私的良スレ書庫
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元スレ少女「コミケ行くので泊めてください!」男「は……?」
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運転手「おそらく私のクルマは、既にマークされているハズ」
運転手「このままココにいてはメイワクがかかるので……」
運転手「ホトボリが冷めるまでは、どこかに身を潜めていますかな」
運転手「それでは、私はこれで」
運転手「お二人とも。三日目、楽しんでくだされ!」
ブロロロロロ…
男「ええ! 運転手さんも、お元気でー!」
少女「捕まらないよう、頑張ってくださいねー!!」
男「…………」
少女「…………」
男「行っちゃったな」
少女「ええ。トンデモナイおじいさん……、いやおじさんでしょうか」
少女「とにかく常軌を逸したアラフィフの方でした」
男「常軌を逸したといえば……。お前」
男「あの特殊部隊は、いったい何だったんだ?」
少女「…………」
少女「平たくいえば、私の敵のようなモノです」
少女「私たちは普段、彼らを相手に戦っています」
男「……冗談じゃないんだな」
少女「ええ」
少女「でも、今日だけは、今だけは、ソレを忘れたいと思います」
少女「こんな爆速で走ってきたなら、ヤツらも捕捉できていないでしょうから」
少女「……いいですよね?」
男「……ああ。モチロンだ」
男「ちょうど、もうすぐ始発の時間だな」
少女「最終日の今日も、やっぱり始発ダッシュって、やってるんでしょうか?」
男「そりゃ、まあ……。やらない理由が無いしな」
男「むしろ、基本的に来場者は三日目がイチバン多い」
男「今日が最も激しい始発ダッシュになるんじゃないか?」
少女「おお。それは……」
少女「この目で確かめるしかありませんね!!」
男「言うと思ったよ」
――シーサイド線 国際展覧場駅
アナウンス『走らないでくださーい。走らな……』
始発組「「「「「「始発からきますた!!!!!!」」」」」」ドドドドドドドド
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|__| ` ̄ .rっ |___| vymyvwymyvymyvy、
|| mVvvMvyvmVvvmvyvmVvv、
|/⌒ヽ /^ヽ (^^) /^ヽ (^^) /^ヽ(^^)/^ヽ
(^ω^ )(ω^ )/⌒ヽ(^ω^)/⌒ヽ^ω^) ( ^ω)-っ
rっ ./⌒ \ | _二二二つω^ )(\ ( ^ω^ )二⊃ /⌒ヽr
||. ⊂二(^ω^ )二ノ /( ^ω^ ) ⊂二\\_/⌒ヽ二二( ^ω^)二⊃
|/⌒ヽ /^ヽ (^^) /^ヽ (^^) /^ヽ(^^) rっ. ( ^ω^) | /
(^ω^ )(ω^ )/⌒ヽ(^ω^)/⌒ヽ^ω^) ||. ^ω)-っ. _) ( ヽノ
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⊂二(^ω^ )二ノ /( ^ω^ ) ⊂二\\_/⌒ヽ二二(.(^ω^ )(ω^ )/⌒ヽ(^ω^)/⌒ヽ^ω^) ( ^ω)-っ
ヽ | (´ ._ノ ヽ /⌒ヽつ \(. ./⌒ \ | _二二二つω^ )(\ ( ^ω^ )二⊃ /⌒ヽr
ソ ) \\⊂二二二( ^ω^ )二 ⊂二(^ω^ )二ノ /( ^ω^ ) ⊂二\\_/⌒ヽ二二( ^ω^)二⊃
( < \ レ’\\ ヽ / i ). ヽ | (´ ._ノ ヽ /⌒ヽつ \( ^ω^) | /
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\|\| レ (⌒) | /ノ ̄ レレ
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―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄― ―――― ==  ̄―― ̄ ̄___ ̄―===━―― ̄ ̄___
少女「うわキモ! ……いえ、失礼」
男「失礼しなくていいぞ。実際ここまで数が多いと、さすがにキモい」
男「……と、いうか、目の焦点の合ってないヤツらが」
男「もう数人じゃ、きかないんだが……」
少女「なのにこの数。彼らはいったい、何故、そこまでして……?」
少女「COMIKEへの情熱というだけでは、もはや割り切れないと思うのですが」
男「ああ。それは、今日が三日目だからだろう」
少女「三日目……? たしか男性向けの日だっけ」
男「そうだ。…………男性向けだ」
少女「……。ああ……」
少女「そういうコトですか……」
男「元来、COMIKEというのは、女性の参加者が中心となって始まったと聞く」
男「現在でも基本的にCOMIKE以外の同人誌即売会といえば、女性が中心らしい」
男「だが……。COMIKEだけは特別だ」
男「参加者の比率も男が多く、男性向けの頒布物も多く出展される」
男「つまり、日本中の、その、愛好家が……。今日、この日に集まる」
少女「……。なんとも、原始的なハナシに聞こえますが……」
少女「いえ。だからこそ、生きようとする意志! あふれんばかりの生命力!」
少女「底無しのバイタリティー!! まさしく崇高なリビドーを感じます!!」
男「言いつくろってるけどコイツら全員変態ってコトだからな」
少女「いえいえ。ソレ言っちゃオシマイですよ」
少女「私たちだって立場は同じですし」
男「ぐ……。まあ、俺だって気にならないといえばウソになるし」
男「否定は出来んな」
少女「それも含めて、情熱的なこのお祭が、私は好きですよ!」
男「いちおうフォローしておくと、健全な頒布物と、健全じゃない頒布物の種類の割合は」
男「一説によると、およそ7対3だという。CDや雑貨もあるからな」
男「まあ、出回ってる数となると、結局逆転するんだが……」
「「「「「「ウオオオオオオラッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァイイイイイイ!!!!!!」」」」」」
ザワザワ
少女「こ……。この、叫び声は……!」
男「来たか……!!」
スタッフ長「ぬかせぃ始発組!」
スタッフ長「力を以て事を成すなど徹夜組だけで十分!」
スタッフ長「苦情、主張があるのならまず話し合い!」
スタッフ長「その為ならば我ら三百兵、一丸となって機を刻もう!」
スタッフ長「行くぞ友よ、魂(いのち)を此処に―――!」
テルモピュライィ・エノモタイア
スタッフ長「駅前門のぉ、守護者ァァァア!」
:! .: : :.; :l{ }/ } ( _} j{ }/ j{ / | レ,' :! | |
00 .: :: .;: i{しi }/ }i し'{ }/ | { | |
「二^^l ,:: :: .;:|} ト、 丿 て j} ( : l
| | ;‐i .: :: .;:iヽ、 }i _} i{ /{i / Y´. l.i !l
「二__lニ ニl :: :: .;:|;. \ }i ト、 i{ ノ / / ,イ´ | l. l!
〈/!_| ;‐i :: : ノ〉 ㍉ ノ´ し' / j{ /.゙:. :.: li !
lニ ニl :゙) 廴ノ{ `! j{ j{ (.|;.:. :.: | |
〈/!_| { しi {廴i{ / j{/´. :. :.:. l!l
! :il | : :l .;:,:| { `ヽ、 て :l.:. :.: !i il
:| | : : ト、Y¨リ ノ j{ |.:. :.: i! ... |:
:! l l :: : }i | ) }! /{ ) /⌒ ,イ. |:. :.;.:: l l
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i l! l l :. .:: :: .;:|,ィイ 丿 ¨ /j{ / . |.:. :.: lニ ニl | |
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ll |l ,:: :: .;:| ;:: `) 'し' |:;.:. :.: :i | | |
少女「ぐっ。すさまじい、火柱……!!」
男「スタッフ兵たちの気迫がカタチとなり、炎となって燃え上がっているのか!?」
少女「人間聖火というワケですね。私も燃えてきました……!」
野次馬「今年もスタッフ長がついに点火したぞ!!」
野次馬「いったいどっちが勝つんだ……!?」
スタッフ「スタッフ長。今年の夏、最後の戦いです! 頑張りましょう!」
スタッフ長「…………」
スタッフ長「退くなら今のうちだぞ」
スタッフ「……!」
スタッフ長「この戦いは、三日間で最も激しいモノになる」
スタッフ長「加えてこの天候。昨日までの鬱憤を晴らすような、快晴……」
スタッフ長「撤退は負けではない。逃走は恥ではない」
スタッフ長「退き際を見極められるのも、また一流の戦士だ」
スタッフ「……いえ、スタッフ長」
スタッフ「我らスタッフ一同。夏のCOMIKEも、冬のCOMIKEも、スタッフ長についてきました」
スタッフ「かつてのジェノサイドCOMIKEを経て、紡いだこの絆」ゴオオオオオ
スタッフ「生半なコトでは燃えつきません!!」ゴオオオオオ
男「300人のスタッフ兵からも、炎が……!」
少女「暑苦しい……。だけど、コレがスタッフたちの絆!!」
野次馬「そうか、あのジェノサイドCOMIKEの時も……」
野次馬「COMIKE雲は別にスタッフ兵関係無いのがスゴいよな」
スタッフ長「…………」フッ
スタッフ長「そうか」
スタッフ長「カクゴは出来ているんだな」
スタッフ「ええ」
スタッフ長「ならば、行くぞ」スッ
スタッフ長「これが最後の戦いの始まりだ!!」
スタッフ長「ここから先は! 始発組も! 野次馬も! 一歩も通すな!!!」
スタッフ長「駅前門を守れ!! 安全な来場のために!! 参加者を誘導しろ!!」
スタッフ長「行くぞ……、選ばれし300のスタッフ兵たち!!!」
コ ミ ケ ッ ト
スタッフ長「 C o m e G e t (来たりて取れ) !!!!!!」
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/ \
/へ | .|
/ | \ |「芸芹|
/「 \ | __ | __| /Λ _| |Д|| //⌒\
| | | _| {云V云}. | _ // Λ⌒ー<\\,」ー |ノ⌒>// Λ
|テVテ]| //  ̄\/⌒\| !zzz| |//⌒\ / Λ/⌒\ \ r― <  ̄.| |
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〉― {  ̄ノ ノ | | ノ__ \.,┘从.Lノ { { Λ { | | |
{ノ⌒\{こ}∠ | | /´ ̄⌒^<{こニ} __ ――{ { Λ{\ッ_ _ッ/ | | |
{ __/ / ⌒''< ___ _ { { | ノ  ̄}{ ノ | | |
\ j }Lr_ 人_r/ ノ{レ } Τ\ .{ { | {_ ̄}{ ̄_/| | |
. \\ / _八 个 _,/_ { / { }{ } \\{ { |\_____ ノ .| | |
\\ Г | ) 个〈 \/ \;;: __/ \ ::;;::イ \{ { | \  ̄\ { | | |
\\| | 」_ ∨ } } { =个= _ノ{ { { |\ \ \ .| | |
\\ } 「二二二∨^\}_―=‐ } { =个= _ノ { { { | \ /⌒ | | |
{\)^ヘ.|⌒\ニニ} }ニ― { { =个= ノ.ィiΛ { { |\ \_/ 「 | | |
\__ノ ∨ ._-ニ= しノ {\__ _,、<ニニニ}. { { | \ 厂 | .∨
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スタッフ「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお…………!」」」」」」
――シーサイド線 国際展覧場駅前
ミーンミンミン ミーンミンミン
少女「最後まで、アツい……。方たちでしたね……」
男「ああ……」
スタッフ長「今年も良い勝負だった。次は冬コミで会おう」ガシッ
始発組「ああ……! 始発組の新たな団結力、見せてやるぜ」ガシッ
スタッフ長「でも駅のホームで走るのは危ないからやめろよ」
始発組「ふひ、サーセン」
少女「それにしても……。今日は、暑いですね……」
男「ああ。一昨日、昨日と、曇ってたり雨だったからな」
男「晴れてる今日が夏コミ本来の姿というべきか」
男「いや、この暑さでも、じゅうぶん涼しいほうなんだが……」
少女「朝でコレですよね。昼にかけて、もっと気温が上がるのかと思うと」
少女「…………」
男「……帰るか?」
少女「いいえぇ? 帰りませんとも!!」
少女「私は黒ずくめさんとの約束を果たさなければなりませんからァァ!!」
男「そうだな。コスプレの約束を……」
男「あっ」
少女「……なんですか、そのやべーコト思い出したみたいな『あっ』は」
男「……いや。今朝、お前がいなかったからさ」
男「今日は参加しないって、友人通して黒ずくめさんに伝えちゃったんだよね」
少女「ハァァ!!? なに勝手なコトを……!!」
少女「……って、私のせいですよね。ほんと勝手なコトしてスミマセン……」
男「い、いや。謝るな。早とちりした俺も悪いし」
男「……となると、どうしたモノか」
少女「黒ずくめさん、今日は一般参加だから、早ければ」
少女「もうこの待機列のどこかにいるんじゃないですか?」
男「ううん……。とりあえず、電話してみるか」プルルル
黒ずくめ『はい、もしもし』ムシャムシャ
黒ずくめ『……あっ、男さんですか!?』
男「ああ、そうだ」
男「その……、友人の奴から連絡は、いってるか?」
黒ずくめ『はい。今日は参加なされないと……』
男「ええと、そのハズだったんだが」
男「少女の奴が見つかったんで、良ければ、今から参加したいなー、と……」
黒ずくめ『えっ? 本当ですか!?』
男「ああ。ムシの良いハナシだとは思うが……」
黒ずくめ『いや、いや! 大歓迎ですよ!! 少女ちゃんいます!?』
男「うん、ココにいる。おい、少女……?」
少女「…………」コク
少女「お電話代わりました。少女です」
黒ずくめ『少女ちゃん……』
少女「……スミマセン、私のせいで色々振り回しちゃって」
少女「男さんにも、友人さんにも、黒ずくめさんにもメイワクかけちゃって」
男「…………」
少女「でも。そんな私を許してもらえるのなら」
少女「もう一度だけ! COMIKEに参加したいんです!!」
黒ずくめ『…………』
少女「…………」
黒ずくめ『少女ちゃん』
少女「はい」
黒ずくめ『僕は、君が今までどんな人生を送ってきて、何を考えているのかは、わからない』
黒ずくめ『昨日なにがあったのかも、僕は知らない』
黒ずくめ『でも。ビッグサイトの前では、誰でも、等しく参加者の一人だ』
黒ずくめ『君にはCOMIKEに参加する資格がある』
少女「……!」
黒ずくめ『君さえ良ければ。ゼヒ、このお祭に参加してほしい』
少女「……は! ハイ!!」
少女「聴きましたか、今の声……!」
少女「ああ、もう。トロけちゃいそうです……」
男「…………」ボリボリ
男「……もう一回、代わってもらっていいか?」
少女「え。男さんも、黒ずくめさんの声聴きたいんですか?」
男「いやそうじゃなくて。訊かなきゃいけないコトがあるから」
少女「……? はーい」
男「すまん、もう一度俺だ。一つ訊きたいコトがある」
黒ずくめ『はい? なんでしょうか?』
男「黒ずくめさん、今どこにいる?」
男「ビッグサイトの近くにいるなら、合流したいんだが……」
黒ずくめ『ああ、それなら。近くにいますよ……!』
黒ずくめ『有開パークビルってわかります?』
男「ああ。たしか、鷲ントンホテルのすぐトナリの……。そこに?」
黒ずくめ『はい。一階のマグロナルドで、朝食中です』
男「わかった。今すぐ行って構わないか?」
黒ずくめ『ええ。朝食がまだでしたら、一緒に食べましょう』
男「そうするよ。じゃあ」ピッ
男「黒ずくめさん、鷲のトナリのマグロナルドで朝飯中だそうだ」
少女「マグロナルド……? って、ハンバーガーのチェーン店ですよね?」
男「ああ、そうだが。ソレがどうした?」
少女「いや。黒ずくめさんも、ハンバーガーとか、食べるんだなって」
少女「てっきりケーキと紅茶しか食べないようなヒトだと……」
男「そんなヤツはCOMIKEではとっくに死んでるな」
――有開パークビル 1F マグロナルド
黒ずくめ「あ。男さーん、少女ちゃーん! コッチですよー」
男「どうも。今日は私服から黒ずくめなんですね」
黒ずくめ「ええ。もっとも、コスプレ用の衣装ではありませんが」
少女「くくく、黒ずくめさん!! ここここんにちは!!」
黒ずくめ「昨日ぶりだね、少女ちゃん。でもこの時間帯なら、おはようかな」
少女「そそそそうですね! おはようございますですともっ!!」
男「キンチョーしすぎだろ……」
男「もう注文は済ませてきた。相席、良いか?」
黒ずくめ「ええ、構いませんよ。少女ちゃんも、どうぞ」
少女「え? 私なんかが黒ずくめさんの前の席で、良いんですか!?」
黒ずくめ「モチロンだよ」ニコ
少女「わっはー、エスコートする姿もイケメン……!」
少女「立てばイーグル、座ればオパール、歩く姿はクロスイレンというやつですね!!」
男「テキトーに黒っぽいモノ挙げてみました感ありがとう」
黒ずくめ「フフ。二人とも面白いなあ」
黒ずくめ「まるで、長年連れそった夫婦……」
黒ずくめ「いや、違うか。でもとにかく、そんなカンジがする」
男「いちおう三日前に会ったばかりなんだぞ?」
少女「夫婦……、ですか。たしかにそのくらい一緒にいたかもしれませんね」
男「あーコイツついに壊れやがった」
黒ずくめ「くっ、くっ、くっ。本当、面白いよ」
男「そういや黒ずくめさん、今日は一人なのか?」
黒ずくめ「いや。昨日と同じ連れが二人、いたんだけどね」
黒ずくめ「あ、コーヒー飲ませてもらうね」ズズッ
少女「連れのお二人さん……?」
黒ずくめ「ほら昨日、列を誘導していた係員のオトコが、いただろう」
男「ああ……」
黒ずくめ「それと後ろで本を出してくれていたオトコもね」
男「案外、オトコと一緒にCOMIKEに来てたんだな」
男「てっきり女の子でも、はべらせてるモノかと」
黒ずくめ「くっ、くっ。ヘンな言い方はよしてくださいよ」
黒ずくめ「二人は大学の時のサークル仲間なんです。あと数人、いますが」
黒ずくめ「ああ、そうだ。昨日の同人誌は、読んでくれたかな?」
少女「えっ? あっ、ハイ! モチロン読みましたとも!」
少女「なんというか……。打算の無い、とってもキレイな、愛の物語でした」
少女「プラトニックラブといいますか!!」
男「…………」ハハッ
黒ずくめ「うん。以前のモノとはいえ、たしかに精魂込めて描いたモノだからね」
黒ずくめ「楽しんでくれたなら幸いだ」
黒ずくめ「……で。実は、その同人誌のモデルなんだが……」
少女「は? モデル?」
黒ずくめ「うん。実は、あの一連の同人誌の登場人物には」
黒ずくめ「モデルにさせてもらった友達がいてね……」
黒ずくめ「それが、サークルを手伝ってくれた、彼らなんだ」
少女「まじですか!」
男「……。そういえば、ちょっと、似てたかも……」
黒ずくめ「ふふっ。さすがに本人たちに教えたら、顔を赤くしてたけどね」
少女「現実世界から着想を得る、というコトですか……。ナルホド」
男「いやナルホドじゃないからな。コワいな、COMIKE……」
黒ずくめ「…………」ジー
男「……?」
男「……あの、俺が何か?」
黒ずくめ「ああ。いや、その……」
黒ずくめ「ふふ」
男「何だその意味深な笑いは!!」
黒ずくめ「ふふふっ」
黒ずくめ「いや、男さんはノーマルのほうが合っている気がします」
黒ずくめ「ああ。僕の個人的な見解ですよ?」
黒ずくめ「男さんは、男さんの思うように、生きていただければと」
男「コワい。コワいなぁ、ホント、COMIKE……」
少女「……? それで、黒ずくめさん」
少女「昨日のお二人はどうされたんですか?」
黒ずくめ「ああ……。その二人なんだけどね」
黒ずくめ「さっきの山毛線運行見合わせだかなんだかで、足止め食らってるんだ」
男「山毛線が運行見合わせ……?」
男「いったいどういうコトだ?」
黒ずくめ「うん。なんでも、山毛線の線路で事故があったとか」
黒ずくめ「たしか……。爆発物が落下、だったかな?」
男「爆発物が……」
少女「落下……?」
男&少女「「…………」」
黒ずくめ「……?」ズズッ
黒ずくめ「どうしたんだい二人とも、アイマイな表情で沈黙して」
男「いやぁ……。なんでもナイデス」
黒ずくめ「そうかい? ならいいんだけどね」
少女「ちょっと、ヤバいですよ男さん!」ヒソヒソ
少女「あのミサイル、モロ都市部に着弾しちゃってるじゃないですか!!」
男「ううん。でも爆発物が落下ってだけで」ヒソヒソ
男「人身事故にはなってないみたいだし……」
男「いちおう組長さんは有言実行したのか。セッティングのやつ」
少女「でも山毛線って数百万人に影響あるんですよね? 泣き出すヒトいますよ……」
黒ずくめ「……で。なら、タクシーで来ればいいじゃん、って言ったんだけど……」
黒ずくめ「片方が、何万人が詰めかけてる駅のホームに閉じ込められてるうちに気分悪くなったらしくて」
黒ずくめ「今、二人して自分のホテルの部屋に、こもってるんだ」
少女「そうだったんですか……」
黒ずくめ「一昨日に昨日と、COMIKEに連れ回した僕も悪いんだけどね」
黒ずくめ「オトコならもうちょっと根性見せてくれないかなー」
男「ははは……。まあ、COMIKEは普通のヒトにはキツいからな」
黒ずくめ「まったく。だけど、それで困ってたんだ」
少女「困ってた……? お二人と合流できないコトですか?」
黒ずくめ「モチロンそれも困るんだけどね」
黒ずくめ「コスプレ先行入場の通行証が余ってしまうから」
少女「コスプレの。先行入場……?」
黒ずくめ「あ。そうだ!」
黒ずくめ「なら、先行入場の通行証がもったいないし」
黒ずくめ「二人も僕と一緒に会場に入るというのはどうかな?」
男「は……?」
少女「コスプレの、先行入場。そんなコトが、出来るんですか?」
男「聞いたコトがある……。コスプレイヤー限定のサービスだが」
男「サークル参加者と同じ7時半から、先に入場できるシステムがあると」
黒ずくめ「うん。COMIKEの開催前に、ネット上で申し込めるんだけどね」
黒ずくめ「当選すると、通行証が発行されて、当日早く更衣室を使えるんだ」
少女「……。それは、良いシステムだと思いますが……」
男「…………」
少女「単刀直入におうかがいします」
黒ずくめ「……? 何かな」
少女「そのコスプレ通行証を使って、早くにサークルの列に並んだり」
少女「……というコトは、可能なんですか?」
男「…………」
黒ずくめ「…………」
黒ずくめ「いや、それは不可能だ」ニコ
少女「え……?」
黒ずくめ「先行入場できるといっても、更衣室からの移動には制限があるからね」
黒ずくめ「……チケットと同じような使い方は出来ないよ?」
少女「……!!」ギク
黒ずくめ「ふふ。期待した?」
少女「い、いえ。そういうワケでは、ないのですが……」
黒ずくめ「準備会もソコはちゃんと考えているね」
黒ずくめ「僕としても、コスプレを利用して、チケット組まがいのコトをされるのは」
黒ずくめ「とうてい承服できるコトじゃない」
男「…………」
黒ずくめ「まあ、気にするコトは無いさ」
黒ずくめ「元はベンリなアイテムなんだから、正しく使えば、正しいアイテムになる」
黒ずくめ「そうだろう?」
少女「……!」
少女「はいっ!!」
黒ずくめ「うん、うん。やっぱり君は、暗い顔より、元気な顔がイチバンだ」スッ
少女「ひゃあっ! ほ、ホッペタ撫でないでくださいよぅ……!」テレテレ
男「…………」ヤレヤレ
男「……ちょ。ちょっと待ってくれ……」
男「それは俺もコスプレをするというコトか?」
少女「……! 男さんのコスプレ姿!」
少女「見たい! ゼヒ見てみたいです!!」
男「えぇー……。俺、別に興味無いんだが」
黒ずくめ「くっ、くっ。ムリにする必要は無いと思いますけどね」
黒ずくめ「せっかくコスプレ先行入場するんだし、少しはどうですか?」
男「えぇー」
黒ずくめ「といっても、凝ったコトをする必要はありません」
黒ずくめ「ザンネンながら僕は女モノのサイズの服しか持ち合わせていないですし」
黒ずくめ「でも、ほら、今年はアレが流行ってるじゃないですか」
男「アレ?」
黒ずくめ「あの、FG○にも登場してる。エジプトの……」
男「ああ。メジェド様か」
黒ずくめ「そう。白い布に目を描いて被るだけのやつ」
黒ずくめ「アレならカンタンに出来るんじゃないですか?」
男「……コスプレ。やる、のか……」
少女「男さん。チャレンジ、チャレンジ! ですよ!」
男「はあ……。わかったよ」
男「コスプレ先行入場して、コスプレしないのもマナー違反だろうしな」
少女「やったー!!」
黒ずくめ「それじゃあ、キマリというコトで」
店員「失礼します。コチラ、ご注文の朝マッグとハンバーガーになります」
少女「おっ、やったー! ありがとうございます!!」
少女「いっただっきまーす!!」パクパク
黒ずくめ「何を注文したんですか?」
男「朝マッグを、俺とコイツの分、2つと……。ハンバーガー数個だ」
黒ずくめ「ハンバーガー数個? ソレは……」
男「コイツが食べる」
黒ずくめ「え? 少女ちゃんが?」
男「ああ。こう見えて、けっこう大食いなんでな。コイツ」
少女「んぐっ。ばばば、バラさないでくださいよー!!」
黒ずくめ「あはは……。よく食べるのは、イイコトだよ」
男「朝マッグとかせっかく量少ないのに、追加注文してちゃ意味無いと思うんだがな」
黒ずくめ「でも、これからCOMIKEに臨むのなら、エネルギーは蓄えたほうがいいですよ」
男「たしかに。待機列に並ぶワケでもないし、まあ、いいか……」
少女「んー、これがあの、有名なマッグのハンバーガーかぁ!!」モグモグ
少女「この安っぽさが良い!!」バーンッ
男「こら、デカい声でそういうコト言うな……!」
黒ずくめ「あはは」
――有開パークビル前
少女「ごちそうさまでしたー!!」
黒ずくめ「さあ、そろそろ時間だ。ビッグサイトに行こうか」
男「ああ。その前に、LAMSONに寄らせてくれないか?」
黒ずくめ「国際展覧場駅前の?」
男「実は、昨日の着の身着のままで来ててな……。いや、服は着替えてるが」
男「装備の食糧の備蓄が心もとないんだ」
黒ずくめ「わかりました。そういうコトでしたら、まず寄りましょう」
黒ずくめ「あっ……」
男「どうかしたか?」
黒ずくめ「いや、さっきおハナシしてた、コスプレ先行入場通行証ですが……」
黒ずくめ「本来なら、申請した本人しか使えないんです」
男「まあ、それこそ転売して使われたりしたらマズいからな」
黒ずくめ「まあ。サークル入場と同じで、厳しく取り締まってはいないと思いますが」
黒ずくめ「万が一、目をつけられた場合は引き下がるので、そのつもりで」
黒ずくめ「その時は僕も一般入場の入口から入りますよ」
男「……。できるだけ、この待機列に、並びたくはないんだけどな……」
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少女「うひゃあ……。もう、パークビルのすぐ近くまで」
少女「みんなカラーコーンの内側に座ってますね」
男「昨日の同じ時間でも列はここまで来てなかったぞ……。やはりコレが三日目か」
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