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    元スレ提督「墓場島鎮守府?」

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    901 = 1 :









     ピーーーーー[しばらくこのままでお待ちください]ーーーーッ!

                 (○)        ~φ
               ヽ|〃
             ヽ( ゚∀。)ノ チョウチョダー
           三 ノ ノ
           三丿 >









    .

    902 = 1 :


     パッ




    「……ゲポッ」

    中佐「……」ビチャァ…


    神通「……これは」アオザメ

    「酷いものを見てしまったのです」

    不知火「中佐の顔面に直撃してましたね」ウプッ

    「大和さん可哀想……」

    敷波「……何も見てなかったことにしよっか」

    如月「そのほうがいいわね……」


    朝潮「し、司令官……」オロオロ

    提督「あー……朝潮、ちょっとあっち向いてろ」

    朝潮「は、はいっ!」クルッ

    提督「……大和」

    「」ビクッ

    903 = 1 :


    提督「俺の声は聞こえてるか? 聞こえてたらそのまま後ろに5歩下がれ」

    「……」ヨロヨロ

    提督「よし。回れ右」

    「……」クルリ

    提督「その場にしゃがんで顔を下に向けて」

    「……」シャガミ

    提督「戻すときは全部戻せよ。そのほうがすっきりする」セナカサスリ

    「ウエ……ゲホ、ゲホッ……」

    提督「朝潮、近くの倉庫から担架の代わりになりそうなものを探してこい」

    朝潮「は、はいっ!」ダッ

    提督「大和、大丈夫か? 楽になったらドックに行って顔を洗ってくるんだ」

    「ゲホッ……ぐすっ、も、申し訳ありません、提督……」グスッ

    提督「いい、気にするな。今日はもう休んでろ、これで顔隠してけ」ハンカチサシダシ

    提督「中佐、あんたも今日は諦めてシャワーを……」クルリ

    中佐「……」ベチャー…

    提督「……」

    904 = 1 :


    中佐「……」

    提督「先に埠頭へ戻って水で流したほうがいいな」

    中佐「ふっ……ざけるなあああ!」

    「それは私のセリフです!!」ギロリ

    中佐「っ!?」ビクッ

    「あんな醜い顔を近づけて! 思い通りにならないからと、嫌がらせするにもほどがあります!」

    中佐「嫌がらせ!?」ガーン

    「よりにもよって大好きな人の目の前で、嘔吐させられる辱めまで受けさせられて!」

    「最早一秒たりともあなたの存在を許すわけにはいきません!」ガシャン!

    中佐「ひっ!?」

    「第一、第二主砲……斉射、」

    提督「おい!?」

    神通「!」ダダダッ

    905 = 1 :


    「はじ」

    神通「いけませええええん!!」ドロップキック

    中佐「ほぎゃあああ!?」ドバキャーーッ ゴロゴロゴロズデーーーン

    提督「あ」

    「めええええええ!」

     ドガァァァン

    部下2「うわあああ!?」マキゾエフットビ

    部下1「中佐!?」

    神通「……はぁ、はぁ……」

    中佐「」ピクピクピク

    部下3「中佐!? 大丈夫ですか!」

    提督「おい神通、大丈夫か!?」

    神通「はい……大丈夫です!」ニコヤカァァ

    提督「お前のそんないい笑顔、今まで見たことねえぞ……」ヒソッ

    906 = 1 :


    朝潮「神通さん! えんがちょです!」サッ

    神通「はっ!」サッ

    朝潮「きりました!」スパッ

    神通「朝潮さんありがとうございます!」

    提督「なんだその儀式」

    朝潮「それと司令官、短い梯子をお持ちしました!」

    提督「お、おう。おい、部下のお前ら手伝え!!」

    部下3「そ、そんな棒切れで大和の砲撃を防ごうってのか!?」

    提督「逃げるに決まってんだろ! これを担架代わりにして中佐を埠頭まで運ぶんだよ!」

    部下2「!」

    提督「もたもたすんな、撃たれてえのか!? とっとと手伝えくそが!!」

    部下1「わ、わかった!」

    中佐(吐瀉物まみれで気絶中)「」プスプスプス…

    部下1「うっ……」

    部下2「これはひどい……」

    907 = 1 :


    提督「ごちゃごちゃ言ってねえでとっとと運べ! そっち持て!!」グイッ

    部下3「わ、わかった……ううっ、胃酸臭い……」

    提督「朝潮と神通は大和を頼む!」

    朝潮&神通「わかりました!」

    「ふたりともどいて! そいつ殺せない!」ガシャッ

    朝潮&神通「!?」

     ドガァァァン

    部下たち「「ひいいいい!!」」

    提督「急ぐぞおらあああ!!」



    「司令官さん、行っちゃったのです」

    如月「大丈夫なのかしら……」

    「如月さんは司令官さんを追いかけないのですか?」

    不知火「追いかけないほうがいいでしょう。如月を中佐に会わせるのは酷ではないかと」

    如月「……」ウツムキ

    「……なにかあった、ってこと?」」

    不知火「はい。ですので、ここは不知火が行きます。みなさんは大和さんのサポートを」

    如月「……わかったわ。司令官をお願いね」

    不知火「はい」コク タタッ

    敷波「と、とにかくさ。一応、形としては追い帰しは成功したのかな」

    「……たぶん」

    908 = 1 :

    というわけで今回はここまで。

    >>891
    「そいつ殺せない!」の台詞を入れようと考えてた矢先に、
    ヤンデレ妹と言われて思わず納得。もしやエスパーですか!?

    909 :

    S県T宮懐かしすぎんだろwwwwww

    910 :

    神通さん、何て幸せそうなw

    911 :

    いいね、ボタンがあるならずっと押しっぱなしにしときたいくらいに笑うわ
    にしてもえんがちょって……、1さん年齢ばれんぞ
    今時の子は知らんぞ

    912 :

    千と千尋見たことないのかよ

    913 :

    千と千尋でなんだあれ?ってなった組
    あれで知った

    914 :

    >>913
    ナカーマ

    やっと陣tじゃなくて神通の夢が半分叶ったな
    この隙に提督も中佐のキン◯タマ潰せれば…

    915 :

    えんがちょは私も千と千尋で知った口です。


    では続きです。

    916 = 1 :


     * 鎮守府 埠頭 *

    部下3「ひ、酷い目にあった……!」ゼーゼー

    部下2「准尉、貴様どういうつもりだ!」ハーハー

    提督「どうもこうもねえよ。ここまで大和の反応が酷いとか想像だにしてなかったぞ……」フゥ

    部下1「そ、それより、准尉の体力は、なんなんだ……」グッタリ

    提督「お前らこそこの距離走ってばてるなんて大丈夫か? とりあえずどいてろ、中佐洗うから」ジャグチヒネリ

     ホース<ジョボボボボ…

    中佐「」バシャバシャ…

    提督「ホースの水ぶっかけられても目を覚まさねえとか、重傷だな」

    不知火「司令、中佐は」タタタッ

    提督「おう、ご覧の通りだ」

    不知火「……これはこれは。ご愁傷様です」ギンッ

    部下1(なんだこいつの眼光は……)

    部下2(戦艦みたいな目つきしやがって……)

    部下3(お前みたいな駆逐艦がいるか……!)

    917 = 1 :


    部下1「て、提督准尉! 貴様はこの始末をどうつけるつもりだ!」

    提督「始末も何も、ありのままを中将に伝えるさ」

    提督「大和が中佐の部下になることを拒否して、それに激昂した中佐が嫌がる大和を無理矢理連れ去ろうとしたら砲撃された、ってな」

    部下2「本気か……!?」

    提督「砲撃を避けるために突き飛ばしたもんで、中佐が怪我をした。で、あんたらと一緒に急ぎ引き上げた。それで説明としては十分だろ」

    不知火「不知火も状況は見ておりましたので、同様に説明可能です」

    提督「うちの艦娘が中佐を蹴飛ばさなきゃあ、今頃骨も残ってねえだろうからなあ。中将に何を言われるやら……ま、仕方ねえな」

    部下3「……」

    提督「一応、大和に吐かれたのは伏せておく。中佐の名誉にかかわるからな」

    提督「それともなんだ。お前らまだ大和を諦めてないってか? 俺はそれより、早く中佐を医者に診せるべきだと思うがな」

    部下1「……」

    提督「もう一回、忠告しとく。無理矢理連れて行って、その道中で沈められても、俺は責任を取れないぞ?」

    提督「そもそも中将も、無理に引き抜きを成立させなくていいっつってたぞ。本人の希望が一番だ、ってな」

    部下たち「「……」」

    提督「どーすんだ?」

    部下3「……引き上げる、か」

    部下1「そのほうが良さそうだな……」

    918 = 1 :


    部下2「そうだな。まずは中佐を病院に連れて行こう」

    部下3「俺たちが無理矢理大和の手を引いても中佐がお怒りになるだろうし! な!?」

    部下1「それもそうだ。我々が中佐の許可なく大和に触れては、中佐に対して失礼にあたる!」

    部下2「よし、大和は諦めて急ぎ鎮守府へ戻るぞ!」

    部下3「准尉! 中将にはそのように、くれぐれもよろしく伝えておいてくれ!」ビシッ

    提督「承知した」ケイレイ

    部下1「そうと決まれば、中佐を連れて撤収するぞ!」バッ

    部下2「出港の準備を急がせよう!」ダッ

    部下3「俺は船から担架を持ってくる!」ダッ

    提督「……」

    不知火「司令、あとはみなさんに任せましょう」

    提督「そうだな」

    不知火「ところで……中佐の名誉と仰いましたが、本心ですか?」ヒソッ

    提督「なわけねーだろ。いびりのネタにする」ククッ

    不知火「でしょうね……」ハァ…

    中佐「」(←引き続き気絶中)

     * * *

     * *

     *

    919 = 1 :


     * それからしばらくして 鎮守府 埠頭 *

     中佐の船<ザザァァァ…

    提督「やっと行ったか」

    不知火「行きましたね」

    提督「……」

    不知火「……」

    提督「もういいよな?」

    不知火「いいと思います」

    提督「……ふぅ……」

    不知火(ざまあみろとか言いそうですね)

    提督「ざまあ! くっっそざまあ!!」ウラァ!

    不知火(ニアピンでした)

    提督「ふー……まあまあすっきりしたぜ」

    不知火「あれでまあまあですか」

    提督「俺が直接殴ったわけじゃねえからな。キ○タマ潰し損ねたのも残念だったが……」

    提督「だがまあ、いくらか気は晴れたさ」

    920 = 1 :


    不知火「……司令。良かったのですか、中佐を始末しなかったこと」

    提督「そいつは仕方ねえよ。死亡事故なんて起こしたら、この島の鎮守府そのものの存続がやばいからな」

    不知火「ということは、これからも中佐から連絡が……」

    提督「いや、手はある。今日の定期便の荷物の中に、この前来てたO少尉から、奴の不正行為の証拠の資料が送られてきた」

    不知火「は……!?」

    提督「それをネタにゆすってやりゃあ、あれもそうそう手出ししてこねえさ」

    提督「あの時も中佐にそれをちらつかせてやったら、思いのほか動揺してたしな。見せるだけの切り札としてなら使えるぜ」

    提督「まあ、もちっと早く届いていりゃあ、そもそも今日みたいな騒ぎ自体防げたかもしれなかったんだろうけどなあ」

    不知火「そ、そのようなものでしたら、むしろすぐ公表して、中佐を排除すべきでは……!?」

    提督「早まんな。それをやっちまうと赤城も巻き添えにしちまうんだよ」

    不知火「……!」

    提督「今、奴の鎮守府をぎりぎりのところでシロく見せてるのは赤城の手腕だ」

    提督「そこでもし不正を暴いたら、その不正の大部分を手助けをしていた赤城だってただじゃあ済まねえだろう」

    提督「だからあの資料は、あくまで脅しの道具だ」

    不知火「そ、そういうことでしたか……! でしたら、不知火は司令の意見に異議ありません」

    921 = 1 :


    不知火「それにしても、何故O少尉は司令にそんな資料を送ってきたのでしょうか」

    提督「あいつ真面目だからなあ……あいつなりにこっちに手を差し伸べたつもりなんじゃねえか?」

    不知火「確かに。それも考えられます」

    提督「ま、とにかくこれでしばらくは安泰かね……ったく、よくもまあ次から次と面倒ばかり起こるもんだ、くそが」

    不知火「……」

    提督「お前が神妙な顔すんな。悪いのは尽く人間どもじゃねーか」

    提督「いや……むしろ俺がお前ら巻き込んでんのか?」

    不知火「いえ、そうは思いません。放っておいても艦娘が漂着する島です」

    不知火「この場に誰がいたとしても、同じように巻き込まれるのはやむを得ないかと」

    不知火「それに、わたしや如月のときも、比叡さんや初雪のときも、司令でなければ解決には至らなかったと思いますし」

    不知火「司令の機転がなければ、轟沈した艦娘がこの島で生活できなかったのですから。司令が気に病まれるようなことはないと思います」

    提督「そうか……助かる」

    不知火「いえ。それと、申し訳ないのですが……」

    提督「ん?」

    922 = 1 :


    不知火「野暮を承知で伺いたいのですが、どうして大和さんにキスする真似を?」

    提督「……あー」

    不知火「……」

    提督「思い付かなかったんだよ、いい方法が」アタマガリガリ

    提督「なんだったかな、喚く女の口をキスで塞いで、みたいな下りを、なんかの小説か何かで見たんだよ」セキメン

    不知火「!」

    提督「中佐もいたし、それを見せりゃあ奴もショックを受けるだろうって打算もあった。まあ、下衆な方法だったよな……」

    提督「つうか、一番まずいのは、大和が俺を気に入ってることを知ってて、それを利用したことだよなあ」

    提督「最低じゃねーか、俺……」ズーン

    不知火「し、しかし! 司令は、その……あくまでフリをしたわけですから」

    提督「フリでもなんでも人の心を弄ぶような真似してんだから、最低なのは変わんねーだろ」

    不知火「……そこまで自責の念に苛まられるのでしたら、もう覚悟を決めて大和さんとゴケッコンなさったほうが良いのでは?」

    提督「それこそ無理だ。俺は誰とも結婚する気はねえ」

    不知火「司令……あなたは以前もそう仰いましたが、それを頑なに守り続ける理由はいったいなんなんです」

    提督「俺の理想は、この島の艦娘と妖精が、人間や外敵に脅かされることなく暮らせる世界だ」

    提督「俺自身も例外じゃない。それが叶ったら、俺はどこかへ消えるつもりでいる」

    不知火「本気ですか……!?」

    923 = 1 :


    提督「俺はガキの頃から妖精と話ができていたんだが、周りの人間は誰ひとりそれを信じようとしなかった。実の親でさえもな」

    提督「俺の話に聞く耳も持たず『嘘をつくな出鱈目を言うな』とただただ俺を殴って矯正しようとした男と」

    提督「俺を気味悪がって目も合わさず口も利かず、遠くから観察していただけの女が親だなんて、いくら事実でも認めたくねえし」

    提督「そんな奴らの血を引いた俺の遺伝子なんか、絶対に残すわけにはいかねえよ。俺の理想には、俺も邪魔なんだ」

    不知火「……」

    提督「……それなのに、俺は大和に……何やってんだよ俺は……」ハァァ

    提督「まあ、いいか……嫌われるきっかけになりゃあ、それはそれで無為ってわけじゃねえしな……」

    提督「そう考えるとな? 不知火、俺も含めて人間がろくでもねえもんだってわかったろ?」

    不知火「……司令」

    提督「……ん?」

    不知火「司令のお考え、理解はしました。司令がいなくても、私たちが平和に暮らせる世界を望んでいると」

    提督「……ん」

    不知火「ただ、賛同はできかねます」

    提督「……」

    不知火「……」

    提督「……そうか」

    924 = 1 :


    不知火「……」

    提督「……」

     ザザーン…

    不知火「……司令。そろそろ戻りましょう」

    提督「あー、そーだな。大和のケアもしてやらにゃあな」


    不知火(……司令が顔を赤くするところも、あんな風にひどく落ち込むところも、初めて見ました)

    不知火(今言った言葉も、変わってくれると良いのですが……)


     スタスタスタ…


     ザザァ…

    (海面から除く潜望鏡と集音管)

     チャプ…

    (埠頭の海面から伊8が顔を出す)


    伊8「……」


    925 = 1 :


     * 夕方 執務室 *

    通信『……』

    提督「お前のところの部下たちにも聞いたと思うが、以上が島で起こった出来事だ」

    通信『……』

    提督「ひとまず中将にも簡単に事情は報告した。後日、不知火が本営に出向くときにも、大和を随伴させて同じ説明をさせる」

    通信『……』

    提督「あー、それとだ、N中佐の部下たちなら午前中にL大尉が連れて帰った。多分そっちは問題ねえ」

    通信『……』

    提督「俺からの連絡はこんなもんか」フゥ

    通信『……』

    提督「……赤城、聞いてるか?」

    通信『……はぁぁぁぁぁ……』ボワァァァァ

    提督「マイクに溜息吐くなよ。ノイズすげえぞ」

    通信『誰のせいで』ボソボソッ

    提督「ん?」

    通信『誰(ダンッゴトゴトガコンッ)と思ってるんですか!!』

    提督「……とりあえず落ち着け。声でけえ」キーン

    926 = 1 :


    提督「つうか机叩くなよ。マイクが音拾ってて何言ってるかさっぱりわかんねえし」

    通信『本当にもう……中佐は入院します。全治三か月とのことです』

    通信『首を動かせないと言うことで最低でも三週間は絶対安静。しばらくは出歩かないようにと言われています』

    提督「ほーお、つかの間の平和ってやつだな、いいことじゃねーか」

    通信『他人事だと思って気休めを言わないでください!』プンスカ

    通信『中佐も艦隊を指揮する司令官です。まったく仕事をしていないわけではありません』

    通信『艦隊の運用や資源調達は人並みにこなしていますし、私利私欲に走りさえしなければ、と思うくらいには能力はあります』

    提督「まあ、仮にもあの中将の息子だしな。そのくらいはできて当然か」

    通信『おかげで私の仕事がまた増えます。恨み言を三つ四つ聞かされても仕方ないと思ってください』

    提督「そりゃご愁傷様で」

    通信『……』

    提督「赤城?」

    通信『さて、建前はこの辺にしましょうか』

    提督「……」

    通信『私は本っ当についていませんね。どうして私はその場に居合わせていなかったのでしょう』

    通信『さぞかし痛快だったでしょうに……!!』

    927 = 1 :


    提督「……ビデオでも回しときゃあ良かったか」

    通信『居合わせなければ意味がないのです。もしそんなことが目の前で起こったのなら、私がとどめを刺していたのに。勿体ない』

    提督「……」

    通信『そうですね……良い機会です。提督准尉、これから話すことはくれぐれも内密にお願いしますよ?』

    提督「なんだ」

    通信『中将と中佐に血のつながりはありません』

    提督「……なに?」

    通信『中将は二度ご結婚なさっておられます。先の奥様は若くして病に倒れ亡くなられました』

    通信『その後まもなく、後妻として結婚した女性の連れた赤ん坊が、中佐です』

    提督「はぁ……道理で似てねえはずだ」

    通信『中将の奥様を知る方からは、妻を亡くして気落ちしていたところを付け込まれたのだろう、と仰っておられました』

    通信『後妻となった女性を一度だけ拝見しましたが、ブランド品に身を包んだ鵺、とでも申しましょうか? 若しくは狐狸妖怪の類かと』

    提督「化け物だってか?」

    通信『ええ。およそ中将には釣り合いませんね、卑屈そうに頭を垂れながら周囲を値踏みするような目をしていました。気に入りません』

    928 = 1 :


    通信『その息子が彼です。中将の息子となった中佐は、それはもう必死に勉強したそうで。結果、海軍にも無事入りましたが……』

    通信『それも結局は、金や権力と言った己の欲望を満たすための努力……というより、執念でしかなかったようですね』

    提督「……」

    通信『残念ながら今のところ、彼を問答無用で追い出せるほど大きな不祥事や醜聞は掴めていません』

    通信『それどころか、海軍の暗部に確固たる地位を作りかねない勢いです。中佐の入院先も、その息がかかった贔屓の病院と思われます』

    通信『だからこそ……提督准尉。今日、あなたのもとにO少尉の名前で送った資料は、有効活用してください』

    提督「!」

    通信『中佐があなたの鎮守府に向かったおかげで、N中佐の件の報告書として、荷物に紛れ込ませることができました』

    通信『それをちらつかせれば、墓場島に関わろうとする気もそらせるでしょう』

    提督「赤城、お前……」

    通信『私の勝手な見解ですが、提督准尉には期待しているんですよ?』

    通信『私に何かあったとき、あとを任せられるのは提督准尉になりそうですから』

    提督「……ふざけた真似しやがって。俺にお前の首を切らせる気か? 面倒事を押し付けんじゃねえよ」

    通信『命を粗末にするな、という、私への激励と受け取らせていただきますよ』

    提督「……食えねえ奴だな、あんたは」

    通信『ええ、賞味期限が切れているのかもしれませんね。無駄に長生きしていますから……ふふふ』

    929 = 1 :

    今回はここまで。
    自分で書いておいてなんですが、どうにかなりませんかねこのサクリファイス野郎ども。


    ここからはダウナー方向に盛り上がっていく予定です。

    930 :

    いいねぇ…

    931 :

    素敵な悪巧み、嫌いじゃないぜ・・・

    かの名将は言いました。
    「みんなで幸せになろうよw」と。

    932 :

    残念ながら悪巧みではなく内輪揉めになります。


    続きです。

    933 = 1 :


     * 夜 提督の私室 *

    提督「……」

     コンコン

    提督「誰だ」

    「大和です……お話を、よろしいでしょうか」

    提督「……入れ。どうかしたのか」

    「……」ギィ パタン

    提督「……」

    「提督。お願いです、助けてください」

    提督「……助ける?」

    「……あの男の顔を見たときから、どこからか声が聞こえるんです。嫌い、嫌い、憎い、憎いと」

    提督「……声?」

    「はい。自分でもわからないくらい、あの男の顔に嫌悪感を覚えました。初めて見る顔だったというのに……」

    「逆に、提督のお顔を写真で初めて拝見したときには、この人はきっと私を大事にしてくれると、なぜか、そう思ったんです」

    「そして、事実そうでした。提督は、私だけでなく、この島に流れてきた艦娘を、大事にしてくださいました」

    提督「……」

    934 = 1 :


    「中佐のお話、皆さんから聞きました。私のことを執拗に聞いていたと。私に一目惚れしたらしいと」

    「私は嫌です。私には恐怖でしかありません。きっと中佐は、私のことを諦めてはいないでしょう」

    「私は不安なんです……! 助けて欲しいんです……!」

    提督「ああ、それはやぶさかじゃねえが……」

    「そのために、お願いがあるんです……」ズイッ

    提督「?」

    「中佐が、私を諦めてしまうよう仕向けたいんです」

    「私は、提督のもとを離れたくありません。ずっと、お傍にいたいと……そう、思っています」

    提督「……」

    「提督……大和と、契りを結びましょう?」

    「私が提督のものだという、証を立てれば……!!」

    提督「……」

    「あの時、仰っていたではありませんか。大和を……提督の、お古にしていただければ……!」

    提督「……」

    「提督……?」

    935 = 1 :


    提督「……やっぱり駄目だな」ハァ…

    「え……!?」

    提督「悪い。俺は、お前の思いには応えられない」

    「な……何故ですか……!?」

    提督「……俺は、誰とも一緒になる気はない。一生涯、そうするって決めてる」

    「提督!? それでは私は……大和は、どうすればいいんですか!?」

    「私は、どこへ行けばいいんですか!!」

    「提督!!」

    提督「……夜風にあたってくる。一人にさせてくれ」スッ

    「……!」

    「……どうして」

    「どうしてなんですか……!」

    「どう、して……」ポロポロポロ

    936 = 1 :


     * 翌日 工廠 *

    明石「……」

    利根「……」


    工廠の隅で体育座りしている大和「……」ドヨーン


    利根「の、のう明石よ。大和はいったいどうしたんじゃ」

    明石「あー、それがですねえ……ちょっとこっちの部屋で」チョイチョイ

    利根「うむ……?」

    明石「ええっとですねえ、なんでも提督に夜這いをかけたらしいんです」

    利根「夜這い!?」

    明石「しーっ! 声が大きいですよ!」

    利根「す、すまん! ……いや、なるほど。ということは、あの様子から見るに、失敗してこっぴどく叱られたとかか?」

    明石「いえ、謝られながら断られたそうです」

    利根「なんと……ふられたと言うのか!」

    明石「おかげで今朝からあそこでずーっと落ち込んでいるんです。本っ当、提督は女心というものを理解してなくて!」プンスカ

    937 = 1 :


    明石「私、ちょっと提督に文句言ってきます!」

    利根「まあ待て明石よ。おぬしは言っておったではないか、提督はこちらが好意を寄せれば逃げていくような男じゃと」

    利根「おぬしが提督を説教したとして、そのスタンスは変わるのか?」

    明石「……」

    利根「即座に言い返せないところを見ると、おそらくその望みは薄いか」

    明石「……でしょうね」ムスッ

    利根「ならばわざわざ出向くまでもなかろう。もしかしたら、提督にも大和の思いに応えられない理由があるのかもしれん」

    明石「やけに提督の肩を持ちますね」

    利根「ふむ……明石は随分と提督にキツくあたるな。さては伊8の件、また怒りが収まらんか?」

    明石「……まあ、そうですけどね」

    利根「吾輩はあの時の提督の立ち回りには納得しておる。いっそ介錯してやるのも、また情けであろう?」

    明石「そうかもしれませんが、私は気に入りませんよ……昔、似たようなことがありましたから」

    利根「明石が撃たれたのか?」

    明石「私は仕方ないんです。以前所属していた艦隊の司令官だったA提督に脅されて、悪事に加担したんですから」

    明石「でも、その悪事を調べていた朝潮ちゃんと霞ちゃんが、A提督に濡れ衣を着せられて、私と一緒に雷撃処分を受けたのが許せなくて……!」

    利根「……なるほど。伊8にその姿を重ねてしまったか」

    明石「はい」

    938 = 1 :


    利根「であれば、なおのこと提督へ物申すのはやめておいたほうが良かろう」

    利根「あの男にも慈悲がないわけではない。しかし、あそこまで提督に入れ込んでいる大和の求愛を断るとなれば、それなりの理由があって然るべき」

    利根「そうでなくても、あの男は無粋な物言いが過ぎるところがある。また感情的になって手を出して、大和に睨まれたくはあるまい?」

    明石「……はい」

    利根「まあ、一日二日で治って戻ってこられる程度の怪我で済ますなら、お灸をすえる意味で構わないのかもしれんがな!」カッカッカッ

    明石「……それなんですけれど」

    利根「ん?」

    明石「私、あの時は本気で頭に来ちゃってて、提督を思いっきり引っ叩いたんです。死んでも構わない、ってくらいの力で」

    利根「……」

    明石「N中佐の鎮守府の軍医さんからは、頬の骨にひびが入っていたと連絡を受けました。レントゲン写真もいただいてます」

    明石「でも、次の日にはそれが綺麗さっぱり消えていたんです」

    明石「ダメージの度合いにしても、回復力にしても、よく考えたら……いや、良く考えなくてもおかしいと思いますよね?」

    利根「……」

    明石「提督が海軍に入ったのは、妖精さんと話ができるから、と聞いてます。そのくらいの能力なら、ほかの鎮守府にも持ってる人がいます」

    明石「でも、頑丈だったり怪我がすぐ治ったり、大和さんに最初から好かれたりするなんて、聞いたことないんですよ」

    利根「……」

    明石「提督って、何者なんでしょう。本当に人間なんでしょうか……!?」

    利根「……」

    939 = 1 :


     * 一方その頃 執務室 *

    提督「……」カリカリ

    「……」カリカリ

    提督「……」カリ…

    「……!」チラッ

    提督「……」カリカリ…

    「……」

    提督「……」カリ…

    「……」ジー

    提督「……」

    「……あの……」

    提督「ん、なんだ?」

    「だ、大丈夫、なんですか? 顔色が、すぐれないようなんですが……」

    提督「……まあ、あんまりよろしくねえな」

    「お、お休みになられたほうがいいと思います……時々、手も止まってますし……!」

    提督「……」ボケー

    「あの……て、提督?」

    940 = 1 :


    提督「いや、大丈夫だ。この方が気がまぎれる……」カリカリ

    「!?」ガタッ

    提督「? どした?」

    「て、提督、今、なんて……」

    提督「?」

    「今、気がまぎれる、って言いましたよ!?」

    提督「……あー、そうだな」

    「うそ……うそです……! 私の知ってる、提督は、そんなこと言いません……!」フルフル

    「提督がそんなこと言うなんて、ぜ、絶対おかしいです!」

    提督「……」

    「……」プルプル

    提督「潮」

    「は、はいっ!」

    提督「俺が……おかしい、だと?」ガタッ

    「ひっ!」ビクッ

    提督「……やっぱり、お前もそう思うか……」ハァァ…

    「? ??」ビクビク

    941 = 1 :


     * それからしばらく後 執務室 *

    吹雪「……そんなに様子がおかしかったの?」

    「うん。あの後、提督は頭を抱えたまま執務室から出ていっちゃって……」

    「それから非番だった電たちを呼びだしたのですね」

    吹雪「びっくりしたよねえ! 『潮からドクターストップが出た』なんて言っちゃってたんだから!」

    (吹雪ちゃんも、提督の真似が上手だよね……)

    吹雪「電ちゃん、中佐が来た時の一部始終を見てたんだよね?」

    「はいっ! 見ちゃいました、なのです!」

    吹雪(わああ、敷波ちゃんの言う通り青葉さんそっくりだあ……)

    「でも、あのやり取りの中で、司令官さんがへこむような場面はなかったはずなのです」ウーン

    吹雪「だとしたら、そのあとかあ。夕食のときも、それほど落ち込んだ様子はなかったし」

    「どちらかというとイライラしてた気がするのです」

    「そういえば、横からちらっと聞こえてきたんだけど、不知火ちゃんに中佐の鎮守府にいる赤城さんのこと訊いてたかも」

    吹雪「赤城さん?」

    「うん。でも、そのときは電ちゃんの言う通り、イライラした口調だったって覚えてるから」

    吹雪「だとすると、昨夜寝るときか、今朝起きたとき、ってことになるのかな?」

    942 = 1 :


     コンコン

    吹雪「はーい!?」

    初雪「……!」チャッ

    「初雪ちゃん……?」

    初雪「……」キョロキョロ

    「司令官さんなら外出中なのです」

    「なにかあったんですか?」

    初雪「……畑の、じょうろが壊れちゃって」

    吹雪「あー、とうとう壊れちゃったかー」

    (初雪ちゃん、畑仕事が気に入っちゃったのね……)

    (意外なのです……)

    吹雪「酒保には行ってきた? 明石さんも替えのじょうろを揃えてるはずだけど」

    初雪「……」ポ

    吹雪「どうしたの?」

    初雪「……司令官、夜這いかけられたとかって、聞いちゃって」

    吹雪電潮「「「!?」」」

    943 = 1 :


     ゴゴゴゴゴゴゴゴ


    初雪「!?」ゾクッ

    「はわわわ……!」

    吹雪「き……」

    如月「……その話、詳しく聞かせてくれる?」ニコァァァ

    吹雪「如月ちゃん……」

    「……」ガタガタガタ

    初雪「……」ビクビクビク


     * かくかくしかじか *


    如月「そういうこと……司令官を問い詰める必要があるわね」

    如月「ちょっと行ってくるわね……!」ニコァァァ

     ダッ!

    全員「「……」」

    吹雪「はー、焦ったあ……」グッタリ

    初雪「……っていうか、怖かった」ナミダメ

    944 = 1 :


    「タイミングが悪すぎたのです……」

    「……でも、今の話が本当だとすると、提督は、大和さんとのお付き合いをお断りしたから落ち込んでるってこと?」

    初雪「……だと思う」

    吹雪「まさかぁ! なんでも『面倒臭え』で済ましちゃうような人だよ!? 気に病むなんて今までなかったよ!」

    「なのです。電たちが思い悩んでいても、容赦しないで一刀両断してしまうような人なのです!」

    「た、確かにそうかもしれないけど……うん、そういうことばかり言う人、ですけど」

    初雪(潮ですら否定しないんだ……)タラリ

    「でも、私たちが困っていたら、ちゃんと考えてくれたじゃないですか……!」

    「……そう、ですね。やり方に問題があるときもありますけれど……」

    吹雪「自分のやったことに対して堂々としてるから、なんとなく正しいことをしてる気にもなるんだよね……」

    「そもそも、今回みたいに、問題から目をそらそうとしてるところなんか、初めてだから……」

    「思ったより、事態は深刻……なのですか?」

    吹雪「初雪ちゃん、さっきの話、もう少し詳しく聞かせて!」

    初雪「う、うん……」

    945 = 1 :


     * それからしばらくして 工廠 *

    工廠の隅で体育座りしている大和「……」ドヨーン

    大和の隣で体育座りしている如月「……」ドヨーン


    利根「おい、増えたぞ……」

    明石「……」アタマカカエ

    初雪「……なにが、あったの?」

    明石「如月ちゃんが大和さんの件で提督に問い詰めに行ったんですって」

    明石「で、如月ちゃんがいろいろ聞いても生返事を返すから、痺れを切らして『ずっと一緒にいたい』とか言っちゃったんですって」

    明石「……そしたら帰ってきた返事が『無理だ』って」

    利根「……」

    明石「無理ってなんなんですかねえ!! もーちょっと言い方ってものがあるでしょうが!!」クワッ

    明石「私、やっぱり提督を一発殴ってきます」ガタッ

    利根「落ち着け! 落ち着くんじゃ!!」ガシッ

    朝潮「た、大変です!」ダッ

    利根「今度はなんじゃ!?」

    朝雲「霞が如月とのやり取りの一部始終見てて、激怒しちゃってるのよ!」

    朝潮「誰か止めるのを手伝ってください!」

    明石「まったくもおおおおお!!」ウガーー!

    利根「ええい、本当に面倒くさい奴ばっかりじゃのう!!」クワッ

    初雪「……」タラリ

    946 = 1 :

    今回はここまで。

    947 :

    更新乙さまです
    赤城と提督の会話が熟練老提督と古女房の会話に見える
    雰囲気が良いです

    948 :

    いっぱい子供作れば良いのじゃ

    949 :

    今回から修羅場回に入ります。

    では続きです。

    950 = 1 :


     * 鎮守府 埠頭 *

    埠頭から海を見つめる提督「……」

    <ハナシナサイッタラ!

    <カスミコソオチツキナサイヨ!

    「ちょっと! 見てたわよ、このクズ!」

    「ちょ……!?」

    提督「……」

    「あんたねえ、如月になんて言ったかちゃんと理解できてんの!?」

    提督「……」

    「聞いてるの!? 少しは反応しなさいよ!」

    「も、もうやめなさいよ! 言い過ぎよ!?」

    「なによ、こんな人の気持ちも分かんないようなクズをかばうとか、どうかしてるわよ!」

    提督「……」クルリ

    霞&暁「!?」ビクッ

    (し、司令官の目が死んでる!?)

    「な、なによその目は! 落ち込んでるふりでもしてるわけ!?」


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