元スレ勇者「ニートになりたい」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ○
1 :
【勇者宅 自室】
勇者「俺の名前は勇者。なんでも生まれた時に“聖痕”なんてもんがケツにあったお陰で神官は大騒ぎ。王様にまで上告した」
母上「勇者ぁ~! 朝よぉ~! 起きなさぁあ~い」トントン
勇者「そして、扉をノックしているのは我が親の片割れ(妻)。王様から金を積まれて18歳になったら魔王退治の旅へと行かせる約束した……」
母上「寝てるのぉ? 開けるわよぉ?」
勇者「うるさいな! 自己紹介の最中に話しかけないでよママン!」
母上「……あら? 起きてるじゃなぁ~い。ちゃんと返事はしないとぉ~」
勇者「い、嫌だからな! 俺は王様のところなんて行かへんぞ!」
母上「またそんな駄々こねぇてぇ。みんなの希望なのよぉ?」
勇者「希望なんてクソくらえ! 誰が死にに行きたいもんか!」
母上「それにぃ、お金も~」
勇者「やっぱり金か畜生!」
母上「うふふ~。今日が旅立ちの日ねぇ~」
勇者「いやだ。俺はいやなんだ。なんで俺ばっかり、というか、ピンポイントで俺だけ」
母上「さぁ、朝ごはんできてるから、食べなさい~。下でお父さんも待ってるわよぉ~」
勇者「なぁ、母上。やっぱり、俺には無理だ……」
母上「あらあらぁ~。そんな弱音を吐く子に育てた覚えはないんだけどぉ~」シャキン
勇者「ひっ⁉︎ ほ、包丁を構えるのはやめて⁉︎」
母上「しごきたりなかったのかしらぁ? 親失格でお母さん悲しいわぁ」ユラァ
勇者「た、足りてる! 足りてるよ! いやぁ! 行きたい! 行きたいなぁ! 魔王なんかけちょんけちょん! ほら、こうやって、この枕め! おりゃ!」ボスボス
母上「……」ジィー
勇者「はっ! 魔王なんて楽勝だぜ! 雑魚が!」チラ
母上「そうよねぇ」ニコォ
勇者「……ふぅ」
母上「それじゃあ、下で待ってるからぁ~。はやく降りてくるのよぉ~」ギィー バタン
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2 = 1 :
【勇者宅 居間】
父上「シャオラッ! シャオラッ!」ブン ブン
勇者「母上。つかぬことを聞きますが父上は居間でなぜに斧をふりましておられるので?」
母上「ご近所の武器屋さんから頂いたみたいねぇ。勇者のめでたい旅立ちを祝してってぇ~」
父上「おっ! 起きたか! まったく、旅立ちの日にまで朝寝坊するとは肝っ玉の据わったやつだ! さすが俺の息子!」
勇者「(引きこもりたかっただけなんだけど)」
父上「ガハハハッ!」キラン
勇者「(正直に言ったら斧で一刀両断されそうな気がする)」
母上「貴方もそれぐらいにしてぇ~。今日は家族揃って最後の朝食になるかもしれないんだからぁ」
勇者「不吉なこと言わないでくれる⁉︎」
父上「そうだな……。勇者、立派になって。俺は、俺はっ、ぐすっ」
勇者「ち、父上。泣いてるの? そんな、俺なんかまだまだ」
父上「さ、飯でも食うか」ケロッ
勇者「あー、そうですか。あんたらマイペースだったわ」
父上「ところで勇者。伝えわすれていたが、お前今日からこの家出入り禁止な」
勇者「はぁっ⁉︎ なんで⁉︎」
父上「魔王倒したら入っていいぞ」
勇者「俺の家だろーが!」
父上「おい、テメェ誰に口きいてやがる」ポキポキ
勇者「僕の家です、はい」
父上「早い話が王様に親権を譲った。今日からお前は王様の子」
母上「私たちも涙をのんでぇ~。だって、勇者がそうすれば王族になれるしぃ」
勇者「そんな……」
父上「そして、俺たちも王様に恩を売ってがっぽり、ごほん」
母上「あなたぁ、今度ここの温泉に行きたいわぁ」
勇者「それでいいのかよ!」
父上「……」
勇者「俺を育ててくれたんだろ⁉︎ 俺を生んでくれたんだろ⁉︎ そりゃ親孝行はしてないかもしれないけど」
母上「勇者……」
勇者「父さん、母さん……」
父上「いい」キッパリ
勇者「……っ!」プルプル
父上「いずれお前も大人になる。そうなったら嫁ができ、家庭を持ち、自分の子を持つだろう。そうなった時に、俺の気持ちがわかる。お前のためなんだ」
勇者「……俺の、ため」
3 = 1 :
父上「なんて言うと思ったか!」
勇者「えっ」
父上「ウジウジしてんじゃねぇ! 男だろ! 魔王倒してこい!」
勇者「そんな、無理やり」
父上「世の中なんてもんはなぁ、理不尽の塊なんだ! 社会勉強と思って行ってこい! お前にゃ女神様の加護がついてる!」
勇者「加護って、クジ運なんて一度もよかったことないよ」
父上「あぁん?」キラン
勇者「……わかったよ。俺なんかどうせ、どうせいらない子なんだ。邪魔者なんだろ!」
父上「ようやくわかったか」
母上「あ、あなた……」
父上「黙っていなさい」
勇者「だったらお望みどおり出ていってやるよ!」ガタ
母上「あ、朝ごはん……」
勇者「く……っ! うっ、ぐすっ」ダダダッ バタン
父上「やれやれ……。相変わらず慌てん坊なやつだ」
母上「本当によかったの?」
父上「にこやかに笑って見送る、それができればなぁ。だが、泣いてしまいそうで」
母上「……もう、見栄っ張りなんだからぁ」
父上「あいつも18。いつかは自立しなければならない。信じよう、俺たちの息子を」
母上「(勇者……。辛かったら帰ってくるのよ……)」ホロリ
4 :
【城下町】
勇者「とは言ったものの。どうしたもんかなぁ」テクテク
道具屋店主「勇者! ついに旅立ちだな! 期待してるぜ!」
勇者「あ、ども」ペコ
武器屋店主「おっ、王様に謁見しにいくのか! 頑張れよ!」
勇者「ウース」ペコ
老人「あの頼りない子供が」
勇者「俺って立派に見える?」
老人「……やはり、子供のままじゃの」
勇者「……」ガックシ
犬「ワンワン!」
勇者「いいよなぁ、お前は。なんにも悩みなさそうで」
犬「わん?」
勇者「毎日与えられた飯くって、ゴロゴロして、遊んでさ。俺もそんな生活送りてぇなぁ」ナデナデ
犬「ハッハッ」
勇者「王族になりゃそんな生活……だめか。俺は魔王退治で送りだされちゃうもんな」
兵士「勇者か」
勇者「ん? おや、兵士さんじゃありませんか。いまから出勤ですかい?」
兵士「村人Aみたいな喋り方をするんじゃない。まったく、こいつは」
勇者「俺は元々そんなもんすよ」
兵士「王様に謁見だろう。お前を迎えにいっていたところだったのだ」
勇者「はぁ、それはお疲れさんです。じゃ、俺はこれで」クルッ
兵士「待たんか」ガシッ
勇者「勇者ならあっちにいました」
兵士「三文芝居をするんじゃない。ほら、いくぞ」グイ
勇者「いやじゃ~~~! 堪忍してぇ~~~~!」ズルズル
5 = 4 :
【王城 謁見の間】
王様「ワシが王様でアル」
勇者「はい」
王様「……え? そんだけ?」
勇者「はい?」
王様「もっと、ははーっとか、本日はご機嫌麗しゅうとかないの?」
勇者「子供の頃から知ってるじゃないですか」
王様「あ、そう。……うぉっほんっ、勇者よ! よくぞまいった!」
勇者「(やりたいのね)」
王様「此度の日をどれだけ待ち望んだことか! まずは18の誕生日、おめでとう。祝福するぞよ」
勇者「ありがたき幸せ」ペコ
王様「うむ。と、同時に女神様のお告げどおりの旅立ちの日でもある」
勇者「……」
王様「お主にはこの世界を魔王の脅威から救ってもらわなきゃならん。引き受けてくれるな? 勇者よ」
勇者「いや」
王様「まさかイヤなどとは言うまいて。まさかのぅ」
勇者「あの、ちなみに断ったらどうなるんです?」
王様「税金」ボソ
勇者「え?」
王様「実はの、お主の家だけは税を特別免除しいて、尚且つ、毎月お金を振り込んでいた。勇者という理由での。断れば今までの分を請求する」
勇者「そ、そんな話はじめて聞きました」
王様「まぁ家計事情なんて子供には普通話さんじゃろ」
勇者「(父さんがロクに仕事もせずに毎日過ごせてたのはそういうことか……! クソ親父め!」
王様「ちなみにじゃが、ワシも養子縁組したのは聞いとる?」
勇者「あ、それは今朝」
王様「うむうむ。よって、請求は親にではなく勇者本人にいくことになる」
勇者「なんでだよ!」
王様「だって、実の親とは赤の他人じゃもん。わしも肩代わりするつもりないし。無能の」
勇者「無能って言うな! あの、ちなみに請求っておいくらまん?」
王様「ざっと軽く見積もって300万ゴールドってとこかの」
勇者「さ、さ、さ、さ、さんひゃくっ⁉︎」
王様「18までずっと支給しておったんじゃ。当たり前じゃろ」
勇者「買ってもらったおもちゃといえば竹とんぼだけなのに」
王様「それは1ゴールドじゃの」
勇者「あの、分割とかはもちろんできるんですよね?」
王様「ならん。一括で返納してもらう」
勇者「一括で⁉︎ 無理に決まってる!」
王様「それならば、そうじゃな。やっぱり魔王退治にいってもらうしかないの」
勇者「め、めちゃくちゃや。こんなの」ガックシ
6 = 4 :
大臣「王様、よろしいですかな?」
王様「お、おお。大臣、おったのか。よいぞ」
大臣「失礼致します。勇者よ、話を聞け」
勇者「なんでせう?」
大臣「泣くな。うっとうしい。旅立ちの手引き書を用意した。これ」ゴソゴソ
衛兵「はっ!」ザッ
勇者「手引き書?」
衛兵「受け取れ」スッ
勇者「……向かう場所、ですか」ペラ
大臣「なにはともあれ旅には仲間がつきものだ。アイーダの酒場で仲間を募集しろ。そして次の国に向かうのだ」
勇者「……」ペラ ペラ
大臣「そして――……」
勇者「あ、あのっ! ちょっといいですか!」
大臣「なんだ?」
勇者「この、ダーマ神殿てなんすか⁉︎ 転職できるって書いてありますけど!」
大臣「そのままの意味だ。職とは、女神様により定められた天命。だが、その洗礼を変えることができる」
勇者「行きます! 俺行ってきます!」
大臣「……?」
勇者「急ぐなくては! じゃ、そゆことで!」ダダダッ
王様「お、おい、勇者よ」
大臣「……」
王様「走って行きおった」
大臣「よもや、勇者も転職できると思ってるんじゃないでしょうか」
王様「できんのにのぅ」
7 :
~王宮、王の間~
国王「おお勇者よ! よくz」ゴオッ
側近「陛下!? ウワアアア!」ゴオッ
勇者「おれはゆうしゃになんてなりたくなかった」
勇者「ただひとりで、しずかにすごしていたかった」
勇者「まおうも、おまえたちもじゃまだ」
勇者「ぜんぶもやしてやる」
勇者「ぜんぶはいになれば、しずかになっていい」
勇者「それがおれののぞみだ」
ゴオオオオオオオオオオオオ……
勇者「よし、こくおうたちはぜんぶはいになったな」
勇者「しろのれんちゅうをもやしたら、つぎはまちのれんちゅうだ、そのつぎは」
勇者「あかい、あかい、あかい、あかい」
勇者「ほのおはきれいだ、ぜんぶもえて、しろもとけていく」
8 = 7 :
~勇者の家~
父親「うわあああああああ!」ゴオッ
母親「ゆ、ゆうしゃ、ああああ!」ゴオッ
勇者「もえろ、もえろ、ぜんぶもえろ」
ゴオオオオオオオオオオオオ……
勇者「…………だいぶしずかになったな、おれのせかいはぜんぶはいになった」
勇者「このまま、まちをでて、ぜんぶもやそう」
魔王「勇者よ、よくぞ」ゴオッ
魔王「な、に、?」ゴオオオオオオオオオオオ……
勇者「いきなりうるさいやつだ、おまえもはいになれ」
9 = 7 :
~街外れ~
巫女「ゆ、勇者ちゃん……?」
勇者「なんだ、みこか。なんのようだ」
巫女「神殿にいたら、街が物凄い火事になっているのが、見えて、心配で、わたし」
勇者「しんぱいするな、おれがもやしただけだ」
巫女「えっ、燃やしたって」
勇者「じゃまだから、もやしたんだ」
巫女「えっ? 燃やし、勇者ちゃんが、全部?」
勇者「これからすべてをもやしにいく」
勇者「おまえはしんでんにかえれ、あそこはしずかでいい」
勇者「そしてはたけのやさいをたべ、やぎのちちをのみ、くだものをたべてすごすといい」
勇者「そうだな、しんでんはもやさないでおこう、あそこはうるさくないからな」
巫女「すべて……もやし……」
勇者「じゃあな、みこ。おわかれだ」
巫女「!!」
巫女「だめ!」
巫女「お別れも、燃やすのも、全部だめ!」
勇者「じゃまをするな」
ゴオッ
巫女「勇者ちゃん!」
勇者「ほのおのかべでおってこれないようにした」
勇者「おまえはしんでんにもどれ、おれはあそこはもやさない」
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……
巫女「勇者……ちゃん……」
11 = 4 :
>>7
>>8
>>9
この人まったく知らない人なんでNGID登録で
13 :
えっ面白い展開キターと思ってたのに違ったのか…
どっちかと言うと別人の投稿の方がワクワクして楽しかった
14 :
?勇者「もえろ、もえろ、ぜんぶもえろ」
勇者「ひゃっほーーーーい! 俺の人生はバラ色だぁーー! 勇者とおさらばでっきるぅ~~~! スキップスキップランランラン♪」
この情緒不安定ぶりは草
別人らしいから目瞑っとくけど
15 :
>>13
このスレはリレーやアンカーではないので
名前欄に名前あるみたいなんでその人のが読みたければそちらへお願いします
16 = 15 :
いくつかSSのスレ立てたことありますが無宣言に割り込まれたのは初めての出来事です
面倒なので今後はトリつけます
17 = 15 :
【アイーダ酒場】
戦士「ふっ、ロイヤルストレートフラッシュ」
僧侶「ひぃ~ん、ツーペア。負けましたぁ」
魔法使い「やるじゃない。戦士」
戦士「あたしはポーカーは得意なんだ。それに、僧侶、顔に出すぎだよ」パサ
僧侶「素直って褒めてくれてるんですか?」
戦士「……たしかに、素直なんだろうけど、なんだろう、あざとさを感じるのは」
僧侶「チッ」
戦士「いま舌打ちしたろ⁉︎」
魔法使い「ふふっ、僧侶なんて雑魚よ。ポーカーといえばこの私。大魔法使いであるこのわ・た・し、でしょ」
戦士「なんだ? やるのか? 勝負事なら手は抜かないよ?」
魔法使い「真面目ね。もっと肩の力抜いたら?」
戦士「遊びだからって勝負は勝負だ。下手な言い訳はしたくねぇ」
魔法使い「女のくせに、男みたいな口ぶりして」
戦士「あたしは女を捨てたんだ。そんなの関係ないね」
魔法使い「そこまで言うなら……なにか賭ける?」
僧侶「か、賭け事はだめですよぉ」
戦士「挑発してんのか? いいぜ、乗ってやるよ」
魔法使い「戦士、貴女もどうせ勇者のパーティーに入りたくてこの街に来たクチでしょ?」
戦士「勘違いすんな。勇者ってのがどんなのか見定めてから決めるつもりだ」
魔法使い「ふーん。ま、どうでもいいけど。私もそう。あぁ、そうっていうのは勇者御一行の仲間入りしたいってことね」
戦士「……それで?」
魔法使い「負けたら、候補から降りるってのはどう?」
戦士「なんだと?」ギロ
魔法使い「見てみなさいよ、店の中。私たちだけじゃない。……どこから聞きつけたのか、今日が勇者の旅立ちの日だと知った冒険者で超満員」
戦士「なぁ~るほど。ライバルは減らしたいってわけ」
魔法使い「私の見立てによれば、他は雑魚。あなたは別格。たたずまいでわかるもの」
僧侶「……」
魔法使い「もちろんあなたもね、僧侶」チラ
僧侶「えっ? わ、わわわたしですかっ?」
魔法使い「猫かぶるのをおやめよ。実力者は実力者でグループを作る」
18 = 15 :
僧侶「で、でもぉ~私たちは職も違いますしぃ~蹴落とす必要ないんじゃないですかぁ?」
魔法使い「それもそうだけど、もし少人数しか選ばれなかった時に面倒だもの。私はどうしても勇者についていきたいの」
戦士「なんだぁ? 勇者がへっぽこなやつでもか?」
魔法使い「どんなやつでも、よ。“聖痕”という証拠がある以上、勇者であることに疑いはない。魔王を滅ぼし、魔物に殺された母様の仇を討ちたい……!」
戦士「……よし、わかった。お前についていくだけの理由があるとは察した。だがな、あたしだってただ見るためにここにきたわけじゃねぇ」
魔法使い「えっ、だってあんたさっき」
戦士「あたし達は今日はじめて会ったんだ。そんな奴らに本音を言うはずないだろ」
魔法使い「うっ」
戦士「だが、さっきのあんたの仇という言葉を聞いて気持ちが変わった。あたしは、自分の実力を試すために勇者についていきたい」
魔法使い「修行感覚ってわけ? 遊びのつもり?」
戦士「てめぇ……! 身体中にある傷跡を見てそれ言ってんのか? あたしの決心が遊びだと……?」
魔法使い「……」ゴクリ
戦士「女を捨ててまで武芸に身を打ち込んでるんだ。遊びなわけないじゃないの」ガン
魔法使い「……悪かったわよ」
戦士「僧侶、あんたはどうなんだい?」
僧侶「えっとぉ~、私は神官様に言われてここに来たっていいますかぁ~」
戦士「だったら帰んな。神官様とやらには“選べれなかった”と言えばいいだけ」
僧侶「えっとぉ~えっとぉ~」
魔法使い「イライラするわね、この女。私達がわざわざ本音で話してるのに」
僧侶「でもでもぉ~、貴女達が勝手に話しだしただけって言いますかぁ~」
19 = 15 :
魔法使い「要するに、私達には話しする気ないってわけ?」
僧侶「はうぅ、そんな、極端ですよぉ。女神様も争いは嫌ってらっしゃいますぅ~」
戦士「たしかに……イライラするね。魔法使い、あんたとは気が合いそうだ。僧侶、あんたのその喋り方、なんとかならないのか?」
僧侶「うぅ」
魔法使い「頭悪いんじゃないの? いいえ、悪そうに見えるわよ? 本当に悪いんならお気の毒だけど」
僧侶「……黙って聞いてりゃ調子のってんじゃねぇぞアバズレどもが」ボソ
魔法使い「……!」
戦士「ん? なんか言ったか?」
僧侶「い、いえ~」ニコォ
魔法使い「(聞こえたわよ、やっぱりこいつ)」
僧侶「そ、そうだぁ! ポーカーやるんじゃないんですかぁ?」パン
戦士「あぁ、そうだったな。どうすんだ? 勇者の仲間入りの条件、賭けるのか?」
魔法使い「もちろん。でも、戦士だけじゃないわ。僧侶、あなたも勝負に参加して」
僧侶「え、えぇ? なんで私までぇ?」
戦士「勇者についてく理由がないから参加しても平気だろ」
僧侶「だ、だからぁ。神官様のご提示がぁ」
魔法使い「カード、切るわよ」パサ
戦士「ああ」
僧侶「ひ、人の話を聞いてくださぁ~い」
アイーダ「勝負はする必要ないよ」スッ
戦士&僧侶&魔法使い「アイーダさん?」
アイーダ「トランプをしまいな。集まった猛者ども! みんなよく聞け!! 酒を飲む手を止めてこっちに注目だ!!」パン パン
戦士「勇者がついにくるのか……?」
魔法使い「そのようね」
アイーダ「いいか、勇者は、勇者は……」
僧侶「……」ゴクリ
アイーダ「たった今、旅立った! よって、本日の営業は終わり!!」
店内「は、はああああぁぁぁっ⁉︎」
20 = 15 :
アイーダ「一人で行っちまった! お前らには悪いが、足手まといだそうだ!! 酒代はチャラにしといてやるよ」
戦士「な、なんだと……?」
魔法使い「そ、そんなのって、あり?」
僧侶「……」
アイーダ「あんた達も。ポーカーなんてやる必要ないんだ。荷物をまとめて故郷にお帰り」
戦士「は、はは。なんて野郎だ。一人で魔王退治だと。そんな肝っ玉座ってる男見たことも聞いたこともねぇや」
アイーダ「あん?」
魔法使い「それほどの強者。さすが勇者ってわけか……」
僧侶「勇者様はいつ頃出発されたのですかぁ?」
アイーダ「つい今しがた」
僧侶「ありがとうございますぅ~」ゴソゴソ
アイーダ「おい、あんたまさか」
僧侶「杖は、あ、ここだ。よいしょっと。それでは私はここで~お疲れ様でしたぁ~」イソイソ
アイーダ「ふぅ……やれやれ」
魔法使い「これから、どうしよ。どうしたらいいの」
戦士「……くっ、まだ修行が足りなかったのか」
アイーダ「あんた達は僧侶と一緒に行かなくてよかったの?」
魔法使い「故郷は別々ですし」
アイーダ「はぁ? あんたら気づいてないのかい? あの子、勇者を追いかけていったよ」
戦士&魔法使い「な、なんですって(だって)⁉︎」ガタッ
アイーダ「機転の利く子みたいだね。切り替えの早いというか」
戦士「あ、あいつ! あたしの剣、剣は」カチャカチャ
魔法使い「こうしちゃいられない……!」ガタガタ
アイーダ「(そんなに遠くには行ってないはずなんたけどねぇ。ま、すぐに会えるだろうさ)」
22 = 15 :
【街近郊 平原 ~ ミンドガルドの村】
スライム「ピギーッ!」
勇者「逃げる!」ダダダッ
ベビーパンサー「ガルルッ」
勇者「逃げ続ける!」ダダダッ
スカルナイト「ウガー」
勇者「逃げる勇気!!」ダダダッ
村人「――ミンドガルドへようこそ」
勇者「ひたすらに走っていたら、あっという間に次の街についてしまった」
村人「旅の人。宿はどうするね?」
勇者「あ、うーん。どうしよっかな。一泊いくらです?」
村人「8ゴールドだよ」
勇者「それなら……あれ、あ、やっべ! 家からも城からも慌てて出てきたから金あんま持ってねえ」
村人「なんだ、お兄さん、文無しか?」
勇者「いや、ちょっとはあるはず……」ゴソゴソ チャラ
村人「ひぃ、ふぅ、みーと100ゴールドもないじゃないか。それで全財産? お小遣いじゃなく?」
勇者「まぁ、小遣いみたいなもんすけど」
村人「よくそれで旅なんかする気になったねぇ。すぐに底をついちゃうよ」
勇者「そうなったら、野宿とか」
村人「寝てる間の魔物除けアイテムは一個、80ゴールドだぞ? しかも一回の使い捨て」
勇者「そんなすんのっ⁉︎」
村人「アイテム使わないならせめて、見張り番がいないと、なぁ」
勇者「夜行性のモンスター多いし、寝込み襲われちゃいますもんね」
村人「村の中で野宿なんてしたらつまみだすぞ……ハッ、まさか、流れ者の犯罪者じゃ?」
勇者「えっ、誰が……俺っ⁉︎ ち、違いますよ! 違います!」ブンブン
村人「ふん。で、どうする? 宿に泊まってく?」
勇者「そ、そうします~」シュン
23 = 15 :
【夜 ミンドガルドの村 宿屋 食堂】
勇者「はぁ~、まいったぞ。いきなり資金難になるとは」ペラ
店主「オムライスお待ち」コト
勇者「ダーマの神殿まではどれくらいかかるんだろうか」
店主「ん? お客さん。ダーマ神殿目指してるの?」
勇者「はい?」
店主「ああ、すまんね。独り言が聞こえちまったもんで」
勇者「かまわないすよ、そうです。オムライスうまそっすね」
店主「ダーマっつうとこっから1ヶ月はかかるよ」
勇者「そ、そんなにっ⁉︎」
店主「ああ、ほれ、壁に地図がかかってるだろ。あれ見てみな」
勇者「……」コト
店主「現在地が西のはずれ。ダーマは大陸のちょうど中心地にある」
勇者「うまいすね、これ」モグモグ
店主「まぁな。俺のカミさんが作ってるから。そんで、山を二つ超えなきゃいかんから、はやくて1ヶ月てとこ」
勇者「はぁ……まいったな」
魔法使い「あんた、なんで抜け駆けなんてすんのよ!」バンッ
僧侶「えぇ~。だってぇ、一緒に行くなんて約束はぁ」
戦士「それにしたって黙っていくこたぁないだろう!」
勇者「おっちゃん」
店主「なんだ?」
勇者「あの騒がしい子たちも旅の人?」
店主「らしいよ。ついさっき到着してね。パーティなんじゃないか」
勇者「ふーん」モグモグ
戦士「勇者、どこまで行ってるんだろうな。来る途中は見かけなかったが」
勇者「ん? 勇者?」ピクッ
魔法使い「行動がはやければ、足もはやいなんて。ほんと、たいした男みたいね」
僧侶「私たちが気がつかなかった可能性もぉ~」
戦士「ここまではだだっ広い平原だったんだ。人影の見落としはありえない」
勇者「(……勇者探してんのかよ。こいつら。まさか、王様に見張りを言いつけられたとか?)」
店主「勇者……? おおい、あんた達! 勇者様がどうかしたのかい?」
戦士「ああ、今日が勇者の旅立ちの日なんだ。魔王退治のね」
店主「な、なんだってぇ⁉︎ こいつはたまげた! なら、あんた達は勇者様の付き人かい⁉︎」
魔法使い「だといいんだけどねぇ。私達はまだ……」
戦士「魔法使いの言う通りさ。勇者は仲間が足手まといだとよ」
店主「ひぇ~~!! こいつはまたたまげた! なら一人で旅してるんか⁉︎」
僧侶「店主さん~、今日はお客さんは私たちだけですかぁ?」
店主「ここは辺鄙な村だ。今日チェックインしたのは、あんた達と、ここの――」
勇者「ば、ばかっ!」コソ
24 = 15 :
店主「そういやあんた、どっから来たの?」
戦士&魔法使い&僧侶「……」ジィ~
勇者「せ、拙者はしがない旅の者でござる」
店主「そんな喋り方してなかったろ」
僧侶「いきなり失礼ですけどぉ~、そちらの旅の方の職業をお聞かせいただいてよろしいですかぁ~?」
勇者「しょ、職業?」
店主「なんでもこのお兄さん、ダーマ神殿を目指してるらしいよ」
魔法使い「なら、転職? なにになりたいの?」
勇者「遊び人に」
魔法使い「遊び人……? ぷっ、変なやつ」
戦士「おい、お前。遊び人なんて怠け者のやる職業だぞ」
勇者「(怠けたいんだから天職じゃねぇか)」
僧侶「……」
店主「勇者様が旅立つのなら号外かお触れでも出してくれりゃいいのにねぇ」
戦士「そんなことしたら魔王に潰されちまうだろ。秘密裏にやる必要があんだよ」
魔法使い「そーそー。絶対的な魔王にとってのただひとつの脅威たる勇者。除外する為には、国ひとつ潰すわよ」
店主「国をか……おっかねぇ」ゴクリ
僧侶「……私ぃ、そちらの旅の方のテーブルに相席したいんですけどぉ」
勇者「へ?」
僧侶「だめでしょうかぁ~」
店主「席は四人がけだ。かまわないよ」
勇者「ちょ、俺の意思は!」
店主「こんなベッピンさん三人のうちの一人と一緒な飯食えるんだ。男なら役得だろ?」
勇者「めんどくさいから、いい――」
僧侶「失礼しますぅ~」スッ
勇者「見かけによらずグイグイくるな!」
魔法使い「僧侶、ちょっと、あんた男の趣味悪くない? そんなのがいいの?」
戦士「まったくだ。そんな軟弱そうなやつ」
勇者「こ、こいつら、なんで俺なにも言ってないのにボロクソいわれとるんじゃ!」
僧侶「うふふ。あちらは無視しておいて。……あ、手にご飯粒つけてますよ」
勇者「え、ついてな……」
僧侶「実は、私ぃ、特技があるんですよ」
勇者「(……? なんだ、手が熱い)」
僧侶「僧侶は癒しの職。女神様の特色が色濃くでる職でもあるんですぅ~」
戦士「そうなのか?」
魔法使い「女神は争いを好まないもの。魔法使いや戦士だって加護を受けてるけど、どちらかというと精霊の側面が強いわ」
25 = 15 :
僧侶「勇者様は女神様の寵愛を一身に受けられるお方。溢れ出る光に蓋はできません~」ポワッ
勇者「(な、なんだ。やばい感じする!)」
魔法使い「……?」
戦士「僧侶の手が光だしてるのはどういう原理だ? いや、重ねてる手から?」
勇者「や、やだなぁ! ご飯粒なんてついてないじゃないですか!」サッ
僧侶「あっ」
勇者「いやぁ、おいしかった! おっちゃん! オムライスうまかった! ごっそさん!」
店主「いいのか? まだ半分くらい残ってるが」
勇者「職が細いんだ、俺! もうお腹いっぱいになっちまって、残してごめんな?」
店主「いや、金払ってるからかまわねぇが」
僧侶「……」ジィ~
勇者「うっ、じゃ、じゃあ俺は部屋にいくから! あ、あと、明日は早朝にでたいんだけどどうしたらいい?」
店主「料金は先払いでもらってる。そのままチェックアウトしてかまわないよ」
勇者「了解! それじゃ、俺はこれで!」ソソクサ
戦士「なんだぁ、あいつ。いきなり慌ててたっていうか」
魔法使い「たしかに、変ね……それに僧侶。さっきのはなにをしてたの? 回復魔法?」
僧侶「うふふ。みぃ~つけた」ボソ
戦士&魔法使い「……?」
僧侶「先ほどのは、旅の安全を祈ってたんですよぉ」
戦士「そんなことか」
魔法使い「待って。光ってたわ。ああいうのものなの?」
僧侶「そうですよぉ」ニコニコ
戦士「祈りが特技か。しょーもな」
僧侶「なんとでもぉ~。それはそうと、こちらのパーティからは抜けさせてもらいますのでぇ」
魔法使い「いいの? 同じ魔法職だから言わせてもらうけど、前衛は必要よ」
戦士「そうだ、あたしが守ってやるぞ」エッヘン
僧侶「はい~。実は私の元いた神殿というのもダーマでしてぇ。目的地が同じなようなので、先ほどのお方を頼ろうかと思いますぅ」
戦士「目的地が同じって」
魔法使い「……勇者様のことは諦めるの?」
僧侶「元々神官さまに言われただけですしぃ、お二人の言う通り、諦めようかとぉ~」
戦士「まぁ、そうか。あんたには理由がないもんな」
26 = 15 :
【深夜 魔法使い 部屋】
戦士「魔法使い、まだ起きてるか?」コンコン
魔法使い「その声は、戦士? 鍵なら空いてるわよ」
戦士「失礼する」ガチャ
魔法使い「夜分にどうしたの? というか、まだ起きてたのね」
戦士「あんたもな。なんだ、本を開いて勉強でもしてたのか?」
魔法使い「気にならない? 僧侶の言動。あの子、どうにも信用ならないのよ」
戦士「……同感だ。実は気になってな。あたしのはただの勘だが」
魔法使い「さっきの光、調べてみたの」
戦士「祈りってやつか。それで?」
魔法使い「専門職じゃないから詳しいことはわからないけど、たしかに祈りをするときは祝福の影響で発光することがあるらしいわ」
戦士「……でも、それだけじゃないんだろ?」
魔法使い「貴女も見たでしょ? 重ねてた手の下から、つまり、あの男からの光だったわよね?」
戦士「そんな気がした」
魔法使い「そうであれば、おかしいわ。僧侶の手が光っていなければ」
戦士「だけど、光が強すぎて、その、見間違いってことも」
魔法使い「……」ギシ
戦士「まさか、あいつが勇者だってのか?」
魔法使い「あくまで可能性よ。でも、僧侶はあいつとパーティを組むと決めた。どうにもひっかかる」
戦士「たしかに、男、だもんな。しかも二人きりになるし」
魔法使い「貴女、オンナは捨てたんじゃなかったっけ」
戦士「ち、ちがっ! あたしは、一般的な常識で!」
魔法使い「別にいいけど。それを抜きにしても、前衛を任せられると判断できない者とパーティを組むメリットは、魔法職に無いのよ」
戦士「……強いのか? あいつ」
魔法使い「そこで、提案があるんだけど――」
27 = 15 :
【宿屋 早朝】
スズメ「チュンチュン」
勇者「っし! 天気は快晴! 今日もマラソン日和! さぁ~走るぞぉ! 目指すはダーマ! ダマされるもんか! なんつって」バタンッ
僧侶「おはようございますぅ~」
勇者「あ、お、おはよう。朝、はやいんだね。というか、なんで扉の前に立ってんの?」
僧侶「一晩ここで夜をあかしましたのでぇ~」
勇者「ここ? ここって通路だよ?」
僧侶「はい~。お布団ならあちらに~」
勇者「あー、うん、綺麗にたたんでありますね。ってそうじゃないわ! 部屋で寝ろよ!」
僧侶「何時に出るかわからなかったんですもの~」
勇者「誰が……? 俺が?」
僧侶「はい~」ニコニコ
勇者「俺が出るのを待ってたと。そして、ここで寝てた。それすなわち……」
僧侶「パーティを組んでいただけませんかぁ?」
勇者「間に合ってます」ピシャリ
僧侶「そうおっしゃらずにぃ~。お話だけでも」
勇者「俺は遊び人になりにダーマ神殿に向かってるんだ。そんなやつとパーティを組んだってろくなことにならないよ」
僧侶「正直なお方なんですねぇ。是非ともご一緒したいですぅ」
勇者「いや、だからだな。あの、人の話聞いてる?」
戦士「ちょぉっと待ったッ!!」
魔法使い「抜け駆けは許さないわよ! 僧侶!!」
僧侶「チッ」
勇者「な、なんだ?」
魔法使い「話は盗み聞きさせてもらったわ。まさか廊下で一晩明かすなんて、よっぽどそいつとパーティを組みたいようねぇ?」
戦士「あたしも驚いたぜ。たまたま通りかかったから発見できたものの」
魔法使い「……そいつ、何者? まさか、勇者様なの?」
勇者「……っ!」ギクゥッ
僧侶「……やですねぇ~。違うんじゃないですかぁ? 本人はそんなこと言っておられませんしぃ」
戦士「なんでそこまでそいつにこだわる? 前衛ならあたしでも困らないだろう?」
僧侶「はぁ……。それはぁ目的地が同じと言ったじゃないですかぁ」
戦士「なら、あたしたちの目的地もダーマだと言ったら?」
僧侶「……そうなんですかぁ? 勇者様は別のところに向かってるかもしれませんよぉ?」
28 = 15 :
魔法使い「そいつに質問があるのよ。なに壁に張り付いてるの?」
勇者「ボクハオキモノデス」
魔法使い「わー、おもしろーい。メラ」ボッ
勇者「あっつぅっ! 馬鹿野郎! 人に向けて魔法は撃っちゃいけません!」アタフタ
魔法使い「たいしてダメージないみたいね……」
勇者「ふーっ、ふーっ、どうしてくれる! キズモノにされたらお婿にいけないじゃないの!」
魔法使い「将来設計の話なら別の子にしてくれる? 出身地はどこ? 身なりも軽装なようだけど」
勇者「うっ、そ、それは、隣の国の」
戦士「む? そうだったのか。ならば同郷だな」
魔法使い「そうだったの? 隣国に詳しい?」
戦士「もちろんだ。なにしろ生まれ育った国だからな」
魔法使い「そうよね、普通は。あんたも?」
勇者「いや、俺は、その、引きこもり生活をしておりまして。外の世界を知らずに」
戦士「それなのに旅をしてるのか?」
僧侶「お二人ともその辺で。きっとあまりのダメ男っぷりに親に勘当されたんですよぉ~。察してあげましょぉ~?」
勇者「サラッとひどいこと言わないでくれるかな⁉︎」
僧侶「口裏合わせてください~」コソッ
勇者「うっ、わ、わかった」コクリ
魔法使い「ますます怪しいわ。もっと言えば胡散臭い」
戦士「あぁ、そうだな。こうなっちゃ疑うなって方が無理だ」
僧侶「この方は勇者様じゃありませんよぉ~? ねぇ~?」
勇者「もちろんです! 僕勇者ジャナイヨ!」
魔法使い「なぜ、隠すのか。そこもわからないのは確かね」
戦士「ああ。それに、こんなやつが勇者だとは思えないってのも」
魔法使い&戦士「……」ジトー
勇者「えぇい! というか、なんで俺がこんな目に合わなきゃいかんのじゃ! 場の雰囲気に呑まれてすっかり流されてたわ!」ガバッ
僧侶「あららぁ~」
勇者「お前らに付き合ってたら出発が昼になっちまうわ! そんじゃ――」
戦士「待てよ」ガシッ
勇者「……うわぉーお。握力すごぉーい。肩の骨が悲鳴あげそぉ」ミシミシ
戦士「僧侶だけじゃなく、あたしと魔法使いもパーティにいれろ。そんで折れてやる」
勇者「僧侶と組むなんて一言も」
僧侶「はぁ、しかたないですねぇ」
勇者「決めるのそっち⁉︎」
魔法使い「……旅をしながら見定める。こいつが勇者じゃなくても、行く先で情報は集められるだろうし」
戦士「ああ。それが昨夜。あたしらで決めた話だ」
勇者「(い、いかんですよ。こんなやつらとパーティを組むなんてごめんこうむりたい)」
僧侶「なんにせよ、そろそろ離してあげてはぁ~?」
戦士「ほらよ」パッ
勇者「(に、逃げなければ。隙を見て)」
魔法使い「ともあれ、これからよろしくね?」
僧侶「ふつつか者ですが、よしくおねがいしますぅ~」
戦士「……ふん」
29 :
【平原】
僧侶「まっ、まってくださぁ~い」トテトテ
魔法使い「ぜぇっ、ぜぇっ、ちょ、ちょっと、なにも走らなくたって」
戦士「いや、あたしは歩いてもかまわんのだが」
勇者「ついてけねぇなら置いてくぞ!」
戦士「こいつがこう言ってるし」
魔法使い「ちょ、ちょっとストップ」
僧侶「もう、走れませんん~」
勇者「……ったく、しょうがないなぁ。おあつらえ向きに岩があるし、休憩するか」
魔法使い「ふぅ、ふぅ、あんた、やっぱり前衛職なのね? そんなに平気な顔してるなんて」
戦士「あたしも驚いたぞ。スタミナがあるんだな?」
勇者「まぁ、小さい頃からそれなりに鍛えられてたし」
戦士「へぇ……」
僧侶「ふぅ、ふぅ……どうしてそんなに急がれてるんですかぁ~?」
勇者「はやく転職したいから」
魔法使い「転職って、ひとつの職を極めた人が行うものでしょ? 極めてるようには見えないけど」
勇者「極めてるとか未熟だとか関係ないよ。俺は今の職が嫌いなんだ」
戦士「む。女神様から与えられたギフトに文句をつけるとは」
勇者「ふてぶてしいとはよく言われる、えへへ」
戦士「褒めとらんわっ!」
魔法使い「なんか調子狂うわ。いい? 職業ってのは、言ってみれば名前みたいなものよ。女神様が各個人にあった適職を振り分けてくださってて──」
勇者「カテゴリー分けだろ、要するに」
僧侶「……」
勇者「戦士だの武闘家だの。いいか、職ってのは生業だ。食を得る糧だ。一種の生き様と断言したっていい」
戦士「……」
勇者「“職に貴賎なし”。昔の人は言いました。農夫が魔法使いより劣っているなんて俺はちっとも思わねぇ。みんなそれぞれ精一杯生きているんだ」
魔法使い「わ、私は別に、見下してなんて」
勇者「そうか? 説教する気なんてこれっぽっちもないけどよ。優越感に浸って、有難がってる。俺にはそう見えるね」
戦士「お前は遊び人志望なんだろう?」
勇者「あ、はい」
戦士「毎日遊びほうけて、ちゃらんぽらんな性格してるあの?」
勇者「おっしゃる通りでございます」
戦士「そんなやつが偉そうに言うことか!」
勇者「う、うぅ。なんでや。発言の自由ぐらいあってもええやないか」
僧侶「でも、確かに、一理あると思いますけどねぇ~」
戦士「……やけにこいつの肩を持つね」
僧侶「神は等しく平等なのですよぉ。私は中立の目線から判断しているに過ぎません~」
戦士「けっ」
岩「」モコ
魔法使い「あんた、結局、なんの──」
岩「」モコモコ
30 :
僧侶「あのぉ~、旅の方が腰掛けてるその岩……」
爆弾岩「ウガァー」ボコン
勇者「うおっ」ガク
僧侶「やっぱりぃ~」
魔法使い「モンスター⁉︎」
戦士「爆弾岩だったのか!」ズザザ
爆弾岩「……」ニヤニヤ
勇者「(爆弾岩は様子を見てる……ってか、これ走って逃げたらいいんじゃね?)」
戦士「よぉーしッ! やってやらぁ!」チャキッ
勇者「(戦士は血気盛んだねぇ。しめしめ)」スススッ
魔法使い「物理攻撃では不利だわ! 時間を稼いで! 私は攻撃魔法、僧侶! サポート魔法で戦士の援護を!」
僧侶「はぁ~い」
勇者「(そぉ~っと、そぉ~っと)」コソコソ
魔法使い「あんたは……あれ? あいつは?」
僧侶「あちらで駆け出していますよぉ~」
勇者「ぬぉっ! もう見つかった⁉︎」ダダダッ
魔法使い「……」ポカーン
戦士「どおりゃっ!」ガキンッ
爆弾岩「……」ニヤニヤ
戦士「くっ、刃が……! 岩相手に無理か」
僧侶「爆弾岩は早めに決着をつけないとぉ~」
魔法使い「あ、あいつ……!」ワナワナ
戦士「おい! 魔法使い!逃げ出したやつにかまってる時間はねぇぞ!」
勇者「(すまないな……。恨むならば自分の無力さを恨むがいい……!)」ダダダッ
魔法使い「冷気系魔法を使うわ! 戦士、さがって!」
戦士「おう!」シュタ
31 = 15 :
魔法使い「氷の礫をくらえっ! ヒャド!」カキン
爆弾岩「……っ⁉︎」ドゴン ヒュー
戦士「おお……! 凍らせるかと思ったが、吹っ飛んだ」
僧侶「初級魔法しか使えないんですかぁ?」
魔法使い「いちいちうっさい! 距離とれたんだからいいでしょ!」
僧侶「……でもぉ、飛ばしただけじゃ」
爆弾岩「」ヒュー
勇者「ん? なんか背後から気配を感じるような……?」クル
爆弾岩「」ヒュー
勇者「なんでこっちに来てんの⁉︎」ギョ
戦士「……魔法使い。狙ってやったのか?」
魔法使い「……うん、そんなつもりなかったけど。まぁ、いいでしょ」
勇者「にょわあああああっ!」ダダダッ
僧侶「あらあらぁ~。爆弾岩が赤くなりはじめてますねぇ~。爆発する兆候ですぅ」
勇者「こっちこないでぇぇええええっ!!」ダダダッ
戦士「なんか、哀れになってきたんだが」
魔法使い「そ、そうね……」
僧侶「旅のお方ぁ~。足を止めて伏せればいいんですよぉ~」フリフリ
勇者「ハッ! そ、そうだ! そうすれば頭上を通りこして――」
爆弾岩「」ズドーン
勇者「目の前に落ちてくるとかお約束やんけ!」
爆弾岩「……」プルプル
勇者「トイレ? う◯こなら我慢しない方が」
爆弾岩「……」ニタァ
勇者「やっぱ我慢して! 平原は公共スペースです! 汚物の垂れ流しはご遠慮してください!」
爆弾岩「」ピカァー
戦士&魔法使い&僧侶「あ、爆発する」
勇者「――ひっ⁉︎」
32 = 15 :
お気の毒ですが、勇者は死んでしまいました。
勇者「おおい! 死んでねぇわ! ……あぁ、死ぬかと思った」ボロ
僧侶「旅のお方~、大丈夫ですかぁ~?」トテトテ
戦士「爆弾岩の爆破攻撃を食らって生きてるのかよ」テクテク
魔法使い「こいつ、本当に人間? モンスターなんじゃないの?」
勇者「失礼なことを言うのはやめていただけるかな⁉︎」パンパン
僧侶「回復しますねぇ~」ポワァ
魔法使い「自業自得ってやつね」
戦士「いきなり逃げ出すとは、遊び人を目指すわけだ」
勇者「えへへ」テレテレ
戦士「褒めとらんっちゅーに!」
僧侶「でも、さすが、ゆう……旅のお方ですぅ。擦り傷だけなんてぇ」
魔法使い「擦り傷はあったんだ」
戦士「それぐらいで済んでるのがそもそも異常だ。普通なら死んでる」
勇者「俺はなぁ、こんなところで死ぬわけにはいかねぇんだよ……! 俺は、俺は……!」
戦士「お?」
勇者「立派なニートにならなければいけないのだからっ!!」ビシッ
戦士「死んでいいぞ」
魔法使い「まったく、モンスター退治したってのにかけらの緊張感もないなんて。へんな感じ」
僧侶「退治といえるかは微妙ですけどねぇ」
魔法使い「細かいことはいいでしょ」
テレテレッテッテッテー
戦士はレベルが上がった。
戦士「女神様から祝福のファンファーレが」
魔法「ほら、やっぱり倒したってことになってる」
僧侶「おめでとうございますぅ~」パチパチ
勇者「はぁ、罪のない命を……」
魔法使い「意外ね。あんたからそんなセリフがでてくるなんて。それとも、レベル上がられた嫉妬?」
勇者「違わい。こいつはただここにいただけなのに」
爆弾岩「」チーン
勇者「モンスターにも社会があるとか考えたことねぇの」
戦士「はっ、社会? 知能があるかすら怪しいぞ」
勇者「そりゃ下っ端はそうだろうけどさ」スッ
魔法使い「魔王の手下なんて人間とって脅威でしかないわ! 絶滅させるべきよ!」
僧侶「あの、爆弾岩の飛び散った破片を拾ってなにをなさってるんですか?」
勇者「元いた場所に埋めてやるんだ。墓なんて大層なもんじゃないけど」
33 = 15 :
【魔王城 玉座】
魔王「勇者が生まれ落ち、早18年の歳月。そろそろ旅立ちの日を迎えよう」
四天王一同「……」
魔王「にもかかわらず! 未だに詳細が掴めぬとは貴様らはそんなにも無能な集まりであるか!」ブンッ カランカラン
大臣「魔王様、落ち着きなされ。先代のワイングラスを投げては」
魔王「黙れ、黙れ黙れぇいっ!! 貴様達はなにをしておった! 遊んでおったのじゃあるまいな⁉︎」
サキュバス「四天王の一人、淫夢王サキュバスが恐れながら、申し上げます」
魔王「……」クィ
サキュバス「我々には、その、なぜ人間風情ごときをそこまで危険視するのか……いくら女神の加護を得ているとはいえ」
オーガ「同じく! 四天王が一人、巨人王オーガも同意致します! 大魔王様は絶対的存在! なにを恐るることがございましょう!」ズゥゥン
魔王「まだそのような認識でおったのか」
シンリュウ「竜族の長、シンリュウも疑念を抱いております。むしろ、身の程をわきまえていないのは人間達。ご采配をいただければ、すぐにでも国を滅ぼしてまいりましょう」
魔王「余が何度も説明したであろうが」
キングヒドラ「獣族の王! キングヒドラ! 我も理解できませぬ! 勇者が我々と人間の架け橋になるなどとありえぬこと!」
魔王「……古き伝承からあることよ」
サキュバス「し、しかし……!」
魔王「“勇者の冠を擁する者、光と共に、種族を超えた架け橋とならん。汝、争うことなかれ。争いはなにも生まぬ。勇者の作る光の道を闊歩せよ――”」
四天王一同「……」
魔王「なにも力だけが、この世の理ではないのよ。圧倒的な暴力。それは快楽、強さには違いない。だが、それを生みだす原動力がある」
シンリュウ「と、申されますと」
魔王「人間どもの好きな、希望とやらだ」
キングヒドラ「ぐふっ、ぬわっはっはっ! 大魔王! わからぬのはそこよ! 我々を人間と同じ尺度で捉えるとは言語道断!」ジャララ
サキュバス「左様でございます。人など餌同然」
魔王「やはり、わからぬか」
シンリュウ「当然でございましょう。もし、勇者が友好を持ちかけてきても瞬時に灼熱の息で消し炭にしてごらんにいれます」
魔王「……ふぅー」
オーガ「大魔王にはどっしりと構えていただきたい! 我らが種を代表する者であれば、魔王様もまた! 我らの代表なり!」
魔王「(気がついておらなんだか。サキュバス以外は男勝りな言葉使いをしているが、四天王、この私を含んで全員“オンナ”であることに。このままでは……)」
34 :
なにこれ書き方上手
35 = 15 :
【再び 平原】
勇者「――これで、よしっと」サク
魔法使い「やっぱり変人よ。モンスターに墓標を作るなんて聞いたことない」
僧侶「綺麗なお花ですねぇ~」
勇者「こいつらだって生きてる。アレフガルドの大地の上で暮らしてる」
魔法使い「綺麗事ね。やらなきゃやられてたわ」
勇者「それ自体は否定しないさ。でも、人間だって殺し合いしないわけじゃないだろ」
戦士「おぉ~い! 一角うさぎがとれたぞぉー!」
魔法使い「……火、おこしましょっか。焚き木から離れて」
僧侶「わぁー。なんだか、キャンプみたいですぅ」
魔法使い「そのまんまでしょ。メラ」ボッ
勇者「飯食ったら出発するからな」
僧侶「あのぉ~また走るんでしょうかぁ?」
魔法使い「馬を用意してくれるとかないの?」
勇者「そんな金あるか」
戦士「よいせっと。火は準備してるな、待ってろよ、今から捌いて」スラッ
勇者「しゃーない。走るには走る。だが……戦士」
戦士「なんだ?」
勇者「僧侶、魔法使い、おぶるならどっちがいい?」
魔法使い「は、はぁっ⁉︎」
僧侶「なぁるほどぉ~」ポン
戦士「どういう意味だ? どこか怪我したのか?」
勇者「いいや、好きだろ? トレーニング。まさかそんな格好と職で非力ってわけじゃないだろし」
戦士「あぁ、鍛錬か! お前もそういう志があったのだな!」
魔法使い「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 私は嫌よ! 男に体を密着させるなんて!」
僧侶「私はかまいませんのでぇ~」
魔法使い「ま、まじ……? あんた、曲がりなりにも神職でしょ? 神に捧げてる身体を」
僧侶「お堅いんですねぇ。下心がなければかまいませんよぉ~。あってもいいですけど」
魔法使い「う……」タジ
勇者「だったら決まりだな。今後の方針を発表する! 飯を食って小休憩をしたら、次の街までダッシュ!」
魔法使い「なんで仕切ってんのよ。さっき真っ先に逃げ出したくせに」
戦士「うむうむ。鍛えるのならそれでかまわん」
僧侶「かしこまりましたぁ~」
36 = 15 :
戦士「ほっほっ」ザッ ザッ
魔法使い「……」ジトォー
勇者「あの、僧侶さん?」
僧侶「はぁい?」ニコニコ
勇者「なんだが、背中にあたる感触が妙に生々しく感じるんだけども」
僧侶「もちろんですよぉ~。下はなにも着けておりませんのでぇ~」
勇者「な、なにもって、その」
僧侶「なにもはなにも、ですよぉ~」
魔法使い「不潔」
戦士「どしたどしたぁっ! お前が言い出しっぺだろ! 遅れてるぞ!」
勇者「(俺だって男なんだぞ!突起物があるような)」
僧侶「布でこすれてぇ~、たっちゃいました」
勇者「たっちゃいましたって、な、なにが?」
僧侶「乳房の先端についてる、と・こ・ろ」
勇者「……っ!」
戦士「なんだ、あいつ。前かがみになって」
魔法使い「ますます不潔」
勇者「落ち着け、素数だ。素数を数えるんだ」
僧侶「んっ」モゾ
勇者「悩ましげな声をあげるな!」
僧侶「だっ、てぇ。走る度に、こすれてっあんっ」
勇者「だああああっ! なんかもうちくしょおおおおっ!!」ダダダッ
戦士「やればできるじゃないか」
魔法使い「はぁ……あれがもし勇者だったら、この世の終わりだわ」
37 = 15 :
【国境の街 アルデンテ】
勇者「ぜぇっ、ぜえっ」バタリ
戦士「だらしないなぁ。そんなに疲労するとは」
魔法使い「疲れてるのは別の理由でしょ」
僧侶「はやかったですねぇ~」ニコニコ
魔法使い「(僧侶、おそろしいやつ)」
村人「さぁ、さあ! 今日はお祭りだよぉ~!」
戦士「騒がしいな。まるで祝賀パレードだ」
魔法使い「記念日? 今日じゃないはずだけど」
戦士「おい、なんの祝典だ?」
村人「おお、これは旅の方! あなた達は幸運ですよ!」
僧侶「なにか抽選会でもあるんですかぁ?」
村人「へ? ち、違います! この村に今、かの有名なあのお方がいらっしゃっているんです!」
戦士「かの有名……な?」
魔法使い「あのお方?」
村人「むっふっふぅ~聞いたら驚きますよぉ! あのお方とは!」
僧侶「お方とはぁ?」
村人「魔王討伐に旅立ったばかりの超有名人! 勇者様! その人です!!」バーン
戦士&魔法使い「なんだって(ですって)⁉︎」
僧侶「はぁ、勇者様が、ですか?」
村人「あ、あれ? そちらの僧侶さんは驚かれないんですか?」
僧侶「……」チラ ジー
勇者「もう、だめ。甘い香り、オンナは……」
僧侶「その勇者様はどちらにいらっしゃるんです?」
村人「酒場にて祝賀パーティーを行っていらっしゃいます! 我が村をあげてのお出迎えですからな」
戦士「おい! 魔法使い!」
魔法使い「ええ! 私たちも向かいましょう!」
僧侶「ふぅん……これは、どうなってるんでしょうねぇ~」
38 = 15 :
【アルデンテの村 酒場】
村娘「きゃっ、もう、勇者さまったらぁ」
偽勇者「ぎゃっはっはっ! キミかわいいねぇ!」
村娘「いやん。ねぇ、勇者様ぁ、本当に魔王討伐なんてできるんですかぁ?」
偽勇者「おう! あったりまえよ! この俺にまかせておけばなぁ~んにも心配いらねぇ!」
村娘達「きゃーーっ! 勇者様素敵ぃ~っ!」
魔法使い「……あ、あれが、勇者」
戦士「なんとも、下衆な」
僧侶「あらあらぁ~」
魔法使い「本当に勇者なの?」
偽勇者「愉快愉快! おらぁ、酒だ酒だ! もっと酒持ってこんかーーーいっ!」
店員「ハイ! ただいま!」
戦士「おい」
店員「お客さん、悪いね。見ての通り忙しくて」
戦士「注文じゃない。あれ、勇者っていう証拠あるのか?」
店員「シーッ! 聞こえますよ! アレなんて言っちゃ!」アタフタ
戦士「聞こえてもかまわん」
店員「まったく。……で、なんですか?」
魔法使い「名を騙ってる偽物じゃないの? ってこと」
店員「めっそうもない! あのお方は本物ですよ!」
僧侶「どうしてそう思われたんですかぁ?」
店員「雷魔法ですよ! 伝承にあるでしょう! 勇者しか使えないと記録にあるあの!」
魔法使い「雷魔法……? まさか、ライデイン?」
店員「えぇ、えぇ。そのまさかです。勇者様は雷魔法を使って木を真っ二つに。それはもう、シュババ~っとやっちゃったんです!」
僧侶「それは、妙ですねぇ」
店員「妙なんてもんじゃありませんよ! まさかこんな国境ハズレの村に立ち寄ってくださるなんて奇跡です! あとでサインをいただかねば!」
戦士「伝説の魔法、ライデイン、か……」
魔法使い「勇者、なの? アレが?」
偽勇者「あーっはっはっはっ! 笑いが止まらねえ!」
39 = 15 :
【アルデンテの街 宿屋】
勇者「おばちゃん。部屋ひとつ」
店主「あら、めずらしい。ひとり旅かい?」
勇者「うん、まぁ、そんなとこ。連れはいるにはいたけどね、どっかいったし。空いてる?」
店主「空いてるよ。勇者様の隣の部屋が」
勇者「勇者? え? この街に来てんの?」ドッキンコドッキンコ
店主「酒場で乱痴気騒ぎさ」
勇者「(てことは、俺のことじゃない! セーフ! セーフ!)」
店主「しっかし、あたしゃにはどうにも勇者に見えないねぇ」
勇者「そうなの?」
店主「勝手なイメージで申し訳ないが、なんてったって勇者だろ? もっと清廉潔白な方かと思ってたよ」
勇者「……年頃のやつだよ。普通の」
店主「そうかもしれないねぇ、若い娘に鼻の下伸ばしてるようじゃ」
勇者「夕食もつけてくれる?」
店主「ああ、追加で2ゴールドになるよ」
勇者「かまわない。メニューはなにかな?」
店主「村の名前を聞いてピンとこないのかい?」
勇者「村の……あぁ、ってことは」
店主「そう、パスタさね」ニコ
40 = 15 :
【再び 酒場】
偽勇者「キミキミ! キミ達!」チョイチョイ
魔法使い「うげっ、私達を見てない?」
戦士「そのようだな」
僧侶「……」スタスタ
魔法使い「あっ、そ、僧侶」
偽勇者「めっちゃくちゃかわいいねぇ! キミ、その格好は神官見習いだよね? 僧侶?」
僧侶「はい~。はじめまして、勇者様」
偽勇者「挨拶はいいからいいから、隣座ってよ! ねっ! おい、お前は邪魔!」ドンッ
村娘「きゃっ、そ、そんな。さっきまで」
偽勇者「うるせぇな! どつくぞコラァ!」
魔法使い「あいつ……!」
戦士「待て。こらえろ」
村娘「ひっ、す、すみません」ササッ
僧侶「……」
村娘「ど、どうぞ。お座りください」
偽勇者「勇者がキミの為に席をあけたよぉ! ささっ、座って、座って」
僧侶「失礼いたします~」スッ
偽勇者「いや、マジほんとかわいいね! 田舎の芋娘と比べたら月とスッポンだわ!」
僧侶「ありがとうございますぅ~」
偽勇者「料理はまだかよ!」バンッ
店員「ただいまお持ちいたします!」アタフタ
偽勇者「俺ってば勇者じゃん? キミならパーティー組んでもいいよぉ? あっちの子も連れ? もしかしてパーティー組んでる?」
僧侶「すみません、お手を拝借」
偽勇者「おっほっ! 積極的なんだねぇ~、いいよいいよ。なに? 手相でも見てくれるの?」
僧侶「……」ポワァ
偽勇者「重ねるだけ? もっと指を絡めてもいいんだよぉ?」
僧侶「……よく、わかりました」スッ
偽勇者「えっ、えっ? 急に立ち上がってどうしちゃったの?」
僧侶「いえ、私は神殿に帰らなければならないので。失礼いたします~」
偽勇者「……おいっ!」ガシッ
僧侶「はい?」
偽勇者「俺は勇者なんだぜ? お酌のひとつぐらいしてけよ」
僧侶「すみません、あなたには無理ですぅ~」ツネリ
偽勇者「いっつ!」
僧侶「女性からではないと、身体に触れてはなりませんよ」
偽勇者「こ、この野郎……!」ブンッ
戦士「そこまでだ」チャキッ
偽勇者「う……っ!」
戦士「女神様に仕える神職に対する暴力。勇者であっても見過ごせん」
偽勇者「貴様ら! 勇者に向かって!」
戦士「我々はこのまま酒場を後にする。これで手打ちとせよ」
41 = 34 :
面白い
>>7は無関係ってことでおk?
42 = 15 :
【宿屋 ロビー】
魔法使い「ひやひやしちゃったじゃない!」
戦士「まったくだぞ。いくらなんでもあれは。相手を選べ」
僧侶「すみません~」
魔法使い「……ねぇ、僧侶。さっきの手を重ねるのって、本当に旅の祈り?」
僧侶「そうですよぉ」
戦士「本当か? なにかを確かめていたんじゃないのか?」
僧侶「いえいえ~。それはそうと、もう一人の旅のお方はどちらにぃ~」
店主「いらっしゃい。あんたらも部屋かい?」
僧侶「はい~。空いてますかぁ?」
店主「うちは団体部屋しか置いてないんだ。今日は相部屋になっちまうよ」
魔法使い「そ、そんなぁ」
店主「すまないねぇ、なにしろ辺鄙な田舎村だろ? 個室を用意しておくと採算がなぁ」
戦士「女将。聞くが、酒場にいる勇者とやらも?」
店主「あぁ、当宿を利用してもらってるさね」
魔法使い「ええ⁉︎ てことは、あいつと相部屋⁉︎」
店主「勇者様は一部屋貸し切りだよ。そうご希望なんでね。大方、村娘を連れ込もうとしてるんだろうが」
魔法使い「ホッ」
戦士「もう一つのところになるのか?」
店主「ああ、さっき、チェックインした青年だよ。あちらも旅の途中みたいだが」
僧侶「そちらでかまいません~」ニコニコ
店主「いいのかい? 男にしちゃかわいい顔してたが」
魔法使い「そいつって、まさか」
43 = 15 :
>>41
まったくの無関係です
話の繋がりが紛らわしいですかね?
44 = 15 :
とりあえずNGIDで見えなくするなり対応お願いします
続けます
45 = 15 :
【宿屋 部屋】
魔法使い「変な気起こしたら、殺すわよ」キッ
勇者「なんでいきなり物騒な目つきされなくちゃいけないんですかねぇ!」
魔法使い「……ふん」プイ
戦士「まぁ、こいつは無害だろう。そう心配するな」カチャカチャ
僧侶「旅のお方は勇者様を観に行かなくてよいのですかぁ?」
勇者「興味ないから」
魔法使い「あ~ぁ」ボフッ
戦士「ライデインを放ったという話は本当なのだろうか?」
勇者「……」ピクッ
魔法使い「木を真っ二つにしたんでしょ? なら、本当なんじゃない?」
僧侶「なにかのまやかしかも~」
勇者「ちょい待ち。ライデインって言った? 今?」
戦士「ああ。この村に到着した時に披露したらしい」
勇者「(子供の頃、遊びで撃ってめちゃくちゃ叱られたなぁ……)」シミジミ
僧侶「お二人は勇者という確信がもてないんですよねぇ?」
魔法使い「むしろ、そうじゃないであってほしい?」
戦士「うーむ」
僧侶「ならば、簡単ですよぉ。勇者には印が刻まれてますからぁ」
勇者「……!」ギックゥ
魔法使い「そうなのっ⁉︎」ガバッ
戦士「なぜもっとはやく言わないんだ!」
僧侶「聞かれなかったものでぇ」
魔法使い「それで、印って⁉︎」
僧侶「“聖痕”といわれるものですねぇ~。身体に刻まれているんですぅ」
戦士「そんなものが……」
魔法使い「それって、もしかして手にあるとか」
僧侶「いえいえ~。目に見える部分ではありません~」
魔法使い「服の下ってこと?」
僧侶「はい~。お尻、ですよぉ~」
戦士「し、シリ。なんでまた、そんなところに」
僧侶「色仕掛けでもして脱がせればすぐにわかると思うんですけどぉ~。旅の方もそう思いません~?」
勇者「アア、ソウダネ」
魔法使い「色仕掛け……あんなやつに……」
戦士「あたしには無理だな」
魔法使い「想像してみたけど、私もパス。生理的に無理」
僧侶「あらあらぁ~」
魔法使い「でも、聖痕なんてあったんだ」
勇者「……」ドッキンコ ドッキンコ
僧侶「ここって、お風呂はどうなってるんでしょうねぇ~」
46 = 15 :
【数時間後 宿屋 部屋】
魔法使い「あー、いいお湯だった」ホカホカ
戦士「サッパリしたな」
僧侶「戦士さんって、スタイルいいですよねぇ」
戦士「あたしは鍛えてるだけだよ。僧侶だって胸大きかったじゃないか」
勇者「お、おう、それじゃ次は俺が」
僧侶「旅のお方~」
勇者「な、なんでしょ?」
僧侶「タオル、お忘れですよぉ。大衆浴場になってるので、大事な部分は隠さないとぉ」ニコニコ
戦士「……? 男湯と女湯は別れてたろ?」
勇者「し、失礼します!」パサッ ダダダッ
魔法使い「ねぇ、僧侶。やっぱりあいつに対して扱い違うわよ。どう見たっておかしい」
僧侶「くすくす。だって、必死なのがかわいくてぇ~」
戦士「か、かわいい? アレがか? まぁ、悪い顔立ちはしていないと思うが」
僧侶「そうじゃありませんよぉ~。イタズラを見つかった子供みたいな反応が、です」
魔法使い「遊んでるの?」
僧侶「そうかもしれませんねぇ」
魔法使い「そういう感じ? 私、てっきり」
僧侶「……あの人が勇者だと思った?」
戦士&魔法使い「……っ!」
僧侶「だとしたら、私たちに隠す理由はなんなんでしょうねぇ~」
戦士「そこがなぁ」
魔法使い「わからないのよねぇ」
僧侶「転職する為にダーマを目指してるって話ですしぃ~」
戦士「勇者は転職なんぞできん」
魔法使い「それを知らないってわけでもないだろうしねぇ」
僧侶「勇者とはぁ、職業ではありません~。なりたくてなれるものではないのですからぁ」
戦士「この大地に立つ者の光の存在」
魔法使い「伝説の女神の代弁者」
僧侶「酒場にいた方はそうは見えませんけどねぇ~」
魔法使い「風呂にいったやつも同じでしょ。そりゃ、少しは、マシだけど。モンスターの墓作ったり変なやつよ」
47 = 15 :
【宿屋 大衆浴場】
勇者「(おかしい。……実はバレてるんじゃなかろうか?)」カポーン
老人「おおい、にいちゃんや」
勇者「(いや、でも、勇者を確認しにいったって話だし。まだバレてはいないはず)」
老人「聞こえとらんのかの? にいちゃんや~い」
勇者「(いやいや、でも、それにしたって、特に……あの、僧侶の態度は……)」
老人「小僧ッ!!」クワッ
勇者「わっ! は、はいっ!」ビクゥ
老人「その若さでぼけっとしとるなや。ずっと呼んでおったじゃろうか」
勇者「あ、す、すまん。考え事してて。どしたのよ、じいちゃん」
老人「どうしたもこうしたもあるかい。大衆浴場は初めてかい?」
勇者「そうだけど」
老人「湯船にタオルは厳禁じゃ。汚いじゃろうが」
勇者「あ、そうなの?」
老人「あったりまえじゃて。それで身体をゴシゴシしとったろ」
勇者「でも、丸見えになっちゃうし」
老人「男同士でなんじゃ! きしょ! きっしょ!」
勇者「若者言葉使うんすね」
老人「とにかくじゃ、それは傍に置いとくんじゃよ。ルールっでもんがある」
勇者「すんません」ザパァ
老人「わかればよろしい」
勇者「じいちゃんもここに泊まってんの?」チャポン
老人「ここは浴場だけ村の共有スペースで解放されとるんじゃよ」
勇者「へー」
老人「有料じゃがな。一回2ゴールド」
勇者「宿屋利用者は宿泊料金に含まれると、いい村だね」
老人「なぁ~んにもない田舎も田舎じゃがな。通り道ぐらいしか利用はせんような」
勇者「でも、嫌いじゃないよ。俺は」
老人「ほっ⁉︎ ほっほっほっ! 変わった若者じゃの!」
勇者「そうかな?」
老人「若者は活気と娯楽をこのむじゃろ。住んでるのは八割方、よぼよぼのじいさんやばあさんじゃ」
勇者「……そういうもんか」
48 = 15 :
偽勇者「おらぁっ! ……ヒック」バァンッ
勇者「なんだ?」
老人「おお、勇者様ではございませぬか」
勇者「あれが?」
偽勇者「うぃ~っ、ヒック」ヨテヨテ
老人「いかん、かなり酔っ払っておる」ザパァ
偽勇者「あー、飲みすぎた。しっかし、村娘とこのあと……ぐふっぐふふっ」
老人「勇者様。深酔いにお風呂は危険でございますじゃ」トテトテ
偽勇者「あん?……ック」
老人「しばらく外で休んでからの方が」
偽勇者「うるせぇっ!」ブンッ
老人「な、何を……!」
偽勇者「俺は勇者なんだぞぉっ! ほっとけってんだ! じじいコラァ!」
老人「ひ、ひぃ」ドサッ
偽勇者「けっ、よぼよぼのち◯こ見せてんじゃねえっっての」
勇者「……おい」ザパァ
偽勇者「あ?」
勇者「老人は労わるもんだ。親に教わらなかったのか?」
偽勇者「なんだァ? テメエ? 勇者に文句あるっての」
勇者「立派だろうが。シワシワのどこが悪い」
老人「よい、よい。若者よ。ワシのことなぞ」
偽勇者「あ、お前も逆らう気か? 勇者であるこの俺様にィ!」
勇者「逆らう? 勘違いすんなよ。俺はハナからお前のことなんか眼中にない」バチ バチバチ
偽勇者「んだとぉ!」
勇者「じいちゃん、浴室から出ろ」
老人「し、しかし……」
勇者「ここからは俺とこいつの問題だ。余計な口出して悪かった」
老人「……! ま、待っとれ! すぐに人を呼んできてやる!」ワタワタ
49 = 15 :
偽勇者「ヒック……味方がいっちまったぞぉ? 味方っていってもじじいだが」
勇者「“勇者”」
偽勇者「あ?」
勇者「勇ある者。聞こえはいいよな。人間の希望。魔王を討ち亡ぼす。まさに英雄ってわけだ」
偽勇者「そうだ! 俺は偉いんだ!」
勇者「履き違えるな。勇者は偉くなんかねぇ、ただの、孤独だ」
偽勇者「はっ、あっはっはっはっ! なに言ってるんだぁ! 勇者の力があれば金も! 女も! 自由だ!」
勇者「……」
偽勇者「俺こそが勇者なんだ! お前もひれ伏せェ!」
勇者「少し羨ましい。そう開き直って考えられるお前が」
偽勇者「ヒック」
勇者「ひとつ! 勇者家家訓! 人に迷惑かけるときは、自分が迷惑と思うことはやっちゃいけません!」バチバチ
偽勇者「あっ、な、なんだ。痺れてきた」
勇者「ふたつ! 勇者家家訓! 人に迷惑かけるときは、まず自分に置き換えて考えなさい!」ピシャンッ
偽勇者「あばばばばばっ、痺れ」
勇者「みっつ! 勇者家家訓! 勇者たるもの、老人には優しくしなさい! ……目一杯力加減してやる、明日の朝までオネンネだろうが、勘弁しろよ」
偽勇者「ひっ、ま、まさか、その魔法は」
勇者「──……魔力を雷に変えて、射貫け。ライデイン」
50 = 15 :
【宿屋 部屋】
魔法使い「な、なに?」ズゥゥゥーーン
戦士「地震か?」
僧侶「どうやら、勇者ごっこは終わりみたいですねぇ」
魔法使い「ごっこ?」
僧侶「なにやら面白そうですしぃ、私たちも行ってみませんかぁ?」
戦士「地震じゃないのか?」
魔法使い「魔力の波動を微かに感じる……これって」
僧侶「さぁてぇ~?」
店主「あんた達!大丈夫かい⁉︎」バタン
戦士「女将。こちらは別になんともないが」
店主「それがもう、大騒ぎさ! 浴場の常連客にじいさまがいるんだけどね!」
魔法使い「落ち着いて」
店主「年甲斐もなく取り乱しちゃって。あの勇者! ニセモノだって話だよ!」
戦士「なんと!」
魔法使い「……」
店主「相当酔っ払って脱衣所に落としてたんだって! ツルギを!」
僧侶「ツルギというとぉ?」
店主「なんでも魔法剣ってやつがあるらしいじゃないのさ! 爺さまでさえ使えば雷を落とせるなんて!」
戦士「それはそれで驚きだな。レア中のレアだぞ」
店主「どこで拾ってきたんだろうねぇ。胡散臭いと思ってたんだよ、あたしゃ」
魔法使い「じゃあ、さっきの振動はその剣を振ったもの?」
店主「あぁ、そうだった! 浴場に急がなきゃ!」ドテドテ
戦士「そういや、浴場にはもう一人いたな」
魔法使い「……そのようね」
みんなの評価 : ○
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