私的良スレ書庫
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元スレ岡部「これが、俺たちの選択だよ」
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ラボを走り出た瞬間。
「……あ、れ?」
私の頭に何かが入り込んだ感触がした。
その直後。
「あ……つい……いたい……なに、これ……ッ!」
猛烈な頭痛。猛烈な熱。
視界が真っ暗になり、汗が噴き出す。平衡感覚が失われ、私は階段を最上段から転げ落ちていく。
鈍器で殴られたような激痛をまず頭に感じ、後はただ落ちた。
節々が痛い。体が動かない。痛みが全身をうねり、声を上げることも出来ない。
「綯ッッ!!」
浮遊感があった。誰かの腕が私を強く抱き上げたらしい。白いひらひらが僅かな視界の隅に映る。
誰かは私に声をかけるが、もうよく耳も聞こえない。
「ミスターブラウンッ! 綯がッッ!!」
「あぁん? 綯がどうし…………おい綯、どうした、綯!! な…………――――!!」
周囲の喧噪は尾を引くように伸び掠れ、世界が遠のいていく。視覚が、聴覚が、五感が、消えていく。
私は意識を手放した。
『……ここは……?』
真っ白い空間に、私の意識だけが浮き立っている。
重力は感じないが、立っている、と認識したとたん足に感触があった。
周囲を見渡しても白ばかり。上下左右、全ての方向にどこまでも続く白が広がっていた。
と、視界のずっと向こうに、青い輝きが瞬いた。それは蝶。……1匹の小さな蝶。
蝶の羽ばたきはふらふらと頼りなく、今にも落ちて息絶えてしまいそうだ。
その子はこちらへ向かっていた。私へ向かっていた。
『……ッ!』
訳の分からない衝動が私を貫く。彼を助けたい。助けなきゃ。
走り出した私と、蝶の距離はぐんぐん詰まっていく。
これなら大丈夫、彼を助けられる。両手を伸ばし、彼を支えようとする。
……しかし、直前で彼は力を失い、ふっと落下した。
『オカリンおじさん!!』
限界まで伸ばしきった、右手の、指先が、彼をかすめて……――。
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>>1prpr
……長く、そして短い夢を見ていた気がする。色が見えた瞬間から、記憶からは失われてしまったけれど。
こういうときなんて言えばいいって言ってたっけ、ダルおじさん。たしか、そうだ。
”見知らぬ天井”。
「待ってろ、すぐに先生を呼んでくるからな!」
久しぶりに聞いたあの人の声。オカリンおじさん。
ばたばたとせわしなく走り去っていく足音が聞こえて、五感が戻ったことを理解した。
痛みはない。熱もない。頭は澄んでいる。
しかし記憶はない。ひらつく白衣と2人のせっぱ詰まった声を最後に、記憶が断絶している。
長い間、私は幽明を漂っていた。
飛んできたお医者様から、『3週間もの間、意識不明で生死をさまよっていた』と聞かされても、なんら疑問には思わなかった。
父さん、萌郁おねえちゃん、まゆりおねえちゃん、ダルおじさん、るかおにいちゃん、フェイリスおねえちゃん、学校の友達、父さんの友達。
いろんな人がお見舞いに来てくれた。
みんなみんなとても心配してくれたけど、私の主観は時間が吹き飛んでいたのでなんだか申し訳なくなった。
一週間、大事を取って安静にし、簡単なリハビリを終え、私は退院した。
久しぶりの外は気持ちよかった。狭い空、アキバの町並み、肌を打つ風や鼻をくすぐるにおい、全てが新鮮だった。
3週間越しのラボ。ぐちゃぐちゃと色んなものが置かれたラボ。
窓際で小さな白衣が寂しそうに風に揺れていた。
手を伸ばして取ろうとすると、オカリンおじさんがすぐさま駆け寄ってきて取ってくれた。
優しいおじさんなんて変な気分だ。小さくお礼を言って白衣を着る。
なじむ、じつになじむぞー。これは誰だっけ、スピードワゴンさん? だっけ?
おじさんを見た。おじさんもいつも通り白衣を着ていた。3週間、おじさんは一人だった、と唐突に思った。
まゆりおねえちゃんやダルおじさんが居たのに、そう思った。
小さな白衣を着た小さな私、大きな白衣を着た大きなオカリンおじさん。
「ごめんなさい、オカリンおじさん」
謝っていた。何について謝ったのかは分からない。あふれる涙はそのままに、おじさんに縋り付いた。
硬直するおじさんに構わず、私は彼の足に取り付いて泣き続けた。
年の瀬。天王寺家には3人の人の姿があった。
私、父さん、そして萌郁おねえちゃん。
父さんは何をするでもなく、ぼーっとテレビの特番を見ていて。
萌郁おねえちゃんはみかんの筋をせっせと取って、綺麗なみかんを私に渡してくれている。
こたつの3辺にそれぞれ入って、ただ何をするでもなく、時間と空間を共有する。
ゆっくりとした団欒。とっても素敵なひととき。
こんな日がいつまでも続けばいい、というようなことをこの前言ってみたら、オバハンか、と父さんに呆れられた。失礼な。
ちょっと不愉快なことを思い出してしまったので、みかんを2房いっぺんに口へ放り込む。んんー、甘くておいしい。
このちょっとした贅沢がいいんだよね。なんて言うとまたオバハンくさいとか言われそうだなぁ。もういいよオバサンで。
萌郁おねえちゃんにばかり白いのを取らせるのもあれだから、私も協力しようと手を伸ばしtttttttttttttttt
……?
……? ……?
……なに、今の。
オカリンおじさんの、声なき声が聞こえた。はっきりと耳に。
私の中の何かがざわめく。どこかへ導こうとしている。それは羽の付いた何かを思い起こさせたけど、連想はそこで途切れた。
ここに居る時間はない。もう時間は残されていない。正体不明の焦燥感が私を追い立てる。
こたつでぬくぬくしてる暇なんてない。もう一刻の猶予もない!
私はこたつを飛び出す。父さんと萌郁おねえちゃんが目を丸くして私を見ていた。
……私、何してるんだろ。急に恥ずかしくなった。
父さんは渋面を作って、トイレ我慢してたのかよ、と言い放った。全く、デリカシーのない父だ。
なんでもない、急に運動したくなっただけ、と適当に理由を付けて再びこたつへ潜り込む。なんだったんだ今のは。
オカリンおじさんの声なんて聞こえるわけない。彼はいま実家かラボだろう。
どうしてこの家に居てあの人の声gggggggggggggg
『(嫌だ! 死にたくない! 助けてくれ! 助けてくれ! 助けてくれ!)』
……。また聞こえた。今度はもっとせっぱ詰まった声。
本格的に病院に行った方がいいかも。なんなんだ本当に。萌郁おねえちゃんのみかんを堪能させてくれ。
夢なら寝ているときに出てきてくrrrrrrrrrr
『……っ……』
……。
『…………』
……。
聞いたことなんてないはずなのに。でもそれはたしかに、人が呼吸をやめる音だった。
死んだはずの人の助けを求める声が頭の中に響いてくるとか怖すぎだろ
消えていた焦りが再び頭をもたげてくる。何かが、誰かが、私を待っている。
「……行かなきゃ」
確固たる気持ちでこたつを出て、私は家を辞そうとする。
「おっ、おい綯! どこ行くんだ!?」
「……綯ちゃん……?」
明らかにトイレに行くような様子ではない私を2人は察する。
「なんでもないよ。ちょっと用事」
「な、なんでもないわきゃねぇだろう! なんでそんな眉間にシワ寄せてんだおめぇ……」
……父さんは、やっぱり鋭い。
走る。家を出る。走る。父さんの大きな声が聞こえた。けど振り向かない。振り向いてる時間はない。
誰が私を待ってるかなんて分からない。けど誰かが待ってる。
ブラウン管工房前の、ベンチで。
今行くから。待ってて。まだ早まらないで。
さきほど連想しかけていた何かが頭の中で実体を持った。蝶だ。
それは青く輝く蝶。現実にこんな蝶は居ないだろう。私の頭の中だけにいる彼が、私を導いてくれている。
あの場所へ。
彼の運命の大分岐点へ。
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
間に合った。彼は待っていた。ベンチに腰掛け、ぼぉっと天を見上げ待っていた。
すぐさま駆け寄る。
「……ッ!」
彼の様子は異様だった。
空を見上げる瞳はさっきから瞬きをしていない。口は白痴のように半開きになっている。
あまりに奇異。その様子に常の私なら恐怖を感じ、話しかけようとはしなかっただろう。
しかし、今の私は違う。
頭の中の蝶、もうそれだけではない、私自身が、オカリンおじさんを助けたいと強く願っていた。
意を決してさらに近づいてみる。
予想以上に彼の纏う雰囲気はひどいものだった。顔には涙の跡がくっきりとある。拭うことも忘れていたようだ。
表情も幽鬼のように青白く、力の抜け切った諦めた表情をしていた。
引きそうになる気持ちを押さえ、私を何度も助けてくれた彼の姿を思い描き、背に芯を入れて、自分を奮い立たせる。
乾く口を強引に開き、話しかけた。
「……ねぇ、オカリンおじさん」
返答はない。
彼は私に気付いていない。
一度言葉を口に出来れば、後は流れるように続けられた。
「ねぇ、オカリンおじさんたら。どうしたの?」
返答はない。
さらに近寄って、白衣を握って強く揺さぶる。
「オカリンおじさん」
私に揺らされるままになっている彼の首が、ガクリ、と垂れ。
私と目が合った。
あれgoodend?
てっきり萎えさんのダル逆行栗断罪特務機関SERNものでドロドロするのかと
てっきり萎えさんのダル逆行栗断罪特務機関SERNものでドロドロするのかと
「ひ」
光のない瞳。
何も写していない瞳。
暗い瞳が、昆虫のように私を見ている。
じぃ、と射すくめられ、私はただ固まってしまう。
どれだけ時間が経ったか。彼はこちらに目を向けたまま、口を開いた。
「紅莉栖とダルがな、キスしてたんだよ」
唐突なその言葉に、私は反応を返せなかった。
私の様子など意に介さず、オカリンおじさんは続ける。
「ラボで。抱き合って。嬉しそうに。顔赤らめてた」
散文調で、心の言葉をそのまま言葉にし続ける。
結局、牧瀬鈴羽ちゃんになっちゃうのか。ご愁傷さまですオカリン
>>639
なるわけねえだろ。苗字かわったらAじゃない。ラボメンじゃない。鈴羽じゃない
なるわけねえだろ。苗字かわったらAじゃない。ラボメンじゃない。鈴羽じゃない
「さっきラボに寄ったんだ。そうしたらキスしてた」
「紅莉栖を助けたのは俺じゃないのか?」
「ダルも紅莉栖も幸せそうだった」
「どうしてダルなんだ?」
「俺が何か悪いことしたかな」
「あのとき紅莉栖は思い出したじゃないか。クリスティーナでも助手でもない、って」
「SG世界線の未来は未定ってこういうことだったのかよ?」
「ならどうして俺を紅莉栖に会わせた。どうして俺に希望を持たせた」
「これが世界線って奴のやり口か?」
「そうだな。ディストピアやら世界大戦やらよりずっと効いたよ」
「ハッキリ思い出せる。忘れられそうにない」
「紅莉栖とダルの表情」
「誰のおかげでここに居られるかも忘れやがって」
「オカリンおじさん!!」
抑揚のない口調で、呪いの言葉を吐き続ける彼を呼び止める。話している内容は所々理解できなかった。
オカリンおじさんが紅莉栖おねえちゃんを好いているらしいことはなんとなく知っていた。
いや、紅莉栖おねえちゃんの向こうに誰かを見ているようにも見えたけど。
とにかく、紅莉栖おねえちゃんはダルおじさんを選んだ。それにオカリンおじさんは激高しているらしかった。
「……ちょっと、お店の中に入ろうよ。少し落ち着こう?」
異様な気配を感じてか、周囲に人が集まっていた。
彼らにオカリンおじさんのこんな様子を見られるのがイヤで、私は彼を強引に店内へ引っ張っていった。
>>641
救いようのない、悪意のある世界線で、いままでのことが無駄になるわけだからラボメンバッジのようには収束しないんじゃね
救いようのない、悪意のある世界線で、いままでのことが無駄になるわけだからラボメンバッジのようには収束しないんじゃね
ダルクリはネーよ。本当に無いわー人それぞれなんだろうけどねー
42型ブラウン管の前にある机から、パイプ椅子を引っ張りだしてきておじさんを座らせる。
力なく手足を投げ出す彼は、見ていて痛々しかった。
これほどに弱った彼は見たことがなかった。
オカリンおじさんという人は、いつだって正体不明の自信に溢れている人で。
多すぎるくらいのエネルギーがみんなに伝染するような、そんな人だった。
今の彼は逆だ。
見ていると気持ちが沈んでくる。
体中の正の気を全て取られてしまいそうだ。そのくらいに今の彼は重苦しい気に覆われていた。
少しして、彼はぽつぽつと語り始める。
「……ハジマリは、電話レンジ(仮)。そして一通のメールだった」
鬱話しは有り得ないシチュエーションで阿鼻叫喚にするために書いてるんだから無いのは当然だろ
そのうちオカリンがひどい目にあうのが病み付きになるよ
それが鬱SS
俺はみなぎってきたわ
そのうちオカリンがひどい目にあうのが病み付きになるよ
それが鬱SS
俺はみなぎってきたわ
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