督のレスが集まっていて少し驚きましたが、とても嬉しいです。

    それでは夜の投下を始めさせていただきます。

    908 = 890 :

    ~第十九学区・建設途中の高速道路~

    麦野「…謝らないわよ。こんな所まで付き合わせといてなんだけど」

    滝壺「いいよ」

    アイテムの隠れ家から姿を消した二人はゴーストタウン同然の第十九学区のハイウェイ上にいた。雨上がりのアスファルトを踏み鳴らして。

    滝壺「むぎののいる場所が、わたし達の居場所だから」

    麦野「…そう」

    パチャッと水溜まりを蹴りながら麦野が消え入りそうな声で呟いた。
    麦野の内面はもう滅茶苦茶だった。ヤケになって隠れ家を飛び出し、引き止めようとした滝壺まで振り回して連れてきてしまった。『どこにもいかないから』と言う保険代わりに。

    麦野「(無くしちゃったな。私だけの居場所)」

    無論『アイテム』は麦野の帰る場所だ。『アイテムのリーダー』麦野沈利として。『レベル5の第四位』として。しかし

    麦野「(もう“麦野沈利”はどこにもいない)」

    上条当麻と出会ってから正気と狂気の振り幅が増した。それは人間としてプラスであっても、超能力者として…暗部の人間としては致命的なマイナスだった。
    そして今回の暴発は…自分と同じレベル5でありながら表の世界で光を浴び、挙げ句自分とは違った角度で上条に接する御坂美琴への――全てへの嫉妬だ。

    麦野「笑ってくれていいわよ滝壺?許してあげる。天下の第四位麦野沈利様の弱った姿をライブで、アリーナで見れるアンタは幸運よ?」

    滝壺「むぎの…」

    麦野「たかがレベル0の無能力者に負けて、浮かれて、のぼせて、叩きのめされて、あのクソッタレの第三位の前であのザマだ!あっははっははははっはっはは!」

    滝壺「むぎのやめて!」

    見上げる星空。彼方にあって瞬く星辰。闇の底でもがき、足掻く、打ちのめされる自分を見下ろし嘲笑うように。大仰に両手を広げて口角を吊り上げる。

    909 = 890 :

    麦野「笑えよ!笑えよ滝壺ォォォッ!愉快だろ傑作でしょねえ滝壺ォオ!なんだこのザマはぁ?初めて股割られたションベン娘みたいにさあぁぁぁ!」

    堕ちて行くのが気持ち良い。汚れて行くのが心地良い。光が眩しいなら…光も届かない闇の底まで身を投げてやると。

    あの偽善使い(ヒーロー)の手が届かないくらい…深い闇へと。今の麦野は精神的な自殺志願者も同然だった。

    麦野「こんな事ならヤらせてやろば良かったわねえ?まだ童貞食った事なかったからさあ!トラウマになるような初体験でもさせてやりゃあ良かったなぁ滝壺ォオ!」

    滝壺「むぎの…むぎの!」

    麦野「それとも今頃はあの第三位の所かしらねえ!?自家発電覚えたての猿みたいに腰振ってねえ?こんな血で汚れたメンヘラ女よりかは腐れ売女の×××の締まり方がまだしもマシってさぁァ!」

    滝壺「(なら…どうして!)」

    あんな書き置きを残した?すがろうとしたのではないか?どこかで期待しているのではないか?試しているのではないか?

    あんな手掛かりとすら言えない手掛かりで…それこそこの広大な学園都市の中で…たった一人の麦野沈利を見つけ出すような…

    ――そんな…砂粒のように小さな可能性を、奇跡のような物語を…麦野は――

    キキィィィィィィ!

    麦野「!?」

    遠くからバイクのブレーキ音がした。三人乗りの内誰か一人が降りて来る。眩いほどの星明かりが、その人物を映し出す。同様にその人物にも、月明かりに照らされた自分達が見えたのだろう。

    「…迎えに来たぜ、麦野。病み上がりに付き添いがいるって行ったのは…お前だぞ」

    滝壺理后は昔読んだ本の一節を思い返していた。

    「滝壺…ありがとう。向こうに『友達』のバイクを待たせてある…先に行っててくれないか?」

    『闇を覗き込む者よ心せよ。貴方が闇を見つめる時、闇も貴方を見つけている』と

    滝壺「…むぎのを、おねがい…!」

    「当たり前だ!!!」

    910 = 890 :

    フレンダでは助けられない。絹旗では救えない。自分では守れない。麦野の『闇』…それを打ち砕けるかも知れない…『最後の希望』

    麦野「…なんで来れるのよ…なんで来たのよ…なんで来ちゃったのよ!」

    もう奇跡なんてたくさんだ――麦野沈利の中の『闇』が、ついにその萼を剥き出しにした。

    麦野「上条…当麻ァァァ―――!!!」

    上条「麦野…沈利ィィィ―――!!!」

    出会いは偶然だった。再会は必然だった。ならばこの戦いは…運命だった。

    三度目の激突、始まる。

    ~第十九学区・ハイウェイ~

    麦野「なんで!なんでまた来やがった!!なんでテメエはいつも私の前に立ちふさがるんだよォォォ!」

    突き出した左手から無数の光芒が上条目掛けて降り注ぐ。それを叩き落とすように振るった右手が原子崩しを打ち消し、衝突の余波がハイウェイのアスファルトを粉々に砕け散らせた。

    上条「決まってんだろ…お前を、引きずり上げるって…決めたんだよ!!」

    崩落しかける足元を蹴って上条は前に躍り出る。彼我の距離は10メートルもない。横薙ぎに麦野が揮った左手から、幾重にも折り重なった光芒の網の目が盾となり、光の蜘蛛の巣が上条の進路を阻まんとする。

    上条「お前の中の闇から!お前を呑み込もうとしてるこの街の闇から…!」

    麦野が後ろに跳びすさると同時に、光の糸で編まれた蜘蛛の巣が制御を失い爆発する。
    対戦車地雷を軽々と凌駕する威力が崩れかけたアスファルトの欠片を跳ね飛ばし、上条を吹き飛ばす。だが――上条は右手を突き出し、原子崩しの炸裂を最小限に留め尚言い放つ。

    上条「引きずり上げてやるってなァァァァァァ!!」

    麦野「巫山戯るなァァァ!!!」

    911 = 890 :

    それを『偽善』と断じるように麦野が高々と挙げた左手を真っ直ぐに振り下ろす。天空から光の雨のように降り注ぐ原子崩しの一部が、上条の背中を掠め、足元を抉り、右肩に穴を穿ち、膝をつかせた。

    上条「ぐっ…ああ!」

    麦野「私みたいな…人殺しの手掴んで…地獄の底まで堕ちていく覚悟がテメエにあるかってんだよこの偽善者野郎がァッ!」

    イマジンブレイカーがある限りアウトレンジに徹するしかない。だが『線』の攻撃では仕留め切れない。なら――

    麦野「私と!テメエの!住んでる世界が!立ってる場所が!どれだけ違うか能天気にぬくぬく生きてるテメエが考えた事が一度でもあるのか上条当麻ァァッ!」

    原子崩しを細かい『点』…小さな光球へ無数に形を変え、それを一気に『面』として押し出す。ショットガンの性質を併せ持つ光の弾丸が、マシンガンの勢いで上条を押し潰す!

    上条「がああああぁぁぁあ!!」

    麦野「テメェがどんな力を持ってようが関係ねェェんだよォォッ!所詮表の世界の無能力者なんざ、指先一本で100回ブチ殺せんだよォぉぉぉぉぉッ!!」

    麦野の中の闇という食塩水の、結晶部分が剥き出しになったような攻勢。遊びのない正真正銘の殺意。暴走と制御の紙一重の場所にある力全てを以て殲滅する。


    ――しかし――

    上条「…そんなもんかよ、レベル5(超能力者)」

    麦野「!!?」

    上条当麻は…立ち上がる。致死量を遥かに超えた出血を『無視』して

    上条「…こんなもんで…オレの幻想を壊せるって本気で考えてるのか?」

    麦野「…ああそうだねェェ!ならそのネジの緩んだ頭ごと吹き飛ばしてやらないとダァァメだってなあぁ!!!」

    再び光芒が奔る。上条の顔面目掛けて。しかし上条はそれを察知し、半身ずらしてかわす。

    912 = 890 :

    上条「住んでる世界?お前は世界を見て回った事あるのかよ?立ってる場所?――周りを見ろよ!今ここに立ってるだろうが!お前も!!オレも!!!」

    麦野「テメェと私を同じ量りにかけるんじゃねぇええ!!見えてるよ…見えてるわよ当麻…どうしようもないバケモノ(人殺し)とヒーロー気取りのクソガキがねェェ!!」

    即死しなければ物理的におかしいほどの光芒を撃つ、撃つ、撃つ…だが上条の叫びは、歩みは、意志と意志は立ち止まる事を止めない…!

    上条「見えてねえじゃねえか…ちゃんと狙えよ…オマエが浴びる返り血はオレで最後だ…オレで最後にしろ麦野!」

    麦野「…っざけるなぁぁぁ!テメエみたいなガキの血で私が潰してきた命が!壊してきた世界が!このバケモノの命と釣り合うとか思い上がってんじゃねぇぞぉぉぉっ!!!」

    バキッ…バキバキ…

    上条「ふざけてんのはお前だ麦野ォォッッ!!そうやって何もかも諦めて、捨てて、壊して…何が暗闇だ。何が怪物だ。何が超能力者だ…!」

    ミシッ…ミシミシ…

    上条「関係ねえ…関係ねェェえんだよ麦野ォッ!お前がどこの誰で、お前がどんな世界にいるかなんてもう関係ねえんだよォオオオ!!」

    ビシッ…ビシビシ…

    上条「オレは決めたぞ…お前を縛ってる闇も罪も傷も全部全部抱えて…」

    ビキッ…ビキッビキッ…

    上条「お前の全部抱えて引きずり上げてやるってなァァア!!」


    全ての幻想を破壊する右手を繰り出す右手を。

    麦野「なら…こんな取り返しのつかないバケモノを…まだ救えるとか思ってるお前の幻想をぶっ壊してやるよ上条当麻ァァァァァア!!!」

    全ての現実を破壊する左手を突き出す麦野。

    ――決着は直後だった――

    ボゴオオオオオオォォォォォォン!

    上条「!?」

    麦野「?!」

    ハイウェイが、崩落したのだ。

    914 = 890 :

    ~第十九学区・崩落のハイウェイ~

    麦野沈利の目の前で上条当麻が落下して行く。足元から雪崩のように崩壊していくアスファルトと共に。二人の戦いの余波に耐えきれずに。ジェンガを崩すより呆気なく。

    麦野「上条ォォォォッッー!!!」

    その瞬間、麦野の頭を占めていた怪物のうなり声はかつて冥土帰しとかわした会話にすり替わっていた。

    『―――前に彼が言っていたよ?この右手は異能の力しか打ち消せない、だからスキルアウト達にナイフなんて出されたらもう逃げ出すしかないとね?』

    自分とあれほど渡り合った男が、崩落して行くハイウェイから飛ぶ事も、迫り来る瓦礫から身を守る術も持たない無能力者であると言う現実。

    麦野「(こんなか弱い生き物に、私はすがっていたのか)」

    この時、麦野沈利はきっと始めて『上条当麻』を真っ直ぐ見据えた。そこに上条のかつての言葉が重なる。

    『どうでも良かったんだよ。善人だから助けて、悪人だから助けない、そんな区別のせいで目の前で一人の女の子も助けられない、オレはそっちの方が嫌だ。だったらオレは――偽善者でいい』

    そう。麦野が描いていた上条当麻(ヒーロー)だった。幻想(あこがれ)だった。今墜ちて行く上条こそが――『現実』だった。

    無能力者という蔑みと共に見下ろすでもなく、ヒーローという憧れと共に見上げるでもない、ただの『上条当麻』を…今麦野沈利は始めて対等の目線で見つめた。

    『オレは誰かを助けられる――偽善者でいい』

    なら

    私も

    偽善者でいい

    アンタと同じ

    ―――偽善者でいい!!!

    麦野「当麻ァァァァァァァァァァアア!」

    その瞬間――麦野は、翔んだ。

    915 = 890 :

    麦野「当麻ァァァァァァァァァァアア!」

    壊すことしか知らない左手を伸ばす。一瞬でいい。一度でいい。一歩でいい。麦野は叫ぶ。腹の底から。心の底から。魂の底から

    電子よ跪け

    光子よ首を差し出せ

    原子よ平伏せ

    私は女王

    私は原子を統べる女王

    原子崩し(メルトダウナー)麦野沈利だと!!!

    麦野「っらああああああアアアアアアぁぁぁぁぁぁァァァァァァー!!!」

    その時…墜ちて行く上条当麻は見た

    上条「…すげえ…」

    闇色の殻を突き破り、眩いほどの翼を広げる麦野沈利を…麦野が背負った翼…六対十二枚の…『光の翼』で舞い降りるのを

    上条「本物の…天使みたいだ」

    一方通行の漆黒でも、垣根帝督の純白でも、御坂美琴の水浅葱の翼でもない…麦野沈利だけの『光の翼』が

    ガシィッ!

    上条当麻を抱き締め、崩落するアスファルトを消し飛ばし

    麦野「…聞いて、当麻」

    泣き疲れた子供のように澄み切った、全てを洗い流さされたような麦野沈利の美貌が寄せられ――

    麦野「私、アンタの事が―――」

    唇に触れるあたたかく柔らかい何かが触れた瞬間…上条当麻の意識は光に抱かれながら途絶えた。

    血の味がする、初めてのキスとともに

    916 = 890 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。本日の投下はここまでです。簡単にですが次回の予告です。

    ・とある個室の爆心地(グラウンドゼロ)
    ・とある屋上の天使再臨(エンジェルフォール)
    ・とある原子の恋愛談義(ガールズトーク)
    ・とある高校の第六位(ロストナンバー)
    です。次の次から、原作には存在しない七夕祭りですが『織女星祭(しゅくじょせいさい)』を予定しています。

    少し長いプロローグになりましたが、次回もよろしくお願いいたします。失礼いたします。

    917 :

    乙です!
    すげえ展開に胸が熱くなった

    918 :


    滝壺との喧嘩といい電子の翼といい麦恋思い出した。
    久々の麦野の良作期待

    919 :

    乙としか言いようが無い…

    920 :

    激しく乙!

    922 :

    読んでて泣きそうになった。むぎのんマジ天使。

    923 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)のモノです。本日の投下をさせていただきます。
    感想くださり本当にありがとうございます…しみじみと嬉しいです

    924 = 923 :

    麦野「………」ニヤニヤ

    御坂「………」イライラ

    フレンダ「………」ガクガク

    黒子「………」ブルブル

    絹旗「………」キョロキョロ

    初春「………」オドオド

    滝壺「…南南西から信号が来てる」ボー

    佐天「(ここなんてグラウンドゼロ?)」

    上条「…不幸だ…」

    上条当麻と麦野沈利の最終決戦から早一週間…順調に回復して行く身体に比例して悪化して行く状況に上条は頭を抱えていた。

    麦野「とーうま、アーン♪」

    上条「あ、あのですね麦野さん?上条さんはTPOという言葉を最近覚えましてですね、流石にお見舞いに来てくれている人達の前ではちょっと…」

    麦野「沈利」

    上条「え?」

    麦野「し・ず・り」

    御坂「」プルプル…!

    上条のベッドを挟んで右側がアイテム、左側が超電磁組である。
    麦野沈利が口にマスカットを咥えながら上条にしなだれかかるように迫り、それを対岸の御坂美琴がブチ切れ寸前の顔で睨み付けている。
    佐天の言うグラウンドゼロ(爆心地)という表現は非常に的を得ているのだ。悪い意味で。

    925 = 923 :

    上条「し、沈利…人が!人が見てますって!ってかもう右手使えるから!上条さんは一人で食える食います食べれますの」

    麦野「三段活用出来てないわよかーみじょう…ああそっか?うんわかった♪『二人っきり』になったら『いつもみたいに』しようねえ~かーみ~じょーう~?」

    御坂「うああああああぁぁぁぁぁぁー!」ビリビリバリバリ!

    黒子「お姉様落ち着いて下さいまし!ここは病院ですの!病院ですの!あばばばばばば!!!」

    初春「白井さん!御坂さんも止めて下さい麦野さんも煽らないでぇぇぇ!」

    絹旗「麦野!麦野!超ヤバいから自重して下さい!滝壺さんもなんか言って下さい!」

    滝壺「だいじょうぶ。わたしはそんな女二人の恋の鞘当てを応援してる」

    絹旗「超面白がってるじゃないですか!?」

    佐天「あっ、お母さーん?うん。私だよ。元気にしてるよー」

    絹旗「病院内での通話は超控えて下さい!ってそれ携帯じゃなくて超バナナじゃないですか!」

    フレンダ「結局、収集がつかないって訳よ」バチコーン☆

    絹旗「誰にウインクしてるんですかフレンダ!超現実逃避ですよ!」

    ワーワーギャーギャー

    冥土帰し「出入り禁止にするよ?」

    ピタッ

    冥土帰し「よろしい」

    926 = 923 :

    ~第七学区、とある病院・屋上~

    上条「ふい~…ったく、病室なのに気が休まらないってどうなんだよ実際…」

    パタパタと洗濯物やシーツが風に靡き、揺らめく屋上に上条は点滴台を引きずりながら難を逃れにやって来た。
    今年は降雨量が少ないのか、梅雨にも関わらず澄み渡った青空が連日広がっている。
    むしろあのキャッツ&ドッグスな病室に吹き荒れる暴風雨の方が上条の心を曇らせていた。

    上条「…あれから一週間か…」

    麦野が顕現したあの『光の翼』…もはや光そのものとなった麦野はすぐさま上条を冥土帰しのいる病院まで飛んで運んで来たのだ。

    あと十分遅ければ間違いなく助からなかった致命傷を与えた麦野自身が、上条の命を救ったという絶対矛盾。

    あのスキルアウトの装甲車に襲撃された時すら感謝も謝罪の言葉も表さなかった(行動で示していたが)麦野が…冥土帰しに土下座してまで上条の救いを求めたのだ。

    上条「といってもふりだしに戻って四日目なんだけどな…ははは…なんかこの病院が別荘みたくなってきちまった」

    目が覚めた時、傍らにいた麦野は三日間も寝ずに上条の側に付き添い、それから三日間謝り続けた。死刑を目前にした囚人すら舌を巻く勢いで謝罪し、懺悔し、悔悟した。

    以来…麦野の目から時折覗く、信管の壊れた爆弾のような狂気はすっかりなりを潜めた。
    あの『光の翼』が目覚めた時、己の中に巣食う何かとの決別を果たしたように…

    上条「ん…?待て待て…ってああああああぁぁぁぁぁぁ!」

    無我夢中だったあの戦いの最後…そう、上条は確かに言ったのだった。

    上条『本物の…天使みたいだ』イケメンAA

    上条「あぁあぁあぁあぁあぁあぁ!!!」

    927 = 923 :

    コンクリートの上をゴロゴロ転がりながら上条は悶絶した。『光の翼』を顕現させた麦野…あまりに神々しいその輝きに心奪われ思わず発したクサいセリフ。さらに翼ある女神のように呟いた麦野の言葉は…

    麦野『聞いて当麻…私…アンタの事が――』

    上条「おぉおぉおぉおぉおぉおぉー!!」

    極限状態の中とは言え、お互いにもう引っ込みのつかない取り消しの効かない言葉を発してしまった一週間前の自分達の幻想をぶち壊してやりたい。

    上条「(そうだ…あの時…オレ達は…キ、キッ、キッスを…!)」

    今度は上条当麻の精神状態が瀕死である。カエル顔の医者だって匙を投げるに違いない。なんせ―――

    垣根「恋の病と馬鹿につける薬はねえからな」

    上条「おわあ!?」

    思わずコンクリートの上で上条は後退った。それはそうだろう…屋上の手摺の向こうに、メルヘンな翼を生やして浮翌遊している垣根帝督の姿があったからだ。

    上条「垣根さん!?なんでここにいるんでせうか!?羽!その羽は!?」

    垣根「オレの未元物質に常識は通用しねえ」キリッ

    上条「なんだよそのドヤ顔!?ここ病院ですよ?お迎えの天使もやってるってのか!?」

    垣根「いや、白衣の天使を迎えに」

    上条「上手くねえよ!?」

    垣根「心配するな。自覚はある」

    バサバサとどういう原理で羽ばたいているのかわからないが垣根帝督は屋上に降り立った。
    話を聞いてみれば本当に口説いた看護師の彼女を迎えにきただけらしい。だからって何も飛んでくる事はないだろうと上条は考えたが口に出さなかった。

    垣根が口を開いたからである。

    928 = 923 :

    垣根「…スッキリした顔しやがって。ムカつくぜ」

    上条「ははっ…でも、上条さんは掴みましたよ」

    垣根「そうか」

    短いやり取り。上条が知るレベル5は御坂美琴と麦野沈利と垣根帝督だが、中でも垣根の落ち着きとゆとりは確かに学園都市最高位に相応しく感じられた。

    垣根「離すなよ」

    上条「離しませんよ」

    垣根「向こうが離してくれませんってか?」

    上条「だったらいいんだけどなあ…」

    垣根「諦めろ。お前の女が誰かは知らねえが…その怪我を見る限り地獄の底まで追い掛けてくるぜ?思い込んだら一直線ってヤツだ」

    恋愛経験までレベル5の垣根と恋愛経験すらレベル0の上条の間に隔たる壁は厚く、高く、そして――変な共感がそこにあった。

    垣根「まっ、経験者からの忠告だ。せいぜい傷口が塞がるまではやめとけ。上になっても下になっても痛い目みるぜ」

    上条「なにをでせうか!?」

    垣根「ナニだよ」

    上条「上手くねえよ!?」

    垣根「安心しろ。自覚はある」

    そんな上条の肩を一つ叩いて、垣根はカッカッカと笑いながら背を向けて屋上出入り口へと消えていった。

    929 = 923 :

    ~第七学区・とある病院・当麻の病室~

    麦野「当麻の匂いがする…」モフモフ

    御坂「うわ…アンタってそういうヤツだったの?ちょっと引く…(黒子みたい)」

    麦野「序列が上だからって気安くアンタ呼ばわりすんじゃねえよ売女。どの面下げてのこのこケツ振りに来やがった」

    上条と垣根が話し込んでいる間に白井と初春はジャッジメントに、佐天はこの空気に耐えきれず退散。フレンダはサバ缶を買いに、絹旗は上条が嫌いなので早々に引き上げ、滝壺は気がついたらいなくなっていた。
    病室に残っているのは御坂と、上条が脱いだパジャマに顔を埋めている麦野の二人だけである。

    御坂「アイツの前と態度違い過ぎない?そりゃあお世辞にも友好的な関係とは言えないけど…」

    麦野「これでも譲歩してやってんのよ。アンタもそうだろうし、私もアンタの顔なんて見たくない。当麻の友達でなきゃ誰がアンタなんかと」

    御坂が今一つ勢いがないのは、アルカディアでの一件において自分が引き金になった事…そして麦野沈利の変貌ぶりである。
    出会った時の事を考えれば、ずいぶん丸くなったように思えた。
    上条のパジャマを愛おしそうに抱く麦野からは…かつての剥き出しの殺意も狂気も伺えない。

    930 = 923 :

    御坂「じゃあアンタはアイツのなに?友達なの?そ、それとも…まさか…本当に…アイツの…か、かっ、かのじ…痛っ」

    麦野「あれー?あっれー?どうしたのっかにゃーん?どうしたのっかなーん?あれー?噛んじゃったー?あれれー?」

    御坂「うるっさいわよこの馬鹿!人をおもちゃにして遊んでんじゃないわよぉぉぉ!質問に答えなさいよぉぉ!」

    それどころか…余裕…自信…ゆとり…同性の目から見ても心無しか髪艶や肌艶まで輝いているように感じられる。
    御坂が10の力で突っかかれば30の勢いで返してきたのが…今や受け流し、手のひらで転がすようにさえしてくる。

    …まさか…

    上条「ただいまーって…麦野とビリビリだけか?」

    御坂「!?アンタ!?」

    麦野「おっかえりー。ねぇねぇ当麻?聞いて聞いて?この娘ったらねー…」

    御坂「うわあああ言うなぁー!言うなぁー!」

    上条「?なに言ってんだか全然わかんねえ…」

    麦野「(テメエには譲らないからね)」

    御坂「(アンタには渡さないからね)」

    戻ってきたばかりで状況が読めていない上条に耳打ちする麦野。それを止めようと食ってかかる御坂。散らす火花。見えざる視線の鍔迫り合い。

    日常が帰ってきた――

    931 = 923 :

    ~第七学区・とある高校1―7~

    青髪「うっわ両手に花やで両手に花!カミやんもげろ!カミやん爆発しろ!」

    土御門「…お前にしか『見えて』ないのにそんな事言われてもこまるにゃー」

    土御門元春、青髪ピアスは昼休みに机を並べて食事にありついていた。土御門は義妹の手作り弁当、青髪は店の残りのパンである。
    常ならばそこに加わるウニ頭の少年がいるが今は入院中だ。にも関わらず…青髪ピアスには上条の様子が『見えて』いるのだ。
    土御門「せっかくの“第六位”の力も、覗き目的にしか使われてないなんてアレイスターも草葉の陰で泣いてるに違いないんだぜい」

    青髪「ええやん。僕あの人の事嫌いやもん」

    『第六位』…青髪ピアス。能力名は『俯瞰認識(ハイアングル)』…第七位にして世界最高の原石たる削板軍覇とはまた違った意味合いで…彼は超能力者の序列に加わっている。

    一般的に超能力とは予知能力、読心能力、透視能力、念動力、サイコメトリー、瞬間移動、発火能力、念写、霊視などが最も最初に浮かぶだろう。

    だが能力開発を受けた学生は一人につき一つの能力しか持てない。幻想御手を用いた木山春生の『マルチスキル』や、魔術師としての力を制限する代価として能力を授かった土御門のような例外を除いて『デュアルスキル』は存在しないとされる。

    だが…生まれついて透視を行い、未来を見通し、神が下界を見下ろすような千里眼で世界の果てまで念写出来る力を青髪ピアスが持っていたとしたら?

    青髪「それにカミやんにはエラいとこ助けてもらったし。『アイテム』なんかに狙われたら逃げるしかないもん僕」

    932 = 923 :

    一方通行のように万物を統べる力も、垣根帝督のような物理法則を歪める術も、御坂美琴のような汎用性も、麦野沈利のような破壊力も、心理掌握のような特殊性も、削板軍覇のような潜在力もない。

    ただ見る事に全能化した力。戦闘能力は皆無の上技術転用が難しく、生まれついての多重能力者などこれまでの学識を覆す異才の徒…それが彼の序列が第六位に甘んじている理由である。

    土御門「まあ、いきなりバイク盗めって言われた時はびっくらこいたぜい。あんな華麗な登場シーンでカボチャの馬車役やるとは思わなかったにゃー…あれも予知か?」

    青髪「僕にわからんのは自分の未来と小萌センセーの秘密だけや!」

    だが、全てを見通すとは即ち…情報戦において『最強』の存在であると言う事…核兵器など及びもつかない危険な異才。
    全知に等しい力を持った彼は、道行く老人の寿命から世界の終わりまで見通せる。それが存在の明かされない『第六位』の秘密。

    青髪「借りは返したで、カミやん」

    そう呟いて、青髪ピアスは残りのパンに取り掛かった。

    933 = 923 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)のモノです。本日の投下はここまでです。
    感想レスくださった方、本当にありがとうございました…

    蛇足ですが、上条VS麦野は本当に苦しかったです。
    ヒーローが救うのではく、バケモノが折れるのでもなく、麦野自身が自分を乗り越える結末は本当に難産でした。
    ですから感想は本当に嬉しかったです。

    次回から織女星祭(しゅくじょせいさい)です。では失礼いたします。

    934 :

    乙!
    ハラハラしたはwwwwwwww

    935 :

    やれやれ。たまに青髪がカッコいいスレがあるから困る・・・GJ!

    936 :

    記憶失ったらどうなるんだろ

    937 :



    ヒロインが御坂以外の時の御坂のかませっぷりは異常

    938 :

    >>936
    確かに麦野にはハッピーエンドが訪れることなんてないかもしれねぇ……
    だけどよ!だからってそれを望んじゃ悪いのかよ!ハッピーエンドを望んじゃ悪いのかよ!
    確かにそいつは同じ人間とは思えねぇほど残虐なことを、最悪なことをしてたかもしれねぇ……
    だけどよ!人間根っからの悪なんていねぇんだよ!誰しも『0』からはじまんだよ!
    どこかでそいつはねじまがっちって今のそいつなんだよ!
    もう、そいつの『心』が救われたんなら!
    そいつにだってハッピーエンドはあったっていいはずだ!
    かっこよく終わる必要なんかねぇ……どんなにかっこよくたってバッドエンドじゃ意味ねぇじゃねぇか!
    格好悪くたっていい!グダグタだってみんなが!関わったやつみんなが笑って終われるような!
    そんなハッピーなエンドを望んじゃ悪いのかよ!
    暗部だからってあきらめんなよ!確かにそれは理想郷という名の『幻想』かもしれねぇ…!
    だけど……その理想郷も口にしなきゃ!やろうとしなきゃ!理想で終わっちんだよ!『幻想』で終わっちまうんだよ!
    やりもしないのにできないって決めつけてんじゃねぇよ!目指してみろよ『ハッピーエンド』を!

    さぁ! 書いてみろよ偽善使い!理想はここから始めるんだ!

    頼むから記憶喪失悲恋バッドエンドはやめてくれ…orz


    939 :

    >>938
    がんばって考えたのは認めるがsageるところが違う

    940 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。本日の投下をさせていただきます。

    レスを下さる方、いつもありがとうございます。何より心強い思いです。

    941 = 940 :

    ~第七学区・とある高校~

    上条「おっ…終わった…」

    青髪「あたたたたたた!…おわったぁ!」

    小萌「は~いバカの上条ちゃん青髪ちゃんお疲れ様なのですよ~明日はHRの前に来て下さいね~」

    上条「へっ…へへ~い…」

    青髪「はーいセンセー!ほなまた明日~」

    退院後、上条当麻は都合二週間にも及ぶ欠席日数を埋めるべく日夜補習に明け暮れていた。
    ただでさえ赤点と追試の常連客だと言うのに更に欠席日数が加われば進級すら危うい。
    たった今も何時間目になるかわからない居残り授業を終え、精も根も尽きたと言った様子で上条は机に突っ伏した。

    上条「頭が爆発しそうだ…」

    青髪「いっつも爆発してるやん」

    上条「バカ。これはオシャレだっつーの。ってか何でお前はそんなピンピンしてるんだよ…」

    青髪「僕の髪かてオサレやで。ピンピンやて?僕の小萌センセーへの愛はピンピンやなくてビンビ(ry」

    上条「言わせねえよ!?」

    その傍らには青髪ピアス。
    第十九学区での上条と麦野が繰り広げた大立ち回りに一役買ったものの、その際使用した盗難車を乗り回していたのを通報され敢え無く五日間の停学処分となった埋め合わせのため彼もこの場に居るのである。
    尚、何故か共犯である土御門へは追求の手が伸びなかった。目立つ金髪より悪目立ちする青髪の方が通報者の印象に残ったためだろう。

    青髪「固い事いいなカミやん。固いのはアッチだけで充分やで」

    上条「んが~!お前と話してると上条さんのおバカな頭がますます悪く…」

    青髪「同じアホやん。補習仲間やし…ん、ちょい待ち」

    上条「?」

    というような馬鹿話を繰り広げるかと思いきや、不意に青髪が遠くを見据えるような見通すような視線を、あらぬ方向へと向けながら言った。

    青髪「そんな事より、校門前で待ってる彼女さん迎えにいったらんでええのん?」

    上条「へっ?」

    942 = 940 :

    ~第七学区・とある高校校門前~

    上条「本当にいた…」

    麦野「かーみじょーう!」

    青髪ピアスの言う通り、校門前には男子生徒の人集り。その中心に彼女…麦野沈利はいた。
    上条達の居た教室の位置からは正門の様子など肉眼では決して捉えられない角度であるにも関わらず、だ。

    青髪『リアルすけすけ見る見る君や!』

    麦野「かーみじょうってば!…当麻!」

    上条「はっ!?」

    回想の青髪の姿を打ち消すと…そこには初めて見る、女学院の制服姿の麦野が叫んでいた。

    麦野「なにボーっとしてんのよ?私の制服姿に見蕩れちゃった?」

    純白を貴重とし、ところどころ金糸のアクセントが織り込まれたブレザー&スカートの麦野沈利がそこにいた。
    学園都市でも稀な真っ白な制服姿はイヤでも人目を惹きつけて止まず、黙ってさえいれば完璧な美形である麦野沈利が身に纏えば尚更であった。
    周りに群がる男子生徒達はさながら砂糖に群がる蟻のようで。

    子生徒A「うわ~すげー綺麗なお姉さん…○○女学院の制服じゃね?アレ。お前声掛けてみろって」

    子生徒B「また上条絡みかよ…なんでアイツばっかり」

    子生徒C「沈利たんの太めの足にチュッチュッしたいお!」

    喧々囂々である。しかし、上条の放った第一声は――

    上条「む、麦野…いや、沈利…」

    麦野「にっ…似合う?久し振りに引っ張り出して着てみたんだけど…」

    上条「…本当に…学生だったんだな…?」

    ブチッという何かが勢い良く切れる音がした。

    麦野「…かーみじょう」

    上条「確かに前に聞いてたけど、オレずっと二十歳過ぎかと思っててさ!まさかな~って…あ、あれ?麦野サン?」

    上条は見た。俯き加減で栗色の前髪が目に被さりながらも動く、麦野の形良い唇が…

    麦野「ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね」

    943 = 940 :

    上条「んなっ!?」

    と呟かれるのを見た次の瞬間、麦野は左手を突き出し目に青白い光を宿して吼えた。

    麦野「さんにーいちドバーン!!!」

    上/条「ごっ、がァァァァァァアアアあああああああああああああああああッッッ!?」

    男子生徒ABC「「「!!?」」」

    黒山の人集りを突っ切って放たれた上条を焼き切る原子崩し。
    先ほどまで綺麗と可愛いの理想的な中間点を極めていた純白のお嬢様の変貌ぶりに狼狽する男子生徒達。
    当の麦野と言うと…ドン引き状態の男子生徒達に白眼を剥かんばかりの勢いで叫んだ。

    麦野「パリイ!パリイ!パリイ!ってかァ?見せ物じゃねえぞクソガキ共!!誰の脚が太いだァ!?使い道のねぇ皮付き×××ジュージュー焦がしてグリルパーティーにしてやろうかぁ!?」

    男子生徒ABC「「「しっ、失礼いたしましたぁぁぁー!!!」」」ピャー

    上/条「   」ブスブス…

    麦野「ったく…はあっ、当麻!お茶して帰るわよ」

    焼け焦げた上条の手を持ちズルズルと引きずって行く麦野。御披露目となった制服姿は見事御破算となった。せっかく抱いた恋心までイマジンブレイカーされてしまいそうだ。

    青髪「こ、怖わー…第四位怖わー…」

    それを『見て』いた青髪は七月に入ったと言うのに髪どころか顔まで青くして震えていたそうな。

    944 = 940 :

    ~第七学区・ファミレス~

    上条「死ぬかと思った…」

    麦野「私も死んだかなって思った」

    不死鳥の如く蘇った上条当麻はクリームソーダを、麦野沈利は早めの夕食にシャケ弁とストロベリーサンデーを食べていた。
    窓際の奥の席で、ブラインド越しにも夕陽が眩しい。茜色の入道雲が彼方に窺える自然のパノラマだ。

    上条「悪い悪い…つーかマジで上条さんもびっくりですよ。いきなり校門の前にいるだなんて思ってもなかったぜ」

    麦野「教えちゃったらサプライズの意味ないでしょ?あっ、一口ちょうだい」

    上条「あ、ああ(また、間接キス…!)」

    麦野「…かーみじょう。唇見過ぎ。なーに考えてんのーかーみじょう?」

    一口ストローからクリームソーダを飲む麦野の口元を知らず知らずの内に見つめていたのを目敏く麦野が指摘した。

    麦野「もう直接チューしたじゃない」

    上条「うっ」

    麦野「続きしたい?」

    上条「んおっ!?」

    麦野「今度は血の味のしないキスがいいね」

    第十九学区にて、麦野は上条と口づけを交わした。大量出血による朦朧とした意識の中に感じたそれは、未だ上条を懊悩させるには充分に過ぎた。
    クスクスと含み笑いを浮かべる麦野は確かに上条よりも年長者のそれだった。どちらに転んでも自分の優位は揺らがないと確信している目で。
    そんな麦野の吸い込まれそうな目から泳ぐように視線をそらせた先に…壁に張り付いた一枚のポスターが。

    上条「織女星祭か…そういやそろそろか」

    麦野「ん?ああ織女星祭…たしか第十五学区でやるやつよね?花火の」

    上条「ああ。去年は中学の頃の友達と行ったよ」

    上条が見ていたポスター…それは織女星祭(しゅくじょせいさい)の案内である。学園都市最大の繁華街を構える第十五学区で催される七夕祭りで、同時に花火大会でもある。
    その規模たるやほぼ全ての学生がごった返すほどの盛況ぶりで、花火大会に至っては三万発もの花火が打ち上がる。

    945 = 940 :

    麦野「ふ~ん、まあ私は人混み苦手(ry」
    上条「行かないか?麦野」

    カラン、とシャケ弁を頬張っていた割り箸が転がる。いつも自分が押し掛けたり誘ったりの割にはあまりそういう話題を振ってくれない上条に面食らったのだ。

    麦野「なーに?さっきの事ならここの払いで勘弁してあげるわよ?」

    上条「それならなんとか…じゃなくて、沈利と回ってみたいな…って思ったんだけど、やっぱりオレみたいなのが並んで歩いてたらお前と釣り合わないよな、はは…恥ずかしいもんな(ry」

    ガタン!!!

    と今度は割り箸を叩きつけるようにして身を乗り出し上条に詰め寄る。その勢いでシャケ弁が僅かにこぼれる。

    麦野「関係ねえよ!!他人の目なんてカァンケイねェェんだよォォォ!!私は当麻と二人で回りたいんだよォォォ!!」

    上条「!?」

    …シーン…

    「水出しコーヒー1つ」

    店員「あ、あ、お客様、水出しコーヒーなるものは当店には…コーヒーでしたらあちらのドリンクバーに…」

    「はァ?なンなンですかァ?この店の品揃えの悪さはァ?客舐めてンですかァ?」

    一人のホワイトヘアーの客が注文を告げる以外の声が皆無の店内。静まり返った周囲を見渡すと麦野は再びストンと椅子に直った。
    上条も口をあんぐりとさせ二の句が告げずにいて、麦野も若干トーンを落とした。

    麦野「…行くわよ」

    上条「え…」

    麦野「行く。せっかく誘ってくれたんだしね。ただし、歩くのあんまり得意じゃないからちゃんとエスコートしなさい」

    上条「ああ!」

    麦野「…たーのしみだねー、かーみじょう」

    それを聞いて上条がホッと一息ついたように麦野には見えた。遊びに誘う言葉一つ気の利いた事が言えないいじらさが、どこか微笑ましく思えた。

    麦野「(どこぞのチャラ男とは大違いねー。同じ男でもずいぶん)」

    一方、ホテル『カエサル』では

    垣根「ぶえっくし!」

    「ていとく~いつまでも裸でいるからだよ~」

    垣根「モテる男には噂がつきものなんだよ」

    946 = 940 :

    ~第七学区・とあるゲームセンター~

    麦野「あっはっはっはー!逃げろ逃げろゾンビ野郎!ケツの穴増やしてやるよォォォ!!!」バンバンバン!

    上条「おい!人質まで撃つなって!うわわまた来たぞ!キリがないっつの!」ドンドンドン!

    ファミレスでお腹を満たした二人はいつしか河岸を変えゲームセンターにいた。
    銃を横倒しにして乱射しまくる麦野、両手で構えて撃ち漏らしたゾンビを狙う上条。純白の制服姿でガンシューティングとは言え顔芸しながら乱射する光景はかなりシュールである。

    mission complete!

    麦野「Yahooooo!!!」

    上条「(すっげえはしゃいでる…)」

    クリア画面を見てご満悦の麦野。意外とこういうゲームなどをした事がないのか、小さくガッツポーズなどしている。
    上条が聞くところ、普段はダーツバーやプールバーにいるらしく、たまにクレーンゲームをする程度らしい。

    麦野「あースッキリした…なんかいいね、制服デートって感じで」

    上条「デート、か…」

    しみじみと語りながらネームエントリー画面に『KMJ&MGN』と撃ち込んで行く麦野。その横顔を見ながら上条は思う。あのキスからだろうか?自分が麦野を…強く意識し始めたのは。

    麦野「当麻?またボーっとしてる」

    上条「あっ、ああっ、悪い悪い…クリアしてなんか浸っちまったな」

    麦野「ふーん?」

    こうして覗き込んでくる視線やふとした時に香る香水など、以前はフィルターを通したように気に留めなかった些細な事柄の一つ一つを意識する。

    麦野「んっ…上条上条。プリクラ」

    上条「おー。好きだよなあ女の子は」

    麦野「撮った事ない?」

    上条「いや、前にクラスのヤツらと撮った。土御門…ってわかんないか。オレの友達なんだけどさ、あと青髪とオレで変顔やって――」

    947 = 940 :

    そんな上条を麦野は見つめる。無能力者と見下すでもなく、ヒーローと見上げるでもなく、同じ目線で同じ立ち位置で見られる男として

    麦野「じゃあ、一緒に撮らない?」

    上条「いいのか?」

    麦野「いいからいいから。よっ…フレームはこれにするか…っと、っと、美白はオススメでと」

    それがいつまで続くかわからない。それでも一緒に居たい。出来るだけ長く。かなうならこの先もずっと。

    上条「む、麦野!ちょっとくっつき過ぎじゃねえか!?って、てか胸が顔に…」

    麦野「だって狭いでしょ~?くっつかないと顔切れちゃうし?」

    上条「二人しかいねえだろ!?」

    麦野「ほらほら。あの顔やってあの顔」

    上条「こうか?」イケメンAA(ry

    麦野「あ~らいい男」

    だから、この宝物をたくさん増やしていきたい。

    パシャッ

    上条「うおっ!?しまった半目だ!」

    麦野「えいっ」ポチッ

    上条「だあああそれ使うなよ!!!」

    麦野「プリ帳の一番頭に貼ってやるよォォォ!ピンナップにして晒してねぇぇぇかーみ~じょーう~!」

    上条「勘弁してくれぇぇぇ!」

    『死』が、二人を分かつその日まで

    948 = 940 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。本日の投下はここまでです。

    それでは失礼いたします。

    949 :



    MGNの言葉遣いが酷いなww

    950 :

    一方さんがカメオ出演してるwwwwwwwwww


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