元スレ少女「コミケ行くので泊めてください!」男「は……?」
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101 = 1 :
男「それじゃあ、会場に向かって歩いていくぞ」
少女「わっかりましたー。皆、あの逆三角形のタテモノに吸い込まれていきますね……」
男「別にあの逆三角形でCOMIKEやってるワケじゃないぞ?」
少女「え? そうなんですか?」
男「ああ。俺も最初はアソコでやってるモンだと思ってたが……」
男「実際は会議室になってる。COMIKE期間中はレイヤーの更衣室だったかな」
少女「……レイヤー??」
男「コスプレイヤーの略だ。コスプレをするヒトのこと、な」
少女「ああ。コスプレもCOMIKEの華だと、聞いたコトがあります」
102 = 1 :
少女「……おや? また新たな行列が現れましたね」
男「しかも複数ときたか……。こりゃ一つの案件じゃないな」
少女「片方はすぐ近くに吸い込まれていますね。これは……?」
男「……自動販売機か」
少女「ああ……。さすがに行列の長さが異常ですが、ナットクです」
男「まちがってもCOMIKE会場内で自販機を使おうなどと思うなよ」
男「この行列に並ばなければいけないのもそうだが」
男「たいていは売り切れ。その頃には行列も消えるがな」
少女「中身無けりゃタダのハコですね」
103 = 1 :
男「それに、よしんば飲み物を買うコトが出来たとしても」
男「出てくるのは、つめた~い、じゃなくて、ぬる~い、だ」
少女「ぬ、ぬる~い……。イヤな響きですね」
少女「しかしどうして。炎天下で冷却機能がオシャカとか?」
男「いや、マシントラブルじゃあない」
男「単に業者がストックを追加したそばから売れていくからだ」
少女「最初から、つめた~い、じゃないんですね……」
男「いつわりの表示だ。世の中なんてウソばっかりと知れ」
少女「世知ガラい世の中です……」
104 = 1 :
少女「だけど、となると、コッチの行列は?」
男「地平線の向こう側まで続いているな……。続く先は、東館か」
少女「東館?」
男「実際にCOMIKEを、つまりサークルが頒布を行っている場所だな」
男「となると、コレがその一つ、か……」
少女「あっ! 行列の向こうにケバブ屋さんが見えますよ! 行ってもいいですか?」
男「もう腹が空いたのか? さっき魚食ったばかりだろう」
少女「買い食いもお祭のダイゴミだと考えます!」
男「ああそう、好きにしろ……。だが、食べ過ぎるなよ」
105 = 1 :
少女「はーい! すいません行列のヒト、通りまーす!!」
ギュウギュウ
少女「んしょ、んしょ……。さすがに混みあってるなぁ」
参加者「……むふふ」ワキッ
男「おい」ガシッ
参加者「……!」アセッ
男「……ウチの娘に手を出すなよ」
参加者「……、……」フヒッ
106 = 1 :
少女「んー? 男さん、どうかしましたかー?」
男「なんでもない。早く抜けろ」
男(満員電車でも痴漢は多いのだから、当然か……)
男「すいませんねー、失礼します……」
少女「ぷは。やっと抜けた!」
男「やれやれだ。しかしこのケバブ屋、毎年見るな」
男「なら、まあ信用しても大丈夫そうか」
少女「なんかヤバいモノ売ってるところもあるんですか?」
男「そうじゃないが、実際、無許可営業してる出店はあるからな」
107 = 1 :
少女「すいませーん、ケバブ一つくださーい!!」
ケバブ店員「はーい。今すぐ作りまー……」
ケバブ店員「って、あなた、昨日の?」
少女「え? ……あ、ああ! もしかして、昨日の大家さん!?」
男「ん……? あれ、大家さんじゃないですか」
男「いったいこんなところで何やってるんですか?」
ケバブ店員「おや、男さん、奇遇ですねー」
ケバブ店員「見ての通り、ケバブを売ってるんですよ」
男「いやソレは見ればわかりますよ!」
108 = 1 :
男「そんなコトを訊いてるんじゃないです」
男「どうして大家さんが、COMIKE会場で出店なんかを?」
ケバブ店員「……気になります?」フフッ
男「……やっぱいいです」
ケバブ店主「おいおいどうした、何かモメ事か?」
ケバブ店員「あっ、おとーさん。私のアパートのタナコさんですよ」
少女「はいっ! その通りです!」
男「お前が借りてるワケじゃないだろ」
ケバブ店主「おお、おお! そうか! ウチの娘が世話になってるみてぇだな!」
109 = 1 :
ケバブ店主「それでケバブ、注文してくれるのかい?」
少女「ええ! 香ばしいお肉の香りに誘われて、やって来ました!」
ケバブ店主「そうかいそうかい。じゃあ、肉ちょっとオマケしちゃおう」ゴリゴリ
少女「やったー!!」
ケバブ店員「……で、昨日会ったばかりの女の子連れて、デートですかぁ?」
男「そんなんじゃないですから。ただ頼まれただけで……、……」
男「…………あっ」
ケバブ店員「ふふ、墓穴を掘りましたね」
110 = 1 :
ケバブ店員「やっぱり見ず知らずの女の子を家に泊めている、と」
男「ちちち違う! やましいコトは何も……!!」
ケバブ店員「ふふっ、まあ私はどっちでもいいんですけどねぇー」
ケバブ店員「というか男さんにCOMIKE行くような趣味があったほうが驚きですが」
男「別に、何か目当てがあるんじゃないんですけど……」
男「何度か友達に誘われて。そして今日は、あの子ってワケです」
ケバブ店員「そんなところだとは思ってました。ふつう、目当てあるなら朝来ますよね」
男「大家さんは、朝からココに?」
ケバブ店員「そうです。結構売れますよ?」
111 = 1 :
ケバブ店員「もっとも、今はあの行列で客足が遮られて、商売あがったりですが……」
男「そういや、あの行列……。どこかの大手の列ですか?」
ケバブ店員「ううんと、よくわかりませんね。おとーさん!」
ケバブ店主「ん? どうした?」
ケバブ店員「ココの列、どこのサークルの列だか知ってる?」
ケバブ店主「ああ、この列な。たしか、アイドルマス……、なんたらの列らしいぜ」
ケバブ店主「はい、お嬢ちゃん。パンにレタスにトマトに肉」
ケバブ店主「落とさないで食べてくれよ」
少女「わっはー! ありがとうございますー!!」
112 = 1 :
男「アイドルマス……。あのシャンシャンするソシャゲか」
ケバブ店員「そうなんですか? で、一日目で関連してそうなサークルというと……」
ケバブ店員「ああ、そのソシャゲのキャラデザのヒトかもしれないですねー」
男「公式のイラストレーターが個人でサークルを出してるというコトですか?」
ケバブ店員「そうですね。でも初参加らしいので、手際悪いのかもしれません」
ケバブ店員「もしうまくさばけてるなら、こんな行列は出来ませんから」
男「……やけに詳しいんですね」
ケバブ店員「当然ですよ。イベントのスペース間借りして店出してるんですから」
ケバブ店員「何をやってるかくらいは情報収集しておくものです」
113 = 1 :
男「そうですか。……ありがとうございます」
ケバブ店員「いえいえ。良いってコトですよー」
ケバブ店員「明日も明後日も来るなら、ぜひ当店のご利用を!」
男「は、はは……。忘れるまで覚えておきますよ」
少女「はぐ、はぐ。ケバブおいひー」
男「ったく……。館内に入るまでには食っておけよ。舌かむぞ」
少女「んぐ。そーなの?」
男「ヒトが多すぎて食い歩く余裕は無いな。行けばわかる」
114 = 1 :
男「さて……。まずはどこに行く?」
男「友人の奴がいる館内か? それとも、タテモノの外でも周るか?」
少女「そういえば、この行列は何だったんですか?」
少女「けっこう歩きましたが、まだ先頭は見えませんね……」
男「うん……。有名なイラストレーターのサークルの列らしいが」
男「まあ、行列もCOMIKEの一つの要素、か……?」
男「よし。じゃあ、この行列の先頭まで行ってみるか」
少女「これだけのヒトが並ぶ行列……」
少女「いったい先には何が待っているのでしょうか!」
115 = 1 :
――行列 中央部分
少女「うぐ……。こ、この列、本当に終わりがあるんですか……?」
男「あ、あると、思いたいが……。さすがに長すぎるな」
男「さっきと同じ列を辿ってるのかすら不安になってきた」
男「この分じゃ、行列に並んでる本人たちは、もっと不安だろうな……」
少女「その、コレは一サークル参加者の方に並んでる列なんですよね?」
少女「本当にただの参加者さんのためだけに、これほど並ぶんですか?」
少女「実はさっきみたいにトイレに並んでるのでは……?」
116 = 1 :
男「いや……。大手サークルの列なら、これくらいは普通だ」
男「むろん、こんな行列が無数にあるワケじゃないが」
男「それでも、COMIKEの日程の中では、普通に発生するモノだ」
少女「す、スゴいですね……。これが、COMIKE」
少女「朝並んでたヒトたちの目的の一つはコレだったワケですね」
男「そういうコトだ。うう、足が痛くなってきた」
男「登山靴でなければ即死だった」
少女「スニーカーも動きやすいですよー!」
男「きっと行列の終着点はもうすぐだ。もう少し、歩くか……」
117 = 1 :
――行列 先頭
少女「おっ、行列が止まってる場所がありますよ! きっとココがゴールですね!」
男「はあ、はあ。な、長かった……」
少女「で、すが。しかし……」
参加者「新刊とグッズセット、3つずつお願いします」
売り子「すみません、さっき1限にしまして……」クビサワサワ
サークル主「急いでセット作らないと~!!」
売り子「あ。お待ちの間に。名刺だけでも……」
118 = 1 :
少女「行列が! まったく進んでいません!!」
男「なるほど、渋滞の理由はコレだったか……」
男「初参加にありがちなミスといったところか」
少女「男さんは、サークルのほうにも詳しいんですか?」
男「まあな。友人の売り子として参加したコトもある」
男「だが、友人のサークルの規模なんぞ、大手とは比べモノにならん……」
男「見ろ。さっきから行列が、比喩じゃなく一歩も動いていない。コレはヒドい」
男「今回の横綱はココでキマリかもな」
少女「よ、横綱て……」
119 = 1 :
男「人気ゲームのイラストレーターなんだから、大手になるのは見えてたろうに」
少女「こういう不手際って、わりとあるコトなんですか?」
男「そうだな。本人の人気と、COMIKEの熟練度は、比例するワケじゃないし」
男「むろんCOMIKEへの参加を重ねて有名になったなら然りだろうが……」
男「人気かつ不慣れだと、こういう事態になるコトもある」
男「まあ、そんな不確定要素も含めて、COMIKEってところかな」
少女「今並んでるヒトたちが、無事に買えるよう願うばかりです……」
参加者「おい! ついさっき“サーキット”が始まったらしいぞ!」
参加者「マジかよ! 見に行こうぜ!!」
120 = 1 :
男「……!?」
男「サーキット、だと……?」
少女「どうかしましたか? 男さん」
男「……今、COMIKEへの参加を重ねて有名になったなら然り、と言っただろう」
少女「ええ、言いましたね。たしかに慣れてれば手際も良いかと」
男「どうやら、その手際の良い例が、今まさに“開催”されているらしい」
少女「開催……? あの、何が?」
男「行けばわかる。風を感じろ」
121 = 1 :
――サーキット会場
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二( ^ω^)二⊃ /⌒ヽ ┌┐.┌i ┌┐ __ ┌┐ | | [][]
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ノ>ノ ⊂二二二( ^ω^)二⊃ ヽノ /⌒ヽ └┘..凵 └┘ | l ̄__l ̄ ̄.┘
レレ ( ヽノ| / ノ>⊂二二二( ^ω^)二⊃ └┘
ノ /⌒ヽ ヽノ レレ | /
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三 レレ ノ>ノ └┘..凵 └┘ | l ̄__l ̄ ̄.┘
三 レレ └┘
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―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄― ―――― ==  ̄―― ̄ ̄___ ̄―===━
参加者「三┏( ^o^)┛」ピューッ
参加者「三┏( ^o^)┛」ピューッ
参加者「三┏( ^o^)┛」ピューッ
売り子「遅い! 遅いよ! 何やってんの!! 遅い、遅い、遅い、遅い!!!」ホイホイホイ
122 = 1 :
参加者「お前に足りないものは、それは! 情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さァ――――」
少女「うわっと!」ヒョイッ
男「す、すいません!!」
参加者「そしてなによりもォォォオオオオッ!! 速さが足りない!!」ドドドドドド
スタッフ「世界を縮めないでください!!!」
少女「……す、スゴい数のヒトが、タテモノの中にスゴい速度で突っ込んでは、出てきます!!」
少女「男さん!! コレはいったい!?」
男「見たか。これが、“サーキット”と呼ばれる現象だ」
123 = 1 :
少女「さ、サーキット……」
男「サーキットの中では、安全運転など許されない……」
男「最速の称号のみが絶対正義とされるのだ」
少女「COMIKEとは、速さを争う競技だったのですか!!」
男「……と、冗談はおいとくとしてだな」
男「大手には多くの参加者が行列を作る。しかし必然、列が延びても誰の利益にもならない」
男「ならば可能な限り、速く列をさばいてしまおうじゃないか」
男「……そうした思想のもと、生まれたのが」
少女「この、サーキットですか……」
124 = 1 :
少女「しかし、これだけ速いと、会計も難しいんじゃないですか?」
少女「頒布物はタテモノの中で渡してるとしても、お金はどこで……」
男「速すぎて見えないか……。タテモノの入口だ」
男「よく、目を凝らしてみろ」
少女「ん……? ……あ、アレは!!」
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125 = 1 :
少女「列に並んでいるヒトたちが、ものすごい速さで……」
少女「係員のヒトが持っているハコの中に何かを入れて……」
少女「そして、走り去っていきます!!」
男「リレーのバトンを手渡すがごとき、訓練された動き……」
男「その疾風怒濤は、サイセン箱、自動改札機、ETCレーンを思わせる……」
少女「質量を持った残像のようです! 今朝の始発ダッシュにも引けを取りません!」
男「この速さについてこれない者は、そもサーキットに並ぶコトすら許されない」
男「そして、彼らはスピードを極め、いったい何を為そうとしているのか?」
男「それが、それこそは、“コレ”だ」ピラッ
126 = 1 :
少女「せ、千円札……!?」
少女「あ、あのスピードで! 入れているというのですか!」
少女「千円札を!!!!」
男「ああ。この大手サークルはそこまでわかっている」
男「千円札ならば支払いやすいというコトも考慮した上で、このサーキットを構築しているんだ」
少女「な、なんという……」
少女「なんという、オオゲサな……」
男「そうか? 列をさばく最適解の一つだと思うがな」
127 = 1 :
売り子「遅い、遅い、遅い、遅い、遅い、遅い!!!」ホイホイホイ
参加者「ぐああ!!」ドシャア
売り子「大丈夫? ちゃんと持って行ってね!! 遅い、遅い、遅い!!!」ホイホイホイ
少女「激突事故も起きちゃってるじゃないですか……」
男「クルマとナニガシは急に止まれないというからな」
男「だいたい、普段から運動してるヤツばかりが集まってるワケじゃない」
男「急に走ればこうもなるだろう。サーキットは強制参加だ」
少女「こりゃ明日は筋肉痛ですね……」
128 = 1 :
男「というか、そもそもCOMIKEで走るのは禁止だったりする」
少女「そーなんですか?」
男「体格の良いヤツが急に突貫してきたら、コワいだろう」
少女「たしかに……」
男「それでもサーキットが黙認されているのは、大手がゆえだろうな」
男「スタッフとしても、列が早くさばかれるに越したことは無いだろうし」
少女「ケースバイケース……。臨機応変というやつですね」
男「細かいコトをグチグチ言ってても列は消えないからな」
男「なお、競歩はゆるされている」
129 = 1 :
男「とまあ、同じ大手でも」
男「慣れていたり不慣れだったり、色々あるワケだ」
少女「本当に色んなヒトが参加してるんですね……」
男「ヒトとヒトとの交流こそが、COMIKEのホンシツともいえる」
男「それじゃあ、大手を見たところで、今度は小さいサークルにも行ってみるか」
少女「小さいサークル? ですか?」
男「ああ。大手のほうが話題になるが、イベントのメインは、おおよそコチラだ」
男「友人のサークルもソレに含まれる。見舞いがてら、行ってやろう」
130 = 1 :
――ビッグサイト 某所
少女「それで、友人さんのサークルはどこにあるんですか?」
男「ココ、東館の中だ。まずは館内に入る道を探す必要があるな」
少女「うわっ……。コレもまたスゴい行列ですね」
少女「さっきのイラストレーターさんの列でしょうか?」
男「いや……。ココは、フレンズの監督の行列らしいな」スイッ スイ
少女「……フレンズ?」
男「彼は行列を作るのが得意なフレンズなんだね」
131 = 1 :
――ビッグサイト 某所
少女「ココにもスゴい行列が……。だけど、進むのも速いようです」
男「わりと近くで終わってるみたいだな。……ん?」
セレブ妹「並んでくださってありがとう。グッズはもうありませんが、名刺だけでもどうぞ」
セレブ姉「あらセレブ妹さん、指の皮がめくれてしまいましたわ」
男「……あんなヒトたちもCOMIKEに来てるんだな」
少女「並んでるヒト全員に名刺配ってるんだ、スゴいねえ」
男「丁寧な対応だ。ゴージャス……、いや、ファビュラスというべきか」
132 = 1 :
――ビッグサイト 某所
売り子「いえーい! 満員御礼、全枚完売!!」グビグビ
サークル主「わははは!!」グビグビ
少女「もう頒布物が完売したんでしょうか? カンパイしてますね」
男「この時間で既に完売とか、相当な大手じゃないか……?」
少女「金色の、シュワシュワ……。ビールでしょうか」
男「COMIKEでは飲酒も禁止のハズだが……」
男「ま、コッソリ持ち込むくらい、好きなんだろう。ビール」
133 = 1 :
――東館 館内
男「よし、ここから館内に入れるな」
少女「ふーっ、外は曇ってたけど、中は冷房が効いてるからコレで涼し……」
少女「……くない!!!」ムシッ
少女「男さん! 屋内なのに涼しくありません! どういうコトですか!!」
男「俺に怒るなよ……。というか、なぜ屋内なら涼しいと思った」
男「むしろ、屋外より湿気高くないか? ムシムシしてないか……?」
少女「ぐ……。コレは、たしかに……」
134 = 1 :
男「それに、見ろ、この人の数を……」
ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ
ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ
少女「ココは……、何かブースがあるワケじゃないですね」
少女「大きい通路のようなモノでしょうか?」
男「そんな通り道ですら、コレだ。本来集まるべきは、ココじゃない……」
男「これだけ人がいれば、暑くなるのも当然だ。だが目的地は、さらに奥だ」
少女「ううぅ……。外の行列とは、またベクトルの違った、地獄ですね……」
135 = 1 :
――東館 ホール内
男「―――ここだ!!」
ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ
ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ
少女「おおー……、コレです! コレこそが!!」
少女「私がハナシに伝え聞く、COMIKEの姿!!」
少女「天井は高く、先の見渡せない広間に、床を埋め尽くすほどの人がいて……!」
少女「ロマン!! 人間の、ロマンです!!」
136 = 1 :
男「あー。喜んでるところ、悪いが……」
男「この中を通っていくんだぞ」
少女「……え?」
男「たしかに先の見渡せない広間だな」
男「たしかに床を埋め尽くすほどの人がいるな」
男「その中を歩いていくんだぞ」
少女「……マジですか?」
男「大マジです」
137 = 1 :
男「この先の見渡せない広間から、目的のサークルを見つけなきゃいけないし」
男「この床を埋め尽くすほどの人に流されず、進み続けなきゃならない」
少女「……ちなみに、友人さんのサークルは、どこに?」
男「うーん、このホールなのは間違いないが、中央あたりかな」
少女「……うげー」
男「伝え聞いたハナシと違う……、ってコトも無さそうだが」
男「とにかく伝聞じゃなくて、コレは、現実だ」
男「進み続けなければ、けっして勝利は無いぞ」
少女「……そうでしたね。ココは、“戦場”だと」
138 = 1 :
少女「ようし! ならば、行ってやろうではありませんか!!」
男「おう、おう。その意気だ」
少女「男さ――――ん……! ココ、どこですか――……!?」
男「だから俺から離れるなと入場前に言ったろう!! コッチだ!」
少女「そういうコトですか――、ぎょえー! 待ってくださ――――い……!」
少女「あっ、アレは、ハナシに聞くレトロゲーの本じゃないですか!?」
男「レトロゲー言うな! 最近だろうが! よそ見をするな、前に歩け!」
少女「15年前を最近とは言いませんよぅ……」
139 = 1 :
――友人のサークル
友人「……お? もしやwwwその姿はwww」
友人「男氏と少女氏ですかなwwwwww」
男「ああ、そうだ。来てやったぞ」
少女「ひえぇ……、疲れたぁ……」
友人「んんwwwこれはご苦労様と言わざるを得ないwww」
友人「ファンの方に差し入れてもらったキンキンのコーラですぞwww」
少女「んっ、んっ、んっ……。……プッハー!! 生き返るー!!」ゲフゥッ
男「……おい、友人。お前、一人か?」
140 = 1 :
友人「んんwwwファンネルの方々は定期的に戻ってくるのですがwww」
友人「ピークが過ぎた今、売り子は我一人で十分と言わざるを得ないwww」
男「つまり、ボッチと」
友人「けっして我は友達が少ないワケではありませんぞwwwwww」
少女「……コレ、友人さんが描いた本なんですか?」ピラッ
友人「おうふwwwいかにもwwwwww」
友人「おにゃのこに自作のえっちぃ本見られて恥ずかしいwww」キャッ
男「お客さんの中に女のヒトがいないワケじゃないだろう」
友人「奴らは魂がオッサンですぞwww」
141 = 1 :
少女「……読んでも?」
友人「一向に構わないwww気に入ったら買ってくれると嬉しいですなwww」
少女「…………、…………」ピラッ ピラ
男「……食い入るように、読んでるな……」
友人「んんwwwこういった本が物珍しいのかもしれませんなwww」
男「確認するが、対象年齢は、いくつだ?」
友人「…………紳士淑女のための本ですなwww」
男「なんだその意味深な間は!!」
142 = 1 :
友人「もちろんwww既刊にはKENZENな本もありますがwwwwww」
友人「少女氏が手に取っているのはwww新刊のwww」
友人「……紳士淑女のための本ですなwww」
男「……はあ。こういうのにキョーミがある年頃なのかね」
男「女の子なら貞淑にしていてほしいモンだが」
友人「18歳以上ならwww正当な権利と言わざるを得ないwww」
男「だいたいこういうの、売るほうも恥ずかしいんだが?」
友人「んんwwwそれは男氏が界隈に不慣れなだけwwwwww」
友人「薄い本は売るほうもwww買うほうもwwwラブアンドピースですぞwww」
143 = 1 :
男「ていうかお前、まだこの作品の同人、描いてたのか」
男「たしかに有名なシリーズだが、もう流行りでもないだろう」
友人「んんwww作品を流行り廃りで見るのは外野wwwwww」
友人「真に作品を見るべき眼は、たしかな審美眼とwww」
友人「愛ですぞwwwwww」
男「ぐっ……。昔の作品の同人を作ってるお前に言われると反論できない」
男「だが、流行りの作品を題材にするのも悪くないんじゃないか?」
男「FG○とか、俺もやってるぞ?」
友人「たしかにFG○は我もやっているwww実際シナリオは面白いwww」
144 = 1 :
友人「だがwwwソレはソレwwwコレはコレwww」
友人「我の心身は、完全で瀟洒な嫁者に捧げしモノですからなwwwwww」
男「漢これやFG○の同人のほうが売れるんじゃないか?」
友人「そのように流行りになびくのは同人ゴロと言われざるを得ないwww」
友人「ですが、もちろんそういった作り手のコトも否定しないwww」
友人「好きな作品でなければ、そも同人を作るのは不可能ですからなwwwwww」
友人「だがwwwだからこそ、我は我の好きなモノを描くwwwwww」
友人「好きを表現していれば必ず振り向いてくれるヒトはいますなwww」
男「…………」
145 = 1 :
男「……お前、やっぱカッコいいよ」
友人「んんwww男氏に言われてもまったく嬉しくないwww」
友人「男氏がおにゃのこなら別ですがwwwwww」
男「ごめん、やっぱ死んで」
友人「おうふwwwwww辛辣wwwwww」
少女「…………友人さん」パタン
友人「少女氏www我の薄い本はどうでしたかなwww」
少女「……最後まで読ませていただきました。友人さんの考えてるコトが、よくわかりました」
146 = 1 :
少女「そこに積んである本、一冊ずつ全部ください」
男「!!!!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!」
友人「おうふwwwwwwwwwwwwキタコレwwwwwwwwwwww」
友人「おっとっとwww我『キタコレ』などとついネット用語がwww」
友人「我はけっしてハルヒをリアルタイムで観た世代ではござらんのでwwwコポォ」
少女「友人さん、私感動しました」
少女「友人さんは、普段その飄々とした態度に隠しているけれど」
少女「本当は、とてもアツい情熱を持った、表現者なんだって」
男「いや、隠してるワケじゃないと思うぞ……」
147 = 1 :
友人「んんwww我の内なるリビドーを理解するとはwww」
友人「少女氏wwwなかなか見所のあるおにゃのこですなwww」
少女「えへへ……」
男「照れていいのか照れるところなのかソコは」
友人「だがしかしwwwこの薄い本は男性向けwww」
友人「女性の少女氏には実用性が低いと思われるwwwwww」
友人「良ければ二日目の女性向けサークルを紹介しますがwww」
少女「いいえ、そんなコトありません! 友人さんの本がいいんです!」
少女「それに……、」
148 = 1 :
少女「友人さんの本みたいなやつにもたくさんお世話になっていますから!!」
男「!?!!??!?!?!!*>E!*DE{‘WDQWDQ?!?!?!????」プッシュウウウウウウ
友人「男氏wwwwwwメルトダウンwwwwww」
男「ま、待て待て待て! 少女!!」
少女「ハイっ! なんでしょうか!?」
男「その、なんだ。お世話になってるのは、個人の趣味だし、5000兆歩譲っていいとしてだ」
友人「ずいぶん譲りましたな。大陸横断できますぞ」
男「そんな本持ってるの友達とかに見つかったらシロい目で見られるんじゃないかなぁ~~~???」
149 = 1 :
少女「え? みんな持ってますよ」
男「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!?!??!?!?!?!?!??!?!」
友人「男氏、男氏。泡吹いてる」
男「お、俺が知らぬ間に、昨今の女子高生の性事情はそこまで進んでいたとは……」
友人「んんwww男氏、そのセリフが既に薄い本みたいwww」
男「あー、わかった。じゃあ俺は何も言わん。好きなだけ買うといい……」
少女「やったー!!」
友人「新刊1冊、既刊3冊で2000円ですなwww」
少女「ありがとうございます! あの、これよりも前の続きってありますか?」
150 = 1 :
友人「あるにはあるがwww少し前のCOMIKEで頒布を終えているwww」
友人「だがしかし家に売れ残りがあるかもしれないwwwwww」
友人「探してみてあれば、郵送するのもやぶさかではありませんなwww」
少女「ありがとうございます! 何から何まで……」
友人「んんwww直に感想をぶつけてくれる読者への返礼は惜しまぬ故www」
男「おれが おもってるよりも せかいは ひろいんだなあ byおれ」
友人「男氏www少女氏の同人誌、リュックに入れておきますぞwww」ポフッ
男「戦利品入れは……、こっちの手提げバッグだ……」
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