私的良スレ書庫
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元スレエリカ「入れ替わってる……!?」 みほ「貴女の名は」
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ズドムッ
逸見車操縦手「撃ってきたぁ!」
逸見車装填手「ってそりゃそうだ!」
エリカ「ええい撃ち返して!」
エリカ「あんな失敗兵器、さっさとスクラップにしなさい!」
逸見車砲手「え?」
エリカ「何よ!」
逸見車砲手「あ、いや……」
逸見車砲手(最近親しみやすくなったとはいえ、やっぱまだ怖いっていうか何ていうか……)
逸見車砲手(まあ、うちは上下関係厳しくて、車長の言うことだもんね……)
逸見車砲手「了解でーす」
ズドムッ ズドムッ
エリカ「何やってるの、失敗兵器相手に!」
逸見車操縦手「あっっぶ!」
逸見車通信手「失敗兵器のわりにめちゃくちゃしっかりしてないあれ!?」
エリカ「あんのクソチートメカニックどもめ……!」 ギリッ
エリカ(砲手や戦車乗りの技量は凡骨そのものでよかったけど……)
エリカ(あのメカニック能力は脅威だし、不気味)
エリカ(さっさと落として駆けつけないと……)
エリカ(あの子のこと、まだ何か策を弄してくるかもしれないっ……!)
エリカ「隊長、我々が行くまで待っていて下さい!」
エリカ(隊長が不覚を取るはずなんてない……ないけど……)
エリカ(でも……二人で戦わせるなんてことはできないっ!)
エリカ「撃て!」
エリカ「総攻撃であの失敗兵器をただの鉄屑に変えてやるのよ!」
ズドンズドン
シュポッ
『大洗女子学園、ポルシェティーガー、八九式中戦車、走行不能!』
エリカ「!」
エリカ(よし、赤星も上手くやってる!)
エリカ(これで仲間を使った戦術はもう使えない)
エリカ(フラッグ車を囮にして策にはめる常套手段は封じたわよ!)
エリカ(あとは策を弄す暇がないよう、物量で押し切るッ!)
エリカ「突撃ッ!」
エリカ「中央広場へ急げ!」
逸見車操縦手「ポルシェティーガーが邪魔で通れません!」
エリカ「ッ!」
逸見車砲手「……」
エリカ(この顔……この娘、まさか気付いて……)
エリカ(じゃあ何で言わな――)
エリカ(いや……仕方がない……車長の言うことは本来は絶対)
エリカ(車内であんなに意見がバンバン出されて採用される大洗こそ異常なのよ)
エリカ(これは気付けなかった私の失態ッ……!) ギリッ
エリカ(あんな馬鹿でかい鉄屑、邪魔になるって分かっていたはずなのにっ……!)
エリカ「回収車急いで!」
レオポンさんチーム「「ゆっくりでいいよ~」」
エリカ「……ッ」 ギリィ
エリカ(不味い不味い不味い)
エリカ(こうしている間にも、あの子と隊長が一騎打ちをしてしまっているっ……!)
エリカ(何とかしないと……何とか……)
小梅『逸見さん』
エリカ「切るわよ」
小梅『わーっ、待って待って』
小梅『状況を聞いてて、大丈夫かなって心配してるんだから』
エリカ「るっさいわね!」
エリカ「ちっとも大丈夫なんかじゃないわよ!」
エリカ「回収車まだなの!?」
逸見車通信手「わ、わかりません~」
逸見車砲手(うー、めちゃくちゃカリカリしてる……)
逸見車操縦手(何でそんなに追い込まれてるんだろ、隊長なら大丈夫だろうに……)
逸見車通信手(赤星さんに助け求めてよかったかもしれない……矛先こっち来なくなるし……)
小梅『何だかすごく焦ってるみたいだけど……』
小梅『そんなに隊長が心配?』
エリカ「当たり前でしょ!」
エリカ「アンタとあの子のせいで10連覇が途絶えて、隊長や私達の肩にどれほどのものが乗っかってると思ってるのよ!」
小梅『……』
エリカ「あっ……」
エリカ「その……」
エリカ「……」
エリカ「でも事実じゃない」
エリカ「万が一でも負けるわけにはいかないの!」
エリカ「隊長のため、黒森峰のため!」
エリカ「それに、私自身のためにも!」
小梅『……素直に謝るのも大事だと思うけど』 ポソ
エリカ「……何よ」
小梅『まあいっか、これからまた怒られるかもしれないこと言うし』
エリカ「は?」
小梅『……そんなに想ってるならさ』
小梅『そんなに焦っているなら――手段、選んでる場合じゃないんじゃないかな』
エリカ「……そりゃあ、わかってるわよ」
エリカ「でも、回収車を待つ以外に手段が――」
小梅『私達はそっちに行けないから何も手助けできないけど、そっちはポルシェティーガーに落とされず全車輌無事なんだよね』
エリカ「当然よ」
小梅『じゃあさ、出来るんじゃないかな』
エリカ「?」
小梅『ほら、マウスがやられたっていう』
小梅『味方の戦車を足場にして、相手の戦車に乗り上げるやつ』
エリカ「……!」
エリカ「……」
エリカ(確かに……大分キツイけど、できなくはない)
エリカ(アイツを乗り越えて先に進めば、回収車を待たずとも……)
小梅『どうするかは、逸見さん次第だよ』
小梅『……何を重んじたいのか、自分の心に従ったほうがいいとは思うけどね』
小梅『……私はそれが出来ず、学校の方針だとか、常識だとか世間の目だとか、そういう物差しで色々考えちゃったから』
小梅『だからさ』
小梅『どうせどっちを選んでも引きずる可能性があるなら』
小梅『自分がいちばん信じたい道を、一番やりたいことをやるのがいいんじゃないかな』
エリカ「……」
エリカ「ふん、そんなこと、言われるまでもないわよ」
小梅『もう、素直じゃないなあ』
エリカ「……」
エリカ「ありがと……」 ポソ…
小梅『え、なに? 聞こえなかったけど』
エリカ「なんでもないわ」
小梅『待ってもう一回言って! 録音するから』
エリカ「聞こえてンじゃないの!」
エリカ「ったく、切るわよ!」
エリカ「……」
エリカ(私は西住流が大事)
エリカ(でも……それ以上に隊長が大事)
エリカ(私にとっての西住流は、あの人そのものだ)
エリカ(例え私が何をしてしまおうと、あの人さえ無事で勝利を飾れたなら、それでいい)
エリカ(それで西住流の名は守れるし、この学校だって復権できる)
エリカ「戦車前進!」
逸見車操縦手「え!?」
エリカ「味方を踏み台に奴を踏み越える!」
エリカ「隊長の元に馳せ参じるわよ!」
ギャリギャリギャリ
逸見車通信手「アンタ達強引だって、ってクレーム来てますけど」
エリカ「無視!」
エリカ「学園艦単位で鏡でも送ってあげなさい!」
逸見車操縦手「やった、乗り越えた!」
逸見車通信手「あ、逸見さん、狭いから中に入らないと危な――」
エリカ「かまわないわ!」
エリカ「戦車内は特殊カーボンで守られてるのよ、気にせず全力疾走よ!!」
逸見車通信手「戦車内だけなんだけどな……」
逸見車操縦手「ああもう、どうなっても知りませんよ!」 ブロロロロロロロ
エリカ(急げ急げ急げ急げ急げ!)
エリカ(あの子が奇策で万に一つの奇跡を呼び寄せる前にっ……!)
逸見車装填手(どうして逸見さん、あんなに必死な顔なんだろう……隊長なら私達抜きでも負けないだろうに……)
エリカ「今行きます、待って下さい隊長ッ!」
逸見車通信手(天井ギリギリすぎて下手に盛り上がりとかあったら逸見さんの頭がすりりんごみたいになりそう……)
エリカ「……っ!」
出来るだけ飛ばしてきた。
もっと早く、赤星に言われる前に気付けたら、或いは間に合えたのかもしれなかったけど。
エリカ「隊……長……」
でも――そんな仮定は、無意味である。
分かっていても、思わずにはいられない。
きっと赤星も、あの滑落について何度も何日も無意味な仮定を思い描いたのだろう。
『黒森峰フラッグ車、走行不能』
着いたときには、全てが終わっていた。
文字通り、終わっていたのだ。
試合も、黒森峰の栄華も。
土煙が晴れ白旗が見えると同時に、耳障りなアナウンスが聞こえてきた。
『よって、大洗女子学園の勝利!』
時間が時間なので一旦終わります。1周年を迎えることだけは避けたい。
事前に大洗を見て柔軟な発想と常識外れな行動するとまでは分かったとしても
流石に合体攻撃でマウス撃破したりM3がジャイアントキリングしたりとか夢にも思わないと思うの
流石に合体攻撃でマウス撃破したりM3がジャイアントキリングしたりとか夢にも思わないと思うの
M3のジャイアントキリングなんて、みほの指示ですらないもんなあ
大洗の身内だとしても、うさぎさんの成長具合に驚けるわあれ
大洗の身内だとしても、うさぎさんの成長具合に驚けるわあれ
こういうスレって、一区切りついたら一旦スレ落として劇場版の方は2スレ目としてやるのがメジャーなのだろうか
それとも行けるとこまで行って埋まってから次スレにするのがメジャーなのだろうか
投下します
それとも行けるとこまで行って埋まってから次スレにするのがメジャーなのだろうか
投下します
エリカ「……」
まほ「……」 カツカツカツ
エリカ(何を、言えば……)
エリカ(謝罪? あの子とタイマンにさせたことへの?)
エリカ(それを隊長は受け入れるか?)
エリカ(いや、でも、実際に私が不甲斐ないせいで、黄金時代になるはずが、二年連続のV逸……)
まほ「……」 スッ
エリカ「あ……」
エリカ(何も……言えなかった……)
エリカ(涙も流さず、しっかりと前を見ているその姿……)
エリカ(きっと、私には想像もつかないレベルで反省と次を見据えた思考をしているんだろう……)
エリカ(あの人達に追いつくには、それが必要……)
エリカ(泣いてる場合じゃない……)
エリカ(他の子達みたいに無様に下を向いて、泣いてる場合じゃ……) ジワッ
小梅「残念だったね」 チーーーーーン
エリカ「おわーーーーーっ!」 ドゴッ
小梅「ふ、振り向きザマにナイスエルボぅ……」 ハナヂダバー
エリカ「うっ、わ、悪かったわよ……つい……」
エリカ「つーか何よさっきの」
小梅「えーっと、万が一負けたときのためにと思って」
小梅「仏具店で、チーンって鳴らすやつと、ポクポク叩くやつを」
エリカ「何でそんな飛び切り不吉かつ不要なモンを準備してんのよ」
小梅「負けた時しんみりした空気が和むかなーって」 チーンチーンチーン
エリカ「やかましいわ!」
小梅「でもトライアングルの音色とか、こういう音色ってちょっと心が穏やかになるらしいよ」 チーンチーンチーンポクポクチーンポクチーンポチーンポク
エリカ「木魚を混ぜてリズミカルに叩くんじゃないわよ」
小梅「でもこう、買ったあと皆で遊んでたら、難しいレベルの太鼓の達人『夏祭り』なら木魚で叩けるようになったんだよ」 ポクポクポクポクポクポクチチチン
エリカ「何バカみたいな努力に時間費やしてンのよ!」
逸見車装填手「……」 プルプル
エリカ「ほら! さっきまで泣いてたアホがちょっと笑いこらえ始めてるじゃない!!」
エリカ「ったく……アンタまじここ最近で急に変なことになってきてるわね……」
エリカ「こういう時、真っ先に泣いてトイレに篭りそうな子だったのに」
小梅「あはは……」
小梅「まあ、最近急に変になった度合いなら逸見さんの方が上だし……」
エリカ「ぐっ」
小梅「それに、今年は負けて悲しいのも、きっと逸見さんの方が上だと思うから」
エリカ「……」
小梅「なんだかんだで私は逃げ回っちゃった時期も長いけど、逸見さんは去年負けてからすぐ未来を見据えてたでしょ」
小梅「それに、私達の中で誰よりも優勝旗奪還への情熱を持っていたから」
小梅「……だから、放っておくと、まともに悲しんだり怒ったり出来ないんかもって」
エリカ「……何よソレ」
小梅「去年さ」
小梅「……いつまでも私とみほさんの失態に拘って、終わったことに縛られ続けて皆が前に進めなくなっていた時期、あったじゃない」
小梅「でも逸見さんは、隊長の背中を追いかけて、未来を見ていて」
小梅「……ものすごーく厳しいし、誤解されそうな形だったけど、私やみほさんのお尻を叩いてくれたよね」
エリカ「……別に。リベンジのためにも、いつまでもウジウジされてたら目障りだっただけよ」
小梅「誤解されてもしょうがないどころか恨んだとしても逆恨みじゃなく正当な恨みだよなってくらい厳しかったけど」
小梅「その結果みほさんは黒森峰を辞めちゃったみたいなところもあるけど」
エリカ「な、なによ、それはあの子が弱かったからでしょ!!」
小梅「まあ、でも、逸見さんなりに励ましてくれてたわけだし」
小梅「おかげで皆同じ所にウジウジとどまらずに済んだのは事実だもん」
小梅「私は逃げてたところからちょっとだけ前に踏み出せたし」
エリカ「今思うと一生閉じこもってもらうべきだったわ」 ハァ
小梅「みほさんも、逃げ出しちゃったけど」
小梅「……でも、閉じこもって足踏みせずに逃げたからこそ、今のみほさんが居るんだもんね」
小梅「やっぱり、逸見さんのおかげっていうのも、ちょっとくらいあると思うよ」
小梅「ポカリスエットの果汁くらいは」
エリカ「分かりにくいけど少なそうってことは理解したわ」
小梅「まあ、そんなわけで、間違ってるかもしれないけど、私は私なりに今年は逸見さんに恩を返そうかなって」
エリカ「受取拒否で返品したいわ」
小梅「それにほら、今年は私戦犯じゃないっていうか、私自身は良かったし」 フンス
エリカ「アンタそれを私の前で言うか」
小梅「うん。去年はそれを言われるサイドを一身に背負ってたから」 フフ
エリカ「ったく……」
小梅「……泣くでも腹立つでも呆れるでもさ」
小梅「なんでもいいから、その、想った気持ちを受け入れて、発散するって、大事なことだと思うよ」
小梅「隊長みたいにすぐ切り替えて前を向きたいのは分かるけどさ」
小梅「逸見さんは隊長じゃないんだし……」
エリカ「……そんなこと、わかってるわよ」
小梅「憧れの背中を追い続ける所、私は好きだよ」
小梅「でも――」
小梅「無理をして気持ちを押し込めて、整理も出来てないのに出来てる顔して追いかけてたら、いつか躓いちゃうよ」
エリカ「……そうね」
エリカ「それは、そうかもしれないわ」
エリカ(まだ……やっぱり、色々思うことはあるものね……)
小梅「だから、泣いてもいいし、怒ってもいいんだよ」
小梅「ハンバーグを吐いてもいいし」
エリカ「2・3発殴ってもいい?」
小梅「それはだめ」
エリカ「ふん、じゃあいいわ」
小梅「……泣きたくなったら言ってくれたら、直下さん達とどこか出かけるくらいするからね」
エリカ「……はいはい」
エリカ「……」
エリカ「ま、一応感謝はするし、頭の片隅にくらい置いておいてあげるわ」
エリカ「さ、皆顔を上げて」 パンパン
エリカ「泣くなら黒森峰に帰る途中か、帰ってから泣きなさい」
エリカ「……会場には、今年の黒森峰を支援してくれた人達もいる」
エリカ「せめて最後まで格好つけて、強豪らしくここを去るわよ」
逸見車砲撃手「……うん」 グスッ
ドドメ色星「記念に土を持って帰ろう」 グスッ
黒星「うう……この土を見る度に、これからこの大会を思い出すんですね……」 グスッ
小梅「あ、記念に地面スレスレのローアングルから土集めてる写真撮ろうか?」
エリカ「やめなさい」
エリカ「ほらさっさと乗り込んだ乗り込んだ」
小梅「もうすっかり復活しちゃって」
エリカ「……泣くのは自室でって決めてンのよ」
小梅「へー」 ニヤニヤ
エリカ「……大体運転するのは私の役目なんだから、涙で視界をぼやかせるわけにもいかないでしょ」
小梅「確かに」
小梅「ぼやけた視界で川に落ちて事故か自殺かなんて言われたら最悪だもんね」
白星「そして助けに来る元副隊長」
直下「しかしそれは現隊長・逸見エリカの狡猾な罠だった」
エリカ「置いてくわよアンタら」
ブロッケンJr「まあそうカリカリするなよ」
ブロッケンJr「一本吸うか?」
エリカ「ちょ、何問題になりかねないモンを――」
ブロッケンjr「毒ガス」
エリカ「吸わないわよ! 想定より数倍ヤバいもんだし何歳になっても吸ったらダメなヤツよそれ!」
ブロッケンjr「はっはっは、ちょっとしたジャーマニージョークさ」
エリカ「アンタまじ鉤十字のアイコンといい、いつか退学させられるわよ」
まほ「待たせたな」
エリカ「いえ!」
エリカ「隊長でしたら何年でもお待ちできます!」
まほ「はは」
まほ「私もエリカならどのくらいでも待っていられるよ」
エリカ「えっ……」 トゥンク
まほ「まあ、さっきは待てずにみほと戦り合って、無様に負けてしまったんだけどな」 ハハ
エリカ「え、あ、はは……」 ズーン
まほ(……しまった、失言だったか)
まほ(引退した後じゃ何もしてやれないし、何とかこの敗戦を引きずりすぎないよう小粋なジョークで和ませようと想ったのだが……)
まほ「あー」
まほ「こうして荷台に人が敷き詰められていると、まるで捕虜か人身売買のようだな」
まほ「これが戦車道でなく戦争だったら、このまま奴隷市場に運ばれていたのかもな」 ハハ
エリカ「は、はあ……」
まほ「……」
まほ(あまり笑いに詳しくない私にでも分かる。これはドン引きの空気というやつだ)
まほ(助けてくれ安斎。お前どうやって毎回毎回もりあげてたんだ。お前すごかったんだな安斎……)
まほ(誰か助けて……)
エリカ(ど、どうしよう、空気が完全に凍りついた……)
みほ「お姉ちゃん」
まほ「!」
エリカ「!」
みほ「……」 トテトテ
まほ(救世主だ……)
エリカ(助かった……)
まほ「優勝おめでとう」
まほ「……」
まほ「完敗だな」
エリカ「……」
エリカ(そう、完敗)
エリカ(あれだけ戦力差があったのに、あと1輌まで追い詰めたのに)
エリカ(まんまと策にハマって分断されて、フラッグ車とタイマンに持ち込まれて)
エリカ(そして――誰より強い隊長が負けて、試合が終わった)
エリカ(言い訳不能なくらいの完敗)
まほ「……」 スッ
みほ「……!」 パァァァァ
エリカ(握手、か……)
エリカ(不思議な気持ちだわ……)
エリカ(かつて夢見た光景のはずなのに、どうしてこう、胸がざわつくのかしら)
エリカ(……あの場に、私は混ざれないからかな)
エリカ(まだ、実力面でも、人間としても、あそこに混ざるに相応しい存在になれてない)
小梅(……)
小梅(地上最強の姉妹喧嘩、ここに終結ッ!!)
小梅(とか言う空気じゃないよね、これ……黙って見ておこ……)
まほ「……」
まほ(掌にメッセージでも書こうと思ってやったんだが、なるほど握手か……)
まほ「……」 ニギニギ
まほ(大きくなったな……)
まほ(私の見ぬ、ほんの数ヶ月で……)
まほ「みほらしい戦いだったな」
まほ「……西住流とはまるで違うが」
エリカ(……そう、西住流とはまるで違う)
エリカ(でも――強かった。隊長が、認めるくらい)
みほ「そうかな?」
まほ「そうだよ」
エリカ「……」
エリカ(本来は色々思うべき所があるはずなのに、余計なものが頭をよぎるし、ネットサーフィンのしすぎも考えものね……)
エリカ(日常会話にしれっと潜むネットスラングやAAネタみたいなので笑いそうになるし、そりゃ口数も少なくムスッとするしかなくなるわよ……)
みほ「……あ」
優花里「……」
エリカ「……」
エリカ(最初はただのオタクだったのに、気付いたらあの子の信頼を誰より得ていた……)
エリカ(黒森峰とは毛色が違うけど、確かに戦車の知識は豊富だった)
エリカ(……もっと、あの天パにも警戒すべきだったわ)
華「……」
エリカ(……あのそこそこ突っかかってきたバカ食いロング)
エリカ(意味の分からない発言も多いくせに、射撃能力だけは高かった)
エリカ(アイツさえいなければ、隊長だって落とされなかったかもしれないのに)
エリカ(……射撃の腕ならウチの平均も相当高いけど、無茶な状況で撃たされ慣れてるから、動じないしどんな場面でも安定してるのよね)
エリカ(ムカつくけど……学ぶことはあるわ)
麻子「……」
エリカ(眠そうなカチューシャ女……)
エリカ(あの子のドライビングテクニックは天性のものだし、変な勘は鋭いし、ムカつくけど天才だわ)
エリカ(……うちにだって、あそこまでの者はいない)
エリカ(でもそれだけに、あれだけ突出してたら足並みは揃えにくいはず)
エリカ(……動転せず、高いレベルで統率された隊列を維持できていれば、あるいは……)
沙織「……」
エリカ(ゆるふわスイーツ脳ビッチ……)
エリカ(私個人としては大嫌いだけど、でも、あんなヤツがあの子の心を解きほぐしたのよね……)
エリカ(……)
エリカ(私も、ああなれていたら、何かが変わっていたのかもしれない)
エリカ(でも……)
エリカ「私は、ああはなれないし、なりたいとも、思えなかったものね……」 ボソ
みほ「……じゃあ、行くね」
まほ「……ああ」
小梅「……」 チラ
エリカ「……」
エリカ(そんな目されなくても、わかってるわよ……)
みほ「……お姉ちゃん」
まほ「ん?」
みほ「やっと見つけたよ」
みほ「……私の戦車道!」
エリカ「……!」
エリカ(戦車道、か……)
エリカ(あの子の戦車道は、黒森峰にはなかった……)
エリカ(……分かってたけど、あの子は大洗で、見つけたのよね……)
エリカ(……Ⅳ号として傍にいたから、そんなこと分かっていたはずなのに)
エリカ「……」
エリカ(何にどうして、こんなにチクリと胸が痛むのかしら)
エリカ(傍にいれなかったから? 道を違えたから?)
エリカ(……置いて行かれたような気がするから?)
エリカ「……」
エリカ(黒森峰の、西住流の戦車道こそが、最強だって思っているのに)
エリカ(なのに、なんで、遅れを取っているかのように思えるんだろう)
エリカ「……ああ」
エリカ(そうか――)
エリカ(私はただ、黒森峰と西住流に憧れているだけだからだ)
エリカ(私は、まだ――あの子と違って、自分の戦車道というものを、見つけられていないんだ……)
まほ「……うん」
エリカ(ああ、クソ……)
エリカ(どんどん思い知らされる)
エリカ(自分が、決して特別な強者じゃないことを)
エリカ(まったく、穴があったら入るどころか、世界中の人間を穴に埋めてやりたい気分だわ……)
エリカ「……次は、負けないわよ」
エリカ(でも――)
エリカ(こんなところで、くじけてなんてやるもんか)
エリカ(私だって……ちっぽけな意地はある)
エリカ(あの人に、アンタに、並び立ちたいんだ)
エリカ(まだ、ふわっとしたものしかないけど)
エリカ(でも――)
みほ「……はいっ!」 ニコッ
エリカ(いつの日か、その背中に追いつきたい)
エリカ(あの日、Ⅳ号として共に歩いたときのように)
エリカ(今度は――“逸見エリカ”として、並び立ちたいっ……!)
しほ「……」
しほ「……」
しほ「……ふっ」
しほ「……」 パチパチパチ
しほ「……」 パチパチパチ
しほ(今なら、素直にみほに拍手を送れる)
しほ(誰も見ていないから、というのもあるけれど)
しほ(……そういう意味じゃ、今は一人でよかったのかもしれない)
しほ(でも、それはそれとして……)
しほ「……完全に置いて行かれたわね、私……」
朝早いのを思い出したので、もうちょいでテレビ編終わるとこですが切り上げて一旦投下を終えます
赤星車になるのもいいなあ
開幕カールにぶちのめされるのも逸見らしい
開幕カールにぶちのめされるのも逸見らしい
結局どっちにするのがええんや……
とりあえずもう数レスでテレビ編は終わりなのでそれだけ投下して寝ます
とりあえずもう数レスでテレビ編は終わりなのでそれだけ投下して寝ます
ブロロロロロ
エリカ「隊長」
エリカ「……よかったんですか、置いてきてしまって」
まほ「ああ」
まほ「お母様は、まだ当分戻ってこられないだろうしな」
エリカ「そうなんですか?」
まほ「……あれだけの期待がかかっていたのに、2年連続で優勝を逃した」
まほ「鳴り物入りで早期に隊長職についた、実の娘が、だ」
まほ「……様々な批判も出ている頃だろうし、頭を下げ、またしっかりと弁明するのに追われるだろう」
小梅「……2位だって、十分凄いのになあ」 ポソ
エリカ「あんたね、聞こえたわよ」
小梅「え、あ、ごめんなさい……」
まほ「いや、いいさ」
まほ「……実際、二位になれただけ、胸を張ってもいい」
まほ「それだけ、周りのレベルも上がってきている」
エリカ「……」
まほ「だが……それでも……」
まほ「私達は、王者であることを、求められていたんだよ」
エリカ「……」
エリカ「隊長、その……」
エリカ「本当にすみませんでした……」
エリカ「誰より黒森峰が強くなくちゃいけないって思っていたはずなのに、ちっともお役に立てず……」
まほ「そんなことはない……」
まほ「が、もし、本当にそう思っているなら」
まほ「……来年は、こうならないように頑張ってくれ」
まほ「来年はみほ達のチームも健在なようだから、難しいだろうが」
エリカ「いえ……」
エリカ「絶対に……来年こそはっ……!」
キキーッ
ボフン
エリカ「……」
小梅「わあ、見事に顔面から……」
直下「エアバッグってすごい……」
逸見車装填手「折角格好つけて決意表明してたのに……」
小梅「でも、まあ、締まりきらないのが、また逸見さんらしいというか……」
エリカ「どーいうことよ……ってて……」
小梅「なんかこう、丸に囲まれた画面で『もう戦車道なんて懲り懲りよ~』なんて言って、そのまま円が小さくなって画面が真っ黒になって終わり、みたいな」
エリカ「あんたねえ」
直下「ところでどうしたんですか、急に止まったりして」
まほ「いや……お母様から連絡があって……」
まほ「弁明あいさつ回りしなきゃいけないところが多すぎて無理だから一旦一緒に戻るそうだ」
エリカ「あまり知りたくなかった裏の事情ですね……」
小梅「大丈夫? やめたくなっちゃったりしてない? もう戦車道なんて懲り懲りだよ~みたいな」
エリカ「ならないわよ!」
エリカ「っていうか、そんな意味不明なフレーズにハマるのやめなさいよ……ったく……」
小梅「ダメかな」
エリカ「ダメよ」
小梅「しょうがないかあ……」
小梅「じゃあ右隣に置いておいて」
直下「右隣の私がそれを拾い上げて再利用すると」
エリカ「こういうときだけ謎の連携プレーするのやめなさい」
直下「怒られたから更に右隣に置いて、と」
逸見車装填手「わあ、私の番だ」
逸見車装填手「さっさと次に回しちゃおう」
エリカ「何でちょっと爆弾ゲームみたいになってるのよ!」
まほ「ははは……」
エリカ「た、隊長……?」
まほ「まあ……たまにはいいんじゃないか?」
まほ「毎日このノリをされると正直困るが……」
まほ「たまにはいいだろう」
まほ「……私は、そういうノリを呼び寄せる隊長じゃなかったし、その結果がコレだからな」
まほ「違うやり方だって、色々試していけばいい」
エリカ「……」
エリカ(そりゃあ、隊長が隊長になってから、2年連続でアレだったけど……)
エリカ(それでも、私が目指したい背中は――)
小梅「こうして、逸見さんの戦いは幕を閉じるのでした――完」
エリカ「何勝手に終わらせてンのよ」
小梅「えー、でもこう、エンディングって感じの空気だったし」
エリカ「……全国が終わったって、終わりじゃないのよ」
エリカ「あくまでこれは小休止」
エリカ「学校に戻ったら、隊長に残り少ない指導をみっちりつけてもらわなくちゃいけないんだからね」
小梅「はーい」
小梅「……」
小梅「今の笑顔で、こう、映画とかならイントロが流れて主題歌ドーンみたいなやつだよね」
エリカ「知らないわよそんなの」
ブロロロロロ
キキーーーーッ
小梅「あれ、あのジープって……」
アンチョビ「お、おおっ、お前たち!」
やっとー目をー覚まーしたかいー
エリカ「あんたら……屋台もせずに今まで何を……」
アンチョビ「えーっと、その……」 ゴニョゴニョ
エリカ「……」
エリカ「は?」
エリカ「宴会したせいで寝過ごしたあ!?」
こーれーでも出来るだけ飛ばしてきたんだよおー
小梅「過去の友好相手との遭遇、なんていうかエンディングって感じがしてしんみりするよねえ」
エリカ「この馬鹿と馬鹿が集まった結果生まれてしまった馬鹿のお子様ランチみたいな連中を前にどうすればしんみりできるのよアンタは」
小梅「……まあ、でもあれだよ」
小梅「しんみりするかとか、エンディングとかそういうのはともかく……」
小梅「実際全国大会は終わっちゃったんだし、何かコメントとかってないの?」
エリカ「無いわ」 キッパリ
エリカ「……今は何を言おうとしても恨み節か後悔だけだろうし」
小梅「んー……」
小梅「せめて、こう、『這い上がろう。負けたことがあるということが、いつか大きな財産になる』みたいなさ」
エリカ「……そんなわけないでしょ」
エリカ「そういうセリフは所詮は詭弁」
エリカ「負けなんて、財産になるわけないでしょ」
エリカ「そんなのは、負ける余地がある弱者だからこそ、弱点が分かって成長できてよかったねってだけの話」
エリカ「私達レベルにもなると、負けなんて負債でしかないわ」
小梅「……」
小梅「隊長はともかく、逸見さんは改善の余地がいっぱいあるんじゃ」
エリカ「そこの馬鹿が沸かしてるお湯にパスタの代わりにぶちこむわよ」
小梅「でも実際、去年の負けから、逸見さん、だいぶ変わったかなあって思うし……」
エリカ「……」
エリカ「ま、まあ、あのときは、確かにまだ未熟だったから……」
小梅「あ、そこは認めるんだ」
小梅「実際あのときの影響か、ここ数ヶ月の逸見さん、すごく変わったなあって思うしさ」
小梅「今回の負けでも、だいぶ柔らかくなったと思うけど……」
エリカ「……ないない」
エリカ「別に負けたら柔らかくなるなんてことないわよ」
小梅「そうかなあ」
小梅「意識無い時に揉みしだいてみた逸見さんのおっぱいばりに柔らかくなってると思ったけど……」
エリカ「今固くなったわ主に握った拳が」
小梅「うーん、柔らかくはなったと思うんだけどなあ」
アンチョビ「ああ、それは私も思ったな」
エリカ「はあ?」
エリカ「……ったく、変なとこで会話に入ってこないでさっさとパスタ茹でなさいよ」
エリカ「大洗激励に使う予定だった麺とかいうフザケたシロモノだけど、お腹は減ってきてるし食べてあげるわ」
アンチョビ「これでもうちょっと素直になってくれたらなー」
小梅「でもそうなると逸見さんの魅力が……」
直下「確かに半減だよね」
エリカ「全員パスタの代わりにゆでダコにするわよ」
アンチョビ「しかしまあ、敗北を知ったからじゃないなら、何でそこまで丸くなれたんだ?」
アンチョビ「うちは結構気性荒い子もいるし、ドぎつい跳ねっ返りも多いからさ」
アンチョビ「自分のためにも、来年を任すペパロニやカルパッチョのためにも、そういう情報は聞いておきたいなあって」
エリカ「恥も外聞もなく情報ねだってくるなんて……」
アンチョビ「まあまあ、こっちは明日さえ知らない身」
アンチョビ「腐っても9連覇の偉業をなしとげた超名門の絶対王者」
アンチョビ「まさか相手を強化したくないから、なんてみみっちいことは言わないだろー?」
アンチョビ「頼む、このとーり!」
アンチョビ「ペパロニとカルパッチョじゃお前みたいな跳ねっ返りを扱えなさそうだし、割りとマジで聞いておきたいんだって!」
小梅「こんなに頭下げてるし、教えてあげた方がいいんじゃないかな。全裸」
エリカ「はいはい分か――らないわよ! 服は着るわ!!」
小梅「残念……」
エリカ「ったく……ドア・イン・ザ・フェイスにしてももうちょっと上手くやりなさいよ……」
まほ「……良ければ教えてやってくれ」
まほ「安斎には世話になっているし、ライバルは強い方がいいだろう、エリカも」
エリカ「わかりました」
エリカ「っていっても、丸くなんてなったつもりないですし、どうして丸くなったのかみたいに言われても――」
エリカ「……」
エリカ「あ」
アンチョビ「お、どうした? 何か心当りでもあったのか?」
エリカ「……」
エリカ「まあ、そうですね」
アンチョビ「へえ、それで、それで?」
エリカ「……」
エリカ「自分自身が戦車になる」
エリカ「そうすれば、丸くもなるし、色々なことが分かるようになりますよ」
アンチョビ「……」 ポカーン
小梅「……」 ポカーン
まほ「自分自身が……? それは何かの比喩か……?」 キョトン
エリカ「……」
エリカ「ふふ……」
エリカ「冗談ですよ」
アンチョビ「な、なんだよー! 一瞬マジかと思っただろ!」
小梅「目がマジっぽかったですもん」
エリカ「狙いを悟らせない、なんてのは戦車戦の基本だもの」
キャイキャイキャイ
まほ「……」
まほ(自覚はないのかもしれないけど……やっぱり丸くなったよ、エリカ……)
まほ(そんな風に笑うようになってくれて、とてもうれしい)
眠気が限界だし、もうこれでテレビ編は終わり時間飛ばそうと思います
バシッとテレビ編でも区切り!みたいな感じで追われなかったし、このままこのスレで続き投下していきます
どうせ次スレは必須なので、埋まるからとか気にせず書きたいことがあれば書いてもらえたらと思います
バシッとテレビ編でも区切り!みたいな感じで追われなかったし、このままこのスレで続き投下していきます
どうせ次スレは必須なので、埋まるからとか気にせず書きたいことがあれば書いてもらえたらと思います
乙!面白かった!劇場版も楽しみに待つ。みほと和解できたら良いね
こいつらのなかで口からハンバーグを出したことはなかったことになってるのかそれとも禁忌か
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