男「最近、街の方にシガーバーが出来たらしいわ」

幼「なにそれ？」

男「お酒と一緒に、葉巻も出してくれるバー」

幼「いきたい」

男「大人になったらな」

幼「えー」

男「ごねても駄目。大人になるまでは我慢しろ」

幼「……じゃあ」

男「ん？」

幼「やくそくね。おとなになったら」

男「え、俺も行くの確定？」

幼「やくそく」

男「――それまで店が残ってたらな」

幼「ぜったいね」

男「はいはい」

　　　

紫煙

男「ピース」

幼「ヴァージニアブレンド。名前の由来は戦争終焉記念じゃ。当然、戦後直後販売したのじゃ」

男「爺さんがよく吸ってる印象だぜ。両切りだしな」

幼「"ふぃるたー"がなかったからのう。T/N値も当時最高。値段も当時は他の銘柄の11倍したもんじゃ」

男「当時を生きているような口調だな」

幼「今はヴァージニアブレンドが少ないからの。香料をあまり使わず、煙草本来の甘さを引き出しておる」

男「と言うか、他のヴァージニアブレンドってなにさ？」

幼「JT販売は、イギリスから委託されたソブラニーのみじゃのう」

男「ああ、あの無駄に高い奴。ピースはJT最高傑作ときいたけど？」

幼「ヴァージニアブレンドは値が張るが、煙草としての旨さは格が違うのでな。当然じゃろう」

男「まあ、香りはいいな。なんでヴァージニアは旨いって分かってるのに作らないのさ？」

幼「時代の流れじゃよ。ヴァージニアは高級葉で、T/N値が高く。あまり重たさを感じないのじゃ」

男「味香りはよくても、T/N値が高さの割りに吸い応えが少ないと」

幼「じゃから、見た目の数値が跳ね上がって、健康風潮の中で作っても売れぬ。仮に売れても赤字じゃ」

男「お前らしい煙草だ。時代に取り残されてるあたり」

幼「時代じゃのうて、時間じゃろう？」

男「よくいうぜ」

　　

男「セブンスター。通称セッタ」

幼「日本の在来種を中心とした葉組みじゃ。ブランド力が高い銘柄じゃのう」

男「まあな。秀作だ」

幼「当時は最も軽い煙草じゃった。人工的で大味な甘さを特徴としておる」

男「万人受けする、吸いやすい煙草だよな」

幼「あまり知られておらぬが、ココアフレーバーじゃ。大雑把な甘さの根源じゃな」

男「甘いっちゃ甘いが、ちょっと辛めじゃないか？」

幼「金属的な香りと辛さは在来種の特徴じゃのう」

男「さっきから出てくるけど、在来種ってなんなのさ？」

幼「江戸時代から品種改良された品種じゃ。煙管用銘柄の小粋は在来種のみの葉組みじゃの」

男「というか、ブレンドを吸っただけで分かるのか？」

幼「細かい分量までは分からぬ。じゃが、大よそ検討をつけるくらいは出来ようぞ」

男「どういう舌してるんだよ。お前」

幼「クククッ長く生きれば酸いも甘いも味わうものじゃ」

男「お子様な見た目で何を言うかねえ？」

　　　

男「キャスター。キャスターマイルドが一番人気で、通称キャスマイ」

幼「在来種を多く使ったアメリカンブレンドじゃのう。かなり強めの"ばにらふれーばー"じゃ」

男「アメリカンブレンドってなにさ？」

幼「バーレー種を中心とし香料を多く使った煙草じゃな。今の主流じゃよ」

男「と、言われてもバーレーの味が分からないな」

幼「T/N値が低く、味は特徴がなく独特の刺激、吸い応えがあるのじゃ。そして、香料を吸収しやすい」

男「なるほど、今の流行にぴったりなわけか」

幼「それにバーレーは安価であるしのう。葉組みはバーレーと在来種が同じ程度とみたわい」

男「キャスターは吸ってる奴がいると、すぐ分かるほどバニラ臭がするな」

幼「香りは"ばにら"が強いが、そこまで甘いわけではないのう」

男「いや、気分が甘ったるい」

幼「まあの。お菓子のように気軽に楽しめる煙草じゃ」

男「お子様なお前に似合ってるじゃないか」

幼「精神面では、お主の方が似合うと思うがのう」

品のない蘊蓄自慢スレだなあ

厨ってのはそれをかっこいいことだと思ってるんだよ
わかってやれ

男「ホントにここ人が来ないよな」

幼「ん」

男「来たら来たで、この状況どう説明すればいいか困るけどな」

幼「おや子のふりすればいい」

男「俺そこまで歳行ってねぇよ」

幼「……？」

男「素で「そうなの？」って顔すんのやめてくんね？　普通に傷付いた」

幼「じゃあ、かのじょ」

男「ベタすぎるボケをありがとう。
　　まぁ、甥と姪……頑張っても兄妹だな」

幼「れんしゅうしてみる？」

男「何を」

幼「よびかた」

男「あぁ、じゃ、お兄ちゃんって呼んでみ」

幼「――おにいちゃん」

男「うわーキモい、なんかぞわってきた――いってぇ、痛い！　連続脛キックはなし！」

幼「ばか」

男「ていうか、俺がしたいのはそういう話じゃなくて」

幼「？」

男「あの、お忘れかも知れませんが、
　　どんな関係でも、お前に煙草吸わせてたらアウトなんですけど」

男「最近寒いな。もう冬か」

幼「ん」

男「いつっ！」

幼「？」

男「唇われた……」

幼「リップつかう？」

男「血止まったら借りるわ」

幼「ん」

男「……お、このフィルター、口紅ついたみたくね」

幼「ほんとだ」

男「これなんか色っぽくね？　セクシーじゃね？」

幼「でも、ちじゃん」

男「うへぇ」

幼「ていうかきもい」

男「うへへぇ」

幼「タバコのかくしげいってしってる？」

男「いや、知らねぇ」

幼「つまんない」

男「すいませんね」

幼「しらべてきて」

男「なんでまた……」

幼「こんど、クリスマスかいがあるから、それまでに」

男「ぜってー教えねー」

男「あけましておめでとう」

幼「ん。おめでと」

男「本年もよろしくお願いします」

幼「おねがいします」

男「いや、今日は寒いな――」

幼「おとしだまは？」

男「来ると思ったわ絶対」

幼「…………」

男「……はいはい、分かってるよ。用意してあるよ。
　　親にはバレないようにしろよ？」

幼「ん。ありがと」

男「なんか買いたいモンとかあんのか？
　　つか、お前が煙草以外の物買うとこほとんど見たことねぇんだけど」

幼「あるよ」

男「何よ？」

幼「たばこ」

男「やっぱりたばこかよ」

幼「ちがう。たばこのカートン」

男「あぁ、いつもの小遣いじゃバラ売りしか買えないわな」

幼「おとながい」

男「いや、バラでも大人の買う物だから、煙草は」

幼「カートンでかった」

男「夢が叶ったな」

幼「べつにそこまでじゃない」

男「また可愛げのねぇ……」

幼「でも……」

男「どうした？」

幼「おおくてかくせない」

男「後先考えようぜぇ……。
　　俺が預かってやろうか？」

幼「ん」

男「はい、確かに預かりましたよ」

幼「かってにすったらおこる」

男「手数料に１本――」

幼「だめ」

男「なんかお前の煙草、フィルターんとこ色変じゃね」

幼「ん」

男「あぁ、口紅つけてんのか」

幼「ちがう。いろつきのリップ。
　　ていうかきづくのおそい。もてないよ」

男「お子様にモテてもなぁ――いってぇ！　今のはまた一段と痛い蹴りだったぞ」

幼「ふん」

男「ところで、こういう色つきのリップって、口紅の代わりみたいな感じなのか？」

幼「それもあるとおもう」

男「へぇ」

幼「……すいがら、いろっぽい？」

男「うーん、吸ってる奴がガキじゃなぁ――ほっ！　避けっ！」

幼「…………」

男「あ、すいません！　いてぇ！　痛い！　許して！」

幼「でんしタバコってどうなの？」

男「あー、あれそこそこ流行ってるっぽいのかな。でもなんか良くないらしいぞ」

幼「そうなんだ」

男「安全性が確認できないとか、毒性があるとかなんとか。詳しくは知らないけど」

幼「ふーん」

男「まぁ、わざわざ身体に悪い物吸うことないし、普通に煙草吸っとけ」

幼「ん」

男「…………」

幼「…………」

男「なんか俺、微妙におかしなこと言った気がする」

幼「わたしもそうおもう」

幼「このまえ、クラスの男子が、たばこすったってじまんしてた」

男「うーわー、その薄ーい笑い方。悪い顔だなー。めちゃめちゃ鼻で笑ってるなー。
　　まぁ、お前にしてみりゃ、今さらな話だな」

幼「ん」

男「でもさ、煙草吸う奴なら話し合うんじゃね？
　　つうかお前、好きな男子とかいねぇの？」

幼「……いる、かも」

男「えええええ、マジで!?
　　お前にもそういう感情あったんだ!?」

幼「うるさい。しね」

男「で、どんな奴なんだ？　お兄さんに教えてご覧なさい」

幼「……きになる？」

男「めっちゃ気になる」

幼「ばかで、けっこうこどもっぽいかも」

男「そりゃ難儀だな。絶対尻に敷かれるぞそいつ」

幼「……ふ」

男「え、何その笑い方」

幼「ねえ」

男「ん？」

幼「エッチなことしたあと、たばこおいしくなるのってほんとう？」

男「よしまずどこのどいつからの情報なのか教えてもらおうか」

幼「クラスで男子がはなしてた」

男「こえー、そいつらこえー。
　　最近のガキって、そこまでしてんの？」

幼「みえはってしったかぶってるだけ。
　　どうせほんとうはしたことない」

男「そういう言葉がさらっと出てくるお前もこえー」

幼「それで、おいしくなるの？」

男「黙秘権を行使させて頂きます」

幼「……したことないの？」

男「黙秘権を行使させて頂きます」

幼「……ためし――」

男「試さないぞ」

幼「はぁっ、はっ、はぁっ」

男「ほらほら、どうした」

幼「はっ、はぁっ、んっ、っはぁ……！」

男「もっと頑張らないと先にいっちまうぞ？」

幼「ん、やだ、はぁっ、はやぃ……もう、だめ……」

男「――はい、ゴールー。お前の負けな」

幼「はぁっ、はぁ……おとなげ、ない」

男「可愛げない子どもに言われたくないわー。
　　つうか、お前が言い出したんだろ、いつものとこまで競走って。
　　しかもフライングまでしやがって」

幼「うるさい。……はぁ、てかげん、しろ」

男「俺の辞書にそんな言葉はないね。
　　……あー、運動の後の一服はまたうまいわ」

幼「……わたしも」

男「あ、煙草吸うと運動力落ちるらしいぞ、心肺機能がどうとかで」

幼「うるさい。しらない。１本よこせ」

男「はいはい」

男「時々、「たばこは1000円くらいに値上げすればいい」って話聞くよな」

幼「ん」

男「お前、１箱1000円になったらどうするよ？」

幼「かえない。おこづかいたりない」

男「そりゃそうか。
　　まぁ、さすがに1000円になったら俺も禁煙するなー」

幼「しないでよ」

男「なんでよ」

幼「それでわたしにわけて」

男「いやです」

電子たばこ！
そういうものもあるのか

>>124
俺は前にドンキホーテで見た
本体が１万円近くするという……ｗ

しかしまぁ、なかなかに曰く付きの物品でもあるようですよ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E5%AD%90%E3%82%BF%E3%83%90%E3%82%B3

男「先週、合コンあったのよ」

幼「……へぇ」

男「すげー可愛い子がいたんだけど、その子、煙草嫌いなんだって」

幼「…………」

男「あー、禁煙すっかなぁ」

幼「……ん、これあげる」

男「なに、煙草くれんの？　珍しい」

幼「だからもっとすえ」

男「嫌がらせか」

幼「……ねえ、きんえんしたら……もうここ、こない？」

男「え、なんでよ」

幼「だって……くるいみない」

男「いやそれ、お前の話だろ。
　　俺は別に煙草吸うだけに来てるわけじゃねぇし」

幼「ほんと？」

男「眺め良いし、人少なくて静かだし。
　　俺しか知らない秘密の場所って感じで好きなんだよここ」

幼「わたしがしってる」

男「じゃ、ふたりしか知らない秘密の場所だ」

幼「ん」

男「――それに、危なっかしくて目が離せない、ちっちゃい友達もいるから、な」

幼「……なんかきもい」

男「えええ、今俺すげぇいいこと言ってなかった？」

幼「きもい」

男「ショックだわ。
　　つうか、そういうお前はどうなんだよ。禁煙したらもう来ないのか？」

幼「くる」

男「だろ？」

幼「ばかでうるさい――へんたいが、気になるから」

男「言うねぇ」

幼「あ」

男「お」

幼「ねこだ」

男「猫だな」

幼「タバコのにおい、へいきなのかな」

男「知り合いが飼ってたのには、好きな猫と嫌いな猫がいたなぁ。
　　猫によるんじゃね」

幼「ふーん。おいで」

男「あ、逃げた」

幼「…………」

男「……苦手な方だったみたいだったな。なんか嫌そうな顔してたし」

幼「…………」

男「なんで俺を睨むんだよ」

好きなのもいるのか
猫って全部煙草嫌うものだと思ってた

男「…………」

幼「…………」

男「……あー、やっぱ一服すると落ち着くわー」

幼「ん」

男「……なぁ」

幼「？」

男「お前がテンションいつも低いのって、やっぱ煙草のせい――」

幼「それはない」

男「ですよねー」

幼「…………」

男「今日はまた、一段とテンション低いな」

幼「……ごめん」

男「え、なにが」

幼「ライター……とられた」

男「マジでか。誰に」

幼「……なんとかしどうっておばさん。さっきまちにいた」

男「あー、なるほど……。
　　だから人のいるとこで煙草出すなっつったろー。
　　つうか、適当に誤魔化しても駄目だったん？　親のだとかさ」

幼「だって、嘘つきたくなかった」

男「お前変なとこ律儀なのね」

幼「……せっかくくれたんだもん。わたしのだもん」

男「な、泣くなよぉ」

幼「ほんとにごめんね」

男「気にすんな」

男「――あー、そういやー」

幼「？」

男「俺、ライター新しいの欲しかったんだよな」

幼「…………」

男「今度買いに行こうと思うんだけど、お前も来るか？　ついでに買ってやるぞ」

幼「…………」

男「……なんか言って下さい」

幼「いく」

男「よし、決まりだ」

幼「……き、つかってる？」

男「子どもはそういうこと言わなくていいの。ていうか察するんじゃない」

幼「だって、へたなんだもん、えんぎ」

男「はいはいすいませんね」

幼「でも、ありがと」

男「ん」

幼「……いつも、やさしいね」

男「惚れたか？」

幼「へんた……。
　　――ん、かもよ」

男「ぜってーありえねー。何その間。つうか変態言いかけたろ今」

幼「ふん。ばか」

　　　　　◇

男「――で、結局また俺とかぶってんじゃん。ライターの形さぁ」

幼「これがきにいったの」

男「そうですか」

幼「ん」

幼「ねぇ」

男「うん」

幼「なんで、ジッポーにしなかったの？」

男「え？　だってお前ジッポーので点けた煙草の味、好きじゃないつってたじゃん」

幼「そうだけど、なんでわたし？」

男「いや、お前いっつもガス切らしたりして、火ぃもらおうとするだろ」

幼「あわせてくれてるんだ」

男「こう見えてレディには気を配るのよ、俺は」

幼「……きもい」

男「うっせ、うっせ。何その笑顔」

幼「ライター、ガスない」

男「ほいこれ。たまには自分で補充してみ」

幼「ん」

男「…………」

幼「……はいんない」

男「もっと力入れて」

幼「ん……っ。
　　っ！　はにゃぁ！」

男「ありゃあ、ガス吹き出しちまったなー。ノズル真っ直ぐ差してなかったろ。
　　つうか、変な声出たなー」

幼「でてない」

男「「はにゃぁ」って言ったよな。「はにゃぁ」って」

幼「いってない」

男「そういう割りには顔赤いぞー。はにゃぁ！」

幼「……！」

男「うわぉあ！　つめっ、冷てっ！　馬鹿、こっち向けて吹くな！」

なんぞによによする展開だらけじゃー

幼「…………」

男「…………」

幼「…………」

男「……あの」

幼「ん」

男「なにしようとしてんすか、さっきから」

幼「……はさめない」

男「何を。ライターを？」

幼「きのうテレビでみた、おっぱいのたにまにライターをはさむの」

男「はい無理ー。ぜってぇ無理ー。痛ったい！　お前今グーだったろ！」

幼「うるさい。みるなへんたい」

男「じゃ、なんでここでやんのよ」

幼「ほかにライターだせるばしょない」

男「あー」

幼「じきにはさめるようになる」

男「はいはい、期待してるわ」

男「……なんだよ、人のことをじろじろと」

幼「なやみとかって、ないの？」

男「いきなりひでぇこと言うなおい」

幼「ちがう。なんか、きげんわるいところとか、みたことないから」

男「いやそりゃ凹む時やムカつく時だってあるぜ？
　　でも、そういう時こそ一服だろ」

幼「ん……」

男「それに、この場所と、お前もいるしな。
　　子どもの前でイライラしたくねぇしさ。お陰様で、助かってるよ」

幼「……なんか、むかつく」

男「えぇ、なんでよ」

幼「かってにいやされてるだけじゃん。そうだんとかもないし」

男「怒るなよ。助かってるのは本当だぞ。まぁ、１本どうだ」

幼「ん」

男「ほれ、火」

幼「ん」

男「…………」

幼「……こんどはさ」

男「ん？」

幼「そうだん、してもいいよ」

男「ん。りょーかい」

男「20歳から80歳まで毎日１箱煙草吸い続けると、合計で650万円もかかるんだってよ」

幼「ふーん」

男「いつものことだけど反応薄いなおい」

幼「わたし、１しゅうかんで１はこだもん」

男「ただし20歳前から、かなりフライングしてるけどな。
　　まぁ、お前の小遣いじゃそのペースが限界だよな」

幼「ん。だから１本ちょうだい」

男「はいはい」

幼「……おかねのかかる女だとおもってる？」

男「それはないわー。子どもの金銭感覚じゃ、そう思っても無理ないけどな。
　　大人の女と遊ぶと、もっと金かかるぞー」

幼「ホテルだい？」

男「ホントにもうお前は……」

幼「レストランのディナーとか、たかいんでしょ？」

男「すんません、汚れてるのは俺の方でした」

幼「？」

男「…………」

幼「…………」

男「なぁ」

幼「…………」

男「……寝てんのか」

幼「…………」

男「寄っかかられると、煙草吸いづらいんですけど」

幼「…………」

男「……お前、ヤニくせぇなぁ」

幼「おたがいさま」

男「起きてんじゃん」

幼「うるさい。ばか。しね」

男「…………」

幼「…………」

男「…………」

幼「……タバコのにおい、ついてるね」

男「さっきそれ俺言ったじゃん」

幼「ん」

男「おい。近い。くすぐったい」

幼「でもわたしと、においちがう」

男「銘柄違うからな、そりゃ違うわ」

幼「……同じの、すおうかな」

男「なんでよ」

幼「なんとなく」

男「んんー？　あれか、ここで誰かが来た時に、誤魔化すためとかか。
　　大して効果ないと思うぞ」

幼「……ぜんぜんちがう。ばか」

幼「…………」

男「よう。
　　――ってホントに俺と同じのに変えたのか」

幼「こっちのほうがいいかも」

男「そうやってると段々重くなってくぞ、煙草は」

幼「だいじょうぶ」

男「？」

幼「このにおいがすきだから」

男「まぁ、そんならいいか」

幼「おちつく」

男「ふーん」

男「煙草の匂いが染みついてるということで」

幼「ん？」

男「ファブリーズ買ってきた」

幼「しね」

男「え、なんで……」

によによ

現実にゃこんなかわいい未成年喫煙者いねー！
どいつもこいつも糞生意気なガキんちょばかりだー！
でもここ読んでるとそんな現実も忘れて癒されたー！

男「…………」

幼「…………」

男「はー」

幼「はー」

男「こう寒いと、白いの、煙なんだか息なんだかわかんねぇな」

幼「ん」

男「…………」

幼「…………」

男「はー」

幼「はー」

幼「て、さむい」

男「煙草吸ってると、手袋できねぇしな。
　　特にお前の指分かれてねーし、分厚いし、その上毛糸だし」

幼「はー、はー」

男「それ吸い終わったら、自販機行くか。
　　なんか暖かい飲み物おごるわ」

幼「ん」

男「……うし、行くか。紅茶でいいか？」

幼「おしるこがいい」

男「可愛いんだか、渋いんだかわかんねぇなぁそれ」

幼「ん」

男「なんだ、手繋ぐのか？」

幼「……ん、つめたい」

男「お前もな」

男「あ、やべ。ライターのガス切れた。火貸してくんね？」

幼「……ん」

男「その煙草は……もらい火しろってこと？　まぁいいけど」

幼「ん」

　　　　　◇

男「あ、わり、また火……」

幼「ん」

男「またもらい火っすか」

幼「ん」

　　　　　◇

男「えっと、火……」

幼「ん」

男「……あの、今日はずっとこれで行くんですか？
　　ちょっと面倒臭いんですけど……」

幼「ん」

男「これは何かの罰ゲームか？
　　ガス切らすんじゃねえよコノヤロウ的な……」

幼「うるさい。ありがたくもらえ」

男「……はい。ありがたくもらいます」

幼「ん」

はふはふ

幼「マルボロ」

男「わかんね」

幼「マイルドセブン」

男「……まろやかナナ？」

幼「……キャスター」

男「……あれだ、机の下の車輪？」

幼「んー、ホープ」

男「それは分かる。希望」

幼「…………」

男「…………」

幼「いみわかんない、たばこのなまえ」

男「全然だな」

男「最近気付いた。カラオケ行くと、煙草マジ本数増えるわ」

幼「なんで？」

男「歌い終わると、一段落して、ちょうど良い時間が空いちまうからかな。
　　なんか、その度に火点けちまう」

幼「ていうか、カラオケいくんだ」

男「行きますよ」

幼「へたそう」

男「なんだと。俺のマジ素晴らしい美声を聞かせてやろうか」

幼「きもい」

男「言われると思ったよ。じゃあ、お前は何か歌えんのか？」

幼「ん」

男「たとえば誰よ」

幼「こうだくみ」

男「うーわー、セ～クシー、にーあわーねゲフッ！
　　……脇腹、パンチは、反則だと、思います」

幼「そういうじぶんは？」

男「Gackt」

幼「…………」

男「無言で同情的な笑みは止めてー。いいじゃん格好良くなくてもさー、歌ったってさー」