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元スレインデックス「好きだよ、あくせられーた」一方通行「…はァ?」
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土御門「詳しい説明は省くが、海原が所有する二冊の内の一冊は『生と死に関する時間』について記述されたものだ」
土御門「その『原典』だが、どうも自分の意思を持っているのではないかという程に自身の完成と普及に貪欲らしくてな」
土御門「海原の持つ『原典』も『時流考察』も、共に時の流れについての知識が書かれた魔道書同士。海原の方の原典は恐らく『時流考察』の方の知識を欲しがるはずだ」
土御門「だから、俺達はただ海原の持つ『原典』に『禁書目録』を差し出してやればいい。後は勝手に『原典』が『時流考察』の知識を引き出してくれる」
神裂「しかし…! 魔道書の『毒』はどうなる!? 既に二冊も取り込んだ身で、さらにもう一冊取り込んだりしたら……!」
海原「二冊も三冊も大して変わりませんよ。二度あることは三度あると言うでしょう?」
一方通行「三度目の正直とも言うぜ?」
海原「それなら仏の顔も三度まで、という言葉に期待するとしましょう」
土御門「その『原典』だが、どうも自分の意思を持っているのではないかという程に自身の完成と普及に貪欲らしくてな」
土御門「海原の持つ『原典』も『時流考察』も、共に時の流れについての知識が書かれた魔道書同士。海原の方の原典は恐らく『時流考察』の方の知識を欲しがるはずだ」
土御門「だから、俺達はただ海原の持つ『原典』に『禁書目録』を差し出してやればいい。後は勝手に『原典』が『時流考察』の知識を引き出してくれる」
神裂「しかし…! 魔道書の『毒』はどうなる!? 既に二冊も取り込んだ身で、さらにもう一冊取り込んだりしたら……!」
海原「二冊も三冊も大して変わりませんよ。二度あることは三度あると言うでしょう?」
一方通行「三度目の正直とも言うぜ?」
海原「それなら仏の顔も三度まで、という言葉に期待するとしましょう」
土御門「わざわざこんな回りくどい真似をしたことについては謝るよ。しかし、監視の目を誤魔化すためには仕方なかった」
一方通行「監視衛星を誤魔化す方法なンて他に幾らでもあったろォが」
土御門「監視衛星? そんなもんじゃない。学園都市の中には『滞空回線(アンダーライン)』と呼ばれる極微細な監視機が常時5000万機も飛び回っている」
土御門「学園都市内に『連中』の死角など存在しないのさ。だから、何とかして番外個体と禁書目録を学園都市の外に連れ出す必要があった」
一方通行「それだけのためにしちゃ随分とまァ殺すよォな勢いで俺を攻めてくれたモンだな」
土御門「下手に手心を加えれば『連中』に勘付かれる危険があった。俺達の目論見がばれて『セレクター』を先に爆発させられてはたまらんからな」
土御門「それに、思いっきりやってもお前が死ぬことはないだろうと踏んでいた。信頼って奴だよ、一方通行」
一方通行「まさかその言葉をこンな反吐の出る思いで聞くことがあるとはな」
一方通行「監視衛星を誤魔化す方法なンて他に幾らでもあったろォが」
土御門「監視衛星? そんなもんじゃない。学園都市の中には『滞空回線(アンダーライン)』と呼ばれる極微細な監視機が常時5000万機も飛び回っている」
土御門「学園都市内に『連中』の死角など存在しないのさ。だから、何とかして番外個体と禁書目録を学園都市の外に連れ出す必要があった」
一方通行「それだけのためにしちゃ随分とまァ殺すよォな勢いで俺を攻めてくれたモンだな」
土御門「下手に手心を加えれば『連中』に勘付かれる危険があった。俺達の目論見がばれて『セレクター』を先に爆発させられてはたまらんからな」
土御門「それに、思いっきりやってもお前が死ぬことはないだろうと踏んでいた。信頼って奴だよ、一方通行」
一方通行「まさかその言葉をこンな反吐の出る思いで聞くことがあるとはな」
番外個体「何か勝手に盛り上がってるとこ悪いんだけどさ、ミサカの意思は完全に無視なわけ?」
土御門「断る理由があるか? お前も自分の中に爆弾があるなんて疎ましく思っていただろう?」
番外個体「ま、それは確かにそうなんだけどねー。忘れちゃいけないよ。ミサカという個体は『一方通行』を苦しませるためだけにこの世に存在している」
番外個体「そんなミサカが何であなたが喜ぶようなことに進んで協力しなきゃなんないのさ」
一方通行「………」
番外個体「どうしてもって言うんならさぁ、そこに土下座してお願いしなよ。そしたら考えてあげてもいいよー? ぎゃははっ!」
一方通行「………」ザッ
番外個体「え、ちょ、何してんのさアンタ」
その場にいた全員が言葉を失った。
“あの”一方通行が、迷いなく地面に膝をつけ、頭を下げていた。
一方通行「頼むわ」
―――今更プライドなどいるものか。
既に命すら捨てる覚悟で事に臨んでいる。
番外個体「……だからさぁ、そういうキャラに合わないような真似されると、ミサカリアクションに困るんだって……」
土御門「断る理由があるか? お前も自分の中に爆弾があるなんて疎ましく思っていただろう?」
番外個体「ま、それは確かにそうなんだけどねー。忘れちゃいけないよ。ミサカという個体は『一方通行』を苦しませるためだけにこの世に存在している」
番外個体「そんなミサカが何であなたが喜ぶようなことに進んで協力しなきゃなんないのさ」
一方通行「………」
番外個体「どうしてもって言うんならさぁ、そこに土下座してお願いしなよ。そしたら考えてあげてもいいよー? ぎゃははっ!」
一方通行「………」ザッ
番外個体「え、ちょ、何してんのさアンタ」
その場にいた全員が言葉を失った。
“あの”一方通行が、迷いなく地面に膝をつけ、頭を下げていた。
一方通行「頼むわ」
―――今更プライドなどいるものか。
既に命すら捨てる覚悟で事に臨んでいる。
番外個体「……だからさぁ、そういうキャラに合わないような真似されると、ミサカリアクションに困るんだって……」
そして―――――
番外個体「………」
心なしか軽くなったような気がする後頭部を番外個体は撫でさする。
そんな番外個体に土御門が近づいてきた。
土御門「調子はどうだ?」
海原「良好とは言い難いですね。戻す長さと範囲にもよるでしょうが、『時戻し』はあと一度使うのが精々といったところでしょう」
土御門「お前じゃねえよ。空気読め」
海原「やれやれ、これほど血まみれになった同僚に向かって随分と冷たい事を仰いますね」
滝壺「大丈夫だよ、エツァリ。そんな恋も仕事も報われないエツァリを私は応援してる」
海原「ちょっ!? あなた一体何を知ってるんです!? っていうか何で本名知ってんのぉぉぉぉおおおおおおお!?」
滝壺「……次元の彼方から電波が来てる……」
番外個体「………」
心なしか軽くなったような気がする後頭部を番外個体は撫でさする。
そんな番外個体に土御門が近づいてきた。
土御門「調子はどうだ?」
海原「良好とは言い難いですね。戻す長さと範囲にもよるでしょうが、『時戻し』はあと一度使うのが精々といったところでしょう」
土御門「お前じゃねえよ。空気読め」
海原「やれやれ、これほど血まみれになった同僚に向かって随分と冷たい事を仰いますね」
滝壺「大丈夫だよ、エツァリ。そんな恋も仕事も報われないエツァリを私は応援してる」
海原「ちょっ!? あなた一体何を知ってるんです!? っていうか何で本名知ってんのぉぉぉぉおおおおおおお!?」
滝壺「……次元の彼方から電波が来てる……」
土御門「で……どうなんだ?」
番外個体「そうだね。頭の中にずっとあった異物感は無くなってる。確かにミサカの中から『セレクター』は消えてなくなったみたいだ」
土御門「これでお前が上の命令に従う必要は無くなった。後は好きに生きればいい」
番外個体「といわれてもね~……」
土御門「やはり許せんか? 一方通行の事が」
番外個体「……ミサカはさ、『妹達(シスターズ)』によって形成されるミサカネットワークの中から憎悪の感情を汲み取りやすいように調整されているんだけど」
土御門「ああ、確かそんな話だったな」
番外個体「……薄いんだよね、その感情が。一万回も殺されてきたってのにさ。『妹達』が何を考えているのか、ミサカには理解不能だよ」
土御門「お前だってネットワークを構成する『妹達』の内の一人だろう」
番外個体「ふん」
一方通行「おい」
今までインデックスの調子を確かめていた一方通行が、今度はこちらに声をかけてきた。
番外個体「そうだね。頭の中にずっとあった異物感は無くなってる。確かにミサカの中から『セレクター』は消えてなくなったみたいだ」
土御門「これでお前が上の命令に従う必要は無くなった。後は好きに生きればいい」
番外個体「といわれてもね~……」
土御門「やはり許せんか? 一方通行の事が」
番外個体「……ミサカはさ、『妹達(シスターズ)』によって形成されるミサカネットワークの中から憎悪の感情を汲み取りやすいように調整されているんだけど」
土御門「ああ、確かそんな話だったな」
番外個体「……薄いんだよね、その感情が。一万回も殺されてきたってのにさ。『妹達』が何を考えているのか、ミサカには理解不能だよ」
土御門「お前だってネットワークを構成する『妹達』の内の一人だろう」
番外個体「ふん」
一方通行「おい」
今までインデックスの調子を確かめていた一方通行が、今度はこちらに声をかけてきた。
一方通行「オマエはこれからどォする気だ」
番外個体「それを今考えてたとこだったんだよ」
一方通行「……行く当てがねェならウチに来い」
番外個体「はぁ? 本気?」
一方通行「今の時点でガキとガキと馬鹿が居候してンだ。今更一人増えた所で構やしねェよ」
番外個体「……ミサカは、あなたへの憎悪を汲み取りやすいように調整されている」
一方通行「そォか」
番外個体「いつ寝首を掻きに行くかわからないよ?」
一方通行「好きにしろ。で、どォすンだ」
言いながら、一方通行は番外個体に向かってその手を差し出す。
番外個体は目を丸くして、それからしばらく逡巡していたが―――やがて、パァン! と盛大な音を立てて一方通行の手を取った。
番外個体「ま、今更他にやりたいことなんてパッとは思い浮かばないし? しばらくはあなたの周りをウロチョロさせてもらうよ」
結局自分にはそれしかないのだと、番外個体は思う。
なんせ、生まれてから今までずっと。
ずっとずっとずっと。
――――ミサカは、ただあなただけを想い焦がれてきたんだから。
番外個体「それを今考えてたとこだったんだよ」
一方通行「……行く当てがねェならウチに来い」
番外個体「はぁ? 本気?」
一方通行「今の時点でガキとガキと馬鹿が居候してンだ。今更一人増えた所で構やしねェよ」
番外個体「……ミサカは、あなたへの憎悪を汲み取りやすいように調整されている」
一方通行「そォか」
番外個体「いつ寝首を掻きに行くかわからないよ?」
一方通行「好きにしろ。で、どォすンだ」
言いながら、一方通行は番外個体に向かってその手を差し出す。
番外個体は目を丸くして、それからしばらく逡巡していたが―――やがて、パァン! と盛大な音を立てて一方通行の手を取った。
番外個体「ま、今更他にやりたいことなんてパッとは思い浮かばないし? しばらくはあなたの周りをウロチョロさせてもらうよ」
結局自分にはそれしかないのだと、番外個体は思う。
なんせ、生まれてから今までずっと。
ずっとずっとずっと。
――――ミサカは、ただあなただけを想い焦がれてきたんだから。
実際の歩く教会の能力がどこまでのものかは原作でも語られてないけど
絶対防御に近いみたいだから捕縛やガスなんかも効かないんじゃないか。
絶対防御に近いみたいだから捕縛やガスなんかも効かないんじゃないか。
その歩く教会が初っ端から打ち壊されてるからどれだけ考えようと無意味だろ
風斬氷華は夜の街を散歩していた。
決して治安がいいとは言えないこの学園都市の夜を、彼女はこうやって一人でよく歩いている。
好きでそうしている訳ではない。
ただ、共に歩む者がいないから。ただ、帰る家が存在しないから。
風斬氷華はずっと一人で歩いている。
いつもいつも、泣きそうになりながら歩いている。
けれど、この日、風斬氷華の顔には笑みが浮かんでいた。
胸のうちには初めて出来た友達との思い出が溢れている。
だから、彼女が今この時この場所にいたのは偶然なんかじゃなくて。
少女達との再会を望む風斬氷華の想いが、彼女をこの場所へ導いた。
決して治安がいいとは言えないこの学園都市の夜を、彼女はこうやって一人でよく歩いている。
好きでそうしている訳ではない。
ただ、共に歩む者がいないから。ただ、帰る家が存在しないから。
風斬氷華はずっと一人で歩いている。
いつもいつも、泣きそうになりながら歩いている。
けれど、この日、風斬氷華の顔には笑みが浮かんでいた。
胸のうちには初めて出来た友達との思い出が溢れている。
だから、彼女が今この時この場所にいたのは偶然なんかじゃなくて。
少女達との再会を望む風斬氷華の想いが、彼女をこの場所へ導いた。
上条『すまん!!』
電話をかけた一方通行に対し、最初に出てきたのは謝罪の言葉だった。
上条『俺がいながらインデックスをみすみすと連れ去られちまった……!』
一方通行「あァ…その件についてはもォいい」
この件について、一方通行に上条を責める気は無かった。
当の一方通行だって散々踊らされた挙句、まんまと学園都市の外までおびき出されているのだ。
これは上条を責めるのではなく、単純に土御門の手練手管を褒めるべきなのだろう。
一方通行「インデックスは無事だ。馬鹿女が狂った格好してる以外はこっちに異常はねェ。そっちの状況はどうだ?」
上条『うわぁ……神裂の奴、ホントに着替えずに行ったのか……打ち止めとミサカは無事だ。他に怪我人もいない』
打ち止め『もしかしてその電話の相手はあの人!? 代わって代わってー! ってミサカはミサカはお願いしてみる!』
一方通行「……ガキは相変わらず能天気丸出しで何よりだ。一時間かそこらでそっちに戻る。詳しい話はその後に……」
ごとん、と電話の向こうで音がした。
それは、一方通行が今まで散々聞き慣れている音だった。
意識を失った人間が、何の受身も取らず地面に転がった音だった。
一方通行「おい……どォした」
上条『打ち止め!? どうした! 打ち止め!! な……ミサカまで!?』
一方通行「どォしたオイ返事しろ三下ァッ!!!!」
電話をかけた一方通行に対し、最初に出てきたのは謝罪の言葉だった。
上条『俺がいながらインデックスをみすみすと連れ去られちまった……!』
一方通行「あァ…その件についてはもォいい」
この件について、一方通行に上条を責める気は無かった。
当の一方通行だって散々踊らされた挙句、まんまと学園都市の外までおびき出されているのだ。
これは上条を責めるのではなく、単純に土御門の手練手管を褒めるべきなのだろう。
一方通行「インデックスは無事だ。馬鹿女が狂った格好してる以外はこっちに異常はねェ。そっちの状況はどうだ?」
上条『うわぁ……神裂の奴、ホントに着替えずに行ったのか……打ち止めとミサカは無事だ。他に怪我人もいない』
打ち止め『もしかしてその電話の相手はあの人!? 代わって代わってー! ってミサカはミサカはお願いしてみる!』
一方通行「……ガキは相変わらず能天気丸出しで何よりだ。一時間かそこらでそっちに戻る。詳しい話はその後に……」
ごとん、と電話の向こうで音がした。
それは、一方通行が今まで散々聞き慣れている音だった。
意識を失った人間が、何の受身も取らず地面に転がった音だった。
一方通行「おい……どォした」
上条『打ち止め!? どうした! 打ち止め!! な……ミサカまで!?』
一方通行「どォしたオイ返事しろ三下ァッ!!!!」
上条『打ち止めとミサカが急に倒れた! 打ち止めのほうはずっとうわ言みたいに訳のわからない言葉を繰り返してる!』
一方通行「なンだとォ…!?」
番外個体「ねぇ。まずいよ。何かよくない事が起こってる」
一方通行「あァッ!?」
番外個体「上位個体から訳の分からない演算命令がきてる。ミサカは特別な処理がされてるから命令を拒否出来るけど、他の『妹達』は多分演算を強制されているはず」
番外個体はまるで頭痛をこらえているかのように額に手を当てている。
番外個体「何このコード……ミサカはこんなコード知らない……『ヒューズ=カザキリ』……? 何それ…?」
上条『何だ…うわぁぁぁあああああ!!!!』
ブツン、と電話は突然切れた。
原因を問う必要はなかった。
学園都市の壁の内側で、何か得体の知れない光が空に向かって噴き上がっている。
次々とその数を増やし、生き物のように蠢くその光は、まるで巨大な昆虫の羽のようだった。
一方通行「オイ……アレもオマエの差し金か…?」
土御門「いや、知らん……“あんなもの”、俺は知らんぞ……!」
一方通行の握り締める携帯電話がビキィ、と音を立てた。
長さ百mにも及ぶ光の翼が噴き上がるその場所は、一方通行の部屋がある方角と完全に一致していた。
一方通行「なンだとォ…!?」
番外個体「ねぇ。まずいよ。何かよくない事が起こってる」
一方通行「あァッ!?」
番外個体「上位個体から訳の分からない演算命令がきてる。ミサカは特別な処理がされてるから命令を拒否出来るけど、他の『妹達』は多分演算を強制されているはず」
番外個体はまるで頭痛をこらえているかのように額に手を当てている。
番外個体「何このコード……ミサカはこんなコード知らない……『ヒューズ=カザキリ』……? 何それ…?」
上条『何だ…うわぁぁぁあああああ!!!!』
ブツン、と電話は突然切れた。
原因を問う必要はなかった。
学園都市の壁の内側で、何か得体の知れない光が空に向かって噴き上がっている。
次々とその数を増やし、生き物のように蠢くその光は、まるで巨大な昆虫の羽のようだった。
一方通行「オイ……アレもオマエの差し金か…?」
土御門「いや、知らん……“あんなもの”、俺は知らんぞ……!」
一方通行の握り締める携帯電話がビキィ、と音を立てた。
長さ百mにも及ぶ光の翼が噴き上がるその場所は、一方通行の部屋がある方角と完全に一致していた。
ゆらり、ゆらりと『風斬氷華だったもの』の体が揺れる。
辺りの建物は彼女の背中から生えた大小数十本もの光の翼によって薙ぎ倒され、瓦礫の山と化していた。
風斬氷華――否、科学の力によって生み出された人工天使、『ヒューズ=カザキリ』の半開きになった口元からは、涎が止め処なく零れ落ちている。
風斬『う…ぁ…あ……』
だらしなく伸ばされた舌。焦点の合っていない眼球。
今の風斬氷華にまともな思考能力など残ってはいない。
彼女の頭上に浮かぶ直径五十センチ程の輪が、高速で回転し、無数の棒を外周部でガチャガチャと出し入れし、風斬氷華に『ある情報』を入力し続ける。
すなわち、恐怖。
色を失い、白黒になった視界の中で、風斬はただ恐怖に駆られ、力を振るう。
風斬(……た…す……け……て……)
思う事は出来ても、言葉にすることは許されない。
チカチカと風斬の周囲で光が瞬いた。
その光から逃れるように、または引き寄せられるように、風斬は操られ、歩を進めていく。
―――その足が、ピタリと止まった。
白黒になった世界の中で、あらゆる意味をなくした世界の中で、黒々とした『何か』が風斬の前に立ち塞がっていた。
「いいぜ……お前が、あの子達を犠牲にしてまでそんな力を手に入れたいっていうのなら」
その『闇』が何を言っているのか、今の風斬には理解することができない。
ただ、怖い。その思いだけが、今の風斬の中にある全てだった。
「そんな幻想は、この俺がぶち殺してやる」
瓦礫の山と化した街の中で、上条当麻と風斬氷華が対峙する。
辺りの建物は彼女の背中から生えた大小数十本もの光の翼によって薙ぎ倒され、瓦礫の山と化していた。
風斬氷華――否、科学の力によって生み出された人工天使、『ヒューズ=カザキリ』の半開きになった口元からは、涎が止め処なく零れ落ちている。
風斬『う…ぁ…あ……』
だらしなく伸ばされた舌。焦点の合っていない眼球。
今の風斬氷華にまともな思考能力など残ってはいない。
彼女の頭上に浮かぶ直径五十センチ程の輪が、高速で回転し、無数の棒を外周部でガチャガチャと出し入れし、風斬氷華に『ある情報』を入力し続ける。
すなわち、恐怖。
色を失い、白黒になった視界の中で、風斬はただ恐怖に駆られ、力を振るう。
風斬(……た…す……け……て……)
思う事は出来ても、言葉にすることは許されない。
チカチカと風斬の周囲で光が瞬いた。
その光から逃れるように、または引き寄せられるように、風斬は操られ、歩を進めていく。
―――その足が、ピタリと止まった。
白黒になった世界の中で、あらゆる意味をなくした世界の中で、黒々とした『何か』が風斬の前に立ち塞がっていた。
「いいぜ……お前が、あの子達を犠牲にしてまでそんな力を手に入れたいっていうのなら」
その『闇』が何を言っているのか、今の風斬には理解することができない。
ただ、怖い。その思いだけが、今の風斬の中にある全てだった。
「そんな幻想は、この俺がぶち殺してやる」
瓦礫の山と化した街の中で、上条当麻と風斬氷華が対峙する。
倒壊したマンションから奇跡的に無傷で脱出した後―――
“打ち止めとミサカは目の前にいる『天使のような何か』と電波を介して干渉し合っている”、と御坂美琴は言っていた。
上条「……お前は一体、何者なんだ?」
ふらふらと足取りおぼつかなく佇む風斬に上条は問いかける。
答えはない。
風斬の頭上でガチャガチャと天使の輪が蠢いた。
風斬の背中から生える数十の翼の周りで、バチバチと電撃のようなものが迸り始める。
上条「もし、あの子達を苦しめているのが本当にお前だっていうんなら、やめてくれ。あいつらはもうこれ以上苦しんじゃいけないんだ」
電撃のような何かが上条に向かって放たれた。
蛇のようにのたうち、上条に迫ったその力はしかし突き出された右手によって掻き消される。
上条「そうかよ……それがお前の答えだってんなら」
上条は拳を握る。風斬氷華は怯えたように一歩下がる。
上条「力尽くでもやめさせるぞッ!! 馬ッッ鹿野郎!!」
駆け出した上条に向かって次々と紫電が放たれる。
だが、その全てを上条の右手は掻き消していく。
上条と風斬の間の距離が詰まる。上条が右手を振りかぶる。
風斬の前方で強烈な光が瞬いた。
その光は上条の目を眩まし、風斬氷華を怯えさせ後ろに転ばせる。
結果、上条の拳は空を切り、風斬の右腕を掠るにとどまった。
でも―――――それだけで十分だった。
“打ち止めとミサカは目の前にいる『天使のような何か』と電波を介して干渉し合っている”、と御坂美琴は言っていた。
上条「……お前は一体、何者なんだ?」
ふらふらと足取りおぼつかなく佇む風斬に上条は問いかける。
答えはない。
風斬の頭上でガチャガチャと天使の輪が蠢いた。
風斬の背中から生える数十の翼の周りで、バチバチと電撃のようなものが迸り始める。
上条「もし、あの子達を苦しめているのが本当にお前だっていうんなら、やめてくれ。あいつらはもうこれ以上苦しんじゃいけないんだ」
電撃のような何かが上条に向かって放たれた。
蛇のようにのたうち、上条に迫ったその力はしかし突き出された右手によって掻き消される。
上条「そうかよ……それがお前の答えだってんなら」
上条は拳を握る。風斬氷華は怯えたように一歩下がる。
上条「力尽くでもやめさせるぞッ!! 馬ッッ鹿野郎!!」
駆け出した上条に向かって次々と紫電が放たれる。
だが、その全てを上条の右手は掻き消していく。
上条と風斬の間の距離が詰まる。上条が右手を振りかぶる。
風斬の前方で強烈な光が瞬いた。
その光は上条の目を眩まし、風斬氷華を怯えさせ後ろに転ばせる。
結果、上条の拳は空を切り、風斬の右腕を掠るにとどまった。
でも―――――それだけで十分だった。
風斬『ィィィァァァァァアアアアアア―――――――――――――!!!!!!』
耳をつんざく絶叫が空気を震わせた。
上条の右手が触れたところから、風斬の右腕が『分解』されていく。
まるで立体に組み上げられたパズルのピースがバラバラと崩れ落ちていくように。
上条「なっ……!?」
あまりに予想外の出来事に、上条の目が見開かれる。
そんな上条が見ている前で、ボン! と音を立て、風斬の右肩が爆散した。
風斬『ヒィィィィィィイイイイイイイイッ!!!!!!』
根元からちぎれた風斬の右腕がぼとりと地面に落ちる。
途端に急速に分解が進み、地面に落ちた右腕はあっという間にその姿を消した。
風斬『あ…ひ…』
くるりと風斬は上条に背を向ける。とにかく上条から逃げ出そうとふらふらと足を進めようとする。
ガチャガチャと頭上の天使の輪が蠢いた。
ごきごきと無理やり関節を捻じ曲げるような音が響き、ぐりんと勢いよく風斬の体が反転し、再び上条の方を向いた。
ガチャガチャと蠢く天使の輪。
無くなった筈の右腕が、ビデオを巻き戻したように復元されていく。
耳をつんざく絶叫が空気を震わせた。
上条の右手が触れたところから、風斬の右腕が『分解』されていく。
まるで立体に組み上げられたパズルのピースがバラバラと崩れ落ちていくように。
上条「なっ……!?」
あまりに予想外の出来事に、上条の目が見開かれる。
そんな上条が見ている前で、ボン! と音を立て、風斬の右肩が爆散した。
風斬『ヒィィィィィィイイイイイイイイッ!!!!!!』
根元からちぎれた風斬の右腕がぼとりと地面に落ちる。
途端に急速に分解が進み、地面に落ちた右腕はあっという間にその姿を消した。
風斬『あ…ひ…』
くるりと風斬は上条に背を向ける。とにかく上条から逃げ出そうとふらふらと足を進めようとする。
ガチャガチャと頭上の天使の輪が蠢いた。
ごきごきと無理やり関節を捻じ曲げるような音が響き、ぐりんと勢いよく風斬の体が反転し、再び上条の方を向いた。
ガチャガチャと蠢く天使の輪。
無くなった筈の右腕が、ビデオを巻き戻したように復元されていく。
上条「なん…だよ……どうなってんだよ……」
上条はその場に立ち尽くしていた。
握っていた拳はもう解けてしまっている。
上条「違うのか…? これは、お前の意思じゃ……ないのか……?」
風斬氷華は答えない。
ただ、ギシギシと風斬の体を無理やり捻じ曲げる音だけが聞こえている。
ぽとり、と風斬のポケットから何かが落ちた。
上条「え?」
それは、一枚のプリントシール。
その中では、おかしな格好をした少女達が、照れくさそうに、楽しそうに、笑ってVサインをしていて――――
風斬『ぅゥアああアアあああああアあアアあああアアアアア!!!!!!』
風斬が弾ける様に飛び出した。
思わず上条は反射的に身構える。
しかし風斬はそんな上条に目もくれず―――落ちたプリントシールをかばう様に蹲った。
ガチャガチャと天使の輪が激しく音を鳴らす。
風斬の周りで光が連続して何度も何度も瞬いている。
でも、風斬はその場を動かない。
ギシギシと、ゴキゴキと風斬の体から嫌な音が鳴っている。
それでも――――風斬はその場を動かない。
上条「ふざけんな……! 誰だ、ちくしょう!! 誰がこんなふざけた真似をやってんだぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」
その拳の向ける先を定められないまま、上条当麻は絶叫した。
上条はその場に立ち尽くしていた。
握っていた拳はもう解けてしまっている。
上条「違うのか…? これは、お前の意思じゃ……ないのか……?」
風斬氷華は答えない。
ただ、ギシギシと風斬の体を無理やり捻じ曲げる音だけが聞こえている。
ぽとり、と風斬のポケットから何かが落ちた。
上条「え?」
それは、一枚のプリントシール。
その中では、おかしな格好をした少女達が、照れくさそうに、楽しそうに、笑ってVサインをしていて――――
風斬『ぅゥアああアアあああああアあアアあああアアアアア!!!!!!』
風斬が弾ける様に飛び出した。
思わず上条は反射的に身構える。
しかし風斬はそんな上条に目もくれず―――落ちたプリントシールをかばう様に蹲った。
ガチャガチャと天使の輪が激しく音を鳴らす。
風斬の周りで光が連続して何度も何度も瞬いている。
でも、風斬はその場を動かない。
ギシギシと、ゴキゴキと風斬の体から嫌な音が鳴っている。
それでも――――風斬はその場を動かない。
上条「ふざけんな……! 誰だ、ちくしょう!! 誰がこんなふざけた真似をやってんだぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」
その拳の向ける先を定められないまま、上条当麻は絶叫した。
>>227
盛大にワロタwwwwwwwwww
盛大にワロタwwwwwwwwww
シリアスだろうに、上条さんの「ぁ」の多さにどうしても吹いてしまう
瓦礫の山の中で、御坂美琴は立ち尽くしていた。
美琴「何よ…これ……どういうこと……?」
美琴は倒壊した建物に埋もれてしまった住民の救助に当たっていた。
そして、既に瓦礫の下から救出した住民の数は六人。
その六人は、誰一人として死んでいなかった。
それどころか、たったひとつの傷すらない。
意識を失った住民の周囲に、黄金に輝く鱗粉のような物が漂っていた。
ふと、美琴はすぐ近くに寝かせていた打ち止め、ミサカ、ステイルの体に目を走らせる。
同じだ。よく見れば光り輝く鱗粉が打ち止め達の体にこびり付いている。
崩れるマンションから無傷で脱出出来たのは奇跡だと思っていた。
でも、違った。それにはちゃんと理由があった。
誰かが何かをしたからここにいる人間は誰一人として傷ついていない。
美琴「……ッ!!」
美琴は救出活動を中断し、『天使のようなもの』の下へ、そこにいるはずの上条当麻の下へ走る。
伝えなきゃいけないと思った。
どうしてかはわからないけれど、絶対にこの事をアイツに教えてやらなきゃいけないと、御坂美琴は強く思った。
美琴「何よ…これ……どういうこと……?」
美琴は倒壊した建物に埋もれてしまった住民の救助に当たっていた。
そして、既に瓦礫の下から救出した住民の数は六人。
その六人は、誰一人として死んでいなかった。
それどころか、たったひとつの傷すらない。
意識を失った住民の周囲に、黄金に輝く鱗粉のような物が漂っていた。
ふと、美琴はすぐ近くに寝かせていた打ち止め、ミサカ、ステイルの体に目を走らせる。
同じだ。よく見れば光り輝く鱗粉が打ち止め達の体にこびり付いている。
崩れるマンションから無傷で脱出出来たのは奇跡だと思っていた。
でも、違った。それにはちゃんと理由があった。
誰かが何かをしたからここにいる人間は誰一人として傷ついていない。
美琴「……ッ!!」
美琴は救出活動を中断し、『天使のようなもの』の下へ、そこにいるはずの上条当麻の下へ走る。
伝えなきゃいけないと思った。
どうしてかはわからないけれど、絶対にこの事をアイツに教えてやらなきゃいけないと、御坂美琴は強く思った。
困惑する上条の背後で車のブレーキ音が連続する。
振り向くと、そこには四台の装甲車が現れており、その中から上条にも見覚えのある集団が降りてきた。
上条「あれは……『警備員(アンチスキル)』か!?」
警備員A「一班、二班、三班はすぐに付近住民の救助に当たれ! 四班は目標と距離40を保って包囲!」
警備員B「了解!」
警備員C「おい、君! ここは危険だ! すぐに離れろ!!」
リーダーと思しき男の号令の下、『警備員』は迅速に行動を開始する。
八人の『警備員』がそれぞれの手に物騒な武器を持ち、風斬氷華を包囲した。
上条「な…! 待て! 待ってくれ!! 違う! ソイツは違うんだ!!」
警備員C「馬鹿! 離れろと言っているだろう!!」
上条「離せ! 離してくれ!!」
警備員A「警告する! これ以上破壊活動を行うなら直ちに発砲するぞ! すぐにその『能力』を解除し、投降しろ!!」
風斬『あ…う…』
警備員の恫喝に風斬が反応した。
ふらふらと立ち上がり、ぎょろぎょろとその見開かれた眼球を動かす。
その胸に、拾い上げたプリントシールをかき抱くようにして。
振り向くと、そこには四台の装甲車が現れており、その中から上条にも見覚えのある集団が降りてきた。
上条「あれは……『警備員(アンチスキル)』か!?」
警備員A「一班、二班、三班はすぐに付近住民の救助に当たれ! 四班は目標と距離40を保って包囲!」
警備員B「了解!」
警備員C「おい、君! ここは危険だ! すぐに離れろ!!」
リーダーと思しき男の号令の下、『警備員』は迅速に行動を開始する。
八人の『警備員』がそれぞれの手に物騒な武器を持ち、風斬氷華を包囲した。
上条「な…! 待て! 待ってくれ!! 違う! ソイツは違うんだ!!」
警備員C「馬鹿! 離れろと言っているだろう!!」
上条「離せ! 離してくれ!!」
警備員A「警告する! これ以上破壊活動を行うなら直ちに発砲するぞ! すぐにその『能力』を解除し、投降しろ!!」
風斬『あ…う…』
警備員の恫喝に風斬が反応した。
ふらふらと立ち上がり、ぎょろぎょろとその見開かれた眼球を動かす。
その胸に、拾い上げたプリントシールをかき抱くようにして。
ガチャガチャと天使の輪が蠢いた。
バチバチと音を立て、電撃に似た何かが風斬の翼の周りに集中する。
警備員C「チッ…! おいやめろ! 本当に撃つぞ!!」
ガォン! と風斬の翼から光の矢が放たれた。
光の矢は『警備員』が乗ってきた二台の装甲車を巻き込み、そのまま地平線の彼方へ消え―――
直後に、空の彼方が爆発の光に照らされて、ズズン……と低い振動が上条たちの立つ場所まで伝わってきた。
警備員A「……おい、あっちの方角には何があった?」
警備員D「あっちの方角はすぐ海になってます。被害は大きくはないでしょう……あの攻撃が海の向こうの大陸まで届いていなければ、ですが」
警備員B「冗談じゃないぞ。あんなものをそこかしこに撃たれたら、学園都市は滅んじまう!!」
警備員A「やむをえん。全員撃ち方構え! 目標を直ちに無力化しろッ!!」
上条「やめろぉッ!!」
体を押さえつけていた『警備員』を振りほどき、上条は風斬の前に躍り出る。
その両腕を広げて、まるで風斬の壁となる様に。
バチバチと音を立て、電撃に似た何かが風斬の翼の周りに集中する。
警備員C「チッ…! おいやめろ! 本当に撃つぞ!!」
ガォン! と風斬の翼から光の矢が放たれた。
光の矢は『警備員』が乗ってきた二台の装甲車を巻き込み、そのまま地平線の彼方へ消え―――
直後に、空の彼方が爆発の光に照らされて、ズズン……と低い振動が上条たちの立つ場所まで伝わってきた。
警備員A「……おい、あっちの方角には何があった?」
警備員D「あっちの方角はすぐ海になってます。被害は大きくはないでしょう……あの攻撃が海の向こうの大陸まで届いていなければ、ですが」
警備員B「冗談じゃないぞ。あんなものをそこかしこに撃たれたら、学園都市は滅んじまう!!」
警備員A「やむをえん。全員撃ち方構え! 目標を直ちに無力化しろッ!!」
上条「やめろぉッ!!」
体を押さえつけていた『警備員』を振りほどき、上条は風斬の前に躍り出る。
その両腕を広げて、まるで風斬の壁となる様に。
警備員A「な…何をしている! どけ! どくんだ!!」
上条「どかない……コイツだって、こんなことやりたくてやってるわけじゃないんだ……!」
警備員A「何を……言っている……」
美琴「待ちなさい!!」
息を切らせながら駆けつけた美琴が声を張り上げた。
今度は何だ、と『警備員』達の目が美琴に集中する。
美琴「その子じゃない! これをやったのはその子だけど、でも、きっとその子じゃないの!!」
警備員B「何なんだよ! 突然出てきて訳わかんねえ事言いやがって!!」
美琴「誰も死んでない! 誰も傷ついてなんかいない!! きっと、その子が守ってるんだ!!」
美琴の言葉に、上条はやっぱりそうか、と一人納得する。
上条は目の前にいるこの少女の事を何も知らない。
でも、プリントシールに映る『彼女達』の姿を見てしまったから。
この少女が、風斬氷華が、『あの子達の友達』が、悪人であるはずはないと確信していた。
でも、上条には何も出来ない。
上条の右手に出来るのは、風斬氷華を殺す事だけだ。
上条(くそ…! どうする!? どうすれば、こいつを救う事が出来る!?)
上条「どかない……コイツだって、こんなことやりたくてやってるわけじゃないんだ……!」
警備員A「何を……言っている……」
美琴「待ちなさい!!」
息を切らせながら駆けつけた美琴が声を張り上げた。
今度は何だ、と『警備員』達の目が美琴に集中する。
美琴「その子じゃない! これをやったのはその子だけど、でも、きっとその子じゃないの!!」
警備員B「何なんだよ! 突然出てきて訳わかんねえ事言いやがって!!」
美琴「誰も死んでない! 誰も傷ついてなんかいない!! きっと、その子が守ってるんだ!!」
美琴の言葉に、上条はやっぱりそうか、と一人納得する。
上条は目の前にいるこの少女の事を何も知らない。
でも、プリントシールに映る『彼女達』の姿を見てしまったから。
この少女が、風斬氷華が、『あの子達の友達』が、悪人であるはずはないと確信していた。
でも、上条には何も出来ない。
上条の右手に出来るのは、風斬氷華を殺す事だけだ。
上条(くそ…! どうする!? どうすれば、こいつを救う事が出来る!?)
風斬『―――――――――ッ!!!!』
怯えが、恐怖が、不安が、風斬の心を押し潰す。
数を増した己への敵意に、風斬が反応する。
風斬の翼が胎動を始めた。
来る。先程水平線を赤く染めたあの桁外れの一撃がまた発射されようとしている。
上条(ちくしょう……打ち消せるか……!?)
上条は右手を握り締め、光が集中する翼を睨みつける。
さっき見た光弾の威力、速度―――右手以外に当たれば、間違いなく即死だ。
『竜王の顎(ドラゴン・ストライク)』で発射前に食い潰すか―――いや、駄目だ。下手すれば風斬ごと殺してしまう。
風斬『――――――――――――――――――ッ!!!!』
上条「おおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!」
答えは出ぬまま、光弾は放たれ、上条は右手を突き出し―――――
そこに、一方通行が舞い降りた。
怯えが、恐怖が、不安が、風斬の心を押し潰す。
数を増した己への敵意に、風斬が反応する。
風斬の翼が胎動を始めた。
来る。先程水平線を赤く染めたあの桁外れの一撃がまた発射されようとしている。
上条(ちくしょう……打ち消せるか……!?)
上条は右手を握り締め、光が集中する翼を睨みつける。
さっき見た光弾の威力、速度―――右手以外に当たれば、間違いなく即死だ。
『竜王の顎(ドラゴン・ストライク)』で発射前に食い潰すか―――いや、駄目だ。下手すれば風斬ごと殺してしまう。
風斬『――――――――――――――――――ッ!!!!』
上条「おおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!」
答えは出ぬまま、光弾は放たれ、上条は右手を突き出し―――――
そこに、一方通行が舞い降りた。
一方通行の体に触れた光弾は即座に向きを反転し、風斬の翼を何枚も纏めてもぎ取って、空の彼方へ消えていく。
風斬『いぎ―――――ヒィィイッ!!』
風斬がかざした手から爆発的な光の奔流が生まれた。
光は束となり、一方通行に襲い掛かる。
しかしその全ては呆気なく『反射』され、逆に風斬の体を吹き飛ばす。
大きく跳ね上がった風斬の体がどちゃりと地面に落ちた。
風斬『ひ…あひ…ヒィ……』
風斬はそのまま四つん這いになって一方通行から逃げ出そうとした。
また天使の輪がガチャガチャと音を立てる。
風斬の周りで明滅する光が、戻るよう風斬を誘導する。
でも、風斬はそれを全力で拒絶した。
思考能力をほとんど奪われていても、もっと根源的な感情が風斬の体を動かしていた。
白黒に染まった視界の中で、真っ白に輝くその存在。
アレの恐怖を、風斬は知っている。
アレの恐怖を、ゲームセンターで風斬はその身に刻み込んでいる。
風斬の周りで明滅する光は、風斬に恐怖を認識させ、その行動を縛っている。
だが、そんな恐怖など――目の前の白い狂気に比べれば、笑い飛ばせてしまえるくらいちっぽけなものだった。
戦えと繰り返される命令(コード)。体を軋ませ、拒絶する風斬。
結果、彼女は固まったようにその場を一歩も動く事が出来ず―――
一方通行「よォ、こりゃまた随分おめかしして現れたモンだなァオイ」
一方通行という絶対的な恐怖の接近を許してしまった。
風斬『いぎ―――――ヒィィイッ!!』
風斬がかざした手から爆発的な光の奔流が生まれた。
光は束となり、一方通行に襲い掛かる。
しかしその全ては呆気なく『反射』され、逆に風斬の体を吹き飛ばす。
大きく跳ね上がった風斬の体がどちゃりと地面に落ちた。
風斬『ひ…あひ…ヒィ……』
風斬はそのまま四つん這いになって一方通行から逃げ出そうとした。
また天使の輪がガチャガチャと音を立てる。
風斬の周りで明滅する光が、戻るよう風斬を誘導する。
でも、風斬はそれを全力で拒絶した。
思考能力をほとんど奪われていても、もっと根源的な感情が風斬の体を動かしていた。
白黒に染まった視界の中で、真っ白に輝くその存在。
アレの恐怖を、風斬は知っている。
アレの恐怖を、ゲームセンターで風斬はその身に刻み込んでいる。
風斬の周りで明滅する光は、風斬に恐怖を認識させ、その行動を縛っている。
だが、そんな恐怖など――目の前の白い狂気に比べれば、笑い飛ばせてしまえるくらいちっぽけなものだった。
戦えと繰り返される命令(コード)。体を軋ませ、拒絶する風斬。
結果、彼女は固まったようにその場を一歩も動く事が出来ず―――
一方通行「よォ、こりゃまた随分おめかしして現れたモンだなァオイ」
一方通行という絶対的な恐怖の接近を許してしまった。
一方通行「まったく、派手な登場してくれちゃってよォ。見ろ、俺ン家なンかもォ滅茶苦茶じゃねェか」
殺される。
嫌だ。死にたくない。
風斬はふるふると首を振る。
一方通行「まァ、ある種のイベントに対してテンション上げンなァテメエの勝手だが、物事には限度ってモンがあるだろォが」
ごめんなさい。
謝ります。
もう二度とここには現れません。
だから、どうか、どうか許してください。
風斬『ぁ…ふ…ぁ……』
思う事は出来ても―――言葉は、許されない。
ガチャガチャと動く天使の輪。ぴかぴかと明滅する光。
風斬氷華は動けない。
そして、一方通行は風斬に向かってその手を伸ばし―――――
殺される。
嫌だ。死にたくない。
風斬はふるふると首を振る。
一方通行「まァ、ある種のイベントに対してテンション上げンなァテメエの勝手だが、物事には限度ってモンがあるだろォが」
ごめんなさい。
謝ります。
もう二度とここには現れません。
だから、どうか、どうか許してください。
風斬『ぁ…ふ…ぁ……』
思う事は出来ても―――言葉は、許されない。
ガチャガチャと動く天使の輪。ぴかぴかと明滅する光。
風斬氷華は動けない。
そして、一方通行は風斬に向かってその手を伸ばし―――――
『ちょっと待ちなよ。血相変えて飛び出そうとしてるあなたに伝えたい事があるんだけど』
『ミサカネットワークの中には今、“打ち止め(ラストオーダー)”のたったひとつの想いが溢れてる』
『助けて、助けて――――ヒョウカを、助けてあげて――――ってミサカはミサカはお願いしてみる』
『ぎゃは、どお? 今の物真似、似てた?』
おィおィ、一日で番外と風斬と二人もハーレムに追加ですかァ?
学園都市第一位のフラグ回収率はハンパじゃねェなァ!
学園都市第一位のフラグ回収率はハンパじゃねェなァ!
風斬『……ぇ…?』
一方通行「俺も金持ってねェ訳じゃねェからよ。家の件はこれでチャラにしといてやる。つっても二度目はねェぞ」
風斬『あ…? う…?』
一方通行「あン? 聞こえねェよ。はっきり喋れ」
風斬『あ……』
ガチャガチャガチャガチャ! と今まで以上に天使の輪が激しく動き出す。
一方通行「うるせェよ。人が喋ってる時は黙ってろ」
一方通行が天使の輪を掴み、その動きを押さえつけた。
あくまで『科学』によって作られたそのシステムは、一方通行の『ベクトル操作』の前に屈服する。
風斬の目に光が戻る。光の翼が宙に融けて消えていく。
風斬「私を……許してくれるんですか……?」
一方通行「ハァ? 許すも許さねェも何も」
一方通行「オマエは、ただの一度でもあのガキ共を裏切ったンかよ?」
一方通行「俺も金持ってねェ訳じゃねェからよ。家の件はこれでチャラにしといてやる。つっても二度目はねェぞ」
風斬『あ…? う…?』
一方通行「あン? 聞こえねェよ。はっきり喋れ」
風斬『あ……』
ガチャガチャガチャガチャ! と今まで以上に天使の輪が激しく動き出す。
一方通行「うるせェよ。人が喋ってる時は黙ってろ」
一方通行が天使の輪を掴み、その動きを押さえつけた。
あくまで『科学』によって作られたそのシステムは、一方通行の『ベクトル操作』の前に屈服する。
風斬の目に光が戻る。光の翼が宙に融けて消えていく。
風斬「私を……許してくれるんですか……?」
一方通行「ハァ? 許すも許さねェも何も」
一方通行「オマエは、ただの一度でもあのガキ共を裏切ったンかよ?」
風斬「……私は、この世界に存在していてもいいんですか?」
一方通行はガシガシと頭を掻いた。
正直言って、辟易だ。一方通行の周りには、こんな単純なこともわかっていない奴が多すぎる。
一方通行「生きるも死ぬもテメエの勝手だろォが。そンなモンに一体誰の許可がいるンだよ」
風斬の目からぽろぽろと涙が零れ落ちる。
風斬「私は……あの子達の友達でいてもいいんですか?」
一方通行「オマエがあのガキ共の相手してくれりゃァ、その間に俺も落ち着いて飯食えたりするンだがなァ……ンン? オイオイ、こりゃ思った以上に魅力的なプランじゃねェか?」
風斬「………ありがとう……ありがとう、ございます………!」
一方通行「礼を言われる筋合いは欠片もねェよ。ンでよォ」
一方通行は「悪い」と手で謝るようなポーズをとった。
一方通行「折角出向いてもらったトコ悪ィンだが、出直してくれや。ちょっと今、ガキが遊べるよォなコンディションじゃねェンだよ」
本当に申し訳ないと思っているようには微塵も見えやしない。
投げやりな、実に彼らしいと思えるその態度に、風斬は微笑みを浮かべて頷いた。
そして―――風斬の姿が煙のように消えていく。
最後の瞬間、「また遊びに来てもいいですか?」と風斬は言った。
それに返す彼の言葉は決まっている。
――――好きにしろ。
一方通行はガシガシと頭を掻いた。
正直言って、辟易だ。一方通行の周りには、こんな単純なこともわかっていない奴が多すぎる。
一方通行「生きるも死ぬもテメエの勝手だろォが。そンなモンに一体誰の許可がいるンだよ」
風斬の目からぽろぽろと涙が零れ落ちる。
風斬「私は……あの子達の友達でいてもいいんですか?」
一方通行「オマエがあのガキ共の相手してくれりゃァ、その間に俺も落ち着いて飯食えたりするンだがなァ……ンン? オイオイ、こりゃ思った以上に魅力的なプランじゃねェか?」
風斬「………ありがとう……ありがとう、ございます………!」
一方通行「礼を言われる筋合いは欠片もねェよ。ンでよォ」
一方通行は「悪い」と手で謝るようなポーズをとった。
一方通行「折角出向いてもらったトコ悪ィンだが、出直してくれや。ちょっと今、ガキが遊べるよォなコンディションじゃねェンだよ」
本当に申し訳ないと思っているようには微塵も見えやしない。
投げやりな、実に彼らしいと思えるその態度に、風斬は微笑みを浮かべて頷いた。
そして―――風斬の姿が煙のように消えていく。
最後の瞬間、「また遊びに来てもいいですか?」と風斬は言った。
それに返す彼の言葉は決まっている。
――――好きにしろ。
警備員A「消えた…? 何だ…? 一体何だったんだ…?」
一方通行「コラ、何呆けてンだ。そこらにどれだけの数の人間が埋まってると思ってやがる。人命救助こそテメエ等の本懐だろォが」
警備員A「はっ……よ、四班も直ちに救助活動に入れ! それと、応援を要請しろ!!」
一方通行の言葉を契機として、『警備員(アンチスキル)』達はすぐに瓦礫の除去作業に取り掛かった。
次に一方通行は風斬の消えた辺りをぼうっと眺めていた上条の尻を蹴り上げる。
上条「うぁいて!」
一方通行「なにボサッとしてやがる。『警備員』に捕まると面倒だ。今の内にサッサと場所移すぞ」
上条「なぁ……アイツは、一体どこに行っちまったんだろうな」
一方通行「知らねェよ。家に帰ったンだろ」
気心の知れた友人相手に余計な気遣いをしないのと同じように、一方通行はあっさりとそう言い捨てた。
一方通行の視線の先では意識を取り戻した打ち止め達がこちらに駆けて来ている。
長い夜が終わろうとしていた。
一方通行「コラ、何呆けてンだ。そこらにどれだけの数の人間が埋まってると思ってやがる。人命救助こそテメエ等の本懐だろォが」
警備員A「はっ……よ、四班も直ちに救助活動に入れ! それと、応援を要請しろ!!」
一方通行の言葉を契機として、『警備員(アンチスキル)』達はすぐに瓦礫の除去作業に取り掛かった。
次に一方通行は風斬の消えた辺りをぼうっと眺めていた上条の尻を蹴り上げる。
上条「うぁいて!」
一方通行「なにボサッとしてやがる。『警備員』に捕まると面倒だ。今の内にサッサと場所移すぞ」
上条「なぁ……アイツは、一体どこに行っちまったんだろうな」
一方通行「知らねェよ。家に帰ったンだろ」
気心の知れた友人相手に余計な気遣いをしないのと同じように、一方通行はあっさりとそう言い捨てた。
一方通行の視線の先では意識を取り戻した打ち止め達がこちらに駆けて来ている。
長い夜が終わろうとしていた。
流石一方さんやで……
女の子ビビらせたかと思えばすぐデレるんだもんな
むぎのんだって、もう少し堪えられればデレられたかもしれないのに
あの時は惜しかったにゃん☆
女の子ビビらせたかと思えばすぐデレるんだもんな
むぎのんだって、もう少し堪えられればデレられたかもしれないのに
あの時は惜しかったにゃん☆
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