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    元スレ怜子「ねぇ恒一くん、生理が来ないんだけど…」

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    351 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:04:27.44 ID:v5ZY6PE50 (+45,+30,-239)
    くだらないことを話しながら神社まで歩く。
    バスが通れない場所にあるから徒歩だ。

    自然界がすごい。林道を通るだけで未知の世界に来た気分になる。
    誰もが樹の香りや空気を感じてうれしくなった。

    あ生命力に満ち溢れたこの場所は、
    まさしく癒しの空間と呼ぶにふさわしい。

    修羅とカオスの世界にいた者たちに、生の息吹を与えてくれる。

    恒一「なんてすばらしい場所なんだ。悩みなんて吹き飛んじゃうよね」

    由美「本当にいい場所ね。やっぱり来てよかったわ」

    綾野「人間って最後は自然に帰りたくなるっていうもんね」

    「ふぅ。歩くの疲れちゃった。榊原君抱っこして?」

    無視して歩き出す榊原以下三人。もう女たちの汚い手に
    乗るつもりはなかったのだ。彼らは聖人三人組だ。
    352 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:06:13.58 ID:QMRGcfas0 (-20,-10,-1)
    支援
    353 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:06:43.27 ID:O9caZu+l0 (+22,+29,-1)
    聖人君子になったか
    354 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:07:06.36 ID:hwdFfkK50 (+52,+17,+0)
    一応
    355 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:10:27.01 ID:v5ZY6PE50 (+45,+30,-221)
    神社は意外に小さかった。しかしどこか歴史を感じさせる佇まいだ。

    千曳「さあみんな。榊原君から邪気が消えるよう祈りましょう。
        あと怜子君がまともに戻ってくれるようにもね」

    赤沢「こんなふざけた理由で神社に来る人もいないでしょうね」

    松井「まぁハイキングだと思えばいいんじゃない?
        神社の雰囲気ってしぶくて素敵だわぁ」

    金木「ハイキングっていうより登山かしら?
        道中起伏が激しかったからもう足がパンパンよ」

    松井「赤沢さんの胸はどうしてパンパンなの?」

    金木「ハチにでも刺されたのかしら?」

    赤沢「もともとこういう胸なのよ!! 巨乳で悪かったわね」

    風見(うっ。ゆかりの胸を想像したら変な気持ちに……)
    356 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:16:17.70 ID:v5ZY6PE50 (+45,+30,-303)
    「風見君はまっすぐ立ってお祈りしてくださいね?」

    多々良「なんで前かがみになってるんですか?」

    風見「言わなくても分かってるくせに聞くなよ!!
       百合ップルがくだらない話をしたせいだ!!」

    望月「なんて変態なんだろうね。ここは神社なんだよ?
       神様の前でテント張って泊まり込みでもするつもり?」

    風見「君には言われたくないよ年上好きのくせに!!」

    千曳「はいはい。そういう漫才は館に帰ってからやろうか。
       実は神様はつまんない漫才は嫌いらしいんだ」

    「みんなで手を合わせましょうね。
       私と榊原君から邪気を取り払ってくれますように……」

    赤沢(……今夜恒一君を襲えますように。婚約できますように)

    恒一(……生きて帰れますように。死人が出ませんように)

    (……榊原君と結婚できますように。抱っこしてもらえますように)
    357 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:18:13.22 ID:O9caZu+l0 (+17,+29,-1)
    さるよけ
    358 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:20:56.27 ID:0j3bm0tq0 (+2,+14,-12)
    しえん
    359 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:22:06.38 ID:v5ZY6PE50 (+45,+30,-178)
    ロクでなし集団とは彼らのことを言うのだろう。
    生徒で真面目にお参りしてるのは聖人三人組と有田だけだった。

    お参りを終えたら宿舎に帰るだけだ。
    かなりの田舎なので特によるべき場所はない。

    うっそうと茂った木々だけが生徒を見つめていた。

    恒一「どうもこの場所は何かありそうだ」

    小椋「奇遇ね。あたしも同じことを考えてたのよ」

    有田「つねに誰かに監視されてるような怖さがありますね」

    綾野「神社の近くに足を踏み入れた瞬間、前に進むのを
        ためらったほどだよ。他の皆は気づいてないみたい」

    いくえにも重なり合う樹木の間に潜む闇。
    その気配は、夜が近づくにつれて大きくなっていった。
    360 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:28:52.90 ID:v5ZY6PE50 (+43,+30,-254)
    館につく。適当に雑談し、あっという間に夕飯の時間だ。
    管理人たちが作ってくれた夕食は意外と豪華だった。
    洋式なのでテーブルマナーだ。

    敦志「榊原君。君は知れば知るほど素晴らしい子みたいだね。
        頭も良いらしいし、性格もおだやかだ。
        君なら安心して由美を任せられるよ」

    恒一「そんな。由美さんは僕にはもったいないくらいですよ」

    敦志「ははは。謙虚なとこも気に入ったぞ」

    望月「はぁ? 何言ってんですか小椋さんのお兄さん。
        このバカの正体を知らないからそんなこと言えるんですよ」

    敦志「あっはっは。今度は一変して酷い言われようじゃないか」

    勅使河原「おい望月。食事中なんだから押さえろって」

    望月「でもお兄さんが勘違いしたら困るじゃないか」

    テーブルは敦志と上の三人を加えた四人掛けだった。
    鳴は沙苗さんたちと食べてる。
    361 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:34:54.66 ID:v5ZY6PE50 (+45,+30,-207)
    (席が遠くて榊原君にあーんしてもらえない……)

    沙苗「どしたの見崎さん?」

    「なんでもないです……」ガックリ

    沙苗「?」

    多々良「その子なら元々根暗ですから気にしないでください」

    沙苗「そーなの? うちの弟がよく見崎さんの話するから、
        一度顔見てみたかったのよ。ふだんは無口のくせに
        見崎さんの話になるとうれしそうなの」

    「ばっ……何言ってんだ姉貴!!」

    遠くの席の猛が反応した。

    沙苗「でもあんたが見崎さんに気があるのバレバレじゃない。
        恒一君に嫉妬してたんでしょ?」

    「そんなの知らねえよ。あーもう余計なこと言わないでくれ!!」
    362 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:37:49.78 ID:QMRGcfas0 (-20,-10,-1)
    支援
    363 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:38:51.75 ID:5UtbaXMuO (+18,+28,+0)
    うふふ
    364 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:40:43.13 ID:v5ZY6PE50 (+43,+30,-191)
    「へえ。水野君って私のこと気になってたんだ?」

    水野「うっ……ば、バカ。そんな嘘信じるな」

    中尾「よっ。おめーら付き合っちまえよ」

    前島「旅先でカポー成立とか最高じゃねえか」

    杉浦「でも見崎さんは榊原君のお気に入りでしょ?」

    風見「いかにもその通りだね。旦那としてはどう思う榊原君?」

    恒一「ノーコメントで」モグモグ

    「ええ!?」ガーン

    敦志「さすがモテる男はあしらい方が違うぜ。
        俺も見習うようにしよう」

    勅使河原(うーむ。はっきりしてるのはいいんだが、
           あとで泥沼にならないことを祈るよ)
    365 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:46:13.28 ID:v5ZY6PE50 (+43,+30,-226)
    小椋「あいつら、あいからずバカやってるわね」

    綾野「見崎っちの諦めの悪さも表彰もんだよね」

    赤沢「でもその根性だけは見習わないとね」

    有田「複雑な人間関係だね」

    その後は普通の食事だった。特に誰かが謝罪を要求することもなく、
    雷も鳴らなかった。天気は今日一日晴れである。

    部屋に戻る恒一。険悪の仲の望月と相部屋だったが、
    クラスで決められたことなので我慢する。

    望月「はぁはぁ。もうお風呂も入ったし、
        あとは怜子さんが来るのを待つだけだよね?」

    恒一(はぁぁぁ。僕はもう聖者に転生したんだよ?
        そういう下品なのは他の人に任せたいよ。おや? 
        廊下から誰かの気配を感じるぞ? 隠れよう)

    多々良「こんばんわ。今宵は良い夜ですね」
    366 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:51:01.50 ID:5UtbaXMuO (-20,-10,-1)
    支援
    367 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:52:19.59 ID:v5ZY6PE50 (+45,+30,-170)
    多々良「望月君だけですか。榊原君はいないのですか?」

    望月「……」

    望月は三秒前に手渡された、くしゃくしゃの紙を
    握っていた。内容はこうだ。

    『僕の居場所、ばらしたら怜子さんとキスするぞ』

    望月は適当に言い訳して帰ってもらうと思ったのだが、

    多々良「あなたの顔色を見れば隠し事をしてるのは分かりますよ。
         その左手に持ってる紙が関係あるのですね?」

    望月「……!!」

    多々良「眉が動いたことから図星のようですね。
         正直に彼の居場所を教えてください」

    修羅と三組はセットなのだと望月は実感させられた。
    マックのハッピーセットみたいなものだ。
    多々良の脅しに負け、ついに白状してしまう。
    368 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 22:58:24.39 ID:v5ZY6PE50 (+45,+30,-235)
    多々良「ベッドの下ですか。なるほど。面白い隠れ場所ですね。
         まるで幼い子供のようで可愛らしいです」

    恒一(捕まったらやばいぞ)サササッ

    忍者のような動きでベッドから出てきた恒一。
    一気に両開きの窓を開け、飛び降り自殺者のようなポーズをとる。

    恒一「お願いだから来ないでくれ多々良さん。
        それ以上近づいたら、ここから飛び降りるからね」

    彼の態度を意に介さず、望月から奪った紙を読み上げる多々良。

    多々良「どれどれ。ぼくの居場所、ばらしたら怜子さんとキスするぞ」

    恒一(自分の読書感想文を家族に読み上げられるくらい恥ずかしい。
        望月はもう逃げてしまったし、どうしよう)

    多々良「おもしろい手紙ですね?」ニコ
    369 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:03:27.54 ID:5UtbaXMuO (+18,+28,-2)
    素直に犯されろ
    370 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:04:07.87 ID:v5ZY6PE50 (+45,+30,-162)
    恒一「う……」ビクビク

    多々良「ちょっと私の部屋でおしゃべりしませんか?
        今なら誰もいなんですよ」

    恒一(同じ部屋の人が強制退去させられたのが容易に
       想像できるよ。なんて怖い人なんだ)

    多々良「聞いてますか榊原君?」

    恒一「僕は自由が欲しい」

    多々良「浮気する自由ですか?」

    恒一「ち、違う。自由恋愛がしたい。
        もう拘束されるのは嫌なんだ」

    多々良「へえ。愉快な話ですね」スタスタ

    距離を詰められる。それだけで心臓を
    鷲掴みにされたほどの恐怖を感じるのだった。
    371 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:10:05.64 ID:v5ZY6PE50 (+45,+30,-201)
    恒一「来ないで!!」ビクビク

    多々良「うふふ。そんなに足が震えてるのに
         飛び降りなんて大胆なことができますか?」

    恒一(だめだ。多々良さんの手が触れたら僕は終わる。
        神社でお参りしたのに、どうしてみんなは変わらないんだよ。
        僕は無事平穏だけを願ってるのに。生きて家に帰りたいよ)

    十五センチ先まで多々良の手が近づいた。
    伸ばされたしなやかな指が触れた瞬間、恒一の運命は終わる。

    清く正しく美しく。どっかの校則のような学生となるべく
    努力しようと思ったのに、それが一瞬で崩される屈辱。

    恒一(僕はクズに戻りたくない!!)

    多々良「なっ……?」

    ついに飛び降りたのだ。ここは三階。
    打ち所によっては死んでもおかしくない。
    372 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:12:20.17 ID:p+9lVSov0 (+32,+29,-1)
    合宿所に三階あったっけ
    373 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:13:19.64 ID:DIytfxiq0 (+17,+29,+0)
    タタラッテイ
    374 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:20:09.85 ID:5UtbaXMuO (-20,-10,-1)
    支援
    375 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:21:36.53 ID:v5ZY6PE50 (+49,+30,-237)
    恒一「うあああああああああああああああ!!
        おあああああああああああああああああ!!
        ふわああああああああああああああああああああ!!」

    スパイダーマン2の主人公を彷彿とさせる叫びを上げて
    墜ちていく。この時点で恒一は死を覚悟していた。

    生い茂る木の枝に何度もぶつかりながら、芝生に落下して気絶した。
    目が覚めると、佐藤さんが介抱してくれてる。膝枕だ。

    恒一「君は佐藤さんかい……? 僕は生きてるの?」

    佐藤「はい。外を散歩してたら榊原君が降ってきました。
       まるでスパイダーウェブ?を使えなくなったクモ男
       みたいでしたよ?」

    恒一「見てない人には絶対に分からない例えをありがとう。
        でも助けてくれたなんてうれしいな」

    佐藤「だってアンカ(>>300でしたっけ?) 
        で選んでくれたじゃないですか」
    376 : >> - 2012/06/04(月) 23:27:22.16 ID:v5ZY6PE50 (+45,+30,-227)
    恒一「もう少しこのままでもいいかな?
        膝の感触が気持ちいや」

    佐藤「はい///」

    夜の星空は、夜見北で見るのより綺麗だった。
    一分くらい星を数えてから起き上がる。

    恒一「本当にありがとう佐藤さん。
        どうやってお礼したらいいかな?」

    佐藤「キスしてほしいですけど、そしたら
        多々良さんたちに殺されます。頭撫でてください」

    恒一「お安い御用さ。これでいいかな?」ナデナデ

    佐藤「///」

    まさに修羅場のあとの至福。ここで恒一は見てはいけない者を
    見てしまった。三階の窓からこっちを見下ろしてる多々良だった。
    視線が合った瞬間、本能的に逃げ出してしまった。
    377 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:28:19.01 ID:QMRGcfas0 (+19,+29,+0)
    佐藤さん可愛い
    378 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:33:39.09 ID:v5ZY6PE50 (+45,+30,+0)
    恒一(やばいやばいやばい……殺される殺される……)

    一目散に駆けた。外じゃ見つかるだろう思い、
    館の内部へ突入。フラフラする頭を押さえながら、
    どこへ逃げようかと模索する。厨房前で千曳に会った。

    千曳「君、夜のジョギングでもしてるのかい?」

    恒一「そんなこと言ってる場合じゃないんですよ。
       多々良さんが……多々良さんが僕を追ってるんです。
       あの人の僕に対する執着は異常です」

    千曳「多々良さんってあの品の良さそうな女の子だよね?
       君も罪な男だね。あんな美人さんに好かれるなんて」

    恒一「そういう次元の話じゃないんですよ。単刀直入に言うと、
       貞操を奪われるんです。身体の自由すら奪われます」

    千曳「尋常じゃないね君の妄想は。ドM気質だったとは」

    恒一「全部本当の話なんですよ!!」
    379 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:39:22.20 ID:v5ZY6PE50 (+45,+30,-212)
    これ以上話を続けたら時間の無駄だった。

    恒一は別れも告げずにそのまま走り出す。
    男子に話しても嫉妬されるか軽くあしらわれて終わりになると
    想像できる。ならば女子の部屋しかないと思い、歩みを進める。

    四階まで階段を上がり、適当な部屋を見つけて中に入る。

    恒一「いきなり押しかけちゃってごめん。緊急事態だから
       僕をかくまってくれないか!! 実は多々良さんに
       追われてるんだ!!」

    松井「ん……あぁん……」

    金木「なあにその声は? ここがいいのかしらぁ?」

    松井「あ……はぁん……いいよぉ……」

    恒一「」

    描写したくないようなシーンが繰り広げられていたため、
    静かに扉を閉めた。
    380 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:44:48.79 ID:Mtd07gaj0 (+14,+29,-13)
    尋常じゃないね
    381 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:45:09.22 ID:v5ZY6PE50 (+45,+30,-188)
    気を取り直して隣の部屋に突撃する。

    恒一「いきなり押しかけてごめん!!
        どうか僕をかくまってください!!」

    「あっ榊原君」

    恒一(よりによって見崎の部屋か。できれば小椋さんか
        綾野さんがよかったんだが、まあレズカポーよりはましか)

    「こんな時間から始めたいの?」

    恒一「ナニをだよ。って突っ込んだら負けか。
        実は多々良さんに追われて人生最大のピンチなんだ。
        頼むから、ほとぼりが冷めるまでここにいさせてくれないか?」

    「いいよ」

    恒一(あっさり認めたな……裏がありそうで怖いや)
    382 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:48:02.56 ID:GANlh4DPO (-25,-10,-1)
    支援
    383 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:51:24.18 ID:v5ZY6PE50 (+45,+30,-203)
    「走ってのど乾いたでしょ?
      今紅茶入れてあげるからね」

    恒一「あっ、うん。悪いね」

    「~~♪」

    鼻歌を歌ってる鳴を初めて見た恒一。
    というかどうやって紅茶を淹れるのだろうと
    眺めていたら、ペットボトルのミルクティーを渡された。

    恒一(確かに寝室にはガスもコンロもないけどさ)

    飲もうと思った時、怜子の時の悪夢を思い出す。

    恒一(そうか薬か!! 見崎なら仕込んでてもおかしくない!!
       あと一歩で口に含むところだったぞ。危ない危ない)

    「飲まないの?」ジー
    384 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:52:57.11 ID:M25U9TAH0 (+22,+29,-4)
    まず見崎が飲めばok
    385 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:56:17.98 ID:GANlh4DPO (+19,+29,-5)
    見崎「一緒に逝こうか」
    386 : 以下、名無しにか - 2012/06/04(月) 23:58:30.74 ID:v5ZY6PE50 (+45,+30,-178)
    恒一「まず見崎が飲めばok」

    「えっ」

    恒一「せっかく用意してくれたのに疑うのは最低だと思う。
        けど今の僕にそんな余裕はないんだ。
        まずは君が飲んでくれないか?」
     
    「……」オドオド

    恒一「なんで飲めないの?」

    「それは……その……」オロオロ

    恒一「見崎。繰り返すけど僕だってイライラしてるんだよ。
        こんな時にふざけるのはいい加減にしてくれ!!」ドン

    壁を叩いた恒一。壁越しに隣の部屋から苦情が飛んでくる。

    「ご……ごめんなさい。そんなに怒るとは思わなかったの」ポロポロ
    387 : 以下、名無しにか - 2012/06/05(火) 00:01:07.91 ID:tqLQmfOL0 (+29,+29,-5)
    疑うなんて酷いよーー!ゴクゴク ウルウル
    388 : 以下、名無しにか - 2012/06/05(火) 00:04:15.46 ID:GHWESTsH0 (+45,+30,-221)
    恒一「泣いて謝るくらいなら最初からやらないでくれ!!
       僕だって迷惑してるんだよ!? ただでさえ多々良さんに
       追われて死に物狂いで逃げてきてるのに!!」

    「……ごめんなさい。もう怒鳴らないで」

    恒一「君は謝ることしかできないのか!!
       どうしてこんなことしたのか説明してくれ!!」ドン

    「……ひぐっ……うぅっ……えぐっ……」ポロポロ

    恒一(はっ……?)

    ここまできて、ようやく言いすぎたことに気づく恒一。
    はたから見れば恒一が責めすぎかもしれないが、彼とて
    思春期の中学生だ。感情のコントロールができてない。

    もちろんそれは見崎鳴も同様だが。

    「お願いします……嫌いにならないでください……」ポロポロ
    389 : 以下、名無しにか - 2012/06/05(火) 00:10:08.98 ID:GHWESTsH0 (+45,+30,-179)
    鳴の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになってる。
    その姿が心の傷を物語っていた。

    彼女の世話をしていた頃を思い出す恒一。
    あの時の自分なら何をしてただろうと思い、

    恒一「ごめんね見崎。ちょっと言いすぎたよ」

    「……ひぐっ……うえええんっ……」

    恒一「もう泣き止んでね? 怒鳴って悪かったよ」

    「ううっ……ゆるして……くれるの?」

    恒一「もちろんだよ。僕はどうかしてたんだ。
       嫌なことがあったから、つい見崎に八つ当たりしちゃったんだ」

    ハンカチで顔を綺麗にふいてあげた。潤んだ瞳の
    上目遣いは、最強の破壊力を持っていた。
    390 : 以下、名無しにか - 2012/06/05(火) 00:16:26.49 ID:GHWESTsH0 (+45,+30,-190)
    恒一(僕だって男だから抱きしめたい衝動に駆られるさ。
        この子は初恋の女の子だからね。でも聖人として
        覚醒した以上、余計な手出しはしないからね)

    意志の力は強かった。意志の勝利である。

    「あれ? もう行っちゃうの?」

    恒一「あれだけ怒鳴っちゃったから野次馬が
        集まってきてるからね。暴力男として
        名前が知られるのは嫌だよ」

    「最後に一つだけ言わせて」

    恒一「なんだい?」

    「実はこの部屋ね、多々良さんと相部屋なの」

    恒一「」
    392 : 以下、名無しにか - 2012/06/05(火) 00:22:17.59 ID:GHWESTsH0 (+43,+30,-184)
    恒一の背中に冷たいものが流れた。
    脳内が一瞬でクールダウンする。

    次に脳内に浮かんだ泉に重い石が落とされ、水面が乱れる。

    恒一「なんで先に言わなかったんだよ?」

    「……え?」

    恒一「なんでそういう大事なことを最初に言わないんだよ!!
        君はやっぱり僕をバカにしてるだろ!!
        多々良さんと相部屋だって知ってたらこんな部屋に
        長居しなかったよ!!」

    「ひっ……」

    恒一「大事なことは最初に言えよ!! 聞いてるのか見崎鳴!!」

    「うっ……その……ごめん……なさいっ……」

    二度目のマジ切れである。ギャグですむ話じゃなかった。
    393 : 以下、名無しにか - 2012/06/05(火) 00:28:43.50 ID:GHWESTsH0 (+43,+30,-215)
    恒一の水面はマグマのように煮えたぎっていた。
    高温は簡単には冷めそうにない。

    恒一「いつもいつも君は僕をバカにしてるだろ!?
        話をややこしくするのが好きなんだな!?
        僕に恨みでもあるのか!?」

    「ちがうの……私はもっと榊原君と一緒にいたかったから」ポロポロ

    恒一「……!?」

    「好きなんです……榊原君のことが好きだから……」

    恒一は鳴に手を上げる一歩手前までいっていたが、
    突然の告白に静止し、彼女の眼を見つめてしまう。

    真っ黒な瞳は奥が深く、様々な感情が入り混じっていた。
    恐怖。畏怖。愛情。独占欲。

    鳴の感情が波のように流れ込んできたのだった。
    394 : 以下、名無しにか - 2012/06/05(火) 00:29:57.37 ID:tqLQmfOL0 (+29,+29,-24)
    「追われてる」言ってないかと思ったが最初に言ってるな…
    395 : 以下、名無しにか - 2012/06/05(火) 00:35:25.81 ID:GHWESTsH0 (+45,+30,-154)
    恒一(僕はなんてことを……?)

    後悔しても遅い。どれだけ汚い言葉で鳴を傷つけたことか。
    進んでしまった時間は二度と元に戻せない。
    一生かかっても忘れることはできないだろう。

    「うえっ……ひぐっ……うえええんっ……」ポロポロ

    恒一「……」

    右手を強く握り、歯を食いしばる。
    今さらどの顔で謝罪し、ハンカチを差し出せというのか。

    彼女を一人にするべきだと判断し、無言で部屋を出る。
    廊下が異世界のように見えた。淡い電球の光が、
    永遠と続く通路を照らしてる。

    この館は人を狂わせる力がある。そう感じさせた。
    396 : 以下、名無しにか - 2012/06/05(火) 00:41:34.94 ID:GHWESTsH0 (+45,+30,-179)
    恒一「くっ……ううっ……」

    陶器が置いてある台座の前で泣き崩れる。
    多々良に追われてたからと言い訳するつもりはない。

    本当にあと一歩で鳴の頬を殴っていた。
    それだけでもよかった。でも罵詈雑言はたくさん並べた。
    鳴の鳴き声がいつまでも頭の中に響いてる。

    多々良「探しましたよ榊原君。悲しいことでもありましたか?」

    恒一「た……たら……さん?」

    呂律すら回らぬ自分を情けなく思った。

    多々良「まあ、よっぽど酷いことがあったのね?」

    自然な動作で抱きしめられた。まるで最初から
    こうするのが当たり前だったかのように。
    397 : 以下、名無しにか - 2012/06/05(火) 00:44:13.68 ID:j/ttlEqP0 (-6,+3,-1)
    多々良支援
    398 : 以下、名無しにか - 2012/06/05(火) 00:47:09.23 ID:GHWESTsH0 (+45,+30,-159)
    多々良「気が済むまで泣いていいんですよ?
         私なら榊原君の全てを受け止められます」

    恒一「……」

    根本的な原因は君のせいじゃないかと怒りたくもなった。
    なのに怒れないのは、抱きしめられた感触が
    あまりにも心地よかったから。

    ずっと避けていた女の子の温もりを知ってしまったから。

    多々良「落ち着きましたか?」

    恒一「うん。ありがとう多々良さん」

    多々良「部屋に……入りましょうか?」

    恒一「でも見崎が中に……」

    多々良「もう出て行きましたよ? 今は無人です」
    399 : 以下、名無しにか - 2012/06/05(火) 00:49:36.85 ID:HU2tvglV0 (+19,+29,-1)
    榊原くん逃げて!
    400 : 以下、名無しにか - 2012/06/05(火) 00:53:21.36 ID:GHWESTsH0 (+45,+30,-151)
    部屋は確かにだれもいなかった。

    時刻は十時過ぎ。
    規定で定められた就寝時刻を一時間も過ぎてる。

    多々良「榊原君……!!」

    恒一「ん……んん……!!」

    ベッドの上で座ったまま密着し、唇を押し付けてきた。
    恒一より向こうのが積極的だった。

    二度目だ。もう止めたほうがいい。
    恒一の脳内で鳴る警告を無視せざるを得なかった。

    多々良「舌、入れますよ?」

    相手はもう大人のキスを求めてくる。
    恒一は抵抗する余力がなかったから、
    甘んじて受け入れることになった。
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