私的良スレ書庫
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元スレ少女「コミケ行くので泊めてください!」男「は……?」
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白い死神「あんたら、黒ずくめを手に入れられなかったんだろう」
少女「……!」ドキッ
少女「……は。ハイ」
白い死神「始発と同時に行ったのに、徹夜組に先を越されている」
白い死神「ルールを守って、ルールを破った奴に出し抜かれた」
白い死神「さぞ悔しいだろうなァー」
少女「…………、……」
白い死神「だったら、盗っちまいなよ」
少女「……!!」
白い死神「コイツらはルールを破った悪だ。誰も咎めやしねえぜ?」
白い死神「むしろ、コレは正義の鉄槌だ」
白い死神「キマリを守らず、COMIKEを存亡のフチに追いやる、徹夜組へのな」
男「おい、死神……!」
白い死神「くっくっく。だが、俺の言ったコトは間違っているか?」
男「…………」
少女「……ええ。ソレはマチガイです」
男「……!」
少女「いくらルールを破ったヒトだからって、目の前で頒布物が売り切れたからって」
少女「他人の“戦利品”を奪ってはならない」
白い死神「ほう……」
少女「私が頒布物を手に入れられなかったのは、私のチカラが劣っていたから」
少女「彼が頒布物を手に入れたのは、私よりも情熱が勝っていたから」
少女「ソレを我欲に濡れた願いで覆そうとするコトこそ、マチガイです」
白い死神「…………」
白い死神「嬢ちゃん……」
白い死神「なかなか良いガッツ持ってんな」ポン
少女「え……」
白い死神「男よぅ。良い女、捕まえたじゃねえか?」
男「だから、ホントそういうんじゃないから……」
白い死神「かっかっか。よきかな、よきかな」
白い死神「ホント、準備会にこんな公平な人間がもっといれば、良かったんだがねえ」
男「何……? どういうコトだ?」
白い死神「ん? 準備会がもっと公平なら、こんなルール」
白い死神「とっくにもっと違うモンにすり替わってるだろ」
男「いや……。単に良いアイデアが無いだけなんじゃないのか?」
男「10000人にもなる徹夜組を排除するのは、難しいだろうし……」
白い死神「…………」
白い死神「あんた、本当にそう思うかい?」
男「……!」
少女「え……?」
白い死神「さっき、このあんちゃんは黒ずくめしか手に入れられなかったと言ったが」
白い死神「そんなのは氷山の一角だ」
白い死神「場合によっては、行列に並んだ挙句、何も手に入れられなかった……」
白い死神「そんな始発組と変わらないような徹夜組だって、現れる」
少女「な……。そ、それはどういうコトですか?」
少女「徹夜組のヒトは、確実に頒布物を手に入れられるから、並んでるんでしょう?」
白い死神「んっんー。その言い方には、ちと語弊がある」
白い死神「正確には、“頒布物を手に入れられる可能性が高い”から、並ぶんだ」
少女「……そ。それは……」
少女「徹夜をしても、頒布物を手に入れられないコトがある……?」
白い死神「ご名答! さすが、聡い嬢ちゃんだ」
白い死神「そう。徹夜組だって、無敵じゃあない」
白い死神「ツラい思いして、前の夜から並んでも……」
白い死神「さらに別のヤツに、出し抜かれるかもしれねえんだ」
少女「べ。別のヤツ、って……?」
男「…………」
白い死神「考えてもみろ。いくつか、方法があるだろう?」
白い死神「始発組よりも、徹夜組よりも。早くに会場に入れる、“魔法のチケット”が」
少女「……!!」
白い死神「そう。始発組は徹夜組に、徹夜組はチケット組に、さらに出し抜かれる」
白い死神「チケットを手に入れた者こそが、真の絶対正義なのさ」
男「……そして、そのチケットを発行しているのが」
白い死神「そう。まぎれもなく、準備会の連中」
白い死神「モチロン、チケットも理念通りに使えば、正しいアイテムだが」
白い死神「哀れかな。使う人間が悪ならば、アイテムも悪に成り下がる」
白い死神「そして。この二種類のチケットの通称。その名前を、なんと言った?」
少女「え……。たしか、片方がサークルチケット。ソレと……」
少女「……!!」
白い死神「……そういうコトさ」
白い死神「準備会は身内の特権を守るために、スタッフチケットを発行している」
白い死神「ソレ自体がマチガイだとは言わん。事実、当日スタッフは頒布物を買えないからな」
白い死神「だが、準備会が発行したチケットが存在するために」
白い死神「準備会が提示したルールは守られず、徹夜組があふれ出す」
白い死神「しかも、結局徹夜組も、チケット組には敵わない」
白い死神「どうだ? コレがCOMIKEの現実だ」
少女「……そ。ん、な……」
男「…………」
男「一つ、いいか」
白い死神「おう。なんでも」
男「死神。お前は、今日もファンネルと協力して、頒布物を手に入れたようだが……」
男「その頒布物を手に入れるために、お前たちはどうやって入場した?」
白い死神「…………」
少女「……!」
少女「ま、まさか……」
白い死神「……ああ、そうさ」
白い死神「俺たちだって、一般参加者より早く入場したよ。サクチケを使って、な」
男「お前、やっぱり……」
白い死神「おっと、カン違いするなよ」
白い死神「俺たちは、転売だけは大嫌いなんだ」
白い死神「サクチケは、転売で手に入れたモノじゃなく」
白い死神「友人をはじめとした、当日のサークル参加者と協力して手に入れているし」
白い死神「頒布物を買うのは、ファンネル仲間と、サクチケを提供してくれたサークルのためだ」
白い死神「けっして頒布物を転売するためじゃない」
男「だとしても、お前たちも、一般参加者の列には並ばず」
男「サークル参加者でもないのに、先に入場しているのは、たしかだろう」
白い死神「ああ。その通りさ」
白い死神「目には目を。歯には歯を。悪には、悪をもって制す」
白い死神「それが、俺たちのやり方だ」
少女「…………」
白い死神「というより、チケットというシステムが存在する以上、それが最善手だ」
白い死神「結局のところ。準備会が内部改革しないコトには、どうしようもないんだよ」
男「…………」
白い死神「……おしゃべりが過ぎたな」
白い死神「ジューブン涼んだし、そろそろ俺は島中の絨毯爆撃に行くぜ」
白い死神「その紙袋は、ちゃんと徹夜組のあんちゃんに返しておけよ」
白い死神「じゃあな。男、聡い嬢ちゃん。機会があったら、また会おうぜ」
――ビッグサイト 入口
男「…………」
少女「…………」
男「……なあ、このあと、どうする?」
少女「…………」
男「まだ島サークルでも見に行くか」
男「友人でも探しに行くか。それとも……」
少女「……いや」
少女「……今日は、もう帰りたいです」
男「…………」
少女「死神さんのおハナシ……」
少女「まさか、COMIKEの現実が、そんなだなんて、思いませんでした」
男「おいおい。アイツのハナシを本気にしてるのか?」
男「そんなの、アイツが言ってるだけだぞ」
男「もっと他の見方だってあるだろう」
少女「ハイ。でも、彼の言うコトも、真実の一端だと思います」
少女「……それに、私は、徹夜組のヒトのモノとはいえ」
少女「一度、尊敬すべき戦士の“戦利品”を盗もうとしました」
男「…………」
少女「恥ずかしいです。今すぐ、消えてしまいたいくらい」
少女「……私に、もう、COMIKEを楽しむ資格なんて……、ありません」
男「…………」
男「…………そうか」
男「……じゃあ、今日はもう、帰ろうか」
少女「……はい」
男「その前に、コレを食っておけ」
少女「……? エナジーバー、ですか……?」
男「この暑さだ。家に帰るまでに、あの徹夜組のように倒れるとも限らん」
男「家に帰るまでが、COMIKEだぞ」
少女「…………」
少女「……、ハイ」
――ビッグサイト 周辺
魔法陣「17歳♂暇だから全レスします☆」
魔法陣「おっさんネロ。……おっさんだったわ」
魔法陣「年齢2ケタはオッサン(キリ」
魔法陣「BIPで本格的にRPG作ろうぜ」
魔法陣「未完乙、クソスレ乱立すな」
魔法陣「死ね。氏ねじゃなくて死ね」
男「……。あれは……」
男「すまん。ちょっと待っててくれ」
少女「……? ハイ」
男「すみません、BIPの魔法陣ですよね?」
魔法使い「はい、そうですよ。あ、ヘンなヤツばっかでスミマセン」
魔法陣「これぞ馴れ合いスレwwwwww」
魔法陣「股の名をBIPヌクモリティ」
男「あ、あはは……。あの、チャームって、まだあります?」
魔法使い「ええ、ありますよ。BIPPERのヨシミで、一つどうぞ」
男「ありがとうございます!」
魔法使い「いえいえ。スレのほうでは、またよろしくお願いしますね」
男「BIPも、結構仲良いですよね。罵詈雑言もあんま飛ばないし」
魔法使い「あなたCOMIKEの期間中だけBIP来てるでしょう」
男「……バレましたか」
男「すまん。お待たせ」
少女「何やってたんですか?」
少女「あそこ、なんか人が輪になって集まってるみたいですが……」
男「ああ。アレは、通称“魔法陣”」
男「とある、ネット掲示板の住民の集まりでな」
男「なんとなく仲間で集まってケータイいじってる姿から、そんな名前がついたんだ」
少女「……は、はは……。まあ、集まるのは自由ですよね」
少女「……あれ。ってコトは、男さんも、その掲示板を?」
男「まあな。COMIKEの情報とか、けっこう書き込まれるし」
男「そうじゃなくって。ハイ、これ。あげるよ」
少女「あれ? ……、コレって……」
男「チャームのアクセサリーだ。魔法陣では、毎回タダで配ってるんだよ」
男「どうだ? オレンジの輪切りみたいで、けっこうカワイイだろう?」
少女「ええ……。ソレは、そうなんですが……」
少女「私、同じの持ってますよ?」
男「……え?」
少女「ほら、この首のとこ。ネックレス」
男「……あ。ホントだ、同じだ……」
男「……同じの二つは、いらないよな……」ガックシ
少女「…………」
少女「……なら、ソレは、男さんが持っていてください」フフッ
男「へ? ……俺が?」
少女「それで、もしビビっとくる女性に出会ったら、ソレを渡す」
少女「……と、いうのはどうでしょう」
男「えぇー。俺、女には縁が無いからな……」
男「あ、今ならお前がいるけど」
少女「ふふ。私はノーカンで」
少女「男さん良いヒトですし、良い女のヒトに出会えますよ。ええ、必ず」
男「そのコンキョはどっから出てきたんだ」
少女「へへ。私、カンは良いほうなので」
少女「きっと良い出会いが、すぐ近くに待っていますよー」
男「……そうか。だと、いいんだがな」
男「ていうか、そのネックレス、ホントにこのチャームとソックリだな」
男「ソレも魔法陣産か? 毎回、チャームにCOMIKEごとの連番を押してくれるんだが……」
男「その番号も今回と同じだし」
少女「えぇ!? そ、そーですね。私のコレは貰いモノなので」
少女「元の持ち主が、COMIKEに参加していたのかもしれませんねー」
――アパート前の道路
パタン
少女「ありがとうございましたー」
運転手「今回もどうも。三日目も、お願いしますね」
少女「……、…………」
男「ええ。モチロンですよ」
運転手「では」
ブロロロロロ…
――居間
男「……はあ。けっこう、早く帰ってきちまったな」
少女「…………」
男「まだ昼か。ビッグサイトは忙しそうだな……」
男「昼飯はどうする? どっか、食べに行くか?」
少女「…………」
少女「じゃあ、ちょっとワガママ言ってもいいですか?」
男「…………」
男「……いいぞ。大学生のフトコロの深さというのを、見せてやろう」
少女「…………」フフ
少女「では、男さんの手料理が食べたいです」
男「…………?」
男「お、俺の? 料理?」
少女「ええ。昨日の口ぶりだと、作れますよね?」
少女「コンダテは問いません。ぜひ、よろしくお願いします!」
男「…………」ボリボリ
男「……マッタク。弱ったな」
少女「あれ? 作れないんですか?」
男「いや、作れるがな」
男「材料が無い」
少女「…………、あー」
男「まずソコから調達しなきゃならん。弱った」
少女「……そうですか」
少女「じゃあ、一緒に買いに行きましょうよ! 食材!」
男「……へ? 今からか?」
少女「そうです。東狂では、どこで食材買うんですか? やっぱスーパー?」
男「そうだな。……いや、かなりの田舎でもない限り、そうだと思うが」
少女「よっしー!! それじゃあキマリですね、レッツショッピンショッピン!」
男「…………」
男「……はあ。やれやれ」
男「わかった。だが、今日の戦利品くらい片付けておけ」
少女「…………」
男「戦場から帰った戦士としての、当然のタシナミだぞ」
少女「……。そう、ですね……」
少女「わかりました。といっても、黒ずくめさんの既刊、3冊だけですが」
男「それでもリッパな戦利品だ」
男「……そういえば、いったいどんな本だったんだ?」ガサ
男「……!!」
男「……こ、コレ、は…………」
少女「ん……? どれどれ」
少女「男のヒトが二人、見つめ合っている表紙ですね」
少女「男さん、これはいったい?」
男「…………、…………」
少女「ちょっと、私には知識が無いので、わかりません……」
少女「少なくとも、おじいちゃんはこういうの、持ってなかったですね」
男「…………」
男「……まだ早い。というか、一生早い」
少女「えー。いったいどういうコトなんですか」グラグラ
男「揺らすな……」ガクガク
パサ
少女「あ……」
男「ん……? この紙は……」
男「黒ずくめさんの連絡先だな」
男「ああ、そういえば……。今日並ばせたコトへの、お詫びがしたいと」
男「……どうする?」
少女「…………」
少女「…………」
男「…………」
少女「…………」
男「…………」
少女「…………ええ。かけてみてください」
男「そうか。……って、俺のケータイで?」
少女「ハイ。私のは、繋がりませんから」
男「俺のだって繋がる保証は無いが……」
男「まあ昼ならちょっとは空いてるだろうし、サークルもヒマしてるだろう」
男「やれ。この電話番号だな」タタターン
ケータイ「プルルル! プルルル! プルプルプル!」
ケータイ「プルルル! プルルル! プルプルプル!」
ケータイ「ぼく悪いケ……」
黒ずくめ『はい、もしもし』
男「良かった、繋がった。もしもし、黒ずくめさん?」
黒ずくめ『あ……。男さんですか?』
男「そうだ。タイミング悪かったか?」
黒ずくめ『いいえ、とんでもない。既刊もハケて、設営の撤収中だったんです』
黒ずくめ『お二人は、今、どちらに?』
男「ああ……。実は、もう家に帰ってきちまってな」
黒ずくめ『そうですか……。まあ、暑いですからね』
黒ずくめ『それで、少女ちゃんは、今ソコにいますか?』
男「うん。たしかにいるが」
黒ずくめ『……伝えたいコトがあります。良かったら、代わってもらえませんか?』
男「……わかった」
男「おい、少女。黒ずくめさんが、代わってほしいそうだ」
少女「え……」
男「ご指名だぞ。まさか、ここで居留守使う気か? もういるって言っちまったぞ」
少女「……いや。出ます」
少女「お電話代わりました。少女です」
黒ずくめ『ああ、少女ちゃん。今日はゴメンね。気分悪くさせて』
少女「いえ……。黒ずくめさんのせいじゃありませんよ」
黒ずくめ『ありがとう。でも、元は僕が言い出したコトだから……』
黒ずくめ『だから、代わりと言っちゃナンだけど、僕から提案があるんだ』
少女「提案……?」
黒ずくめ『そう。僕は、明日の三日目は一般参加で入るんだけど……』
黒ずくめ『一日目と同じように、コスプレをしようと思うんだ』
黒ずくめ『だから……』
黒ずくめ『少女ちゃんも。コスプレ、やってみませんか?』
少女「は……?」
第二章は以上になります。
最終章は、現在鋭意制作中です。もう少々お待ちください。
最終章は、現在鋭意制作中です。もう少々お待ちください。
謎が解けてきたなー!
しかし話の構成ほんと上手だね。
最終章も楽しみにしてます。
しかし話の構成ほんと上手だね。
最終章も楽しみにしてます。
おつおつ
行楽地限1なったなーとか
COMIKEに行った時のことが思い返されるようで面白い
行楽地限1なったなーとか
COMIKEに行った時のことが思い返されるようで面白い
、家やわ、蘿諭?、蘿、わらほり?る、
皿府愛菜や蘿。やはらららら、はほやなはしは、ら?や
皿府愛菜や蘿。やはらららら、はほやなはしは、ら?や
なんだかすごいSSに出会ってしまった
結構ボリュームあるけど一気読みしちゃったよ
続きも期待
結構ボリュームあるけど一気読みしちゃったよ
続きも期待
感想ありがとうございます。AAを含めてとはいえ、既に
200KBを超えていますが、お楽しみ頂けているようで幸いです
>>440
当日参加された方ですか、恐縮です
実際の出来事と異なる部分は“COMIKE”限定のイベントということでお楽しみください
お待たせしました。完結の目途が立ちましたので、
最終章は前編、中編、後編に分けて今日から更新します。
それでは、最終章 前編を開始します。
今回は少ないですが30レスほどの予定です。
200KBを超えていますが、お楽しみ頂けているようで幸いです
>>440
当日参加された方ですか、恐縮です
実際の出来事と異なる部分は“COMIKE”限定のイベントということでお楽しみください
お待たせしました。完結の目途が立ちましたので、
最終章は前編、中編、後編に分けて今日から更新します。
それでは、最終章 前編を開始します。
今回は少ないですが30レスほどの予定です。
ふと、目が覚めた。
あけぼのというには深すぎる、大都市の外れの、住宅街を包む夏の宵闇。
壁時計の針がさすのは丑三つ時。
ふと、窓から吹き込む夜の風に、目が覚めた。
なんとなく二度寝するのもきまりが悪いような気がして、
冷たい床から体を起こす。
だが。そこまで脳が覚醒して、……引っかかった。
この二日は、たしかに深夜に早く起きていた。
だが、早すぎる。
早く目覚めすぎるのも体に悪い、起きるのはせいぜい午前3時ごろ。
誤差といってしまえばそれまでかもしれない。
だが、今の時刻は、午前2時を少し過ぎたあたり。
なぜ俺は、今日に限って、少し早く目が覚めた?
そこまで頭を巡らせて。
俺は、自分を眠りから揺り起こした要因に気付く。
風。
ベッドのそばにある窓から吹き込む、間近の秋を思わせるほのかに冷たい風。
しかし俺は、この風をしばらく肌で感じてはいなかった。
記憶が確かならばおよそ二日間ほど。
昨日までは何か、窓の風を、さえぎるモノがあって――――
いない。
この二日、いつのまにか見慣れた姿になっていた、彼女。
少女の姿が、そこには無かった。
男「…………」
男「そうか」
男「…………」
男「アイツは、行ったか」
男「キレイに自分の荷物だけ無くなっていやがる」
男「干しといた、昨日の服も……」
男「見事に無いな」
男「……ふう」
男「そりゃあ、もともと一人暮らしだし」
男「寂しいってこたぁ無いが……」
男「……ちょっと、薄情なモンだな」
男「…………」
男「……となると、今日の予定も、変更か」
男「今日の天気は、一日を通しての晴れ」
男「予想最高気温は30度。べらぼうに暑くはないが……」
男「それでも進んで外に出たくはないな」
男「加えてビッグサイトなら。人々の熱気で、気温はマシマシだ」
男「そんなところに、好きこのんで行く理由は……」
男「もう、無いな」
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