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    元スレ憧「あんたなんて大っ嫌い!」

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    みんなの評価 : ★★
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    452 = 390 :

     そういう話を2人でしたのが9月下旬だった

     今年は10月下旬に大学祭があった

     シロは美術展の準備で忙しくなり私も麻雀部の出し物や企画に追われていた

     大学祭が終わってもゆっくり休めず、溜めていたレポートや2年ゼミの発表課題・他校との交流戦と何かと毎日忙しく

     1か月ほど連絡の取らない日々が続いた


    ピンポーン


    「はーい…あれ?どうしたのー?」

    蒲原「ワハハ 今日はユミちんたちと夕飯食べに行くから、あっこもどうかと思ってなー」

    「あーそうなんだ、誘ってくれてありがと。入って」

    「ごめんねー今ゼミの発表資料作っててさ、あともうちょっとで終わるからそこに座って待ってて」

    蒲原「おう」


    カチャカチャカチャ

    カチャカチャ

    454 = 390 :

    蒲原「なー最近シロっちに会ったかー?」

    「んーそういえば会ってないかも。この間まで大学祭あったし、あたしも最近ゼミの課題でずっと図書館詰めだったから…何?もしかしてまた講義出てないとか?」カタカタカタ

    蒲原「講義は出てるみたいだぞー」

    「そうなんだ、てかあんたシロの携帯知ってるんだからメールか電話すればいいじゃない」カチャカチャ

    蒲原「あっこー」

    「んー?」




    蒲原「シロっち…大学辞めるってさ」

    455 = 405 :

    しえん

    456 = 390 :

    「…えっ?」

    蒲原「大学辞めて、来年から留学するって」

    「留学って大学のとか卒業してからって話じゃなかったの?」

    蒲原「最初はそうだったらしいんだけど事情が変わったらしくてな」

    「だって、あと1年で卒業できるじゃない。それからだって遅くないでしょう?」

    蒲原「そうなんだが私もそこまで詳しくは知らないんだなー」

    「…まあ、でもいいじゃない」カチャカチャ

    「中退して留学するってことは行ける目途が付いたってことでしょう?」

    蒲原「ああ!そういうことかもしれんな」

    蒲原「さすが、あっこだー」

    「ただの予想だけどね。でも決まったなら皆で今度お祝いしよっか?」カチャカチャ

    蒲原「いいな、シロっち喜ぶぞ~」

    「じゃあ決まりねー」



    あたしの中でまた何かが小さく鳴った気がした

    457 :

    追いついただと

    458 = 390 :

    「あっ!シロー久しぶりー」

    シロ「憧…」

    「大学辞めて留学するんでしょ?智美から聞いたよ」

    シロ「えっ、ああ…」

    「いつから行くの?」

    シロ「3月の頭に行って、まず向こうの外語教室に通うことになってる」

    「じゃあ出発まで結構時間あるんだ!行くまでに皆で集まってシロの留学祝いしようって話が出てるからさ」

    シロ「そうなの?」

    「うん、皆が帰省する前にやりたいし、また近くなったら都合あわせて決めよっか!」

    シロ「そうだね」

    459 = 390 :

    シロ「そういえばクリスマスの日って空いてる?」

    「クリスマス?あー今のとこ空いてるよー」

    シロ「今のところって?」

    「智美たちがクリスマスケーキ売るバイトするって言ってたから、それに付き合おうかと思ってて」

    シロ「するの?」

    「んー特にバイトはしてもしなくてもどっちでもよかったから、しないかな」

    「寒い外にいるよりシロの家のコタツで温まってた方がいいじゃない」

    「あ!智美たちにケーキ頼んでおいてバイト終わってから持ってきてもらおっか」

    「それまであたしらで料理作って待ってればいいし」

    シロ「じゃあ…そうしようか」

    461 = 390 :

    ―クリスマス当日―


    「シロって実家帰って何してんの?」トントントントン

    シロ「コタツに入って…座椅子に座ってミカン食べながらバラエティー番組見てる」ザクザクザク

    「ずっと?」

    シロ「うん、だけど高校の時の友達が帰省してたら会いに行く」

    シロ「憧は?」

    「まあ私も友達に会って麻雀するか家の手伝いして終わりかなー外寒いしねー」

    「てかこの会話今更じゃない?」

    シロ「振ってきたのは憧だよ?」

    「まあ、そうなんだけど聞いたことなかったなーって思ってさ」

    シロ「そういえばそうかもね」

    「よしっ!一通り料理は完成っとーあとは智美たちが来るまで待てばOK!」

    462 = 405 :

    しえん

    464 = 390 :

    「なんか面白いのやってる?」

    シロ「好きなの回していいよ…回すのダルい」

    「どの番組も皆サンタのカッコねー」カチャカチャ

    シロ「もしサンタ来たら…プレゼントもらう?」

    「貰えるなら欲しいかなーもう子どもじゃないから貰えないけどね」

    シロ「じゃあ…サンタからじゃないけど憧にプレゼント」

    「えっ?プレゼント交換は智美たち来てからでしょ?」

    シロ「いや、それとは別に…はい」

    465 = 428 :

    紫煙

    466 = 390 :

    「別?…これ開けていいの?」

    シロ「うん」


    ガサガサ


    「うわー綺麗なキーホルダー」

    シロ「ステンドグラスで作ってみたんだ」

    「作ったって…もしかしてこれシロが作ったの?」

    シロ「うん…同じクラスの子でステンドグラスの職人目指してる子がいて作り方教えてもらったから」

    「自分でこれ作れるってすごいわねーありがとうシロ」

    467 = 428 :

    しえん

    470 = 390 :

    シロ「憧…あのさ」

    「んっ?」


     ステンドグラスの置物から目をはずし声のする方へ眼をむけると

     シロの顔がすぐ目の前まで近づいていた


    「?…なに?」

    シロ「あのさ…憧は―」


    ピロロロピロロロ


    「シロ、電話鳴ってるよ」

    シロ「うん…」サッ


    シロ「もしもし…ああエイスリン?どうしたの?」


     エイスリンという単語が頭に浮かぶとあたしの中で何かがまた小さく鳴った

    471 = 390 :

    (にしてもビックリしたーキスでもされるかと思った…いやまあ、そんなはずないんだけどさ

      でも何か言いかけてたような―)


    ヴーンヴーン


    「はーい、もしもしー…バイト終わったの?うん、ホント?うん、じゃあよろしく」

    「智美たちバイト終わって今からこっち来るって」

    シロ「もう終わったの?」

    「うん、あいつ売る才能には長けてるみたい、ケーキ完売させたんだってさ」

    シロ「サトミは人との垣根がないからね」

    「そういえばさーさっき何言おうとしてたの?」

    シロ「また今度言うよ…」

    「そう?んじゃ今度教えて。あ、あれだーお皿とかもう用意しとこっか」ガタッ

    シロ「うん」

    472 = 444 :

    やっぱりシロはこういうSSに向いてるキャラだな

    473 = 390 :

     3年から四ツ谷のキャンパスに移るため、1月から都内で物件探しを始めた

     といっても特にこだわりはなく大学からほど近い学生マンションを借りることし

     講義もないのにいつまでも多摩の寮に居ても仕方がないので2月の初旬に引っ越しすることを決めた

     引っ越しには智美や佳織・渋谷さんが手伝いにきてくれて滞りなく進んだ。

     帰り際、渋谷さんがあたしに話があると言って智美と佳織を見送ってから近くのカフェに入った。


    「やっぱりどこへ行っても冬は寒いですねー」

    尭深「この時期の奈良は雪が積もるでしょう?」

    「かなり降りますよー阿知賀なんて山の中ですから」

    尭深「憧ちゃんに聞いてほしいことがあるんです…」

    「はい」

    475 = 390 :

    尭深「夏に小瀬川先輩のことが好きか聞いた時、気にしていないって答えましたよね」

    「覚えてます」

    尭深「私が先輩の留学の話を振った時、憧ちゃんは何も感じませんでしたか?」

    尭深「何か心に引っ掛かるものがあったら、それは口に出して言うべきだと思うんです」

    「それは…」

    尭深「…自覚した時にはもう遅いということがあります」

    尭深「だけど、もしそれが自覚してまだ間に合うことなら、できる限りの力でそれに向かっていってほしいです」

    「…そういうことを言ってくれるのは、私たちが麻雀部の先輩後輩で元ルームメイトだからですか?」

    尭深「いいえ―」





    尭深「同じように恋をする者同士だからです」

    477 = 405 :

    しえん

    478 = 390 :

     シロが出発する日、あたしたちはシロのマンションに集まっていた


    シロ「みんな来てくれてありがとう」

    仁美「荷物それだけとー?」

    シロ「後のは全部先にあっちに送ってあるから」

    尭深「寂しくなります…」

    シロ「うん…亦野さんにもよろしくって言っといて」

    尭深「はい」

    蒲原「空港まで見送りくらいするぞー」

    佳織「ぜひさせて下さい」

    シロ「いいよ、ここに来てもらえただけで十分嬉しいから」

    「あっち行って留年しないでよー」

    シロ「うん…これ憧にあげる」

    481 = 390 :

    「何このおっきい封筒」

    シロ「憧をモデルにした今までのデッサンが入ってる」

    「貰っていいの?」

    シロ「新居のお邪魔でなければ」

    「何よそれー」

    佳織「智美ちゃんカメラカメラ」

    蒲原「おお、そうだった」サッ

    蒲原「おーい記念撮影するぞー」

    「はーい」




    そうして何事もなく、あたしたちはシロと別れた―

    482 :

    483 = 390 :

     はずだった―



     だけど、四ツ谷のマンションに戻って

     もらったシロのデッサンを1人テーブルの椅子に座って見ていたら急に寂しさが鳴り始めた

     
     あたしは似たような鳴きを前にも味わっていた

     しずたちと離れた中学の時のあの時―

     だけど、あの時と違う



     何かが心の奥でストンと落ちた



     あたしはシロが好きだったんだ―


     言い出せずにいた言葉をあたしは今になってあの人にどうしても伝えたくなった


    ガタン

    485 = 444 :

    シエンヤデー

    486 = 390 :

     無我夢中で自転車をこいでいた


     あたしは気がつくのがいつも遅いから

     あの時はなりふり構わず阿知賀の部室に走っていた

     離して離れた手がまたあたしの前にきてくれたから

     ただ掴みたくてあの時のあたしは走っていた

     だけど、求めていた人の手がまた来てくれるわけじゃない

     今を逃したらもう掴めないかもしれない



     けれどそう決心した時に限って予期せぬことが起こるのだ

     今まで一度もパンクしたことのないタイヤがパンクし自転車は使えなくなった

     電車もここから最寄まで走っても10分かかる

     時間が刻一刻と迫っていた

     私の頭は混乱し、どうしていいか分からなくなっていた

    487 = 480 :

    しえん

    488 = 390 :

     間に合わない!間に合わない!!

     もうあたしはシロに会えない、もうダメなんだ…もう全部…


    ??「そうやって地べたに座り込むとお尻が冷えるらしいぞ~」

    「!!」

    「なんで…あんたがここにいるの!?」

    蒲原「ワハハー驚いたか~あっこー」

    「当たり前でしょ!てか何してんの!?」

    蒲原「何って決まってるだろー」

    蒲原「行くんだよ、空港に」

    「!?」


     蒲原の後ろにはいつものフォルクスワーゲン・タイプ2が止められていた

     中を見ると佳織と渋谷さんが後部座席に座りこちらに手を振っている姿が見えた

    489 = 405 :

    いそげアコチャー!

    490 = 441 :

    おおお

    491 = 390 :

    蒲原「まぁ、いいからいいからーワハハ」グィ

    「ちょっと!」


    バタン


    蒲原「時間ないからなーちゃーんとつかまってろよー」ブロロロローン

    「これじゃ着く前に事故るわよ!」


     久しぶりに乗った智美の車は毎日のように乗っていた去年と比べて運転の荒々しさが無くなっていた


    蒲原「なんだかんだで免許取って4年だからなー」

    「まあインハイの時よりマシになってるわ」

    蒲原「ワハハ そうだろう」クルッ

    「こっち向かなくていいから!ちゃんと前見て!」

    蒲原「おーう」

    493 = 405 :

    4年目にしてようやく若葉マークレベルから脱したか。
    長かったな……かじゅ達はよく耐えた。

    494 = 390 :

     都内から東関東自動車に入って進みが明らかに遅くなった

     車は小刻みに前に動くだけであまり進んでいない


    蒲原「渋滞か~まいったなー」

    佳織「智美ちゃん、ラジオ入れよう」


    パチン

    『上りで20キロの渋滞…◯◯では玉突き事故の影響で20キロから30キロの渋滞…お出掛けの方はご注意ください』


    蒲原「玉突き事故じゃー当分動かないかもな…」

    佳織「あれ?ヘリコプターの音が聞こえる」

    尭深「もしかしたらテレビ局か新聞社のヘリじゃないですかね、ここまで動かないとなると大きい事故なのかもしれませんし」

    佳織「なるほど」

    蒲原「どうしたもんかな~」

    「もういいよ」

    496 = 390 :

    蒲原「ん?」

    「もう…ここに20分も止まってる、急に動き出したとしてもやっぱもう間に合わないよ!」

    「ここまで車、走らせてくれてありがとう…あたしね―



    『新子憧!見つけましたわよ~~!』



    「なっ何!!!???」

    蒲原「おーこの声は」

    佳織「龍門渕…」

    尭深「透華さん?」


     右方向を見るとヘリコプターの中から拡声器片手に立つ龍門渕透華の姿がそこにあった


    透華『新子憧!おいでらっしゃいですわ~!!!さあ、この梯子をつたってヘリにお乗りなさーい!』


    「えーーーーー!!!!???」

    497 = 390 :

     あんな大々的なアピールをされてしまっては梯子を言われたとおりに登るしかなかった


    「あんた、やることがいちいち大きすぎ!こんなのどっかのアクション映画のワンシーンみたいじゃない!!」

    透華「私の家ではヘリを使うなんてごく普通!当たり前のことですわ!」

    「あーはいはい」

    透華「なんですの!?その態度!」

    「…ありがとう」

    透華「最初からそう言えばよろしいのに!」

    「……」

    透華「貴女が―」

    「えっ…」

    498 = 405 :

    しえん

    499 = 390 :

    透華「貴女がいまこれから会いに行こうとしている相手は、あなたにとってかけがえのない人なのでしょう?」

    「そう、ね」

    透華「私にもいますわ」

    「えっ?」

    透華「かけがえのない家族が…今は遠く離れてしまっていますが」

    透華「ただ私は、同じようにかけがえのない存在を持つあなたのことを助けてみたくなってヘリを出した、それだけですわ」

    「ありがとう…透華」

    透華「どういたしまして」


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