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    元スレ勇者「ニートになりたい」

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    101 = 15 :

    【宿屋 食堂】

    勇者「なぁ、いじけるのはよせって。ピオリムなんて使わないだろ?」

    魔法使い「付加価値のある杖ってだけでハクがつくんだから!」

    勇者「そんな、使わない機能があっても」

    魔法使い「全部あんたが悪いのよ! 貧乏なくせに! 貧乏なくせに!」ゲシゲシ

    勇者「や、やめてたもれ~」

    僧侶「私のゴスペルリングの効果はパーティに適用されますので、このまま進めなくはできなくはないですけどぉ」

    戦士「ろくに戦闘をしていない。レベルアップどころの話ではないぞ」

    勇者「うっ」

    戦士「ダーマに着く頃にはかなり強いモンスター達が闊歩する場所になる。はたしてこのままでいいのやら」

    魔法使い「私はイヤよ! なにもできずに死ぬなんて!」

    戦士「……勇者はどうなんだ? 戦っているところを見たことがない」

    勇者「俺? それなり」

    戦士「それなりとは、かなりのは幅がある」

    勇者「すまん、正直本気がどこまでかは俺もわからんねーんだ」

    魔法使い「……どういう意味?」

    勇者「本気だしたことないから、俺」

    戦士「それは、なにもしなくてもまわりが倒してくれたとか」

    勇者「ああ、いやいや、勝負で苦労したことないの」

    戦士「……」ギラッ

    勇者「……なぁ、なんか逆鱗踏んだ?」

    僧侶「というよりぃ、好奇心にぃ」

    戦士「ふ、ふふっ、それは面白いなぁ。これまで城の猛者供と手合わせしていたそうじゃないか? 噂には聞いてるぞ」

    勇者「い、いやぁ~。噂って尾ひれがつくもんじゃない?」

    戦士「アデル城の戦士長といえば、我が師の同僚だったお方。そのお方とも手合わせをしているはずだよなぁ~」スラッ

    勇者「なぜに剣を抜かれる?」

    戦士「苦労したことが、ない? ほほう。それはそれは……」ガタッ

    勇者「なぁ、僧侶、出店見に行かない?」

    僧侶「今はちょっとぉ~」

    戦士「おい、勇者ッ……表、でろっ!!」バンッ




    102 = 15 :

    【マッスルタウン 宿屋 表通り】

    僧侶「二人ともがんばってぇ~!」

    魔法使い「(勇者……伝説の。本当に強いのかしら)」

    勇者「なぁ~んでこんなことになっとるのかねぇ~」

    戦士「剣を抜けッ!!」チャキ

    勇者「そろそろ頭冷やせって。俺が本気だしたことないってのはそういう意味じゃない、怠けてただけだっての」

    戦士「それなりにと言ったではないか!」

    勇者「あー、うん、まぁ、でもそれは俺の中での話だから。全然たいしたことないんだって」

    戦士「伝説の存在……ずっと興味があった! いつか手合わせしてみたいと願っていた!!」

    勇者「……チッ、またかよ」イラァ

    戦士「さぁ、剣を抜け」

    勇者「また、“勇者”かよ」

    戦士「それとも、私では剣を抜くにすら値しないとでも言うつもりか!」キッ

    勇者「……ふぅ」ニコ

    戦士「どうした?」

    勇者「俺の負けだ。頼む、剣を収めてくれ」

    戦士「きさ、ま……っ! それでも男か! 神聖なる決闘を前にして、侮辱する気か!」

    村人達「なんだなんだ? 決闘か? いいぞーやれやれぇー!」ガヤガヤ

    勇者「なぁ、そんな熱くならなくても」

    戦士「私は……っ! 私はこの剣に人生を賭けた! 雨の日も風の日も、オンナを捨て、指のマメが潰れても振り続けたッ!!」

    勇者「……」

    戦士「その、誇りを……誇りを貴様は侮辱するというのか……?」

    武闘家「なんだ……?」

    老人「喧嘩アルか? ……む、あやつは」

    武闘家「……師匠、知り合いですか?」

    老人「面白い見世物にナルヨ。ワシらも見物していくアル」

    勇者「はぁ……わかったよ」スラッ

    戦士「……恩にきる。一方的な勝負だとは理解してる」

    103 = 15 :

    勇者「勘違いしないでほしいんだけど。勇者ってのは、ある一点に優れてるわけじゃないんだ」

    戦士「……?」

    勇者「なんでもオールマイティーにこなす。戦士みたいな魔法を使えないかわりに、腕力に一点振りしてるではなく」

    戦士「それがどうした」

    勇者「魔法剣士に特性は近いと思うよ。両立させるという意味では。ピオリム」ポワァ

    戦士「むっ……!」

    勇者「意味がわかったろ? 自分で自分をサポートできるんだ。スクルト」ポワァ

    戦士「くっ、ま、まずい」ダダダッ ブンッ

    勇者「全部の呪文をカバーしてるわけじゃ、ないんだけどねっと」ヒョイ

    戦士「そっちか!」ブンッ

    勇者「あらよっと」ブンッ

    ――ガキィンッ――

    戦士「……くっ」ギリギリ

    勇者「ね? タネがわかればしょーもないだろ?」トンッ

    戦士「なるほど、たしかに。勇者とやらは便利だな」

    勇者「前衛、後衛、どっちでもできるからなぁ。ただ、特化はできないけど」

    老人「弟子よ」

    武闘家「はい、師匠」

    老人「どっちが勝つと予想するアル」

    武闘家「五分五分じゃないでしょうか。自魔法サポートは良いですが、自力の勝負で男の方が負けてる気がします」

    老人「アイヤー。本気で言うとるアルか」

    武闘家「ち、違うんですか?」

    老人「お主の目は節穴ネ。あれはただ教えとるダケよ」

    武闘家「……」

    老人「ワシとオマエみたいな関係ネ。まだ全然ホンキじゃないヨ」

    104 = 15 :

    【数分後】

    戦士「はぁっ、はぁっ」チャキ

    勇者「(そろそろ頃合いか。手を抜いたと悟らせないにも神経使うんだよなぁ。小石につまずいてっと)」ズルっ

    戦士「……っ! 勝機っ! くらえっ! ハヤブサ斬り!!」ザシュ ザシュ

    勇者「うっ、し、しまっ」カキーーン

    老人「わざと剣を手放しおったな」ボソ

    武闘家「……」ジィー

    戦士「はぁっ、はぁっ、どうだっ!」チャキ

    勇者「……まいった。すげーよ」

    村人達「おお~! なかなかレベル高い決闘だったぞぉ」パチパチ

    僧侶「お二人ともかっこよかったですよぉ~!」パチパチ

    魔法使い「(たしかに便利だけど。自力は戦士の方が上ってことか。器用貧乏ね)」

    老人「あの負け方はダメアルねー。後々、恨まれるアル」

    武闘家「師匠、やはり、私には違いが」

    老人「オマエよりも強いヨ。アレ」

    武闘家「え、えぇっ⁉︎」

    老人「ワシの見立てでは女戦士よりちょっぴり強いぐらいアル。オマエ」

    武闘家「そんなことありません! あんなやつすぐに倒せます!」

    老人「それがちょっぴり言うテルネ。どんぐりの背比べ。ワシから見たらどっちも弱いシ」

    武闘家「……で、では、師匠が強い認める強さとは」

    老人「ワシより強くねー? て思うぐらい」

    武闘家「……!」ギロッ

    老人「ふぉっふぉっふぉっ、一気に闘志が燃えあがたネ。嫉妬したカ」

    武闘家「し、失礼しました。でも、あの男、何者……」

    105 = 15 :

    戦士「立てるか?」スッ

    勇者「お、おう、さんきゅ」

    戦士「自魔法サポート。非力な後衛職、力だけの前衛職ではできない戦い方に脱帽した」

    勇者「よせやい」

    戦士「勇者というだけのことはある。危なかったぞ」

    勇者「うんうん、いい汗かいたな」

    戦士「あぁ。こんなにもやっていて充実していたのは師匠とやって以来だ。なにやら指導を受けていたようにすら感じる」

    勇者「あ、そ、そう」

    戦士「……いや、それほどあたしたちの力が拮抗していたのだろう。改めて感謝する」

    勇者「もうやめようぜ、さ、メシメシ」

    老人「ちと待つアル。ワカモノよ」

    戦士「失礼だが、どちらだ?」

    老人「ネーちゃんじゃないアル。用があるのはニーちゃんネ」

    勇者「じーちゃん、なんだ?」

    老人「ちこうよるアル」チョイチョイ

    勇者「……?」

    老人「もっとアルもっとアル。耳貸すアルよ」

    勇者「なんだ? おひねりでもくれんのか?」

    老人「お主、手を抜いたロ?」コショ

    勇者「……おっとぉ~」

    老人「バラされたくなければ、ついてくるヨロシ」

    戦士「勇者、どうしたんだ?」

    老人「呼ばれている名についても、色々と聞きたいことがあるネ」

    106 :

    全員キャラ立ちしててすごくいい

    107 = 15 :

    【武闘家 家】

    老人「話というのは他でもないアル」

    武闘家「師匠、お茶をお持ちしました」コト

    老人「ワシの弟子と結婚しない?」

    武闘家「し、師匠っ⁉︎」バシャアッ

    勇者「あっちゃぁっ!!」アタフタ

    武闘家「な、なにを言いだすのですか⁉︎」カランカラン

    老人「客人におもっくそぶちまけとるけど」

    勇者「あつっ!あっつぅっ!」

    武闘家「私はまだ修行中です! 先日正拳突きを覚えたばかりではないですか!」バシャア

    勇者「おかわりっ⁉︎ ぎゃあっ!」

    老人「おい、大丈夫カヨ」

    勇者「~~ッ!」ゴロゴロ

    武闘家「男なぞ興味ありません!!」

    老人「転がってるが」

    武闘家「聞いてますか!! 師匠!!」バンッ

    老人「落ち着くヨロシ」

    武闘家「なぜ、そのような提案を」

    老人「子供が強くなりそうネ」

    武闘家「それにしても浅はかです! 撤回してください!」

    老人「わかた、わかたネ。ドウドウ」

    武闘家「……」ブスゥ

    老人「して、勇者とやら。オイ」

    勇者「~~ッ!」ゴロゴロ、

    老人「すまんネ、ワシ、お茶は目一杯暑くするヨ」

    108 = 15 :

    【数分後】

    老人「落ち着いたカヨ」

    勇者「た、たいしたもんだ」

    老人「あれに対応するのは難儀ダロヨ。ワシでも無理」

    武闘家「……」プイ

    老人「話を戻すネ。勇者か?」

    勇者「うん、そだよ」

    武闘家「……っ!」ジィー

    老人「これ。パンダじゃないんだから好奇の視線で見るヨクナイ」

    武闘家「あ、すみません、つい」

    老人「やりとりだけならば冗談思うヨ。でも、オマエは実力もありそうネ」

    勇者「じいちゃんも極めてんな」

    老人「マスターと呼ぶイイヨ。若い頃はぶいぶい言わせたもんアル」

    勇者「……聞きたいってのはそんだけ?」

    老人「明日、コロシアムが開催されるアル。毎日開催してるケド」

    勇者「みたいだね」

    老人「お前も出場するアル。枠はチャンピオンから口きいてヤル」

    勇者「……なんで?」

    老人「マク・ドナルドがいいカ? リングネームは」

    勇者「なぁ、おい。このじいちゃんボケてんのか?」

    武闘家「凄くマイペースなだけ……師匠はこうなったら周りの意見なんか聞かないから」

    老人「……どこにやったカ」ゴソゴソ

    勇者「うぇ、なんで股間に手を突っ込んでるんだよ」

    老人「あったあった」ズポッ ヒラリ

    109 = 15 :

    武闘家「そ、それは……!」

    老人「光栄に思うヨロシ。ワシが若い頃つけてたマスクよ」

    勇者「ずっと入れっぱなしだったのかよ!」

    老人「これをかぶって、思う存分ヤッてこい。ほんで決勝で我が弟子をコテンパンにしてほしい」

    武闘家「……っ!」

    老人「コイツ、最近天狗になってるヨ。こんな街でコロシアムに参加させたのは失敗だた。鼻っ柱を折ってやってほしいネ」

    勇者「……えぇ、それかぶんのぉ?」

    老人「受けとれ」スッ

    勇者「い、イヤすぎるんだけど」

    武闘家「私がこいつに負けるとお思いですか!」バンッ

    老人「またデタよ。さっきも言うたネ。オマエよりもこっちのニーちゃんの方が全然強い。レベルそのものが違う」

    武闘家「……っ!」ギロッ

    勇者「なぜに睨まれるんです?」

    老人「未熟者の嫉妬ヨ。堪忍するネ」

    勇者「いや、それはいいけど。えぇ、俺が出るのぉ?」

    老人「さっきの女戦士。真実を知ったら激昂すること間違いナシよ。オマエも問題アル」

    勇者「うっ」

    老人「ああいうのはコテンパンにやっちまうネ。ありのままの強さを見せることが礼節」

    勇者「いや、しかし、立ち直れない可能性も」

    老人「今後の人間関係に影響するカ?」

    勇者「……」

    老人「そうなったらそれまでの関係ヨ。取り繕ったオマエはヒキョウモノに違いナイ」

    勇者「ぐぬぬ」

    老人「勇者とか全部置いて、一旦忘れるヨ。オマエは明日だけはマスクマンネ」

    110 = 15 :

    【宿屋 部屋】

    魔法使い「ねぇ、勇者って結局どんくらい強かったの?」

    戦士「質問の意図がわかりかねる。見ていただろう?」

    魔法使い「うーんと、要するに、魔王と渡り合えると思った?」

    戦士「いや、それはどうだろうな」

    魔法使い「無理そう?」

    戦士「無理とは言ってないが。個人でとなると厳しいだろう」

    僧侶「くすくす」

    魔法使い「なにがおかしいのよ」

    僧侶「強さ議論をしているのがおかしくてぇ~」

    魔法使い「どーゆー意味?」

    僧侶「彼はそういう次元にいるんじゃないんですよぉ」

    戦士「……?」

    僧侶「女神様が人間と力比べをなさるはずがありません~」

    魔法使い「はぁ、教会特有の信仰心ってやつ」

    僧侶「いいえ~真実ですよぉ~」

    魔法使い「女神の祝福ねぇ、どういう形で現れるんだろ」

    僧侶「勇者さまはありがたぁ~いお方なのですぅ~」シミジミ

    戦士「……ふむ」

    勇者「ただいま」ギィ

    僧侶「おかえりなさいませ~」

    戦士「おう、あの老人は何の用だったんだ?」

    勇者「明日さ、出発しないことにした」

    魔法使い「えっ?」

    僧侶「どうして突然~?」

    勇者「うん、まぁ、なんていうか、家の修理を頼まれちゃって」

    戦士「修理? いきなり他人にそんなものを頼むのか?」

    勇者「いや、ほら。俺って手持ちの金が一番少ないだろ? 賃金はずむっていうから引き受けたんだ」

    魔法使い「……ふぅ~ん、まぁそれはそうだけど」

    勇者「明日は、みんな自由行動でいいよ」

    僧侶「ついていってもよろしいですかぁ?」

    勇者「いやぁ~それはやめといたがいい。気難しい爺さんだったから。なんでも、オンナが嫌いらしい」

    戦士「変わった老人だな」

    勇者「そういうわけだから。観光でもしてきてくれよ。な?」

    111 = 15 :

    【武闘家 家】

    老人「まだ納得してないアルカ。明日になればわかることヨ」

    武闘家「あたっ!! ほあっ!!」ビュッ ビュッ

    老人「今日はそれぐらいにしとくネ」

    武闘家「はぁっ、はぁっ」

    老人「……」

    武闘家「師匠。ひとつだけ聞かせてください。伝説の存在の勇者、師匠はワシより強い? と疑問系で言ってました」

    老人「たしかに」

    武闘家「改めて対峙してみて、いかがでしたか。師匠ほどのお人であれば、力量がわかるはず」

    老人「引退したとて、格闘家のはしくれ。負けるとは口がサケてもいえないヨ」

    武闘家「……では」

    老人「今の言葉の中のどこに勝てると言ったカ? 察するネ」

    武闘家「……っ! では、師匠の全盛期ならばどうですかっ!」

    老人「……イメージがわかない。こんなのハジメてのことヨ」

    武闘家「イメージ……?」

    老人「ワシが見下ろしてるイメージヨ。倒れているものを」

    武闘家「……」ゴクリ

    老人「これまで、ゴッドハンドと呼ばれる者と対峙した時でさえ、そのイメージは持てたネ」

    武闘家「……伝説に、偽りなしですか」

    老人「女神の加護、ありゃバケモン。ヒトでは勝てるもんではない。遠慮なく全力で当たって砕けるヨロシ」

    112 = 15 :

    今日はここまで。

    115 :

    これって長編予定だったりすんの?面白いからいいけど

    116 :

    やばいこれ昔の良SSを彷彿とさせる

    118 = 117 :

    すません。レスしようと思ったらアイポン電源が切れました。
    俺たちの戦いはこれからだ!でいつでも終わらせられるとだけ。
    掘り下げてキレイにまとめて書ききろうと思ったらたぶん800あたりまで行きそうかも。

    119 = 15 :

    【翌日 マッスルタウン メインストリート】

    ――ヒュルルルルゥ~~ ドンドンッ パラララッ――


    僧侶「わぁ、花火ですよぉ。昼なのに豪華ですねぇ」

    魔法使い「うるさいなぁ。イオ系でも放てばいいのに」

    戦士「活気を演出しているんだろう。客寄せだな」パクッ

    魔法使い「どこで買ってきたの? しかも、その量」

    戦士「んっ? んむっ、んまいぞ。食うか?」

    魔法使い「たこ焼きにフランクフルトにイカ焼きに……よく持ちながら食べられるわね」

    戦士「食べて減らしているからな!」キラン

    受付「エントリーがお済みの方はこちらが入場口になってまーす、番号札を持って順番にお入りくださーい!」

    魔法使い「今からはじまるみたいね、コロシアム」

    僧侶「実際に見たことはないんですけどぉ、どういうシステムなんですかぁ?」

    戦士「予選を突破した者同士の勝ち抜きトーナメント制だ。武器の使用は認められている」

    魔法使い「え、それって怪我するんじゃ」

    戦士「ありだ。ただし、殺しは即刻牢屋行きになる」

    魔法使い「事故とか、ないの?」

    戦士「これまでそんな話は聞いたことないよ、あむっ」モグモグ

    ??「おっと、すま……」ドンッ

    戦士「あっ」ポト

    ??「あ、あれ? お前ら」

    戦士「あ~~~っ!! あたしのたこ焼きがぁっ!!」コロ

    受付「まもなく番号札の配布を締め切りまーす! まだの方はお急ぎくださぁーい!」

    ??「す、すまん。先を急ぐので」

    僧侶「見慣れない中華服とマスクでしたねぇ。どこかで聞いた声をしていたような……?」

    魔法使い「気のせいでしょ。あんなヘンチクリなの知り合いにいないし」

    戦士「あ……あ……」ガクン

    魔法使い「ちょ、膝ついてやめてよ。みっともない」

    戦士「うぅ~。タコちゃん」グスン

    僧侶「たこ焼きなら私が買ってあげますからぁ」

    戦士「まことか!」パァ

    僧侶「ちなみにぃ、コロシアムの観戦料金っておいくらなんでしょぉ~?」

    121 = 15 :

    【コロシアム 控え室】

    受付「マク・ドナルドさん、いらっしゃいますか?」

    マク「あ、はい」

    受付「チャンピオンからの推薦というお話なのですが、一応予選は受けていただきますので。こちらが日程になります」パサ

    マク「ふむふむ、午前が予選で午後が本戦か」ペラ

    受付「そうです。予選は無観客試合となりまして、この先にある広場でグループに分かれて行われます」

    マク「天下一武闘会モロパクr」

    受付「はい?」

    マク「いや、ごほん、なんでもない。割とオーソドックスな形式だからな。うん」

    受付「……? 登録される武器はいかがなさいますか?」

    マク「武器? 使っていいの?」

    受付「当たり前ですよ。職によって得意とする得物がありますし、無手が専門というのならそれでかまいませんが」

    マク「怪我大丈夫?」

    受付「素人同士ではありませんので。万が一、やりすぎた場合でも、五十人を超える医療スタッフが控えております」

    マク「へー。そうなんだ」

    受付「どうされます? 武器。なにも持ってきてないんですか?」

    マク「うん、てっきり、俺、素手でやるもんだと」

    受付「レンタルされますか? 強度に問題はありますが、使えなくはありませんよ」

    マク「うーん、レンタルねぇ」チラ

    受付「あの、まだ他の方にも聞いてまわらなきゃいけないので」

    マク「おねーさんが使ってるそれでいいや」

    受付「へ? 私ですか? ……ペンしかもってませんけど」

    マク「ペーパーナイフ。貸りるよ」

    受付「あ、あのー。やる気、あります?」

    マク「ない」キッパリ

    受付「……推薦なので、目を瞑りますが、早々に敗退なんてことになったチャンピオンにもペナルティありますので、一応」

    マク「なんでよ」

    受付「参加希望者は殺到しているからですよ。その貴重な定員枠をひとつ潰すのですから」

    マク「めんどくせぇ!」

    受付「本当にペーパーナイフでいいんですか?」

    マク「はぁ、いいよ。お姉さんの幸運がありそうだし」

    受付「……きっしょ」ボソ

    マク「聞こえるようにボソって言うのやめていただけるかな⁉︎」

    受付「わかりました。それでは、マク・ドナルドさんはペーパーナイフということで」カキカキ

    122 = 15 :

    レスですよレスw

    123 = 15 :

    【予選広場 グループD】

    マク「おー、いるいる」

    司会「みなさーん! ご静粛に! ご静粛にー! こちらに注目してくださーい!」バンバン

    マク「なんだ?」

    司会「これよりぃ、グループ毎に別れて乱戦を行なっていただきまーす! 勝敗はシンプルに最後の一人が本戦出場です! 人数多いのでお願いしまーす!」

    参加者達「もうはじめちまっていいのかぁ?」

    司会「レフェリーは本戦までいませーん! どうせみなさんのほとんどが雑魚ですしー!」

    参加者達「なんだとコラ!」

    司会「かませ犬はぱっぱっとやられちゃってくださーい!」

    参加者達「……」

    烈海王「私は一向にかまわんッ!」

    マク「えっ? おっ、おい」

    烈海王「私は一向にかまわんっ!!」

    マク「司会! 司会の人! どう見てもここにいちゃいけない人がいるよ! 勝てる気しない人が混ざってるよ!」

    司会「さぁ、どうぞー! はじめちゃってくださーい!」カーンッ

    マク「……」ゴクリ

    烈海王「……こぉ~」

    マク「あ、あのぅ~。あなた、海王ですよね? でちゃいけませんよね?」

    烈海王「邪ッー!! 言葉は要らぬッ!!」ズザッ

    マク「うおっ!」ヒョイ

    烈海王「女々しくも喋るかァッッ!!」クワッ

    マク「ひ、ひぃっ! こいつとやれよ! チャンピオン! ていうか、ふざけるじゃ……!」

    烈海王「む……」ピタッ

    マク「……?」

    烈海王「しまった、闘技場を間違えていたか」

    マク「あんたが行くのは地下だよ! ここじゃねぇよ!」

    烈海王「失礼する」スタスタ

    マク「……か、勘弁してくれよ」タラ~

    124 = 15 :

    【コロシアム 観客席】

    僧侶「すごい人だかりですねぇ。何人ぐらいいるんでしょう」

    戦士「見た所、あむっ、三千人ぐらいじゃないか」

    僧侶「大きな建物だったんですねぇ」

    魔法使い「外から見る分にはガワだけだしね。収容人数はそんなに入るんだ」

    老人「おろ、お主は」

    戦士「……? お、昨日のご老人ではないか」

    魔法使い「勇者が家の修理にっていってた人?」

    僧侶「主人がいつもお世話になっておりますぅ~」

    魔法使い「いつ結婚したんだ、あんたらは!」

    老人「そうカ。そういう話になってるカ。つったっとら邪魔ヨ。座るヨロシ」

    魔法使い「いいんですか?」

    老人「む?」

    僧侶「女性が苦手なのではぁ~?」

    老人「なに寝ぼけたこといってるカ。若い頃は日替わりでとっかえひっかえネ」

    戦士「それはどうかと思うが……勇者は」

    老人「細かいことはいいネ。デモンストレーションはじまるヨ」

    司会「皆さまぁ! お待たせいたしましたぁ! 現っ! チャンピオン! 女武闘家さんの入場でぇぇーーすっ!!」

    武闘家「……」スッ

    観客「おおーっ! 出てきたぞぉーー!」

    観客「きゃーーっ! チャンピオーーン!」

    司会「初壇上から負け知らず! 並み居る猛者をばったばったと倒して気がつけばチャンピオン! そう! 私こそがチャンピオン! 好きなものはぬいぐるみと乙女チックだー!!」

    武闘家「ちょっ」アタフタ

    司会「ただいま予選を行なっておりまして、この後、本戦へと進みますがまだ少々お時間がございます。その間、チャンピオンに一戦してもらおうぜー!!」

    観客達「オォーーッ」ガヤガヤ

    僧侶「耳がキーンってしますねぇ」

    戦士「チャンピオンは目玉だからな」

    老人「まったく、勘違いしすぎヨ」

    魔法使い「勘違い?」

    老人「観客達に言うてナイネ。言うてるのはあのバカ弟子ヨ」クィ

    武闘家「……」ペコリ

    老人「声援なんぞに応えおってからに。なにしにきたのか本分を忘れてるアル」

    戦士「弟子とは……? ご老人、あなたの弟子なのか?」

    老人「そうヨ。不甲斐ない弟子を持って穴に引きこもりたい気持ちネ」

    僧侶「わぁ、じゃあ、お爺さんも強いんですかぁ?」

    老人「当たり前ヨ。強さなんてのは――」

    観客「キャーーッ! キラーパンサーよーー!」

    魔法使い「キラーパンサー⁉︎ 大人の⁉︎」ガタッ

    125 = 15 :

    キラーパンサー「グルルッ」ズザッ

    武闘家「すぅ~……はぁ~……」キッ

    戦士「なるほど、デモンストレーションとはこのことか」

    老人「バカバカしいヨ」

    魔法使い「戦士だったら勝てそう?」

    戦士「勝てないことはないだろうが、簡単にとはいかない――」

    武闘家「哈っ(はっ)!!」パァンッ

    キラーパンサー「ギャウッ⁉︎?」ドンッ ドサッ

    僧侶「壁に叩きつけていっぱつ……ワンパンってやつですねぇ」

    観客「うおおおおおおっ!! 強えっ!! お前こそがチャンピオンだ!」

    戦士「……」

    魔法使い「戦士より、あのチャンピオンって強いみたいね……」

    老人「昨日の戦いぶりを見させてもらたアル」

    戦士「ん? あたしか?」

    老人「潜在能力ならうちの弟子とどっこいね。武闘家志望なら弟子にとってたが、生憎と剣士のようだシ」

    戦士「あたしは、ちゃんと尊敬する師がいるよ」

    老人「研鑽を忘れないように。光るモノはオマエももってるゲド、使わなければサビついてしまう」

    戦士「ご忠告、覚えておこう」

    老人「弟子といいライバルになりそうでなによりネ」

    魔法使い「勇者じゃライバルってわけにはいかないもんねぇ」

    戦士「あいつとも実力は近いよ。そうだ、今度定期的にやるか誘ってみるか」

    老人「……やめとくアル」

    戦士「……?」

    魔法使い「おじいさん、やめるってなんで?」

    老人「あいつとやったって稽古にならないヨ」

    僧侶「あっ、帰っていくみたいですよぉ~」

    武闘家「……」フリフリ ペコリ

    観客達「チャンピオン! チャンピオン! チャンピオン!」

    126 :

    【予選広場 グループD】

    マク「――チキンナゲット5ピース拳っ!」ドンッ

    ならず者「ぐえっ」ドサッ

    司会「おっ! グループDは今ので最後ですねー! ……えぇ~とぉ、マク・ドナルドさん本戦進出けってーい!」カーンッ

    マク「ふぅ、やれやれ。異文化コミュニケーションした時はどうなることかと思ったが」

    武闘家「……」スッ

    マク「おっ、よぉ」

    武闘家「素手でやってるの?」

    マク「ん? うん、まぁ」

    武闘家「師匠はああ言ってるけど、アタイ、信じられない」

    マク「いいんじゃないか、それで。言われてもわかるもんじゃないだろ」

    武闘家「それは、体験させるって言いたいの?」

    マク「なんでそう物事を……斜に構えてとらえるんですかねぇ」

    武闘家「本気じゃないから」

    マク「む?」

    武闘家「苦労した人にはね、ムカつくのよ。あなたみたいな人」

    マク「……」

    武闘家「アタイだって、昔から才能があると言われつづけてきた。でも、師匠に出会い、天賦の才に奢っていたのは自分だと気がついた。……そして努力するようになった」

    マク「……」

    武闘家「――あんた、努力したことないだろ」

    マク「んー」ポリポリ

    武闘家「師匠は今のアタイが気にいらないんだ。鼻を折るつもりだろうけど」

    マク「そう言ってたなぁ」

    武闘家「これはチャンス! 師匠にアタイの努力を見てもらうための! ……積み重ねてるものを……!」

    マク「なぁるほど」

    武闘家「勇者だかなんだか知らないけど、踏み台になってもらう。……じゃ」クルッ スタスタ

    マク「……勇者と思わない、か。嫌いじゃないねぇ。ああいうの」

    127 = 15 :

    【コロシアム 観客席】

    司会「れでぃぃぃすあんどじぇんとるめーーん! いよいよ本戦の開幕デーーーースっ!!!」

    観客達「おおおおおぉぉぉーーっ!!!」

    司会「十連続防衛中のチャンピオンの牙城を崩すやつはどいつだ! はたまた今回も防衛して破竹の新記録をたっせいするのかぁーーーっ! 無謀な挑戦者たちはぁ、こいつらだぁーーーっ!!」

    僧侶「いよいよ本戦みたいですねぇー」

    戦士「やはりこの空気はビリビリとくるものがある」

    老人「口上で誤魔化してるダケヨ」

    魔法使い「あっ、出てきた」

    老人「さて、どこにおるアルカ」キョロキョロ

    僧侶「チャンピオンの他にも知り合いがいらっしゃるんですかぁ?」

    老人「今回の本命ヨ」

    戦士「本命とは? 普通、弟子だろう?」

    老人「ワシの弟子は負けるネ。ネタバラシて悪いけど確定ヨ」

    魔法使い「えっ」

    マク「……」スタスタ

    老人「うんうん、ちゃんと勝ち進んでいるアルな」

    僧侶「あのお方は~……」

    魔法使い「コロシアムの外で戦士とぶつかったやつじゃなかった」

    戦士「あたしはたこ焼きしか見てなかった」

    僧侶「くすくす。花より団子ですねぇ」

    老人「女戦士よ」

    戦士「なんだ?」

    老人「アレをよく見ておくよろし。一挙一動、目を離さずに」

    戦士「……?」ジィー

    老人「勉強にはならないダロけど、気がつくものがあるカモしれないネ」

    僧侶「と、いうことはぁ……あの選手が本命さんですかぁ?」

    老人「台風の目といっても過言ではないヨ」

    魔法使い「べ、べた褒めね」

    老人「当たり前ヨ。強者たるもの、自分より強い者を褒めんと、なにを褒めるノヨ」

    戦士「なに……?」

    老人「独り言ヨ。聞き流すよろし」

    128 = 15 :

    【一回戦 マクvsナルシストな優男】

    マク「んーとぉ、決勝までは三回勝たなきゃいけないわけか。チャンピオンってその間待つだけなの?」

    「ふっ。貴様も運がないやつだ!」ビシィ

    マク「運はないと思う、たしかに」

    「一回戦からこのオレに当たってしまうとは……だが、情けはしないよ。なぜなら、女たちが悲しんでしまうから……」

    マク「……」

    「かっこよすぎるオレの罪……あぁっ! マーベラスッ!!」

    レフェリー「間もなく試合が開始される。準備はいいか?」

    マク「ああ」

    「いつでも」

    レフェリー「よし。まず、殺しはご法度だ。このルールだけは守れよ。じゃないと牢屋行きだからな」

    「心得ているよ。そうなったら女たちが」

    レフェリー「話を続ける。尚、この説明は一回戦のみとする、あとは割愛するからそのつもりで」

    「彼には必要なかったろう」

    マク「了解だ」

    レフェリー「双方、立ち位置につけ」

    「5秒で屠ってあげよう。せめてもの情けだ」ザッザッ

    マク「……」ザッザッ

    レフェリー「よし、位置についたな。……オーケーだ! ゴングを!」フリフリ

    司会「一回戦の準備が整ったようです! キザな優男さんは前回の準々決勝で惜しくも敗れました! 今回は前回よりも高みを目指せるか! 注目の選手です!!」

    129 = 15 :

    観客「優男さーーーんっ!!」

    「ふっ」キラン

    司会「対するは、マク・ドナルド選手! チャイニーズの装いでマスクをかぶるというなんともあべこべな出で立ちですか実力やいかに!!」

    マク「(……だりぃ)」

    司会「それでは、レディィイッ! ゴォォオーッ!」カーン

    「……さぁ、このレイピアの餌食となるか?」ジリ

    マク「5秒じゃなかったのかよ。さっさとこいよ」ダラー

    「むっ、武器は無手か? クローもないのか?」

    マク「ああ、これ」スッ

    「なんだね、それは」

    マク「ペーパーナイフ」

    「ほ、ほう……」ヒクヒク

    マク「ほれ」スッ

    「なにをしているんだね……?」

    マク「構えた」プラプラ

    「ふ、ふっふっふっ、なぜ貴様のようなやつが本戦に」

    マク「はよこい」

    「よかろうッ! 医務室で後悔するがいい!!」ダンッ ダダダッ

    マク「バリューセット」スッ

    「……っ⁉︎」

    マク「てりやき三段突きっ!!」ドンドンドンッ

    「なっ、はやっ……ッ⁉︎ がはっ!!」ドサァ

    マク「おっちゃん。医務室に連れてってやれ」クルッ

    レフェリー「おっ、お、えっ?」

    司会「おーーっとぉ!! どうしたことだこれはぁ!! 優男選手が向うもあえなく返り討ちぃーー!! 倒れてしまったーー!」

    「」

    レフェリー「泡ふいてる。だめだな、こりゃ」フリフリ

    司会「あーーっとぉ! レフェリーが腕を交差したぁ! けっちゃーーくっ! なんともあっけない幕切れ!! マク・ドナルド選手の圧勝だぁーーっ!!!」

    130 = 15 :

    【観客席】

    戦士「……」ジィー

    老人「どうネ。理解できたカ?」

    魔法使い「あの相手が弱かっただけじゃないの?」

    老人「弱いヨ」

    魔法使い「な、なんじゃそりゃ」ズル

    老人「というか、この大会自体出てるやつみんな弱いネ。ワシから言わせれば。その中で順位競ってるカラ、滑稽なのヨ」

    戦士「たしかに、はやかったが」

    老人「情報量が少なすぎタカ」

    僧侶「あの、でもぉ、準々決勝ならそれなりだったんじゃぁ」

    老人「他と比べて普通ぐらいカヨ。次いってミヨ」

    魔法使い「それにしても、だるそーにしてたわね。あのマク・ドナルドって人」

    老人「かっかっかっ! そらそうよ! 遊び相手にもならんモノ」

    僧侶「……でもぉ、どこかで見たことがあるようなぁ~」

    131 = 15 :

    【準々決勝 マクvsおかっぱの女】

    マク「女かよ」

    おかっぱ「……オトコ、男、むおおおおおっ!」ムキムキ

    マク「訂正、女じゃなかったわ」

    司会「おかっぱの女選手は前回の決勝進出選手なので、シード扱いとなります。よってぇ! 準々決勝はぁ、このカードだぁー!」

    マク「シードなんてあったのか。んー、あ、表をよく見ると武闘家は反対側から勝ち進んでるのね」

    おかっぱ「おとこおおお、おとこおおおおっ!!」

    マク「別の意味で身の危険を感じる」

    司会「マク・ドナルド選手は初出場ながらも、初戦は見事な勝利をおさめました! その実力はホンモノなのか! レディィイッ! ゴォォオーッ!」カーン

    おかっぱ「むふーっ、むふーっ」ズシン ズシン

    マク「おわかりいただけるだろうか」

    おかっぱ「むふーっ、むふーっ」ズシン ズシン

    マク「身長2メートル、体重100キロを超そうな体躯をした女が向かってくる恐怖を」

    おかっぱ「ぎぁあああおっ」

    マク「恐竜のような雄叫びをあげている様を」

    おかっぱ「どっせえぇいっ!!」ブンッ

    マク「おっ」ドンッ

    司会「おかっぱ選手の張り手がマク選手にクリーンヒットォ!! 直撃だぁーーっ!!!」

    マク「……シャオリーです」タンッ

    司会「しかーし! なにごともなかったかのようにしているぅー!」

    マク「また海王でてきたらこわいからここまでにしとくか。ほら、こいよ」クイクイ

    おかっぱ「おとこおおおおおおっ!!」ズンズンッ

    132 = 15 :

    【観客席】

    魔法使い「なんか飽きてきた」

    老人「オマエ魔法職。なら、見ていて楽しいモンではないヨ」

    魔法使い「賭ければよかったかな。戦士、誰かに賭けてる?」

    戦士「……」ジィー

    魔法使い「って、聞いちゃいないか」

    僧侶「私は賭けましたよぉ~」

    魔法使い「いつ? ていうか、ほんと抜け目ないわよねぇ」

    僧侶「魔法使いさんがヌケサクなんですよぉ~」

    魔法使い「そ、そう……! ケンカ売ってるわけね?」

    僧侶「誰に賭けたか気になりませんかぁ?」

    魔法使い「聞いてほしいなら素直に……誰よ」

    僧侶「マク・ドナルド選手ですぅ~」

    魔法使い「へー、おじいさんの話がホントなら優勝するんでしょ? よかったじゃない」

    僧侶「はい~。初出場ということもあってぇ、オッズは150倍でしたぁ」

    魔法使い「大穴ね。いくらかけたの?」

    僧侶「全財産です~」

    魔法使い「ぜっ……や、やるわね。でも、もし負けたら返ってこないわよ?」

    僧侶「第六感を信じようと思いましてぇ」

    魔法使い「まぁ、あんたのお金だからいいけど」

    僧侶「魔法使いさんのお財布もですよぉ~」

    魔法使い「……えっ」

    僧侶「さっき、席を外した時に麻袋から持っていきましたぁ」

    魔法使い「ちょ、ちょっと~、タチの悪い冗談やめてよー……」ゴソゴソ

    僧侶「……」ニコニコ

    魔法使い「な、ないっ! ない! うそ⁉︎」ブンブン

    僧侶「ですからぁ~」

    魔法使い「僧侶っ! あんた⁉︎」

    僧侶「みんなでマクさんを応援しましょ~」ニコニコ

    老人「やるアルネ。オマエ」

    133 = 15 :

    今日はここまで。意外に進まない

    134 :

    キリのいいところまで書いてしまいます

    135 = 15 :

    【決勝 マクvs女武闘家】

    司会「青コーナー! 連戦無敗のチャンピオン! 女武闘家ぁー!」

    観客「チャンピオン! 頑張れよー!」

    武闘家「谢谢(シエシエ)」ペコ

    司会「迎えるは準々決勝、準決勝と危なげなく勝ち進んできた謎のチャレンジジャー! マク・ドナルドだぁー!」

    観客「なんかようわからんが頑張れー!」

    マク「適当な応援ありがとよ!」

    魔法使い「勝て! 死にものぐるいで勝ちなさい!」

    マク「あ? なんか聞き覚えのある声がまじってたような」

    武闘家「……疲れてないか?」

    マク「疲れてたら手加減してくれんの?」

    武闘家「冗談。そんなふざけた雰囲気はここでおしまい」

    マク「えぇー、やだなー。もっとふざけたいのにー」

    武闘家「うざっ」

    マク「すみません」

    武闘家「……すぅ~……はぁ~……」

    マク「それってなんか統一法だったりすんの? 発勁とか?」

    武闘家「気が散る」

    マク「はい」

    司会「泣いても笑ってもこの一戦で今日はフィナーレです! ではぁ、試合、開始ィッ!!」カーン

    武闘家「……ひとつ、聞きたい」

    マク「なんだね?」

    武闘家「強いって、どんな気持ち?」

    マク「……」

    武闘家「アタイに見えない景色が見えてるんだろ?」

    マク「つまんないよ。なにもかも」

    武闘家「どうして? 強ければ嬉しくないの?」

    マク「ノーテンキに構えてりゃそうかもしんないけどな。俺ってこう見えて繊細なの」

    武闘家「……見えないけど」

    マク「こう見えてって言ったろ」

    武闘家「師匠の言う通り、最初から全力でいこうと思う」

    マク「どーぞ」

    武闘家「……」ゴゴゴッ

    マク「(力溜めてんのか)」

    136 = 15 :

    【観客席】

    魔法使い「やれ! 殺っちゃえー!」

    僧侶「くすくす。熱中してなによりですー」

    戦士「女武闘家の雰囲気が変わった。最初からフルでやるつもりか」

    老人「いい心構えネ。小細工は不要よ」

    戦士「あのマク選手。たしかに強い。これまでの危なげなく勝利した戦いを見ても、そう思う」

    老人「……」

    戦士「ご老人。しかしだな、あたしはたぶん女武闘家が」

    老人「それは合わせてただけよ」

    戦士「……なに? 合わせる?」

    老人「マクは相手の強さに合わせる。手を抜くのに慣れすぎてるネ。かわいそうな男ヨ……これまでそうしてきたんだロウ」

    戦士「手を、抜く?」

    老人「つまり、相手が子供だたら自分も子供レベルまで弱くするヨ。優しいんだろネ」

    僧侶「……」

    老人「だがしかし、それは武に生きる者にとっては、これ以上ない愚弄ヨ」

    魔法使い「いけーっ! 今が隙だらけなんだから攻撃するのよー!」

    戦士「では、武闘家の強さにも合わせるということか?」

    老人「そうであれば、救えないネ。でも、ちゃんと事前にコテンパンするよう言ってあるから大丈夫ダロ」

    僧侶「おじいさん、あの人って、やっぱり……」

    老人「そろそろ体内の気を練り終わる」

    137 :

    【広場】

    武闘家「……ッ」キッ

    マク「かもん」クイクイ

    武闘家「あちょぉ~~~~ッ!! 二段蹴りッ!!」ダンッ

    マク「甘い……!」スッ

    武闘家「まだまだっ!! 回転脚ッ!!」ガンッ

    マク「おっ、おっ」スッ スッ

    武闘家「はぁぁ~~~ッ!! 正拳突きっ!!」バァンッ

    マク「うっ」ズザザ

    司会「流れるような女武闘家選手の攻撃がマクを選手を襲うー! そしてとどめの正拳突きがクリーンヒットォーー!」

    武闘家「……」スッ

    マク「いてて。直線的な動きとはいえ、食らうといてぇな」

    武闘家「まじめにやれ」

    マク「やってるよ」

    武闘家「ふざけるなっ!!」ダンッ

    マク「いやー、本気でやろうとしてるんだけど、どうやるのか忘れちゃっててね」

    武闘家「……そうか、なら思い出せるのからはじめないといけないのか」

    マク「うーん、でもまぁ、ちょこっとならいいよ」

    武闘家「……」ピク

    マク「出し惜しみしてるわけじゃないんだけどな。爺さんがうるさそうだし、本気、見せてやるよ」

    武闘家「面白い……! 伝説の存在の力! 見せてみろ!」

    マク「んじゃ手始めに」ブンッ バンッ

    司会「な、なんだー⁉︎ どうしたマク選手! いきなり地面を殴ったーー!!」

    武闘家「……?」

    司会「これは降参ですという合図なのかーー⁉︎」

    ゴゴゴッ ゴゴゴゴゴゴッ メキメキ

    武闘家「な……そんな、まさか……」

    マク「地割れって、知ってる?」

    司会「な、なななっ! マク選手が殴ったところから大地が割れたーー! きゃあっ⁉︎」ガラガラッ

    ゴゴゴッ ゴゴゴォッ

    マク「さらに、もう一発」ブン バンッ

    ゴォォオーッ

    武闘家「ま、まずいっ!」ダンッ

    138 = 15 :

    【観客席】

    老人「アイヤー、本気でやれ言うたけど誰が見せろ言うたネ。この建物壊す気かあのボケ」

    戦士「な、なんだこれは。どうなってる!」

    魔法使い「じ、じじじ地震?」

    僧侶「あらあらぁ」

    老人「イヨイヨなったらワシが止めにはいるヨ。オマエら逃げる準備しとけ」

    魔法使い「だ、だだただ大丈夫なの? これ」

    老人「無問題」

    魔法使い「な、何者よ! あのマクとかいうやつ!」

    老人「それは後で本人に聞いてみるがよいよ」

    戦士「……っ! こ、こんな力、人間か⁉︎ 」

    139 = 15 :

    武闘家「……くっ」

    マク「なんでもさ、魔王ってのはいくつも障壁もってるらしいんだよね」

    武闘家「だ、大地を割るなんて……」

    マク「だからなのかもしれんけど、俺ってばその何層かの膜を打ち破るパワァーがあるみたいなのよ」

    武闘家「……っ」ゴクリ

    マク「地割れなんてさ、ほんの見せかけだけ。派手だけどな。どうする? もうやめる?」

    武闘家「……や、やめられるものか……」

    マク「そうだよな。ひっこみつかないよな」

    武闘家「い、いくぞっ! 正拳突きっ!!」ダンッ ブンッ

    マク「っと」パシッ

    武闘家「つ、掴んだっ⁉︎」

    マク「正拳突きって直線的すぎるから、当たった時はダメージでかいけど命中率はそんな高くないよ。予測しやすいし」

    武闘家「くっ、離せ」ブンッ

    マク「はい」パシッ

    武闘家「あっ、りょ、両手を。ならば、蹴りで」

    マク「……」ギュゥッ

    武闘家「いっ⁉︎」ガクンッ

    マク「動作を殺すのは、痛覚が一番なんだよ。拳を握られた痛みで、足がでなくなったろ」ギリギリ

    武闘家「うっ、く、くぅっ」

    マク「でも俺の足はあいてるんだな、これが。女の腹蹴るのは気がひけるから、胸にしとく。いいか、今から胸のあたりを蹴るからな」スッ ブンッ

    武闘家「……っ! きゃあっ!!」ドゴーーン

    司会「女武闘家選手、壁まで一直線に吹っ飛んだーーっ!! 凄まじい蹴りです!! 単なる蹴りなのでしょーか!」

    マク「レフェリーのおっちゃん、隠れてないで出てきて」

    レフェリー「ひっ」

    マク「毎回悪いんだけど、医務室に連れてかないと」

    レフェリー「あっ! だ、大丈夫か⁉︎」

    武闘家「」パラパラ

    レフェリー「おい、 医務班! 医務班!」

    観客達「マジかよ」ザワザワ

    司会「えっ? お、終わり?」

    140 = 15 :

    【観客席】

    老人「一時はどうなることかおもたけど、おわたカヨ。コテンパンにするどころか、ってないネ」

    戦士「ご老人!! あれはどういう知り合いだ!!」

    老人「まぁ、弱いのは自覚できたろうから良しとスルか」

    魔法使い「あ、あんなの、マクがいれば、魔王城付近のモンスターとも渡りあえるんじゃないの……?」

    老人「あれでもちょっこっとしか見せてないと思うヨ」

    戦士「な、なに? ちょこっと?」

    老人「そうヨ。普段を0.1としたら0.5ぐらい?」

    魔法使い「それって、1が上限?」

    老人「100が上限に決まってるダロ。1だったらたいしたことなくなる」

    魔法使い「い、今ので? 補助魔法かけてない状態よ? ……アレフガルド、滅ぼされちゃうんじゃないの……」

    老人「大袈裟な。こっち側の人間なんだからいいヨ」

    僧侶「これで、賭け金ゲットですねぇ~」ニコニコ

    141 = 15 :

    ちと駆け足ですがここまで。

    142 :

    クソ面白いな

    続き期待

    143 :


    王道SSはやはりいいものだ

    144 :

    一昔前のなろう小説のような気持ち悪さ

    145 :

    勇者SSとしては結構王道路線なんですけどねw
    勇者TUEEE演出するにあたりワンパターンでひっぱりすぎたのが悪かったかなと少し思います
    いきなり路線変更しても話がぶっこわれてしまうんでこのままもう少し続きます

    146 = 15 :

    【医務室】

    武闘家「うっ……」ムク

    勇者「目が覚めたか」

    武闘家「……そうか、蹴り一発で気を失ってしまったのか……」ポフン

    勇者「ちゃんと鍛えてたお陰だろ。気絶で済んだのは」

    武闘家「勝者が敗者に……!」ググッ

    勇者「悪かった。それじゃ、俺は行くよ」

    老人「待つアル」スッ

    勇者「じーちゃん」

    老人「たかだか一回の敗戦で、なにをイキってるネ」

    武闘家「し、師匠」

    老人「悔しいカ?」

    武闘家「まだ、実感が……」

    老人「そうダロよ。何度か寝て起きたらじんわりと負けという事実がのしかかってくるアル」

    武闘家「……」

    老人「あの時こうしておけばよかた、もっとできたはず……そして、その先にアルものは、自信の喪失ヨ」

    武闘家「アタイは……」

    老人「オマエが積み重ねてきた拳は、なんのタメにあるのヨ」

    武闘家「なんの、ため」

    老人「楽しくないとつらい修行はやってられないヨ。オマエ、ドMか?」

    武闘家「そ、そんなわけっ、ないじゃないですか……」

    老人「成長、変化が楽しく。たまにうまくいった時が気持ちイイからダロヨ」

    武闘家「は、はい……」

    老人「見世物小屋に長居しすぎたヨ。ワシも悪かったアル」

    武闘家「いえ、そんな、アタイが未熟なせいで」

    老人「謙虚さがあるならまだ取り戻せる。学ぶ姿勢はイツだって、傲慢とはかけ離れてイル」

    武闘家「はい」シュン

    老人「勇者よ。マスクかぶってちとついてくるアル」

    勇者「お、おう。だけど、ついておかなくていいのか」

    老人「ヒナはヒナなりに考える時間が必要ネ。ほっとくよろし」クルッ スタスタ

    147 = 15 :

    【通路】

    マク「なぁ、じーちゃん、本当にほっといてよかったのか」

    老人「オマエ、過保護すぎよ。優しさを履き違えるの、よくないアル」

    マク「いや、そうだけど」

    老人「負け癖がつくのがよくないだけで、負けは変わるきっかけに他ならないノヨ。弟子をありがとうアル」ペコ

    マク「やめてくれよ。俺は、自分のしたかったことをしただけで」

    老人「本当にソウか?」

    マク「ただの自己満だよ」

    老人「ならば、なぜこんなところにイル。女戦士にどう思われようといいダロ? 惚れてるカ?」

    マク「そういうんじゃ、ねえけど」

    老人「マゴマゴしてないでやりたいように生きればいいアル。オマエは“勇者”に縛られてるんダロ」

    マク「……」

    老人「人々の勇者に対する期待、羨望のまなざし。いつだってそれに晒されて生きてきた。ガラスの家に住んでいた気分だったロヨ」

    マク「そんなたいしたもんでは」

    老人「いつしか、心は壊れてしまうネ。勇者という肩書きと、本来の己との乖離のハザマで」

    僧侶「あっ、おじいさ~ん!」フリフリ

    マク「いっ⁉︎」ギョ

    魔法使い「マクってやつもいる!」

    老人「ここに集まるアル」

    マク「ちょ」サッ

    僧侶「初めましてぇ~。マク選手すっごくかっこよかったですよぉ~」

    魔法使い「ねえねえ、私たちのパーティに入らない? マクさんがいれば百人力って感じだし! ね! 戦士もそう思うわよね?」

    戦士「あ、ああ」

    僧侶「無口なんですねぇ~?」

    老人「やれやれ。こいつはまだ修行中の身。喋ることを禁じられてるアル」

    戦士「そうなのか? そういえば、聞いたことがある、モンクというんだったか?」

    老人「この男の肉体的強さは、先ほど見たとおり折り紙つきヨ。しかしアル。心と精神はまだまだネ」

    魔法使い「別にいーんじゃない? あんだけ強ければ」

    老人「諸刃の剣ヨ。アンバランスな均衡は、時に自分を追い詰めてしまうモノ」

    僧侶「……」

    老人「マクの代わりに提案があるアル」

    戦士「提案? なんだ?」

    老人「我が弟子を連れてくヨロシ」

    魔法使い「えっ、弟子って、チャンピオン⁉︎」

    老人「そんな肩書きはもう失ったヨ。こいつに負けてナ。しがないひとりの武闘家ネ」

    僧侶「勇者さまに聞いてみないとぉ~」

    老人「……その必要はないよ。マク、どう思うネ?」

    マク「……っ!」

    老人「ワシも策士ダロ? クビを縦にふるか横にふるかで答えるヨ。そうしなかった場合は――」

    マク「~~ッ!」コクコクコク

    老人「決まりアル。勇者とやらにはワシの家の修理が終わったら、伝えておいてヤル」

    魔法使い「なんで……マクに聞いたら……」

    戦士「おっけーなんだ?」

    148 = 15 :

    【夜 宿屋 食堂】

    魔法使い「それでさぁ、マクが地面殴ったとおもったらメキメキメキィッて亀裂がはしったのよ! 信じられる⁉︎ 大地を割ったの!」

    勇者「はいはい」

    魔法使い「やがて亀裂が壁にまで到達してさ! 地震かと思っちゃった!」

    僧侶「くすくす。魔法使いさん、すっかりマク選手のファンですねぇ」

    戦士「いや、しかし、たいしたものだ。どうすればあそこまで極められるのか」

    魔法使い「戦いたいとか言い出す?」

    戦士「……やめとくよ。差がありすぎてな。なにもできずに終わってしまう」

    魔法使い「あっちが勇者だったら信憑性あるのになぁ~。もうほんと凄かったんだから!」

    勇者「……そうですか。今日の給料。100ゴールド」ジャラ

    魔法使い「あ、そうそう。お爺さんに会ったわよ。全然女嫌いじゃなかった」

    勇者「あ、そ、そう?」

    魔法使い「勇者って見る目ないわね」

    僧侶「それはどちらがでしょうねぇ」ニコニコ

    魔法使い「サインもらっておけばよかったかなぁ~」

    戦士「握手、してもらえばよかったかな」ボソ

    魔法使い「意外ね。戦士もそういうこと思うんだ」

    戦士「ひ、独り言だ」

    僧侶「灯台下暗し、ですよぉ~」

    勇者「……」ハラハラ

    僧侶「本当にお二人は、ヌケサクさんですねぇ」ニコニコ

    149 = 15 :

    【その頃 武闘家の家】

    老人「勇者についてって、見聞を広げるアル」

    武闘家「ですが……! アタイはまだ師匠の元で」

    老人「子供に旅をさせるのは良いことヨ。ワシも老いたネ。一緒にいくには」

    武闘家「……っ!」ギュウ

    老人「世界を見てまわり、己の目と耳で見聞を広げヨ。殻の世界に閉じこもるのはここまでにするアル」

    武闘家「し、師匠」

    老人「いつまでヒナのつもりでイルネ。オマエも自分で判断できる歳ダロヨ」

    武闘家「……うっ、ぐすっ、アタイを、見捨てられるのですか……っ」ポロポロ

    老人「オマエは優秀な弟子ヨ。この世でただひとり、ワシが才能に惚れこんだのは」

    武闘家「……」シュン

    老人「ワシが教えられることにも限界がアルヨ。成長する姿を見せることに自信がないノカ?」

    武闘家「……」

    老人「子の成長はいつだって嬉しいもの。血の繋がりはナイが、それまでは長生きしておいやるアル」

    武闘家「師匠……!」ゴシゴシ

    老人「行ってくるアル。……結婚したら生まれてくる子供は、ぜひ、ワシの弟子に」

    武闘家「別れの場面でふざけないでください!」

    老人「いや、本気」

    武闘家「なおさら問題です!! 怒りますよ!」

    老人「しかし、オマエ、この世界はわりと婚姻ハヤいから、行き遅れなんてあっというま……」

    武闘家「あちょお~~~っ」スッ

    老人「ま、待つアル! わかたわかた! ドウドウ」アタフタ

    武闘家「……はぁ、男には、興味ありません」

    老人「人の縁(えにし)とは、わからないモノよ」

    150 = 15 :

    【翌日 マッスルタウン 出口】

    魔法使い「あ~、今日もマクさん試合するのかなぁ」

    戦士「ディフェンディングチャンピオンだからな。当然だろう」

    勇者「……」

    僧侶「くすくす」

    魔法使い「見に行きたいなぁ」チラ

    勇者「だめだ。昨日は予定外に道草くっちまったんだから」

    魔法使い「ケチ。男の嫉妬ってみっともないわよ」

    戦士「勇者も鍛錬すればまだまだ伸びると思うぞ」

    魔法使い「そういうんじゃなくて! 圧倒的なのに惹かれるんじゃな~い! 完成形の魅力ってやつ?」

    僧侶「育てるのも女の嗜みだと思いますけどぉ」

    魔法使い「可愛げがあればいいけどねぇ、こいつじゃ」チラ

    勇者「なんだよ」

    魔法使い「……」ジトォー

    勇者「そんなに目を細くして。ゴミでもはいったのか? 近眼?」

    魔法使い「……はぁ」ガックシ

    老人「おい、お主たち」

    「ブルルッ」パッカパッカ

    戦士「ご老体、その馬車は」

    老人「これまで賞金を溜め込んでたカラナ。旅の選別ヨ。仲間が増えれば馬車はつきものダロ? まだ増えるかもわからんシ」

    魔法使い「くれるの⁉︎」

    老人「それと、ほれ」ポイッ

    魔法使い「わっ⁉︎」ワタワタ

    老人「アイヤー。そんなものも受け取れない反射神経カヨ」

    魔法使い「魔法職なんだからいいでしょ! ……あれ、これって」

    老人「イーリスの杖ヨ。昨日、マクから渡しておいてもらうように頼まれたネ」

    魔法使い「えっ⁉︎」

    戦士「ほう、なかなかに粋な計らいを」

    魔法使い「で、でもっ、私、ちょっと会っただけなのに」

    老人「受け取るヨロシ。それがあいつも望んでおるコトネ」チラ

    勇者「ご、ごほんっ!」


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