元スレ京太郎「俺が三年生?」誓子「えっちなこと……しても、いいよ?」
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451 = 1 :
京太郎「いってきます」
「今日は学校終わったらまっすぐ帰ってきてね?」
京太郎「……わかった」
「絶対よ? 絶対だからね?」
京太郎「わかったって」
京太郎(なんて言ったけど……正直、学校行きたくないな……)
『見ろよこいつのあたま、ふりょーだふりょー!』
『やーい、まっきんきん!』
京太郎「……はぁ、サボろ」
452 = 1 :
京太郎「……」ボー
京太郎(サボるのはいいとして……なにすればいいんだろう?)
京太郎(うろうろしてたら、ほどーってのをされちゃうんだっけ)
京太郎(家にもどったら、またなんか言われるだろうし)
京太郎(というか、もう学校はじまってるな……家に電話されちゃってるかな)
京太郎「……はぁ」
「なにしてるの?」
京太郎「だれ、おまえ」
「こっちが聞いてるんでしょ」
京太郎「うっせーよ、ちかよんなよな」プイッ
「……えいっ」ゲシッ
京太郎「うわっ」ズシャ
453 = 1 :
京太郎「なにすんだよ!」
「こんな日なのにしんきくさい顔してるそっちがいけないんだから」
京太郎「わけわかんね……」
「あ、どこ行くのよ」
京太郎「……ふんっ」
「……とりゃっ」ドゲシッ
京太郎「うわっ」ズシャア
京太郎「さっきからなんなんだよ! なんでけるんだよ!」
「こっちの話を聞かないのがわるいんでしょ」
京太郎「てっめぇ……!」
「ぼうりょくふるうんだ。ふーん、先生に言っちゃおうかな」
京太郎「知るかよっ」ブン
「わっ、あぶなっ」
京太郎「ないたってゆるしてやんねーからな!」
「きゃっ、こわーい」タタッ
京太郎「まてよ、このっ」
454 = 1 :
京太郎「はぁ、はぁ……」
「ふぅ、ふぅ……」
京太郎「おまえ、足はやいな」
「そっちこそ……クラスじゃ一番だったのに」
京太郎「とにかく、もうにがさな――うわっ」グラッ
「わたしももうダメ……」ヘタッ
京太郎「……おまえもサボり?」
「そんなとこ。それより、おまえって言うのやめて」
京太郎「名前とか知らないし」
「そっか、そうだった」
「久、上埜久」
455 = 1 :
京太郎「うえの? 二組にそんなのがいたような……」
久「そゆこと。よろしくね、すがくん」
京太郎「……なんで名前知ってんのさ」
久「この前ケンカしてたでしょ。みんなふりょーだって言ってる」
京太郎「……」
久「ふりょーだからケンカするの?」
京太郎「ちがう、あいつらが……!」ギリッ
久「ふーん、じゃあかみそめてるからふりょーなの?」
京太郎「……そめてねーし。バカなやつらはしんじないけど」
久「ホント、バッカみたい。だってさ――」
久「そのかみ、お日さまにあたるとキラキラしてきれいじゃない」
京太郎「……は?」
久「それに外人さんみたいでかっこいいし」
京太郎「……アホくさ」
久「あ、まちなさいよ。わたしヒマなのに」
京太郎「ふん……ついてきたいなら好きにしろよ」
久「ツンデレってやつ?」
京太郎「わけわかんねーし」
456 = 1 :
京太郎「……」グゥ
久「……」グゥ
京太郎「おなかへった……」
久「……うん」
京太郎「いまごろお昼かな……」
久「うん……あ、そうだ」ゴソゴソ
久「これ、いっしょに食べない?」
京太郎「ポテチ?」
久「家出るときにこっそりもってきたの」
京太郎「学校におやつもってくとかいけないやつだな」
久「どうせサボるつもりだったからべつにいーの」
京太郎「そっか、サボってるんだった」
久「そうそう、じゃあ……」ググッ
久「あれ?」
京太郎「かせよ」ベリッ
久「……もうちょっとがんばったらあけれたのに」
京太郎「ぜったいパーンってなってたから」
457 = 1 :
久「やっぱりポテチはうすしおね」ポリポリ
京太郎「おれはのりしおの方が好きだな」ポリポリ
久「あれ、のりがつくのがなんてんね」
京太郎「いいじゃん、あとでなめればいいし」
久「うわ、男子ってへいきでそういうことするんだ」
京太郎「べつにいーだろ」
久「きたないからさわんないでよね」
京太郎「まだなめてねーし、ほら」
久「あぶらでべとべと!」
久「あーあ、せっかくのおたん生日なのにだいなし!」
京太郎「たん生日?」
久「お父さんは帰ってこれないって言うし……」
京太郎「それでサボったのか?」
久「……うん」
京太郎「ガキっぽいなー」
久「はぁ!? じゃあそっちはなんでサボってんのよっ」
京太郎「お、おれのことなんてどうでもいいだろっ」
久「ふこうへい! ぜったい話してもらうから!」
458 = 1 :
久「ふーん、それで学校行きたくないんだ」
京太郎「わ、わるいかよ」
久「ガキっぽい」
京太郎「う、うるせーな!」
久「ほかのやつらがね」
京太郎「……だよな!」
久「なにあせってんの?」
京太郎「なんでもねーから!」
『そのかみ、お日さまにあたるとキラキラしてきれいじゃない』
京太郎(……そういや、言ってたな)
京太郎(あんなこと言われたの、はじめてだ……)
久「どしたの?」
京太郎「なんでもねーって!」
459 = 1 :
京太郎「もう下校時間だな……」
久「あーあ、帰りづらいなぁ」
京太郎「ホントそれだよな」
久「もうちょっと遊んでる?」
京太郎「いいや、帰るよ。すぐ帰ってこいって言われたし」
久「へんなとこでりちぎなんだ」
京太郎「えっと……おまえ、なんて言ったっけ」
久「だからおまえって言わないでってば! 上埜久、ちゃんづけだけはやめてよね」
京太郎「じゃあそうだな……」
京太郎「うん、ひさちゃんだな」
京太郎「というわけでよろしく、ひさちゃん」
久「ちゃんづけやめてって言ったのに!」
京太郎「女子も気になるんだな。おれはいきなりよびすてにされたらカチンときたけど」
久「じゃあ、あんたはきょうたろうね」
京太郎「はぁ!? よびすてかよ!」
久「そっちだってワザとちゃんづけしたでしょ……っと」
久「じゃ、また明日学校でね。バイバーイ」
京太郎「……ふん、帰ろ」
460 = 1 :
「おかえりなさい」
京太郎「……ただいま」
「ちゃんと帰ってきたのね。えらいえらい」ナデナデ
京太郎「おこんないの? その、サボっちゃったのに……」
「たまには一人になりたいかなーってね。そーれーにぃ――」
「なんと、お母さんは妖しげな術で居場所をサーチできちゃうんだから!」
京太郎「……はぁ?」
「すごいでしょ」
京太郎「ウソくさ」
「ふーんだ、信じてもらえなくたっていいもーん」イジイジ
京太郎「とりあえず、ごめんなさい」
「だから、無事帰ってきただけで十分よ」ギュッ
京太郎「……うん」
「あ、でも先生は怒ってるかもしれないから気をつけてね」
京太郎「うっ……」
「……それで、明日は学校に行ける?」
京太郎「……」
461 = 1 :
『じゃ、また明日学校でね。バイバーイ』
京太郎「行くよ。バカでガキっぽいやつらの言うことなんか気にしない」
「そう、じゃあ大丈夫ね。……あ、好きな子でもできた?」
京太郎「……なんでそうなるのさ」
「母親の勘? うーん、これは当たっちゃったかな?」
京太郎「ちがうから。ぜんっぜんちがうから」
「ふふ、あーやーしーいー」ツンツン
京太郎「や、やめてよ……」
「ただいまー。お、帰ってたか」
462 = 1 :
「おかえりなさい♪」
「連れてきたぞ。家の中あったかくしといてくれたか?」
「もちろん」
京太郎「なにその大きなカゴ」
「これか? そうだな……新しい家族だよ」
京太郎「かぞく?」
「百聞は一見に如かず……ほら」
「キュッ!」
463 = 1 :
京太郎「ど、どうぶつ?」
「キュッキュッ」スリスリ
京太郎「うわ、なにこいつ」
「カピバラだな。ネズミの仲間だ」
京太郎「ネズミにしては大きすぎる……」
「まだ子供だからな、もっと大きくなるぞ」
京太郎「それに、なんだか、くっついてくるんだけど」
「一番人懐っこいのもらってきたからな。まぁ、遊んでやってくれ」
「あ、そうだ。名前つけなきゃね」
「京太郎、お前がつけてやれ」
京太郎「え、おれが?」
「キュッ、キュッキュッ」クイクイ
「ほら、催促されてるぞー?」
京太郎「わ、わかったよ……」
464 = 1 :
京太郎「カピバラだから……カピ、とか?」
「……ぷっ」
「……ふふっ」
京太郎「……なにさ」
「いやいや、安直だけどいいんじゃないか?」
「この子も気に入ったんじゃない?」
「キュッ!」
京太郎「そ、そうかな?」
「キュッキュッ!」スリスリ
京太郎「……これからよろしくな、カピ」
465 = 1 :
京太郎「あ~、やっぱ学校行きたくない……」
京太郎「でも行くって言っちゃったしなぁ」
京太郎「はぁ……」
『じゃ、また明日学校でね。バイバーイ』
京太郎「……まあ、わるいことばっかじゃないかな」
「あ、ぼーりょくま!」
「まっきんきんのすが!」
京太郎「……」
「学校出てきたのかよ」
「ずっと休んでりゃいいのにな」
466 = 1 :
京太郎「……ふん」スタスタ
「な、なんだよ、やんのか?」
「また先生に言いつけてやるからな!」
京太郎「バカなうえにガキっぽいのにつきあってる時間とかねーから」
京太郎「じゃーな」
久「あ、きょうたろうじゃん。いっしょに行かない?」
京太郎「じゃあどっちが先につくかしょうぶな」
久「えー? 朝から走りたくない」
京太郎「お先っ」ダッ
久「ちょっ、ひきょうもの!」ダッ
467 = 1 :
というわけで二本のうちの一本は終了です
二本目は眠くなければ明日あたりにでも
今日は寝ます、おやすみなさい
471 :
乙
明日はスヤスヤフラグが立ったな
472 :
無敵コンビ結成秘話なのかな
おつでした
473 :
乙でした!!
475 :
良いぞ!
476 :
残業地獄から解放される喜び……!
風呂入ったら始めます
477 :
舞ってた
478 :
風呂で寝かけて携帯を水に落としかけるも無事帰還……っ!
始めます
479 = 1 :
・三年、冬、もう逢えないことよりも
京太郎「……」カリカリ
「キュッ、キュッ」
京太郎「……悪い、もうすぐ試験でさ」
「キュッ?」
京太郎「物凄く面倒だけど、やんなきゃいけないからさ」
「キュッ……」
京太郎「はは、試験終わったら遊んでやるよ」
「キュッ!」
京太郎「嘘じゃないって、ホントに遊んでやるから」
京太郎(そのためにも今は……)
京太郎(あ~、もう勉強したくねぇ!)
京太郎(試験早く終われ! いや来るな! ……やっぱ早く終わってくれ)
480 = 1 :
京太郎「お、終わった……やっと終わったぁ」
京太郎「これで、これで俺は自由の身に――」
久「さぁ、次は二次試験に向けての勉強ね」
京太郎「久ちゃん!?」
久「と、言いたいところだけどね。せっかくだから何か食べて帰る?」
京太郎「話がわかるぅ!」
久「ま、ここからはもっと過酷だしね」
京太郎「ぐふっ」
久「試験どうだった?」
京太郎「とりあえず今は目をそらさせてください」
久「結果が来たら嫌でも見なきゃいけないしね」
481 = 1 :
久「ところで、なんで電話に出なかったのよ」
京太郎「電話? そういや電源切るの忘れてたな」
久「昼にかけたんだけど」
京太郎「おっかしいなぁ、それなら気づかないはずが――ありゃ」
久「電源切れっぱなしじゃない」
京太郎「電池切れだ。そういや昨日寝落ちして充電してなかったわ」
久「じゃあメールも送ったけど見てなさそうね」
京太郎「まぁ、こんなこともあるって」
久「そうね、晩御飯のリクエスト聞きたかっただけだし」
京太郎「お、ということは?」
久「とりあえずセンターは終わったし、お祝いってことで私の奢りよ」
京太郎「今日は太っ腹だな」
久「……わがままで振り回してる自覚はあるから」
京太郎「ま、始まりはそうだろうけど、結局は俺がそうしたいからそうしてるだけだって」
久「ねぇ……手、つないでもいい? 寒いし」
京太郎「いいな。ちょうど手袋が片方、ポケットの中で行方不明なんだ」
久「ぷっ、なによそれ」
482 = 1 :
京太郎「今日はごちそうさま」
久「次はそっちの奢りね」
京太郎「えぇ……最近は金欠気味なんだけど」
久「残念、もう食べた後だから取り消しは不可」
京太郎「くそっ、はめられた……!」
久「タダより高いものはないのよ」
京太郎「さっきのわがまま云々は一体どこに……」
久「それはそれ、これはこれ」
京太郎「だよなっ」
久「じゃ、明日は休みにするからまた明後日ね」
京太郎「よっしゃ! 思う存分休める……」
久「束の間のってやつね。嵐の前の、でもいいかもしれないけど」
京太郎「……休みが終わったら何が起こるんだ」
久「二次対策よ」
京太郎「ですよねー」
483 = 1 :
京太郎「ふぅ……」
京太郎(なんか一山越えた感あるな)
京太郎(またすぐに勉強勉強の毎日になるんだろうけど)
京太郎(まずは自己採点やらなにやらか……)
京太郎「やめだ、やめ」
京太郎(休みなんだから考えないようにしよう)
京太郎(余計なこと考えてたら休まらないしな)
京太郎「ただいまー」ガチャ
京太郎(……あれ、いつもは母さんが出てくるところなんだけど)
京太郎(靴はあるし……ん?)
京太郎(一足多い……男物か)
京太郎(誰かお客さんでも来てんのかな?)
484 = 1 :
「……おかえり」
京太郎「ああ、ただいま。お客さん来てんの?」
「連絡したんだけど、気づかなかったの?」
京太郎「電池切れちゃっててさ」
「そう、なら仕方ないわね……」
京太郎「……あのさ、なにかあったのか?」
「……」
京太郎(なんだ、いつになく雰囲気が……)
京太郎(間違ってもお祝いとかサプライズって感じじゃ……)
京太郎「母さん」
「落ち着いて聞いてね――」
485 = 1 :
京太郎「……」
『多臓器不全……原因は老衰によるものだと思われます』
『少し前から兆候は見られましたが――』
久「ちょっと、聞いてるの?」
京太郎「ん、ああ……」
久「もしかして勉強のしすぎで具合悪くなった?」
京太郎「いや、特に不調なわけじゃ」
久「休みボケしちゃった?」
京太郎「……悪い」
久「別に謝ってほしいわけじゃないけど……」
京太郎「もうすぐ昼だし、食堂行かないか?」
久「そうね、ご飯食べて午後に備えますか」
486 = 1 :
久「案外空いてるわねぇ」
京太郎「単純に利用者が減ったからじゃないか?」
久「自由登校で来てない人もいるしね」
京太郎「とりあえず席確保しようぜ」
優希「お二人さんもお昼かー?」
久「一緒に食べる?」
優希「教室にのどちゃん達を待たせてるんだじぇ」
久「さしずめ、ここのタコスが目当てね」
優希「ご名答! 先輩、是非とも買ってほしいんだじぇ」
京太郎「……そうだな」
優希「へ?」
久「あら?」
京太郎「なんだよ、いらないのか?」
優希「最近はスパルタ気味だったのに……もしやデレ期が!?」
京太郎「いや、たまには餌やるのも悪くないなって」
優希「ペット扱い!?」
京太郎「はは、もらえる時にもらっとけ」
優希「うぅむ……たしかに。というわけでゴチになるじぇ!」
487 = 1 :
久「金欠気味じゃなかったの?」
京太郎「まあ、タコス一個分だからな」
久「はぁ……なんだかんだ言っても、年下の子には甘いんだから」
京太郎「そうかぁ?」
久「そうよ」
京太郎「まぁ、かもな……」
京太郎「なにかしてやれる時にしてやらなきゃって思ったんだ」
久「……なんかそれ、死期を悟った人の物言いね」
京太郎「俺はいたって健康体だ」
久「たしかにもう少しで卒業だけどね」
京太郎「あと一ヶ月とちょっとか」
久「なんだかんだで色々あったわね」
京太郎「そうだな……っと、早く食おうぜ。麺が伸びる」
久「私はご飯ものだから」
京太郎「んじゃ、いただきます」
488 = 1 :
久「……うーん」
まこ「なんじゃ、悩み事か?」
久「あ、これから部活?」
まこ「ミーティングじゃ……部員獲得の」
久「ああ……なんか懐かしいわね」
まこ「最早他人事かい」
久「まぁ、なるようになるわよ」
まこ「やれやれ……で、そっちは?」
久「私はね……悩み事というか、京太郎の様子がおかしいというかね」
まこ「というと?」
久「あいつ、今日は真面目に黙々と勉強してたのよ」
まこ「なるほど、たしかに様子がおかしいのぅ」
久「宿題出してもなんも文句言ってこなかったし」
まこ「悪いもんでも食ったとか?」
久「少なくとも昼ご飯は普通だったけどね……」
まこ「ふぅむ……もしくは目をそらしたいことがある、とかかの?」
久「一番目をそらしたいのは二次試験のことだと思うのよね」
まこ「もっともじゃな」
久「そんなレベルの話だったらいいけど……ほっとくと一人で抱え込んじゃうからさ」
久(せめて私には話してくれてもいいと思うんだけど……)
久「……じゃ、帰るわね」
まこ「件の先輩は?」
久「用事があるってさっさと帰っちゃった」
489 = 1 :
『もう時間はあまり……』
『……見守ってあげることしかできないかと』
京太郎「……寒いな、雪降ってきた」
京太郎「明日の朝は雪かきかな」
京太郎「家に帰りゃあったかいんだろうけどさ……」
透華「頭に雪が積もっていますわよ」
京太郎「傘なんてさして優雅だな」
透華「当然ですわ。せっかく髪を整えてもらったのですから」
京太郎「そのアンテナも?」
透華「は?」
京太郎「い、いや、なんでもない」
490 = 1 :
京太郎「ハギヨシさんは?」
透華「今日はお休みですわ。久々に走りに行くと言っていましたわ」
京太郎「この時期にか……」
透華「それよりも、こんなところで風邪でも引くつもりですの?」
京太郎「考え事だよ、この時期になると色々あるんだよ」
透華「そういえば受験生でしたわね……ふむ、どうしてもと言うのなら専属の家庭教師を付けてあげてもよろしくってよ?」
京太郎「そういうのはもう間に合ってるよ」
透華「あら、残念ですわ」
京太郎「これからどっか行くのか?」
透華「いえ、帰るところですの」
京太郎「じゃあ送ってってやるよ」
透華「ふふ、ようやく心構えができてきたみたいですわね」
京太郎「ほら、傘」
透華「私の傘ですわよ?」
京太郎「俺が持ってやるって言ってんだ。ハギヨシさんにはそうしてもらってるだろ?」
透華「……それは日傘の時ですわ」
京太郎「その方がいい感じに目立つんじゃないか?」
透華「そこまで言うのなら……」スッ
京太郎「それでは参りましょう、お嬢様」
491 = 1 :
透華「……」
京太郎「……」モッサリ
透華「……」
京太郎「……」コンモリ
透華「ええい、気になりますわっ」バッ
京太郎「うおっ」
京太郎「人の頭をいきなり叩くなよ」
透華「叩いたのではなく雪をほろったのです!」
京太郎「なんだ、そうだったのか。ありがとよ」
透華「まったく……一緒に傘に入ることを許可しますわ」
京太郎「いいよ、狭いし」
透華「いいから入りなさい!」グイッ
京太郎「っとと」
492 = 1 :
透華「特別、あくまで特別ですわ!」
京太郎「そんな騒がなくても聞こえるから……」
透華「うぅ……」
京太郎(恥ずかしいならやるなよ……)
京太郎(いや、それだけこいつが優しいってことか)
京太郎「……」
透華「今日はいやに静かですわね」
京太郎「……」
透華「ちょっと、聞こえていますの?」
京太郎「……聞こえてるよ」
透華「なら返事くらいしなさいな」
京太郎「悪いな」
透華「わかれば良いのですわ」
透華(調子が狂ってしまいますわ……)
493 = 1 :
透華「本当にそのまま帰るのですか?」
京太郎「誘ってくれて悪いけどな、今日は遠慮するよ」
京太郎(厄介になってもいいけど、あんまりカッコ悪いところは見せたくないしな)
透華「仕方ないですわね……また今度いらっしゃいな」
京太郎「そうするよ」
透華「むしろとっとと受験に失敗してうちに来なさい」
京太郎「ここまでやってるんだから受かっておきたいぜ……」
透華「それと……」
京太郎「ん?」
透華「……いえ、なんでもありませんわ」
京太郎「そうか……じゃ、またな」
494 = 1 :
『もう十年……そんなに経ったのね』
『ああ、いつかはこうなるだろうとは思っていたけどな……』
京太郎「……どうしたらいい?」
京太郎「いや、どうしようもない……俺にはなにもできない」
京太郎「なにを、してやることも……」
美穂子「風邪、引いちゃいますよ?」
京太郎「さっきも言われたな、それ」
美穂子「ふふ、その人もきっと心配してたんですね」
京太郎「今の俺ってそんな危なっかしいかな?」
美穂子「危なっかしいというより……行き場がないように見えて」
京太郎「行き場か……」
京太郎(帰ればいいんだろうけど、帰ったら……)
495 = 1 :
京太郎「勉強に疲れちゃってさ、ぶらぶらしたい気分だったんだよ」
美穂子「あんまり根を詰めすぎないでくださいね? 私からも久に言っておきますから」
京太郎「優しいなぁ……そういやここってどのへんなんだ?」
美穂子「え?」
京太郎「悪い、適当に移動してたからさ」
美穂子「どうりで……珍しいところで会えたって思ったんですけど」
京太郎「こっちって風越の近くか?」
美穂子「というにはちょっと離れてますけど、うちの近くです」
京太郎「ということは帰りか。結構遠くまで来たな」
美穂子「あの……せっかくですし、寄っていきません?」
京太郎「みほっちゃんの家に?」
美穂子「きょ、今日はちょっとお母さんも帰りが遅くて……ってなに言ってるのかしら」
京太郎「……俺のこと、どう思う?」
美穂子「え、えぇ!? それは……」
京太郎「俺ってどんなやつだと思ってる?」
美穂子「あ、それなら……」
496 = 1 :
美穂子「強引で馴れ馴れしくてスケベで」
美穂子「でも、なんだか嫌えなくて」
美穂子「なにはなくとも誰かを支えてあげられる人」
美穂子「――だと思います」
京太郎「なんというか……結構容赦ないな」
美穂子「第一印象って、なかなか拭えないんですよ?」
京太郎「うん、ゴメン」
京太郎(誰かを支えてあげられる、か……)
京太郎(……じゃあ、カッコ悪いとこは見せられないな)
京太郎「いきなり変なこと聞いて悪かった」
美穂子「驚きましたけど、イヤってわけじゃありませんよ」
京太郎「んじゃ、そろそろ行くよ。今度また両親がいない日に誘ってくれ」
美穂子「あ……」
美穂子「両親がいない日……それって、そういうことなのかしら?」ポッ
497 = 1 :
『京太郎、なるべく早く帰ってきてね』
『……ごめん、遅くなるかも』
京太郎「それで、いまだに帰れてないと」
京太郎「もう晩飯時か……腹減ったな」グゥ
京太郎「……こんな時でも体は正直だよな」
京太郎「どこか入るか?」
京太郎(正直食欲はないんだけど、腹の虫はうるさいし)
京太郎(でもあんまり余裕ないからな……)
京太郎「ふぅ……どうすっかな」
ゆみ「財布を覗いてため息とは、また不景気だな」
京太郎「ああ……加治木」
ゆみ「今日はもう鬼教官から解放されたのか?」
京太郎「まぁな、宿題は出されたけど」
ゆみ「それがため息の理由か?」
京太郎「いや、ちょっと腹減ってさ」
ゆみ「こんな時間だからな……肉まんとたいやき、どっちがいい?」
京太郎「くれるのか?」
ゆみ「ちょっと買いすぎたんだ。せっかくだし受け取ってくれ」
498 = 1 :
京太郎「うまかった、ありがとう」
ゆみ「それはなによりだ」
京太郎「今日は買い食いの日か?」
ゆみ「流石にそんな暇じゃない。こっちの方だったら欲しい参考書があると聞いたんだ」
京太郎「真面目だなぁ」
ゆみ「そっちは帰って宿題をやらなくてもいいのか?」
京太郎「家はちょっとな……」
ゆみ「帰れない理由が?」
京太郎「帰れないんじゃなくて……帰るのが怖いんだ」
ゆみ「怖い?」
京太郎「まぁ、色々あってさ……それでうろうろしてたら、あちこちで気を使われちゃったよ」
ゆみ「……なるほど」
499 = 1 :
ゆみ「だが、私は甘くないぞ」
京太郎「へ?」
ゆみ「突き放すようで悪いが、家出の手伝いをするつもりはない」
京太郎「……」
ゆみ「それに、そういうことを打ち明けるんだったら、もっといい相手がいるんじゃないか?」
ゆみ「私は帰る。……どうするにしても、後悔はしないようにな」
京太郎「あーらら、振られちゃった……」
京太郎「でも、そっか……俺、甘えたかったんだな」
500 = 1 :
京太郎「来ちゃったな……」
京太郎「でも、いきなり押しかけて……って、そんなことは今更か」
京太郎「……やっぱやめようかな」
久「なにしてんの?」
京太郎「よ、よう」
久「だから、人の家の前でなにしてんのよ」
京太郎「まぁ、なんだ、その……」
久「とりあえず上がって。こんなとこじゃ落ち着いて話できないでしょ」
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