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    元スレ少女「コミケ行くので泊めてください!」男「は……?」

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    401 = 1 :


    白い死神「あんたら、黒ずくめを手に入れられなかったんだろう」

    「……!」ドキッ

    「……は。ハイ」

    白い死神「始発と同時に行ったのに、徹夜組に先を越されている」

    白い死神「ルールを守って、ルールを破った奴に出し抜かれた」

    白い死神「さぞ悔しいだろうなァー」

    「…………、……」


    白い死神「だったら、盗っちまいなよ」

    402 = 1 :


    「……!!」

    白い死神「コイツらはルールを破った悪だ。誰も咎めやしねえぜ?」

    白い死神「むしろ、コレは正義の鉄槌だ」

    白い死神「キマリを守らず、COMIKEを存亡のフチに追いやる、徹夜組へのな」

    「おい、死神……!」

    白い死神「くっくっく。だが、俺の言ったコトは間違っているか?」

    「…………」


    「……ええ。ソレはマチガイです」

    403 = 1 :


    「……!」

    「いくらルールを破ったヒトだからって、目の前で頒布物が売り切れたからって」

    「他人の“戦利品”を奪ってはならない」

    白い死神「ほう……」

    「私が頒布物を手に入れられなかったのは、私のチカラが劣っていたから」

    「彼が頒布物を手に入れたのは、私よりも情熱が勝っていたから」

    「ソレを我欲に濡れた願いで覆そうとするコトこそ、マチガイです」

    白い死神「…………」

    白い死神「嬢ちゃん……」

    404 = 1 :



    白い死神「なかなか良いガッツ持ってんな」ポン


    「え……」

    白い死神「男よぅ。良い女、捕まえたじゃねえか?」

    「だから、ホントそういうんじゃないから……」

    白い死神「かっかっか。よきかな、よきかな」


    白い死神「ホント、準備会にこんな公平な人間がもっといれば、良かったんだがねえ」

    「何……? どういうコトだ?」

    405 = 1 :


    白い死神「ん? 準備会がもっと公平なら、こんなルール」

    白い死神「とっくにもっと違うモンにすり替わってるだろ」

    「いや……。単に良いアイデアが無いだけなんじゃないのか?」

    「10000人にもなる徹夜組を排除するのは、難しいだろうし……」

    白い死神「…………」


    白い死神「あんた、本当にそう思うかい?」


    「……!」

    「え……?」

    406 = 1 :


    白い死神「さっき、このあんちゃんは黒ずくめしか手に入れられなかったと言ったが」

    白い死神「そんなのは氷山の一角だ」

    白い死神「場合によっては、行列に並んだ挙句、何も手に入れられなかった……」

    白い死神「そんな始発組と変わらないような徹夜組だって、現れる」

    「な……。そ、それはどういうコトですか?」

    「徹夜組のヒトは、確実に頒布物を手に入れられるから、並んでるんでしょう?」

    白い死神「んっんー。その言い方には、ちと語弊がある」


    白い死神「正確には、“頒布物を手に入れられる可能性が高い”から、並ぶんだ」

    407 = 1 :


    「……そ。それは……」

    「徹夜をしても、頒布物を手に入れられないコトがある……?」

    白い死神「ご名答! さすが、聡い嬢ちゃんだ」


    白い死神「そう。徹夜組だって、無敵じゃあない」

    白い死神「ツラい思いして、前の夜から並んでも……」

    白い死神「さらに別のヤツに、出し抜かれるかもしれねえんだ」

    「べ。別のヤツ、って……?」

    「…………」

    白い死神「考えてもみろ。いくつか、方法があるだろう?」

    408 = 1 :


    白い死神「始発組よりも、徹夜組よりも。早くに会場に入れる、“魔法のチケット”が」

    「……!!」


    白い死神「そう。始発組は徹夜組に、徹夜組はチケット組に、さらに出し抜かれる」

    白い死神「チケットを手に入れた者こそが、真の絶対正義なのさ」

    「……そして、そのチケットを発行しているのが」

    白い死神「そう。まぎれもなく、準備会の連中」

    白い死神「モチロン、チケットも理念通りに使えば、正しいアイテムだが」

    白い死神「哀れかな。使う人間が悪ならば、アイテムも悪に成り下がる」

    409 = 1 :


    白い死神「そして。この二種類のチケットの通称。その名前を、なんと言った?」

    「え……。たしか、片方がサークルチケット。ソレと……」


    「……!!」

    白い死神「……そういうコトさ」

    白い死神「準備会は身内の特権を守るために、スタッフチケットを発行している」

    白い死神「ソレ自体がマチガイだとは言わん。事実、当日スタッフは頒布物を買えないからな」


    白い死神「だが、準備会が発行したチケットが存在するために」

    白い死神「準備会が提示したルールは守られず、徹夜組があふれ出す」

    410 = 1 :


    白い死神「しかも、結局徹夜組も、チケット組には敵わない」

    白い死神「どうだ? コレがCOMIKEの現実だ」

    「……そ。ん、な……」

    「…………」


    「一つ、いいか」

    白い死神「おう。なんでも」

    「死神。お前は、今日もファンネルと協力して、頒布物を手に入れたようだが……」


    「その頒布物を手に入れるために、お前たちはどうやって入場した?」

    411 = 1 :


    白い死神「…………」

    「……!」


    「ま、まさか……」

    白い死神「……ああ、そうさ」

    白い死神「俺たちだって、一般参加者より早く入場したよ。サクチケを使って、な」


    「お前、やっぱり……」

    白い死神「おっと、カン違いするなよ」

    白い死神「俺たちは、転売だけは大嫌いなんだ」

    412 = 1 :


    白い死神「サクチケは、転売で手に入れたモノじゃなく」

    白い死神「友人をはじめとした、当日のサークル参加者と協力して手に入れているし」

    白い死神「頒布物を買うのは、ファンネル仲間と、サクチケを提供してくれたサークルのためだ」

    白い死神「けっして頒布物を転売するためじゃない」


    「だとしても、お前たちも、一般参加者の列には並ばず」

    「サークル参加者でもないのに、先に入場しているのは、たしかだろう」

    白い死神「ああ。その通りさ」


    白い死神「目には目を。歯には歯を。悪には、悪をもって制す」

    413 = 1 :


    白い死神「それが、俺たちのやり方だ」

    「…………」

    白い死神「というより、チケットというシステムが存在する以上、それが最善手だ」

    白い死神「結局のところ。準備会が内部改革しないコトには、どうしようもないんだよ」


    「…………」

    白い死神「……おしゃべりが過ぎたな」

    白い死神「ジューブン涼んだし、そろそろ俺は島中の絨毯爆撃に行くぜ」

    白い死神「その紙袋は、ちゃんと徹夜組のあんちゃんに返しておけよ」

    白い死神「じゃあな。男、聡い嬢ちゃん。機会があったら、また会おうぜ」

    414 = 1 :



    ――ビッグサイト 入口

    「…………」

    「…………」


    「……なあ、このあと、どうする?」

    「…………」

    「まだ島サークルでも見に行くか」

    「友人でも探しに行くか。それとも……」


    「……いや」

    415 = 1 :


    「……今日は、もう帰りたいです」

    「…………」


    「死神さんのおハナシ……」

    「まさか、COMIKEの現実が、そんなだなんて、思いませんでした」

    「おいおい。アイツのハナシを本気にしてるのか?」

    「そんなの、アイツが言ってるだけだぞ」

    「もっと他の見方だってあるだろう」

    「ハイ。でも、彼の言うコトも、真実の一端だと思います」

    416 = 1 :


    「……それに、私は、徹夜組のヒトのモノとはいえ」

    「一度、尊敬すべき戦士の“戦利品”を盗もうとしました」

    「…………」

    「恥ずかしいです。今すぐ、消えてしまいたいくらい」



    「……私に、もう、COMIKEを楽しむ資格なんて……、ありません」



    「…………」

    「…………そうか」

    417 = 1 :


    「……じゃあ、今日はもう、帰ろうか」

    「……はい」


    「その前に、コレを食っておけ」

    「……? エナジーバー、ですか……?」

    「この暑さだ。家に帰るまでに、あの徹夜組のように倒れるとも限らん」

    「家に帰るまでが、COMIKEだぞ」


    「…………」

    「……、ハイ」

    418 = 1 :



    ――ビッグサイト 周辺

    魔法陣「17歳♂暇だから全レスします☆」

    魔法陣「おっさんネロ。……おっさんだったわ」

    魔法陣「年齢2ケタはオッサン(キリ」


    魔法陣「BIPで本格的にRPG作ろうぜ」

    魔法陣「未完乙、クソスレ乱立すな」

    魔法陣「死ね。氏ねじゃなくて死ね」


    「……。あれは……」

    419 = 1 :


    「すまん。ちょっと待っててくれ」

    「……? ハイ」


    「すみません、BIPの魔法陣ですよね?」

    魔法使い「はい、そうですよ。あ、ヘンなヤツばっかでスミマセン」

    魔法陣「これぞ馴れ合いスレwwwwww」

    魔法陣「股の名をBIPヌクモリティ」


    「あ、あはは……。あの、チャームって、まだあります?」

    魔法使い「ええ、ありますよ。BIPPERのヨシミで、一つどうぞ」

    420 = 1 :


    「ありがとうございます!」

    魔法使い「いえいえ。スレのほうでは、またよろしくお願いしますね」

    「BIPも、結構仲良いですよね。罵詈雑言もあんま飛ばないし」

    魔法使い「あなたCOMIKEの期間中だけBIP来てるでしょう」

    「……バレましたか」


    「すまん。お待たせ」

    「何やってたんですか?」

    「あそこ、なんか人が輪になって集まってるみたいですが……」

    421 = 1 :


    「ああ。アレは、通称“魔法陣”」

    「とある、ネット掲示板の住民の集まりでな」

    「なんとなく仲間で集まってケータイいじってる姿から、そんな名前がついたんだ」

    「……は、はは……。まあ、集まるのは自由ですよね」


    「……あれ。ってコトは、男さんも、その掲示板を?」

    「まあな。COMIKEの情報とか、けっこう書き込まれるし」


    「そうじゃなくって。ハイ、これ。あげるよ」

    「あれ? ……、コレって……」

    422 = 1 :


    「チャームのアクセサリーだ。魔法陣では、毎回タダで配ってるんだよ」

    「どうだ? オレンジの輪切りみたいで、けっこうカワイイだろう?」

    「ええ……。ソレは、そうなんですが……」

    「私、同じの持ってますよ?」


    「……え?」

    「ほら、この首のとこ。ネックレス」

    「……あ。ホントだ、同じだ……」

    「……同じの二つは、いらないよな……」ガックシ

    423 = 1 :


    「…………」

    「……なら、ソレは、男さんが持っていてください」フフッ

    「へ? ……俺が?」

    「それで、もしビビっとくる女性に出会ったら、ソレを渡す」

    「……と、いうのはどうでしょう」

    「えぇー。俺、女には縁が無いからな……」

    「あ、今ならお前がいるけど」

    「ふふ。私はノーカンで」

    「男さん良いヒトですし、良い女のヒトに出会えますよ。ええ、必ず」

    424 = 1 :


    「そのコンキョはどっから出てきたんだ」

    「へへ。私、カンは良いほうなので」

    「きっと良い出会いが、すぐ近くに待っていますよー」

    「……そうか。だと、いいんだがな」


    「ていうか、そのネックレス、ホントにこのチャームとソックリだな」

    「ソレも魔法陣産か? 毎回、チャームにCOMIKEごとの連番を押してくれるんだが……」

    「その番号も今回と同じだし」

    「えぇ!? そ、そーですね。私のコレは貰いモノなので」

    「元の持ち主が、COMIKEに参加していたのかもしれませんねー」

    425 = 1 :



    ――アパート前の道路

    パタン

    「ありがとうございましたー」

    運転手「今回もどうも。三日目も、お願いしますね」


    「……、…………」

    「ええ。モチロンですよ」

    運転手「では」

    ブロロロロロ…

    426 = 1 :



    ――居間

    「……はあ。けっこう、早く帰ってきちまったな」

    「…………」

    「まだ昼か。ビッグサイトは忙しそうだな……」


    「昼飯はどうする? どっか、食べに行くか?」

    「…………」


    「じゃあ、ちょっとワガママ言ってもいいですか?」

    427 = 1 :


    「…………」

    「……いいぞ。大学生のフトコロの深さというのを、見せてやろう」

    「…………」フフ


    「では、男さんの手料理が食べたいです」

    「…………?」


    「お、俺の? 料理?」

    「ええ。昨日の口ぶりだと、作れますよね?」

    「コンダテは問いません。ぜひ、よろしくお願いします!」

    428 = 1 :


    「…………」ボリボリ


    「……マッタク。弱ったな」

    「あれ? 作れないんですか?」

    「いや、作れるがな」


    「材料が無い」

    「…………、あー」

    「まずソコから調達しなきゃならん。弱った」

    「……そうですか」

    429 = 1 :


    「じゃあ、一緒に買いに行きましょうよ! 食材!」

    「……へ? 今からか?」

    「そうです。東狂では、どこで食材買うんですか? やっぱスーパー?」

    「そうだな。……いや、かなりの田舎でもない限り、そうだと思うが」

    「よっしー!! それじゃあキマリですね、レッツショッピンショッピン!」


    「…………」

    「……はあ。やれやれ」

    「わかった。だが、今日の戦利品くらい片付けておけ」

    「…………」

    430 = 1 :


    「戦場から帰った戦士としての、当然のタシナミだぞ」

    「……。そう、ですね……」

    「わかりました。といっても、黒ずくめさんの既刊、3冊だけですが」

    「それでもリッパな戦利品だ」


    「……そういえば、いったいどんな本だったんだ?」ガサ


    「……!!」

    「……こ、コレ、は…………」

    「ん……? どれどれ」

    431 = 1 :


    「男のヒトが二人、見つめ合っている表紙ですね」

    「男さん、これはいったい?」

    「…………、…………」

    「ちょっと、私には知識が無いので、わかりません……」

    「少なくとも、おじいちゃんはこういうの、持ってなかったですね」

    「…………」


    「……まだ早い。というか、一生早い」

    「えー。いったいどういうコトなんですか」グラグラ

    432 = 1 :


    「揺らすな……」ガクガク


    パサ


    「あ……」

    「ん……? この紙は……」

    「黒ずくめさんの連絡先だな」

    「ああ、そういえば……。今日並ばせたコトへの、お詫びがしたいと」


    「……どうする?」

    「…………」

    433 = 1 :


    「…………」

    「…………」

    「…………」

    「…………」

    「…………ええ。かけてみてください」

    「そうか。……って、俺のケータイで?」

    「ハイ。私のは、繋がりませんから」

    「俺のだって繋がる保証は無いが……」

    「まあ昼ならちょっとは空いてるだろうし、サークルもヒマしてるだろう」

    434 = 1 :



    「やれ。この電話番号だな」タタターン


    ケータイ「プルルル! プルルル! プルプルプル!」

    ケータイ「プルルル! プルルル! プルプルプル!」

    ケータイ「ぼく悪いケ……」


    黒ずくめ『はい、もしもし』

    「良かった、繋がった。もしもし、黒ずくめさん?」

    黒ずくめ『あ……。男さんですか?』

    「そうだ。タイミング悪かったか?」

    435 = 1 :


    黒ずくめ『いいえ、とんでもない。既刊もハケて、設営の撤収中だったんです』

    黒ずくめ『お二人は、今、どちらに?』

    「ああ……。実は、もう家に帰ってきちまってな」

    黒ずくめ『そうですか……。まあ、暑いですからね』


    黒ずくめ『それで、少女ちゃんは、今ソコにいますか?』

    「うん。たしかにいるが」

    黒ずくめ『……伝えたいコトがあります。良かったら、代わってもらえませんか?』

    「……わかった」

    436 = 1 :


    「おい、少女。黒ずくめさんが、代わってほしいそうだ」

    「え……」

    「ご指名だぞ。まさか、ここで居留守使う気か? もういるって言っちまったぞ」

    「……いや。出ます」


    「お電話代わりました。少女です」

    黒ずくめ『ああ、少女ちゃん。今日はゴメンね。気分悪くさせて』

    「いえ……。黒ずくめさんのせいじゃありませんよ」

    黒ずくめ『ありがとう。でも、元は僕が言い出したコトだから……』

    黒ずくめ『だから、代わりと言っちゃナンだけど、僕から提案があるんだ』

    437 = 1 :


    「提案……?」

    黒ずくめ『そう。僕は、明日の三日目は一般参加で入るんだけど……』

    黒ずくめ『一日目と同じように、コスプレをしようと思うんだ』

    黒ずくめ『だから……』




    黒ずくめ『少女ちゃんも。コスプレ、やってみませんか?』




    「は……?」



     

    438 = 1 :

    第二章は以上になります。
    最終章は、現在鋭意制作中です。もう少々お待ちください。

    439 :

    謎が解けてきたなー!
    しかし話の構成ほんと上手だね。
    最終章も楽しみにしてます。

    440 :

    おつおつ
    行楽地限1なったなーとか
    COMIKEに行った時のことが思い返されるようで面白い

    441 :

    少女の正体予想ついてたがやっぱりなーと思った

    442 :

    、家やわ、蘿諭?、蘿、わらほり?る、
    皿府愛菜や蘿。やはらららら、はほやなはしは、ら?や

    443 :

    追いついた
    楽しみしてます

    444 :

    なんだかすごいSSに出会ってしまった
    結構ボリュームあるけど一気読みしちゃったよ
    続きも期待

    445 :

    感想ありがとうございます。AAを含めてとはいえ、既に
    200KBを超えていますが、お楽しみ頂けているようで幸いです

    >>440
    当日参加された方ですか、恐縮です
    実際の出来事と異なる部分は“COMIKE”限定のイベントということでお楽しみください


    お待たせしました。完結の目途が立ちましたので、
    最終章は前編、中編、後編に分けて今日から更新します。

    それでは、最終章 前編を開始します。
    今回は少ないですが30レスほどの予定です。

    446 = 1 :





    ふと、目が覚めた。



    あけぼのというには深すぎる、大都市の外れの、住宅街を包む夏の宵闇。

    壁時計の針がさすのは丑三つ時。


    ふと、窓から吹き込む夜の風に、目が覚めた。


    なんとなく二度寝するのもきまりが悪いような気がして、

    冷たい床から体を起こす。


    だが。そこまで脳が覚醒して、……引っかかった。


    この二日は、たしかに深夜に早く起きていた。

    だが、早すぎる。

    早く目覚めすぎるのも体に悪い、起きるのはせいぜい午前3時ごろ。


    誤差といってしまえばそれまでかもしれない。

    だが、今の時刻は、午前2時を少し過ぎたあたり。


    なぜ俺は、今日に限って、少し早く目が覚めた?

    447 = 1 :



    そこまで頭を巡らせて。

    俺は、自分を眠りから揺り起こした要因に気付く。


    風。


    ベッドのそばにある窓から吹き込む、間近の秋を思わせるほのかに冷たい風。


    しかし俺は、この風をしばらく肌で感じてはいなかった。

    記憶が確かならばおよそ二日間ほど。

    昨日までは何か、窓の風を、さえぎるモノがあって――――



    いない。



    この二日、いつのまにか見慣れた姿になっていた、彼女。


    少女の姿が、そこには無かった。

    448 = 1 :



    「…………」




    「そうか」





    「…………」



    「アイツは、行ったか」

    449 = 1 :


    「キレイに自分の荷物だけ無くなっていやがる」


    「干しといた、昨日の服も……」

    「見事に無いな」


    「……ふう」


    「そりゃあ、もともと一人暮らしだし」

    「寂しいってこたぁ無いが……」



    「……ちょっと、薄情なモンだな」

    450 = 1 :


    「…………」

    「……となると、今日の予定も、変更か」


    「今日の天気は、一日を通しての晴れ」

    「予想最高気温は30度。べらぼうに暑くはないが……」

    「それでも進んで外に出たくはないな」


    「加えてビッグサイトなら。人々の熱気で、気温はマシマシだ」

    「そんなところに、好きこのんで行く理由は……」


    「もう、無いな」


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