元スレ提督「墓場島鎮守府?」
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51 = 1 :
* 一方の太平洋上某所、同じく7時50分 *
士官「現在この船は太平洋上を航行中……目的地への到着予定時刻は『マルハチサンマル』」
ダイバー「……」
如月「……」
士官「……良かったのですか?」
提督「何がだよ」ニヤニヤ
士官「あなたがこの船に乗ったことです。私は危ないと思いますが」
提督「いいんだよ。如月を連れてこいって言ってきたのは少佐だ。不知火が連れてこいとは一言も言ってないし、俺に来るなとも言っていない」
士官「到着時刻も大幅にサバを読んでいます」
提督「兵は神速を貴ぶっていうじゃねえか。遅刻するよりは全然いい」
士官「不知火は」
提督「鎮守府を留守にするんだぜ? 不知火に1日くらい留守番をお願いしてもいいじゃねえか」
士官「如月に拘束具を」
提督「そんなもん港に着いた時でいいだろ?」
士官「……」フフッ
提督「……なんだよ、嬉しそうな顔しやがって」ニヤニヤ
士官「あなたも楽しそうですね」
提督「そうか? それよりもだ、予定通りに到着するんだろう?」
士官「ええ、間に合いますよ」
52 = 1 :
* 執務室へ至る廊下、9時55分 *
少佐(マルキュウゴーゴー、ほぼ予定通り……)
少佐(これから如月の身柄を確保しZ提督へ引き渡す。事情を知る不知火やほかの鎮守府へ送った艦娘は解体処分)
少佐(最近反抗的だったダイバーどもは左遷だな。もっと時間がかかれば馘にするのも容易かったが……適当な不祥事をでっちあげるか)
少佐(……そうだな、不知火に同情的だったし、あれと一発ヤッたことにでもしてしまおう。世間的に殺せる)
少佐「赤城、いるか」ガチャッ
赤城「は、はい、少佐……」
少佐「何を慌てている」
提督「そりゃあ、俺がいるからだよ」
少佐「!!? き……貴様……なぜここにいる!」
提督「俺が如月を連れてきた」
少佐「不知火はどうした!!」
提督「俺の鎮守府の留守を頼んだ」
少佐「貴様! 不知火に任務を与えたのは俺だぞ! お前が不知火の行動をどうこうできる立場だと思うか!」エリクビガシッ
提督「不知火はお前の任務を全うしたじゃないか。命令は、如月の身柄をここへ移送しろ、だったな?」
少佐「屁理屈を!!」ギリギリギリッ
提督「だいたい俺がこっちに用があるから、代わりに不知火に留守を頼んだんだ。問題ない」
少佐「何が問題ない、だ!! 貴様が来るなんて聞いていないぞ!!」
提督「そうか」
少佐「澄ました面しやがって……!」
53 = 1 :
執務室の電話< RRRR... RRRR...
赤城「! は、はい、もしもし……」
赤城「ちゅ、中将閣下!?」
少佐「!?」
提督「……きたか」ニヤリ
赤城「少佐……!」
少佐「寄越せ……!」ジュワキウケトリ
少佐「……これはお父上、お元気そうで」
提督(ククッ、なんて猫なで声出しやがる……!)
少佐「て、提督、ですか? いえ、こちらには……」
提督「少佐殿!! 自分をお呼びでしょうか!!」
少佐「馬鹿野郎……! 声がでかい……っ!」ボソッ
通信『少佐、提督がいるようだね? 代わりたまえ』
少佐「……わ、わかり、ました……」
少佐「提督、出ろ。余計なことは一切言うな……!」ジュワキサシダシ
提督「……」ジュワキウケトリ
提督「もしもし、提督准尉であります。はい……いえ、中将殿のお心遣いに感謝しております」
少佐「……」イライラ
提督「はい……はい……」
少佐「……」イライライライラ
54 = 1 :
提督「わかりました……そのように致します……」ニコリ
少佐「奴め……何を笑っている……っ!」ギリギリッ
提督「復唱いたします」
提督「駆逐艦如月はZ提督鎮守府より異動、自分の鎮守府へ配属」
少佐「!?」
提督「駆逐艦不知火は少佐鎮守府より異動、中将麾下の艦娘とし、中将と自分の鎮守府との連絡員として月3回中将への連絡を行う任に就く」
少佐「!!??」
提督「承知いたしました。……はっ、失礼致します」
提督「……少佐、これを」ジュワキサシダシ
少佐「……」ボーゼン
提督「少佐?」
少佐「! ……っ!」ジュワキウバイカエシ
提督「……」ニヤァ
少佐「父上! いったいどういうことです!」
通信『聞いたぞ少佐……貴様、危険な橋を渡ろうとしているそうではないか』
少佐「な、なんのことです!」
通信『今回の捜索の件、貴様は如月が不当に暴力を振るわれていると予見したそうだな?』
少佐「!?」
通信『それを貴様は独断で解決しようと、提督に応援を送り証拠を確保し、海軍の恥部をもみ消そうとした』
少佐「そ、それは……」
55 = 1 :
通信『Z提督は貴様の良き友であったが、このような事態になり残念だよ。友人である以上、貴様が表沙汰にしたくなかった気持ちもわかる』
少佐「……い、いえ、それは」
通信『ひとまず如月の所属は提督へ異動させ、身柄は海軍と憲兵が預かることにした。本件については大将殿も賛成している』
少佐(大将だと……っ!? どこからそんなところに話が漏れたんだ!)
通信『それとだ、提督へ送る物資を横領されているという話もあったが、聞いているかね?』
少佐「は……?」
通信『Z提督は貴様の鎮守府によく出入りしていた。気心の知れた貴様の心の隙に付け込んでの容疑と見ておる』
通信『提督に未だ艦娘が配属されていないのもZ提督が一枚噛んでいるらしいじゃないか。彼にはこの件についても嫌疑がかかるだろう』
少佐「……そ、そのような、こと、に」
通信『この鎮守府の職員には、かつてZ提督のもとで働いていた者もいる。まずはそういった人間から疑われることになる……』
通信『友人がこんなことになり貴様もつらいだろうが、現実を受け止め、反省し、同じ過ちは二度と繰り返さぬよう努めていこうではないか』
少佐「……は」
通信『それと、この件については大将殿の手引きで、本日ヒトマルヒトゴーに憲兵隊が貴様の鎮守府へ向かう手筈になっている』
少佐「な……!?」
通信『うむ、もう間もなくだな。如月の身柄はひとまず彼らに受け渡し、貴様は提督准尉と共に事実確認に協力せよ』
通信『このような身内の不祥事で我ら海軍が揺らぐようでは、深海棲艦との戦いに勝つことはできん』
少佐「……は、は」
通信『後日辞令も出るが、今後の体制については提督に復唱させた通りだ。特に不知火には苦労させるが、くれぐれも大事にしてくれたまえ』
通信『儂からは以上だ。よろしく頼むぞ』
少佐「…………は……っ」プツッ
56 = 1 :
少佐「……」
少佐「……」プルプル
少佐「……提督、貴様……きさまああああああ!!!」ガシーーッ
提督「……」ツーン
少佐「貴様、貴様いったいなにをした! いったい、なにを……!!」
提督「なにを、とは……なにを?」フッ
少佐「ふざけるなああああ!!」グイイイイッ
提督「ふざけてなどいない。自分は如月を連れてきた……それがなにか?」
少佐「お前が何かを仕掛けたのだろう! お前が来て……中将に! 大将にぃぃ!」
提督「ここへ来て、ものの数分で何ができるんです? それに大将とは? 中将ならまだしも、大将とは面識すらありませんが?」
少佐「だ、だったらなぜお前がここにいる! お前が、お前が何かしたんだろう! あああ!?」
提督「ですから、『私』が、なにをしたのですか?」
少佐「だから、貴様が……貴様が!! ぐうううう!!」プルプルプル
提督「……少佐。憲兵が来るのでしょう?」
少佐「はぁ、はぁっ……それがどうした!!」
提督「私の服を掴んでしわだらけにするのは、いかがなものかと」
提督「如月の第一発見者は私です。憲兵にも説明を求められるでしょう。そのときに、余計なことを勘繰られたいのですか?」
少佐「!」ビクッ
提督「手を、放してください、しょ・お・さ・ど・の?」ニタリ
少佐「~~~!!!」ギリギリギリッ
57 = 1 :
バッ
提督「如月の拘束は?」
少佐「……解け!」
提督「了解」ニヤリ
少佐「赤城!!」
赤城「はい」
少佐「憲兵が来る! Z提督の件は貴様が説明しろ! 俺は……」
赤城「……緊急の出張、ですね」
少佐「うまくやれ! いいな!!」
扉< バタンッ!!
赤城「……ふぅ」
提督「……やれやれ」クックックッ
赤城「提督准尉。あなたは予定より2時間も早く来て、いったい何をしたのです」ジト
提督「いいや……俺自身はなにも?」
赤城「あなたの目の奥はそう言っていませんね。何をしたのかは別にしても、どうせ少佐の悔しがる顔を見たくて煽ったのでしょう?」
赤城「少佐の機嫌が悪くなれば、この鎮守府の艦娘に被害が及びます。余計なことはしないで下さい」
提督「……それが、あなたの本心ですか」
赤城「ええ。迷惑です」
提督「ほーぉ……」
赤城「……なんですか」
58 = 1 :
提督「すっきりした顔してたくせに」
赤城「准尉っ!?」キッ
提督「冗談ですよ」シレッ
提督「ま、それはさておき、だ」キッ
提督「赤城殿。如月は、本日ヒトフタマルマルより我が鎮守府の所属、提督准尉配下となります」
提督「今後、艦娘の健康管理を行うに当たり、入渠ドックが使用できない現状は非常事態といえます」
提督「入渠ドックの修理と、発電機など運用可能な機材の調達を、少佐殿へお願いしたい」
赤城「承りました。不在の少佐に代わり手続きを行います」フゥ
提督「感謝いたします、赤城秘書艦殿」ビシッ
提督「……」フゥ
提督「それにしても……清濁併せ呑む、か。憎まれ役も大変だな」ポツリ
赤城「そういうセリフは私のいないところで言ってください。それと、こんなことで私を理解したつもりにならないように」ジロ
提督「これは失礼」
赤城「ですが、如月と不知火を救ってくれたのも紛れもない事実」
赤城「あなたにはお礼申し上げなければいけません。ご無礼をお許しください」ペコリ
提督「!」
赤城「どうしました」
提督「……やめてくれ赤城。俺は如月と不知火の望むようにしただけだ、特別なことはしていない」
赤城「いいえ? 私にできないことを為したあなたはもう特別なのです。少なくともあの二人にとってはそうなるでしょう」フフッ
59 = 1 :
赤城「ですから、今後はその部下のためにも、このような出過ぎた真似は控えてくださいね」
提督「部下、ね……やりづれえ。いまいち面倒くせえことになったな」ボソッ
赤城「おや、その面倒を買って出たのが他ならぬあなたではありませんか。責任を取ってあげなさい、男の子でしょう?」
提督「男の子? こんなでかいガキがいるかよ。言うことがおばあちゃんみたいだぞ」
赤城「あらあら、あなたこそうら若き乙女を捕まえておばあちゃん呼ばわりだなんて、提督は女心がわからない方ですね」プク
提督「待て、あんたは俺より……いや、いい。それよりも、今のあんたからそういうセリフが出てくるとは思わなかった。そういうキャラだったか?」
赤城「さて? そうだったかもしれませんね。昔のことです、おばあちゃんは覚えてなんかいませんよ」ツーン
提督「おいおい……まさか、この場であんたにからかわれるとは思わなかったな……」
赤城「ふふっ、先程のお返しです」
提督「……冗談もいいが、これからあんたは大仕事なんだろう?」
赤城「ええ。とっても嫌なお仕事です」
提督「……大丈夫なのか」
赤城「それが私の仕事ですから」ニコ…
赤城「提督准尉、改めて礼を言いますよ。誰かにからかわれたりしたのも、こんなふうに冗談を言えたのも久しぶりです」
赤城「では、お先に」
提督「……」
60 = 1 :
今回はここまで。
61 :
おつ
62 :
続きを投下します。
63 = 1 :
* 2日後 少佐鎮守府 某所 *
ダイバー「世話になったな」
士官「いやいや、今までお疲れ様」
艦娘「いきなり退職されるなんて……これからどうなさるんですか?」
ダイバー「退職自体は考えてたよ、今後は普通に陸で就職活動さ。もう海はたくさんだ」
士官「まあ、あれを見てはね……」
艦娘「何かあったんですか?」
士官「この前、如月を捜索しに行ったときに、海の底にたくさんの艦娘の死体があったんだって」
ダイバー「その島の提督は、島に流れ着いた彼女たちを全部埋葬しようと考えてるらしい」
艦娘「島がお墓だらけになっちゃいますね」
ダイバー「残念ながら、もうそうなってたよ。丘の上に墓標代わりの艤装がいっぱい並んでた」
士官「うん。艦娘の墓場の島だった……いい景色じゃなかったが、目をそらしてはいけない光景だった。胸が苦しくなったよ」
艦娘「……墓場の島、ですか……」
* 同日 墓場島鎮守府 執務室 *
不知火「駆逐艦不知火、ただ今帰投しました」ビシッ
提督「ん、ご苦労さん。んで、あいつらはどうなった?」
不知火「はい、順を追ってご報告いたします」
64 = 1 :
不知火「Z提督は既にご存知のとおり、一昨日憲兵隊により身柄を拘束され、現在は本営で取り調べを受けています」
不知火「同じように、この鎮守府に物資を送っていた職員数名も身柄を確保」
不知火「職員らは少佐の指示と言っていますが、書類はすべて正規の数字であり、少佐本人もその事実を否定……」
不知火「提督准尉が着任当初から記録していた物資の差異についても事実確認され、これも証拠として認められました」
不知火「以上から、憲兵はZ提督独断の越権行為として調査を継続中です」
提督「ま、多分連中は結託してたんだろうな。身内で固めてたのも他言無用を貫くため、と」
不知火「その後の調査で、この鎮守府以外の少佐麾下鎮守府への物資からも、資材を横領していたことがわかりました」
不知火「横領された物資は、他の鎮守府への融通や、賄賂や裏金の元としてZ提督のところからロンダリングされていたようです」
提督「なぁるほど。期せずして奴らの財布にダメージを与えたわけか」クックッ
不知火「はい。それと……Z提督の鎮守府からは、深海棲艦の遺骸から作ったと思われる鞭や刃物が見つかりました」
提督「深海棲艦の遺骸だと!?」
不知火「私見ですが、Z提督は深海棲艦が艦娘にどうやってダメージを与えるかのメカニズムを分析していたのではないかと思われます」
提督「如月は、Z提督が開発した新しい武器の実験台にさせられていたと言っていたな」
提督「単なる変態趣味と思いきや、実用的で金になりそうな黒い話じゃねえか。連中がただの悪党じゃなかったとなると面倒だ」
不知火「憲兵はこれらを押収して本営へ回すとともに、更なる余罪がないかをZ提督鎮守府所属の艦娘から聴取することになりました」
提督「本営はその遺骸から作った武器をどうする気だ?」
不知火「……この研究がどのように転ぶかは不知火にも予測できかねます」
不知火「本営が興味を持ち、如月のように艦娘を実験台にして研究を進めようとする可能性も決してないとは言えません」
提督「俺にゃあそうなるとしか思えねえがな。くそが」
65 = 1 :
不知火「とにかく、以後、Z提督の鎮守府には別の提督が着任し、指揮を行うことになります」
不知火「少佐の鎮守府は、今後も引き続き少佐が指揮することになりますが、憲兵が一層厳しく目を光らせることになったようです」
不知火「仮にも評判の良かった中将の鎮守府でしたから、憲兵たちも『これ以上この鎮守府に悪事が舞い込まないように』と警戒しているようです」
不知火「鎮守府の評判は、海軍と憲兵にとってはおおむね好意的と捉えて良いと思いますが……少佐にはやりづらくなったことでしょう」
提督「よくそこまでフォローできたもんだ。赤城が全部うまく回したんだろうな」
不知火「あの方は、少佐が鎮守府を仕切るようになってから、一番長く秘書艦を務めています」
不知火「少佐が着任してからの歴代の秘書艦は皆、すぐに鎮守府を去っていきましたから……」
提督「赤城はあのパンドラの箱に残った最後の希望、ってとこかね」
不知火「しかし、赤城さん一人に負担をかけ過ぎだとは思います。同じ鎮守府の加賀さんがいつも気にかけておいででした」
不知火「先日、その加賀さんとお話しする機会を得たのですが、やはり赤城さんは他の艦娘に対して突き放すような言い方をしているそうで」
不知火「不知火には、憔悴した加賀さんにかける言葉が見つかりませんでした」
提督「いや、それでいい。そっとしといてやれ」
不知火「それと、本日ヒトサンサンマルより、少佐鎮守府から作業員が派遣され、入渠ドック及び建造ドックの修理が行われます」
不知火「発電機も新調、経費についてはすべて少佐鎮守府が負担します」
提督「へえ。手厚いこった」
不知火「中将より『准尉をこの鎮守府の提督に任命した少佐の責任である』とのことです」
提督「そういやそうだったな。んじゃあたりめーだ」
66 = 1 :
不知火「そして……その、不知火ですが」
提督「おう」ニヤニヤ
不知火「不知火は中将麾下の艦娘として、平常時は提督鎮守府に勤務、一か月のうち3回は中将の本営まで直参し報告を行う……」プルプル
不知火「月に9日間、この鎮守府を開けることになります……その間は本営にて、中将のもとで訓練を含む活動を行う……」ガクガク
不知火「よ、よいのでしょうか……中将麾下といいますと、聞くところによれば出世コースとか言われているんですが……」ビクビク
提督「ま、せいぜい頑張れや」ニヤニヤ
不知火「こほん。最後に如月ですが」
不知火「本日ヒトサンマルマル、本鎮守府へ移動。間もなく提督准尉麾下の艦娘として正式に配属されます」
不知火「……ようやく、この鎮守府が、活動できる基盤が出来上がりつつあります」
提督「そうか」
不知火「なんというか、感慨深いですね……真新しい鎮守府の始まりの瞬間を、見ることができるのは」
提督「……まあ、別に何もしねえがな。深海棲艦の撃滅とか面倒くせえし」
不知火「し、司令、そのような発言はできるだけ控えていただかないと……その、海軍提督という立場的にも非常に危険です」タラリ
提督「仕方ねえな。ま、適当にやるよ、適当に」
提督「まあ、しばらくは休んでたっていいだろ。妖精にも休みをあげないとな」
妖精「ほんと、大変だったんだからねー? たまたま大将に見つかったのは本当に運が良かったよー」
67 = 1 :
不知火(少佐の鎮守府と中将の本営を結ぶ輸送便の午前の発着がマルキュウマルマル)
不知火(それに間に合うように鎮守府へ到着後、提督の手紙を持った妖精を本営への輸送便に忍び込ませて中将のもとへ届ける)
不知火(できるだけ少佐が今の境遇に困窮していて、提督がそれを気遣う文面の手紙を中将へ読ませればあとは親心)
不知火(提督が、少佐を気遣っていることを内密にしてほしいと書けば、まさしくその通りに誰が手紙を送ったか秘匿してくれる)
不知火(それにしても……妖精さんが海軍大将に見つかって、その結果ここまでことが迅速に動くとは、提督はつくづく運の良い方です)
不知火(中将は、海軍参謀としては有能でしたが……息子には兎角甘い。提督はそれを利用し、少佐を被害者に仕立ててZ提督のみを処断させた)
不知火(少佐にはできるだけ無傷で逃げられる道を作り、傍目には少佐がZ提督を切ったかのように誘導する)
不知火(そうすれば、少佐を頼って甘い汁を吸っていた者たちに不信感を抱かせ、少佐の影響力を削ぐことができる、と踏んでの判断……)
不知火「その……司令。質問よろしいでしょうか」
提督「おう」
不知火「司令は、なぜ私たちにここまでしてくださったのですか? 結果的にうまくいきましたが、あなたの身に及ぶリスクを考えれば躊躇するはずです」
不知火「もし中将に手紙を渡せなかったら? 少佐の予定が変わっていたら? 少佐の手の者が邪魔をしてきたら? 中将が動かなかったら?」
不知火「下手すれば司令ご自身の命にかかわるようなことです。不安要素がたくさんあったにも関わらず、行動に移してくださったのは、なぜでしょうか」
提督「単純だよ。頭に来たんだ、お前らを無碍に扱うあいつらに」
不知火「……そ、それだけ、ですか」
提督「失敗したらお前らの明日もねえのに、見殺しにして俺だけ生きるのも胸糞悪いからな。最悪、刺し違えるつもりだったさ」
不知火「しかしそれではご家族が……!」
提督「へ、俺みたいなのが死んだって悲しむ奴なんざいねえよ。家族なんてお互い顔も見たくねえしな」
68 = 1 :
不知火「……不知火は悲しみます。妖精たちもそうでしょう。そうならなくて本当に良かったと思います」
提督「できれば少佐も営倉へ送って屈辱を味わわせたかったんだけどな。その手も思いつかなかったし、なにより赤っ恥をかかせたくてああなった」
不知火「いえ、不知火には十分な結末です。少佐の嫌がらせはこれからも続くかもしれませんが、少しずつ戦果を挙げて本営に見直しを……」
提督「それなんだがな。お前はこんな仕打ちを受けて、まだ海の平和のために戦いたいのか? 人間なんて俺も含めて碌なもんじゃねえぞ?」
扉< コンコン
不知火「!」
如月「そうかしら? 少なくとも、私は目の前にいる人のために戦いたいとは思うわ?」
提督「ん……如月か? 随分と顔色が良くなったな」
如月「ええ、せっかくここに着任できるんですもの、恥ずかしくない恰好で来ないと司令官の威厳に関わります」ニコニコ
如月「髪の毛だって気合い入れてお手入れしなおしたんですよ? ほら、もうさらっさらなんだから」シャラン
不知火「……見違えるようになりましたね」
如月「そうよ? それもこれも、司令官? あなたのためなんだからね?」
如月「戦果を挙げて、少しでもこの鎮守府の暮らしが良くなるように上に評価してもらわないと、ね」
不知火「ええ、その通りです。この不肖不知火も、尽力致します」
如月「そういうわけだから、司令官? 如月を、末永~く、お傍に置いてくださいね?」
69 = 1 :
提督「ん……ああ」アタマガリガリ
如月「……あら?」
不知火「……もしかして、照れているのですか司令?」
提督「うるせえ」
妖精B「照れてるね」
妖精C「うん、照れてる」
妖精A「照れてるな」
妖精「わかりやすいね」
提督「うるせえ!」ガリガリガリガリ
妖精D「提督! また艦娘が砂浜に流れてきてるよ! 息がある!」
提督「……ったく、またかよ面倒くせえな……どれ、行くか」
70 = 1 :
ということでここまで。
72 :
続きを投下します。
73 = 1 :
* 数日後、執務室 *
通信『うむ。初めてのケースだが、希望通り君に任せることとなった。本当に良いのかね?』
提督「今更ですよ中将殿。この拠点の重要性、人の行き来のないこの立地。モデルケースにするのに丁度良いでしょう」
通信『……わかった。だが、君のような人材が、その島で燻っているのは実に惜しい』
提督「かといって他に適任もいないでしょう。そう思えば、この島に私が送られたのも必然だったのかもしれません」
通信『……? どういうことだね。少佐は、君のたっての希望でその島へ着任させた、と言っていたが……』
提督(あの野郎、やっぱり中将に嘘ついてやがったか……)
提督「そんな記憶はありませんが。ま、今更言っても配置換えは無理なのでしょう? それよりも、少佐はまだ所在がつかめないのですか?」
通信『困ったことにな……ちょくちょく連絡は寄越してくるから、仕事をしていないわけではないんだろうが……』
提督「とにかく、この島には如月と同じ境遇の艦娘がこれからも漂着してくると思われます。都度対応が必要になるでしょう」
通信『う、うむ……こうなった以上は、儂も不知火を通してバックアップしよう。何かあればまた連絡をするといい』
提督「は。ありがとうございます」
通信『ではな。よろしく頼むぞ、提督准尉』プツッ
提督「……」チン
提督「ふん。中将ものんきなもんだ」ノビーッ
74 = 1 :
* 鎮守府内 ロビー *
朧「来ませんよ」
吹雪「いいえ、来てくれます」
朧「来ませんよ!」
吹雪「来てくれます!」
朧「来ません!」
吹雪「来ます!」
提督「……まだやってんのか」
吹雪「来ますよ! 准尉もそう思ってますよね!」
朧「吹雪、公平性を欠くから准尉さんに聞くのはよくないって言ってましたよね?」
吹雪「やっぱり聞いてみないとわからないじゃないですか! 准尉も来ると思いますよね!」
提督「……知らねえよ」
吹雪「准尉も! 来ると思いますよね!」
提督「だといいな」ハァ
吹雪「適当に言わないでください! 本音は!?」
提督「あ? 来るわけねえだろが」
吹雪「准尉!?」
75 = 1 :
提督「馬鹿か手前。お前のご機嫌なんざ知らねえよ、手前に都合いいこと抜かすな」
吹雪「……っ!」
朧「……」
吹雪「朧ちゃん、こんなこと言われて悔しくないの!?」
朧「否定、しませんよ。できないです」
吹雪「否定しようよ! じゃなきゃ……」
朧「……」
吹雪「じゃなきゃあ……!」グスッ
朧「泣くくらいなら、最初から期待しなきゃいいじゃないですか」グスッ
提督「……」
如月「司令官? 不知火が帰ってきたわ……あら、またやってたの?」
提督「ん」
如月「いいわね、元の鎮守府から戻ってこいって連絡がくるかどうか、言い争えるなんて」ポツリ
吹雪「思い出があるんです。希望を、捨てたくないんです。必要だって言われたいじゃないですか!」
如月「……でも、戻ってそれからどうするの?」
吹雪「そ、それは……また、艦隊の役に……!」
提督「立てると思ってんのか。一度沈んだ奴が」
吹雪「そんなの、わかりませんよ! 私は……また出撃できます!」
提督「そうかよ……くそが」チッ
76 = 1 :
不知火「司令、こちらにおられましたか」
提督「ん、ああ。不知火か」
不知火「頼まれていたものです。どうぞ」ピラッ
提督「ん……どれ。ああ、やっぱりな、これですっきりするだろ」
提督「おい、朧、吹雪」
朧「は、はい!」
吹雪「なんでしょうか!」ビシッ
提督「ほれ、今月轟沈した艦娘の報告書」ピラッ
提督「不知火が中将の部下に頼んで写しをもらってきたんだが……朧の鎮守府がこっちで、吹雪はここだな?」
提督「こいつに載っかってきたってことは、お前らもう死人扱いだ。迎えは来ねえ」
朧「」
吹雪「」
提督「もうこれでお前らも無駄な喧嘩しなくてすむだろ。不知火、ご苦労さん」
如月「司令官……」
朧「う、う、ぐす、うぇぇぇえええ……」
吹雪「うああああああんん!」
不知火「……あなたという人は」
提督「……ふん」
77 = 1 :
* 執務室 *
如月「司令官、もう少しあの二人の気持ちも考えてあげたほうがいいわ?」
不知火「不知火も同感です。あのように大上段からバッサリでは、あまりに容赦ないかと……」
提督「いいんだよ。いい加減うるさかったしな」
妖精「……昔の自分を思い出してたくせに」ヒョコッ
提督「うるせえ」ジロ
如月「昔?」
妖精「提督が海軍になったのは士官からのスカウトと、中将の説得があったからだよ」
妖精「それまでは、わたしたち妖精が見えることでずっと変人扱いされてたから、相当荒れてたんだ」
妖精「それが、やっと誰かに必要とされたって喜んだ矢先に、少佐がこの島へ幽閉してくれたからね」
不知火「……なるほど、役に立とうとしても立てない場所に連れてこられたと」
如月「吹雪ちゃんの心境もわかるわけね……でも司令官? それならなおさらあの言い方はないんじゃない?」
提督「だからこそだ。下手な希望持ってたって、ろくな事にはならねえよ。俺が身を以て知ってんだからな」
不知火「……不知火が中将に便宜を図らいます」
提督「やめときな。馬鹿息子絡みならともかく、准尉の俺やいち艦娘でしかない不知火が何か囁いても、海軍の中将が動いてくれるわけねえだろが」
提督「それに俺はお前らにも言ったよな。本人から何をしたいのか聞かない限りは俺は動かねえ、って。気のすむまでしばらく泣かせとけ」
78 = 1 :
提督「それよりも、だ。不知火」
不知火「はい」
提督「多すぎねえか、今月の轟沈艦」パサ
不知火「はい……不知火も、そう思います」
提督「軒並み駆逐艦で、しかも低練度だ。どいつもこいつも何してやがる」ガン
不知火「それなんですが、おそらくは『捨て艦』かと思われます」
提督「捨て艦?」
不知火「今、ある海域にきわめて強力な深海棲艦が現れ、それを打破するための方法が海軍全体で試行錯誤している状態でして」
不知火「その中で生まれた戦い方のひとつが、沈んでも良い艦娘を随伴させ、それを囮にして進軍する『捨て艦』と呼ばれる方法です」
提督「沈んでも良い……ねえ。あいつらもそういう扱いを受けたってか」
不知火「おそらく」
提督「チッ……如月。あの二人を呼んでこい、そろそろ泣き止んだろ」
如月「ええ、わかったわ」
79 = 1 :
今回はここまで。
81 :
続きを投下します。
82 :
朧「朧、入ります」チャッ
吹雪「吹雪、入ります!」
提督「ん。とりあえずお前ら、今の境遇は理解してるか?」
朧「……はい」
吹雪「……」ウツムキ
提督「吹雪は認めたくねえようだが、まあいい。これからお前らはどうしたいか、希望を聞く」
吹雪「そ、それなら」
提督「元の鎮守府に帰りたい、ってのは無理だからな」
吹雪「……っ!」
朧「准尉、質問です。戻るのが無理だと仰るのはなぜですか?」
提督「中将に確認した。一度沈んだ艦娘が再登用されないのはなぜか。答えは簡単、怖いからだ」
朧「……え……?」
提督「科学的根拠はねえ。だが、轟沈した艦娘は深海棲艦になる、というのが海軍の通説だ」
提督「一度沈んだ艦娘を引き取ったら実は深海棲艦でしたー、なんて話になったら嫌だ、っていうのが海軍の中じゃ当たり前なんだとよ」
提督「ドロップ艦と呼ばれる海上で発見される艦娘は、艦として沈む記憶を持っていても、艦娘として沈む時の記憶を持っていないから安全らしい」
吹雪「そ、そんな……!」
提督「実際に昔あったんだと。一度沈んで戻ってきた艦娘が、ある日突然深海棲艦になったって話が。勿論その鎮守府は大騒ぎ、半壊したってな」
83 = 1 :
朧「その話を知っていて、どうして如月さんはこの鎮守府に残っているんですか?」
提督「そりゃ俺がそうするって決めたからだ」
朧「は!?」
吹雪「ええ!?」
提督「如月がここで働きたいっつうんだから、それをかなえてやりたいと思って行動しただけだ。今朝、中将と話を付けた」
朧「許されるんですか? そんなことが」
提督「おう、許してもらったぜ。これで如月もお前らも大手を振ってこの島に居座れる」
提督「あとな、元の鎮守府に戻る方法もないことはないが、お前らの記憶とか大本営で全部『初期化』する必要があるらしい。だよな妖精?」
妖精A「実際に見たわけじゃない。が、一度沈んだ艦娘をそのまま運用するのは危険だって言われてるが故の措置らしい」
吹雪「ど、どうして記憶を消す必要が……!」
提督「轟沈の記憶こそが、深海棲艦になる要因のひとつと言われているからだとよ。まあはっきりわかっちゃいねえらしいが?」
提督「仮に初期化を受けて、戻った鎮守府が元の鎮守府と違ってても、なーんにも覚えてねえから『戻った』とは言わねえよな?」
妖精A「悪い意味で『戻った』とは言えそうだがな」
提督「つうか妖精よぉ、お前らとしてもどうなんだ? この話」
妖精B「初期化の話? わたしたちは知らないよー」
妖精C「うちら装備妖精だもん。結局は噂だし、考えたくはないね」
妖精D「心情的な話をすればやりたくないけど、自分の艦娘が深海化する方が嫌かなー」
84 = 1 :
如月「私は忘れる方が嫌よ? 初期化でいくら体の傷も消えるって言ったって、司令官のことを忘れるくらいなら死んだ方がましだもの」
如月「それに、助けてくれた司令官のためにも、私は絶対に深海棲艦になんかならないし、なったら不知火ちゃんに沈めてもらうわ」ニコー
不知火「さりげなく重いお願いですね」ハァ
提督「これで海軍としての不始末がありゃあ、俺が人身御供になるだけじゃねえだろうしな」
如月「そのときは私も道連れにしてね?」
提督「そいつは遠慮しとく」
如月「もう……照れなくてもいいのに」
吹雪「……」
朧「……」
提督「でだ。改めて聞くぞ、これからお前らはどうしたい?」
吹雪「……」
朧「……」
吹雪「……私は、元いた鎮守府に帰りたいと思っています。でも、記憶を失ってまで帰りたいわけじゃないです」
吹雪「記憶を持ったまま、深海棲艦にならない方法を見つけて、それから帰りたいです……!」
吹雪「それでも帰れないなら、見てもらいたい……! 前の司令官に、吹雪は、こんなに強くなったって!」
朧「朧は……まだ、どうしたいのかわかりません」
朧「……だから、答えを見つけるまで、ここで……この鎮守府のために働きたいと思います」
朧「一度沈んだ朧が、生き残った理由を、知りたいんです……そんな理由でも、いいんでしょうか」
85 = 1 :
提督「いいんじゃねえの? 困ったらまたその都度考えればいい」
提督「つうわけで、如月! 吹雪と朧の登録手続き、任せたぜ」
如月「うふふ、了解よ、司令官」
提督「しかし、不思議なもんだ。どうして吹雪はそんなに元の鎮守府に帰りたがってんだか」
如月「きっと、忘れたくない思い出があるのかもしれないわ。生まれた場所だったとしたら、なおさらじゃないかしら?」
提督「そんなもんかね……如月もそうなのか?」
如月「ううん、私は司令官と一緒よ? でも、結果的に私はあなたの傍がいいって選ぶことができたんだもの。幸せだわ」
提督「……」ナデ
如月「きゃ!? ……うふふふ」ニコー
提督(俺もやきがまわったな……)
・艦隊に、朧と吹雪が加わりました。
朧「なんだか、うまく乗せられた気がするけど……」
吹雪「ふふっ、いいじゃないですか! 目標もできたことだし!」ノビーッ
吹雪「よーっし、これから頑張るぞーーっ!」
朧「……まあ、いいか。ふふふ」
不知火「お喜びのところ恐れ入ります、早速お手伝いをお願いしたいのですが」
86 = 1 :
* 北東の砂浜 *
不知火「……」ナムー
吹雪「……」
朧「……」
提督「……ったく、くそが」
妖精A「半年前よりはましだが……一日でこんなになるかよ」
如月「いくらなんでも酷いわね……」
(打ち上げられた大勢の艦娘の残骸)
提督「やれやれ……」
妖精B「もう見たくなかったけどね、こんな光景」
吹雪「なんか、早くもくじけそう……」グスッ
朧「うん……」グスッ
如月「! 司令官、ほら、あそこ! あのうずくまってる人!」
提督「ん、どうした如月」
由良(大破)「……いな、づま……ちゃん……」
朧「! まだ生きてる人が!」
吹雪「し、司令官!」
87 = 1 :
提督「なんだ、俺が行くのか? しょうがねえな」
吹雪「し、しょうがねえ!?」ガーン
不知火「いつものことです、お気になさらず」
朧「いつものことって……」ヒキッ
提督「……」ザッザッザッ
由良「ねえ……いなづまちゃん、どこ……!?」キョロ キョロ
提督「……おい」
由良「! お願い、一緒に、探して……あの子、由良と、一緒に大破して……」
吹雪「て、手伝いましょう、司令官!?」
提督「そうだな、手伝うか」
朧「……やけにあっさりというか、すんなりお願いが通りましたね」
提督「ん? こいつがちゃんと『お願い』してるからな」ユラユビサシ
吹雪「そういう基準なんですか……」
提督「ただ、俺はいなづま? ってやつの特徴がわからねえ」
不知火「でしたら司令、浅瀬の艦娘を手当たり次第引き揚げていただけますか」
提督「……こうか」グイッ ザボァ
吹雪「ひぃぃい!?」ビクーッ
朧「く、首がない……!?」ビクーッ
提督「……こいつも埋葬してやらなきゃな」
88 = 1 :
如月「と、とりあえず特III型じゃないみたいね……司令官、ローマ数字の3のバッジがついた子を探してくれる?」
提督「ローマ数字……」キョロキョロ
ポコ ポコポコッ
提督「泡? もしや……こいつか」グイッ ザバーッ
電(大破、失神)「……」
全員「「「その子です!!」」」
提督「よし、こいつだな」イナヅマヒックリカエシ
吹雪「?」
提督「ふんっ!」ストマッククロー
電「げぼがばべ!?」カイスイゲボー
全員(((うわああ……)))
電「お、おげっ、っ、げほ、げほっ! ……ぅ、ぅぇ……?」
由良「いなづまちゃん……!」
電「……ゆ、ら、さん?」
由良「!! よ、かっ……」バタッ
朧「由良さん!?」
提督「ドックに入渠させるぞ。駆け足!」
89 = 1 :
今回はここまで。
90 :
徐々にちゃんとした戦力が備わり始めてるな。練度も一定以上あるだろうし
91 :
資材使わす艦娘ゲットでウハウハやな
92 :
>>91
海域で拾ってませんがドロップ艦みたいなものです。正確にはドロップアウト艦(提督も)。
では続きです。
93 = 1 :
* 修理ドック *
不知火「轟沈艦のリストを見ると、この二人は、この鎮守府の出身と思われます」
提督「B提督の鎮守府か。こいつらも捨て艦か?」
不知火「軽巡の捨て艦は珍しいですね。おそらく無理を押しての大破進軍かと」
提督「とにかく、こいつらも轟沈リストに載ってるんなら、どうしたいか聞かにゃあな」
不知火「ところで司令。先程FAXでこのようなものが」ピラッ
文書『明朝0900、提督准尉鎮守府に2隻の軽巡洋艦が着任予定。準備されたし 中将』
提督「なんだこりゃ。この鎮守府に艦娘が送られてくるってえのか……?」
不知火「……そのようですね」
提督「……なーあ不知火? この鎮守府にわざわざ送られてくる艦娘ってのは、どんな奴だと思う?」
不知火「……いやらしい言い回しですね」
提督「くくっ、眉間にしわ寄ってんぞ」
不知火「……っ」
提督「ま、『そういう連中』なんだろうな。俺もお前と同じ感想だよ、そう腐んな」
94 = 1 :
* その日の夕方、執務室 *
トントン
由良「失礼します」チャ
電「失礼します、なのです」
提督「よう、目を覚ましたか」
由良「はい、助かりました。ありがとうございます」
電「あなたがこの鎮守府の司令官さんですか?」
提督「一応な。提督准尉だ」
由良「私は長良型軽巡4番艦、由良」
電「特3型駆逐艦、電なのです」
提督「B提督鎮守府の所属だな?」
電「電の司令官さんをご存知なのですか……?」
提督「いいや。昨日、うちの不知火が本営で今月の轟沈艦リストを貰ってきた。その中にお前らの名前があったんでな」
電「……ということは」
提督「B提督の鎮守府からは除籍扱い、つうことになるな」
電「……」
由良「電ちゃん……」
95 = 1 :
電「電の力不足だったのです」ションボリ
由良「そ、そんなことないわ! そもそもあんな艦娘の運用方法自体、無理があったのよ!」
電「でも……」
提督「反省会は後でやってもらえるか? 俺は、今後お前らがどうしたいかを知りたい」
由良「今後?」
提督「このリストに載ったからには元の鎮守府に戻れねえ。これからどうすんだ、って話だよ」
電「ええと……この島には、電たちのように流れてくる艦娘が多いのですか?」
提督「多いぞ。お前らみたいに生きて流れ着く奴は稀だがな」
電「……」ゾッ
由良「も、もしかしてこの鎮守府の艦娘って、みんなそうなの?」
提督「みんなもなにも4人しかいねえが……不知火以外はそうだな」
由良「……」カオヲ
電「……」ミアワセ
提督「で、どうすんだ? まあ、時間はあるから今すぐ決めろとは言わねえが」
由良「でも、選択肢なんてないも同然でしょ? 少なくとも、由良はもうあの鎮守府に戻る気はないわ」フゥ
電「……電も、そうなるのです」シュン
96 = 1 :
由良「かといって当てがあるわけでもないし……良かったら、この鎮守府に置かせてもらえないかな」
提督「好きにしな。仲違いさえしなきゃ、俺は構わねえ」
電「……あの、電も、よろしいのですか?」
提督「おう。その代わり、ここはここでいろいろ不便だから覚悟しとけよ。まあ、明日の朝にでも登録手続きはしておく」
電「由良さん……良かったのでしょうか?」
由良「良かったって……?」
電「電は、初期艦として、あの司令官さんと一緒に頑張ろうって思っていたのです」
電「でも、あの人は戦果にしか興味を持たないで、第一艦隊の人たちだけを優遇し続けてきたのです」
電「ほかのみんなを蔑ろにして、誰が沈んでもお構いなし……」
電「電が、もっと厳しく言っていれば……」
由良「それはきっと無理よ。あれがあの人の本性だったか、そういう風に変わってしまったか、よ」
由良「電ちゃんが頑張っていたのはみんな理解してる。でも、もう済んでしまったこと……もう、由良たちには何もできないわ」
由良「そういう意味では、由良も悔しいんだけど……ね」
電「由良さん……」グスン
・艦隊に、由良と電が加わりました。
97 = 1 :
* 翌朝 食堂 *
由良「まさか間宮さんもいないなんて……」
電「朝ごはんを自分で作って自分で片付けるなんて久しぶりだったのです」
吹雪「司令官、お料理の手際良かったなあ……」
朧「そうだ、今度教えてもらえませんか?」
提督「あぁ? 面倒くせえ」
全員「「「「酷い!」」」のです!」
提督「そんなことより如月」
如月「はーい?」
提督「今日は今日で軽巡が2人来るって予定だったが、動きは?」
如月「もう船が沖に見えてるわ、ほら(双眼鏡差し出し)」
提督「……あれか」
如月「昨日、中将に連絡を取ったんでしょう?」
提督「一人は中将の部下が相談にきて、うちに移籍させられないかと申し出てきたらしい。非戦闘要員らしいが」
如月「……となると、明石さんか大淀さんかしら」
提督「もう一人は少佐の部下が申し出てきたんだと」
如月「少佐の!?」
提督「嫌な予感しかしねえんだよな……ったく」
98 = 1 :
今回はここまで。
99 :
続きを投下します。
100 = 1 :
* 鎮守府 埠頭 *
船員「急げ!」
ドタバタドタバタ
船員「おい! 鎮守府の司令官はどいつだ!」
提督「……俺だが」
船員「積み荷の明細だ!」ポイッ
提督「……」ペシッ ポトッ
船員「ったく、遅えんだよ。邪魔だ、どけ!」
提督「……」ムカ
朧「なにあれ。書類を投げつけてくるなんて、何様のつもり?」
提督「さすがは少佐の子飼いの部下だ、よく躾けられてやがるぜ」
不知火「(書類を拾い上げながら)ええ、本当に」
吹雪「み、見てください、あれ!」
ガタッ キィィィ…
(頭も含む全身を拘束衣に包まれて車いすに載せられたまま、船員たちに運ばれる艦娘)
提督「おいおい……なんの真似だよ。ここまでするか?」
不知火(さすがの司令も露骨に嫌悪してますね。無理もありませんが)
如月「本当、酷い扱いね……」
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