元スレ僧侶「ひのきのぼう……?」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★×4
51 = 1 :
【東の村>村長の家】
――
村長「ゴホッ、ゴホッ……」
僧侶「……」
奥さん(まったく、何でこんな子供連れてきたの!)ボソボソ
下女(も、申し訳ありません、一応僧侶と名乗ってましたので……)ボソボソ
僧侶「……あの」
奥さん「な、なに? どうなの?」
僧侶「最近、こちらの村長が無理をされたことは?」
奥さん「そ、そうね。勇者様が来るってことで、風邪の中わざわざ無理を押して出迎えたわ」
僧侶「……! それは気付かず、申し訳ありませんでした」
僧侶「実は僕は、その勇者と一緒にいた者です。数日前に、こちらに挨拶に伺ったことがあります」
僧侶「そのとき病気だと気付いていれば……」
奥さん「そ、そうなの? あんたの顔なんて全然覚えてないけど」
下女「……! だ、だったら……」
53 = 1 :
下女「アンタには、旦那様を治す責任があるはずよっ!」
下女「アンタたちのせいで、旦那様の具合が余計に悪くなったんだから!」
僧侶「そうですね。ごめんなさい」
奥さん「ちょ、ちょっと、勇者様のお連れに向かって……」
下女(いえ奥様、この子が一人でこの村に戻ってくるなんて、不自然だと思いませんか?)ボソボソ
下女(きっと仲間から外されたに違いありません。今なら怖いものなしです)ボソボソ
下女(勇者様の名を盾に無理なお礼を要求される前に、逆に責任を全部押し付けちゃいましょう)ボソボソ
奥さん(なるほど。ヘタにした手に出るより、そっちの方がいいわね)ボソボソ
僧侶「あのう……?」
奥さん「オホン。いいこと、あんた達がウチの主人に無理させたから、こんなことになったのよ」
奥さん「ここは責任持って、きっちり主人を看病しなさい。いいわね!」
僧侶「は、はい。もとよりそのつもりですけど……そのう……」
奥さん「主人に何かあったらあんたの責任よ、いいわね! じゃあ、あたしは子供の世話があるから」
下女「あ、奥様、お手伝いします。ちょっとアンタ、ちゃんと旦那様を診ときなさいよ!」
僧侶「あ、あの……。……行っちゃった……」
54 :
>>49
そういや5主人公も僧侶タイプだったな
55 = 1 :
村長「ゴホッ……ゴホッ……」
僧侶(この病気には、まんげつそうがあれば特効薬が作れるんだけど)
僧侶(ここには薬草しかないし、困ったな)
村長「ゴホッゴホッ」
僧侶「大丈夫ですか?」
僧侶は ベホイミを となえた!
村長の呼吸が すこしらくになった! ▼
僧侶(こんなの気休めにしかならないよ。やっぱり薬を飲ませないと)
僧侶(仕方ない、さっきの道具屋で買ってこよう)
僧侶(確かまんげつそうは30ゴールド。今の手持ちも30ゴールドぴったり)
僧侶(良かった。人助けすると、こんなところでラッキーが起こるんだね)
僧侶(ん、ラッキーってのはちょっとおかしいかな? まあいいや)
僧侶「村長さん、ちょっと待ってて下さいね。まんげつそうを買ってきます」
村長「ゴホッゴホッ」
僧侶「すぐに戻ってきます!」
56 = 22 :
まんげつそうってキアリク効果だったっけ
57 = 1 :
――
僧侶「ただいま戻りました」
僧侶(店じまいの途中だったから、すごく怒られちゃった)
僧侶(でも閉まる前に間に合ってよかったな)
村長「……ゴホッ、ゴホッ」
僧侶は ベホイミを となえた!
村長の呼吸が すこしらくになった! ▼
僧侶(ええっと……炊事場、勝手に使っていいのかな)
僧侶(まずはお湯を沸かして……あ、沸かしてある。このやかんを使おう)
僧侶(えっと次に……包丁でまんげつそうを刻んで……)
村長「ゴホッ、ゴホッ」
僧侶「! 大丈夫ですか?」
僧侶は ベホイミを となえた!
村長の呼吸が すこしらくになった! ▼
僧侶(やらないよりいいよね。これからこまめに呪文もかけていこう――)
58 = 1 :
ザー――――――……
――
僧侶「村長さん、お薬ができました」
村長「……ふぅ……ふぅ……」
僧侶「ちょっと熱いですよ。ゆっくりでいいので、飲んでください」
村長「……」 コクン コクン
僧侶「はい。これで大丈夫です」
村長「ゴホッ、ゴボッ……」
僧侶「!」
僧侶は ベホイミを となえた!
村長の呼吸が すこしらくになった! ▼
僧侶(これは朝までついていた方がいいかなぁ)
村長「ハァ……ハァ……」
村長「……ゆ……勇者様……」
僧侶「!」
59 = 1 :
僧侶「気がつきましたか? 無理に喋らなくていいですよ」
村長「ゆ……勇者様……」
僧侶「僕は勇者じゃありませんよ。安静にしていてください」
村長「オーブを……オーブをお持ちくだされ……」
村長「……この村から……少し西へ向かったはずれに……ゴホッゴホッ」
僧侶「えっ? 何ですか? ちょっと詳しく」
僧侶は ベホイミを となえた!
村長の呼吸が すこしらくになった! ▼
村長「ほ……ほこらが……。……私をほこらに……オーブを……」
村長「さすれば……魔の城へ続く道が……」
村長「……言い伝え……」
村長「ゴホッゴホッ……。……」
僧侶「村長! 村長。寝ちゃった」
僧侶(オーブかぁ。そんな大事そうなこと、どうしてこの間勇者に言わなかったんだろ)
僧侶(もしかして言うのをためらっちゃうほど、極秘の情報だったのかな……)
60 = 22 :
僧侶は ザキを となえた!
村長は楽に逝った!
61 = 1 :
――
<朝>
村長「……」
僧侶「……」うつらうつら
下女「なにこれ! 道具が出しっぱなしじゃない!」
僧侶「ん……あ。おはようございます……」フアア
下女「ちょっとアンタ、勝手に私の仕事増やさないでよ!」
僧侶「えっ? あ……片付けるの忘れてた……ごめんなさい……」ムニャムニャ
下女「これなに? 薬?」
僧侶「えっ? はい。薬草がたくさんあったので、念のために作っておきました」
僧侶「村長さんにはもう特効薬を飲ませたので、あとはそれを一日三回ずつ飲ませて下さい」
下女「それで治るの? 大丈夫なのっ?」
僧侶「はい。もう大丈夫ですよ」
下女「そう、分かったわ。じゃあアンタ早く出て行きなさい」
僧侶「えっ?」
62 = 13 :
HP80回復を4回受けてちょっと楽になった程度とか村長の最大HP大すぎワロタ
63 = 1 :
下女「えっ、じゃないでしょ。元々、アンタのせいで村長様がこんなになって」
下女「アンタがそれを治した、これで差し引きゼロよ。違う?」
僧侶「なるほど」
下女「ううん、ゼロどころか、雨の中一晩泊めてあげた分、こっちが優位なはずよ。そうでしょ?」
僧侶「なるほど、そうですね」
下女「でもその分はいいから、その代わり早く出て行ってちょうだい」
下女「勇者様ならいざ知らず、アンタみたいな見ず知らずの他人を連れて来ちゃったせいで」
下女「私は昨日寝る前、また奥様に怒られちゃったんだから! 分かった!?」
僧侶「はい、分かりました。ごめんなさい」
村長「……ううん……」
下女「!」
下女「は、早く出て行きなさい。旦那様が起きる前に」ヒソヒソ
僧侶「分かりました。一晩泊めていただき、ありがとうございました」
下女「そんなのいいから、早く!」
僧侶「あ。はい。では、また」
64 :
なんでこんなクズが多いんだ
65 = 1 :
――
下女(ふう……行ったようね。何とか勢いを通して帰らせることができたわ)
下女(途中無理があるかと思ったけど、あまり頭が回らない子で助かったわね)
下女(あの子、『ひのきのぼう』なんて持ち歩いてた時点でおかしいと思ってたのよ)
下女(見た通り『ひのきのぼう』レベルの子で良かったわ。ふふ)
村長「ううん……」
下女「! 旦那様、お目覚めですか?」
村長「ううむ……下女か……」
下女「おお旦那様、お具合の方はいかがですか?」
村長「……身体が軽い……誰かが付きっきりで看病してくれたようじゃな……」
下女「えっ。……え、ええ、奥様がついてらしてましたよ」
村長「あいつが……? あいつに、まだそんな甲斐性があったのじゃな……」
下女「こちらが……こちらが私がご用意しました、新しいお薬です。ささ、どうぞ」
村長「おお、ありがとう……。私は幸せだ。これほどにまで村の者に親われて……」
下女(ふふ、これで奥様にも旦那様にも私の株が上がったわ。ひのきのぼうサマサマね!)
66 = 44 :
村長って武器として扱うと強いってばっちゃが言ってた
67 = 7 :
>>62
病気は治せないんじゃないか?
70 = 50 :
あさまでほしゆしてくれ
71 :
うちに来て僕の心を癒してください
72 = 1 :
――
【外】
僧侶「ふああ」
僧侶(ちょっと眠いなぁ。結局昨日はあんまり眠れなかったし)
僧侶(ううん、文句言っちゃいけない。この前みたいに雨の中で一晩越すよりずっとよかったし)
僧侶「ん~……」ゴシゴシ
僧侶(それにしても、北の城までまだかかるなぁ)
僧侶(城下町から、ちょっと離れた林にある小屋)
僧侶(そこで勇者が帰ってくるのを、のんびり過ごして待つんだ。これが僕の最後の旅……)
僧侶「……ふああ」
僧侶(何だか眠いや……今日は天気もいいし。ちょっとそこの木陰でひと眠りしよう)
僧侶(誰にも迷惑かからないし、いいよね)
僧侶「よいしょ。……ふああ」
僧侶「本当にいい天気……」
僧侶「……Zzz……――」
73 = 13 :
>>67 ああそっか
74 = 1 :
――――――――――――――――――――
勇者「あっ。賢者さん、もしかしてあそこ」
賢者「ええ、【南の港町】ですね」
戦士「あそこまでもう一歩きだな」
商人「ふう……ふう……いやあ、なかなかしんどいですな……」
勇者「この辺になってだんだん暑くなってきたね。みんな大丈夫?」
戦士「この程度でへばっているようでは、とても魔王打倒など叶わん」
商人「も、申し訳ない、少し休憩をば。ワシは荷物が多いからして」
勇者「じゃあボクが少し持ってあげる! もう少しだから、頑張ろう!」
商人「は、はひ……」
賢者「ふう……」
勇者「賢者さんも大丈夫? ちょっと疲れてるでしょ?」
賢者「えっ? い、いえ、そんなことはありません」
勇者「……ふふ。僧侶はちっとも疲れを顔に出さなかったよ? じゃ、先を急ごっ」
賢者「は、はい……。……」
75 = 1 :
【南の港町】
勇者「着いた! う~ん潮の香り!」
商人「な、何とか日が暮れる前に到着しましたな……」
賢者「ふう……。ん、んコホン」
戦士「ここが南の港町か。初めて足を踏み入れる」
町民「おや、あなた方は? 旅人とは珍しい」
勇者「こんにちは、初めまして。ボクは勇者です」
町民「おお! ではあなた方が北の城から遣わされたという……」
戦士「うむ、打倒魔王を掲げる一団だ。王族の刻印付きの証書もあるぞ」
町民「それはそれは! ぜひ宿屋まで案内させてください!」
勇者「本当ですか? お願いします!」
商人「ちょっと待て! お前まさか、善意を装って悪質な宿を紹介する悪徳業者ではあるまいな」
町民「え? いえいえ滅相もない! そもそもこの町に宿屋は一つしかありませんし……」
賢者「本当ですよ、商人さん。しかしその姿勢、見知らぬ地では頼もしい限りですね」
戦士「うむ、勇者はこういうところが抜けているからな」 勇者「ちぇー」
76 = 1 :
【南の港町>宿屋】
戦士「ふう」 どさっ
勇者「わあ、窓から海が見える……きれい……」
賢者「最上級の一室ならではの景色です。ここからの眺めは、今も昔と変わりませんね」
商人「ううむ、露店が並んでますな。我が身に宿る商魂が昂ぶってきますわ」
戦士「だが、夕刻を過ぎて店じまいも多いようだ。道具の調達などは明日が良かろう」
勇者「港町かぁ。てことは、大陸中の色んな人が行き交ってるんだよね」
勇者「魔王城に行くための情報なんかも、紛れてないかな」
商人「! ま、魔王城ですか」
戦士「ふっ、浮かれて目的を見失ってはいなかったようだな。当然だが」
勇者「ボクはただ、この旅を早く終わらせたいだけだよ」
賢者「さすが勇者様です。この町は唯一、彼の地へと陸続きになっていますからね」
勇者「うん。それが少し気になってたんだけど……」
賢者「ですが、ここから直接乗り込むのは、地形の関係で無理ということが判明しています」
賢者「詳しくお話ししましょう」
77 = 1 :
賢者「まず、地図をご覧下さい」バサッ
―――――――――【北の城】―――――――――
―――【雪山】―――――――――【渓谷】―――
【西の町】――――【魔王城】――――――【東の村】
―――【砂漠】―――――――――【賢者の村】―
―――――――――【南の港町】 <現在地
賢者「少し分かりづらいですが、魔王城の周りは険しい山々で囲まれており」
賢者「さらにその外側を海が囲んでいます。もっと分かりやすく言うと」
賢者「地図を見てわかるように、この大陸はドーナツ型です。穴の部分が海です」
賢者「その海のど真ん中に、魔王城の大陸がぷかぷか浮かんでいるイメージです」
勇者「うんうん、そこまでは誰でも知ってる。でも……」
賢者「そうです。魔大陸は、完全に孤立していたわけではなかった」
戦士「つい最近、発見されたルートがあるのだな」
78 = 1 :
賢者「ええ、このルートが細い陸続きになっていることが判明しました」
【魔王城】
□
□
□
【南の港町】
賢者「ですがこの経路はほとんど毒沼で満ちている上、仮に魔大陸に辿りついたとしても……」
勇者「しても?」
賢者「行き止まりなのです。前述したように、険しい山岳で塞がっていますから」
戦士「何とかして越えられないのか?」
賢者「ほぼ不可能でしょう。強敵ぞろいの魔物たちを突破した先には、想像を絶する急斜面――」
賢者「さらに今もなお、その周辺では毒が溢れ出ているときています。近付くことすら危険なのです」
賢者「一説には、魔王軍が大陸を侵略するために作り出した、橋渡し代わりの陸地だとか……」
勇者「そ、そんな……!」
戦士「……仮にそうだとして、奴らはなぜ南に橋渡しを? 大陸の拠点は北の城だろう」
商人「ううむ……恐ろしい話ですが……まさか奴ら……」
賢者「そうです。この大陸全ての人間の、退路を断つつもりかもしれません」
79 = 1 :
賢者「ご存知のように、この南の港町は大陸の最南端にあるため、南側に海を臨みます」
賢者「あ、一応断っておきますが、港町だからといって」
賢者「ドーナツ型の大陸の、穴に当たる部分の海は関係ないですよ。距離も離れていますし」
勇者「さすがに分かるよ」
勇者「◎←の小さい方の○の部分に、航路はないんだよね。魔王城も邪魔してるし」
戦士「それで?」
賢者「ええ、そうしてこの大陸には、どこを探しても港はここしかありません」
賢者「つまり大陸の人間が安全に異国に向かうとするなら、ここの船を使わざるを得ないのです」
賢者「ところがもし、魔王軍が押し寄せて来て、この港町が崩落してしまったら」
勇者「……残った人たちは、みんなこの大陸から出られなくなっちゃう……」
商人「同時に、異国との交易で得ていた物資の供給もなくなりますな」
賢者「そうです。本命の退路を絶ったところで、大陸の拠点たる北の城を一気に制圧する」
賢者「あとは東西に残った町村を攻め入れば、大陸の人間を根絶やしにできるでしょうね」
勇者「……そんな……」
戦士「ううむ……事態は極めて深刻だったようだな……」
80 = 13 :
大陸に港1個ってよく考えたら相当不便だよね
81 :
ばいさる
82 = 1 :
勇者「……うん。でも、不安がっても何も始まらないよ」
戦士「む」
勇者「ねえ賢者さん、今の話だって、証拠は何もない憶測なんでしょ?」
賢者「え、ええ、そうですが」
勇者「ちなみに商人さん、この陸続きが見つかったのっていつの話?」
商人「ほんの一、二年前ぐらいですかな」
勇者「だったらもう結構経ってるし、てことは、まだすぐには攻めてこないんじゃないかな」
戦士「分からんぞ。明日来るかもしれん。あるいは今夜かも」
勇者「そんなこと言い出したら、火山の噴火に怯えるのと変わんないじゃん」
勇者「とにかく、気持ちだけ急いだって解決はしないよ。ボクらはボクらのペースで旅を続けよう」
賢者「……ええ、仰るとおりですね」
商人「ううむ。まぁ、そこに落ち着きますかな」
戦士「ふん、無責任なことだ。だが確かに、急いたところですぐに事態は変わる訳でもなし」
戦士「今夜はもう、明日に備えて眠るとしよう。構わんな?」
勇者「うん、今日はもう解散! 寝る人はおやすみ! 以上!」
83 = 1 :
――
商人「いやぁ、それにしても賢者殿を仲間にして正解でしたなあ」
賢者「はい? 何がでしょう?」
商人「先刻の、魔王の意図を看破する鋭い洞察力は、まさに研ぎ澄まされた刃そのもの!」
商人「木を削っただけの『ひのきのぼう』とは、比べ物になりませんて!」
戦士「分かっているとは思うが商人、勇者の前で『ぼう』の話は控えるのだぞ」
戦士「あの娘はまだパーティーの変化に慣れていない。余計なことを思い起こさせるな」
商人「分かっておりますとも」
賢者「『ひのきのぼう』……あの僧侶のことですか?」
戦士「うむ。賢者も多少は記憶に残っているだろう、あの愚鈍な少年のことだ」
賢者「前々から気になってはいたのですが、あの僧侶と勇者様は、どのような関係なのですか?」
戦士「何のことはない、ただの幼馴染つながりだ。もっとも……」
戦死「二人とも孤児だがな」
賢者「孤児?」
商人「いやあ聞くところによると、あそこの教会の処分には手を焼いたらしいですぞ」
84 = 13 :
戦士が戦死したぞ
85 = 1 :
賢者「教会?」
商人「そうです。ワシもそのとき居合わせたわけじゃないんですがね」
商人「当時の城下町は建築の最盛期でしてな。建て物の取り壊しと再建が流行っておりまして」
商人「その折で、みなしごを集めて孤児院代わりにしていた教会が、どうしても邪魔になりましてな」
賢者「その孤児の中に勇者様と、例の僧侶がいたと」
戦士「まぁ勇者だと分かったのは後の話だがな」
商人「で、なんでも再三の立ち退き勧告を、老いた神父が頑固に突っぱねたらしくて」
商人「周囲が頭を悩ませていたある日、その神父の方から孤児ともども出て行ったんです」
賢者「なんと。孤児たちは?」
商人「城下町の外れの林に、安普請の小屋があります。そこに全員移り住んだようです」
商人「ちょうど空き物件があったのを、神父がなけなしの財産をはたいて買い取ったんですわ」
賢者「なるほど、第二の孤児院といったところですか」
商人「それからひと月ほどと聞いてますが、その神父の爺さん、おっ死んでしまいましてな」
賢者「なんと。保護する者がいなくなった孤児たちは、どうなってしまったのですか」
戦士「……ある者は養子に迎えられ、ある者は町を出、ある者は己を鍛え……戦士になったのだ」
86 = 16 :
ほんとだザマアwww
87 = 44 :
どう見ても商人が一番いらない人
88 = 1 :
賢者「戦士に? まさか……戦士殿は、その孤児院の出身ということですか」
商人「な、なんと。ワシも初耳ですぞ」
戦士「俺が一番年の離れた年長だったからな。小屋を出るのも一番早かった」
戦士「勇者も僧侶も幼かったゆえ、このことは知らんだろう」
商人「も、申し訳ございませぬ。先の話の中で、いくばくか失言があったやも……」
戦士「勘違いするな。俺にとっては教会や小屋での思い出など、どうでもいいこと」
戦士「話を戻すぞ。その後、他の孤児たちも続々と小屋を出て行った。そして最後に二人だけ、残った」
賢者「二人。まさかその二人が」
商人「勇者様と『ひのきのぼう』というわけですな!」
戦士「そうだ。その時点ではさして気にも留めなかったが、ある時、とても看過できぬことが起きた」
賢者「天啓、ですね」
戦士「そう。今から数ヶ月前、天の導きにより、あの小娘が勇者に選ばれたのだ」
戦士「俺には、俺にはそれが理解できなかった。我慢ならなかった。……悔しかった」
戦士「定めを受け入れるまでは、時間がかかったぞ。今こそ、こうしてパーティーにいるがな」
戦士「……また話が逸れたな。俺のことは、くれぐれも周囲には内密に頼む」
92 :
僧侶は女の方がいいと思ったけど犯されそうだからやっぱり男でいいわ
93 :
男だから犯されないといつから錯覚していた?
94 :
僧侶の性別>>1に書いてあるのに見てないやついるんだよ
95 :
なんでホモが湧いてるんですかね・・・
96 = 1 :
戦士「そうして勇者が玉座の前でひざまずく日が来たとき、魔王討伐のパーティーが編成された」
戦士「まず王の命により、当時最も高い評価を得ていた実力者が選ばれた。それが俺だ」
戦士「俺は勇者を手助けする……というよりは、魔王を打ち果たすために、喜んで同行した」
戦士「次に勇者の仲間に加わったのが、僧侶だ。というより勇者が声をかけたのだがな」
戦士「俺は当時から奴には不満を感じていたが、回復呪文に長けていた点を買って黙認した」
戦士「それに勇者にとっては、慣れ親しんでいる者がそばにいた方が、長旅への不安も紛れるだろうしな」
賢者「……ふむ……」
戦士「そして最後に仲間に加わったのが」
商人「このワシです!」
戦士「ルイーダの酒場経由で最も優れた商人が紹介された。こんなところだ」
商人「あ、ちょ、ちょっと待ってくだされ! その辺の詳しい話は!?」
賢者「……勇者様はいまどちらに?」
戦士「さあな。宿屋は出ていないようだから、風呂か最上階のテラスだろう」
賢者「……テラスにいたなら、一時的にルーラで宿から抜け出しているやも。姿を確認してきます」
商人「ああちょっと! ワシがこのパーティーに行き着くまでの武勇伝は――!?」
97 = 1 :
【宿屋>テラス】
勇者「……」
勇者(月がきれいだな……)
勇者(……)
勇者(僧侶は今ごろ、あの小屋で元気にしてるかな)
勇者(なんで急に抜けちゃったんだろ。ボクに相談もなしに……)
勇者「……」
勇者(……ボクがついてなくて、大丈夫かな。僧侶は人が良すぎるから……)
勇者(ボクだって、僧侶がいなくて大丈夫かな。今まで数え切れないくらい、助けてもらった……)
勇者(……)
勇者(ちょっと顔を見に行くぐらい、いいかな)
勇者(今なら、呪文一つで簡単に会いにいける――) ス…
賢者(勇者様は……)
賢者(! いた!)
98 = 13 :
商人ならパーティから外したよ
99 = 1 :
勇者(……)
勇者(やっぱりダメだ)
勇者(戦士さんの言うとおり、けじめをつけなきゃ)
勇者(いつまでも僧侶に甘えているようじゃ、きっと魔王なんか倒せっこない)
勇者(それに、僧侶はこのあたりで外れて良かったかもしれない)
勇者(いつもみんなのことに気を配りすぎて、自分のことはちっとも大事にしないんだもん)
勇者(魔王に行き着く前に、下手したら死んじゃうかもしれない)
勇者(そんなの絶対だめだ。だめだ。僧侶はあの家で、平和に過ごしてるのが一番なんだ)
勇者(だからボクは)
勇者は つるぎを ぬきはなった! ▼
勇者(強くならなきゃ。もっともっと強くなって、ボクがみんなを守れるようにしなきゃ)
勇者(ボクがみんなを引っ張れるくらいに……僧侶に心配をかけられずに済むぐらい、強く……)
賢者(勇者様……)
賢者(…………美しい……)
100 :
男賢者はいらんよ
みんなの評価 : ★★★×4
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