元スレ白望 「二者択一……?」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★
1 :
ID:A7g99lC00
代行
2 = 1 :
ホラー?サスペンス?ミステリー?的なものが苦手な人はごめんなさい
だそうです
3 :
>>1代行thxです
ホラー?サスペンス?ミステリー?的なものが苦手な人はごめんなさい
5 = 3 :
私は真っ白な空間にいた。
白望 (……ここはどこ?)
一昨日まで、全国大会の舞台で戦っていた。
結果は……チームは二回戦で負けてしまった。
だから、昨日はみんなと東京観光を楽しんだ。
朝から夜まで、みんなと思い出をいっぱいつくって。
夜に滞在先のホテルに戻ると、一日の疲れからか、すぐに眠りに落ちた。
もし目が覚めたのならば、そこにはホテルの部屋内の風景があるはず。
白望 「……」
だが、周りは見渡す限りの白。
何もない。誰もいない。音もない。
白望 (……夢、だろうか)
6 = 3 :
夢にしては、妙に現実感がある。
例えば、私自身を形容する姿かたち。
現実と変わらない立体感・質感を保っている。
ただ、服装は寝るときに着ていた寝巻きではなく制服だ。
頭。
首。
腕。
足。
一つ一つ、丁寧に動かしてみる。
私自身の意思に背くことなく、四肢や関節は正常な動きをした。
白望 (夢の世界で、ここまで自由に動けるものだろうか?)
8 = 3 :
頭の中で、いくつかの疑念が浮かぶ。
この世界は現実か?夢か?
現実だとすれば、ここはどこだ?
ホテルに泊まっていたみんな――
一緒の部屋のエイスリン、隣の部屋の塞、胡桃、豊音はどこにいってしまった?
しかし、考えても現状に変化が起きる様子は無い。
仕方ないので、私は再び寝る体勢に入ることにした。
白望 「……ん」
寝返りをうつ。なかなか寝付くことができない。
不安のせいもあるだろう。ただ、それだけではない。
やたらと、喉が渇くのだ。
9 = 3 :
白望 「……水」
私は飲み物を探す。
しかし、もちろん辺りにそんなものは見当たらない。
白望 (……暑いなぁ)
無機質と思われた白の世界だが、温度という概念はあるようだ。
さきほどまでは気づかなかったが、けっこう暑い。
実際に行った事は無いが、まるで砂漠にいるような気分だ。
額からは汗が滴り落ち、水分を欲した身体は唾をゴクンと飲み下す。
白望 「水が飲みたい……」
水を渇望したそのとき――目の前の景色に変化が起きた。
12 = 3 :
まず、白の世界の一部が茶色に塗られていく。
それは歪な形に広がりながら、凹凸が現れ立体感を増していく。
土だ。地面だ。
小石が散らばり、小さな虫が這っている。
次に、地面にぽつぽつと深緑色の植物が生え始めた。
雑草ばかりではない。小さな木々の芽も顔を出している。
自然物の成長は尋常ならざる速度で進んでいく。
草や葉は生い茂り、芽を出したばかりの木々は天に向かって伸びていく。
目の前には、一瞬で森林地帯が形成された。
背の高い木々に囲まれ、奥の空間は暗闇に包まれている。
そして、森から私の方へと、徐々に橋が形成されていく。
やがて私の足元を端として、年季の入った木造の橋が架かった。
13 = 3 :
私は目の前の超常現象にも、何故か冷静でいることができた。
逆に言ってしまえば、既に理性を失っているのかもしれない。
後ろを振り返る。そこには、未だ何も存在しない白い空間が広がっている。
前に向き直る。そこには、草木に囲まれた黒い空間が奥へと続いている。
私の足のつま先は、ちょうど白と黒の世界の境界線だ。
行くべきか。
行かざるべきか。
白望 「……行ってみよう」
少し逡巡し、その結論に至った。
そして私は、朽ちかけた橋へと足を踏み出した。
14 = 4 :
シロの一人称は謎の安定感がある
15 = 3 :
いつも以上に重い身体を引きずりながら、森の中をさまよい続ける。
白望 「……はぁっ、はぁっ」
口癖が「ダルい」の私だが、果たしてここまで体力が無かっただろうか。
全身に乳酸が溜まっている。腕も、足も徐々に上がらなくなってきた。
白望 「……っ」
しかし、それでも行かなければならない。私は進むことを選んだのだから。
それに、今まで迷った末の選択が悪い結果を招いたことはない。
それから、どれくらい歩いただろうか。
どこまでも続くと思われた森だが、やがて開けた空間へと出た。
白望 「……うっ」
暗闇に馴れて拡大した瞳が、急に差し込んだ光に痛みを感じた。
16 = 3 :
やっと、瞳が明るさに慣れてきた。
収縮した瞳で目の前の光景を確認する。
眼前には、立派な黒い門を構えた大きな屋敷がある。
そして、屋敷の庭には紅や白の花が咲き乱れ、
人為的に作られたであろう囲いの中には、沢山のニワトリ、牛や馬などの家畜がいる。
白望 (誰か住んでいるのかな……?)
しかし、屋敷は不気味なほどに静寂に包まれている。
廃墟だろうか。
白望 「……ん」
不意に喉の渇きを思い出す。
元はと言えば、水を欲してこの森に入ったのだ。
屋敷の中には、きっと何かしら飲み物もあるだろう。
白望 「……お邪魔します」
私は鉄製の黒い門に手をかけた。
17 = 4 :
いいよいいよー
18 = 7 :
ダルい支援
19 :
地の文もアリいいな
支援
20 = 3 :
屋敷は外見だけでなく、中身も立派だった。
内装は和を基調としており、私の故郷である岩手に多い家の造りにも似ている。
今、腰を下ろしている座敷は、食事をとる場であろう。
歪な形をした木製の机には、綺麗な柄の食器が多数並べられている。
白望 「すみません、誰かいませんか?」
恐らくいると思われる家主に呼びかけてみる。
が、返事はない。
白望 (本当に誰もいないのか……?)
見れば、火鉢にはまだ火が生きていた。
そして、囲炉裏には沸きっぱなしのお湯がかけてあるのだ。
人がいないと言うには、あまりに不自然な状態だ。
姿は見えないが、僅かに人の気配も感じる。
21 = 3 :
白望 「……」
しばらく、ぼんやりと火鉢を見つめていた。
暖をとるにしては、少々火の勢いが強いように感じる。
一点を見つめていると、握った手、額、脇が冷たい汗で滲んだ。
とにかく、喉が渇く。早く水が飲みたい。
白望 「誰かいませんか?」
少し、大きな声を出してみる。
けれども、やはり返事はない。
白望 (……家を探ってみるか)
私は重い腰を上げ、屋敷の探索に取り掛かることにした。
まずは、一番先に目に付いた扉に手をかけよう。
22 = 4 :
怖いな・・・
23 = 3 :
扉を開けると、そこには小さな空間が広がっていた。
光源は天井に吊るしてある小さなランタンのみだ。薄暗い。
そして、この小部屋の探索はものの五分で終わってしまった。
なぜなら、なにも無いのである。
存在するのは、小さなランタン。
今入ってきた、後方にある扉。
そして、更に奥に続くであろう前方の扉。
白望 (……どうしようか)
これ以上、勝手に他人の家の中を進むのも気がひける。
一旦、さきほどの部屋に戻ったほうが良いだろうか。
念のため、座敷の様子を少し確認してみよう。
そう考え、入ってきた扉を引こうとする――が、開かない。
24 = 4 :
猿よけ支援
25 = 3 :
白望 「……?」
おかしい。
確か、木製の扉には鍵のようなものはついてなかった。
たてつけが悪いのだろうか。
もう一度、引いてみる。しかし、微塵も開く気配が無い。
白望 (閉じ込められた……)
そう思ったときだった。
信じられない光景が目に飛び込む。
目の前の扉に、銀色に輝く文字が浮かび上がってきたのだ。
『み』
白望 「……み?」
『みずを』
白望 「……みずを?」
『みずをのまない』
27 = 4 :
どういうことだおい・・・
28 = 3 :
白望 「みずを……のまない?」
扉には、銀色の文章が煌々と輝きを放っている。
みずをのまない。水をのまない。
……ああ、『水を飲まない』か。
そのままの意味で理解すると、水を飲むな、ということか。
それとも、水を飲まない? という疑問文だろうか。
考えを巡らせていると、今度は背後から金色の光の靄を感じた。
白望 (まさか……)
振り返ると、そのまさかだった。
奥に進むため、と思われた扉にも文字が浮かび上がっていた。
金色。短い文章。
『みずをのむ』
29 = 3 :
白望 (水を……飲む)
文章を心で反芻した瞬間、喉がごくりと鳴った。
水。
欲しい。水が欲しい。
白望 「……」
私の身体は自然とそちらの扉へと向かう。
頭の中には、この異常な状況に対する疑問は一切浮かんでこなかった。
ふらふらとした足取り。恐らく、目は虚ろになっているのではないか。
気づけば、それほど水を求めていた。
『みずをのむ』
金色の光を放つ文字の前に立ち、ポツリと呟いた。
白望 「私は……水を飲む」
扉に手をかけ、ぐっと力を込めた。
30 :
ふんふむ
31 = 3 :
白望 「……ふー」
喉の渇きが満たされ、一息つく。
傍らには、机の上に置かれたガラス製の水差しとコップ。
白望 「……ダルい」
少し眠気を催したところで、不意にそんな言葉が口をつく。
この未知の世界に迷い込んで、初めて口癖が出た。
水分を補給したことで、精神が安定してきた証拠だろう。
白望 (それにしても……ここは一体どうなってるんだ?)
私が扉を開けたその先にあったのは、まったく同じ小部屋だった。
存在するのは、小さなランタン。
水を求めて開けた、後方にある扉。
そして、何処へ続くかわからない前方の扉。
違ったのは、机と、その上の水差しとコップだけ。
白望 (恐らく水が置いてあったのは、『みずをのむ』と書かれた扉を選択したから)
二つに一つの選択が、結果として現実に反映された。
馬鹿馬鹿しい結論ではあるが、それ以外あり得ないのも事実だ。
32 = 4 :
続けて、どうぞ
33 = 3 :
思えば、白い空間で目を覚ましたときから、森を抜け、
この屋敷に迷い込むまで、不可思議の連続であった。
夢か否かはわからないが、この世界ではあり得ることなのだ。
白望 (みんなは……どうしてるかな)
眠気におされて瞼を閉じると、部活の仲間たちの顔が浮かんでくる。
……塞。……胡桃。……豊音。……エイスリン。
……それから、熊倉先生も。
もし、この世界から戻ることができなかったら、みんなとはもう会えないのだろうか。
いや、これ以上そんなことを考えるのは……。
白望 (……ダル……い……)
さ迷う思考をシャットダウンし、私は眠りへと落ちていった。
36 = 7 :
俺をとるか、エイスリランをとるか
37 = 3 :
それからとういもの、私はこの不思議な空間で何度か二者択一を行った。
食事をするか、否か。
体を洗うか、否か。
排泄をするか、否か。
水を飲むか、否かの選択も何度か行った。
私はこれらの二者択一に対し、迷うことなく前者を選択してきた。
何故なら、これらの二者択一には迷う要素が無い。一方がメリットで、一方がデメリットなのだから。
第一、扉に文字が浮かび上がるのは、きまって私が何かを望んだときだった。
それに気づいてからというもの、私は生理的欲求に従い、人間としての生活に関する事項を優先的に望んだ。
白望 「……ぁ」
しかし、もはや限界だった。
薄暗い空間、そして長い長い時間の中で、私は孤独に耐えることができなかった。
38 :
ふんふむ
39 = 3 :
白望 「だめだ……」
白望 「頭が変になりそうだ……」
白望 「だ、誰か……話がしたい」
白望 「誰でもいい……話し相手が……」
部屋の中央に蹲った私は、右手で頭を掻き毟り、左手の親指の爪を噛む。
「誰でもいい」と口にしたものの、錯乱寸前の頭の中で浮かぶのは、
やはり、宮守女子で一緒に過ごしてきた仲間たちの顔だった。
そのとき、視界の両端にぼんやりとした光が入り込んできた。
白望 「……!」
40 = 4 :
シロちゃん……
41 = 3 :
私は慌てて立ち上がる。
まずは左だ。選択の度に入り口となる、後方の扉を見る。
『く』
白望 「……く?」
銀色の文字は、そこで動きを止めた。
そしてしばらくすると、続きの文字が浮かび上がってくる。
『くまくら』
白望 「くまくら……」
『くまくらとしとはなす』
白望 「熊倉トシ……先生と話す」
思わず、扉を開こうとした。
先生と会える。話すことができる。
そう考えただけで心が躍ったが、その思考は金色の光に遮られた。
42 = 4 :
なんか話が動きそうな予感……ゴクリ
43 = 3 :
白望 「……」
ゆっくりと動きを止める。
そうだ。これは二者択一なんだ。
もう一つの選択肢が、私には用意されている。
振り返った先の文字は、あまりに魅力的な光を放っていた。
『うすざわさえとはなす』
白望 「……塞」
決して、熊倉先生が嫌いだったとか、そういう訳ではない。
先生のことはとても信頼している。豊音とエイスリンに引き合わせてくれて、
インターハイ予選出場すら危ぶまれた麻雀部を、全国まで率いてくれたことも感謝している。
ただ、それ以上に会いたかったのだ。話したかったのだ。
かけがえのない友達である、臼沢塞に。
44 = 4 :
これはシロ塞を期待してもいいですか?
45 :
どっちにしろBBA
46 = 3 :
金色の光に誘い込まれるように、私はゆっくりと歩みを進める。
白望 「……」
塞に会いたい。
白望 「塞……」
塞と話したい。
白望 「塞っ……」
塞。塞。塞。
私は縋り付くように、扉の取っ手を掴もうとする。
緊張しているためか、なかなか取っ手を捉えることができない。
カリッ、カリッ、とさ迷う指が扉を引っかく。
その様は、まるで隔離された者の末路を辿っているかのようだ。
48 = 3 :
やっとの思いで取っ手を掴むことができた。
震える右手を左手で抑える。体の芯から深呼吸をする。
大丈夫。塞はこの扉の向こうにいる。
白望 「……よし」
気持ちを落ち着かせるように、ゆっくりと扉を押す。
扉がギギ……と軋みをあげる。金色の光の筋が漏れ出す。
白望 「私は……」
扉を引く速度を、徐々に速めていく。
それにともない、金色の筋は太さを増し、帯となる。
白望 「私は……臼沢塞と話す」
完全に扉を押し切ると、私は金色の光に包まれた。
50 = 3 :
白望 「……」
光が徐々に引いていくと、次の小部屋の様子が明らかとなってくる。
小部屋は相変わらず殺風景で、ぼんやりと光を放つランタンが揺れ、机が置かれているだけ。
そしてそこには……塞の姿は無かった。
白望 「そ、そんな……」
膝から崩れおちる。
待ち望んでいた結果が、裏切られたのだ。
ひどい裏切りだ。ルール違反だ。
期待させてから、どん底に落とす最悪のやり方だ。
私は誰かも分からない、存在するかもわからない、
この二者択一の小部屋を用意した『ナニカ』を呪った。
みんなの評価 : ★★★
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