私的良スレ書庫
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元スレエリカ「入れ替わってる……!?」 みほ「貴女の名は」
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同じ時期に始まったSSが次々エタってるから続けるだけでも有難い
ケイ「またエキサイティングでクレイジーな戦いを期待してるからね」
みほ「ありがとうございます」
カチューシャ「このカチューシャ様が見に来てあげたわよ」
みほ「あ、はい……」
ダージリン「……貴女は不思議な人ね」
ダージリン「戦った相手みんなと仲良くなるなんて」
みほ「それは……皆さんが素敵な人達だから」
ダージリン「……貴女にイギリスの言葉を送るわ」
みほ(でも……アンチョビさん達は来てないみたい……)
みほ(仕方がないけど、少しさみしい、かな……)
みほ(色々お世話になったし……)
みほ(……お世話になったって言えば……)
みほ(アンチョビさんのおかげでちょっとだけお喋りできたⅣ号と、またお話がしたいな……)
ダージリン「――永遠じゃないわ」
みほ(……はっ!)
みほ(いけない、折角ダージリンさんが有難そうなお話してくれてたのに、聞いてなかった……)
みほ「……はいっ」
みほ「……」
みほ(き、聞いてなかったって言えず、曖昧な笑みと微妙な応えを返しちゃった……) ズーン
グキュルルルルルルルル
小梅「うわあ、すごい音……」
直下「え、どうしたの……?」
エリカ「……アンツィオのバカども、どこ探してもいないじゃないの」 ギリリ
エリカ「こんなことならサンダースハンバーグでも食べたらよかった……っ!」
小梅「えっ、アンチョビさん達来てないの?」
ブロッケンJr「おかしい……確かにこちらに向かっていると、連絡があったんだが……」
まほ「……まあ、寝坊か何かだろうか」
まほ「そういう連中だ」
エリカ「ううう……」 ギュルルルルルルル
小梅「大丈夫、逸見さん」
小梅「何か食べる?」 スッ
エリカ「パンの一つでも差し出したかと思ったら何ボイレコ差し出してンのよ」
小梅「あまりにいい音出してるから、つい」
小梅「冗談はおいておいて……」
小梅「はい」
エリカ「……」
小梅「あ、あれ?」
小梅「今度は本当に何も冗談とかじゃない、そこで売ってたハンバーガーだけど……」
小梅「あ、ハンバーガーは嫌いだった?」
エリカ「……いや、そうじゃないけど……」
小梅「じゃあ――食べて。よかったら」
小梅「お腹空いてイライラしたままだと、みほさんに会った時、掴みかかったりしそうだし」 フフ
エリカ「……馬鹿ね」 クスッ
エリカ「そんなことしないわよ」
直下「まあでも暴れん坊副隊長サマなら有りえないことじゃないもんねー」
直下「しょうがない、食べ残しみたいで悪いけど、たこ焼きがまだ3つくらい残ってたし、あげるよ」
白星「温め直しておこうか?」
ブロッケンJr「ドイツ人ならソーセージだろ? ほら、分けてやるよ」
どどめ色星「魚肉のソーセージもドイツでゴンスか……?」
黒星「あ、この焼きそばも……」
ジェイド「パンでよければありますよ」
エリカ「あーもうっ、わかったからそんな一気によこさないでよ!」
エリカ「地蔵の備えものみたいになってるじゃないの!」
まほ「……ふっ」
エリカ「……何笑ってるんですか隊長?」
まほ「いや……」
まほ(あれほど周囲と距離があったのに、いつの間にか、周りに人が出来るようになったんだな……)
蝶野「両チーム、隊長、副隊長、前へ!」
みほ「……」 ザッ
桃「……」 ザッ
エリカ「……」 ザッ
まほ「……」 ザッ
エリカ(そういえば誰が副隊長なのかと思っていたけれど……)
エリカ(よりにもよってこのビッグマウスのカスが副隊長……?)
エリカ(こんな奴を副隊長に据えるなんて、おしまいね) ハン
エリカ「……お久しぶり」
エリカ「弱小チームだと、貴女でも隊長になれるのね」 ハン
エリカ(そんでもって、このカスでも副隊長になれるのね)
エリカ(まあ、Ⅳ号のときしか見てないせいで、こっちは口に出せないけど)
桃「……」 ビキビキビキ
エリカ(んで口に出してないのになんかめっちゃマガジンのヤンキー漫画みたいな顔してるし……)
杏「煽り耐性低いからなー河嶋」 ケラケラ
柚「やっぱり副隊長にしたのは失敗だったんじゃあ……」
まほ「……」
まほ(一応強豪校では副隊長張っていたし、エリカよりも上の地位だったんだけど、言わない方がいいよな……)
まほ(とりあえず黙っておこう……)
蝶野「本日の審判長、蝶野亜美です。よろしくお願いします」
蝶野「両校、挨拶!」
エリカ「……」 ハン
桃「……」 ガルルルルルル
まほ「……」
まほ(なんだこのギスギスしすぎな空気……)
みほ「え、ええと……」
みほ「よろしくお願いします!」
一同「よろしくお願いします!!」
蝶野「では、試合開始位置に移動!」
蝶野「お互いの健闘を祈るわ」
まほ「……」
まほ(みほには悪いが――西住流のため、勝たなくちゃいけない)
まほ(私が“西住流後継者”としての勝利を捧げることが、ひいてはみほの自由にも繋がるんだ……)
まほ「行くぞ」
エリカ「……はい」
エリカ「……」
エリカ(あの子が西住流を捨てて、なお強いのは分かっている)
エリカ(でもだからこそ、負けられないし、負けたくない)
エリカ「……たまたまここまで来れたからって、いい気にならないで」
エリカ(Ⅳ号じゃない“私”は、アンタらを見くびってもおかしくないでしょうね)
エリカ(……まあ、いずれにせよ)
エリカ「見ていなさい」
エリカ「邪道は叩き潰してやるわ」
みほ「……」
エリカ「……」 ザッザッ
まほ「……」 ザッザッ
小梅「……」
小梅(さすが、西住流後継者と、心酔して全てを捧げてる逸見さん……)
小梅(試合モードのスイッチが入ったら、声をかけるのも憚られる迫力……) ゴクリ
エリカ「……何呆けてんのよ、らしくない」
小梅「え、あ、その……」
まほ「……」
まほ「エリカ。作戦の最終確認をする。ついてこい」 ザッザッ
エリカ「はい」
エリカ「……」
小梅「……」
エリカ「……私と隊長は、これから作戦の最終確認でテントに戻るわ」
小梅「え、あ、うん……」
エリカ「……十分くらい、二人共出て来られないから」
エリカ「……もし私達が居たらやりづらいことがあるのなら、さっさと済ませておきなさい」
小梅「……!」
エリカ「……ふん」 ザッザッ
みほ「……」
小梅「待ってくださいみほさん!」
みほ「あ……」
小梅「あの時はありがとう……!」
小梅「あのあと、みほさんが居なくなって、ずっと気になってたんです……」
小梅「私達が、迷惑かけちゃってたから……」
小梅「……」
小梅(それなのに……)
小梅(みほさんに、救いの手を差し伸べられなかったから……)
小梅「でも、みほさんが戦車道辞めないでよかった……」
みほ「……」
みほ「私は、やめないよ」
優花里「……」 フッ
みほ(本当は、とっくに辞めそうになったけど、でも――)
沙織「みぽりーん!」
華「行きましょう」
みほ「うん!」
小梅「……そっか……」
小梅(私達ではなれなかった存在になってくれる人が、見つかったんだ……)
みほ「それじゃあ」
小梅「……うん」
小梅(振り返らない、かあ)
小梅(逸見さんが変わったように、みほさんも変わっているんだ……)
小梅(私も、変われてるのかなぁ……)
まほ『これより決勝戦だ』
まほ『相手は初めて対するチームだが、決して油断はするな』
エリカ「……」
エリカ(そう、油断のならない一芸集団)
エリカ(でも隊長に油断はない)
エリカ(まさに兎を狩るのに核ミサイルを持ち込むライオンのような絶対無敵の王者)
エリカ(みほの甘さという弱点がなくなった今、負けるわけがない)
エリカ(……みほを弱点と見なした西住流が、そしてその西住流で在ろうとする私が、負けるわけがない)
エリカ(負けるわけにはいかないッ)
まほ『まずは迅速に行動せよ』
まほ『グデーリアンは言った』
まほ『厚い皮膚より早い足、と……』
エリカ「……」
エリカ(いいこと言ってるはずなのに、どこぞの紅茶馬鹿が頭をよぎってくる……)
まほ『……行くぞッ!』
エリカ(……Ⅳ号と戦うなんて変な気持ちだわ)
エリカ(でも、なんだろうと関係ないッ)
エリカ「隊長のお言葉どおり、迅速に終わらせるわよ!」
エリカ「パンツァー・フォーッ!」
エリカ(赤星が、あの子の重荷を軽くしたはず)
エリカ(多分あの子に、もう迷いはない)
エリカ(本気で首を取りにいかないと、プラウダのチビやサンダースの馬鹿みたいに返り討ちにあうッ)
エリカ(一撃で仕留めるッ)
小梅「撃てー!」
ズドーンズドーン
逸見車装填手「おー、敵さんうろたえてる」
エリカ「当たり前でしょ」
エリカ「この電撃戦が出来るのは、黒森峰の練度があってのものよ」
エリカ(……私の理想や隊長ほど、他のみんなは戦車道だけに全てを賭けられるわけじゃない)
エリカ(それでも確かに、名門に恥じない努力を積み重ねてきた)
エリカ(一人一人は目立たぬかもしれないが、完璧なまでの基礎技術を駆使した陣形全体はまさに無類ッ)
エリカ「全車輌、一斉攻撃ッ!」
エリカ(奴らは無駄な一芸持ちが多い)
エリカ(さすがにもう逃げ出すような愚図は残ってないようだけど、追われるとひたすら逃げるので手一杯のはず)
エリカ(例えみほの指示で逃げ切れても、反撃に転じられる程の技量はない)
エリカ(……私が見たことのないチームもいる)
エリカ(大洗で得た情報から察するに、新しく入った未経験者ッ)
エリカ(ならば、初陣の時の連中みたく、テンパって落ちる可能性が高いッ)
エリカ(勢いをつけるためにも、まずはここで雑魚を狩るッ)
逸見車装填手「なんか露骨に動きが怪しいのいるけど、私達は――」
エリカ「無視よ無視」
エリカ「あんなのは、赤星にでもくれてやればいいわ」
エリカ「私達が狙うのは、あの子の――大将の首のみッ」
逸見車砲手「前方2時方向にフラッグ車を確認」
エリカ「よし、照準を合わせろ」
エリカ(アンタのことはⅣ号で見ててよーく分かってる)
エリカ(ここで下手を打つと、逃げ延びたアンタは油断した私達にカウンターを食らわせてくる)
エリカ(猫を噛み殺す窮鼠――そんなシーンを何度もⅣ号として経験してきた)
逸見車砲手「照準よし、フラッグ車に合わせました……!」
エリカ(だからこそ、対処法は分かる)
エリカ(あの子は毎回スロースターター)
エリカ(結果してやられたプラウダ戦も入れると、立ち上がりは毎回今ひとつ)
エリカ(そこで悠長にするせいで、あの子に奇策を思いつかせてしまうッ)
エリカ(だから――)
エリカ「一発で終わらせてあげるわ」 ニタァ
逸見車装填手「装填完了ッ」
エリカ「よし……」
エリカ「撃てぇぇぇぇぇ!」 クワッ
ズドォォォォォォン
シュポッ
蝶野『大洗女子学園三式、走行不能!』
エリカ「~~~~~~~っ!?」
エリカ「三式ぃ!?」
エリカ「あんな放っておいても赤星とか直下が潰しそうな三式とかいう三下ァ!?」
逸見車砲手「いや、そんなこと言われましても……」
逸見車装填手「向こうが急速に割り込んできたし、その勘を褒めるしかないんじゃあ」
エリカ「えーい五月蝿い!」
エリカ「とにかくフラグ車を逃がすな!」
エリカ「この場で息の根を止めるのよ!」
逸見車砲手「殺すって……」
逸見車装填手(やっぱり戦車に乗ってる時の逸見さんこわーい……)
逸見車通信手(ハンバーグバズーカ逸見とか言われてる時とはまた異なる怖さ……)
エリカ「撃て! 撃ってなんとしてもここで仕留め――」
モクモクモク
エリカ「煙ぃ?」
エリカ「ニンジャじゃあるまいし、小賢しい真似を!」
赤星『ニンジャ……島田流を思い出すね……』
ブロッケンJr『へっ、カラスまでは騙せない程度の忍術じゃあ虎を騙すことなんて出来ないって教えてやるぜ!』
エリカ「島田流……」
エリカ(いくら西住流を捨てたあの子とはいえ、島田流に身を染めるとは思えないけど……)
エリカ(でも、あの子の戦法が島田流のような搦手が多いのは事実)
エリカ(このまま調子に乗らせるのは不味いッ)
エリカ「全車撃ち方用意!」
まほ『……全車撃ち方やめ!』
エリカ「!?」
エリカ「一気に叩き潰さなくていいんですか!?」
まほ『下手に向こうの作戦に乗るな』
ブロッケンJr『へっ……ロビンもそんなことを言っていたっけな……!』
まほ『無駄弾を使わせるつもりだろう』
まほ『弾には限りがある、次の手を見極めてからでも遅くない』
エリカ「……」
エリカ(隊長の言うことは、正しい)
エリカ(下手に策に乗るのは危険だし、無駄弾をあまり使えないのも事実)
エリカ(でも……)
エリカ(今までの経験からすると、おそらく向こうの策の真の狙いは無駄弾消費じゃあない……)
エリカ(あの子の搦手は、搦手はのくせに一発一発は甚大なダメージをもたらしてくる)
エリカ(世間一般の搦手が手足を攻撃し動きを封じてからとどめを刺す、といったものだとすれば――)
エリカ(あの子の搦手は、手足を一撃で切り落とす、しかも猛毒が塗られたような一撃)
エリカ(無駄弾を撃たせるためなんてアバウトかつローリターンな搦手を安売りするヤツじゃあないっ……)
エリカ(ここで見極めようとしたら、手遅れになる可能性が……)
エリカ「……クソッ!」
エリカ(でも言えないッ……)
エリカ(一般的に考えれば隊長が正しい。そうでなくとも隊長はいつも正しい)
エリカ(私が嫌な予感を覚えるのも、全部Ⅳ号と入れ替わった記憶ゆえのもの)
エリカ(それを上手く説明も出来ない以上、従う以外の選択肢はないッ……!)
エリカ「バルカン砲撃てェ!」
逸見車砲手「ええ!?」
エリカ「こっちなら問題はないはずだし、撃ち方やめにも反しない!」
エリカ「何にせよぶち当てて、ダメージと共にすぐそこに迫っているという威圧を与えるッ」
エリカ「絶対……逃がすもんですかっ……ッ!」 ギリィ
エリカ「敵、11時方向に確認ッ」
まほ『あの先は坂道だ』
まほ『向こうにはポルシェティーガーがいる』
まほ『足が遅いからそう簡単には登れまい』
まほ『十分に時間はあるはずだ』
ダージリン「恋と戦争はあらゆるものが正当化されるのよ」 キリッ
オレンジペコ「通信傍受もですか?」
ダージリン「……」
ダージリン「……うーん……?」
オレンジペコ(あ、マジトーンで悩みだした……どうしよう……)
オレンジペコ「あっ、え、煙幕晴れてきましたッ!」
エリカ「んなっ……」
エリカ「もうあんなところに!?」
エリカ(そうか、全員がポルシェティーガーを引っ張って……ッ)
エリカ(クソッ、何故気付かなかった……!)
エリカ(大洗女子で、奴らがワンフォーオールの仲良しこよしごっこをよくすると学んでいたはずじゃないかっ……!)
エリカ「くそっ……!」
エリカ「広範囲に煙幕を張られてるせいでまだ追撃が――」
ボシュンッ
ボシュンッ
エリカ「!?」
エリカ「今度は何!?」
逸見車通信手「奇襲です!」
エリカ「やられたの!?」
逸見車通信手「ええと……」
逸見車通信手「誰も旗は上がってないけど、2輌履帯がやられました!」
エリカ「くっ……!」
エリカ(自分が追い込まれたときをチャンスに変える……)
エリカ(平気で自分を囮にして、追う者を背後から刺すスタイル……!)
エリカ(誰よりそれを見てきた私が気付かなくてどうするんだ、くそっ……!)
まほ『深追いはするな』
エリカ(不味い不味い不味い……!)
エリカ(これ以上好き勝手されると、私の印象云々以前に、普通に不味いッ!)
エリカ(勝つのは黒森峰、そして伝統ある西住流じゃなくなちゃならないのよっ!)
エリカ(何とかして……なんとかして主導権を握らないと……!)
まほ「……想定より早く陣地を構築したな」
エリカ(……さすが隊長は落ち着いていらっしゃる)
エリカ(そうだ……私がきちんとどうにかできずとも、隊長がいる……)
エリカ(万が一私がダメでも、隊長ならば――)
まほ「囲め」
エリカ「はい!」
ズドォォォォォォン
ズドムズドムズドム
エリカ「ちぃぃぃぃっ!」
エリカ「クソッ、なまじしっかり陣地を作ってるせいで犠牲が……!」
エリカ「私のパーフェクトゲーム構想が……!」
エリカ「優勝の瞬間がニュースになる度、史上最悪の負け方をした大洗の恥ずかしいシーンが流されるという私の野望があ!」
逸見車操縦手(人間が小さいなあ……)
おつおつ
バルカン砲付きの戦車とかかっこいい
ヤーボ対策かな?
バルカン砲付きの戦車とかかっこいい
ヤーボ対策かな?
「せんしゃ、つおい」くらいの認識で当スレは進行しております、脳内補完してね(すまんな)
円盤も出ちゃったしさっさと書き進めます
円盤も出ちゃったしさっさと書き進めます
まほ(……囲まれても冷静に捌いてくるか)
まほ(伊達にここまで残ってはいないな)
まほ(みほのみならず、他の者も一定の技量を持っている前提で指揮を取るべきか)
まほ「……ヤークトティーガー、正面へ」
まほ(あの戦力では易易とヤークトティーガーを貫けまい)
エリカ「これが王者の戦いよ」 フッフーン
エリカ「策を弄し奇策に頼るのは凡夫の証!」
エリカ「真の王者とは優雅に美しく、どんと構えて真っ向から相手を踏み潰すものなのよ!」
エリカ(勝てる!)
エリカ(大洗で見てきた戦力では、やはり黒森峰を倒すなんて不可能ッ)
エリカ「邪道に付け入るスキを与えたサンダースやプラウダのように、満身も舐めプも我々黒森峰には無いッ」
エリカ「このまま叩き潰してやるわ!!」
逸見車通信手(割りと普段から慢心の塊のような……)
ズドーン
直下「あああああああああああああ!!」
直下「直したばっかりなのにィ!」
直下「うちの履帯は重いんだぞ!」
キュラキュラキュラ
小梅「……あれ?」
ブロッケンJr「どうした?」
小梅「いや、なんか向こうで上半身出した直下さんが発狂したみたいに踊ってるんだけど……」
白星「踊ってる……?」
小梅「あ、いや、違う」
小梅「あれ、なんか腹立てて暴れてるんだ!」
小梅「ヘッツァーがこっちに向かって――!?」
黒星「え!?」
ドドメ色「何も通信は入ってきてないでガンスよ!?」
小梅「直下さん、腹を立てると業務連絡とかそういうのスコーンと忘れて当たり散らすところあるからなあ……」
ブロッケンJr「今からでも隊長に報告するか?」
小梅「いや、多分……その前にこの感じだと――」
ズドーンズドーン
小梅「やっぱりヘッツァーを見つけて撃ち合いになった!」
ジェイド『うっおー! くっあー! ざけんなーーーー!!』 ドーンドーン
小梅「あーっ、同士討ちになる!」
小梅「みほさん、これを狙ってたの!?」
小梅「み、みんな落ち着いてえ!」
エリカ「ちょ、あんたら何やってんのよ!」
エリカ「無様に混乱なんてしてないでさっさと立て直しなさい!」
小梅『逸見さん、パニックガールの代名詞みたいに浮足立ってるよ!』
エリカ「わざわざンな通信寄越すんじゃないわよ!」
逸見車砲手「あ、大洗、撤退はじめました」
エリカ「ええい撃て、ここを奴らの墓場にするのよ!」
ワーキャー
小梅『ごめん逸見さん、こっちダメそう!!』
小梅『ああっ、混乱してブンブン振り回してたジェイドが落とされた!』
エリカ「はあ!?」
小梅『ああダメ、何とかしようにも他の味方の車体が――』
脇にヘッツァーがいるぞ子「すみません逃げられました!!」
エリカ「何やってるの!」
まほ「体勢を立て直して追え。こちらもすぐ向かう」
エリカ「私が行きます!」
エリカ(他の連中は宛に出来ない……)
エリカ(隊列を組み、決められた動きをすることに関しては同世代最強の集団だけど……)
エリカ(あの子は“それ”をさせないことに長けすぎているッ……)
エリカ(こっちの手の内も全部わかってるわけだし……ここは私が決めるしかないッ)
エリカ(アンタがこっちの手の内を知ってるように、私だってアンタの手の内は知ってるってこと、思い知らせてやるわ!)
逸見車装填手「それにしても……」
逸見車装填手「そろそろポルシェティーガーがだめになって向こうも戦力分散されて良い頃だと思うんですけどねえ」
エリカ「……それはあまり期待しない方がいいと思うわよ」
逸見車通信手「?」
逸見車車砲手「ふぁっ!?」
逸見車装填手「どうしたの?」
逸見車砲手「向こうのポルシェティーガー、走りながらなんか直してる……」
逸見車装填手「ええええええええ!?」
エリカ「……」
エリカ(まあ、そうでしょうね)
エリカ(私が知ってる範囲では、大洗に戦車に乗れる人材はほとんど残ってなかったはずだし)
エリカ(乗せるとしたら自動車部は有力候補)
エリカ(……一晩であれだけの無茶な修理が出来る連中よ)
エリカ(応急処置くらいなら、走りながらやってきても驚かないわ)
エリカ「……驚きはしないけど、是非とも黒森峰に欲しい人材ね」
逸見車砲手「驚かないんだ……」
逸見車装填手「すご……」
エリカ「一々相手に合わせて驚いてペースを乱してやる必要なんて無いわ」
エリカ「冷静にここで決めるわよ!」
逸見車装填手「はいっ!」
逸見車砲手「おまかせあれっ!」
エリカ「逃さないわ……」
エリカ「目標、1時フラッグ車!」
エリカ(ここで決めて、私は完全にアンタを超えるっ……!)
エリカ(奇策に翻弄されず冷静に仕留められる人間が黒森峰にもいるってことを、思い知るがいいわ!)
ガガガガ
エリカ「ちょっと、どこ行く気なのよ!?」
ガッコン
エリカ「何やってんの!!!」
逸見車操縦手「左動力系に異常!」
逸見車操縦手「すみません、操縦不能です!!」
エリカ「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」
エリカ「あーもう、早く直しなさい!!」
エリカ「隊長に大見得切ってるのよ、走りながら直しなさい!!」
逸見車装填手「ひい~っ」
逸見車操縦手(やっぱり逸見さん怖い~っ)
エリカ「ああもう、はやくしなさいよ!!」 ムッキー
逸見車砲手(リズミカルに踊ってないで手伝ってほしい……)
逸見車通信手(逸見ステップ……)
エリカ「……」
小梅「不機嫌だね、逸見さん」
エリカ「うっさいわね」
小梅「直すの手伝ってあげたのに」
エリカ「ふん」
エリカ「自信満々に追撃に出て交戦すらせず逃げられるなんて醜態晒した直後なのよ」
エリカ「上機嫌でいられるわけないじゃない」
小梅「あんまりすぎたことを引きずってもしょうがないよ」
小梅「すぎたことを引きずりすぎると、混ぜる勇気がなくて封を切れない塩素系洗剤をずっと引き出しに入れ続けることになっちゃうよ」
エリカ「洒落にならないことをネタにできようになったメンタル面の成長は認めてあげるけど、別にまだ去年のこと風化したわけじゃないからね?」
直下『あっ、大洗の車輌を発見!』
エリカ「どれどれ……」
エリカ「……」
エリカ「何やってンのよ、あれ」
小梅「……」
小梅「川で立ち往生したのを助けてる、のかな……」
エリカ「……」
ズドーン
ズドーン
エリカ「……撃ってきたわね」
小梅「でも全然当たってないというか、今までに比べて狙いが粗いね」
直下「焦ってるせいで精度が落ちてるとか?」
エリカ「……あの子の救出作戦を援護してるつもりなんでしょ」
エリカ「正確に狙えないなら砲弾を節約しておけばいいものを」
小梅「……そうだね」
エリカ「……」
小梅「……」
エリカ「何よ」
小梅「あ、ううん、ごめん……なんでもない」
エリカ「……」
エリカ(残弾数も気にせず、当たるかどうかでなくて、守りたいから撃っている――)
エリカ(去年の私達にできなかった、ある種敗因の一つ)
エリカ(それをチーム一丸となりやっている、か……)
エリカ「……ふん」
エリカ「相変わらず甘いわね」
エリカ「その甘さが命取りなのよ」
エリカ「戦車前進用意!」
エリカ「丘を越えたら川に沈めてやるわ!」
まほ「……後方7時敵」
まほ「11号車、やれ」
ズドムズドム
杏「さすがに三度目はないかあ~!」 スタコラサッサー
エリカ「ちっ、何外してンのよ!」
まほ「深追いはするな」
エリカ「は、はい……」
エリカ(くっ、あのヘッツァーの運転手はあのクソいけ好かない生徒会長)
エリカ(さっさと沈めておきたいのに――!)
小梅「逸見さん」
エリカ「――っと、砲撃用意!」
エリカ「撃てーっ!」
ズドムズドム
エリカ「ぐっ……!」
小梅「ギリギリで逃げられちゃったね……」
エリカ「何処に向かう気……?」
まほ「……」
まほ「恐らく、市街地」
エリカ「橋ぃ?」
エリカ「戦ってるより逃げてる方が多いじゃないの」
エリカ(まあ、この戦力差ならそれも已む無しといったところかしら)
エリカ(でも放っておくと打開策を見つけてくるのが西住みほという女)
エリカ(無策で無様に逃げ回ってるスキに叩くッ)
エリカ「……落ちた?」
エリカ「橋がァ!?」
エリカ「……分かった」
エリカ「橋は迂回して追う、お前は先回りしろ!」
エリカ「……」
エリカ(まさかこんな策を用意してるなんて……!) ギリッ
エリカ「……」
エリカ(無策で逃げてる今の内に、とか口に出してなくてよかった……)
逸見車通信手「あ、逸見さん、マウスから通信!」
逸見車通信手「二輌撃破したそうです!!」
エリカ「……ッシ!」 ガッツポ
エリカ「……」
エリカ「こほん」
エリカ「迂回してる間に終わってしまうかもしれないわね」
エリカ「所詮弱小チームなんてこんなものよ」
逸見車通信手(今ガッツポーズしてたよね……)
逸見車砲手(めっちゃ嬉しいんじゃん……)
逸見車装填手(ごまかせてるつもりなのかな……)
逸見車操縦手(普段怖いのにたまに可愛いよね、逸見さん……)
エリカ「隊長、2輌撃破しました」 フフン
まほ「あと5輌」
エリカ「こちらはまだ16輌残っています」
まほ「フラッグ車を潰さねば意味はない」
エリカ「……」
エリカ(確かに、これまでサンダースもプラウダも、車両数では圧倒しながらも最後にはフラッグ車を潰されて敗北した……)
エリカ(でも、今回に関してはそんなこと起こり得ないッ)
エリカ(向こうのポイントゲッターである三突は潰した)
エリカ(ポルシェティーガーのチートメカニックどもが未知とはいえ、戦車に乗ること自体は未知のはず)
エリカ(ヘッツァーは鬱陶しいことこの上ないが、二度に渡りやられたのもあり、すでに十分に警戒出来ている)
エリカ(練度の高い八九式はそもそもこちらの装甲を抜けるとも思えないので放置でオーケイ)
エリカ(ただでさえ低火力のM3に乗ってるのは例の頼りない一年どもだからこれも論外)
エリカ(そうなると残る強敵はあの子のⅣ号のみ)
エリカ(……そのⅣ号はフラッグ車だし、マウスだって最優先で狙うはず)
エリカ(万が一マウスをどうにかできるとすればⅣ号だけど、そう易易とやられるはずがないわ)
エリカ(直々に手を下す前に負けられることだけが心残りだけど……)
エリカ「もうここから負けようがないわね」
マウス車長『すみません撃破されました!』
エリカ「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」
エリカ「何をどうしたらそんなことになるのよ!」
マウス車長『そ、それが――』
エリカ「はあ!?」
エリカ「ヘッツァーが潜り込んで来て動けなくなったうえに、乗り込んできた八九式に砲塔を抑え込まれたァ!?」
エリカ「そんなアホみたいな手で……!」
逸見車砲手「あ、でも、意外とそういう奇策って防げないし……」
逸見車通信手「私達、圧倒的なことが多いせいで、そこ崩されると結構浮足立っちゃうって言われてるもんね……」
エリカ「だからって、天下の黒森峰があのヘッツァーに三度も撹乱されて足元をすくわれたなんて許せるわけないじゃない!」
逸見車操縦手「そうかもしれませんけど……」
逸見車砲手「でも何事にも動じないと噂される継続の隊長ですら、逸見さんが生身で乗り込んでハンバーグ吐いたら動揺したんですよ」
逸見車通信手「生身でハンバーグ砲撃する人間と比べたら、ヘッツァーはまだ常識的……なのかな……」
逸見車装填手「どっちにしても動揺するよね、それ……」
エリカ「ああああああ、終わった話は終了! おしまい!」
エリカ「そんなことより我々も間もなく市街地、直接奴らに手を下せることに歓喜しながら戦闘に意識を切り替えなさいっっ!」
逸見車操縦手(やっぱり軽い黒歴史になってるんだ……)
更新乙です。
まぁ軽いどころじゃなく黒歴史だわな。その後の家元とのゴタゴタ含めてw
まぁ軽いどころじゃなく黒歴史だわな。その後の家元とのゴタゴタ含めてw
体をぶっ壊してました。流行病には皆さんもご注意下さい。ちょっとだけでも投下します。
逸見車通信手「敵発見とのことです!」
エリカ「よし、このまま私達の手で落とすわよ!」
キュラキュラキュラキュラ
逸見車砲手「うーん」
逸見車装填手「小回り活かされてるねえ」
逸見車砲手「これだけ頻繁に曲がられると気安く撃てませんけどどーしましょ」
逸見車通信手「フレンドリーファイア怖いもんねえ」
エリカ「くっ……」
エリカ(互いの戦車の強み・弱みを的確に把握したうえでの立ち回り……)
エリカ(本来総合力で圧倒的に劣るにも関わらず撃墜されぬよう策を弄してくる……)
エリカ(何回見ても気にいらないけど、でも――)
エリカ「鮮やかすぎてムカつくわね……」
エリカ「絶ッッ対! 叩き潰すわよ!」 ゲシゲシ
逸見車操縦手「痛い痛い、蹴りすぎですって!」
エリカ「ええい邪魔よ!」
逸見車砲手「隊列を乱さないよう言われてたし、柔軟に道をあけたり、なんてのは出来ないですって」
逸見車装填手「順番は守らないと……」
エリカ「むっきー!」 ジタバタ
エレファント車長『こちらエレファント、M3にやられました!』
エリカ「何やってんのよ!!」
逸見車砲手(本当にどうやったんだろう……?)
エリカ「黒森峰が……西住流は最強なのよ!」
エリカ「こんな……こんなところで、こんなことで負けていいはずがないのよっ……!」
逸見車通信手「あっ」
エリカ「今度は何!?」
逸見車通信手「ヤークトティーガーやられたみたいです……」
エリカ「はあ!?」
エリカ「何やってんのよ!」
エリカ「相手にはもうまともな火力は残ってないのよ!」
エリカ「いやまあ最初からまともな戦車なんてなかったようなものだけれども!」
逸見車通信手「よりにもよってM3と刺し違えたみたいです!」
エリカ「だから! 何をどうすれば! そんなことになるのよ!」
エリカ「ああもう!」
エリカ(分かっていてもイライラするし、わけがわからずモヤッとくるわね……)
エリカ(今のあの子を知らなかったら、多分もっとやばかったわ……)
エリカ「もういいわ、考えたってわけがわからないものは無視!」
エリカ「このまま隊長とフラッグを落とせば問題ないわ!」
エリカ(普通にやれば隊長が負けるわけがない)
エリカ(だけどあの子は……普通にやらせないことにかけては天才的ッ)
エリカ(最悪自分を盾にしてでも、あの子の作戦は叩き潰すッ)
エリカ(無駄弾もバンバン使えるわけじゃないし、あのボケ娘の運転技術は腹立たしいけど一流)
エリカ(下手に打って隊長車に当てるわけにもいかないし……)
エリカ(何とか包囲して援護したいけど、そう簡単にさせてはくれない……)
エリカ「……このまま進めば、開けたところに出る……?」
逸見車砲手「あー、そこまで追い込めたらあとは包囲できるんじゃないですか?」
エリカ(いや……)
エリカ(それに気付いていないはずがない……)
エリカ(地形や有利不利を把握し、それを使って策を弄するのがあの子のやり方……)
エリカ(絶対に何かが……)
エリカ「他の2輌はどこ!?」
逸見車装填手「他の2輌……?」
エリカ「大洗のよ!」
逸見車通信手「ええと、ちょっと待って下さい確認しますっ」
小梅『あ、もしもし逸見さん?』
エリカ「何よ、こっちは今忙しいんだけど!」
小梅『奇遇だね、こっちも今忙しいよ』
エリカ「はあ?」
小梅『こちらロート小隊、現在八九式を発見し追撃中』
小梅『……逸見さん、すごく大洗の戦略を気にしてたしさ』
小梅『一応、向こうの行動報告しておこうかと思って』
小梅『座標と向こうの行動、そっちの通信手さんに細かく連絡させとくね』
エリカ「……」
エリカ「やるじゃない、感謝してあげるわ」
小梅『あはは』
小梅『そういうときはもっとシンプルに「ありがとう」でいいのに』
小梅『もしくは「愛しているよ」で』
エリカ「忙しいから切るわよ」
エリカ「ポルシェティーガーは誰か目撃してないか確認して」
エリカ「もし誰も目撃していないようなら、待ち伏せの可能性が――」
逸見車操縦手「あっ」
エリカ「どうしたの」
逸見車操縦手「……目撃しました」
エリカ「は?」
逸見車操縦手「ポルシェティーガー」
逸見車砲手「……っていうか、また上半身出して前見たらすぐ見ること出来る位置に」
エリカ「ッ!」 ガコン
エリカ「しまったっ……!」
エリカ(ただの待ち伏せによる砲撃なら、隊長だって警戒しないはずがない……)
エリカ(射程や潜伏出来る場所は頭に入っているだろうし、遮蔽物などのチェックも怠っていない)
エリカ(撃って一撃で仕留めるなんて芸当、あのブリザードのノンナかサンダースのナオミでもなければ不可能)
エリカ(なのにこいつらっ……)
エリカ(撃っても仕留められないからって、敢えて砲撃を度外視することで、隊長の警戒を潜り抜けるなんてっ……!)
逸見車操縦手「ど、どうしましょう! 道を塞がれたんですけど!」
エリカ(分断されたッ……!)
エリカ(あの子の狙いは最初から、タイマンっ……!)
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