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    元スレ勇者「ニートになりたい」

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    501 = 15 :

    【宿屋 部屋】

    衛兵「ば、ばばばっ、バカなぁっ⁉︎ なんだあの強さは! 人間じゃねぇっ!」ガクガク

    マク「お疲れちゃん」スポッ

    衛兵「ひ、ひぃっ」ズザザッ

    勇者「あー、壊れた窓から見てたのか。そんな距離とらんでも。俺を化け物だと思ってるんだろ」

    衛兵「す、すいませんっ! もうご無礼はいいません! どうか、これまでのことはお許しをっ!」ドゲザ

    勇者「……強すぎるってのはさ、なにも良いことばっかりじゃない。女にモテる。チヤホヤされる。それは、あくまで人間の枠の中での強さの話」テクテク

    衛兵「……ひっ」

    勇者「最初だけなんだ。みんな。次第に尊敬が畏怖にかわり、そして、怯えていく。魔族がいるから緩和されてるけどね」

    衛兵「……」ガタガタ

    勇者「ちょっとでも鍛錬したことあるやつなら余計に俺がこわいだろ。忌々しいったらない」ヌギヌギ

    衛兵「ひゃ、ひゃい」

    勇者「衛兵はアジトに戻ってお頭に報告しろ。俺は後から行く」

    衛兵「ガンダタは、まだ息があるようですが」

    勇者「きっちり殺っとくよ。信じねえの?」

    衛兵「信じます! ジャン殿ならいつでも殺せますよね!」

    勇者「これ。ガンダタの血をたっぷり染み込んだ布持ってきたから。渡しとくように」

    502 = 15 :

    【アデル城 玉座】

    大臣「また夜分遅くにこんなところで。歳も歳なんですからご自愛くださいといつも申しておりますにた

    王様「ふぉっふぉっ。また、あの時の夢を見てしもうての。ワインを飲み気を紛らわせておったところじゃ」

    大臣「もうお忘れなさい。あれは、あの“事件”は仕方ないことだったのです」

    王様「悔やんでも悔やみきれなんだ。あれから……勇者は、両親に、ワシに……いや、人間に対する目つきが変わってしまった」

    大臣「普段おちゃらけてますのは、その反動でしょうな」

    王様「理解者は少ないがおる。アイーダの酒場の店主、城内の兵士達の一部。だが、ワシも含めて、目の奥に宿った恐怖は、ぬぐいされるものではない」

    大臣「……」

    王様「恥ずべきことよ。王が、たった一人の民に恐怖し持て余すとは。勇者とはなにか? そう聞かれた時になんと答える?」

    大臣「人類の代表であり、女神の代弁者です」

    王様「違う、違うのだ。勇者とは“孤高”であり“孤独”である。てっぺんのいただきに立つ瀬に見る景色は、そこに立たなければわからぬ」

    大臣「陛下のような……?」

    王様「王とはいうなれば、民達の親である。ワシもワシで孤独を感じることに否定はしない。勇者の抱えるものは、それよりもっと、異質なのだ」

    大臣「人は、誰しもが心に孤独を感じて生きております。繊細であればあるほど過敏になりましょうが」

    王様「だからじゃよ。あの子に対して普通の子と同じように接するべきじゃった。勇者として利用するのではなく」

    大臣「……」

    王様「(ワシは信じる。おぬしの帰るべき場所を用意して待っておるぞ。勇者よ)」

    503 = 15 :

    【宿屋 表通り】

    勇者「ぬぁぁっ、い、いてぇ」ノロノロ

    魔法使い「チッ、使えない勇者が今頃ノコノコと」

    勇者「あれ? 終わってたの?」

    戦士「マクさんがやってくれた。感謝しなければな」

    魔法使い「こっち見ないでよ! ぱふぱふなんかしてくるよーな男!」

    勇者「生理現象だろーが! ずっと欲情すんなってのか⁉︎ 自慰マスターに俺はなる!」

    魔法使い「……部屋の中でやったら、殺すわよ……」

    僧侶「勇者さまぁ、この子はどうされますぅ?」

    少年「……あ、う、お、おうち、帰りたいです」

    勇者「その子は……戻すは戻すけど、なぁ、弟くん。そこのおっちゃんどう思う?」

    少年「こわい……」

    勇者「そうだろうな。こわいだけかい?」

    少年「……こわいよ……うっ、ぐすっ」ギュゥ

    勇者「……そっか。なら、お前らの中の誰でもいい。城に連れていってメイドを訪ねてやれ」

    武闘家「メイド……? さっき訪ねてきて勇者を探してたさ」

    勇者「な、なにぃ……?」ヒクヒク

    僧侶「お知りあいさんですかぁ?」

    勇者「(メイドにもバレてると考えるのが妥当か)……小さい時に少しね。それと、見取り図は俺が預かってると伝えといてくれ」

    僧侶「かしこまりましたぁ」

    勇者「明日の朝一番で頼む」

    僧侶「今夜はぁ、お姉ちゃん達と一緒に寝ましょうねぇ~」

    少年「ほんと? 明日になれば、帰れる?」

    僧侶「帰れますよぉ~」ニコ

    504 = 15 :

    勇者「俺はしばらく別行動する。戦士」

    戦士「なんだ?」

    勇者「お前は弱くねぇ」

    戦士「……っ、な、なんだ、突然」

    勇者「要領が悪いんだ。頭がバカなのは仕方ないから、長所をもっと伸ばせ」

    戦士「あんたに言われずとも!」

    武闘家「戦士、黙って聞いておいたほうがいい」

    戦士「武闘家……なぜ……?」

    勇者「お前は防御が下手くそだ。自覚あんのか?」

    戦士「うっ、それは武闘家にも言われた」

    武闘家「アタイは防御もできるようになれと言ったさ」

    勇者「不得意の分野を伸ばしても人並みにしかなりゃしねぇよ。お前にはタフさがあんだろ? だったらもっと鍛えて、鍛えまくって“仁王立ち”できるまで極めてみろ」

    戦士「……」

    勇者「武闘家、お前もだ」

    武闘家「……」スッ

    勇者「お前自身にゃ力はない。踏み込みの鋭さとしなやかさで慣性の法則を生み出してる。その点についちゃ俺もいい線いってると思う」

    武闘家「だけど……それも、最近壁が」

    勇者「はやければいいってもんじゃない。壁が見えだしてんなら、考え方を変えろ。お前の脚力はほかに使いようないのか?」

    武闘家「脚力……足……」

    勇者「あと、魔法使い」

    魔法使い「んー? なに?」

    勇者「もっと頑張りましょう」ポン

    魔法使い「なにっ⁉︎ なんか私だけものすごい適当じゃないっ⁉︎」

    勇者「僧侶は――」

    僧侶「……はい~?」

    勇者「真面目にやれよ。俺が言うのもなんだけどさ」ポリポリ

    僧侶「やるときはちゃんとやりますよぉ~。私の第一は勇者さまなのでぇ~」

    勇者「さいですか。……よいせっと」ヒョイ

    ガンダタ「」ドサッ

    武闘家「そいつ、どうするのさ?」

    勇者「俺が蒔いた種だ。後始末は俺がつけるよ」

    魔法使い「ケッ。なぁ~にかっこつけてんだか」

    戦士「……う、む。だが、気をつけろよ」

    505 = 15 :

    【クィーンズベル 郊外】

    ガンダタ「むう……」ムクッ

    勇者「おはよう」

    ガンダタ「んだぁ、おりゃあ、寝てたのか」

    勇者「ヘンテコな覆面野郎に負けたっしょ。あれ、俺なんだけどね」

    ガンダタ「……」

    勇者「驚かないの?」

    ガンダタ「どーでもいいんだよ。んなこた」

    勇者「これから、どうする?」

    ガンダタ「おめぇを殺りそこなったのはたしかだ。また殺りあうか」

    勇者「それしかできないのならいいよ。けど……さぁ。強さってそこまで重要かなぁ?」

    ガンダタ「あぁ?」

    勇者「人生の先輩として教えてくれよ。わからねーんだよ、俺。魔物がいる世界で、人間が強さを追い求める理由があるのはわかる。強ければえらい、かっこいい、だからって、そうならなくても」

    ガンダタ「……ふん」

    勇者「強さなんてそいつの人間性になんの関係があるんだよ?」

    ガンダタ「力だからだろ」

    勇者「……」

    ガンダタ「金、腕力、権力、地位、名誉。どれかひとつが突出してりゃ、それはチカラだ。いつの世も、チカラあるものが正義なんだよ」

    勇者「善じゃなくてもか? チカラさえあれば――」

    ガンダタ「力なき善に正義はない。良い志を抱えたとしても、実現できなけりゃ、無力だ。……わかるか? 無力って言葉の意味が」

    勇者「……」

    ガンダタ「無知、無力、能無し。“無”に共通することといやぁ、ただのゼロよ」

    勇者「そうか、そうだな」

    ガンダタ「おめぇはおめぇでこじらせてるみてぇだな、くっくっ」

    勇者「……認めたく、ないんだ」

    ガンダタ「なにをだ」

    勇者「みんながっ、俺を勇者として、見る視線にっ! 化け物として扱う視線……擦り寄ろうとする視線……誰も、俺を見ちゃいない」

    ガンダタ「だったらなんだってんだ? あァ?」

    勇者「……」

    ガンダタ「そんな雑魚どもはどうやったって寄ってくる。無視しときゃいいだけの話だろ」

    勇者「……そうだな」

    ガンダタ「ふん、知ったことか」

    勇者「よかったら、俺と一緒に旅しないか? 中途半端にした責任もあるし」

    ガンダタ「アホぬかせ。俺はおめぇを殺す。それを目的としてしばらくは生きていく」

    勇者「……そ、そうか」シュン

    ガンダタ「さては心許せる相手がいなくてさみしいんだなぁ?」

    勇者「へ、へへっ、そんなんじゃあーりません!」

    ガンダタ「ひとつ、忠告しておいてやる」

    506 = 15 :

    勇者「なんだね?」

    ガンダタ「おめぇの強さは常軌を逸してる。どこまでいっても孤独だぜ。勇者さんよ」

    勇者「途中から意識があったな……狸寝入りしてやがったのか」

    ガンダタ「メスどもがあんまりにもうるせぇからな。なぁ? わかってるか? 孤独を」

    勇者「……」ギュゥッ

    ガンダタ「ぎゃはっはっはっ! 芋虫を噛みしめたような顔しやがって! 充分理解して生きてきたかぁ? あ゛ぁ?」

    勇者「黙れ……もう、行け」

    ガンダタ「魔族でもねぇ! 人間でもねぇっ!! 勇者なんだぁ!! だぁっはっはっはっ! 笑えるぜぇっ! 知ったようなツラしてる若造が、誰より孤独な存在だとよぉっ!!」

    勇者「やめろ、殺すぞ……!」ギロッ

    ガンダタ「やってみろぉ? できんのかぁ? 勇者さまよぉ? ……偽善者なのもじゅ~~ぶんに理解ができた。おめぇはどっちつかずの、コウモリ野郎だ」ニタァ

    勇者「……」バチィ バチバチィ

    ガンダタ「殺れよっ!! やってみろ!! お前の本性を見せてみろやっ!!」

    勇者「……行け」フッ

    ガンダタ「ほぉら、コウモリ野郎だ! 口先ばっかりでなにもできやしねぇ! おめぇは自分の為に、勇者をやってるって気づいちゃいねぇ大馬鹿野郎よ!」

    勇者「……」ギリッ

    ガンダタ「せいぜい孤独と隣あわせで生きろや。いつか俺様が引導を与えてやるからよ、こいつぁ、傑作だ、だぁっはっはっはっ!」ノシノシ

    勇者「(気づいてない? 俺は嫌というほどわかってるよ。だから、ニートになりたいんだ)」クルッ

    508 = 15 :

    【クィーンズベル 南西方向 廃墟】

    お頭「ほんとかぁ? なんでもいいけどよぉ、相手は10人をぶっ殺しちまいやがったガンダタだろぉ?」

    現場にいた衛兵は様子をこう語る……

    衛兵「ガンダタを一発ですよ。一発で倒しちまいやがったんでさぁ。強さへの憧れを通り越して恐怖って言うんですかね……ぶっちゃけ逃げ出したいくらいでしたよ」

    手下「エフッ、エフッ」

    衛兵「やべぇよ。アレは。俺命からがらでさ」

    お頭「で、ガンダタはちゃんと殺ってきたんだろうな」

    衛兵「へい。これを渡すように頼まれました」スッ

    手下達「うぉぉぉ~~まじかよぉ~」

    お頭「そうかィ。ちゃんと見てきてんだろうな? 殺したところを」ギロッ

    衛兵「(まぁ、大丈夫だろ)……へい」

    お頭「契約をきっちりやったってわけだ。なら、しょうがあるめェ」

    手下「なぁなぁ? どこにパンチいれたんだ?」

    衛兵「よく見えなかったけど。腹にじゃねぇか?」

    手下「腹かよぉ。夜飯くったばっかだから、やべえな[

    衛兵「胃が破裂するな」

    手下「オイオイオイ、死ぬわw俺w」

    お頭「ジャンはいつ頃戻ってくる?」

    衛兵「さぁ。しばらくしたらとしか」

    お頭「わかった……野郎ども! 月が傾いて二食形になりつつある! 就寝だ!」

    衛兵「俺は城に戻りやす」ペコ

    お頭「ああ。しっかりやれよ」

    509 = 15 :

    【宿屋】

    魔法使い「……」ササッ

    戦士「魔法使い。廊下でなにしてるんだ?」

    魔法使い「戦士っ⁉︎ しーっ! しーっ!」

    戦士「なんだ?」

    魔法使い「……声を潜めて。ちょっと耳貸して」チョイチョイ

    戦士「……?」

    魔法使い「忘れたの? マク様が隣の部屋に止まってるの」

    戦士「……いや、覚えてるが……」

    魔法使い「話しかけるチャンスじゃない!」

    戦士「どこかに行った様子だったが。部屋に帰ってきてるのかな?」

    魔法使い「帰ってきてなかったらそれでいいの! はぁ~ドキドキするぅ」

    戦士「くだらん。あたしは行く」

    魔法使い「とかなんとか言っちゃってぇ~? 戦士もまんざらでもないくせにぃ」

    戦士「あ、あたしはっ、前も言ったろ。きちんと話してからでないと」

    魔法使い「そのわりにはぁ~。治療してもらってる間、顔真っ赤にしてたみたいのはどこのどちらさまかしら~」

    戦士「……っ!」ボッ

    魔法使い「ぷっ、わかりやすいのね。戦士って。ウブなんだ? 慣れてないんでしょ? 自分より強い男に会うのが」

    戦士「し、師匠はあたしより強い!」

    魔法使い「歳がひとまわりもふたまわりも離れてる相手……まぁ、そういのが好きってのもいるけど、戦士はそうじゃないでしょ? 親みたいな感覚なんじゃない?」

    戦士「うっ」

    魔法使い「マク様って、ぜぇぇぇったい、若いわよ。あたし達と同年齢ぐらいだと思う」

    戦士「なんでわかるんだ?」

    魔法使い「匂いよ、匂い。おっさん臭しないし」

    戦士「に、匂い」(ドン引き)

    魔法使い「私、こういう時の勘は外したことないの」

    戦士「そ、そうなの?」

    魔法使い「ねぇねぇ、戦士」

    戦士「う、うん?」

    魔法使い「どうする? マク様が一緒に鍛錬しないかって言ってきたら」

    戦士「ええっ⁉︎ そ、それは……その、やぶさかではないよ、うん」

    魔法使い「ふたりきりで?」

    戦士「二人でも三人でも同じだ! 鍛錬してれば、雑念は消える!」

    魔法使い「ほんとにぃ? マク様あんなに強いんだもの。動きに見惚れちゃわない?」

    戦士「……見惚れる……」ポー

    魔法使い「ねぇ? 今、妄想してるでしょ?」

    戦士「なっ⁉︎ な、してないっ!」

    魔法使い「いいじゃない。私達だってオンナなんだから。なんで隠すの?」

    510 = 15 :

    戦士「べ、別に話することじゃないだろ!」

    魔法使い「共有しましょって言ってるのよ。武闘家とマク様の関係、怪しくない?」

    戦士「元々、マクさんは武闘家の師匠である老人が知っていたんだ。なんら不思議はない」

    魔法使い「さっきさぁ、マク様ってば、武闘家に話しかけてた。おかしくない? サイレントモンクなのに」

    戦士「……」

    魔法使い「なにかあるのよ。あのふたり」

    戦士「……ふぅ、やっぱり、くだらん。あたしは寝る」

    魔法使い「いいの? マク様が部屋にいるかもしれないのに」

    戦士「魔法使いを見てると我にかえった」

    魔法使い「あっそ。じゃあ、いいわよ。さっさと寝てれば? 私はマク様にぃ~ゴホン」コンコン

    戦士「ちょ、深夜だぞ⁉︎ ノックするやつがあるか!」

    魔法使い「寝てたら出ないでしょ! そしたら帰る!」

          「はぁい」

    魔法使い「……っ⁉︎ お、起きてるっ⁉︎ ていうか、普通に返事した⁉︎ ど、どどどどうしよっ、戦士!」

    戦士「し、知らないよっ! どうするんだよ!」

    魔法使い「戦士が先に挨拶して!」グィッ

    戦士「なんであたしなんだよ! 魔法使いだろ! 会いたかったの!」

    魔法使い「恥ずかしくなったの!」

    おじさん「……どちら様?」ガチャ

    魔法使い&戦士「……へ?」

    おじさん「……?」

    魔法使い「あ、あのぉ~。マク、様?」

    おじさん「マク? なんだそら?」

    戦士「この部屋に宿泊しているはずなんだが」

    おじさん「いんや。俺しかいないよ。お姉ちゃん達、マッサージにでも来てくれたの?」

    魔法使い「……いえ」ブスゥ

    戦士「す、すまない。どうやら、手違いがあったようで」

    おじさん「はぁ?」

    戦士「部屋を、間違えました……」

    511 = 15 :

    【宿屋 部屋】

    僧侶「あはっ、あははっ、面白すぎですぅ~!」バンバン

    魔法使い「……」ブッスゥ

    戦士「魔法使いにも困ったものだ」

    魔法使い「戦士だって少しはその気があったくせに!」

    戦士「ないよ!」

    魔法使い「いーや! あった!」

    武闘家「明日はお城に行かなきゃ行けないんだ。さっさと寝るよ。……この子が起きちまうだろ」

    少年「Zzz」

    魔法使い「あいかわらずね。武闘家って世話やければ誰でもいいの?」

    武闘家「アンタと一緒にすんな。この万年発情色情魔」

    魔法使い「むぐぐ~~やめてほしいんだったら! マク様を紹介してよ!」

    武闘家「できない。本人が望んでない」

    魔法使い「なんでわか……っ、やっぱり、あの時なんか小声で話してたのはそのこと⁉︎」

    武闘家「殴るよ? アタイは女同士だからね。優男みたいに躊躇しない」

    僧侶「まぁまぁ~」

    魔法使い「武闘家って前々から気に入らないと思ってたけどさぁ、なんだか最近ますますいやぁ~な感じ」

    武闘家「なにも変わっちゃいないさ。そう感じるのは、アンタが嫉妬してるからだ」

    魔法使い「なんですって⁉︎」キッ

    僧侶「そこまでそこまでぇ~。女の敵は女といいますがぁ、本人がいないのに争っても意味ないですよぉ」

    魔法使い「あんたはいいわよね。勇者一筋で」

    僧侶「そうですねぇ~」ニコニコ

    魔法使い「ほんっとに、あんなののどこがいいわけ? 理解できない」

    僧侶「はいはい~理解できないのならそのままでいいじゃないですかぁ~」

    魔法使い「どーしようもなくテキトーで、グーダラで、どこほっつき歩いてるかわかんなくて」

    僧侶「そぉですねぇ~」

    魔法使い「おまけにむっつりで、童貞で、たいして強くもなくて」

    武闘家「いい加減にしなっ!!」

    魔法使い「な……なにっ?」

    武闘家「うるさいんだよ。アンタのオンナの部分がうっとおしい」

    魔法使い「……」ブッスゥ

    戦士「……もう、寝よう。今夜は、あたしらもおかしいみたいだ」

    僧侶「一人の話題なんですけどねぇ~、くすくすっ」


    512 :

    【クィーンズベル城 郊外】

    勇者「……」フラフラ

    老人「これ、そこいく若者よ」

    勇者「ん?」

    老人「このような夜更けにどうした?」

    勇者「じいちゃんこそ。俺は酒でも浴びたい気分なんだ」

    老人「ふぇっふぇっふぇっ。お主、まだ若いじゃろ。なにを世に憂うことがある」

    勇者「俺はさぁ、人間も魔族も、違いがわからねーんだよ。みんなは敵だなんだっていうけど、人間だって悪いことしないわけじゃないじゃん」

    老人「人は、誰しもが宿命を背負って生まれおつるのよ」

    勇者「……だぁったら教えてくれよ。ハッキリとした答えをくれよ! わかりやすくさぁ!」

    老人「時がたてばわかる。お主の持つサダメが」スゥー

    勇者「じぃちゃんが透けて見えるのは俺の目がいかれたんだろかねー」

    老人「迷える勇者よ。砂漠の花を探すがよい」

    勇者「……」

    老人「太陽と雨が交わる場所に、一輪の花がある。その花を見つけた時に、また会おう」フッ

    勇者「砂漠の花……太陽と雨が交わる……意味がわかんねぇっ……ての……」ドサッ

    513 = 15 :

    ~~第3章『砂漠の花と太陽と雨と』~~(中編)

    514 = 15 :

    ここで一旦区切ります。
    徐々にフラグ回収が進んでおりますのでたぶんですけど終えるのにあと100レス~150レスぐらいだろうと判断しました。

    以前にちゃんと書いたら800レスぐらいだろうと書きましたがそんなもんじゃ終わらないのがこの時点で確定
    適当なところで切り上げたいと思います

    517 :


    好きなだけ書いてくれてええんやで

    519 :

    おつ

    521 :


    あと1000から1500レスとは嬉しい事言ってくれるわ~

    523 :

    武闘家の戦いとは意地のぶつけ合いは名セリフ
    読んでてゾクゾクした

    524 :

    【翌日 早朝 クィーンズベル城 城門前】

    兵士「えぇいっ、だまれだまれ! 身分を証明する物がないやつを通すわけにはいかん!」

    魔法使い「だからさぁ~! メイドを呼んできてってお願いしてるだけだってばぁ!」

    兵士「どこの馬の骨ともわからぬやつ! そんなやつの弁など聞く耳を持たぬ!」

    魔法使い「そんな融通がきないこといいはって本当に知り合いだったらどうするつもり⁉︎ あんたよくそれで門番が勤まってるわね! 頭でっかち!」

    兵士「なっ⁉︎ ななっ⁉︎」

    僧侶「……じゃんけんっ、ぱー」

    少年「あっち向いて、ホイ」

    僧侶「あらあらぁ~、また負けちゃいましたぁ」

    少年「あの……いいよ。お姉ちゃんに会えなくても。ウチに帰れば母さんがいるし」

    魔法使い「そぉ? 姉と弟の再会を邪魔する兵士のせいでぇ~。ごめんねぇ~」

    兵士「うぬっ」タジ

    武闘家「そうは言っても伝言も預かってる。メイドには会わねばならん」

    戦士「昨夜、あたしたちはならず者から彼女を助けてるんだ。後日、城に来るようにも言われてる。メイドからなにか聞いてないか?」

    兵士「知らん」プイ

    魔法使い「ほんとにぃ? 大目玉くらうのは兵士さんなんだからね?」

    兵士「知らんもんは知らん! ……メイド様は姫様専属だ。私は普段会えないんだ」

    僧侶「仕方ありませんねぇ~」

    武闘家「? 少年を家に送り届けようというのか?」

    僧侶「いえいえ~。これを拝見したいだたきたいのですがぁ」パサ

    兵士「はぁ……なんだ? 紙切れを出されたところで一般人の入城は――」シュルシュル

    戦士&魔法使い&武闘家「……?」

    兵士「……っ⁉︎ こ、これはっ⁉︎」ギョ

    僧侶「どうですかぁ? これなら許可をいただけると思うのですけどもぉ」

    兵士「しっ、失礼いたしました! ダーマ神殿“法王庁”の御婦人でしたか!」

    戦士「ダーマ……」

    魔法使い「法王庁……っ⁉︎」

    僧侶「師にあたる方が最高顧問を務めておりましてぇ~」

    魔法使い「法王庁といえば特権階級にいる超エリート集団じゃない⁉︎ 僧侶って、そこから来たの⁉︎」

    僧侶「はい~」

    兵士「他三名はお付きの者でしょうか?」

    戦士「誰が付き人だ!」

    僧侶「くすくすっ、まぁまぁ~。穏便に済むのならいいじゃありませんかぁ」

    武闘家「(こ、こいつ……いったい……)」

    僧侶「行きますよぉ~。お付きの方々~」

    魔法使い「(ダーマ神官の中でも選りすぐりの才能を持つ者だけ通れる狭き門。倍率はすごく高い。たしか……噂でつい最近、百年にひとりの天才を輩出したと……まさか……?)」

    僧侶「さぁ、行きましょぉねぇ~」

    少年「う、うん」

    魔法使い「(ま、まさかねぇ……)」

    525 = 15 :

    【クィーンズベル城 玉座】

    王様「よくぞまいった! オモテをあげラクにせよ」

    僧侶「王様。ご息災であられましたでしょうか」スッ

    王様「健康だけが取り柄よ。この地の気候はなににつけても暑い。過酷ではあるが、丈夫な身体にもなる」

    僧侶「健康だけとは、ご冗談が過ぎます。クィーンズベルは陛下のご采配で民達の笑顔が守られているのですから」

    戦士&魔法使い&武闘家「……」ポカーン

    王様「此度(こたび)は、水不足の件で参ったのであろう? ワシも不安でじっとしておられなんだ」

    王妃「法王庁に申請を出してから、よもやこんなにはやく対応していただけるとは」

    僧侶「……? いえ、今回わたくしは、法王庁とは別件で動いております」

    王様「なに? では、法王庁からの使者として参ったのではないのか?」

    僧侶「おそれながら。わたくしは勇者様と行動を共に致しております」

    王様「勇者……勇者だと……⁉︎」ガタッ

    王妃「まぁ……懐かしい。十年前に見かけたきり。大きくなったのでしょうね」

    僧侶「左様でございます、陛下。その旅の途中で御国に立ち寄る運びとなり、この子を……」

    少年「……」オズオズ

    王様「そうか……勇者がこの国にいるか……ならば後で挨拶にこさせよ。して、その子は――」

    「失礼いたしますっ!!」バターーンッ

    王妃「……なんですか、騒々しい……姫……あなた、自室謹慎処分だと……」

    「お説教ならば後で! さ、メイド」

    少年「あっ!」

    メイド「あ……あぁ……っ!」タタタッ

    少年「お姉ちゃぁ~~んっ!」タタタッ

    メイド「あぁっ、よかったっ、ほんとにっ、よかったっ」ギュッ

    少年「うぐっ、ひっ、うぁぁあんっ」ギュッ

    王様「こ、これは……? どういう……?」

    「お父様。家族の再会です。それだけなんですの」グスッ

    526 = 15 :

    【クィーンズベル城 姫の部屋】

    魔法使い「わぁ、ベッドがおっきぃ~」

    「横になってみる?」

    魔法使い「そ、そんなっ、おそれおおいっ!」

    「気にせずともよい。勇者のパーティであれば妾(わらわ)とっても友同然である。僧侶……といったな」

    僧侶「ここに」スッ

    「法王庁出身者とはまことであるか?」

    僧侶「はい」

    「その若さでか? 神官としての経験を積んではじめて選別されると聞いたことがあるが」

    僧侶「良き師のお陰でございます。わたくしに力はなにもありません」

    「謙遜するな。口利きで入れるというというのなら、格式と品格を落とす行為なるぞ」

    僧侶「ごもっともでございます」

    「役職はどこであったか?」

    僧侶「……」チラ

    戦士&武闘家&魔法使い「……」ジー

    「なんだ? パーティの面々まで興味津々といった面持ちで眺めておるではないか」

    少年「このお菓子おいしぃ」パリパリ

    メイド「まだこっちにもあるわよ」ニコニコ

    僧侶「内部事情をお話すのは戒律により厳しく禁じられているのでございます。どうか、ご容赦を」

    「(つまんないんですの!)……そうか」

    メイド「それで……勇者さまはいずこへ……」

    戦士「ゆ、ゆうしゃはぁっ! どっかいっちゃったでありんすっ!」カチンコチン

    魔法使い「ブフゥっ、あ、ありんすって」

    「どこか? どこに行った?」

    戦士「知らないです! 見取り図を持ってると伝えてくれと言われましたぁっ!」

    「そう……やはり……」

    メイド「姫さま。勇者さまが持っているのは幸いでございます。彼の方ならば、きっと悪いようには致しません」

    「そうね……」

    メイド「皆様、昨日は大変失礼を致しました。危ないところを助けていただいたばかりか、勇者様のパーティであることを疑ってしまい」ペコ

    戦士「きっ、かかっ、きにしてなぁ~~いです!」

    魔法使い「きゃはははっ!」バンバン

    戦士「あとで覚えてろよ……」

    「……堅苦しい挨拶はここまでにするんですの。メイド。皆さまに紅茶を」

    メイド「ただいまご用意致します」ペコ

    527 = 15 :

    「――実は、実力者たる皆に折り入って頼みがあるんですの」

    魔法使い「き、聞いたっ⁉︎ 実力者だって! 私たちののとかなっ⁉︎」

    戦士「あたしたちしかいないだろ」

    「なんです? 違うんですか? 法王庁出身とあれば疑う余地はないと思い、他三名もと思ったのですが」

    僧侶「いえ。全員、“才能は”ピカイチの者たちばかりです」

    「なにやら引っかかる物言いですの。まぁ、いいわ。頼みを聞いていただけるかしら?」

    武闘家「……」

    「貴女は先ほどからなにも喋っていませんね。どうですか?」

    武闘家「アタイは、王族に興味ありませんので。内容を聞かずにはなんとも」

    魔法使い「無礼よっ! お尋ね者になりたいのっ⁉︎」コソッ

    「ふふっ、勇者は個性的な面々をパーティに選んだようなんですの。たしかに、まずはこちらからお話すべきでしょう」

    僧侶「頼みとは……?」

    「この国の財源が、脅威に晒されています」

    戦士「脅威、ですか?」

    「近く、わたくしの縁談があるのはご存知ですの?」

    魔法使い「えぇと……?」

    「省略しますと、盗賊団が宝物庫に忍びこもうとしているのです」

    僧侶「まぁ……」

    「勇者が盗賊団に接触しているので――」

    魔法使い「え、えぇっ⁉︎」ガタッ

    「……?」

    魔法使い「あ、あわわっ、な、なんてこと。ついに悪事にまで手を染めるなんて」

    戦士「いや、なにもまだそうと決まったわけじゃ。騙されてるのかもしれん」

    武闘家「はぁ……」ガックシ

    「……もしや? 貴女達は、勇者からなにも聞いてないんですの?」

    メイド「姫さま」チラ

    「……」コクリ

    僧侶「皇女様。お話の続きをお伺いしてもよろしいでしょうか?」

    「いえ、やはり、やめにします」

    528 = 15 :

    魔法使い「や、やっぱりぃっ、ち、違うんですっ、あいつも根は悪いやつでは」

    「お黙り」ピシャリ

    魔法使い「は、はぃぃっ」シュン

    「見取り図の件を知っていなければ、勇者のパーティではないと疑っていたところです」

    魔法使い「は、はい?」

    「なにも聞かされていないとは……貴女達、信頼されていないんじゃ?」

    戦士「え……」

    「成人の儀を終えた勇者が魔王討伐のため、アデルを出発すると各国に早馬が飛ばされたのが二週間ほど前。いつから一緒に旅を?」

    僧侶「私達三名は翌日には帯同していたと思われます」

    「三名? もう一名は?」

    武闘家「アタイは、マッスルタウンについてからだから、半分ぐらいかな?」

    「期間が短いとは言い訳になりません。貴女方は勇者に選ばれて旅を共にしているのでしょう」

    魔法使い「い、いぇ~、最初は押しかけたっていうかぁ、私達の方から連れていってとお願いしたのでぇ」

    「なんですの……?」

    魔法使い「ですから、その、勇者と一緒に牢に入れられるのは……」

    メイド「勇者様からのご指名を受けて旅をされてるのではないのですか?」

    戦士「アイーダの酒場で待ってたんですが、勇者は“仲間は足手まとい”といって先に行ってしまったんです」

    魔法使い「そうなんです! 私達もてっきり! 最初は凄く強い人なんだろーなーって思ってたんですけど!」

    「……」ギュゥッ

    メイド「姫さま」

    魔法使い「それがぜんっぜん……てことはないけど、戦士と同じぐらいで」

    「ほう。戦士とはそこまで強いのか?」

    戦士「いや、あたしは、まだまだで」

    「勇者は4歳で我が国の兵士長をデコピンで負かしたぞ。さぞや強いのだろう?」

    戦士&魔法使い「へ……?」

    武闘家「ごほんっ! あー、勇者はぁ、補助魔法を使うからなぁ!」

    僧侶「勇者様の実力のほどはしかと。戦士と魔法使いは、その……」

    「なんだ? さっきから黙って聞いておれば、妾の友をバカにしておるのか?」

    メイド「ひ、姫さまっ! なりません! 勇者様が選ばれていないとしても! 共に旅することを認めておられるのです!」スッ

    魔法使い「えっ? ど、どゆこと?」

    「……そうですね」

    戦士「(4歳の時に、兵士長をデコピンで? ははっ、さては冗談だな?)」

    「失礼した。でも、貴女方に不満が残るのも事実です。勇者と連絡をつける方法はないんですの?」

    僧侶「しばらく別行動をすると」

    「なにか考えがあるようですね。しかし、その考えがわからぬことにはこちらも動きずらい」

    メイド「しばらく、様子をみては?」

    529 = 15 :

    【クィーンズベル 南西方向 廃墟】

    ジャン「本日からはいりましたー! 新人のジャンくんでーす! よろしくねー!」

    手下「なぁ、あいつがホントにガンダタ倒したのか?」

    ジャン「陰口なら見えないところでお願いしまーす!」

    お頭「おめぇらァっ! こいつはあのガンダタを殺してきたそうだ!」

    ジャン「ナイフでグサーっとやったりました!」

    お頭「功績を認め、団の幹部にとりたてるッ!!」

    手下「お、お頭ぁっ! いきなり新人をそんな扱いをするんですかいっ⁉︎」

    お頭「当たりめェよ! この団はいつから年功序列になった! 実力主義だろうがッ!」

    手下「うっ、それは、そうですけどぉ」

    ジャン「(ざまぁwww)」

    お頭「納得いかねェやつは前でろ。ジャンが相手になる」

    ジャン「……ん?」

    手下「いいんですかい? 仲間内での殺しは……」

    お頭「このアホたれ。誰が殺し合えといったんだァ。喧嘩は日常茶飯事だろうが」

    手下「なぁ~ほどぉ。そういうことか」

    ジャン「んん~?」

    手下「俺やりやす! こいつは強そうに見えねぇ! きっとマグレだったんでさぁ」

    お頭「俺も強さを直に見たわけじゃねェからな。素手でやれよ」

    ジャン「……めんどくせぇ」

    530 = 15 :

    【数分後】

    手下「」ドサッ

    ジャン「どんなもんでしょ?」パンパン

    お頭「……ワンパンか……つえぇな。貴族とたまに取り引きしてるが、武術に精通してるやつなんてめずらしいぜ?」

    ジャン「そのめずらしいやつの中の一人なんですよ。ほかの皆さんも信じていただけましたけねぇ~?」

    手下達「……」ゴクリ

    お頭「くっ、だっはっはっ! 俺たちの団にようこそ!」

    ジャン「取り引きが終わるまでの間ですけどね」

    お頭「まぁ、そう生き急ぐなよ。こっちにこい。計画の詳細を説明する」

    ジャン「(いよいよ核心に迫れるのかね。どうやって井戸の水を枯れさせてるのか……)」

    手下「お待ちを。お頭。お客様です」ササッ

    お頭「後にしろ。どうせ行商頼んでる水売りだろ」

    手下「いえ、それが――」コショコショ

    お頭「――なにィ? ……わかった。すぐいく」

    ジャン「俺もご一緒しても?」

    お頭「あ~? ん~、まぁ、いいか。そのかわり、なにも喋るなよ。口開いてご機嫌損ねたら舌を切るぞ」

    ジャン「あいあいさー!」ビシッ

    532 :

    おつ
    僧侶さん、勇者との会話で只者じゃないのはわかってたけどかなりエリートだったのな

    533 :

    >>490
    僧侶「私も精神力が~」ガクッ
    とか言ってるし、底は知れたような気がするが……

    まあ何か隠し玉は持ってそうだな

    535 :

    【廃墟付近】

    お頭「お待たせしたな」

    占い師「忙しいようだな。商(あきな)いは順調か」

    お頭「お陰様で」

    占い師「そちらの男は……?」チラ

    ジャン「(まーた新しいやつが出てきた。フードを深めに被って顔はわからないが、女だな)」

    お頭「ハーケマルの使者だ。なかなか使えるんで、仲間に抱き込んだ」

    占い師「なに……? 間者ではないのであろうな。情報が筒抜けになるぞ」

    お頭「金の魅力に取り憑かれてる男よ。なにかあった場合のケツは俺がとる」

    占い師「……準備の進捗具合はいかが」

    お頭「アンタに教えられた方法で、井戸の水を枯れさせてる。国相手となれば体力も尋常じゃねェ。困窮させるには期間を要する」

    占い師「急いては事を仕損じるだけだ。かといって悠長に構えているつもりはない」

    お頭「わァってるよ。ハーケマル王子の来訪に合わせられるように進めてる」

    占い師「私の雇い主は気の長いお方ではない。計画が頓挫しようものなら、死を覚悟しろ」

    お頭「その分、見返りはでかい。ハイリスクハイリターンってとこだな。俺にとっても国盗りの夢を叶える良い機会だ」

    占い師「あのお方はクィーンズベルの没落を望んでおられる」

    お頭「現政権を追い込んだら、俺を後釜に据えるという約束、忘れちゃいねェでしょうな」

    ジャン「(そんな簡単にコトは済まんだろうに)」

    占い師「覚えている。が、政権転覆となるとそうやすやすとはいかない」

    ジャン「(そぉ~らきた)」

    お頭「な、なんだとォっ⁉︎ 約束を違える気かっ⁉︎」

    占い師「名家出身でもない、王族でもない、盗っ人なぞに国を任せると思うか? 第一、周辺国にどう認めさせる」

    お頭「国を疲弊させれば、現在の王族は窮地に立たされ、民の信用を失い――」プルプル

    占い師「……」

    お頭「そう持ちかけてきたじゃねェかッ!!」ビシッ

    占い師「王になったとて、その先になにを見る?」

    お頭「“自由”よッ!!」

    占い師「愚かな……」

    お頭「王になりゃぁ、国を、兵を、財をッ! 好きなように操れるッ!!」

    536 = 15 :

    占い師「使者とやら。貴族であろう? こやつに王としての器があると思うか?」

    お頭「言ってやれッ!! あるとッ!!」

    ジャン「暴君としてならばあるんじゃないでしょかね? それか、独裁者か」

    占い師「うふっ、はっはっはっ。暴君か。たしかに、それならば才気は望めそうだ」

    お頭「暴君だァ?」

    占い師「国をなんと見る? お山の大将よ」

    お頭「お、オィ。誰にモノ言ってやがる」

    占い師「国は、生き物だ。内政、物流、通貨、交通、さまざまな分野が折り重なり、人が生きて、国と成る」

    お頭「……」

    占い師「お前に国を任せたとしたら、5年もたないだろう。部下に殺されるか、民たちに殺されるか。そういう未来が見える」

    お頭「な、なんだとォッ⁉︎」

    占い師「盗賊として報酬を望め。その後は、このヤマから身を引け」

    お頭「こ、このッ!」バンッ

    占い師「……ふぅ。フードがうっとうしい」ファサ

    ジャン「(若い。見た感じ俺とそんな変わらないぐらいか)」

    お頭「魔族に会わせろ。オメェじゃ話にならねぇみたいだからな」

    占い師「私に言っているのか?」

    お頭「俺とジャンとオメェしかいねぇだろ!」

    占い師「ニンゲンよ」

    ジャン「(なんだ……この気配は……)」

    お頭「あ……? あぐっ……⁉︎ アガガッ⁉︎」ガクッ

    占い師「貴様に預けた水晶はどうだ。大切に持っているか……? ん?」

    お頭「息がっ……! あぐぅぁあっ!!」ジタバタ

    ジャン「(お頭には指一本触れてない。どうやってるんだ?)」

    占い師「脆い生き物よ。脆弱で、浅はかで、欲深い。そなたたちが醜くければ醜いほど、憎めずにいる。そこのモノ、助けなくてよいのか……?」

    ジャン「どうやって助けろというんです? 貴女の首をハネますか?」

    占い師「試したらどうだ?」

    お頭「ひゅー……ひゅー……っ」ドサッ

    ジャン「いいんですか? お頭を殺せばこれまでの準備が全て無駄になっちゃうと思うんですけど」

    占い師「……おおっ、そうであった」シュゥ

    お頭「」ドサッ

    ジャン「あの~結局あなたはなにしに来たので? からかいに来ただけ?」

    占い師「いや、私は、お頭に用があって。……あれ?」

    お頭「」

    占い師「これ。起きろ。起きんか」ペチペチ

    ジャン「代わりに聞いときましょか?」

    537 :

    占い師「やれやれ。ニンゲンは脆すぎていかん。そう思わんか」

    ジャン「まるで自分が人間じゃないように言いますね」

    占い師「あぁ……そうだな。気になるか?」ニタァ

    ジャン「いいえ。ちっとも」

    占い師「なんだ。肩透かしだな」

    ジャン「俺媚びへつらうのは上に対してだけって決めてるんで」キリッ

    占い師「なんぞ? 私はお前より下か?」

    ジャン「誰かの指示で動いてるんだろう? あのお方と言っていた」

    占い師「言ったが?」

    ジャン「でかいヤマになればなるほど関わる人間は……あんたは人間じゃないかもしれないけど、数は増える。中間管理職に媚びたって、ねぇ?」

    占い師「お前はさらに末端の下の下ではないか」

    ジャン「違いない。だけど、計画を遂行するには、気絶してるお頭は必要だろ? ……話が逸れてる。なんでもいいから、用件があるならどうぞ」

    占い師「小癪なやつだ。新しい水晶と古い水晶の交換にきた」

    ジャン「なぜ?」

    占い師「それは、水脈を止めるために決まってる」

    ジャン「(いや、決まってるて知らねーし。調子合わせるか)……そうでしたね。さっきお頭から水脈を止める原理を聞いたばっかりで」

    占い師「これには瘴気がつまってる」スッ

    ジャン「らしいですね。それ使って逃げさせてるんでしたっけ?」

    占い師「……」ギロッ

    ジャン「(あら? 違った? 軽率だったかな?)」

    占い師「……そうだ」

    ジャン「(合ってるんかーい! ドキドキさすなこのボケッ!)いやぁ~しかし、便利なアイテムですねぇ。それどうやって使うんです?」

    占い師「水脈には、地点地点に息吹が存在する」

    ジャン「ほぉ」

    占い師「割り振られた場所にコレを埋める。すると、水は玉から染み出す瘴気を避けるようにして逃げていく」

    ジャン「ほぉほぉ。てことは、ひとつじゃないですな? 何箇所にも埋まってると」

    占い師「定期的な交換が必要でね。これを持ってきた」ジャラジャラ

    ジャン「(にー、しー、ろー、はー……10個か)」

    占い師「穴が結構な深さになるから、これを別働隊に渡してほしい」

    ジャン「(なんだ。結局どんなカラクリがあるかと思えば、アイテムか。つまんねーの)……かしこまりました。たしかに伝えときます」

    538 = 15 :

    占い師「あと、もうひとつ。これを渡しておく」

    ジャン「(アイテムとかつまんねー。冷めた。なんだかすっごく冷めたわ)なんでしょ? 剣ですか?」

    占い師「念のため、これを5個目の地点に一緒に埋めておけ。呪いをかけてある」

    ジャン「どんな?」

    占い師「お前は知らずともよい」

    ジャン「あ、そう」スッ

    占い師「……あの、本当に気にならないの?」

    ジャン「え?」

    占い師「や、普通だったら、こいつ何者だっ! とか、これにはこんな効果がっ⁉︎ とか」

    ジャン「いや? 劇じゃないんだから用件が済んだなら帰れば?」

    占い師「え……」

    ジャン「あー、忙し忙し。お頭おぶっていかなくちゃ」ヒョイ

    占い師「ちょ、ちょっとっ」

    ジャン「ん?」

    占い師「聞いて驚くがいい! その剣は呪われている!」

    ジャン「聞いたよ」

    占い師「うん、2回目……」

    ジャン「じゃ、そういうことで」

    占い師「聞くがいい! 私はっ!」

    ジャン「……なによ?」

    占い師「聞きたい?」

    ジャン「いや」

    占い師「……」プルプル

    ジャン「わぁ~。すごいなぁ~。この剣にはこんな効果があったのかぁ~」

    占い師「聞いてないじゃん! 知らないじゃん! どんな効果があるとか!」

    ジャン「……話したいの?」

    占い師「……」プィ

    ジャン「あー、魔族ってのはどの種族だぁ?」

    占い師「き、聞きたいっ⁉︎」

    ジャン「教えてほしいなぁー」

    539 = 15 :

    占い師「ふふっ、いやしい人間め。そんなに魔族と会いたいか。欲に目がくらみ――」

    ジャン「厨二病か。お大事に」テクテク

    占い師「ま、まてぇいっ」ポンッポンッスポポンッ

    ジャン「……?」

    ベビードラゴン「オラがせっかく盛り上げた雰囲気さ、壊すでねぇっ!!」

    ジャン「お、おお」

    ベビードラゴン「なんで無視するだ! 人間のくせして生意気だど! 恥ずかしいと思わんのか!」パタパタ

    ジャン「すまん」

    ベビードラゴン「謝っで済むことか! せっかく、せっかく……クールな人間を演じて盛り上がってたんに!」

    ジャン「本当にすまん」

    ベビードラゴン「もっかい仕切りなおしだど。ちゃんどやれっぺな?」

    ジャン「あ、ああ」

    ベビードラゴン「ふふっ、いやしい人間め――」

    ジャン「す、すまん。ちょっといいか?」

    ベビードラゴン「なによっ⁉︎ 現場の空気乱さないでぐんねっ⁉︎」

    ジャン「どうしても気になってることがあって」

    ベビードラゴン「それ、解決しなきゃできそうにない?」

    ジャン「うん、まぁ、そうだな」

    ベビードラゴン「だぐぅ、ぺっこしかたねぇ。質問は一個だけだかんな。特別にこだえてやる」

    ジャン「――……竜族だろ?」

    ベビードラゴン「……っ⁉︎」

    ジャン「……」ジー

    ベビードラゴン「なしてそげなこと思うだ?」

    ジャン「なんでだろうな?」

    ベビードラゴン「オラは見ての通り、人間だど」パタパタ

    ジャン「……そだな」

    ベビードラゴン「変わったニンゲンだっぺね。いきなり人を竜族なんて」

    ジャン「うん」

    ベビードラゴン「あ~なんかシラケちまったよ。オラ帰る」

    ジャン「うん、気をつけてな」

    ベビードラゴン「おめっ! マジで言葉使いなんとかしろっ⁉︎ オラに馴れ馴れしいぞっ⁉︎」

    ジャン「あんまりにも可愛いらしくて、つい」

    ベビードラゴン「はっは~ん。そっちの欲か。けがわらしい」

    540 :

    【クィーンズベル城 訓練城】

    兵士長「全体ッ! 休めッ!」

    兵士達「はっ!!」ザッ

    「兵士長。精が出ますね」

    兵士長「皇女殿下でございませんか。最近は歳による衰えを感じておりまして……そちらの方々は?」

    魔法使い「うわぁ……むっさくるしい場所……」

    「客人です。暇なので城内を案内していたんですの。気になることもあったし」

    戦士「いいなぁ、この空気。懐かしいなぁ」

    「戦士は勇者と同じぐらいの強さだそうよ」

    兵士長「っ⁉︎」ギョッ

    戦士「あ、いや……」

    魔法使い「らしくないわね、なに謙遜してんのよ。拮抗してたけど勝ったじゃない」

    兵士長「かっ、勝った⁉︎ あの勇者にっ⁉︎」

    武闘家&僧侶「……」

    魔法使い「そんなに驚かなくても」

    兵士長「驚かずにいられるか!!」

    「して、そのチカラがいかほどか見てみたいと思ってね」

    兵士長「……なるほど……よろしいでしょう。私も歳をくったとはいえより激しくレベルアップに励んでまいりました」

    戦士「え? あたしがやるのか?」

    「こわいんですの? 勇者に勝っておきながら、兵士長ごときが」

    戦士「冗談にもほどが過ぎます。あたしはまだ修行中の身」

    兵士長「これも鍛錬の一環だと思えば問題なかろう。私が相手だと役不足かもしれんが」

    戦士「役不足って、そんなわけないでしょう。あたしは……」

    武闘家「ちょっと待ってくれ」スッ

    「どうしたんですの?」

    武闘家「その……姫さま。ちょっと」チョイチョイ

    「……?」テクテク

    武闘家「戦士は気がついてないんですよ。実力差を。以前勝ったのも勇者に手加減されてて」コショコショ

    「どうせそんなことだろうと見当はついてましたわ。身の程を分からせる良い機会です」

    武闘家「それが、勇者はなぜか知らないけど、隠したいみたいで」

    「隠したい?」

    武闘家「アタイにも、直接口止めはしてきてないけど、なんていうか、言わないでほしいって雰囲気が伝わってきてて」

    「……ふぅ~ん……」

    僧侶「武闘家の言葉は真実です」

    541 = 15 :

    「そうなの?」

    僧侶「私は、理由が、なんとなくわかるのですが……」

    武闘家「な、なんだって?」

    「して、理由とは?」

    僧侶「おそらく、勇者として見てほしくないのだと思います」

    姫&武闘家「勇者として、見てほしくない?」

    僧侶「確証はいまだ持てませんが。考えを巡らせると、そこにたどり着くような気がしてなりません」

    「なぜです? 比べるのもバカげていますが、王よりも尊い存在だと言えるかもしれない唯一無二なんですの」

    僧侶「……そこに、根が張っているのではないかとぉ」

    「わかるように説明なさい」

    僧侶「生まれながらにして勇者。その孤独を想像した経験はございませんか……?」

    「ないわね」キッパリ

    僧侶「大抵の人は勇者に羨望の眼差しを向け、時には嫉妬さえ抱いていると思います。なぜか? 勇者が符号として成立してしまっているからです」

    「……」

    僧侶「恩恵とでも言いましょうか。様々な高待遇を約束され、魔王討伐という伝説に彩られた華道を進める」

    「それで? 王族だって似たようなしがらみにとらわれているんですの」

    僧侶「そうなのですが……勇者という職業は……」

    「妄想はしなくてよいのです。“なにしろ勇者なのですから”」

    僧侶「王族でさえ、色眼鏡で見てしまわざるを得ない存在なのです」

    「あっ、当たり前ですのっ!」

    僧侶「……」

    「この世界の希望なんですのよ! 私達が勇者をサポートしなければ!」

    僧侶「はい……おっしゃる通りです……」

    「妬みなぞもっての他!」プイッ

    僧侶「……そう、ですね……」

    543 :

    苦労人僧侶

    544 :

    なんつうかつくづく面倒くさいやつだな、姫
    独善的すぎて胸くそ悪い

    546 :

    >>540
    あえてそう書いているのですよ
    用心深く見えて割と簡単に言いくるめられる盗賊の頭

    後付け感半端じゃなさそうな勇者の過去
    殺人犯した奴に「一緒に旅をしないか」と言い出す情緒不安定な勇者

    あえてそう書いているのですよ

    547 = 546 :

    >>544でした
    あえてそう書いているのですよ
    用心深く見えて割と簡単に言いくるめられる盗賊の頭

    後付け感半端じゃなさそうな勇者の過去
    殺人犯した奴に「一緒に旅をしないか」と言い出す情緒不安定な勇者

    あえてそう書いているのですよ

    549 :

    まだアンチわいてるのか気持ち悪いなぁ
    勇者の過去後付けって初出は初期の>>96だろうに
    捏造までしてなにがしたいんだ

    550 :

    >>549
    信者も大概気持ち悪いよ?
    用心深く見えて割と簡単に言いくるめられる盗賊の頭
    殺人犯した奴に「一緒に旅をしないか」と言い出す情緒不安定な勇者
    これに関しては反論しないのですか?


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