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    元スレ提督「墓場島鎮守府?」

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    801 = 1 :


    如月「確かに卯月ちゃんはいたずらっ子だから、なにか仕掛けててもおかしくはないけど……」チラッ

    大淀「……ちょっと箱の中身を改めさせてもらいましょうか。びっくり箱だったりするかもしれません」

    神通「そうですね……」パカッ

    如月「……雑誌系ばっかりね?」

    大淀「とくに何か仕掛けられているわけでもないみたいですね……」ペラリ

    雑誌『王道ラブコメ路線のマンガでーす』

    大淀「……普通のマンガっぽいですけど」ペラリ

    雑誌『次のページから性的描写三昧だけどな!』

    大淀「!?」カオマッカ

    如月「ど、どうしたの大淀さん!?」

    神通「この雑誌がなにか……?」ベツノザッシヲペラリ

    雑誌『すまない、ここは触手でヌチョヌチョなページなんだ!』

    神通「!?!?」カオマッカ

    如月「ふ、ふたりともどうしたんですか!?」

    大淀「……///」

    神通「……///」

    802 = 1 :


    如月「なにがあったのかしら……」ベツノザッシヲペラリ

    雑誌『大丈夫? 大人への階段駆け上がっちゃうページだよ?』

    如月「!?!?!?」カオマッカ

    大淀「……」ゴクリ

    神通「……」ミミマデマッカ

    如月「……」ユゲボシュー

    島妖精(なにこの異様な空間)タラリ

    島妖精(顔を真っ赤にしてるのに、じっくり熟読してるっぽい……)タラリ

    島妖精(みんなむっつりなんだね……)タラリ

    提督「なにやってんだ、お前ら」

    大淀神通如月「「「きゃああああああ!?」」」ガタガタガタッ

    提督「……ど、どうした!?」パチクリ

    神通「な、なんでもありません!」ドキドキ

    大淀「いきなり声をかけないでください!」ドキドキ

    如月「し、しれーかんのエッチ!」ドキドキ

    803 = 1 :


    提督「なんでそうなるんだよ……ん? なんだこの雑誌」

    大淀神通如月「「あっ」」

    提督「……」ペラリ

    雑誌『よう坊主、若奥様があれこれされるマンガは好きか!?』

    提督「……」ビクッ

    提督「……ん、む……」アオザメ

    如月「し、し、司令官どうしたの!?」

    神通「大丈夫ですか!?」

    提督「……だめだ、気分わりぃ……それ、処分しといてくれ」ヨロッ

    大淀「提督!? ……いったいどうしたんでしょう」

    如月「部屋の外に歩いていっちゃったわ……」

    妖精「うーん、あれはトラウマを思い出したのかも」ヒョコ

    如月「トラウマ?」

    妖精「うん、提督が学生時代にアルバイトで倉庫整理をしてた時なんだけど、そこの店長の奥さんと従業員の一人が不倫してたんだよね」

    大淀「唐突すぎる昼ドラの世界ですね……」

    妖精「それで、その二人が倉庫の奥で……その、下半身裸になってたところを提督が見ちゃってね」

    神通「ええ……」ヒキッ

    804 = 1 :


    妖精「提督はそれ見てげーげー吐いちゃって。騒ぎに駆けつけた店長はその二人と喧嘩を始めちゃって」

    妖精「わたしもあの時は、あー、こういうのを修羅場っていうんだ、ってしみじみ思っちゃった」トオイメ

    如月「司令官、そんなことに巻き込まれるなんて可哀想……」

    妖精「しばらくしたらその店はなくなっちゃったし。その頃から提督も余計すれちゃった気がするなあ」

    大淀「提督も壮絶な経験をしていますね……」

    神通「なんだか、提督が私たちに対して壁を作っている理由がわかった気がします」

    妖精「提督も根っこのところは純粋なんだよねー。だからこそ、目の前で見た不貞行為には露骨に嫌な顔をするようになったから」

    如月「私が司令官に付きまとうのも、嫌がられてるのかしら……」ウルッ

    妖精「それは嫌なんじゃなくて、困ってるだけみたいだよ。結婚願望がないから、下手に希望を持たせたくないって愚痴ってたもん」

    如月「ほんと!? 嫌われてはいないのね!?」パァァ

    妖精「う、うん。ただ、今は大和もいるから余計に意固地になってるだろうし……」

    大淀「複数人の女性と同時につきあったり、だからと言って片方を贔屓にしたり、というのは提督にとってもタブーでしょうね」

    妖精「うん。今は誰ともつきあう気はないみたい」

    如月「……」ションボリ

    805 = 1 :


    妖精「まあ、それはそれでしょうがないんだけど……それよりどうするの? その本」

    大淀「……そ、そうですね、どうしましょうこの本」ポ

    如月「ど、どうするって……」ポ

    神通「……し、処分、するんですよね」カァァ

    大淀神通如月「「「……」」」

    朝潮「失礼します! 旗艦朝潮、ただいま遠征より帰還致しました!」

    大淀神通如月「「「きゃああああああ!?」」」ガタガタガタッ

    敷波「ちょっ、なにその反応!? なに驚いてんの!?」

    不知火「どうかなさいましたか」

    初春「その慌てよう、ただ事ではないな?」

    敷波「あっ、なにそれ、マンガ!?」ヒョイ

    大淀「あっ」

    朝潮「朝潮、初めて見ました! 拝見させていただきます!」ヒョイ

    神通「あっ」

    不知火「……」ヒョイ ペラリ

    如月「ちょっ」

    806 = 1 :


    初春「まあ、なんじゃ。おぬしたちの反応を見るに、どんな代物かなんとなく理解できたわ」

    神通「わかっているなら止めてください!」カオマッカ

    朝潮「……こ、これは……!!」カァァ

    敷波「うわあ……」カァァ

    不知火「……」ハナヂブバッ

    如月「不知火ちゃん!?」

    初春「うむ、やはりのう……各人予想通りの反応じゃな」

    朝潮「……お、大淀さん! これはいったいどうなさったんですか!」

    大淀「え、ええと……N提督鎮守府の卯月さんが、持ってきたんです」

    朝潮「そ、そうでしたか……」ゴクリ

    如月(朝潮ちゃん、本をずっと凝視してる……)タラリ

    敷波「……こ、これ、どうしたの?」カオマッカ

    神通「そ、それは、その……提督は処分しろと仰ってました……」カオマッカ

    敷波「……じゃ、じゃあ、この本、あたしが処分するから!」

    神通「えっ」

    807 = 1 :


    敷波「あたしが捨てておくから!」ダッ

    神通「あっ」

    大淀「……」

    初春「上着の中に隠して持っていくあたり、敷波らしいのう」

    如月(初春ちゃんは冷静すぎるわ……)

    朝潮「そ、それでは、朝潮はこの本を処分させていただきます!」ダッ

    神通「ちょ」

    大淀「……」アタマカカエ

    島妖精(みんないろいろたまってるんだなあ……)

    不知火「……」ハナヂポタポタ

    妖精(不知火もさっきからずーっとガン見してるし……)

    如月「……私も一冊処分しようかしら///」コソッ

    神通「!?」

    如月「し、失礼しますね!」ダッ

    大淀「き、如月さん!? 待って!? う、う、裏切り者ーー!!」

    初春「どの辺が裏切り者なのじゃ……大淀も持ち帰れば良かろうが」ハァ

    808 = 1 :


    明石「なんか騒々しいけど、どうしたの?」ヒョコ

    神通「あ、明石さん……」

    明石「なにその段ボール箱……うわあ、どうしたのこの本!」

    初春「明石は驚かんのじゃな」

    明石「まあ、酒保を預かる身としては、そんなに珍しいものでもないしね。どうしたの、これ?」

    大淀「実は……」


     * かくかくしかじか *


    明石「ふーん。じゃあ、私が処分しときますか」

    神通「えっ!?」

    明石「駆逐艦の子たちの目に触れる場所に置いておくわけにはいかないし、提督もこの手の本は苦手なんでしょ?」

    明石「可燃ごみなら工廠の裏に焼却炉もあるし、ついでに処分しておくけど?」

    神通「……お、おまかせします」

    大淀「……い、いいんじゃないでしょうか」

    809 = 1 :


    明石「そう? じゃあ、持ってくわね」グッ

    神通「……」

    大淀「……」

    明石「あ、そうだ。二人とも、欲しい時は取りに来てね! 内緒にするから!」ニコー

    大淀神通「「明石!?」さん!?」カオマッカ

    初春「して、不知火はいつまで読んでおるんじゃ」

    不知火「さすがに気分が高揚します」ハナヂポタポタ

    初春「いいからおぬしは鼻血を拭かぬか」


     * 少佐鎮守府 *

    加賀「へくちょ」

    瑞鶴「なにそのくしゃみ」

    加賀「なんでもないわ」ズズ

    瑞鶴「そういえば、墓場島に行った不知火、元気だったって大鳳から連絡があったわよ」

    瑞鶴「加賀さん、仕事がなくて無気力だった不知火にいろいろ押し付けてたじゃない。気にかけてたんでしょ?」

    加賀「なんのことかしら」ズルー

    瑞鶴「ニヤニヤしてないで鼻水拭きなさいよ!」

    810 = 1 :


     * 墓場島鎮守府 廊下 *

    由良「提督さん? 顔色、悪くありません?」

    「すんすん、なんか酸っぱいにおいが……」

    提督「……ちょっと気分悪くてな。戻してきた」ゲフ

    由良「もしかして風邪が悪化したんじゃ……」

    提督「いや、そうじゃねえから」

    「そういうことでしたら休んでてください。鳳翔さんにおかゆ作ってもらってきますから」

    提督「待て待て、普通に飯食わせてくれ……」

    由良「駄目です! 今日はカレーなんですから、刺激物はよくありません!」

    提督「いや、カレーだったらなおのことカレー食わせてくれよ、御馳走じゃねえか」

    由良「無理は禁物です!」

    「提督はもう少し自分をいたわってください!!」

    提督「話を聞いてくれよ……いや待て、話していいのかこれ……あれ、俺、墓穴掘ってるか?」

    由良朧「「……」」ジーッ

    提督(……あ、こりゃ話さねえと追求する気の目だ)

    811 = 1 :


     * そして工廠 *

    利根「おお、これが愛か……」ドキドキ

    明石「欲望も多分に混ざってはいますけどね。王道ラブコメはいいですよね~」ペラリ

    利根「うむ、吾輩もこういう胸に来る関係に憧れるな!」

    明石「あー、利根さんは余計にそう思いますよね!」

    利根「うむ! こう、もどかしさやいじらしさを交えながらも、優しく包まれたくもあり、激しく燃えたくもあり……」ペラリ

    伊8「……ムードって大事」

    利根「うむうむ! しかし、男というものは女を無理矢理、という話が好みかと思っておったが、その限りではないのだな?」

    明石「その辺は作者さんによりけりですかね。みんな願望とか性癖とかバラバラですから、その辺はお好みで、というやつです」ペラリ

    利根「性癖か……うむ……」

    伊8「……提督はどうなの?」

    明石「うちの提督、好意を向けると逃げちゃいますからね。そのくせ私たちの言うことはききたがるし、ほーんと面倒くさい人ですよー」

    伊8「……んー」

    明石「あ、そうそう。この本、提督には秘密ですからね。暁ちゃんや電ちゃんあたりにも内緒ですから」

    利根「あの辺りはそうじゃな。長門あたりもうるさそうだから他言はせぬよ」

    伊8「……」コク

    812 = 1 :

    今回はここまで。


    とりあえずいろんな伏線を回収中です。
    ・不知火がたまに加賀みたいなことを言ったり、>>65で加賀と話す機会があったり、
     本編で加賀が赤城にべったりだったことにショックを受けていたのは、>>809の理由から。
    ・本編で加古が「駆逐艦の部屋でエロ本を見つけた」と言っていたのは卯月のせい。
    ・朝潮がやたらとエロワードに詳しいのも卯月のせい。
    ・その卯月がエロ本持ってきちゃったのは>>616のせい。
    ・卯月のせいで神通さんが耳まで真っ赤になっちゃったのは>>682のせい。

    卯月が万能選手すぎてつらい……!

    813 :

    乙!そしてうーちゃんGJ!

    814 :

    うーちゃんに万雷の拍手を!
    更新お疲れ様です、艦これSSでかなり更新を楽しみにしてます
    ゆっくりでも大丈夫なので次回もお待ちしております

    815 :

    続きです。

    初雪の秘密と、陰謀編。

    816 = 1 :


     * 執務室 *

    L大尉「……というわけで、明日の朝11時にここを出立する予定だ」

    L大尉「そのときまでに、妙高たちもここを出る準備を整えて欲しい」

    卯月「えー? もう帰るぴょん!? もう少し遊びたかったぴょん」

    妙高「卯月さん、あまりわがままを言って困らせてはいけませんよ」

    L大尉「その通りだ。君たちの鎮守府の主力部隊は、しばらく鎮守府を離れざるを得ないんだから」

    L大尉「君たちにもしっかり働いてもらわないといけないんだよ」

    望月「へ? どゆこと?」

    L大尉「提督准尉、これを」スッ

    提督「この書類は?」

    L大尉「N中佐の部下の中で、検査が必要と思われる艦娘のリストだ。主力部隊は例外なく全員が検査対象になっている」

    香取「つまり、明日以降はあなたたちが主力部隊として動かなければならない、ということですよ」ニコ

    望月「うええええ!? マジでぇぇ!?」

    卯月「やったぴょん! 出番っぴょーん!」

    弥生「卯月……静かにして」

    817 = 1 :


    提督「……なぜこれを俺に?」ペラッ

    L大尉「中将殿から預かってきたんだ。おそらく今後、この顔ぶれの誰かがまたこの島に流れ着かないかを危惧してのことだろうね」

    提督「ふーん……なんというか、奴の趣味が丸出しだな」

    妙高「どういうことです?」

    提督「ほれ、見てみろこの写真。駆逐艦のリストが一番わかりやすい」


    『村雨』『潮』『長波』『浦風』『浜風』ピラピラッ


    卯月「わかりやすすぎるぴょん!?」ガビーン

    弥生「N中佐、意外と煩悩まみれだった」ガックリ

    望月「あたしらが選ばれなかったのは当然の流れだったんだねえ……」トオイメ

    妙高「……」ズツウ

    提督「うちの潮に興味を示さなかったのは、同じ潮がいたからだろうなあ」

    卯月「なんとなくだけど、写真の潮のほうがおっぱいがでかい気がするぴょん」

    L大尉「へ? あ、ああ! そういう意味か! なるほど!」

    香取「今、気付いたんですか!?」

    818 = 1 :


    望月「ちょっと待って。あ、あのさ、このメンバーのなかに初雪が混ざってたってことは……」

    弥生「あ……!?」

    卯月「准尉、真相はどうなんだっぴょん!?」ガタッ

    提督「知らねえよそんなこと。ただまあ明石が、初雪が風呂に入りたがらないとは言ってたな」

    提督「誰もいない時間帯を狙ってこっそり入ってるらしいから、なにかしら秘密は持っていそうだが、俺は追及する気はねえぞ」

    望月「うあああ、マジか……マジかあああ」アタマカカエ

    L大尉「なあ香取? なんで彼女はこんなに深刻そうに頭を抱えてるんだ?」

    香取「その、女性にとってはデリケートな問題ですから……」

    卯月「ちなみにL大尉はどういう子が好きぴょん?」

    L大尉「私は優しい子が大好きだぞ!」

    卯月「そういう意味じゃないぴょん! おっぱい大きい子が好きかどうか聞いてるぴょん!」

    L大尉「それは難しい質問だな。古鷹のように細い女性も良いが、香取のような肉付きの良い女性も良い! どっちも大好きだ!」サムズアップ

    香取「何を馬鹿正直に答えているんですか!!///」バチーン!

    L大尉「へぶァ!?」

    卯月「計画通り……ぴょん」ニヤリ

    弥生「卯月……」アタマカカエ

    819 = 1 :


    卯月「んっふふー、提督准尉は大きいほうが好きぴょーん?」ニヤニヤ

    提督「ああ? 別にどっちでもいいな」

    望月「へー。んじゃ、准尉も節操なしってこと?」ニヤリ

    提督「いーや、興味ねえし、ぶっちゃけどうでもいい。そんなのいちいち気ぃ遣ってられっか、くっそ面倒くせえ」ケッ

    卯月「それはそれでひどいぴょん!?」

    望月「……うん、そりゃ言っちゃ駄目だわ」

    妙高「准尉は本当にぶれませんね……」ハァ

    提督「つうか、五体満足ならそれでいいじゃねえか。お前ら、この島に流れて来る連中見ても同じこと言えんのかっつーの」

    提督「少なくとも、見苦しくない体型を維持できてると本人が思ってるんなら、それでいいだろ」

    卯月「意外にも模範的な回答が返ってきたぴょん……」

    提督「そもそも胸の大小なんて、自分でほいほいコントロールできる代物じゃねえだろが」

    提督「俺も正直、もう少し背丈が欲しかったが、今更どうしようもねえしな。ないものねだりしても仕方ねえ」

    妙高「ああ……そうですね、男性にはそういう悩みもありますね」

    望月「へえ~、准尉にもそういう願望あったんだ」

    820 = 1 :


    弥生「背丈……牛乳を飲むとか」

    提督「牛乳ねえ。今から飲んで背が伸びんのか……?」

    提督(そーいや、電は毎日飲んでるんだよな。おっきくなりたいから、っつってたけど……)

    提督「効果あんのかねえ……」ウーン

    望月(めっちゃ怪訝そうな顔してる……)



     * その頃の食堂 *

    「んく、んく……」クピクピクピ

    「!!」ムズッ

    「ぶぺくちょ!!」ギュウニュウブバー

    敷波「ちょっ、牛乳飲みながらくしゃみしたの!?」

    由良「ぞ、雑巾持ってこないと!」

    821 = 1 :


     * 執務室 *

    L大尉「まあ、とにかくだ。この島にN中佐の部下がこれ以上流れてこないことを期待するとして……」ヒリヒリ

    妙高(ほっぺたに真っ赤な手のひらマークが……)

    L大尉「もうひとつ報告したいのが、大和のことだ」

    提督「まーた大和かよ……」

    L大尉「いや、これはまじめな話だぞ。この資料を見てくれ、大和の能力を数値化した資料なんだが……」

    L大尉「君の大和の装甲が、ほかの鎮守府にいる大和の平均値より少し低いみたいなんだ。心当たりはないか?」

    提督「は? 装甲が?」

    島妖精「あー」

    島妖精「あれかー」

    島妖精「あれね」

    提督「なんだ? お前ら知ってんのか?」

    L大尉「妖精たちがすごく納得したような顔をしてるんだけど……ちょっと聞いてもらっていいかな?」

    提督「あ、あぁ……」

    822 = 1 :


    島妖精「あれはねえ……」

    島妖精「かくかくじかじかというわけで……」

    提督「ふんふん……つまり、ブラジャーしてない分だけ装甲が薄いってか」

    L大尉「ぶらっ!?」ハナヂブバッ

    弥生「!?」ビクッ

    香取「た、大尉!?」

    望月「中学生かよ」

    L大尉「す、すまない、ちょっと取り乱した」フキフキ

    香取(せっかく制服にカレーがつかなかったのを喜んでいたのに、まさか鼻血まみれになるなんて……)ハァ

    望月「つか、なんで自分で装甲薄くしちゃってんのさ。弱体化したらまずいんじゃないの?」

    卯月「……あ、うーちゃんわかっちゃったぴょーん」

    弥生「卯月?」

    卯月「大和さん、准尉におっぱいを押し付けたかったからぴょん!!」

    L大尉「おぱっ!?」ハナヂブババーッ

    香取「きゃあああっ!?」

    823 = 1 :


    妙高「そ、そ、そんなわけないでしょう!?」

    島妖精「いや、残念ながらその通りなんだ」

    望月「マジか……」

    提督「何考えてんだ大和のやつはよ……」

    卯月(テキトー言ってたら当たってたぴょん)タラリ

    L大尉「ふう……ここで聞いても、大和は提督准尉が大好きで、しかも若干暴走気味だと言う感じだね」ティッシュツメツメ

    香取「そ、そのようですね……」

    提督「ここで、ってことは、余所でもそんな感じだったのか」

    香取「え、ええ。同行していたはずの不知火さんから報告はありませんでしたか?」

    提督「いや、聞いてないが」

    L大尉「本営にいる僕の知り合いが言うには、不知火が本営に大和を帯同していったとき、相当注目を浴びたそうだ」

    L大尉「大和の出現に興奮した野次馬が数人、大和に触れようとも抱き着こうともしたらしい」

    提督&望月「「子供かよ」」

    弥生(ハモった……)

    824 = 1 :


    L大尉「それを大和は、その無礼者を自分の艤装にひっかけて、合気道のように体のいなしだけでぽいぽい投げ捨てたんだそうだ」

    香取「なんでも、私に触れていいのは提督准尉だけです、とか言いながら立ち回ってたそうです」

    提督「どいつもこいつも、なにやってんだよ……」

    L大尉「この件に関しては手を出すほうが悪いと思うが、なんせその相手の一人が少将クラスだったもんで、少々場が騒然としたらしい」

    妙高「それ、少々で済むんですか……」

    卯月「少将だけにぴょん?」

    弥生「……ぷ」プルプル

    香取(笑いのツボが浅いんでしょうか)

    提督「少将がそんなんで大丈夫なのかよ本営は……くっそ頭痛え」

    L大尉「まあ、それだけ大和が希少な存在だってことなんだ。僕だって一目見たいと思うくらいなんだから」

    L大尉「ともかく、その時は中将の部下である不知火が執り成したのと、大和が提督准尉の部下だって主張したことで、その場は静まったらしい」

    妙高「? その言い方ですと、大和さんが提督准尉の部下であると静まる理由があるんですか?」

    L大尉「いやあ……提督に無礼を承知で言うが、本営ではこの島の話題は歓迎されていないんだ」

    L大尉「君たちも知っての通り、この島は轟沈経験艦が住まう島。提督准尉にも根も葉もない噂を立てられてしまっている」

    825 = 1 :


    L大尉「おかげで、本営で僕が提督准尉に会いに行きたいと言ったとき、本営の将校には眉を顰められてしまってね」

    L大尉「悪いことは言わないから、出世したければあの島には近寄るな、とまで言われてきた」

    L大尉「隔離された艦娘が暮らすこの島の出身というだけで、お上にとっては致命的なマイナス要素らしい」

    提督「はっ、いいじゃねえか。N中佐みたいに出歯亀を働こうとするやつが減ってくれりゃあ、こっちはその分だけ楽できる」

    L大尉「何を言う、僕は提督准尉が馬鹿にされているみたいで面白くないぞ。彼らこそ何も知らないだろうに!」プンスカ

    L大尉「確かに、僕はかつて少佐だった。この島に立ち寄った直後に中尉に降格したが、それは僕自身に問題があったからだ」

    L大尉「人間万事塞翁が馬。この島に来たからこそ、僕は僕自身の勘違いに気づき、出世より大事なことを理解できたと思っている」

    L大尉「それを、この島で何も経験していない彼らがあることないことを吹聴して、それがさも事実のように流布されるのは不愉快極まる!」

    弥生「おお……」

    卯月「さっきまで鼻血噴いてた人のセリフとは思えないぴょん」

    香取「たまにこうして恰好いいことを言うので、つい見直して希望を持ってしまうんですよね……」

    提督「納得だ」

    L大尉「ははは、そんなに褒めないでくれ、照れるじゃないか」

    望月「褒められてないって」

    826 = 1 :


    L大尉「……ところで提督准尉。ひとつ聞きたいんだが」

    提督「?」

    L大尉「君は中将と既知のようだが、その中将の息子さん、少佐を知っているか?」

    提督「……ああ。一応、俺はあれの部下だ」

    L大尉「部下!? 彼が君の上官になるのか!?」

    提督「そうだ。不知火は中将のお目付け役だが、あいつも少佐のもと部下だ」

    L大尉「そうなのか!? 何があったんだ……あ、その話はあとでいいや」

    L大尉「その少佐の話なんだが、僕が昇進したのと同じタイミングで、彼もまた中佐に昇進したんだ」

    L大尉「それ自体は彼の部下の働きによるものだと言われている。その少佐……いや、中佐が、君の大和に目を付けたようなんだよ」

    提督「……なに?」ピクッ

    L大尉「本営からの帰り際、中将に挨拶に伺おうと中将の執務室にお邪魔したとき、中佐が興奮しながら大和のことを話していてね」

    L大尉「僕が入れ替わりで部屋に入ったときには、話の途中だったのか、中佐にすごい目で睨まれた」

    香取「睨まれたんですか?」

    L大尉「ああ、殺意のこもったような嫌な目だった。あの中将の血縁とは思えないほどだ」

    香取「L大尉、あのときあなたはそんな素振りは……」

    L大尉「さすがに中将の前だよ、慎むさ」ニコ

    827 = 1 :


    L大尉「そのあと僕は何事もなかったように中将と雑談して、その書類と大和の資料を賜った」

    L大尉「中将は、本当は中佐にこの書類の内容について話がしたかったらしいが、中佐は大和に夢中で聞く耳持たず……」

    L大尉「これでは話にならないと、中将はたまたま顔を見せた僕に白羽の矢を立てられたんだ」

    L大尉「僕が墓場島鎮守府の縁者であることを中将は覚えててくれたようだし、ね」

    提督「……」

    L大尉「そのあと僕は、君が出発してしまったことを知らずにN中佐の鎮守府へ行き、彼女たちに出会って荷物を積み込んで……」

    L大尉「ついでだからと横須賀で定期便に載せる補給物資も積んで、この鎮守府に来たというわけだ」

    提督「……」

    香取「……L大尉」

    L大尉「どうやら、この話は提督准尉にしておいて正解だったようだね?」

    提督「……ああ、助かる。奴が大和を狙ってるだと? 冗談じゃねえ」ミシッ

    全員「「……」」ゾクッ

    L大尉「提督准尉。その感情はみんながこの部屋を出るまで仕舞っておいてくれ。彼女たちは君のそんな顔は望んでいないよ」

    提督「……そうだな。わかった」フー

    828 = 1 :


    L大尉「よし! 僕からの報告は以上だ! 香取!」スクッ

    香取「は、はい!」

    L大尉「とりあえず洗濯機を使わせてもらおう。とれるかな、この鼻血」

    香取「……て、手洗いでなんとかしましょう」

    L大尉「そうか、仕方ないな。では提督准尉、僕らはこれで失礼するよ」

    L大尉「さ、みんなも話はおしまいだ。新設された休憩室で、昼間のババ抜きのリベンジをさせてもらおうじゃないか!」

    卯月「わ、わかったぴょん!!」

    香取「着替えて洗濯するのが先です!」

    L大尉「お、おお、そうだね、急ぐか!」


     ゾロゾロ

     扉<パタン


    提督「……」

    提督「あの野郎……どうしてやろうか」ギリッ

    829 = 1 :


     * 執務室の外 *

    L大尉「いやー、参ったね。せっかく盛り上がっていたのに、思わぬ地雷を踏んじゃったなあ。あ、鼻血止まったかな」

    弥生「……」

    卯月「……」

    望月「……あー、ま、まあ、しょうがなくね?」

    妙高「そ、そうですね……」

    L大尉「うーん……みんな、すまないね。やっぱり中佐のことはあの場で言うことじゃなかったよ。僕の失言だった」ペコリ

    妙高「い、いえ、そのようなことは……!」

    L大尉「せめて君たちを部屋に戻してから伝えるべきだった。君たちを怖がらせるつもりはなかったんだ」

    望月「あー、あのさ、しょうがないって。どーせあたしたち、興味本位で聞いてたかもしれないしさ?」

    弥生「……仕方、ないです」

    卯月「……ぴょん」コク

    香取「L大尉。提督准尉は、ご自身を中佐の部下だと仰っていましたね」

    L大尉「うん。ということは、准尉をこの島に縛り付けたのも、おそらくは中佐ということになるね」

    L大尉「さて、香取。中佐に関してだが、これから注意深く動向を探るべきか、それとも離れるべきか。どう思う?」

    香取「……私は、薄情だと思われそうですが、中佐には近づかないほうが良いと思います」

    830 = 1 :


    L大尉「それは、僕が余計なことをしかねないからかな?」

    香取「はい。中将閣下のご子息でもありますし、なにより得体の知れない相手ですので……」

    L大尉「君子危うきに近寄らず、か。仕方ない、そうしよう。君たちも中佐には気をつけるんだ、できるだけ接触を避けたほうがいい」

    望月「ちょっ、どゆこと?」

    L大尉「簡潔に言うとだ。准尉は妖精と話ができる。中佐は妖精を介して話を聞かれるとまずいことをしている」

    L大尉「だから中佐は准尉をこの島に閉じ込めた。となると、中佐が人には言えないことをやっている可能性が高い」

    卯月「悪いことしてるなら、とっちめればいいぴょん!」

    L大尉「悪いことをしているとわかっているならね。そもそも中佐が何をしているのか、僕たちは全然知らない」

    L大尉「下手に探りを入れて、提督准尉や彼の部下……最悪、僕の部下や君たちにも、どんな迷惑をかけるかもわからない」

    L大尉「香取が言いたいのはそういうことだろう?」

    香取「はい」

    弥生「……助けられない、の?」

    L大尉「現時点では何もできないね。それにあの准尉の怒りようだ、彼にも事情なり思うところなりあるんだろう」

    L大尉「彼と仲良くすることは、僕としても望ましいことだ。だけど……」

    香取「深入りは避けるべきでしょうね」

    L大尉「うん。それ以外で、今の僕たちにできることを考えるべきだろうね」

    831 = 1 :

    というわけで今回はここまで。

    832 :



    毎回おもしれえわ

    833 :

    前回貼り忘れていた、この鎮守府限定の設定。


    伊8>大和≧潮=比叡≧長門>
    初雪=明石≧ル級>大淀≧
    古鷹=利根≧由良≧神通≧
    初春>如月>朧≧朝雲>
    吹雪=敷波≧不知火=朝潮≧電=霞=暁


    それでは続きです。

    834 = 1 :


     * 休憩室 *

    大淀「……ぐぬぬ」

    L大尉「……」

    大淀「……っ」パチッ

    L大尉「王手」パチリ

    大淀「ううっ……!」

    望月「……強っえー」

    卯月「ババ抜きはめちゃくちゃ弱かったのに、意外ぴょん!」

    L大尉「御父上は棋譜を集めるのが大好きでね。面白い棋譜を見つけるたびに、僕が無理矢理相手をさせられてて困ってたんだ」

    L大尉「僕がその棋譜に倣って打つと、名人と打ってるみたいですごく楽しいと子供みたいに笑うんだよ。なんだかんだでそれが嬉しくて」

    香取「それでこんなに強いんですか」

    L大尉「僕が海軍に来てからは相手がいないと言って淋しがってたなあ。ネット将棋もいいけど、やっぱり駒に触りたい、って」

    吹雪「大淀さんもすごく強かったんですけど……」

    L大尉「うん、かなり手強いね。この盤面にするのは苦労したよ」

    「ここまで押し込めるなんて……私たちじゃ逆立ちしても勝てないわね」

    朝雲「L大尉は強いわよー。昔、大将相手にも圧勝しちゃって以来、避けられてるくらいだから」

    大淀「……むうう」

    835 = 1 :


    朝雲「ねえねえ香取さん、L大尉の言動がだいぶまともになっててびっくりしてるんだけど……いったい何をしたの?」

    香取「L大尉は目立ちたがりで出しゃばりですが、根は素直な人です。極端に言えば言えば子供っぽい人と言いますか」

    香取「古鷹さんが過剰にお世話好きだったこともあって、自分を王様だと勘違いしていたんでしょうね」

    L大尉「ああ、香取。それもあるけど、僕に一番欠けていたのは、他人の気持ちを思い遣る点だ」

    L大尉「お膳立ては全部艦娘がやってくれると思い上がっていたからねえ」

    香取「……ですから、その勘違いを正すところから理解していただいて……」

    香取「そこからはまあまあ順調でしたね。まだ常識の足りないところはありますが」

    朝雲「ふぅん……」チラッ

    香取「それをさておいても、将棋が強いというのは初めて知りました。軍師としての資質もあるかもしれません」

    L大尉「でも、戦争と将棋は全然違うからね。必ず相手を沈められるわけでもなし、倒した相手を味方にできるわけでもなし……」

    L大尉「相手の玉将を取れば終わりでもないし、部下の艦娘を失いたくないから、敵を討つための手段も選びたい……王手」ペシッ

    大淀「あっ!!」ナミダメ

    836 = 1 :


    朝雲「……随分お人好しになっちゃったわね」

    香取「ええ。いくら『君子は豹変す』という言葉もありますけれど……反動でしょうか?」

    L大尉「お、大袈裟だなあ、そんなに変わった覚えはないよ」

    「大袈裟でもなんでもなく変わりすぎよ。あんた、前来てた時はもっと上から目線だったじゃない」

    大淀「うう……ま、参りました」ペコリ

    L大尉「あ、はい、お相手ありがとうございました」ペコリ

    朝雲「ほーんと……昔は『どうだ見たかい古鷹ー!』って、はしゃいでたのに」

    吹雪「どんだけ古鷹さんにべったりだったんですか」

    卯月「よくわかんないけど、ババ抜きやってるときとは別人ぴょん」

    朝雲「うちの提督もそうだけど、あれじゃ出世できないわよ?」クスッ

    香取「それは困りますね。少し、軍人らしい図太さも身に着けていただかないとだめでしょうか」クスッ

    837 = 1 :


     * 鎮守府埠頭 *

    提督「……」

    提督「……いや、だめか」

    提督「……」

    提督「くっそ……」アタマガリガリ


    如月「……」コソッ

    神通「……」コソッ

    「……」コソッ

    如月「司令官、ずーっと悩んでるわね……」

    「あの、提督は何に苛立っているんでしょう」

    神通「大和さん。あなたは、提督の直属の上官にあたる中佐を御存知ですか?」

    「簡単にですが、お話は伺っています」

    如月「中将にはお会いしたんですよね?」

    「はい、不知火さんと一緒に。その中佐との御目文字は叶いませんでしたが」

    如月「……」

    神通「……」

    838 = 1 :


    「あの……」

     ガサッ

    神通「!」バッ

    不知火「……すみません、驚かせるつもりはありませんでした」

    如月「不知火ちゃん……」

    不知火「その中佐について、不知火が説明します。お二人では、話しづらいこともありますから」

    「どういうことですか……?」

     * かくかくしかじか *

    不知火「……そういうわけで、如月にも、神通さんにも、そして司令にとっても、因縁の相手なんです」

    「そうだったんですか……」

    不知火「L大尉から、中佐が大和さんを奪おうとしていることを司令にお話ししたと言うことですので、おそらくそれの対策を練っているのでは」

    提督「ま、そういうこった」ヌッ

    全員「「!?」」ギョッ

    提督「不知火、説明ご苦労さん。俺の手間が省けた」

    不知火「ご自身で説明されたほうが良いと思うのですが……」ハァ

    神通「提督、いつからお気付きになっていたんですか」

    提督「ん、少し前だな。妖精たちが騒がしいから気が付いた」

    839 = 1 :


    提督「まあ、さっき不知火が言った通りだ。中佐が大和に目を付けたと聞いて、どうやって追い払うか考えてた」

    提督「できればぶっ潰してこの場でゲームオーバーにやりてえが、ちいとばかし間が良くねえな」

    「間、ですか?」

    提督「ああ。ここへ来て間もない初雪や伊8を、すぐに俺の共犯にしちまうのは忍びねえ」

    提督「せっかく交流の機会を得たル級や、鳳翔と再会できたばかりの朧にとってもどうかと思うし……」

    提督「俺の代わりなら長門や初春あたりが頼りになりそうなんだが、艦娘には鎮守府の指揮権を恒久的に任せられる決まりがねえ」

    提督「俺たち以外にこの鎮守府をやりくりして行ける奴となると……L大尉じゃ頼りなさすぎるし、O少尉でも無理だな。荷が重い」

    不知火「そもそも、この島で無事に生活できるかどうかも怪しいですが」

    提督「まあな。だからこそこの鎮守府の艦娘だけで、奴を相手取らないといけないわけだが……」

    提督「こっちはできる限り無傷で、かつ、奴に痛い目見せて追い帰す方法が思い付かねえ」

    如月「……」

    提督「更に、できればの話だが、グーでも魚雷でもいいから、神通には奴に一撃を入れさせてやりたい」

    神通「提督……!」

    提督「来いと言われても無視することはできる。逆に、奴が大和を攫いに来るとなるとな。最悪、今すぐ来る可能性もある」

    提督「だから、いつ来てもいいように、何かいい方法がないか海を見ながら考えてたんだ」

    提督「妖精たちもあの野郎には頭にきてるらしいからな。ただで済ませるつもりはこれっぽっちもねえ」

    840 = 1 :


    提督「まずは俺たちがこの島に住む大義名分は作れたからいい。今度は、あいつがこの島に来ない理由を作りたい」

    提督「例えばだが、強烈なトラウマを植え付けてやれば、俺たちに必要以上に干渉しなくなるはずだ」

    「でしたら……この大和が、中佐を追い払います」

    提督「追い払う? お前が?」

    「はい! 大和になにかしらの不安材料があって、一緒にいると危険であると認識させられれば!」

    如月「不安材料……?」

    不知火「……陸奥さんの第三砲塔のようなものでしょうか」

    提督「なんだそりゃ?」

    不知火「かつて戦艦陸奥は、第三砲塔が謎の爆発を起こし、それが元で沈みました。ですが、爆発の原因は今もわかっていません」

    提督「いつ爆発するかわからない、というデメリットを売り込む……ってか」

    如月「そういうことなら、大和さんを手に入れようなんて気にならないかも……」

    神通「ですが、それだけでは弱いと思います」

    如月「……それなら、料理が下手だとか、家事が苦手とか、致命的なくらいにドジだとか、日常的な欠点を盛り込むとか?」

    提督「んー……不自然じゃねえならそれでもいいかもな」

    不知火「司令以外に従うつもりはないことを、あらかじめ中将に……」

    提督「待て待て、すぐ中将に頼んな。っつうか、正直頼りになんのかわかんねえよ」

    841 = 1 :


    提督「それだったら、ここにいる轟沈経験のある艦娘が深海化したときの抑止力として大和をこの島に置きたい、って頼んだほうが自然だろ」

    不知火「いえ、それでは如月たちが悪役になるのでは……」

    如月「……それが一番いいかもしれないわ。一番説得力がありそうだし」

    如月「一緒に司令官の身の安全もお願いしましょ? 司令官の身になにかあったら、私……なにをするかわかんないから。ふふふっ」ハイライトオフ

    提督「……あー、わかったわかった」

    「提督、私もその気持ちは同じです。私も、提督のお傍から離れたくありません!」

    提督「……そうか」ハァ

    神通「面倒くさいと言うのも面倒くさい、といった感じですか」

    提督「……」

    不知火「もはや喋るのも面倒と……」

    提督「いやもう俺のセリフ、全部神通にアテレコしてもらってもいいんじゃねえかな?」

    不知火「さすがにそれはどうかと」

    提督「ところで神通、お前はどう思う?」

    神通「……何がでしょう」

    提督「仮に俺があいつを始末できたとして、その後この鎮守府をどうするかだよ」

    「な……!」

    842 = 1 :


    提督「ある意味では絶好のチャンスなんだ。あいつを討つには、大和に浮かれてやってくるであろう、このタイミングしかねえ」

    提督「お前が仇を取る、最初で最後のチャンスになるかもしれねえんだ。お前の考えを聞いておきたい」

    如月「……」

    不知火「……」

    神通「……そうですね。のこのことやってきたところを、どんな手段でも使っていいのなら……大和さんを餌にして、あの男を……」

    提督「……」

    神通「でも、やめておきます。これは、私の個人的な復讐です」

    神通「それに……そんなことをして、みなさんを巻き込んでしまったら……F提督にどんな顔をされるか、わかりませんから」

    提督「……」

     ゴンッ

    不知火「!?」

    「提督!? どうして壁に頭突きなんかするんですか!?」

    神通「それは多分……」

    如月「神通さんが自重してくれたことが嬉しかったのよ。その照れ隠しだと思うわ。それプラス……」

    神通「それを喜んでしまった自分に自己嫌悪なさってるんだと思います」

    如月「神通さんもそう思います?」ニコー

    神通「ええ」クス

    843 = 1 :


    「……私も、まだまだ修行が足りないみたいです……!」

    不知火「何の修行ですか……」

    提督「……神通、悪いな」

    神通「大丈夫ですよ、提督。私もこの島に来て、少しですけれど変わったんです」

    神通「提督が、この島の鎮守府を大事になさっていること。私も共感できていますから……悪いだなんて言わないでください」ニコ

    提督「……ああ」

    如月「とりあえず、方針は決まりね。大和さんには中佐をさりげなく拒絶してもらって……」

    神通「二度と近づけないような理由も作らないといけませんね」ニヤ

    如月「うふふ、どんな目に遭わせてあげようかしら」ニヤ

    不知火「……なんだか司令が複数人いる気がします」

    提督「どういう意味だそりゃ」

    (私にも、あの笑い方ができるかしら……)ニヤ

    不知火「増えた!?」ビクッ

    提督「おいやめろ」


    844 = 1 :


     * 少佐改め中佐鎮守府 *

    少佐→中佐「大鳳、ご苦労だった。お前の働きに、お父上をはじめ皆が感嘆していたぞ」

    大鳳「はい! お褒めに与かり光栄に存じます!」

    中佐「しかし、違反者に情けをかけるとは。そんな甘い考えでは、戦争に勝てないぞ?」

    大鳳「は……それは」

    赤城「……N中佐も海軍の一員です。恩を売れば懐柔もしやすくなります」

    中佐「それもそうか。ならば赤城、いつでも手懐けておけるよう、準備しておけよ?」

    赤城「……承知しました」

    中佐「では大鳳、改めてご苦労だった。お前はこれから我らが第一艦隊、空母機動部隊に入り、練度の向上に従事せよ!」

    大鳳「はいっ!」ビシッ

    中佐「赤城、俺は墓場島に視察に行く。お前は大鳳たちと演習に向かえ」

    赤城「……承知しました。大鳳さん、参りましょう」

    大鳳「はいっ! 失礼いたします!」

     扉<ギィ バタム

    中佐「……」

    中佐「……く、くくくく。大和。大和か……!」

    中佐「ああ、楽しみだ。俺のもとに、誰しもが羨むあの戦艦が来るわけか……これで俺の艦隊にも箔がつく!」

    中佐「提督准尉もたまには役に立つな! くくく……待っていろ大和! ははは、はははははは!!」

    845 = 1 :

    今回はここまで。

    846 :

    鎮守府独自の設定というのを三回ほど見直して
    思い当たるのが胸部ぐはぁ……
    雲龍とか龍ちゃん(ないから最下位?)来たらまた変わるのかな?
    更新お疲れ様です

    847 :

    武蔵は一枚しか手に入りませんでした。

    お待たせしました、続きです。

    848 = 1 :


     * 翌朝 執務室 *

    大淀「提督! このような電文が!」ピラッ

    提督「……さっそく来やがったか」

     コンコン

    香取「失礼いたします」

    L大尉「ふああ……准尉は朝が早いな。失礼するよ」

    提督「よう、早速だがあんたの忠告通りになったぜ」ピラッ

    L大尉「……なるほど。これは気に入らないな」

     FAX『大和を貰う。準備をしておけ 中佐』

    香取「……横柄が過ぎますね」

    L大尉「怪人二十面相だって、もう少し洒落た予告状を寄越すものだがね」

    大淀「そして、そのFAXの数分後に届いたのがこちらです」

     FAX『中佐が、大和さんを自分の鎮守府へ異動させるために島に向かいました。到着予定時刻は1400、気を付けてください 赤城』

    L大尉「こっちはこっちで気を付けて、か……ここの赤城は苦労してそうだなあ」

    提督「ああ、苦労してんぜ。あれの秘書艦、赤城以前はころころ変わってたらしいしな」

    849 = 1 :


    L大尉「彼の到着はヒトヨンマルマルか。僕たちとは入れ違いになりそうだね」

    提督「そのほうがいい、あれに関わったっていいことなんざありはしねえ」

    提督「特に卯月なんか何するかわからねえ。とっとと連れて帰ってくれ」

    卯月「話は聞かせてもらったぴょん!」バーン!

    提督「帰れ」

    卯月「容赦ないっぴょん!?」ガビーン

    弥生「帰ります……!」エリクビガシッ ズルズルズル

    卯月「弥生まで容赦ないっぴょん!? 離すぴょーん!」ジタバタ

    提督「いいからお前はお前の鎮守府の心配をしてろ」

    香取「そうですよ卯月さん。あまり提督准尉を困らせてはいけません」

    卯月「うー……」

    提督「いいか、下手をうてば、お前だけじゃなく俺やこっちのL大尉にまで飛び火する」

    850 = 1 :


    提督「もし俺の邪魔をしようってんなら、多少の義理があるお前であっても容赦しねえぞ……!」ワキワキ

    卯月「ひっ!」サッ

    L大尉「卯月、これ以上は首を突っ込むべきじゃない。提督准尉がここまでの態度を取るとなると、中佐は本気で危ない相手だ」

    香取「ところで提督准尉? その怪しい手つきはなんですか?」

    弥生「あの……准尉の握力、すごいみたいなんです」

    香取「え?」

    卯月「准尉のアイアンクローはとんでもなく痛いっぴょん……!」ガタガタ

    香取「あ、ああ、そういうことですか……」ポ

    弥生「?」

    L大尉「?」

    卯月(もしかしてセクハラするような手つきに見えたぴょん?)

    大淀(香取さんもお仲間(むっつり)ですか)メガネキラッ


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