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    元スレ憧「あんたなんて大っ嫌い!」

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    みんなの評価 : ★★
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    502 = 390 :

    透華「そろそろ空港の近くに着きますわ」

    「間に合うかな」

    透華「間に合いますわ!ハギヨシ!!」

    ハギヨシ「はい、透華お嬢様」


     かなりの速さで飛んでいたと思ったヘリはさらに加速した

     窓の外から見える目的地はもう間近だった

     空港近くのヘリポートに着陸すると、すぐさま私はドアを開け外へ出た


    透華「早く行きなさい憧!」


     背中から透華の声が聞こえた

     あたしは振り向かず、声の代わりの手を挙げて返事をし駆けだしていった

    503 = 405 :

    寝る前支援

    504 = 390 :

     空港なんて、この広いところであたしはシロを見つかるだろうか

     ここまで来て見つからなかったら

     すれ違っていたら

     タッチの差で手続きを済ませていたら

     振り切っても振り切ってもまだまとわりついてくる考えに

     走っている足が震えた

     こんなことになるんだったら、あの時ピンとこないだとか冗談でしょうとか笑い飛ばしてた自分をぶん殴ってやりたい

     あの時教えてくれた初瀬や渋谷さんは間違えなくあたしよりちゃんとあたしたち2人について考えてた

     恋が何か知ってた

     あーホントありえない

     あやふやに、曖昧にしないでおけばよかった…

    505 = 390 :

     シロがあたしをどう思っているのか分からない

     けど

     あたしはシロのことをどう思っているか

     それだけは、ちゃんと分かってる

     だからあたしはシロの手を掴みたいって決めた

     何があってもあの手を掴みたい

     シロがどうとかじゃなく

     あたしが―

     あたしがあの人のことを




     好きだから―





    「シロッ!!!」

    507 = 390 :

    シロ「憧、どうしてここに?」

    「あんたに、どうしても…言っておきたいことが、あって来たの!」ハァハァ

    シロ「言っておきたいこと?」

    「そうよ…」

    シロ「なに?」

    「向こうに行ったら寂しんじゃないの?」

    シロ「…まあね」

    「だよね…」



     言わなきゃ、せっかくここまで来たんだから…言わなきゃ

    509 = 390 :

    ・シロ「「あのっ…」」

    (被った…)

    「シロから言って」

    シロ「うん」

    シロ「あのさ、もう先に…エイスリンが向こうに行ってるんだ」

    「えっ?」

    シロ「向こうで広い部屋借りてエイスリンと一緒に暮らすことにしてて…だから心配しないで」

    「一緒に暮らす…?」

    シロ「うん」

    511 = 506 :

    ああ・・・

    512 = 390 :

     こういう時の衝撃につける言葉は何だろう

     一世一代の大告白が告白せずに結果を先に言われてしまったこの感じ

     どう表現すればいいんだろう


     留学する話を渋谷さんから聞いて、中退する話を智美から聞いて

     どうしてあたしは知りたかったことを聞けず

     最後の最後に知りたくなかったことを

     本人の口から聞かされないといけないんだろう
     

     言うと決めてきたはずの言葉がでなかった

     目の前にいるはずのシロが遥か遠くに感じる

     鳴きやまなかった寂しさはいつの間にか恐怖へ飲み込まれ姿を変えてあたしを覆い尽くしていた


     壁に飾られた写真や留学行きの話から分かることだったはずだ

     シロはエイスリンさんのことが好きで、それを言わないだけで一途に思い続けていたんだ

     それにも気が付けないあたしってなんかすっごく鈍感

     自分が嫌になる

    513 = 441 :

    いったれー

    515 = 390 :

    「そっか、エイスリンさんがいるならダルダルのシロでも大丈夫か!」

    シロ「…かもね」

    「安心した」

    シロ「言っておきたいことってそれなの?」

    「んーそうかな!」

    シロ「じゃあ…私も憧に言っておきたいことがあるんだ」

    「うん」

    シロ「ダルいなんて言わずに休みにはちゃんと帰ってくるから…だから」

    「帰ってきちゃダメ…」

    シロ「えっ?」

    516 = 444 :

    ぐあああ寝たいのに続きが気になる

    517 = 390 :

    「だってさーシロが休みのたびに日本に帰ってきたら、またダルいダルい言い出すに決まってんじゃない、そんなのダメでしょ!」

    「あっちで頑張るって決めたんでしょ?」ドン

    シロ「そう…だね」

    「だったら夢叶えるまで絶対日本に帰ってこないくらいの心持でいなさいよ!」

    「いい?」

    シロ「うん…」

    「それに、あたしはあたしで日本でプロ雀士になるわ!」

    シロ「分かった」

    「あたし、シロの描く絵楽しみにしてるから」

    シロ「うん。あっちだと日本の試合はあんまり放送しないから、私があっちにいる間に世界大会出て…必ず見るから」

    「随分大きいお願いねー」

    シロ「できない?」

    「なーに言ってんの!あたしも最初からそのつもり。20代で世界ランカーになるんだから!」

    シロ「応援してる」

    「あたしも―」

    518 = 474 :

    続き気になるのに出勤時間がぁぁ

    520 = 444 :

    寝る前支援
    あとは任せた

    521 = 390 :

    シロ「憧、会いに来てくれてありがとう」

    「いいーえ、シロとはなんだかんだ一緒にいたからね」

    「だからあたしが最後にガツンと言って送り出さなきゃと思ったわけよー」

    シロ「そっか」

    「ほら行って」

    シロ「うん…憧、行ってきます」

    「はーい行ってらっしゃい!」



     ゲートに入って行くその人の姿を見届けると



     あたしはもう一度大声で、彼女の名前を呼んだ。





    「白望!いってらっしゃい!!」

    522 = 390 :

     どのくらいの時間そこに座っていただろう

     これから旅行に行く人帰ってきた人、出張に行く人戻ってきた人、さまざまな人々がさまざまな想いを抱えてこの空港を縦横無尽に行きかっているのを

     あたしは焦点の定まらない瞳でぼんやりと眺めていた


    透華「憧!」


     透華の声が聞こえた

     そのあとに智美、妹尾さん、渋谷さんの声が続けて聞こえてきた。

     このターミナルは広くて声が響くから想像以上に大きい声だったと思う

    523 = 390 :

    透華「あなた、どうしましたの?」

    「…んーいやさ、空港まで来たはいいけど帰る手段がなくてさーお財布忘れちゃったし」

    「だからここで1人途方にくれてたわけ」エヘヘ

    透華「なに言ってますの貴女?」

    透華「私はそういうことを言ってるんじゃありませんわ!」ガシッ

    「えっ?」

    透華「だって…だって貴女いま―」


    透華「泣いてるじゃありませんか」


     あたしはそう言われてやっと自分が頬を伝う涙を隠すことなくそこに座っていたことに気がついた。

     頬から流れる涙をぬぐっていると透華があたしを優しく抱きしめてくれた

     そして彼女が失恋したわけでもなしに涙を流していた。

    524 = 482 :

    ふんふむ

    525 :

    なんかスクラン思い出した

    526 = 390 :

     シロが向こうに行ってから

     智美のパソコンに時たまシロからメールが届く

     中身は向こうの風景の写真1枚とデザイン画の写真1枚がいつも必ず添付されていて

     文章は打つのが面倒なのか毎回ほとんど内容が変わらず簡素な近況報告だけだった

     シロのデッサンは向こうに行ってからだいぶ変わった

     影響をそれだけ周りから受けている証拠なんだと思う


     あたしが3年になると龍門谷麻雀部は1部リーグに復帰してインカレでベスト3に入った

     関東大学大会でも良い成績を残し、活動停止していたのが嘘のように今年は飛躍の年となった

     インカレ優勝こそは逃したもののチームや個人戦での試合結果を見てくれた東京のクラブチームから声がかかり

     あたしは大学を卒業した後、そこのクラブチームに所属した。

     所属直後は負け試合もいくつもあったが

     徐々にペースをつかみ、その後いくつかの大会で優勝したり順調に国内ランキングの順位を上げた。

     インハイで戦った選手がプロとして顔を合わせ戦うのもすごく刺激になった

     そうしてプロとしての日々を過ごしていたあたしのもとにニュースが飛び込む。

     シロが結婚したそうだ。

    527 = 390 :

     それを知ったのはチームであまり仲の良くない人が


    「この人、あんたの大学の先輩でしょう?」


     といらぬおせっかいを発揮して雑誌を手渡してきた。

     写真だけ見てそうだとだけ言い、中身は読まずに返した

     ここで興味津々な様子を見せるのは非常に癪に障るからだ

     だから雑誌の名前だけ覚えて帰りにコンビニで買った

     帰宅しコンビニで一緒に買ったビールとおつまみを片手に記事を読む。  

     愛に溢れた記事。

     記者へのコメントも素敵。


     まず第一に、この記事を家で読むと決めたあの時の自分を褒めてあげたい。

     そのご褒美に最後のつまみを贅沢に一口で食べる。

     次に、やっぱりあの同僚はあたしの中で史上最低のいけ好かないおせっかい野郎だ

     腹いせに豪快にビールを一気飲みする。

     そして最後にシロに対して…

    528 = 390 :

     よかったねシロ。

     素敵だよシロ。

     ダルいなんて言葉、まだ言ってるんだね

     なんだか懐かしくなるよ

     シロ、あたしはやっぱり―







    「あんたなんて大っ嫌い!」


     空いた缶ビールを片手で握り潰し、天井に向かって出せる限りの大声で言い放つと

     少し蛍光灯のひもが揺れた気がした。

     だけどそれだけで、

     後には空虚な空間がそこにあるだけだった。

     蛍光灯の明かりが滲んで見えた。

    530 = 525 :

    こうして独り身アラフォーは生まれるのか…

    531 = 390 :

    ………………………
    ……………………
    …………………
    ……………
    …………


    「ねぇママあのね。一昨日、喧嘩したの…付き合ってる人と。ちょっとしたことなの、お互いこんなケンカになるなんて思ってもみなかったんだから」

    「でも連絡できずにいる」

    「うん。なんだか1日連絡しないと連絡するのがだんだん気おくれしてきちゃって」

    「そういうものですわ」

    「どうしたらいいかな?」

    「あなたはどうしたいんですの?」

    「仲直りしたいよ。でも、あたしが謝るのはちょっと嫌」

    「ワガママですわね」

    「ただ、何においても大切なことがありますわ」

    「大切なことって?」

    533 = 390 :

    「人との関係や物事というのはある程度時間が経ってしまうと、どんなに尽力したとしても、もうどうしようもなくなることがあるということですわ」

    「じゃあ、私たちもうダメなの?」

    「ダメなのかどうかは私には分かりません、ただそういうことが総じてあるということですわ」

    「憧とシロが恋人になれなかったのもどうしようもなかったことなの?」

    「…いいえ。あの2人はあまりにも近すぎて気が付かない、離れて初めて互いが互いの全体像を見ることができた、そして相手に魅かれていることに気が付いた

     けれど、魅かれているのに気が付いていながらその口を閉ざしてしまった…

     心を開きたいと願った相手には決して、唇を閉ざしてはいけませんわ」

    「なんか複雑」

    「あなたも謝るための連絡でなく話し合うのための連絡と思えばいいのですわ」

    「…話し合うための連絡かー」

    535 :

    起きた

    536 = 390 :

    「ねぇママ、アコは今どうしてるの?」

    「知りたいですの?」

    「うん、だってアコはシロが好きだったのに結婚しなかったんでしょう?」

    「…そういうことを聞く前に、自分のことを済ませなさい」

    「えー」

    「当たり前ですわ。あなたがどうしたいか決めたのなら尚更のこと」

    「も~分かったよ。今から電話してくるから後でちゃんと続き教えてよね~」

    「そうですわね」


     スタスタスタ

     バタン




    (この話に、続きなんてありませんわ。


     憧が私に託した日記にはあそこまでしか書かれていませんもの―)

    538 = 390 :

     結婚し子どもが生まれ、育児にかかりっきりの私に舞い込んだ一通の手紙。

     封筒は大きくそして厚みがあり書類ケース入れのようでしたわ

     封筒の中を開けると、何十枚にも及ぶデッサンと2枚綴りの手紙、本

     そしてあの日、シロが旅立つ前にマンションの前で皆で撮った写真が一枚同封されていました




     シロは新進気鋭の現代美術家になり、かねてからお付き合いをしていた高校時代の友人と結婚しました

     日本でもちょっとした記事になりましたわ

     写真には清潔な服を着たシロとお相手のエイスリンが仲良く並んでいて

     あの何日もお風呂に入らずボサボサ頭をかきむしっていたかつての麻雀部のシラミはそこにいませんでした

     記事を読んで分かりました

     シロ、あなたはいつものダルいの一言で全て済ませておけばよかったのにと私は今でもそう思っていますわ

    539 :

    せつないなあ

    542 = 390 :

    「誤解を招くしダルいと思うけど話します…

     日本の大学にいた頃、仲良くなった女の子がいました…2つ年下の子でした

     勝ち気で負けず嫌いで面倒見がよくて留年していた自分を何度も助けてくれたんです

     そういう部分に徐々に魅かれていって、課題のデッサンを無理言って何度も描かせてもらったり、美術館に誘ったり…




     愛し続けるのは今隣にいる彼女です



     でも…2つ年下のあの子に抱いた感情は―思えばあれが自分にとっての初恋だったんだと今はそう感じています」

    543 = 390 :

     私はデッサンを一枚ずつゆっくりと見ました。

     そこに描かれた彼女、新子憧はどれも可愛げで愛おしく、瞳はまるで恋する乙女の眼差しのようでした。

     あなたたちは、いくつかのデッサンに関して言い合いをしていましたね。


    「あたしの目はこんなんじゃないわよー」

    シロ「こういう目してる」

    「似てないってこれ、こんなの出したら評価下がるから描き直しなってー」

    シロ「しないよ…憧はこういう目してるんだから」


     モデルに恋をしていた留年美大生

     その留年美大生に恋していたモデル

     どちらも人知れず恋をしていたのです。




     この恋する瞳は果たしてどちらのものだったのでしょう?



    終わり

    544 = 390 :

    以上でこのssは終わりです

    2日間の長丁場にお付き合いいただき誠にありがとうございました
    保守や支援してくださった方々
    本当にありがとうございました

    546 = 539 :

    乙! 一気に読んでしまったわ。
    この後憧はどうしたんだろう。微妙に報われない感じがせつねえ。

    549 = 441 :

    乙乙ー
    せつない・・・

    550 :

    乙やで


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