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元スレモバP「フリーハグだァッ!! ぐへへへへ」

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1 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:22:00.02 ID:gOKOXAOSo (+120,+30,-39)

「"温もり"ですよ"温もり"!」

「現代人は温もりを求めているんです!」

「おわかりですか、ちひろさん」

ちひろ「はい?」




SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1501230119
2 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:22:59.61 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-53)


「こちらをご覧ください」

「昨日夜なべして作ってきました」

ちひろ「……」

ちひろ「なんですかこれ、プラカード?」

ちひろ「これがどうかしたんですか」

「なんて書いてあるか、読んでみてください」

ちひろ「ええと……」

ちひろ「"FREE HUGS"?」

3 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:23:46.50 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-104)

「その通り!」

「ちひろさんも聞いたことがあるんじゃないですか」

「もしくは街中で見かけたことがあるかもしれませんね」

「フリーハグってやつです」

「自由にハグしていいよっていうサインですね」

ちひろ「……」

ちひろ「まさか」

「そう、そのまさかです」

「やりますよ、俺は」

「アイドルのみんなに、"温もり"ってやつを届けてやりますよ」

「今日一日限定で、フリーハグ、やってやりますよ!」
4 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:24:11.21 ID:Z9A/TjQMo (+65,+30,+0)
/nox/remoteimages/75/a4/202cc3b4956e17df21a52cc7cb84.jpeg
5 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:24:46.54 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-121)

ちひろ「……」

ちひろ「Pさん」

「はい」

ちひろ「セ」

「セクハラだって言いたいんでしょう!」

「断じて違いますよ!」

「よく見てください、"フリー"ハグなんです」

「つまり、俺はハグを強要するわけじゃないんです」

「ただフリーハグというプラカードを掲げるだけです」

「その上でするしないは相手の自由!」

「ノットセクハラ、OK?」

ちひろ「……」

ちひろ「わかりました」

ちひろ「限りなく黒に近いグレーだと」

「おわかりいただけましたか」

6 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:26:26.63 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-202)

ちひろ「まあ、Pさんが奇行に走るのは」

ちひろ「今に始まった話ではないですし」

ちひろ「今回のだって、別に止めはしませんけどね」

「さっすがちひろさん」

「話がわかるゥ!」

ちひろ「ただ、騒ぎになったら困るので」

ちひろ「一つだけ制限させてください」

「はい?」

ちひろ「絶対に私の目の届かない場所ではやらないこと」

ちひろ「特に事務所の外でハグするとかはやめてください」

「変に噂になったら困りますしね」

「了解しました」

「じゃ、この部屋の中でだけやることにします」

「プラカードはこの辺に立てかけておきますか」
7 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:27:38.17 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-146)

ちひろ「そもそもの話」

ちひろ「誰がやってくれるんですかね?」

ちひろ「Pさんとハグしたいなんて人、いないんじゃないですか」

「う」

「い、いますよきっと」

「というか、いてほしい」

ちひろ「いやーどうですかね」

ちひろ「魂胆みえみえですからね、こんなの」

ちひろ「ひっかかってくれる奇特なアイドルがいるかどうか」

「誰もやってくれなかったら」

「めっちゃ滑ってる感じになって悲しいですね」

「頼む、誰かハグしてくれる優しい人――」

「具体的にはキュートのアイドルとか来てくれ! 頼む!」

ちひろ「清々しいくらい欲望に忠実ですね……」

8 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:28:14.99 ID:gOKOXAOSo (+89,+29,-11)


ガチャッ


凛・奈緒・加蓮「「「おはようございまーす」」」


「げっ」

9 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:29:02.76 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-162)


ちひろ「おはようございます」

ちひろ「今日はそろっての出勤なんですね」

「三人で合わせのレッスンがあるので」

奈緒「ちょっと早めに着いちゃったけどな」

加蓮「ていうか今」

加蓮「Pさん"げっ"って言ったよね?」

加蓮「何? アタシたちが来ちゃダメなことでもあった?」

「いやいやそんなまさか」

「めっそうもございません」ササッ

奈緒「……怪しすぎるな」

加蓮「なんか隠してるよね」

加蓮「凛!」

加蓮「Pさんの後ろ!」

「うん」

スッ

「あ、ちょっ」

サッ
10 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:29:57.79 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-191)

「……? 何、これ」

奈緒「プラカード?」

奈緒「えーっと」

奈緒「"ふりーはぐず"? でいいのかな?」

加蓮「あー知ってる! これ!」

加蓮「持ってる人見たことある!」

奈緒「何なんだ、これ?」

加蓮「凛も知ってるでしょ? 駅前とかにいるもん、たまに」

「うん」

「誰もやってなかったけどね」

奈緒「え? 凛も知ってるのか?」

加蓮「でも待って、Pさんがこれを持ってるってことは」

加蓮「ひょっとして……」

「……」ジー

「凛」

「その視線キツい」

奈緒「なあ、ちょっと」

奈緒「さっきからあたしだけ蚊帳の外なんだけど!」

11 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:30:52.35 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-169)

加蓮「奈緒、つまりね」

加蓮「Pさんは今、ハグし放題なんだってさ」

加蓮「それで合ってる? Pさん」

「……はい」

「絶賛ハグし放題にございます」

奈緒「ハグ?」

加蓮「抱きしめることだよ」

加蓮「奈緒、よかったじゃん」

加蓮「Pさんにハグしてもらったら?」

奈緒「……は?」

「フリーハグって、そういう意味だよ」

奈緒「いやいや、意味は分かったけど……」

奈緒「……」

奈緒「いやいやいや!」

奈緒「ちょっと待て! おかしいだろ!!」

奈緒「それセクハラだろ!! 何やってんだよPさん!!」

「言うと思った」
12 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:31:47.11 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-169)

「大丈夫、やるやらないは君らの自由だから」

「別にこれ強制じゃないから」

「だからセクハラじゃないんですー」

奈緒「ええ……なんだその屁理屈」

加蓮「いいじゃん奈緒、やってもらいなよ」

加蓮「Pさんもきっと喜ぶよ」

奈緒「ないないない!」

奈緒「ぜっったいやらないからな!!」

奈緒「だいたいPさんとハグなんて」

奈緒「どこ触られるかわかったもんじゃないだろ!」

「……ただハグするだけじゃないの?」

「基本的にはそうだな」

「俺はマネキンのように突っ立ってるだけで」

「あとはハグするほうでお好きにどうぞ、てな具合だ」

「だってさ、奈緒」

奈緒「"だってさ"、じゃないよ!」

奈緒「なんであたしがやるみたいな流れになってるんだよ!」
13 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:32:33.08 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-145)

加蓮「え、むしろやらないの?」

加蓮「こんな機会、めったにないんだよ?」

奈緒「は、はあ?」

「そうだぞ」

「今日一日の限定だからな」

加蓮「だってさ」

加蓮「これを逃したら一生ハグできないかもしれないよ?」

加蓮「奈緒、それでもいいの?」

奈緒「う、え……」

奈緒「……」

奈緒「いやいやいや!!」

奈緒「だまされないぞ! その手には乗らないからな!」

奈緒「あたしはやらない! やらないってもう決めたから!!」

「そっか……」

「俺と奈緒との絆は、そんなもんだったか……」

奈緒「え、ちょ、おい」

奈緒「そ、そんながっかりしなくても……」
14 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:33:25.09 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-119)

加蓮「(Pさん、いけそうだよ!)」

「(後一押しすれば落ちるよ、きっと)」

「(よっし、まかせろ)」

奈緒「だああ! 何目配せしてんだ三人とも!」

奈緒「もー決めた! 何があってもやらない!」

奈緒「天地がひっくり返ってもやらないから!!」

奈緒「さ、行くぞ二人とも! レッスンだレッスン!」

加蓮「あらら、残念」

「うまく行きそうだったのにね」

「なんかちょっとショックだわ」

奈緒「ったく、もう!」

加蓮「……」

加蓮「ね、Pさん」

加蓮「アタシたちの前に、もうハグした人っていた?」
15 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:34:10.04 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-119)

「ん?」

「いや、誰もいないけど」

加蓮「ふーん……」

「なんかあった?」

加蓮「Pさん、そこ立って」

「?」

加蓮「いいから立つの!」

「は、はい、立ちました」

加蓮「ばんざーいってして」

「ばんざーい」ヒョイ

加蓮「誰もいないんだよね」

加蓮「いままでハグした人」

「うん」 


ギュッ


「!」

「!」

奈緒「!!」

加蓮「じゃ、アタシが一番乗りだ♪」

16 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:35:34.56 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-103)

奈緒「ちょ、ま、かれ……!」

「……」

加蓮「なーに? 二人とも」

加蓮「別にアタシがやってもいいんだよね?」

加蓮「だってフリーハグだもんねー」

「う、うむ……」

加蓮「それにこのまま誰にもハグされなかったら」

加蓮「Pさんかわいそうでしょ?」

加蓮「だったらちょっとくらい、いい思いをさせあげたいじゃない?」

「ど、どうも……」

17 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:36:28.30 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-104)

加蓮「それでどう? Pさん」

加蓮「ファーストハグの感想は」

「あの……」

「たいへん情けないことに」

「体が緊張して動けないです」

「銃口を突きつけられたみたいになってる」

加蓮「ふふっ、体硬くなってるよね」

加蓮「いいよ、腕降ろしても」

加蓮「せっかくなんだから、もっとリラックス、しよ?」

「……うむ」

スッ

「……」

加蓮「落ち着いてきた?」

「ああ」

「びっくりした」
18 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:36:34.50 ID:TkM7+8ayO (+14,+29,+0)
さす加蓮
19 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:37:27.55 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-158)

加蓮「他に感想は?」

「他?」

加蓮「ハグされてるのに、何もないの?」

「……」

「加蓮、いい匂いがするな、と」

加蓮「んふふ、そうでしょ」

加蓮「アタシもPさんの匂いがするよ」

(臭くないだろうか……)

加蓮「他は?」

「他は……」

「密着してる部分が熱いな、って」

「腰に回してる手の部分とか……」

加蓮「……うん」

加蓮「アタシも何か、熱くなってる」

加蓮「でもあんまり嫌いじゃないかも」

加蓮「むしろ落ち着く感じ」

「……確かに」

加蓮「……」

「……」


ギュー

20 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:38:19.55 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-153)


奈緒「ど、どーすんだよ、凛!」

奈緒「完全に二人の世界になってるじゃんか!」

「奈緒、落ち着いて」

「……ねえ加蓮、そろそろいいんじゃない?」

加蓮「……んー? ふふっ、そう?」

加蓮「じゃあPさん、名残惜しいけどここまでね」

加蓮「これ以上やると、二人が怖いもんね」

パッ

「……ぶはー」

「なんかめっちゃ疲れたような」

「反面、癒されたような……複雑な心境だ」

加蓮「でも、良かったでしょ?」

「……うす」

「たいへん助かりました」

「このままだとハグ0ってこともありえたからな」

加蓮「ふふっ、どーいたしまして」

加蓮「またいつかやろーね」
21 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:39:18.11 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-150)

奈緒「あ、あのなあ加蓮!」

加蓮「さーさー二人とも、レッスンの時間だよっ」

加蓮「それともどうする? 二人もPさんとハグしていく?」

奈緒「えっ」

「……ううん、私はいいかな」

加蓮「へー」

加蓮「凛はいいんだ、意外」

加蓮「じゃ奈緒だね」

奈緒「だ、だからあたしは……っ!」

加蓮「まーまー、そんなたいしたものじゃないって」

加蓮「海外で挨拶するときとかよくやってるし」

加蓮「それにけっこう癒されるよ?」

加蓮「Pさん、なんかおとなしい熊みたいだったし」

「熊て」

22 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:40:07.76 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-109)

奈緒「う……」

加蓮「(ほら、Pさん!)」

「(え?)」

加蓮「(どーみても奈緒迷ってるでしょ!)」

加蓮「(今がチャンスだって!)」

「……ええと」

「奈緒、あのー、なんだ」

「俺本当に、全然動かないからさ」

「人形かなんかだと思ってくれていいんで」

「軽い気持ちで、どうぞよろしくお願いします」

奈緒「……Pさんは、どーなんだよ」

「俺?」

奈緒「その、あたしに、だ、抱きしめられるとか」

奈緒「Pさん、イヤじゃないのかよ?」
23 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:41:02.13 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-92)

「……」

「いや、普通に嬉しいけど……」

奈緒「そ、そうなのか?」

「奈緒に抱きしめられるとか」

「どんなご褒美だよって思っちゃうわ」

奈緒「そ、そっか……」

加蓮「いっちゃえいっちゃえ」

奈緒「ああもうっ! 加蓮はうるさい!」

加蓮「はーいっ♪」

奈緒「じゃ、じゃあ……」

奈緒「Pさん、ば、ばんざーいってして、くれる?」

「はい」

ヒョイ

(これ毎回やんのかな)

24 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:41:55.07 ID:gOKOXAOSo (+90,+30,-43)


奈緒「よ、よし」

奈緒「Pさん絶対動くなよ、絶対だぞ!」

「ハイ」


奈緒「……」スーハースーハー

加蓮「(深呼吸してる)」

「(かわいい)」


奈緒「い、いくぞっ!」

奈緒「っ!」


ガバッ

25 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:42:49.35 ID:gOKOXAOSo (+90,+29,-25)


「……」

奈緒「……」


ギュー


(これは……)

(ハグというか……)

("しがみつかれてる"って感じだ)

奈緒「~~っ!」


ギュウゥ

26 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:43:25.35 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-124)

加蓮「なーおー」

加蓮「それじゃ意味ないでしょー」

加蓮「もっとこう、腕を背中に回して」

加蓮「ぎゅーっとやんないと、ぎゅーっと」

「今のだと、ただ寄りかかってるだけだね」

奈緒「む、無理! もう無理!」

奈緒「限界! これが限界っ!!」

奈緒「は、は、恥ずかしすぎる…っ!」


ギュー


「ぐええ」

加蓮「おお」

「力はいったね」
27 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:44:06.04 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-82)

(……いかん)

(奈緒の頭が、目の前に)

(髪の毛、すっごい近い)

(なんだろう)

(めっちゃ、なでたい……)

(でも、勝手になでるのはNGだったハズ)

(くそっ、俺の両手はどこに置けば……っ)

「~~っ」

奈緒「~~っ」

加蓮「なんか、二人とも悶えてるね」

「あんまり癒されてないっぽいね」
28 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:45:09.18 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-69)


ガバッ


奈緒「ぶはっ!」

加蓮「あ、離れた」

奈緒「はー、はー……」

「奈緒、大丈夫?」

加蓮「肩で息してるけど……」

奈緒「だ、大丈夫……」

奈緒「ちょっと、息止めてただけだから……っ」

加蓮「そ、そんなに?」

(危なかった)

(こっちはこっちで誘惑に負けるところだった)
29 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:45:39.19 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-57)

加蓮「ちょっと不安ですが」

加蓮「感想聞いてみましょう」

加蓮「奈緒、どーだった?」

奈緒「いや、あの、ゴメン」

奈緒「全然覚えてない」

奈緒「とにかく恥ずかしかった……」

「だと思った」

「なんか、悪いことしたな」
30 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:46:24.25 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-98)

奈緒「いや、Pさんが謝ることじゃないけど!」

奈緒「だけどなんていうか、こういうのは慣れが必要っていうか!」

奈緒「い、いきなりだとうまくできないっていうか……」

加蓮「へー」

加蓮「さっきのじゃ足りないってさ、Pさん」

奈緒「か、加蓮! 何言ってnーー」

「もう一回やれば?」

奈緒「り、りーんー!!」

「まあまあ、二人ともあんまりからかうな」

「俺は結構よかったぞ」

奈緒「えっ」
31 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:47:31.23 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-146)

「なんつーか、いい意味でどきどきしたな」

「癒しとかそういうのはなかったかもしれないけど」

奈緒「そ、それって……」

「なんでかしらないけど」

「懐かしい気持ちになったな」

「いい思いしたわ、ありがとう、奈緒」

奈緒「う、うん」

奈緒「ま、まあ、Pさんがよかったっていうなら……」

奈緒「あたしも、別に、イヤじゃなかったし……」

加蓮「」ニヤニヤ

「」ニヤニヤ

奈緒「な、何笑ってんだよ! 二人とも!」

加蓮「べっつにー」

「なんでもないよ」
32 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:48:19.41 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-126)

「それよりいいの? 二人とも」

「もうこんな時間だけど」

加蓮「あ」

奈緒「あわわ、やっばい! は、早く行かなきゃ!!」

加蓮「なーんだ、残念」

加蓮「もっと奈緒のかわいいところが見られると思ったのに」

奈緒「そんなこと言ってる場合か! ほら、急ごう!」

加蓮「はーい、じゃーね、Pさん」

「うす」

「お気をつけて」


ガチャ


「……」チラッ

「?」


バタン


タタタタ……

33 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:49:07.77 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-188)

ちひろ「……終わりましたか」ヒョコッ

「うわっ」

ちひろ「0ハグ回避、おめでとうございます」

ちひろ「幸先いいスタートでなによりですね」

「ど、どうも」

ちひろ「それで、与えられましたか?」

ちひろ「"温もり"とやらは」

「いや~、どうでしょうね」

「逆に元気をもらってる側な気がしますね」

ちひろ「完全にもてあそばれてましたしね」

ちひろ「まあ、健全な範囲だったので、不問としましょう」

ちひろ「今後も変なことはしないようにお願いしますよ」

「あ、はい」

「そうか、温もり、温もりか……」

「よし、次こそ主導権をとってみせるぞ」

「キュートのアイドル、来てくれ~」

ちひろ「……」
34 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:50:01.05 ID:gOKOXAOSo (+90,+30,-24)


ガチャッ


未央・茜・藍子「「「おはようございまーすっ!」」」


「お」

35 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:50:47.12 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-95)

「パッション勢か」

未央「おっはよー、Pさん!」

「おはようございます!!」

藍子「おはようございます、Pさん」

「はい、どうも」

「お揃いのところ恐縮だけど」

「今これ、やってるよ」サッ

藍子「……なんですか、これ?」

「ふりー……読めません!!」

未央「あっ! フリーハグだ!」

未央「Pさん、これフリーハグのカードでしょ!」

「ご明察」

茜・藍子「「ふりーはぐ?」」

36 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:51:26.57 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-184)

未央「ん? 待てよ、ということは……」

未央「……ふぅーむ、なるほど、なるほど」

未央「Pさんも、なかなかワルですなあ」ニヤリ

「なにをいう」

「俺は純粋な気持ちからだな」

未央「まーまー、いいっていいって細かいことは!」

未央「それで、どうかな? 成果はあったのかな?」

「まあ、おかげさまで」

「ご好評いただいております」

未央「おー! いたんだ、やってくれる人!」

未央「え、だれだれ!? これって聞いてもいいのかな!」

「うん、さっきな……」

藍子「……茜ちゃん、二人が話してること、わかる?」

「はいっ!」

「まったく!!」
37 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:52:30.12 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-177)

未央「ふふふ、茜ちんにわかるよう簡単に言うとね」

未央「Pさんが練習台になってくれるんだってさ」

未央「タックルの」

「ちょ」

未央「しかも無料で、何回でもオッケーだって!」

「!!」

「本当ですかっ! Pさんっ!!」

「ぜってえこうなると思った」

「落ち着け茜」

「俺が言いたいのはな……」スッ

未央「あっ、立ったよ!!」

未央「いまだっ! 茜ちんっ!!」

「はいっ! いきますっ!!」


「うおおおぉおっ! ぼんばーーーっ!!!」


ドムッ


「ぐふっ」

38 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:53:29.09 ID:gOKOXAOSo (+90,+30,-36)

未央「よーし、あたしも続くぞー!」

「まって」

「これ以上はむr」

未央「ぼんばーーっ!!」


ドゴォッ


「オアアーッ!」


バターン


藍子「わああ! P、Pさんっ!?」

39 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:53:59.48 ID:gOKOXAOSo (+90,+30,-27)


―――


「座れ」

未央・茜「ハイ」


「聞け」

「人の話を」

未央・茜「ハイ」

40 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:54:45.83 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-114)

「まず君らのはハグではない、いいね?」

「えっ!」

「違うんですか!?」

「あんな殺意をこめたハグがあるか」

「激しすぎるわ」

未央「はいはい! せんせーじゃあ質問でーす!」

未央「普通のハグってなんですかー!」

「うん」

「いい質問だ」

「そいつをこれから披露しようと思う」

「そう、俺と――」

「……」チラッ

藍子「えっ」

藍子「わ、私ですかっ?」
41 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:55:52.44 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-175)

「藍子、そういうわけなんだ」

「すまないがひとつ、頼まれてくれるか」

藍子「えっ、ええっ」

藍子「といわれても私、そんな、あの……」

未央「ちょちょちょちょちょ!」

未央「まったー! まったまった!!」

「なにか?」

未央「なにか? じゃないよ!」

未央「私のあーちゃんに何させようとしてるのさっ!」

「別に俺は何とも言っていないぞ」

「ただ、頼まれてくれるか? って聞いただけだ」

「なあ、藍子?」

藍子「え、あの……え?」

未央「あーちゃんダメだよ耳を貸しちゃ!」

未央「これ、Pさんのいつものやり口だもん!!」

未央「こうやって数多の女の子を口説(スカウト)いてきたんだから!」
42 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:56:52.32 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-185)

「ほーう」

「何か知ってる風じゃないか、未央」

未央「うっ」

「本当は俺が教えずとも、わかっているんじゃないかね」

「"普通のハグ"とはいったい何なのかを」

未央「ううっ!」

未央「な、なんて卑劣な!」

未央「あーちゃんを人質に、私たちを脅そうって腹だね!」

「?」

未央「あーちゃん! 私の後ろに隠れてっ!」

未央「一刻も早くPさんの魔の手から遠ざけないと!」

藍子「え?」

「ふふふ……」

「さあ藍子、こちらにくるがよい……!」

藍子「えっ? えっ?」

「?」

「??」キョロキョロ


ちひろ(……)

ちひろ(茜ちゃん、完全に置いてきぼりじゃないですか)

43 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:57:41.77 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-171)

「――と、冗談は抜きにしても」

「君らのはちょっと、あっけらかんとしすぎてる」

「ハグってのはもっとこう、慈しみの精神が無いとダメなんだよ」

「二人きりで、静かで、豊かで……」

未央「な、なんか語り始めたっ」

「ハグソムリエの俺から言わせてもらうと」

「全体的に軽いんだよね、君らのスキンシップは」

「もっと恥じらいっていうか、しっとりした感じがほしいよね」

未央「うわあ……」

未央「ハグを要求するだけでもアレなのに」

未央「シチュエーションにも口を出し始めるとか」

未央「どん引きですよ、未央ちゃんは」

「この三人相手だと」

「好き勝手言えて楽だわ」
44 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:58:37.86 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-307)

「それに実際、ハグには癒し効果があるみたいなんだよ」

「脳内でオキシなんちゃらとかいうホルモンが分泌されて」

「幸せな気持ちになれるんだって」

藍子「……幸せ、ですか?」

未央「なるかなー、Pさんとハグして」

「俺とハグして幸せになるかは、人によるだろうけど」

「アイドル業は何かとストレスフルだろ?」

「精神的なケアがやっぱり必要かなって思うわけよ」

「俺としては少しでも力になりたいわけよ、アイドルたちの」

「だからできることは何でもしてやりたいのよ」

未央「ほうほう」

未央「たいへんご立派なことですけれども」

「だろ?」

未央「でもやっぱり、見え隠れしちゃうよね」

未央「Pさんの下心? っていうのがさ」

「……しゃーない、それは」

「もはや俺も隠しません! そういうところは!」

未央「うわっ、開き直った!」

「すべて承知の上で、ハグしてほしい!」

「ただただアイドルからのハグがほしい!」

「私からは以上です!」

「どうじゃっ! 誰か、誰かおらぬかっ!」
45 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 17:59:12.79 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-108)

未央「……などと意味不明な供述をしておりますが」

未央「二人とも、いかがかな?」

藍子「……」

「あのっ!」

「結局、タックルとハグって何が違うんですかっ!!」

「そこからか?」

「茜はそこから説明しないとダメか?」

未央「ふふふ」

未央「あんまり響いてないっぽいねー」

藍子「……」

藍子「あの」

藍子「私、少し、興味があるかもしれません」

「えっ!」

未央「うえっ!?」

「こ、これは意外なところから……!」
46 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 18:00:01.52 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-185)

未央「だ、ダメだよあーちゃん!」

未央「考えてみてよ? 相手はあのPさんだよ!」

未央「絶対ハグだけじゃすまないって!」

「俺の評価って基本低いよね」

「そんなに信用されてないのかっていう」

藍子「あ、いえ、ハグはできないかもしれないんですけど……」

「へ?」

藍子「さっきのPさんの話、すごく共感するところがあったんです」

藍子「私もよく、"幸せ"について考えますから」

藍子「アイドルとして、どうやったらみんなに幸せになってもらえるかなって……」

未央「あー」

未央「確かにあーちゃんよく言ってるイメージある」

藍子「だから、本当に幸せになる効果があるかどうか」

藍子「興味があって、確かめてみたいんです、その……」

藍子「は、ハグは私にはハードルが高いかもしれませんけど……」

「……ふむ」
47 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 18:00:38.30 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-269)

「そういうことなら俺も譲歩しよう」

未央「譲歩?」

「さっき俺、ホルモンの分泌がどうのって言ってただろ?」

「アレは別に、ハグだけに限った話じゃないらしい」

「抱っこするとか肩を組むとかでも同じ効果が得られるんだそうな」

未央「というと?」

「要するに肌の触れ合いがあるかどうかが大事で」

「方法はなんでもいいみたいだ」

未央「へー」

未央「柔道の寝技とかでもなるのかな」

「タックルもそうだけど」

「お互い敵意がないことが大前提ですからね」

未央「あ、そっか、そうだよね」

「まあ、だから別にいいよ、ハグじゃなくても」

「藍子の好きなようにしてくれていい」

「どうだろう、これで」

藍子「は、はいっ」

藍子「それならなんとかできるかもしれません」

未央「ええー……あーちゃん本気でやるの?」
48 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 18:01:09.73 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-108)

藍子「ふふっ、大丈夫ですよ」

藍子「未央ちゃんと茜ちゃんにも協力してもらいますから」

未央「協力?」

「ですか?」

藍子「じゃあ、Pさんは座ったままで」

「ハイ」

藍子「こっちのイスお借りしますね」

藍子「それで、みんなで座って輪になりましょう」

「輪?」

未央「よくわかんないけど、やってみよっか」
49 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 18:02:18.06 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-209)

――


藍子「……みなさん輪になりましたか?」

「うす」

「はいっ!」

未央「オッケーだよっ」

藍子「そしたら、両隣の人と手をつなぎましょう」

藍子「私はPさんと、未央ちゃんに……」ギュッ

未央「わわっ」

藍子「そしたら未央ちゃんは茜ちゃんとも……」

未央「う、うん」ギュッ

「そして最後に私がPさんと手をつなげばいいんですね!」ギュッ

藍子「はいっ、これで輪になりましたね」

「なるほどね」

「まあ手をつなぐのが一番ハードル低いわな」

藍子「Pさん、どうでしょう、こんな感じで」

「当初の目論見からは大きく外れてしまったが……」

「平和な感じにおさまったんで、まあオッケーです」

藍子「ふふっ、ありがとうございます」
50 : 以下、名無しにか - 2017/07/28(金) 18:03:03.12 ID:gOKOXAOSo (+95,+30,-185)

「それで、これからどうしましょうっ!」

「みんなで回転しますか!? それともジャンプしますか!?」

「もしくはスクラムを組みますかっ!?」

藍子「あ、茜ちゃん落ち着いて」

藍子「何もしなくていいんだよ」

「……何、も?」

藍子「そう、ただ手をつないでじっとしているだけでいいんです」

藍子「そのまま楽にして、ゆったりした時間を過ごしましょう」

「楽に……わかりました!」

未央「しっかし相手があーちゃんと茜ちんとはいえ」

未央「ずっと手をつないでいるってのは気恥ずかしいねー」

藍子「ふふっ、私も同じです」

藍子「でもきっと、じきに慣れますよ」

藍子「のんびり静かに、いきましょう」
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