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    元スレ麦野「ねぇ、そこのおに~さん」

    SS+覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★★×4
    タグ : - 黄泉川 + - むぎのん + - コラッタ + - バカテス + - フレンダ + - ブリス + - 上条 + - + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    801 = 755 :

    上条「(そっか…)」

    少女に傷らしい傷は見当たらない。それだけで上条は『良かった』と思えた。
    近い将来出会うであろう修道女がこれを見れば、『とーまは他人の事ばっかりなんだよ!』と憤慨して見せただろう。
    すでに知り合った女子中学生がこれを見れば、『アンタ少しは自分の身体の事も考えなさいよこの馬鹿!』と発憤して見せただろう。

    なら―――この少女は?

    上条「(とりあえず、ナースコール押してもらおうかなー…ちょっとなんか催してきた)」

    まだ痺れと微熱の残る右手を、麦野の栗色の髪へと乗せる。そして身体をわずかに起こし病室を見渡すと―――

    フレンダ「………………」

    絹旗「………………」

    滝壺「………………」

    上条「(んなっ!?)」

    病室のドアの隙間から、こちらを伺う6つの瞳と目が合って思わず声が出そうになるも

    フ・絹・滝「(シー!)」

    三人の少女達は皆、悪戯っぽく人差し指を唇に当ててそれを制した。

    上条「(ああっもう!上条さんはいつまでこの体勢でいればいいんですかー!?)」
    麦野沈利は知らない。自分が今、こんなにも無防備を寝顔をこんなにも優しくみんなに見守られている事を。

    フレンダは知らない。麦野が一晩中、どんな言葉を上条に語り掛け続けたのかを

    絹旗最愛は知らない。自分達が飲んでいたドリンクバーのコーヒーと、麦野が自販機で飲んでいたコーヒーの銘柄が同じだった事を。

    滝壺理后は知らない。寝起きの尿意に悩まされるも自分の視殺に上条がナースコールを押せない事を

    上条当麻は知らない。この無防備な寝顔を晒す少女に、これから自分が振り回される未来を

    上条「ふっ、ふっ、ふっ…」

    彼は―――これから思い知らされる。誰もが笑って過ごせる、ハッピーエンドを

    上条「不幸だぁぁぁぁぁぁぁー!!!」

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)第一部、了

    802 = 756 :

    一先ず乙かな
    続き期待してるぜ

    803 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。読んで下さった方、レスを下さった方、ありがとうございました。とても励みになりました。

    出来る限り短くまとめたかったのですが、少しばかり膨らんでしまいました。
    麦野が丸くなるのが早いだとか、上条に勢いが足りないだとか、悔いがたくさん残りましたが…読んで下さった方がいて嬉しかったです。

    青髪が実は○○○だったとか、スクランブル交差点で御坂美琴や黄泉川を出そうかなど考えましたが、麦野と上条の物語なのでカットいたしました。

    ノープランで書いたため、続きもノープランですが、また麦野と上条を書けたら良いなと思います。それでは失礼いたします。

    804 :

    激しく乙

    何部構成なんだろうか

    805 = 803 :

    >>804
    うすぼんやりですが、頭にあるのは

    第一部・路地裏と病院
    第二部・入院と日常
    第三部・七夕と借りっぱなしのプール
    最終章・『禁書目録』

    です。もしネタを下さる方がいらっしゃいましたら、出来る限り取り込んでみたいな、と思っています。

    806 :

    個人的には出すのはアイテムぐらいでいいと思うよ
    これで長いと思うなら尚更ね
    俺はいい感じにまとまってると思ったが

    807 = 804 :

    >>805
    記憶がなくなる前までって感じか…

    頑張れ

    810 :

    スゲー面白いよ!

    あと>>808も言ってるけどsaga入れようぜ?

    811 = 803 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。たくさんのレスをありがとうございます。sagaの事をお教えいただきすいません。今度から入れるようにしますね。

    昨日の今日ですが、21時頃に第二部を投下したいと思います。
    今回は入院生活編まで書きためるつもりですが、その先の日常編はノープランです。
    どなたか日常編で「こんなん書いて」というようなネタがあれば、是非お願いいたします。それでは失礼いたします

    812 = 806 :

    >>810 携帯だと面倒だし仕方ないさ
    PC復帰の可能性はあるの?

    813 :

    待ってた! >>1

    814 = 810 :

    すまん!
    そういえばPC壊れたんだっけ。忘れてたよ。

    815 = 803 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。書きためが終わったので投下いたします。
    文章自体はPCから携帯に移せるので苦ではありませんが、ネットに繋がりません…

    少し量がかさみますが、入院パートを投下いたします。

    念の為に…
    ・このSSでの上条当麻は記憶を失っていません(インデックスと出会う前、中間テストが終わった辺りの時間軸です)

    ・時間軸の都合上、浜面仕上はアイテムに加わっていません。
    ・しかし御坂美琴とは既に出会っています。

    それでは投下いたします。

    816 = 803 :

    シャリ…シャリ…サリ…サリ…

    麦野「ふんふふん♪ふんふふん♪ふんふんふーん♪」

    初夏の風がカーテンを揺らし、柔らかな陽光が優しく窓辺に降り注ぐ。白を基調とし、清潔を旨とするその部屋は一般に『病室』と呼ばれる場所であった

    麦野「んっ…こんなもんかしら?」

    病室内に響き渡るはリンゴの皮むきの音…ペティナイフを手慣れた様子で操り、カットしたリンゴの皮を木の葉細工に剥いて行くのを、少年は見つめていた…この上なくげんなりした表情で

    上条「も、もう上条さんはお腹いっぱいですよ…ってお姉さんはいつまでリンゴ剥いてるんですかー!?」

    麦野「かーみじょう?私が今手に持ってるのが何かわからないほど頭のネジ飛んじゃったー?締め直してあげよっかー?」

    ギラリ、と鈍い輝きを放つペティナイフをちらつかせながら麦野沈利はニンマリと笑みを浮かべた。
    逆らえばダンボール一杯分になるリンゴと同じくして上条は皮を剥かれる事であろう。それくらいはこの数日間の付き合いでもわかっていた。

    上条「結構です!だからこれリンゴ何個分ですか!?こんな食える訳ないっての!」
    麦野「上条に足りないのは食物繊維よ。そうカリカリしてたら身体に響くわよ?」

    上条「もう間に合ってるっつの!ウサギさん止め!手は膝の上!」

    817 = 803 :

    皮剥ぎの刑も嫌だが、すでに片手を越え両手に届く数のリンゴを次々と口に放り込まれ、これ以上食べたら喉元までせり上がって来たリンゴで窒息しそうな予感に襲われ、上条は制止の言葉をかけた。それを受けた当の本人はと言うと

    麦野「こーんな綺麗なお姉さんの付きっきりの看病がお気に召さないのかなーかーみじょう?」

    腰掛けていたパイプ椅子から立ち上がり、ほとんど体重をかける事無く上条の寝そべるベッドの縁に腰を下ろす。面白い悪戯を思いついた子供のように。
    ウサギの形にカットされたリンゴの一つを―――口に咥えて。

    麦野「それともぉ…」ズイッ

    上条「!!?」

    麦野「リンゴより甘いのがいーい?かー・み~じょ・う?」」

    置かれていた上条の手に自分の手を重ね、悪戯っぽく細められた眼差しで、手を伸ばせば何かに届いていい加減始まってしまいそうな距離までウサギリンゴを咥えたまま顔を寄せて―――

    麦野「ほらほら、ウサギさんは逃げ足が早いよー?どうするー?どうするかーみじょう?」

    上条「ぬぐぐっ、ぬぐぐっ…!」

    間違いなくからかわれている。間違いなく飛びつけば手痛いしっぺ返しを食らうに決まっている。しかし上条とて男である。一糸報いてやりたい気持ちがない訳ではない。が…

    上条「だああああああ!!もうっ!そんなに怪我人の上条さんをいじめて楽しいんですかー!?」バサッ

    上条が取った行動は布団をかぶって不貞寝の体勢を決め込んだのである。女性に対して紳士たらんとする、彼なりの意地である。しかし…

    818 = 803 :

    フレンダ「結局、据え膳食わぬは男が廃るって訳よ(チッ、殺り損ねた)」

    絹旗「上条チキンです超チキンです情けないです(チッ、あとちょっとだったのに)」

    滝壺「だいじょうぶ。わたしはそんな意気地無しのかみじょうを応援してる(むぎのかわいい)」

    そんな二人のやり取りを相変わらず病室の扉の隙間から覗き込んでいたのはアイテムの三人娘、フレンダ・絹旗・滝壺である。

    上条「いつからいたんでせうか!?」

    麦野「最初からよー。良かったねーかーみじょう?手出してたら今頃ボッコボコにされてるわよ?入院長引かなくって良かったわねー?」

    上条「ひでえ!!」

    ナデナデと尖らがった上条の髪を満足げに撫でる麦野。誰が想像出来るだろう?数日前まで一方的とは言え、命を狙う側であった麦野と、命を狙われる側であった上条がこうして同じ部屋でこんな他愛ないやり取りを交わしているなどと。

    麦野「はいはい。ちょうど良かったわ。アンタ達もリンゴ食べて行きなさい。まだまだいっぱいあるからねー」

    フ・絹・滝「「「はーい」」」

    上条「ここは幼稚園かっ!」

    おおむね、上条当麻の日常は平穏であった。

    819 = 803 :

    ~第七学区・とある病院、昼下がり~

    麦野「そう言えばさ、上条」

    上条「なんでせうか?」

    麦野「アンタって彼女とかいる?」

    上条「ぶふぉっ!?」

    三人娘はリンゴを平らげた後にそれぞれの帰路へ着き、病室には元の通り上条と麦野の二人きりである。
    唐突に投げかけられた質問に麦野が淹れてくれた紅茶を噴き出し思わず咳き込む。
    マリアージュフレールと言う上条が見た事も聞いた事もない銘柄だが、今やその味もわからない。

    麦野「あれ?熱かった?ジッとしてて今拭いてあげるから――」

    上条「けっ、結構ですノーサンキューです自分で出来ますの…」

    麦野「三段活用出来てないわよ。で?彼女いるの?いないの?」フキフキ

    ごく自然に上条の口元を拭いながら麦野は問い掛ける。最初の出会い方はマズかったが、麦野は美人だ。街中を歩けば十人中八人は振り返る。そんな美貌が、目の前にある。

    上条「か、上条さんにそんな浮いた話なんてあるわけないじゃないですか…ううっ、自分で言ってて悲しい…」

    麦野「へー?看護師さんか聞いたわよ?常盤台の超電磁砲がここに来たって。あとこのリンゴ持ってきた委員長さんみたいな娘とか」

    上条「ビリビリと吹寄の事か?アイツらは別にそういうんじゃ…」

    麦野「じゃあフレンダ達は?どう思う?あの変な趣味に目を瞑れば結構イイ線行ってると思うけど?」

    上条「いやー上条さんじゃ全然釣り合わないっすよ。なんつーかみんな個性的だし」

    麦野「―――私は?」

    上条「―――えっ?」

    麦野「アンタは…私をどう思ってる?」

    風が、吹いた。

    820 = 803 :

    ~第七学区・とある病院~

    上条「…どう、って」

    麦野「答えて」

    初夏の風にたなびくカーテンがそよぎ、傍らの麦野の表情を一瞬隠した。

    麦野「――どうして、あの日私を助けたの。こんな大怪我してまで。アンタを消し炭にしようとしていた私を…アンタ死ぬかも知れなかったのに…どうして私を助けたの?」

    先程までの冗談めかした雰囲気は既にない。どちらかと言えば…最初に出会った時に近い空気。

    上条「どうしたもこうしたも…目の前で誰かが危ない目にあってたら普通、助けるだろ?」

    麦野「アンタの“普通”は“普通の人”じゃなかなか出来ないのよ。それに私は“普通”じゃない…アンタも見たでしょう?私は――人殺しだよ」

    投げやりな言葉。自嘲めいた笑み。退廃的で攻撃的で―――それでいてどこか寂しげで。

    上条「――人殺しだったら助けちゃいけないなんて、誰が決めたんだよ?」

    麦野「………………」

    上条「麦野さんが人殺しだって…その人殺しの面しかあっちゃいけないのか?他の面の麦野さんまで助けちゃいけないのか?」

    821 = 803 :

    麦野「…上条…」

    上条「助けるから正しいとか、[ピーーー]から間違ってるとか、どうでも良かったんだよ。善人だから助けて、悪人だから助けない、そんな区別のせいで目の前で一人の女の子も助けられない、オレはそっちの方が嫌だ。だったらオレは――偽善者でいい」

    麦野「………………」

    上条「オレは誰かを助けられる――偽善者でいい」

    上条当麻は知らない。麦野沈利がレベル5の四位である事も、暗部組織を率いている事も、それ以前に年齢も所属する学校も知らない。何一つ。しかし

    麦野「…ホンット、アンタってお人好しの馬鹿ね」

    綺麗な顔をしていながら口が悪く

    上条「はい!!?」

    落ち着いて見えて人をいじるのが好きで

    麦野「病院だし、ついでに頭の中まで検査してもらえばー?」

    リンゴの皮むきが上手くて淹れる紅茶が美味くて

    上条「な、なんてひどい!」

    危うい狂気と冷たい孤独と仄かな母性を時折覗かせる…そんな『麦野沈利』がまた危ない目にあったならば――

    麦野「…かーみじょう」

    何度だって助ける。何回だって救う。上条当麻はそう言っているのだ。

    麦野「私に関わった事、いつか後悔させてやるんだからね」

    そして―――麦野沈利は柔らかく微笑んだ

    822 = 803 :

    以上、本日の投下を終了いたします。レスを下さる方々の一言一言がものすごく励みになります。感謝感激です。

    それでは失礼いたします。sagaを教えてくださった方、ありがとうございました。

    823 = 806 :

    wが増える影響で唐揚げとか魔力にも翼が挟まれたりと思わぬところで誤字っぽくなるから出来ればデフォルトでsaga推奨
    まあ携帯だし元は何かは大体分かるから無理する必要もなし

    824 :

    超乙

    むぎのんやっぱいいねぇ

    826 :

    上麦スレはなかなか無いから頑張ってほしい

    827 :

    そうか?むしろ浜麦よりよく見かけるが。
    まあ何にせよ続き期待

    828 :

    上条「オレは誰かを助けられる――偽善者でいい」←この上条さんは間違いなくイケメンAA

    上麦は最近増えてきたけど、記憶喪失前の上条さんと麦のんってはじめてじゃないか?
    このじわじわがたまらぬ

    829 :

    見かけることはあっても、一発ネタだったり未完だったりで
    ちゃんとしたの見たことないんだよな

    830 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。今夜の投下も21時頃になると思います。よろしくお願いいたします。

    今回は
    ・買い占められた缶コーヒー
    ・歩道橋の出会い
    ・退院の日

    になる予定です。では失礼いたします。

    831 = 830 :

    ~第七学区・とあるコンビニ、夜~

    麦野「あれー?売り切れ?あれー?」

    冥土帰しの病院から程近いコンビニにて、麦野沈利は飲料水コーナーの前で小首を傾げていた。
    目当てのシャケ弁のお供にと、この間冥土帰しと飲んで以来お気に入りとなったブラックの缶コーヒーを探してみた所…ないのだ。それこそごっそり、根刮ぎ持って行かれているのである。

    店員「ありがとうございましたー」

    麦野「?」

    その店員の声に振り返ると…居た。一角のブラックコーヒーを買い占めて去っていく、いささか前衛的過ぎるデザインで有名なブランド物のシャツを着た、ホワイトヘアーの華奢な後ろ姿が。

    麦野「変な服…流行ってんのかしら?あれ」

    取り立てて気分を害した訳でもないのでチョイスをブラックコーヒーから日本茶に切り替える。
    店内はそれなりに賑わっており、ガラの悪そうなスキルアウト、育ちの良さそうな常盤台中学の学生、巡回中の警備員、白衣のまま病院から買い出しにきた医者と様々である。

    「お姉様!また立ち読みですの!?そろそろ戻らないと寮監に絞られますのよ!?」
    「まっ、待ってよ黒子!今いい所なんだから!ああ~あと10秒!ううん5秒!」

    「浜面!駒場!お前らまたビールなんて買いに来て!没収じゃん!」

    「…手加減しろよ、警備員」

    「おい!なにちゃっかり自分の買い物袋にビール入れてんだよ!返せっ!」

    832 = 830 :

    麦野「…かーえろ」

    喧々囂々の店内を尻目に麦野沈利は夜の街へと歩を進める。
    ここ最近はコンビニに立ち寄る機会が増えた。ここしばらく電話の女からの指令もないからだ。
    以前、「仕事」帰りにコンビニに立ち寄った所、店員にギョッとされたからだ。

    人間を焼き滅ぼす原子崩しの副産物、人間焼肉とも言うべき匂いが服に染み付いてしまったのだ。
    ものの数時間の間に。以来、返り血を浴びてなくても「仕事」帰りにコンビニに立ち寄るのは控えている。
    暗部に近い人間ほど麻痺しがちな嗅覚、感覚の鈍化である。

    ~第七学区・歩道橋~

    麦野沈利は歩く。シャケ弁の入ったコンビニ袋と、あたたかい日本茶を片手に。
    今日はこのまま家路に着き、食事を終えた後お気に入りの牛乳風呂に浸かる。
    それで一日の終わりを迎えるハズであった。

    「こん・ばん・は~」

    ――この、麦野の行く手に待ち構えていたような男の存在さえなければ。

    麦野「………………」

    麦野沈利は一般人以下までに鈍麻した嗅覚の代わりに、一般人以上に危険に対する嗅覚を手にしている。
    それは一言で言えば――『きな臭い』男だった。いや、『胡散臭い』男だと言うのが麦野の第一印象であった。

    「おお~怖い顔ぜよ。タイプじゃないけど綺麗な顔が台無しだにゃー」

    ベコッ、とスチール缶を握り潰し、立ちふさがる男をねめつけ、睥睨し、牙を剥く。

    833 = 830 :

    麦野「…誰だよテメエ。穴に突っ込みたいんだったら余所あたんな。テメエの粗末な×××で満足出来るような頭とケツの軽い女にさあ…!」

    臨戦態勢、迎撃体勢。ただのナンパなら軽く鼻であしらう。いつもの事だ。だが違う。歩道橋の中ほどで佇むこの軽薄そうな金髪のアロハシャツ男は違う。

    「噂以上の狂犬ぶりだメルトダウナー。今にも喉笛を咬み切りそうな勢いだ。とんだ嫌われようだな」

    視線で心臓を握り潰せるほどの狂気を宿した麦野を前に動じないどころか軽口を叩いて見せる余裕。
    自分と同じ深い闇の底で『人を喰って』生きている人種だと断じるに足る匂い。
    背を向ければ必ず刺される。そう確信出来る、見えざる刃のような男。

    土御門「“上”からのメッセージだ。上条当麻に手を出すな」

    天才陰陽師にして風水術の天才、必要悪の教会に属する魔術師にして学園都市暗部に住まう多角スパイ――土御門元春である。

    834 = 830 :

    ~第七学区・歩道橋2~

    麦野「はあ?なんでそこで上条が出て来るのよ?それも“上”?学園都市上層部から?アンタ頭のネジ緩んでんじゃない?」

    当初は同じ暗部…『ブロック』『メンバー』『スクール』と言った主だった組織からの接触かと踏んでいた麦野の読みは外された。
    学園都市上層部?あの選民主義と特権意識の塊のような連中が何故、たかが一人のレベル0(無能力者)のためにこんな使いを寄越す?

    土御門「理解する必要も信用する必要もない。お前はただこの言葉に従っていればいい。用件はそれだけだ」

    麦野沈利が思考する僅かな逡巡の合間に、土御門は歩道橋の欄干に腰掛けていて…そして―――背中から、頭から落ちていった。

    麦野「!?待てテメエェッ!!」

    土御門「じゃ、伝言はそれだけだにゃー。ただし」

    ―――単なる色恋沙汰だったなら、それはオレの知る所じゃないんだにゃー――

    駆け出し、欄干から麦野が身を乗り出して見下ろした時…土御門の姿はもうどこにもなかった。まるで虚空に消えてしまったように

    麦野「(割らせてやる。あのニヤケ口。そうだ。首から下を無くしてやる。手足がもげようが知った事か…潰す!!)」

    まだ間に合う。追跡し追走し追撃しなければならない。聞き出す。拷問にかけてでも。麦野は逆立てた髪を一撫でし、新たな狩りに赴かんとする。しかし―――

    『pipipipi!pipipipi!マヨエー!ソノテヲヒクモノナドイナイーカミガクダスーソノコタエハー…』

    麦野「…!」

    突如として鳴り響く着信音…『電話の女』からだった。

    835 = 830 :

    ~第七学区・とある病院、昼~

    冥土帰し「うん、じゃあ気をつけてね?幸いにも明日は土日だ。ゆっくり身体を休めなさい?」

    上条「はい!お世話になりましたー」

    退院の日。上条当麻はいくつかの荷物を纏めて冥土帰しの病院を後にする。
    迎えや付き添いは…なかった。上条一人での帰宅である。
    もともと平日の金曜日である。土御門や青髪も学校で、当然と言えば当然なのだが…いつも傍らにあった顔がいない。

    麦野『――私と関わった事、いつか後悔させてやるんだからね――』

    そう言って微笑んだあの日から、麦野達はパッタリと病室を訪れなくなった。
    一応、交換していたメールアドレスや電話番号に送って見たが音沙汰がない。

    上条「(オレ、なんかマズい事言ったかな?)」

    ワシャワシャと特徴的なウニ頭を掻きながら上条は少し落ち込む。
    出会った経緯はともあれ、ああもあれこれ世話を焼いてもらえば多少なりとも意識せざるを得ない。
    ましてや麦野沈利は綺麗だ。同年代のクラスメートとはまた違った、年上のお姉さん的な部分が上条に強く印象を残している。

    上条「(まっ…その内ひょっこり会えそうな気もするし…また危ない事に首突っ込んでなきゃいーんだけどな)」

    そうこうしている内に上条はおよそ一週間ぶりとなる愛しの我が学生寮へと到着した。
    まずは入院中に溜まりに溜まったゴミと洗濯物を片付けねば…そんな事を考えながら階段を登る。
    一段、また一段と。そして登りきった頃には…

    836 = 830 :

    上条「んん?なんか美味そうな匂い…また舞夏来てんのか?」

    上条と土御門の部屋のどちらからか美味しそうな匂いがする。
    今の今まで病院に居て帰りを待つ人間のいない自分を除外すれば隣人の土御門しかいない。その妹の舞夏であろうと当たりをつけたのだ。
    ましてや昼間の学生寮。十中八九無人である。

    上条「ったく、いいなあ…土御門のヤツ。はあっ、上条さんにもメシ作って待っててくれるお姉さんが欲しいですよ…」

    男寡婦の侘びしい我が身を呪い、隣人に微かな羨望を感じながら上条は家の鍵をポケットから漁り、鍵穴に差し込む…

    上条「…あれ?」

    いつもと感触が違う。カチャンカチャンとした開錠の音しかしない。どう言う事だ?と首を捻る上条に――

    「はぁい、おにーさん?」

    上条「!?」

    扉が開く。この数日ですっかり聞き慣れた、透徹ながら涼やかな声音と共に

    麦野「おっかえりー♪」

    上条「……わああああああ!!?」

    麦野沈利がエプロン姿で上条当麻を迎え入れたのである

    837 = 830 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。レスくださった方々、ありがとうございます。
    今日の投下はここまでです。ハッピーエンドを目指して頑張りたいです。

    簡単ですが、次回予告を…

    ・むぎのんクッキングin上条家
    ・オレの愛に常識は通用しねえ
    ・未定

    の三本です。それでは失礼いたします。

    839 :

    超頑張れ

    スレタイの題材もこのまま消えるにはもったいない希ガス

    840 :

    おつおつ

    PINKな板だと浜麦が多くて
    VIPな板だと上麦が多い、ふしぎ!

    841 = 830 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。皆さんのレスと上麦愛が私のガソリンです。いつも助けられています。スレを間借りさせていただいて感謝してもし足りません。

    早めの予告ですが、明日も同じ時間に投下いたします。次で第二部が終了の予定です。
    第三部から上条と麦野の短い夏になると思います。相変わらず内容はノープランですが、よろしくお願いします

    はい。麦野の着信はNo Buts!です。後に絡んでくるネタなのでちりばめました。それでは失礼いたします。

    842 :

    モンハンする手を休めても見に来なければ

    843 :

    クソッなんてことだ寝る隙がない

    844 :

    麦のんクッキングとかマジ俺得
    次回予告でていとくン参戦フラグも立ったし、このssはどこに向かうかわからん

    845 :

    ~第七学区・上条当麻の部屋~

    上条「なんで麦野さんがここにいるんですかいらっしゃるんですかおられるんですかの――!!」

    麦野「三段活用出来てないわよ?いつまで玄関で突っ立ってるつもり?アンタの部屋でしょ?」

    激しく狼狽する上条を尻目に、麦野はコトコトと味噌汁をかき混ぜる作業に戻りつつシレッと言ってのける。
    ギャルソンが身につけるような黒のエプロンを纏いながら。結い上げたサイドポニーをゆらゆら揺らして。

    上条「どうやってオレの部屋を突き止めたんでせうか!?ってかどうやって上がったんだよ!」

    麦野「そんなのアンタを抹[ピーーー]るって決めた時調べたに決まってるでしょ?鍵ならウチの下っ端に開けさせたわ。あっ、洗濯物出しちゃって」

    上条「んがー!!会話が繋がってるのに意志が通ってないー!!」

    空き巣でも入ったかと身構えてみればこのザマである。しかもその侵入者は上条から荷物を奪い取るとポイポイ洗濯機に放り込み、まるで母親のようにテキパキと動いて回っている。
    抗議しようにもそのタイミングが掴みきれないほど麦野の手の動きは流れるように、切れ目なく動き続いた。

    麦野「最初に言ったでしょ?アンタを抹[ピーーー]るのは私だって。これは監視よ監視」

    上条「終わったんじゃなかったのか!?」
    麦野「私と関わった事を後悔するのね。あっ、そうそう…」

    すると麦野はサッと何かを取り出した。見覚えのある雑誌…扇情的なポーズを取ったグラビアアイドルが表紙を飾る…世に言う「Hな本」を上条にチラつかせた。

    846 = 845 :

    麦野「いくら一人暮らしだからってベッドの上に投げっ放しはお姉さん関心しないにゃーん?」

    ニヤニヤとこの上なく楽しそうに、わざわざ見開きまで開いてからかう麦野に上条は完全に慌てふためいた

    上条「うわああああ!か、返せえ!返して下さいぃぃぃ!死ぬ!死にますぅっ!」

    麦野「きゃー触んないでかみじょう菌が移っちゃうー♪」

    上条「不幸だあああぁぁぁ!!!」

    その後、上条当麻は目撃する。ベッドの上に綺麗に整えて置かれたHな本の束を。
    そして麦野特製の鮭を主菜とする昼食に呼ばれるまで、上条は燃え尽きた灰のようになっていた。

    ~第七学区・上条当麻の部屋2~

    上条「御馳走様でした!」

    麦野「…すごい食べっぷりだったわね。やっぱり上条も男の子なんだねー」

    結論から言って、麦野の鮭料理は上条にとって非常に美味しかったのである。
    ただでさえ今月頭から食うや食わずの生活で、かつ入院中は塩気の少ない病院食。
    つい先日まで死にかけていたとは思えない健啖ぶりに麦野も後半は呆れ顔であった。

    上条「いや…本当マジで美味かったっす。学園都市に来てから誰かに料理作ってもらうなんてなかったから」

    麦野「…彼女いないって嘘じゃなかったんだ」

    食事の間にも、麦野は少しだけこの数日の事情を上条に語った。ここ数日立て込んでいて見舞いにいけなかったこと、たまたま仕事帰りに寄ったことなどを『バイト』などとボカシながら。
    しかし変な所で鈍感な上条は気づかなかった。仕事帰りだと言うのに、わざわざ食材やエプロンまで麦野が用意して来た事に。

    847 = 845 :

    上条「ははは、麦野さんみたいな綺麗な彼女がいてご飯作ってくれたら上条さんの日常は薔薇色なんですけどねー」

    麦野「!」

    そして、頬杖をついていた麦野が急にあらぬ方へそっぽを向いている事も。

    麦野「…じゃなくていい」

    上条「えっ?」

    麦野「…別に、麦野“さん”じゃなくていい。ただの麦野でいいわ」

    麦野沈利は揺れている。この鈍感なお人好しの前に立つと、『アイテムのリーダー』『レベル5の四位』どちらの側にも立てない自分がいる事に揺れている。
    この…人殺しの自分すら助けると言ってのけた偽善使いの前では『ただの麦野沈利』に戻されてしまう自分に揺れている。

    麦野「復唱」

    上条「はい?」

    麦野「復唱!」

    上条「あっ!はいぃ!え~…“麦野”」

    麦野「…20点。もう一回」

    上条「…“麦野”」

    麦野「よろしい」

    『仕事』があった。狂ったように笑いながら命を刈り取り、むしり取り、奪い取った。それはフレンダ達も同じだ。
    四肢を焼き切り、首を落とし、血煙と血溜まりの中で笑い転げた。
    狂わなければ正気でいられない絶対矛盾。だから仕事が終わった後――上条当麻に会いたい、そう強く思った。

    848 = 845 :

    麦野「じゃ、片付けるから。テレビでも見てれば?」

    上条「いや、流石にそこまでしてもらうのは流石の上条さんも心苦しいですよ。ってな訳で皿洗いくらいリハビリ代わりにやらせてくれないか?」

    麦野「リハビリね…なら、それとは別にアンタに頼みたい事があるんだけど?」

    上条「なんでせうか?」

    この思いがどこから湧いてくるのかわからない。あの胡散臭いタヌキ野郎の言う『色恋沙汰』なのか、上条当麻に対するある種の『依存』なのか、麦野沈利にはわからない。だがしかし――

    麦野「服、買いに行くの付き合いなさいよ。寝てばっかりで身体固くなってるでしょ?リハビリよ、リハビリ」

    押し掛け同然に柄でもないお節介まで焼いて、それを口実に上条に会いにくるこの気持ちは、一体なんなんだろう――それは、レベル5の四位たる明晰な頭脳を持つ麦野沈利をして、もう少し時間のかかる感情であった。

    ~第七学区・Seventh mist~

    上条「はあ…」

    上条当麻は弱り切っていた。病み上がりの身である事を加味しても疲労困憊といった様子で、セブンスミストから少し離れたジュースバーにいた。原因はもちろん…

    上条「女の子の買い物って…本当に時間かかるんだな…」

    店から店へ跳び移り、次から次へと服をとっかえひっかえし、あれでもないこれでもないと一人ファッションショー状態の麦野に付き合うのも一時間が限界であった。
    そんな上条を麦野は見やると

    麦野『かーみじょう?久しぶりに歩いて疲れちゃった?あそこで休んでる?』

    こんな調子である。服を誉めるボキャブラリーも尽きた所で上条はこのジュースバーで椅子に座りバナナジュースを啜っていた。

    849 = 845 :

    上条「長いなあ…」

    「だよなあ」

    上条「?」

    ふと声のした隣の椅子を見やると、そこには自分と同じように女の子の出待ちなのか、垢抜けた様子の青年がキウイジュース片手に話し掛けて来た。

    「おたくも彼女待ち?長いよなあ女の服選びは。どうせ脱がしちまえば変わらねえのによ」

    上条「ブッ!」

    てらいもなく飛び出した爆弾発言に思わず噴き出す上条。傍らの男は見るからに女のあしらいを心得た、遊び慣れたホストのように見えた。

    「はっはっは。ウブだなおたく。こんなので動揺してちゃ身が持たないぜ?」

    上条「さ、さいですか…」

    「こちとら身体がいくつあっても足りねえよ…お、来た来た」

    カラカラと笑うジゴロのような男が上条の傍らから離れる。するとそこへ…

    「ていとくー!ごめーん!」

    「待たせてごめんねー!行こっ!」

    「おう。じゃあな。おたくも頑張れよ」

    上条「あ、ああ」

    二人の全く異なるタイプの美少女と美女が駆けてきた。男はごく当たり前にその輪に加わり、両手に花状態で上条に背を向けて去っていった。

    上条「提督…?艦長さんかなんかか?」

    たった今まで傍らにいたホスト風の男…その男こそが学園都市第二位、未元物質(ダークマター)垣根帝督である事を、上条は終ぞ思い当たらなかった。

    麦野「かーみじょう?」ムニッ

    上条「!!?」

    後頭部に当たる、柔らかな感触に遮られて

    850 = 845 :

    ~第七学区・ジューススタンド~

    麦野「こぉ~んなキレイなお姉さんとデートしてるって言うのにもう他の女の子に目移り?しずりん悲しいなあ?」ムニムニ

    上条「ちょっ、ちょっ麦野さん!胸!胸当たってますって!人が見てますって!」

    麦野「麦野って呼んでくれなきゃどかな~い」ムニムニムニ

    垣根帝督の後ろ姿を見送っていた上条当麻の背後からたおやかな細腕を回してその特徴的なウニ頭を胸に抱える麦野沈利。
    ただでさえ華がある彼女は同性からも目を引き、結果として一方的にじゃれついている様子も耳目を引くのだ。

    「はや~…あのお姉さんってば大胆~」

    「さ、佐天さん!あんまりジロジロ見ちゃダメですよぅ!」

    上条「むっ、麦野!頼む離れてくれ!離れてくれ麦野ぉぉぉ!」

    麦野「本当に免疫ないのねアンタ…あっ、そのジュースちょうだい」

    長い黒髪と頭に花飾りをつけた中学生と思しき女の子連れの見つめる中、ヒョイと上条が飲んでいたバナナジュースに手を伸ばし、ストローに口をつける。

    上条「(こ、これが噂の間接キス…!)」

    次から次へと鈍感な上条さえ揺さぶる麦野。わざとからかっているのか、上条を男として見ていないのか…

    上条「(ははっ…オレなんかじゃ釣り合うはずないよな)」

    きっと麦野が自分を構いたがるのは大怪我をさせてしまった負い目や、もしくは姉が弟をいじるような感覚なんだろうな、と一番納得出来る答えに落ち着く上条。が

    麦野「(…ここまでしてんだからもう少しなんかあるでしょうが)」

    対する麦野はテンションが原子崩し(メルトダウナー)である。
    『色恋沙汰なら関知しない』というあの言葉が、上条の側に居たいという麦野のスキンシップに拍車を駆けていると言うのに…


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