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    元スレ勇者「ニートになりたい」

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    201 = 15 :

    勇者「だいたいだな。戦士と武闘家はいつのまに息ぴったりになってんだよ」

    戦士「お前のせいだ」

    武闘家「共通目的があるから」

    勇者「やめていただけるかな⁉︎ 俺を口撃して団結すんの!」

    僧侶「また話がそれだしてますよぉ~。どうしましょうねぇ」

    戦士「魔王軍の戦力。どれほどのものか。実態は誰も知らない」

    武闘家「さっきの淫魔は確実に伝えるだろう。そうなれば、言われた通り、全魔王軍……親玉である魔王自らが勇者を潰しにかかるかもしれない……!」

    勇者「おっかねぇ」

    戦士「だったらなんで逃したんだよっ!」バンバンッ

    勇者「……ふむ」ピラ

    魔法使い「百歩譲って、勇者は自分が襲われるのを良しとしたとしましょう。でも、この村も危険に晒されるのかもしれないのよ? 滅ぼされたら、どう責任とるつもり?」

    勇者「いや、そうはならない」

    僧侶「なぜでしょう~?」

    勇者「現状が膠着状態だからだよ。俺が立ち寄ったとされる村々を潰せば、人間たちも黙っちゃいないだろ」

    戦士「……」

    勇者「人間vs魔族の全面戦争が勃発する。なぜだか知らないが、そうはなっていないから。むやみやたらと人間達の住む村々を攻撃しないよ」

    魔法使い「その言い分には穴がある。淫魔達はこの村を実質襲っていた。このままいけば、壊滅していたわ」

    勇者「まわりくどいやりかた、でな」

    魔法使い「……そ、それは」

    勇者「なるべく目立たないようにしてたんだと思うよ。もっと大規模にやってもかまわないんなら、人口の多い、例えばマッスルタウンを狙うだろ」

    僧侶「アデルの城下町でもいいわけですしねぇ」

    勇者「魔王軍は今はまだ、人間達と争う気はないらしい。明日はわからないけど」

    魔法使い「じゃあ、あくまで勇者を個人的に狙ってくるってこと?」

    勇者「……だといいけどねぇ。ルートを迂回する」

    武闘家「どう行く?」

    勇者「現在地はここ」

    僧侶「西から東に、中心地のダーマに向かってまっすぐきたのでぇ~。3分の1ちょっとを過ぎたあたりですぇ」

    勇者「その通り。ここから北に向かう」

    魔法使い「北? 北ってことは雪原よ?」

    勇者「この村で防寒対策をしっかり行う。休業していた稼ぎをとりかえすため、営業再開はまもなくするだらうからな」

    戦士「北か……なぜ、南のクイーズベルではなく北なのだ?」

    勇者「行きたくねぇから」

    魔法使い「そ、そんな理由」ガックシ

    僧侶「暑さよりも寒さの方がお好みなんですかぁ~?」

    勇者「いや、知り合いがいるんだよ。南の国は」

    202 = 15 :

    魔法使い「寒いと乾燥するから、寒さよりは暑さがいいなぁ。肌によくないし」

    武闘家「強い紫外線だって同じだろ」

    魔法使い「……へぇ。武闘家も美容に気をつけてるんだ?」

    武闘家「ち、ちがっ! そんなんじゃ、ない」

    戦士「知り合いとはどういう知り合いだ?」

    勇者「こわいのがいるんだ」ゾクッ

    僧侶「こわい……?」

    勇者「……とっても、恐ろしいやつが……や、やめて! パンツ脱がさないでっ! チン○ンの皮はひっぱるものじゃないよぉ!」ガタガタ

    魔法使い「……だいたい想像がつくわね」

    戦士「甲斐性の“か”の字もこいつからは感じられん……本当に、ついていっていいのだろうか」

    勇者「……そこでだ」キリッ

    僧侶「くすくす。コロコロ表情が変わって面白いですねぇ」

    勇者「ギャグじゃないわい。……お前らも、よく考えろ」

    魔法使い「考えるってなにを?」

    勇者「俺と一緒にいると危険だぞ。まだ引き返せる」

    戦士「……?」

    勇者「いや、あのですね。そんな何言ってんだこいつみたいなキョトンとされても」

    武闘家「バカじゃないのか、お前」

    勇者「ストレートに言わないで⁉︎」

    魔法使い「旅に危険はつきものでしょ」

    勇者「危険の度合いといいますか」

    戦士「死ぬのがこわいなら最初からついてきていない」

    勇者「あ、そう」

    僧侶「優しいんですねぇ~。でもぉ、余計な気をまわしすぎですよぉ~」

    魔法使い「はぁ……いきなりなに言い出すかと思えば、くだらない」

    勇者「すみませんねぇ! ……おや?」ピクッ

    武闘家「今度はなんだ」

    勇者「ちょっと、トイレ」

    戦士「申告しなくていいから、さっさと行ってこい」

    203 = 15 :

    【淫夢城 玉座】

    サキュバス「勇者を発見したっ!?」

    リリス「はいぃ~お姉様ぁ。見事リリスが突き止めましてでございます~」スリスリ

    サキュバス「報告! 報告なさい!」

    リリス「ハッ! またもやトリップしてしまいました。お姉様がいけないんですよぉ、そんなに誘惑の波動をまきちらしてぇん」

    サキュバス「……」ギロッ

    リリス「ひっ⁉︎ も、申し訳ありません」

    サキュバス「……して、勇者がいたというのは嘘偽りない真実か?」

    リリス「はい、まことでございます。ミンゴナージュ村にて、遭遇いたしました」

    サキュバス「だからか? 精気を搾り取る前に、撤収してきたのは」

    リリス「は、はい。先に報告するのが急務と考えまして」

    サキュバス「勇者を殺そうとはしなかったのか?」

    リリス「そ、それは……」

    サキュバス「目の前にいれば考えるはず。できなかったとすれば、圧倒的に力の差があったか?」

    リリス「いいえっ! たしかに……攻撃魔法はたいしたものでしたが」

    サキュバス「……攻撃魔法ですって?」

    リリス「お姉様……失礼、サキュバス様もご存知のライデインです」

    サキュバス「稲妻の……どのような威力であったか」

    リリス「実際のところは……でも、通常の属性魔法と違い反応できるものではありませんでした。光速の速さといいますか、パッと光ったかと思い振り向けば、穴が」

    サキュバス「それで、おめおめと逃げ帰ってきたか? なにもできず」

    リリス「なにもできなかったなんてとんでもございません! お喜びください! 勇者に我が一族の特技は通用いたします!」

    サキュバス「ほう……?」

    リリス「誘惑が効きました! 精神攻撃が有効なのです! お姉様っ!」

    サキュバス「それはそれは。たしかに良い報告ね。でも、そうならなぜその場で殺さなかったの?」

    リリス「自分の腕を折り、正気を取り戻したのです。そしてライデインの威力をまざまざと見せつけられ……」

    サキュバス「報告は終わりか」スッ

    リリス「けっ、けっして! けっして逃げてきたわけではありません! 本当です! 罰はどうか!」

    サキュバス「リリス、誘惑するなら骨までトロけさせなさいと言ったでしょう……」

    リリス「は、はい」ブルブル

    サキュバス「そんなに震えて。どうしたの?」

    リリス「や、やはり、今からでも殺してまいります!」

    サキュバス「よい。ゆっくり休め」

    リリス「お、お願いです! サキュバス様! どうか、お慈悲を!」ガタガタ

    サキュバス「……うふふ。かわいいかわいいリリス。怯えなくても平気。勇者には、私が会ってくる」

    リリス「淫夢王様がっ⁉︎ そ、それは必要ないんじゃ。魔王様に報告して、あとは招集会議を」

    サキュバス「勇者……。どれほどのものか自分で確かめたい。魔王様が、我が大魔王があれほど言う人物。たしかめねば、気が済まないのよ」

    204 = 15 :

    【村娘の家 トイレ】

    勇者「漏れちゃう漏れちゃう」ジーッ

    サキュバス「……」パッ

    勇者「ふぃ~この瞬間が心のオアシスやでぇ~」ポロン

    サキュバス「……リリスのやつ。転移魔法陣の座標誤ってる。使えない部下なんだか……ら?」キョトン

    勇者「あ?」ジョロロ

    サキュバス「えっ、ちょ、ちょっと」ビチャビチャ

    勇者「おっ、ちょ、なんでいきなり便座に座ってんだよ! 急には止まらないんだって男は!」ジョロロ

    サキュバス「め、目にはいっ、うえっ、口の中に」

    勇者「顔にあたってはねてる! ばっちい!」チョロチョロ

    サキュバス「お前のだしてるものだろうが! か、髪に、私の髪が……っ!」

    勇者「……」チョロ

    サキュバス「……に、人間よ。なにか申し開きはあるか」

    勇者「いきなりは、勘弁してほいかなーなんて。あと場所も」

    サキュバス「……」プルプル

    勇者「ご、ごめんね? ツラかったよね? 顔にションベンぶっかけられ、髪と衣服まで……着てる服って、あぶない水着?」

    サキュバス「――……死ねッ!!」バァッ

    205 = 15 :

    【村娘の家 リビング】

    僧侶「みなさん機嫌をなおしましょ~」パンパン

    戦士「機嫌なら……怒るのもバカらしくなった時点で。……呆れてるだけだよ。これから、魔王軍に目をつけられた旅になるかと思うと」

    武闘家「死ぬのはこわくないと言ったくせに、ビビってるのか」

    戦士「悪目立ちをしてしまったという意味だ!」

    魔法使い「まぁ、その点については私たちも責任の一端があるのはたしかだし。問題は勇者の性格よね」

    戦士「あぁ。だいたいあたしもつかめてきた」

    魔法使い「てきとー、甲斐性なし」

    戦士「うんうん」

    魔法使い「私たちがしっかりしないとだめね」

    僧侶「そんなことありませんよぉ」

    魔法使い「僧侶、ほんっきで勇者に惚れてるわけ? 肩書きなかったら、しょーもないやつでしょ」

    僧侶「それはぁ、おふたりの見る目がないだけでぇ」

    ――バンッ バンッ ドォーーン――

    戦士「爆発音⁉︎」

    武闘家「トイレの方からだ!」ダダダッ

    魔法使い「今の炸裂音は……イオ系よ! イオ系の呪文だわ!」

    僧侶「すごい音でしたねぇ」

    武闘家「おい、どうした! ゆう、しゃ……」パタン

    戦士「武闘家! なぜ扉の前で立ち尽くしている!」タッタッタッ

    武闘家「……ない」

    僧侶「ないってなにがですかぁ?」トテトテ

    戦士「こ、これは……⁉︎」ギョッ

    武闘家「トイレが、壁が、なにもかも。丸ごと、なくなってる」ヒュ~

    僧侶「あらあらぁ~。外と繋がっちゃってますねぇ」

    魔法使い「それで、勇者は……どこ?」

    206 :

    【ミンゴナージュの村 数キロ先】

    サキュバス「この淫夢王に向かって、せ、聖水プレイだと……」バサッバサッ

    勇者「高くて良い眺めである」

    サキュバス「なぜしがみついてるんだお前はっ!!」

    勇者「いきなりイオナズンとかぶっ放すから爆風で掴んだのが貴女でした」キリッ

    サキュバス「こ、この……! 下等生物……!」

    勇者「聖水プレイははじめてだったのか? 力抜けよ」

    サキュバス「……」ヒクヒク

    勇者「どこまで行くんだ? そろそろ地上に下ろしてほしいんだけど」

    サキュバス「よかろう……ならば望みどおりっ!! 落ちるがいいっ!!」バサァ

    勇者「おっ、いきなりそんな、あぶなっ、あっ」ツルッ

    サキュバス「まだだ……メラゾーマ」ボォ

    勇者「落下する相手に追い打ち? だめだよーそんなのは」ヒュー

    サキュバス「今度こそ……! 死ねぇぇぇっ!!」ゴォッ

    勇者「……っ!」バッ

    サキュバス「腕を交差したところで防げるものかっ!! そのまま灼熱の業火で焼かれるがいい!!」

    勇者「フバーハ」ボォ

    サキュバス「……っ! 耐火魔法か!」ゴォォォッ

    勇者「うぉっ! あちっ、なんだ? 防御魔法が」

    サキュバス「そんじょそこらのやつが放つメラゾーマだと思うなよ! そんなちっぽけなもので……!」

    勇者「にょわわわぁ~~~」ヒュー

    サキュバス「……な、なんだ。今のマヌケな叫び声は。落下していったが……一応、確認しておくか」

    207 = 15 :

    【ミンゴナージュの村~ 荒野】

    サキュバス「このあたりに落ちたはず。岩だらけで目視しずらいわね」バサッ バサッ

    勇者「あ~、死ぬかと思った」ガラガラ

    サキュバス「……っ⁉︎」ギョッ

    勇者「ただのメラゾーマだと思って舐めてたわ。見てくれよ。マントが焦げちまった」ビリビリ

    サキュバス「な、なんだお前は⁉︎ こ、この私のメラゾーマだぞ!」バサッ バサッ

    勇者「この私ってどちら様か知らんけども。ご近所さんではないな」

    サキュバス「ま、まさか、お前が……⁉︎ お前が勇者なのか! そうであろう! 生身の人間でこんな強力な個体などいない!」

    勇者「んー、まぁもう隠しても仕方ないか。そうだよ」パンパン

    サキュバス「そ、そうか……貴様が。どおりで、消し飛ばしたはずのイオナズンも、焼き殺したはずのメラゾーマも」

    勇者「さっきのやつなぁ、俺以外に放つとあぶないと思うんだ」

    サキュバス「ふ、ふふっ! 勇者よ! 私はお前に会いにきた!」

    勇者「それはどうも。こんにちは」ペコ

    サキュバス「その実力。伝説に違わぬかどうか私自らが見定てあげる。――見せてみなさい。魔王様に届きうるか否かッ!!」バサァッ

    勇者「めんどくせぇ」ゲンナリ

    サキュバス「まずは小手調べといきましょうか。この荒野とともに散りとなるなよ……」

    勇者「心配してくれんの?」

    サキュバス「がっかりさせるなという意味だ! さっきよりも魔力を高めてるぞ」ギュイィィィン

    勇者「(こいつは……今まで会った中で一番やべぇっ!!)」グッ

    サキュバス「連鎖する爆風! 小さき精霊(もの)どもよ! 連なり爆(は)ぜろ!! イオナズンッ!!」

    208 = 15 :

    【ミンゴナージュの村 村娘の家」

    魔法使い「えっ? えっ? 勇者は、どこに行ったの?」

    僧侶「もしかしてぇ~。責任を感じて一人で行かれたのではぁ~?」

    戦士「そ、そんなタマかぁ? あいつが」

    僧侶「絶対ないって言い切れますかぁ?」

    魔法使い「可能性の話をしたらキリがないけど」

    武闘家「いなくなってるのは事実さ」ドサッ

    戦士「どうしたんだ? 座りこんで」

    武闘家「どーすんのさ。これから。アタイ達は」

    魔法使い「どうするって?」

    武闘家「忘れたの? 旅の目的」

    戦士「いや、忘れてないが」

    武闘家「アタイは師匠との約束を守るため。あんた達は何のためか知らないし、知りたくもないけど……勇者についてく。そう思ってパーティ組んでたんだろ」

    魔法使い「……」

    武闘家「見切りをつけられちまったのは、アタイ達の方だったってわけだ」

    戦士「いや! しかし、あたしたちだって選ぶ権利が」

    武闘家「その選ぶ権利とやらはさっき行使したばっかだろ。満場一致で勇者と行動をともにする。そこに疑問なんてあったの?」

    戦士「それは、なかったが」

    武闘家「アタイが言ってるのは、“勇者にだって選ぶ権利がある”。そういうことだよ」

    魔法使い「……で、でもっ!」

    武闘家「でももへったくれもないって言ってんだろ!」バンッ

    魔法使い「……っ!」ビクッ

    武闘家「いなくなってるんだよ……リーダーが……どうすんだよ……これから」

    僧侶「メソメソしたって仕方ないですよぉ~」

    武闘家「だ、誰がメソメソしてるって⁉︎」

    僧侶「私には、武闘家さんが一番ショック受けてるように見えます~。ほかのお二人は、ポンコツさんなので実感がないかもしれないですけどぉ」

    戦士「う、うむ。言われてみれば、先ほどはきつく言いすぎたかもしれん」

    魔法使い「……」

    ――ドォーーンッ ドォーーンッ――

    武闘家「なんだ……?」パラパラ

    戦士「天井からホコリが……それに、かなり離れてるが音が聞こえる」

    魔法使い「マッスルタウンの花火?」

    戦士「バカいえ。そんな大規模なものでは……それに断続的に続いている」

    武闘家「向こうの方角だね。空が……? 雨雲?」

    僧侶「さっきまで曇ってませんでしたのにぃ~……これって、まさかぁ、あの魔法ではぁ?」

    戦士「僧侶、なにか?」

    僧侶「予想が正しければ勇者様はまだ数キロ先にいらっしゃいます~。追いかけますよぉ~」

    209 = 15 :

    【ミンゴナージュの村~ 荒野】

    勇者「あっぶぇなぁっ!」ヒョイ

    サキュバス「危ないで済んでるお前はなんなんだ! すこしは攻撃したらどうっ⁉︎ それか、当たりなさい!」ブンッ ズォッ

    勇者「わろたww当たるバカがいるかよww」

    サキュバス「……バカ?」ピクッ

    勇者「むっ? いや、言葉のあやで」

    サキュバス「バカにしたのか? 王の前で、一族を……?」ゴゴゴッ

    勇者「(煽りすぎたか。顔真っ赤やで)」

    サキュバス「この私をおおおおおっ!! 誰だと思っているかぁぁああッ!!!」バサァッ

    勇者「……ぬっ⁉︎」グッ

    サキュバス「――……“誘惑の波動”」キィィィッ

    勇者「な、なんだ? あり?」ガクガク

    サキュバス「どうした? 勇者よ、下等な人間よ。膝が笑っておるぞ」

    勇者「ぬぐっ、ち、力が、抜ける」ガクッ

    サキュバス「そうだ! 膝をつけ! それこそが王たる私にふさわしい姿勢! バカにするなど万死に値するッ!!」キッ

    勇者「ま、まずいぞ、これ」ドサッ

    サキュバス「リリスの報告はただしかったようね。ねぇ、なぜ私が淫夢の王になれたと思う?」

    勇者「し、しらないけど」ググッ

    サキュバス「それは、魅惑の魔眼を開花できたから。この魔眼を開花するには膨大な魔力を必要とするの。体力もね……でも、効果は絶大」

    勇者「どんな、チートなんだ」

    サキュバス「どんな強者であっても、見つめられると私の意のままに操れる」

    勇者「そ、それはまた、ありがちな能力で」ググッ

    サキュバス「それだけじゃないわ。意のままに作り変えることができる。過去も未来も」

    勇者「……?」

    サキュバス「現在は、過去と未来の中にあるのよ。普遍的なものではないから。あなたが成り立っている過去、家族、全てを忘れられたら……?」

    勇者「意味が、わからん」

    サキュバス「別の人間になってみる?」

    勇者「な、に……?」

    サキュバス「リリスも使ったかもしれないけど、あの子はまだ開眼できていなかったでしょうから。……勇者よ、あなたは今から勇者ではない」キィィィン

    210 = 15 :

    勇者「……」フラァ

    サキュバス「そう……いい子ね。あなたはもう勇者ではないのよ」

    勇者「勇者じゃ、ない」スゥ

    サキュバス「ただの青年。疲れたでしょう? 人間たちの御輿に担がれるのは」スタッ

    勇者「でも、僕は、みんなが期待してるから」

    サキュバス「(深層心理がでてきてる……)……いいのよ。忘れて。魔族になりましょう」

    勇者「だめだよ、そんなのっ! 僕が、僕がやらなくちゃ……!」

    サキュバス「……言うことを聞きなさい」キィィィン

    勇者「うっ、あ、あぁっ」ガクガク

    サキュバス「いい? あなたは――……勇者じゃない」

    勇者「わかった……」ビュッ

    サキュバス「……っ⁉︎ き、消えたっ⁉︎ そ、そんな、どこに……っ⁉︎」

    勇者「……こっちだ。ウスノロ」ビュッ ブンッ

    サキュバス「……っ! う、うしっろぉ……っ⁉︎ ぎゃあっ」ドゴーーンッ

    勇者「……」スッ

    サキュバス「……う、うぅっ」パラパラ

    勇者「……僕は、勇者じゃない」バチィ バチバチィッ

    サキュバス「くっ、な、なんだ……っ⁉︎ 今の一撃は! 今のスピードは! パンチは! わ、私の障壁が……っ!!」ゾワッ

    勇者「お前を殺すぞ……」

    サキュバス「あ、雨雲が……勇者の頭上に。いつのまに。……やつが作ってるのか⁉︎」ギョッ

    勇者「ギガ……」バチィッ バチバチィッ

    サキュバス「ひ、ひぃっ⁉︎」アタフタ

    勇者「ギガ・デイン!」バチバチィ ピシャン

    サキュバス「――……ギャぁあああああっ!!」バチバチィ

    勇者「まだまだ……!」バチバチィ

    サキュバス「うがぁぁぁぁあッ!! こ、こんなもの、こんなぁっ、ギャあああっ!!」バチバチィ

    勇者「……う、うぅっ」ピタッ

    サキュバス「ああァァッ――……あっ、あっ、うっ」プス プス

    勇者「だ、だめだ。こんなの……」

    サキュバス「うっ、うっ、一瞬で、障壁が、すべて……こ、こんな……こ、こいつの牙は……ルビスめ……隠していたのかぁ……!」プス プス

    勇者「」ドサッ

    サキュバス「き、気絶した、のか。じょ、冗談ではない、ぞ。我を失っていたとは、いえ……それは、本来持ってる力をふるっただけ、のはずっ」ズリ ズリ

    勇者「」

    サキュバス「息の根を止めねば……! こ、こいつの力は……魔王に、匹敵する……ッ! 友好などと……なまっぬるい話ではない、我が王の不安は、正しい……ッ!」ズリ ズリ

    勇者「」

    サキュバス「こいつは、今っ、ここでぇ、殺しておかねばならないッ……!」ブンッ

    211 = 15 :

    サキュバス「――……なんの、なんの」ズワナワナ

    ハーピー「……」バサッバサッ

    サキュバス「なんのつもりだっ!! ハーピーッ!!」クワッ

    ハーピー「……すミません」スタッ

    サキュバス「魔族語でよいわ! 担いでる勇者を連れてさっさと降りてこい!! なんならお前が息の根をとめろ!!」

    ハーピー「……」チラッ

    勇者「」

    ハーピー「この者の命、私が預かります」

    サキュバス「ばっ⁉︎ バカなことを言うなっ⁉︎ すぐに出てこれたということは、お前も見ていたんだろうが!」

    ハーピー「転移の魔法陣で送ります。サキュバス様であれば、一命はとりとめるでしょう」

    サキュバス「だめだ、だめだだめだだめだぁッッ! 今すぐ殺せ! やれ!! なぜ人間を助ける! 魔族だろうが!!」

    ハーピー「魔族、だから、です」

    サキュバス「な、なにを世迷言を……」

    ハーピー「誇りがあるからっ! この者は、必ず私が殺します」

    サキュバス「中級のお前なぞに敵うものか! 一瞬で消し炭にされるぞ!! 私の姿を見よ!!」ズリ

    ハーピー「そう、かもしれません」

    サキュバス「獣王に報告するぞ⁉︎」

    ハーピー「追い、だされ、ました」

    サキュバス「~~~ッ!! この馬鹿者がっ!! 誘惑の波動ッ!」キィィィ

    ハーピー「ご無理をなさらない方が。今は力を回復に回すのです。……本当に、死んでしまわれます」

    サキュバス「くっ、おのれぇぇえええっ!! 力が……!」ガクッ

    ハーピー「私は、魔族にも、人間にも、属さぬ身。しかし、魔族である誇りは失っていません」

    サキュバス「な、なぁ? そいつを殺せば、クチを聞いてやろう! 獣王との仲をとりもってやろう!」

    ハーピー「それもまた、然り」

    サキュバス「か、かたいことを言うな! 我らは魔族だろうが!」

    ハーピー「ご達者で。獣王さまにもよろしくお伝えください」スッ

    サキュバス「ハァァァピィィィッッ!! 許さんぞ!! 貴様の一族! 家族! 親兄弟全ての魂を抜き去ってやるっ!! 魔王様にも報告して、未来永劫地獄の業火で焼かれ――ッ!!」スゥーー

    ハーピー「はぁ……ばいばい。サキュバス」

    勇者「」

    ハーピー「……これで、貸し借りなしよ。お前は、勇者は私が必ず殺す。もっと強くなって。命は私のものだ」バサッバサッ

    212 = 15 :

    【一時間後 荒野】

    魔法使い「な、なによ、これ。地形変わってるんじゃないの? 隕石でも落ちてきた?」ゴクリ

    戦士「足場がかなり脆くなってる! 踏み外して足をくじかないように気をつけろよ!」

    武闘家「……」タンッ タンッ

    僧侶「ぶ、武闘家さん待ってくださぁ~い。そんなに軽々と超えられませんよぉ~」

    武闘家「爆心地にいるはず。どこだ……」キョロキョロ

    戦士「焦げ臭い匂いがする。枯葉が焼かれているのか」

    武闘家「……」キョロキョロ

    魔法使い「かすかに魔力の残り香を感じる……戦ってた? ここで?」

    僧侶「ふぅ、ふぅ。よいしょっうんしょっ」カラカラ

    武闘家「いたっ!」タンッ タンッ

    勇者「」

    武闘家「おいっ! 勇者!!」ダダダッ

    戦士「ん⁉︎ 勇者? おぉーい! 武闘家! そっちに勇者がいるのか⁉︎」

    武闘家「身体が、熱い……! 僧侶! こっちだ! 早く来い!!」

    僧侶「そ、そういわれましてもぉ~。急いでますよぉ~」

    武闘家「……」ピトッ

    僧侶「到着~おでこをくっつけられてますけどぉ、熱があるんですかぁ?」

    武闘家「あぁ、かなり熱い。診てやってくれ」スッ

    僧侶「わ、私は医者じゃありませんので診断はぁ。とりあえず、回復魔法をぉ。ベホイミ」ポワァ

    勇者「」

    僧侶「キアリク」ポワァ

    勇者「」

    僧侶「キアリー」ポワァ

    戦士「よいせっと。……ん? 勇者どうしたんだ?」

    魔法使い「せ、戦士、手を貸して」

    僧侶「……これは、まずいわ」

    戦士「まずいって、なにが?」

    僧侶「武闘家さん! 勇者様を担いではやく村に戻るのよ!」

    武闘家「えっ、あ、ああ」

    僧侶「はやく! 貴女の足が一番はやい! 村に帰ったら氷水につけたタオルで冷やして!」

    戦士&魔法使い「……」ポカーン

    僧侶「なにボサっとしてるのよ! 急げっつってんだろ!! ロッドでぶん殴るぞコラァ!!」

    213 = 15 :

    【数時間後 村娘の家】

    僧侶「……いま、タオルをとりかえますね」スッ チャポン

    勇者「Zzz」スヤァ

    戦士「な、なぁ。そ、僧侶、さん?」

    魔法使い「沈痛な表情浮かべてるところ悪いんだけど、さっきの、言葉使いって?」

    僧侶「なんですかぁ?」

    魔法使い「ええぃ! まどろっこしい! 素は違うんじゃないの⁉︎」ビシッ

    僧侶「なんのことでしょお~?」

    魔法使い「……二重人格とかじゃ、ないわよね?」

    武闘家「アンタたち、今は勇者だろ。僧侶、どうなのさ」

    僧侶「知恵熱、みたいなものでしょうか~」

    戦士「知恵熱? というと、詳しい原因がわからないという、赤ちゃんがよくなるあの?」

    僧侶「そうですよぉ~。びっくりしちゃったんでしょうねぇ」

    魔法使い「びっくり……?」

    武闘家「普段から慣らしておかないからってことか」

    戦士「なんで武闘家は合点がいったみたいな顔してるんだ」

    魔法使い「……?」

    武闘家「……心配なさそうね」

    僧侶「はい~。一時はどうなることかと思いましたが、たいしたことなくてなによりですぅ」

    武闘家「外で風に当たってくる」

    魔法使い「ね、ねえっ! 私達だけ置いてけぼり⁉︎ 勇者はなににびっくりしてんの? 荒野のあの惨状は⁉︎」

    僧侶「さぁ~。なぜなんでしょうねぇ」

    戦士「……んー?」

    214 = 15 :

    【ミンゴナージュの村 翌朝】

    勇者「あぁ~よく寝た。なんだかやけに気分がスッキリしてんな。ストレス発散でもしてきたような……」

    僧侶「Zzz」スヤァ

    勇者「俺の膝に顔を置くとは100年はやい……あり?」

    魔法使い&戦士&武闘家「Zzz」スヤァ

    勇者「なんでこいつら座ったまま寝てんだ? 布団なかったのか?」

    僧侶「ん……あっ」ゴシゴシ

    勇者「お、おはよう」

    僧侶「おふぁようございますぅ~」

    勇者「な、なぜにみんな座ってんの?」

    僧侶「昨日はあまり寝れなかったのでぇ~。深夜遅かったですしぃ」

    勇者「あ、あぁ。……あれ? あの後俺どうやって帰ってきたんだっけ」

    僧侶「お疲れ様でしたぁ」ペコ

    勇者「なにが……?」

    武闘家「ん、おっ、目が覚めたのか……ふぁ~ぁ」ノビー

    勇者「ああ、おはよう」

    武闘家「今日出発すんだろ? アタイは顔洗ってくるよ。あと、あんまり無理すんなよ」スッ

    勇者「あ、ああ」

    僧侶「勇者さまぁ、あらためてぇ、不束者ですが、これからもよろしくお願い申し上げますぅ」ペコ

    勇者「……俺死ぬの? 優しくされると不安になっちゃうんだけど」ハラハラ

    215 = 15 :

    【淫夢城 回復室】

    サキュバス「ぷはぁっ……ここは……?」バシャァ

    リリス「さ、サキュバス様ッ!! よ、よかった! 瀕死の状態で帰ってきてから気を失っていたんですよぉ!!」ホッ

    サキュバス「そうか、生命のスープにつかっていたのか」

    リリス「す、すみません。生臭い匂いがお嫌いなのは存じていますが、この回復法が細胞を傷つけないので」

    サキュバス「障壁の回復はまだのようね……」

    リリス「な、なにがあったんですか? あんなボロボロの状態になっていたなんて。あっ、タ、タオルです」ササッ

    サキュバス「特別収集会議をすぐに開く。各城に伝達を。魔王様には、私が直々に出向く」フキフキ

    リリス「は、はいっ! ただいま!」バサッ

    サキュバス「……おのれッ……許さぬ……っ!! 許さぬぞっ!! ハーピーッ!!」クワッ

    216 = 15 :

    【ミンゴナージュの村 入り口】

    勇者「さて、必要なものは買ったし。出発すっかね、みなさん」クルッ

    戦士「あ、あのだな。勇者」

    魔法使い「べ、べつにっ! あんたのためになんか」

    勇者「お前ら起きてからそればっかりだなぁ、なにを拾い食いしたんだよ」

    魔法使い「……こ、こいつがこんなやつだから……!」

    僧侶「くすくす。おふたりはですねぇ、昨日言いすぎたんじゃないかと気にしてるんですよぉ」

    勇者「なにをだよ」

    戦士「そ、それはその。魔族を逃した時に」

    勇者「あ? ……あー! そんなことあったなそういや」

    魔法使い「ちょ、ちょっとだけ! きつく言いすぎたかなって」

    勇者「いや、俺こそすまん。考えが浅くて」ペコ

    戦士「や、やはり、気にして……」

    勇者「ばぁ~~~っかじゃねぇの?」

    魔法使い「……」

    勇者「思わず有名なコラ画像貼りたくなったわ。あぁ~んなもん気にするかよ。俺は煽り耐性鍛えられてんだ」

    魔法使い「……そ、そう」プルプル

    勇者「落ちこんでると思ったのw やばいねw」

    戦士「やはり、私が間違っていたようだ」スラッ

    勇者「お前らはもうちょっと煽り耐性つけたほうがいいと……」

    魔法使い「メラミッ!!」ボッ

    勇者「当社比50パーセント威力アップ!」ササッ

    戦士「根性を叩き直してくれるッ!」チャキ

    武闘家「はぁ……おぉ~い勇者ぁ。馬車に荷物積んだよー。行くんならさっさとしろよー」

    勇者「まて! 殺気が本物だろ! 待てって! 落ち着け! 冗談だってば!」ヒョイ ヒョイ

    僧侶「次の街はぁ、どこなんでしょうねぇ」

    魔法使い「ヒャド!」カキンッ

    勇者「待てッ! そこはケツ! アーーーーッ!!」

    217 = 15 :

    【魔王城 付近 沼地】

    魔王「――それで、終わりか」

    サキュバス「我が王よ。私が間違っておりました!!」

    魔王「で、あるか」

    サキュバス「魔王様は勇者が架け橋になると不安がっていましたが、それとはまったく別ッ!! 不安は別の形で正しかったのでございます!!」

    魔王「ふぅ……で、あるか」

    サキュバス「特別招集会議をすでに呼びかけております! 今すぐに万を超えるモンスターをかき集め、勇者を滅ぼさなければ!」

    魔王「で、あるか」パサッ

    サキュバス「き、聞いておられますかっ⁉︎ 沼地のマドハンドに餌をやっている場合では……」

    魔王「ピーピーピーピーと」

    サキュバス「ハッ!? し、失礼。取り乱してしまい」

    魔王「お前も種族の王。であれば、冷静さを失わぬことだ。足元をすくわれるやもしれんぞ」

    サキュバス「お、おそれながら我が王よ。勇者は魔王様に匹敵を――」

    魔王「それ以上は許さぬ。二度はないぞ」ゴォッ

    サキュバス「ひっ⁉︎ ま、魔王様の波動……!」ゴクリ

    魔王「そうか。遂にやつを見つけたか。万里先を見通す水晶でも見つけられなかったやつを遂に……!」

    サキュバス「皆が、種族達の王が魔王様をお待ちでございます」

    魔王「勇者……! 面白い、貴様の伝承が真実であれ、実力者であれ、余は勇者の全てを否定してやる!」

    サキュバス「我らの王よ。絶対的な神よ。すべては、あなた様の御心のままに」

    218 = 15 :

    ~~第2章『ミンゴナージュ村のタタリ』~~


    219 :

    乙。
    勇者の闇がどんどん深くなる気が…

    220 = 15 :

    これにて2章完。
    ど直球に王道突き進んでます。レスくれた方々ありがとうございました。見てる人がいると思うと励みになります。

    223 :

    続きはよ

    224 :

    おつおつ
    いいキャラしてるわ

    226 = 223 :

    気がついたけど勇者って実は良い人演じてるだけってことか?
    勇者じゃなくなったら殺しにかかったのは・・・墓を作ったりしてるのも勇者である義務感から?
    カンフーマスターが言ってたこととか全部繋がってるな

    227 :

    今後の展開についてはコメントを差し控えます。

    SSをエゴサ(自分のこと調べること)してみると
    、有り難いことに某まとめブログさんにまとめられていたました。
    少しでも多くの目に触れる機会が増えて大変嬉しく思っております。

    ・二章について
    導入(旅立ち~仲間加入)である一章と比べ二章は、これまでの基本路線は守りつつ
    話に広がりを持たながら伏線要素を散りばめないといけませんでした。
    安易にバトルをやりすぎたのはどうかなと自分では思います。
    ただ、どこかしらで必要なのでここでやっちゃった感じです。

    三章は少し時間あけようかどうしようか迷ってます。
    読む人も書く人も、長いSSになると次第に飽きてくるのが難点でございます。

    228 :

    作者の思う通りに書けばいいよ
    外野の声は気にしないで

    229 :

    時間空けると読む奴減る可能性もあるぞ

    231 :

    娯楽や暇つぶしでSSは存在しているので飽きさせないで読めるのが一番いいんですけどね。
    書いてる側としてはプラモデル組み立ててるような感覚として書いてます。
    構成や見せ方を考えながら書くのが難しく、また楽しくもありって感じです。
    頭の中で場面場面が思い浮かぶようなセリフになっているはずです。

    今読んでくださってる方々は「なんかあるぞ、読んでみるか」「つまらん」というかたも含め
    ほかには「続きが楽しみ」と読みたくて読んでる方がもちろんいると把握してて、待っている状態だと思います。

    なのでそういう人達向けに続けたいと思います。
    三章は今日の午後あたりからスタートします。

    232 :


    今はなろうとかハーメルンとかが流行って定着してるから台本形式のSSはすっかり廃れてしまった
    あと運営の放置のせいってのもある
    昔に比べりゃ人は激減してるけど待ってるよ

    233 :

    【ダーマ神殿 聖堂】

    大司祭「な、なぜ勇者様の目に枝が被っているものしかないのだね」

    神官「それがそのぅ、投影機で撮影しようと思ってもこうなってしまいまして」

    大司祭「これではまるで犯罪者ではないかっ! 指名手配でよくあるあの!」

    神官「す、すみませぇ~ん。機材が重くてぇ、勇者様を撮影するたびに移動するのが大変でぇ」

    大司祭「……うぅむ。まぁよい。こちらに到着してから改めて、撮影させてもらおう」

    神官「は、はいぃ~」シュン

    大司祭「それで、定期的に伝書鳩はきているのか」

    神官「ちゃぁ~んと来ていますよぉ」

    大司祭「真面目に仕事をしとるようだな」

    神官「かわいそうですよぉ~。あの子は立派に改心いたしましたー」

    大司祭「才能はピカイチなんだがなぁ。あのはねっかえり娘は」

    神官「で、ですからぁ~、今はそんなことありませんってばぁ」

    大司祭「人はそう簡単には変わらん。幼い頃、この大聖堂にきてからは喧嘩ばかりおこしていたではないか。神官も覚えておろう?」

    神官「は、はぁ。それはぁ」

    大司祭「“ダーマの殴り僧侶”“ロリヤンキー”。通り名がいくつあったことか。ワシは何度も恥をかかされた」

    神官「くすくす。大司祭様のパンツにワサビをぬったこともありましたかっけぇ」

    大司祭「あ、あれは……今思い出してもシャレになっとらん」タラ~

    神官「芋虫からサナギへ。そして蝶になりはばたいてゆくのですぅ~。私たちが知らない内に」

    大司祭「淑女になっていればいいがなぁ。お前の口調をマネだしてからは大人しくなったが」

    神官「あの子もそういうお年頃だということですわぁ~」

    子供「司祭さまっ! 賛美歌の準備ができました!」

    大司祭「おお~もう済んだのか。えらいぞ」

    子供「えへへっ! みんなはあちらに!」ススっ

    大司祭「うむ。それでは子供達よ――」

    子供達「はーーいっ!」

    大司祭「――……両の指を絡め、女神ルビス様を讃える唄を。この世に祝福の光、あれ」

    喜び、それは、美しき神々の閃光。楽園からの乙女。

    われらは熱情に酔いしれて、汝の聖殿に踏み入ろう。
    汝の魔力は世の習わしにより冷たく引き離されたものを再び結び付。
    勇者の優しき翼のもと、全ての生物は兄弟となる。

    神官「(僧侶。勇者様の力に精一杯なりなさい。お務めを果たすのです。祈りましょう。私も、あなた方の旅の無事を祈って……)」

    234 = 15 :

    【ミンゴナージュの村 ~ 森林 馬車の中】

    僧侶「ふぅ~」パカっ

    魔法使い「……なに? それ。手鏡?」

    僧侶「はい~。これは私の大切な方からいただいたものなのですぅ」

    戦士「故郷か、親からの餞別品か?」

    僧侶「いえ~。私、親はおりませんのでぇ」

    戦士「そうなのか。亡くなられた、とか」

    僧侶「いえいえ~。捨て子だったのですよぉ。ほらぁ~、よく聞くでしょぉ~? 教会に赤ん坊の入った籠をおくとぉ」

    魔法使い「あ、あんまり、聞かない」

    僧侶「そうですかぁ? 教会は駆け込み寺的な場所でもありますからねぇ~。もしおふたりが無計画に子供を産んで、どうしてもとなったらぁ」

    戦士&魔法使い「するかっ!!」

    僧侶「……でもぉ、残念なことにそうしてしまう親もいらっしゃるのですぅ」

    武闘家「親のこと、恨んでないの?」

    僧侶「顔もわからない方をどうやって恨めというのですかぁ?」

    武闘家「なぜ、捨てたのか、とか……」

    僧侶「さぁ~。事情があったのかもしれませんねぇ~、なかったかもしれませんがぁ~」

    戦士「サッパリしてるんだな」

    僧侶「そういうんじゃありませんけどぉ。そういう時期は過ぎ去ったというだけですよぉ」

    武闘家「まぁ、でも、大切な人ができたならいいんじゃないさ」

    僧侶「そうですねぇ~。人は出会いがあり成長していくもの。女神様に感謝せねばなりません~」スッ

    魔法使い「信仰、ねぇ」

    僧侶「耳を澄ませば、今にも聖堂からの賛美歌が聞こえてくるかのようですぅ」

    魔法使い「なんだか、後光が見えるわ。僧侶から」

    戦士「徳を勇者にも少しは分けてやったらどうだ?」

    僧侶「またおふたりはそうやってぇ~。勇者様は私たちが拝むべきお人なんですよぉ」

    魔法使い「聖人君子なら拝みもするけどね。あれじゃあね」

    戦士「うんうん」

    僧侶「いつか、あなた方にも勇者様の御心を察することができるといいですねぇ」

    ガタン ガタン

    勇者「おい、ついたぞ」ヒョイ

    僧侶「はい~かしこまりましたぁ。勇者さまぁ~」ニコ

    235 :

    【森林】

    魔法使い「ついてないじゃないのよ!」スパーン

    勇者「顔はやめて!」ドサ

    武闘家「おかしいと思ったんだ。ミンゴナージュを出発してからそんなにたってないし」

    戦士「うぅん、獣道のせいで車輪がグラついてるな」ギィ ギィ

    僧侶「大工道具は買ってきませんでしたよねぇ」

    勇者「いてて、戦士。車輪持ち上げられるか?」

    戦士「お前はあたしをオンナアマゾネスかなにかと思ってるのか?」

    勇者「ちがうの?」

    戦士「ふんっ」ドゴォ

    勇者「ガゼルパンチッ⁉︎」ドサ

    武闘家「新品の状態でもらったのに。ボロボロじゃないか」

    勇者「う、うぅ、元はといえばお前らが暴れるのが悪いんやろが」

    武闘家「そ、そうだっけ?」

    勇者「あの時にグラつく兆候を作ったのかもしれん」

    戦士「む、無効だ! そうならあの場で指摘すべきだ!」

    魔法使い「馬車には食料もつんであるし、おいてけないわよ。ここに」

    ギャアー ギャアー バサバサッ

    僧侶「モンスターの鳴き声が聞こえますねぇ」

    魔法使い「馬が怯えて逃げ出すかもしれない。勇者、どうする?」

    勇者「うーん。馬は使えるんだからトンカチ買いにひとっ走り行ってくるか」

    魔法使い「私たちはこのまま?」

    勇者「そんなに時間かからんだろ。それに、ここらのモンスターなら襲われても対処できるんじゃね」

    武闘家「アタイがいれば平気だろ」

    勇者「なんでもいいけど。じゃあ、俺が馬にのって行ってくるから」

    僧侶「お気をつけてぇ」

    勇者「俺、無事に帰ってきたらあの子と結婚するんだ」

    魔法使い「誰とよ!」

    勇者「フラグもわからんとはなっとらんやつだ。よっ」ザッ

    「ブルルッ」

    勇者「はいよー、シルバー!」バシッ

    「……」

    勇者「あ、あり? は、はいよー!」バシッ

    戦士「なにやってるんだ。こいつ」

    魔法使い「馬にまで舐められてる」

    勇者「そ、そんなバカな⁉︎」

    武闘家「はぁ……いってこいッ!!」バシィッ!

    「ヒヒィーーンッ!!」ガバァ

    勇者「あっ! そんな、いきなり、はげしっ! らめぇええええ~~っ!」パッパカ パッパカ

    魔法使い「……勇者ってふざけないと死ぬ病気なのかしら」

    236 :

    【森の中】

    勇者「これなら、すぐに森を抜けられそうだな。しっかし、ロケーションが物足りない気がする」パッカパッカ

    ビュッ ズバッ

    「ヒ、ヒヒーンっ!」ズサァ ピタッ

    勇者「うおっ⁉︎ ど、どーどー! な、なんだ今のは。なにかが横切ったよな?」

    スラリン「ピギーッ!」ポヨン

    勇者「このありがちな鳴き声と他のスライムと見分けのつかない姿はっ! お、お前っ! もしかしてスラリンか⁉︎」

    スラリン「ピギーッ!」ポヨン ポヨン

    勇者「お~~っ!! 初めてにして最後の友よ!! はははっ! 元気だったか⁉︎」

    スラリン「ピィッ!」

    勇者「こんなところにいたんだなぁ。立派になって。チ○コの皮も剥けたか?」

    スラリン「ピッ?」

    勇者「スライムってゲルだからないのか? どれどれ」ムニィ

    スラリン「ピィっ⁉︎ ピギーッ!」ボフンッ

    勇者「おうふっ。今のは言葉がわからなくてもなぜ怒ったかわかる気がする……」ドサ

    「ヒヒーンッ!」パッカパッカ

    勇者「あっ! しまっ! ちょ、ちょっと待てよ! どこ行くんだ勝手に! ま、待ちなさい! 待ってくだはい!」

    スラリン「ピー……」

    勇者「い、いってしまわれた。ま、まずいぞ。このままじゃ、あいつらに殺されてまう……!」

    スラリン「ピッ?」

    勇者「す、スラリン。た、助けてくれ!!」クワッ

    スラリン「ピィ?」

    勇者「お、俺は、実は。召使いのようにこき使われとるんだ」

    スラリン「ピッ⁉︎」

    勇者「来る日も来る日もまわりにふりまわされ。足蹴にされる日々……う、うぅ」

    スラリン「ピィ……」ススッ

    勇者「慰めてくれるのか! 心の友よ!」ダキツキ

    スラリン「ピィッ⁉︎」

    勇者「け、決してあいつらがこわいわけじゃないぞ。馬が逃げたのも不慮の事故だ。オレ、ワルクナイ」

    スラリン「ピッピッ」ヌル ポヨンポヨン

    勇者「あ、どこに行くの? 俺を今ひとりにしないでぇ! メンヘラになっちゃうよぉ!」ヨタヨタ

    237 = 15 :

    【茂みの中】

    勇者「ここは? スライムの集会所か……?」ガサガサ

    スライムベス「ピッ⁉︎ ピギィーッ!!」

    勇者「おもっくそ警戒されとるな」

    スラリン「ピィー!」ポヨン ポヨン

    メタルスライム「」ササッ

    勇者「慌てるでない森の住民よ。ワシが危害をくわえるつもりは」

    スライムベス「ピギィー!」ドンッ

    スラリン「ピッ⁉︎」ズザザァ

    勇者「これこれ。やめなさい。浦島太郎の亀さんいじめる子供かお前らは」

    「誰? 誰かそこにいるの?」ガサガサ

    勇者「……今のは、空耳かな? 人間の声が聞こえたような気がしたんだが」

    「あなた、ニンゲン? 私の言葉がわかるの?」

    勇者「やっぱり聞こえる。どちら様で?」

    「下よ、した」

    勇者「下には、スライムしか……」

    「いるじゃない。声は聞こえるだけで見えないの?r

    勇者「んん~?」ジィー

    「まだ見えない?」ボヤァ

    勇者「おお、なんかうっすらと……だんだん鮮やかになってきた」

    妖精「驚いた。本当に見えだしてるんだ」スゥー

    勇者「ああ。今はっきりと見えた。紫の髪で虫みたいな羽があるな」

    妖精「虫は余計でしょ。あなた、本当にニンゲン?」

    勇者「うん、そだよ」

    妖精「ニンゲンには見えないはずなのに。……わかった! 変わったニンゲンね!」

    勇者「なんの違いが?」

    妖精「こんなところでなにしてるの? ニンゲンはここに用なんてないでしょ? 薬草でもとりにきた?」

    勇者「いや、懐かしい友にあってね」

    スラリン「ピッ!」ポヨン

    妖精「えっ⁉︎ ニンゲンと友達なの⁉︎ うそぉっ⁉︎ 信じられない!」

    勇者「むしろ俺人間に友達いないんだ」

    妖精「え? そんなのありえなくない? 実は魔族?」

    勇者「い、いや。そ、その。避けられてたっていうか」

    妖精「いじめられてたの?」

    勇者「違うよ! 俺はひとりでいたかったの!」

    妖精「……隠キャ?」

    勇者「フヒヒ。よ、世の中が悪いんだぁ! 俺は悪くねえ……」ドヨーン

    妖精「はぁ……変なニンゲンね」

    238 = 15 :

    勇者「ここに住んでんの?」

    妖精「ええ、そうよ。この森は精霊様のお膝元ですもの」

    勇者「へー、そうなんだ。村からあまり離れてないのに」

    妖精「ミンゴナージュの村? もともとあの村はここにいる精霊様を祀ってたの」

    勇者「サキュバス祀っとったぞ」

    妖精「ニンゲンは得体の知れないものに出会うとすぐに信仰を鞍替えするのよね。なにもしてくれないからっていって」

    勇者「生きるのに必死なんじゃない?」

    妖精「自分たちのことばっかりよ。ニンゲンなんて。集団で生活するから周りの影響に流されやすいでしょ」

    勇者「うん、まぁ」

    妖精「感情が不安定だしね。って、ニンゲンにいってもしかたないか」

    スラリン「ピッ」ポヨン

    妖精「……スライムが人間の膝の上に。そんなの聞いたことない」

    勇者「こいつはな。昔怪我したところを助けてやったんだ」

    妖精「へぇ」

    勇者「それからだよな? 仲良くなったのは」

    スラリン「ピィッ!」

    妖精「それにしたって異常よ。恩を感じるなんて」

    勇者「細かいことはいいんだよ。こうなってんだから。なー?」

    スラリン「ピィー!」

    妖精「私の姿が見えるし……ねぇっ、あなたってもしかして、勇者ってやつじゃない?」

    勇者「違うよ。俺は」

    妖精「なぁーんだ残念。勇者なら面白いもの見せてあげようと思ったのに」

    勇者「……ちなみにどんなもの?」プニプニ

    スラリン「ピッピッ」スリスリ

    妖精「“ロトシリーズ”って聞いたことない?」

    勇者「ん……?」ピクッ

    妖精「何代かに渡る勇者の物語。その石碑があるんだよ」

    239 = 15 :

    【森林 祠】

    勇者「……これが」スッ

    妖精「もー! 勇者じゃないくせに!」

    勇者「初代ロト……二代目、三代目……」

    妖精「当時の魔王との争いが描かれているみたい。ほら、そこに描かれてるのが不死鳥ラーミアにまたがってる」

    勇者「勇者って、なんなんだ?」

    妖精「えっ?」

    勇者「女神の加護。先代……これまでの勇者も同じように?」

    妖精「よくわからないけど、血統があることはたしかね。勇者である一族は、決められた家系から排出されてきたみたい。唯一違うのは、初代ね」

    勇者「古代語で読めないな」ザリ

    妖精「うーんとね、曖昧なのよ」

    勇者「曖昧?」

    妖精「そう。ひとつひとつの繋がりがね。もしかしたら別の時間軸の話かもしれない」

    勇者「は、はぁ?」

    妖精「例えば、私がりんごを落とすとするわよね。それを拾ったAである私と、拾わなかったBである私。そうした感じでAとBが分岐しているの」

    勇者「つまり、別の世界とか?」

    妖精「なくはないってだけ。全部繋がってるのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。だって、大昔の話ですもの」

    勇者「魔王、倒してるなら、平和になってるはずだもんな」

    妖精「どうなんだろう。よくわからない。魔王ってね、定期的に復活するって書いてあるよ?」

    勇者「なんじゃそら」

    妖精「もちろん、数千年とか数万年とか長い感覚があくし、同じ魔王ってわけじゃないみたいだけど」

    勇者「今の魔王も復活してきてんのかな?」

    妖精「今代の魔王は先代から継承する形だったらしいよ。だから、復活はしてないんじゃない?」

    勇者「ん? ……って、話は戻るが勇者って結局なんなんだよ」

    妖精「さぁ? だからよくわかんないの」

    240 = 15 :

    勇者「父上も……? 父さんは勇者の家系なんて聞いたことがない。それに、“聖痕”とはいったい」ボソッ

    妖精「ほら、こっちこっち! これ見て!」

    勇者「これは……?」

    妖精「ルビス様だよ!」

    勇者「ルビス? ……これが……? そんな、これじゃまるで」

    妖精「? なにに驚いてるの?」

    勇者「こ、これが女神……?」

    妖精「あー! そういうこと? チッチッチッ。違うんだなぁ。魔族も人間もなぁーんだか勘違いしたままだけど」

    勇者「勘違い……」ザリッ


    妖精「――……そうだよ! だってルビス様は精霊王なんだもん!」

    241 = 15 :

    【森の中 馬車】

    魔法使い「あーあ、暇だなぁ。モンスターでもでてこないかなぁ」

    戦士「鍛錬にもなるしな。どうだ? 武闘家。一戦交えないか?」

    武闘家「同じ相手とばかりやるのはやめたほうがいいよ。慣れすぎちゃうから」

    戦士「む、そ、そうか」シュン

    武闘家「素振りでもしてればいいじゃないのさ」

    戦士「相手がいないとどうにもなぁ。あたしは実践型なんだ」

    「ヒヒーーンッ」パッカパッカ

    魔法使い「ねぇ、見間違い? こっちに向かってくるのってどこかで見覚えのある馬じゃない?」

    武闘家「ちぃっ!」シュバッ

    僧侶「……勇者さまが乗っていませんけどぉ」

    戦士「武闘家! 傷つけるなよ!」

    武闘家「わかってる!」シュタッ

    「⁉︎ ヒヒーンッ⁉︎ ブルルッ!!」バタンバタン

    武闘家「どぅどぅ、落ち着いて……大丈夫、こわくない」ナデナデ

    「……ブルッ」タンタン

    魔法使い「またあのバカは。どこでなにやってるのよ」

    僧侶「どうしましょうねぇ~連絡手段がないので~」

    武闘家「アタイが村に戻って確認してくる! アンタ達はここで待ってな!」グイッ

    戦士「お、おい。武闘家」

    武闘家「はぁっ!」バンッ

    「ヒヒーン!」パッカパッカッ

    僧侶「――……武闘家さんの行動力は見習わないといけませんねぇ」

    242 = 15 :

    【森林 祠】

    勇者「ルビスは、神じゃない……?」

    妖精「そもそも神の定義って、絶対的なものを指す場合だってあるでしょ? それだけルビス様がすごかったって意味でもあるけど」

    勇者「神と思えるような能力を持ってた、とか?」

    妖精「そのほかにも、“マネできない偉業を達成した”とかね。伝説のさらに上にあるのが神ってもんよ」

    勇者「じゃあ、ここに描かれてるのは、神と崇められるの前の?」

    妖精「そう、精霊王ルビス様その人! いつのまにか女神っていうのが定着しちゃってるけど、精霊を束ねるお方なんだよ!」

    勇者「も、もしかして、まだ、生きてたり?」

    妖精「うん? ばっかだなぁ」

    勇者「そ、そうだよな。生きてるはずない――」

    243 = 15 :

    妖精「あったり前じゃない! ルビス様は今もピンピンしていらっしゃるよ!」

    勇者「は、はぁっ⁉︎ い、いいいっ生きてる⁉︎」

    妖精「そだよ?」キョトン

    勇者「え、ええ……じゃ、じゃあ、俺のケツにある聖痕っていったいいつ……そもそも何故俺に。わ、わけがわからなすぎるぞ」

    妖精「直接聞いてみたら?」

    勇者「どうやって? 会える方法があるのか? というか、今どこにいるんだ?」

    妖精「……時のハザマ。そう呼ばれるところにいらっしゃるよ」

    勇者「時の、ハザマ?」

    妖精「だけど残念! 特殊な結界で往来の制限がされてるから行けないんだ!」

    勇者「だけど、制限ってことは、行く方法はあるってことだよな?」

    妖精「あるよ? 勇者じゃないと無理だけど」

    勇者「ちなみに、勇者だったらどうやって行くんだ?」

    妖精「通行手形があるでしょ?」

    勇者「どこに? どうやって手に入れるんだよ」

    妖精「手に入れるぅ? 身体に刻まれてるでしょ?」

    勇者「……あっ! そ、そうか! 聖痕か⁉︎」

    妖精「んー、たぶんそれ」

    勇者「聖痕は、目印じゃない。通行証だったのか」

    妖精「勇者じゃないのに知ってどうするの?」

    勇者「会ったら教えとく。それで、どこから? 聖痕があると仮定して」

    妖精「鏡から」

    勇者「どこの? 主語がない」

    妖精「クイーンズベルのお城」

    勇者「く、くくくっクイーンズベルっ⁉︎」

    妖精「そこがゲートになってるの」

    勇者「な、なななっなんでそんなところに」

    妖精「ルビス様ゆかりの土地らしいから」

    勇者「く、クイーンズベルといえば……」ポワンポワン

    『オーッホッホッ! オーッホッホッ! オーっげふっ、ごほっ、おぇっ、む、むせたんですの……うぇっ』

    勇者「こ、こいつがいるところじゃないか……」ガタガタ

    妖精「大丈夫? 顔青ざめて震えてるけど。なにか思い出したの?」

    勇者「だ、だがしかし、戦わなくちゃ現実と!」ゴソゴソ

    妖精「?」

    勇者「じゃじゃーん! 世界地図ぅ~!」ピロリン

    妖精「わっ、それってニンゲンの? けっこう精密なんだねぇ」

    勇者「北から迂回しても南から迂回してもダーマまでの距離はほとんど変わらないか……ならば」

    妖精「おっ?」

    勇者「行かねばなるまいっ! クイーンズベルへっ!!」クワッ

    244 :

    今日はここまで。

    246 :

    おつ


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