私的良スレ書庫
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元スレ紳士「お暇でしたら保健室の先生になってみませんか?」
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声にこたえるものは、風だけだった
火照った俺を冷ますように、ひゅう、ひゅうと、優しくふいていた
男(女)「……」
しばらくして涙は止まった
俺は目をはらしたまま、自身の墓石の前で、じっと空を見つめる
男(女)「……」
どうしていいのか、分からなかった
やっと一つのピースを手に入れたのに
俺は動く事ができなかった
いっそこのままここで死んでもいいのではないかと思った
どうせ俺はもう、死んでいるのだ
人の居ない墓地、目の前には自分の墓
うってつけの場所だった
男(女)「……く、う……、くそ、くそぉお……」
――でも、だめなんだ
まだなんだ
今はまだ、早い
今ここに居る俺は――まだ先に、進む事が出来るのだから
火照った俺を冷ますように、ひゅう、ひゅうと、優しくふいていた
男(女)「……」
しばらくして涙は止まった
俺は目をはらしたまま、自身の墓石の前で、じっと空を見つめる
男(女)「……」
どうしていいのか、分からなかった
やっと一つのピースを手に入れたのに
俺は動く事ができなかった
いっそこのままここで死んでもいいのではないかと思った
どうせ俺はもう、死んでいるのだ
人の居ない墓地、目の前には自分の墓
うってつけの場所だった
男(女)「……く、う……、くそ、くそぉお……」
――でも、だめなんだ
まだなんだ
今はまだ、早い
今ここに居る俺は――まだ先に、進む事が出来るのだから
久しぶりにVIPにSSを見に来たらこんな良スレがあるとはVIPも捨てたものじゃないな
放心状態のまま、バスにのった
バスからは、連なる山々が見えた
こんな景色は、家を出て、都会に引っ越してから久しぶりに見る
だから、幼き日に毎日みていたそれも、今はどこか珍しい
男(女)「昔は、あの中を走り回ったっけ」
遠い記憶を霞の中から掘り起こす
男(女)「……」
いつか作った秘密基地は、どうなっただろうか
いつか埋めたタイムマシンは、どうなっただろうか
子供の頃にそうして作ったものは、すぐに忘れられていたような気がする
そのときが面白ければそれでよくて
次があるならばそれは、また新しいものを作る事
男(女)「誰とあそんだっけかな……」
色々な子が居たと思う
――その中に
何かを忘れているような、気がした
バスからは、連なる山々が見えた
こんな景色は、家を出て、都会に引っ越してから久しぶりに見る
だから、幼き日に毎日みていたそれも、今はどこか珍しい
男(女)「昔は、あの中を走り回ったっけ」
遠い記憶を霞の中から掘り起こす
男(女)「……」
いつか作った秘密基地は、どうなっただろうか
いつか埋めたタイムマシンは、どうなっただろうか
子供の頃にそうして作ったものは、すぐに忘れられていたような気がする
そのときが面白ければそれでよくて
次があるならばそれは、また新しいものを作る事
男(女)「誰とあそんだっけかな……」
色々な子が居たと思う
――その中に
何かを忘れているような、気がした
なんとなく、であった
そのまま帰る気にならなくて、俺はまだ、実家へと戻ってきてしまった
用事があるわけではないから、呼び鈴も鳴らせないのに
男(女)「……さむいな」
どうしよう、とおもった
このままいても仕方な――
母「……どうしたの」
――偶然か、母が、玄関からでてきた
男(女)「あ、いえ……」
どう答えるか、悩む
男(女)「その、……行って来ました」
母「そっか」
母「……おかえり」
男(女)「――」
声を、失った
そのまま帰る気にならなくて、俺はまだ、実家へと戻ってきてしまった
用事があるわけではないから、呼び鈴も鳴らせないのに
男(女)「……さむいな」
どうしよう、とおもった
このままいても仕方な――
母「……どうしたの」
――偶然か、母が、玄関からでてきた
男(女)「あ、いえ……」
どう答えるか、悩む
男(女)「その、……行って来ました」
母「そっか」
母「……おかえり」
男(女)「――」
声を、失った
男(女)「……はい」
いつ振りかに言われたその言葉はとてもとても嬉しかったけれど
ただいま、というのは何だが気恥ずかしかった
母「貴方……」
男(女)「はい……?」
母「前にも一度――来てくれたよね」
カチリ
時が止まったかと思った
母「あの時はごめんなさいね」
母「つっけんどんな態度とって、追い返しちゃって」
男(女)「え……?」
母「あれ、違ったかしら」
母「確かにインターフォン越しで顔は見て無かったけれど……」
母「ほら、たしか、一ヶ月くらい前」
なん……だって……?
いつ振りかに言われたその言葉はとてもとても嬉しかったけれど
ただいま、というのは何だが気恥ずかしかった
母「貴方……」
男(女)「はい……?」
母「前にも一度――来てくれたよね」
カチリ
時が止まったかと思った
母「あの時はごめんなさいね」
母「つっけんどんな態度とって、追い返しちゃって」
男(女)「え……?」
母「あれ、違ったかしら」
母「確かにインターフォン越しで顔は見て無かったけれど……」
母「ほら、たしか、一ヶ月くらい前」
なん……だって……?
男(女)「あ、えっと……、そ、そうでしたね」
話を合わせるべきだと、判断した
男(女)「あの時は、なんで……?」
母「恥かしいけどね、私、息子とは仲があまりよくなかったから」
母「突然家に来て、古い知り合いだなんていわれても、胡散臭さしか感じなくてね」
母「あの子、余り友達の多い人でもなかったと思うし」
母「息子の墓地を教えるなんてなると……、さすがに気がひけてねえ」
男(女)「そ、そう、でしたか……」
確かに俺と母は仲が良くなかった
あまり息子の知り合いと関わりたくないという気持ちもあったのかもしれない
そこにきて突然の来客だ、墓を教えたくないという気持ちもわかるし
追い返すのも、分かる
母「でもほら、二度もきてくれたから……さすがに、ね」
母「実際、嬉しいとも思ったし……」
男(女)「……そうですか」
話を合わせるべきだと、判断した
男(女)「あの時は、なんで……?」
母「恥かしいけどね、私、息子とは仲があまりよくなかったから」
母「突然家に来て、古い知り合いだなんていわれても、胡散臭さしか感じなくてね」
母「あの子、余り友達の多い人でもなかったと思うし」
母「息子の墓地を教えるなんてなると……、さすがに気がひけてねえ」
男(女)「そ、そう、でしたか……」
確かに俺と母は仲が良くなかった
あまり息子の知り合いと関わりたくないという気持ちもあったのかもしれない
そこにきて突然の来客だ、墓を教えたくないという気持ちもわかるし
追い返すのも、分かる
母「でもほら、二度もきてくれたから……さすがに、ね」
母「実際、嬉しいとも思ったし……」
男(女)「……そうですか」
男(女)「彼は、いつ、亡くなったのです?」
母「えーと、三月の終わりごろ、だったかな」
男(女)「三月の終り……」
男(女)「どういう理由で……?
母「理由は、私にもわからない」
母「ただまあ、前にも言ったと思うけど……、自殺ね」
自殺……、その可能性は、考えられた
なぜなら俺は、俺自身だ
何度も自殺したいと思っていたのを、はっきりと覚えている
男(女)「……前にも、っていうのは」
母「突き返しちまった時だよ。あの時に、自殺、ってのは言ったと思う」
男(女)「なるほど……」
母「えーと、三月の終わりごろ、だったかな」
男(女)「三月の終り……」
男(女)「どういう理由で……?
母「理由は、私にもわからない」
母「ただまあ、前にも言ったと思うけど……、自殺ね」
自殺……、その可能性は、考えられた
なぜなら俺は、俺自身だ
何度も自殺したいと思っていたのを、はっきりと覚えている
男(女)「……前にも、っていうのは」
母「突き返しちまった時だよ。あの時に、自殺、ってのは言ったと思う」
男(女)「なるほど……」
男(女)「他に彼について、何か……」
母「そうだねえ……、私はあの子について、余り詳しくなかったから」
男(女)「そうですか……」
母「……あ」
母「そうだそうだ。たしかあれは、不動産屋から聞いた話なんだけど」
男(女)「はい」
母「あの子、丁度死ぬ前くらいに、引越しをしようとしていたみたいでね」
母「でも、引越し先が、だぶるぶっきんぐ? っていうのかな。になったらしいの」
男(女)「ダブル、ブッキング……? 二重契約ですか」
母「そうそう。で、うちの息子が断ったらしいんだけど」
母「そのあとにすぐ自殺しちゃったから、一応連絡があったのよ、ウチに」
男(女)「……205号室、ですか」
母「そうそう、確かそんな事、言ってた」
母「そうだねえ……、私はあの子について、余り詳しくなかったから」
男(女)「そうですか……」
母「……あ」
母「そうだそうだ。たしかあれは、不動産屋から聞いた話なんだけど」
男(女)「はい」
母「あの子、丁度死ぬ前くらいに、引越しをしようとしていたみたいでね」
母「でも、引越し先が、だぶるぶっきんぐ? っていうのかな。になったらしいの」
男(女)「ダブル、ブッキング……? 二重契約ですか」
母「そうそう。で、うちの息子が断ったらしいんだけど」
母「そのあとにすぐ自殺しちゃったから、一応連絡があったのよ、ウチに」
男(女)「……205号室、ですか」
母「そうそう、確かそんな事、言ってた」
帰りの電車の中
男(女)(やはり無駄足にはならなかった……)
それどころか、ものすごい収穫である
男(女)(ダブルブッキング、ね)
確かに、その件はあった
でもそれは、母からきいて、今さっき、ああそうだっけ? なんて思い出したくらいだ
男(女)(たしか、そうなってしまったかもしれない、なんて話をしていた気がする)
男(女)(でも、そのあとすぐに問題がなくなったっていわれたんだ)
だから、ほとんど覚えていなかった
いつの間にか起こって、いつの間にか解決して
俺にはほとんど、関係の無い話だった……はずだ
男(女)(……ふむ)
しかし話自体は確かに、納得はできた
二重契約となった、できればこの件はなかったことにしてほしい、なんて不動産屋にいわれていたら
面倒くさい事の嫌いな俺は、なんの抵抗もなく折れただろう……
男(女)(やはり無駄足にはならなかった……)
それどころか、ものすごい収穫である
男(女)(ダブルブッキング、ね)
確かに、その件はあった
でもそれは、母からきいて、今さっき、ああそうだっけ? なんて思い出したくらいだ
男(女)(たしか、そうなってしまったかもしれない、なんて話をしていた気がする)
男(女)(でも、そのあとすぐに問題がなくなったっていわれたんだ)
だから、ほとんど覚えていなかった
いつの間にか起こって、いつの間にか解決して
俺にはほとんど、関係の無い話だった……はずだ
男(女)(……ふむ)
しかし話自体は確かに、納得はできた
二重契約となった、できればこの件はなかったことにしてほしい、なんて不動産屋にいわれていたら
面倒くさい事の嫌いな俺は、なんの抵抗もなく折れただろう……
男(女)「ただいま」
紳士「お帰りなさいませ」
角の部屋、205号室へと俺は戻る
紳士「どうでしたか」
男(女)「上々だ。見つけてきたよ、“俺”を」
紳士「それはそれは。……お話を、伺いましょう」
男(女)「ああ。だが、なれないことをしたからかな、腹が減ってつらいや」
紳士「ふふ、では夕食をとりながらでも」
男(女)「そうしてくれると助かる」
紳士「お帰りなさいませ」
角の部屋、205号室へと俺は戻る
紳士「どうでしたか」
男(女)「上々だ。見つけてきたよ、“俺”を」
紳士「それはそれは。……お話を、伺いましょう」
男(女)「ああ。だが、なれないことをしたからかな、腹が減ってつらいや」
紳士「ふふ、では夕食をとりながらでも」
男(女)「そうしてくれると助かる」
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