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    元スレ少女「コミケ行くので泊めてください!」男「は……?」

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    201 = 1 :



    「コッチはCDですね。……これって、音楽ですよね?」

    「そりゃそうだが。お前、わからないで買ってたのか」

    「そうじゃないんですが。ただ、どうやってCDで音楽を聴くのかな、って」

    「な……。ダウンロード世代は、CDの使い方もわからないのか? ウソだろ……」

    「音楽はケータイで聴くモノじゃないんですか?」

    「ソレも間違っちゃいないが。……とりあえず、CDを貸せ」

    「まず、CDから音楽を俺のパソコンに取り込んで、そこからお前のケータイにコピーする」

    「よろしくです! ああ、直に話したヒトの作った音楽が聴けるなんて、カンゲキだなぁ……!」

    「人生楽しそうだな、コイツ」

    202 = 1 :



    「よし、そろそろ晩飯の時間だ」コト

    「……? なんですかコレ」

    「何って、ココナッツミルクだが」

    「いやソレはわかりますが。ば、晩ご飯が……、コレですかぁ?」

    「いちおう聞いてやるが、お前は晩飯に何を期待していた」

    「そりゃあ高そうなところに外食とか、豪華に出前のお寿司ですね!」

    「まあ男さんの手作り料理でもいいですよ?」

    「俺の料理が二の次に置かれているのが何となく腹立たしいんだが」

    203 = 1 :


    「まず第一に、いちど家に帰った以上、わざわざ外に食べに行ったりしない」

    「寝る時間も遅くなるし、疲れるだけだ」

    「むーぅ。出不精ですねぇ」

    「次に、なんでわざわざ出前とか高いモン取らなきゃならんのだ」

    「家にお客さんが来てるんですよ? それにお金は私持ちですし」

    「こういう時だけ客気取りか……。だとしても。だとしてもだ」

    「お前、明日は朝から待機列に並ぶと言っただろう」

    「ハイ、そうですね。ソレが何か?」

    「よほど死にたいらしいな」

    204 = 1 :


    「明日、朝から何時間も並ぶとわかってるのに、前日の夜にバカ食いする奴があるか」

    「討ち死にが目に見えているだろう」

    「えぇ……。12時間くらいじゃ食べたモノは出てきませんよ」

    「だったら腹に残ってるんだろう。人間、非日常の場では緊張もするし委縮もする」

    「その時、いま食ったモノが胃袋でカーニバらないと何故言える?」

    「それに、排泄のサイクルが24時間だというのなら」

    「お前は今朝から昼にかけて何を食ったか。その腹に訊いてみろ」

    「うぅ。でも、さすがにココナッツミルクだけでは、空腹でお腹が痛くなります!」

    「わかったよ……。じゃあ、赤いき○ねと緑のた○きがあるから、好きなほう選べ」

    205 = 1 :


    「やったー! 私、カップ麺、大好きなんですよね」

    「インスタント中毒者か。ハンバーガーとか、ファストフードはどうだ?」

    「あまり食べる機会はありませんでしたが、モチロン好きですよぉ」ベリベリ

    「まあ、今朝にしたって、ケバブ食ってたか……」

    「おほー、容器の中の乾燥した香りがたまらない」スンスン

    「お湯あります? ありませんね? 沸かしますよー」

    「急に元気になりやがって。まあ、俺も何か食うか……」


    「……アイツ、どん左ェ門もっていきやがった」

    206 = 1 :




    「ごちそうさまでしたー。このチープな感じは、他に代えられませんね」

    「ココナッツミルクを忘れるな。整腸の役割も兼ねてるんだぞ」

    「それでも胸焼けがすると思うなら、野菜ジュースを飲んでおけ」パカ

    「ヨーグルトもいいぞ」

    「なんで冷蔵庫の食材は少ないのに、健康食品みたいなのはいっぱいあるんですか……?」

    「食材が少ないのは、この三連休に買いに行こうと思ってたからだ」パタン

    「それに、一人暮らしとなると、どうにも栄養バランスが偏りがちでな」

    「あはは、きっと良いお婿さんになれますね……」

    207 = 1 :


    ピーッ ピーッ

    「お……っ。ようやく風呂が沸いたな」

    「へえ、気付かなかったけど、お風呂もあったんですねー」

    「このアパート、わりと設備は整ってるからな」

    「……それが何故かは、察しろ」

    「???」


    「とにかくカラダも服もベタベタしてたので、ようやく汗を落とせそうで、助かります!」

    「今は夏の時期だからな。ましてやCOMIKEの後」

    「ちゃんと風呂に入っておかないと自分も他の参加者もヒドいコトになる」

    208 = 1 :


    「ああ……。たしかに、ちょくちょくですが、異臭を放ってるヒトもいましたね」

    「今日の天気は、朝が雨、昼が曇りだったから、夏コミにしてはかなり楽だったが」

    「その分、湿度が高くて、生乾き臭がスゴかった」

    「自分の臭いは、自分じゃわからないのが、悩みのタネですね」スンスン

    「それに二日目以降は、家にも帰らず、カラダも服も洗わず」

    「通しで参加しているような野生のモンスターが幾度となく現れる」

    「草むらならぬ人ごみから飛び出してくるという風情ですか」

    「まあヤツらは野生だから仕方ないが」

    「せめて俺たちはモンスターにならないよう、湯舟につかるぞ」

    209 = 1 :


    「で、どっちから先に入る? 俺としては……」

    「ハイ! 一番風呂、行かせていただきます!!」

    「元気でよろしい」


    「脱いだ服は、脱衣所のデカいカゴに入れておいてくれ」

    「あとで洗濯機で洗うが……。俺と一緒でいいか?」

    「はあ。構いませんよ」

    「あっそう。まあ、水が節約できて助かるがね」

    「資源は大切にしないといけませんからね」

    210 = 1 :


    「それじゃあ、また後でー」ダダダ


    「んー! スッポンポンは快適だなあ!」

    「わお、洗剤がいっぱい揃ってる! セッケンとボディーソープってどう違うの?」

    「蛇口をヒネれば水が出るんだよね……。ひゃあ! 冷たぁい!」


    「…………」ハァ

    「知らない男の家でハダカになれば、襲われるかもしれないとか、考えないのかね」

    「いや、泊めてくれるなら何でもするとか言いやがるし、今さらか……」

    「……それとも、俺の常識がまちがってるのか……?」

    211 = 1 :




    「はー! サッパリしました! お風呂、お先です!!」モクモク

    「あ……っ、着替えはあるんだよな?」

    「ハイ。持参していますが」

    「良かった。さすがに、女モノの服までは用意できないからな」

    「じゃあ、俺も入ってくる。戦利品でも見ながら好きにしててくれ」

    「はーい! 実は中身が気になってる本があるんだよね……、と!」


    (……なんて、知らない女を一人で部屋に放置する俺も、大概か)

    (お互い、甘い親に育てられたモンだな)

    212 = 1 :




    「あがったぞー」

    「あ、うーん」シャクシャク

    「…………」

    「……てめえ、そのアイス、どこから出してきた」

    「え? そこの冷凍庫からですが」

    「お前の親は人様の家の食い物を勝手に漁って良いとでも教えたか」

    「そんなワケないでしょう。えへへ」

    「……頭が痛い。もう、好きにしろ」

    213 = 1 :



    「う。あ、いたたた。痛たた。きゅ、急に足が……!」

    「ふ。アドレナリンが切れて、痛みの波が来たか」

    「痛みの波って無知の知みたいですね」

    「でも痛い、痛いですよぅ。男さんは大丈夫なんですか?」

    「……今は、大丈夫だな」

    「え? それって……」

    「……最近、痛みが来るのが遅くてな」

    「…………」

    「……イヤですね、老化って」

    214 = 1 :


    「だが、当座の問題はお前だ。足は大丈夫か?」

    「うーん、歩くのには問題無いと思いますけど。やっぱり痛いです」

    「どれ……。うーん、たしかに両足とも熱持ってるな」ピタ

    「とりあえず、冷水でひやすか」


    ――浴室

    シャワー

    「わっはー、つっめたーい!!」バシャバシャ

    「暴れるな、俺にもかかるから! ヒエッ、つめてっ!!」

    215 = 1 :



    ――居間

    「ふえ~、冷えた冷えた」

    「体温が下がって硬直したままだと筋肉痛めるぞ。揉んでやる」

    「いいんですか? じゃあ、背中もマッサージお願いします」

    「誰がそこまでやるか。エステ屋いってこい」グイグイ

    「―――あ゙ッ、気持ちイ゙ィ゙~~……」ゴキゴキ

    「えらい音が出てるぞ、色々と。普段カラダいたわってるか?」

    「はあ? 疲れなんて、寝れば治るでしょう」

    「若いっていいね。でも、たまにはじっくり休むのもダイジ……」

    216 = 1 :


    「…………」

    「……? どうかしましたか」

    「……へ? あ、いや」

    「脚、長いな、と思ってな」

    「どこ見てんですか。んー、他のヒトの脚とか意識しないんで、何とも言えませんが」

    「あ、でも、回し蹴りとかトクイですよ?」シュッシュッ

    「トクイと自称できるほど回し蹴りを撃つ機会があったのか」

    「陸上部?」

    「そこはカラテとかじゃないんですか? まあ、いずれでもありませんが」

    217 = 1 :


    「ふーん。あっ、そう」


    (……なんだ、この足のマメの数)

    (片足だけで軽く10個は超えてる。ハッキリ言って異常だな)

    (だが、今日のCOMIKEで出来たのかといわれると)

    (そんなに新しいマメが多いようには見えない)

    (マメは前からあったと考えるべきか)

    (……コイツ、いったい今までどこで、何をしてきたんだ?)

    (知識が食い違う部分もあるし。ワケがわからんな)

    218 = 1 :


    「……よし、こんなモンだな」スッ

    「ふいー! ありがとうございます、だいぶ足が軽くなりました!」ブンブン

    「そりゃ良かった。あとはサロロンパスを貼っといてやる」ペタ

    「うーん、つめた~い……」

    「あ、そうだ。余ったサロロンパス、ちょっと分けてもらえます?」

    「別にいいが。何に使う?」

    「ふふん。鼻にペタリ」

    「どうですか! 勝利の勲章です!」ヘヘッ

    「アホだコイツ……」

    219 = 1 :




    「よし、そろそろ寝るぞ」

    「えー? まだ7時ですよ? 若い時から、お年寄りですか?」

    「年寄り扱いするな、まだ大学生だぞ」

    「……今日、何時に起きたか覚えているか?」

    「ああ……。たしかに、まだ暗い時でしたね」

    「そういうコトだ。早く起きなきゃならないし、睡眠時間を欠いてもいけない」

    「COMIKEはスポーツだ。戦場だ。まず万全の体調が大前提と知れ」

    「んー、ハイ! そうですね! おやすみなさい!!」

    220 = 1 :


    「ちょっと待て。何故お前は当然のようにベッドを占領している?」

    「え……? あ、たしかにベッド一つしかありませんね」

    「ごめんなさい。このベッドは男さんに譲るべきですね」

    「お、おう……。急に殊勝だな」

    「衣食住の重要性は心得ているつもりです」

    「でも、いいよ。お前がベッドで、俺がザコ寝。それで構わない」

    「え? いいんですか?」

    「別に。礼儀には礼儀を、というやつだ。例えば友人とかなら蹴り飛ばしてたがな。じゃ、消すぞ」

    「はーい」

    221 = 1 :



    パチ


    (……やれやれ。やっと一日目が終わったか)

    (本当に長い一日だった)

    (……まさか、三連休がこんなコトになるとはな)

    (昨日までは思いもしなかった……)

    (さて、今日は比較的うまくいったが、明日はどうかな)

    (……考えても仕方ないな。答えの出る問題じゃない)


    (……寝るか)

    222 = 1 :

    第一章は以上になります。
    第二章は、明日18時ごろの開始を予定しています。

    225 :

    乙ですぞwwwwww
    しかしムックはありえないwwwwwwぺゃっwwwwww

    226 :

    おもろい

    227 :

    感想ありがとうございます。とても励みになります
    緑は敵ですぞwwwwwwぴゃっwww


    それでは、第二章を開始します。
    今回も200レスほどの予定です。

    228 = 1 :





    ザァー…



    「……、んっ……」

    「ぐっ、うぅ~……、くぁ~~~」ノビッ


    「あれ、ココは……」ガバッ


    「……そっか、男さんの家か」

    「あれ、でもさっきまで、COMIKEから帰って……」

    229 = 1 :


    「…………」


    チクタク チクタク


    「……3時」

    「外は真っ暗……」

    「ああ、そうか。もう朝になったのか……」


    「…………」

    「なんだか、肌寒いな」

    230 = 1 :


    「…………」


    「……寒いのは、イヤだな……」


    「……?」

    「あれ。そういえば、男さんがいないな……」

    「昨日は、この部屋で一緒に寝てたハズなのに」


    「ああ、でも向こうの部屋だけ明かりがついてる」

    「ヨイショっと」タタッ

    「髪を……、まとめて……」

    231 = 1 :



    ――ダイニング

    「男さーん!」

    「ん。今、起きたか」

    「ええ。ゆうべはグッスリ眠れたようです!」

    「なら良かった。出発まではまだ時間がある。体の調子を整えろ」スイッ スイ

    「……? あの、男さんは、何を?」

    「ケータイで今の状況を調べていた」

    「どうやらココと同じく、有開でも雨が降っているらしいな」

    232 = 1 :


    「雨……」

    「天気予報では、昨日と同じく、朝は降ってても昼にはやむようだが」

    「とはいえ、待機列で雨に降られるコトは間違いない」

    「ある程度カクゴしておくことだな」

    「……そうですか」

    「……? どうした。元気無いな。朝は低血圧か?」

    「ええと……、ですね。それも、ありますが……」


    「……ちょっと、私のハナシ、してもいいですか?」

    233 = 1 :


    「…………」

    「わかった。聞こう」

    「ソコに座れ」ガタ

    「ありがとうございます」


    「…………」

    「…………」


    「……何か、飲み物を入れるよ」

    「寒いし、ホットコーヒーでいいか?」

    234 = 1 :


    「ホットコーヒー……」


    「……ええ。お願いします」フフ

    「……? なに笑ってるんだ……」


    「ああ、そうだ。俺はあいにくとブラック派でな。牛乳と」

    「―――牛乳とガムシロップの貯蔵は無いが、フレッシュならある」

    「……ですか?」


    「……!」

    「あ……、ああ。たしかにそうだが……」

    235 = 1 :


    「いいえ、構いませんよ。実は私もブラック派なので」

    「ほう。その年の頃で、たいしたモノだ」

    「ムカシから飲んでいますから」



    「……そら、コーヒーだ」コト

    「うぅ……ん。おごそかな闇色の薫り……」スン

    「一日はコレが無いと始まりませんね」

    「ふふっ。通だな」

    「俺も食にコダワリは無いが、コレだけはな」ズズ

    236 = 1 :


    「……苦くて、熱いですね。五臓六腑に染みわたります」

    「飲みすぎはキンモツだぞ。さて、ハナシを聞こうか」

    「…………」

    「…………」


    「……話しにくいなら、別にいいんだが」ボリボリ

    「いえ。私から言い出したコトですから、喋らせてください」


    「……そうですね。男さんには、知るヨシも無いと、ことわっておきますが……」

    「私の“ふるさと”のハナシです」

    237 = 1 :


    「ふるさと。そういえばお前、いったいどこから来たんだ?」

    「お教えしても良いんですが、絶対にご存知無いので、やめておきます」

    「おいおい。俺だって、そんなに世間知らずじゃ……」

    「私にはそう断言できるのです」

    「…………」

    「……そうか。なら、まあいいがな」


    「で。お前の“ふるさと”というのは、どういうところなんだ?」ズズ

    「……。そう、ですね……」

    238 = 1 :


    「……いいですか。カーテン」

    「ああ」

    シャアッ



                ザァー…



    「私のふるさとは、こんな風に、いつでも“雨”が降っているところです」

    「いつでも。どこでも。いつまでも」

    「やむコトの無い雨が、永遠に降り続けている場所です」

    239 = 1 :


    「…………」

    「まあ、そんなワケですから。私は生まれてからずっと、屋根の下で育ちました」

    「別に、私にはソレが常識でしたので、何とも思いませんでしたが」

    「この国に来て、青い空、白い雲、眩い海、瞬く星というのは」

    「絵本の創作ではなく、本当に存在するモノだと、初めてこの肌で感じたのです」

    「それは、東狂の海か?」

    「ええ。どこまでも眩く照らされる海、無窮に瞬く星々……」

    「世界というのは、スバラシイものですね」

    「田舎のほうに行けば、自然はもっとキレイだぞ」

    240 = 1 :


    「ええ。一度、行ってみたいモノです」


    「でも、私の“ふるさと”は」

    「今の、この景色のように」

    「ずっと、雨が降っていました」



                ザァー…



    「ずっと、ずっと、ずっと……。終わるコトの無い雨」

    241 = 1 :


    「それに、この“雨”というのは、いささかタチの悪いモノでして」

    「浴びると、カラダに良くないのですね」

    「……酸性雨のようなモノか?」

    「きっと似ていますが、もっと、もっとタチの悪いモノをご想像いただければ」


    「とにかく、その“雨”は、人々の往来を億劫にさせました」

    「必然、一ヶ所に多くのヒトが住むと、食糧や資材も大量に必要になりますから」

    「なるたけ行動しなくて済むように、少人数が分かれて住むようになったのです」

    「……それは、面白くないな」

    242 = 1 :


    「ええ。面白くありません」

    「一緒に遊んでくれるオトナのヒトも、同年代の友達も少ないですから」



                ザァー…



    「でも、そんな私にも、一つだけ楽しみがありました」

    「それは、おじいちゃんから、大人数のヒトが集まっていた時のハナシを聞くことです」

    「君のおじいちゃんか。いったい、どんなヒトなんだ?」

    「うーんと。そうですねえ……」

    243 = 1 :


    「普通のおじいちゃんでしたよ。うん、ごく普通の」

    「物静かで、落ち着いていて……。優しくて、モノ知りで……」

    「私の、大切なおじいちゃんでした」

    「…………」


    「そんなおじいちゃんから聞いたんですね。私は、COMIKEのハナシを」

    「もっとも、私が聞いたのは“コミケ”だったような気もしますが……」

    「ほーう。孫にCOMIKEのハナシをするとは、かなり変わったおじいちゃんだな」

    「ええ、本人もそう言っていました」

    「でも、私はそのハナシが好きでした」

    244 = 1 :


    「私には考えられないくらいのヒトが集まって……」

    「その人々には、それぞれ一人一人に、目的が、嗜好が、人生があって……」

    「自分のほんの人生の一部を見せ合い、認め合う」

    「COMIKEはそんなところだと、おじいちゃんは話していました」


    「そんなキレイなモンじゃないぞ? COMIKEは」

    「色んなヒトが集まりすぎて、体臭はクサいし、変なヤツもやってくる」

    「昨日今日はマシそうだが、もし気温が上がれば、会場自体どうなるコトか」

    「あはは。ソレについては、身をもって体感するコトにします」

    245 = 1 :


    「でも、伝え聞くCOMIKEの姿は、とても楽しそうで……」

    「貸してもらったチャームや同人誌からも、その光景を想像していました」

    「お、おい……。お前のおじいちゃん、同人誌も持ってたのか?」

    「ええ。その手のマニア、というワケではないようでしたが」

    「ちなみに聞くが、同人誌といっても、普通の本と変わらない健全なやつだよな?」

    「いいえ? えっちぃのも多かったですが。えへへ」

    「えへへて……」

    「おじいちゃん。あなたは孫を、どんな風に育てたいんですか……?」

    「ふふ。でも、ソレも、必要なコトだったのかもしれませんね」

    246 = 1 :


    「そしていつしか、私は、生でそのお祭に参加してみたい」

    「そう思うようになりました」

    「だから、一昨日、ココに来たのか」

    「ええ! その機会を手に入れた私は、それはもう、バビューンと!!」スッ…

    「はるばるやってきたのですよ!!」シャキーン

    「……ふっふっ。エネルギッシュなヤツだ」

    「ええ! 不肖私、元気なコトだけが取り柄なので!」

    「結構。だけどその元気も、二日目、三日目のいつまで保つかな?」

    「いつまでも、ですよーっ!!」

    247 = 1 :



    「……ふう。話してたら、なんだか目も覚めました」コト

    「さあ、男さん! 出発はいつにしますか!?」

    「そうだな、それじゃあそろそろ行くとするか」ガタ

    「だが、出来ればその前に腸の中のモノは出しておけ」

    「並び始めたら、待機列確定まではガマンしてもらうぞ」

    「うぅ……。ちなみに、どうしてもダメだったら?」

    「喜べ。一気に十数万人の中のスターダムだ」

    「そんなの喜べませんよーっ!!」

    「スターダストともいうな」

    248 = 1 :



    「ぐぅぅ……っ、そんなハナシしてたら、なんだか下ってきました」ゴロゴロピー

    「では! ちょっと! おトイレお借りしますね!」ダダダッ

    「はいはい。……やれやれ、生理現象までニギヤカなヤツだ」


    「さて、アイツ薄着だし、防寒用のズボンも用意してやるか……」ガサガサ

    「それと上着。夏コミで追加の上着なんて、珍しいコトだが」

    「この雨だとレインコートじゃダメかもしれんな。使うかどうかは別にして、折り畳み傘か……」

    「あと、重要なのが防水カバー。戦利品を濡らすワケにはいくまい」ゴソゴソ


    「…………」ピタ

    249 = 1 :


    「雨の降り続ける世界、ね」

    「一日中昼だったり、夜だったり、凍ってたりする国ならまだしも」

    「ニワカには信じがたいハナシだ、が」ギュウギュウ

    「……アイツがウソをついているというワケでもないだろう」

    「……本当に存在するのか、そんな国が」

    「…………」


    「少人数で人々が暮らして、COMIKEも行えない世界か」

    「……ふん」

    「あまり、好かんな」ギュウギュウ

    250 = 1 :



    ――アパート前の道路

    「男さん! 今日も今日とて重装備ですね!」

    「雨だから、特にな。それに列待機用のジュンビもある」


    ブロロロロロ

    キキー


    カパッ

    運転手「どうぞ」


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