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    元スレ京太郎「俺はもう逃げない」 赤木「見失うなよ、自分を」

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    みんなの評価 : ★★
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    301 :

    京ちゃんはいつもお友だちと仲良くて羨ましいなあ(白目

    302 :

    14枚取るんじゃ四暗刻単騎かどうかは判別つかない気がする

    303 :

    14枚とってくるのに一気に選ぶ訳じゃないんだから最後に持ってきた牌が頭なら単騎でいいやん

    304 :

    >>302
    並び方もそのままで>>292持ってこられたら
    さすがに和もそんな異議唱える気なくすと思う

    305 :

    いっそ轟盲牌使う総理大臣も出しちゃおうぜ

    306 :

    赤木さんの命日ということで、今日もあげていくよー

    307 = 1 :

    「ろ、ロン! 8300点です!」

    「うはぁ、やっぱり通らなかったかぁ………ほれ」


     3日後、俺は赤木さんと約束通り、放課後に雀荘に来ていた。

     レートは点1。入店料が1000円だから、大勝ちしてもせいぜいその元金の半分が返ってくるかどうかの気楽な麻雀だ。


    「ありがとうございました」


     案外勝てるものなんだな、と自分への意外さを感じながら、俺は背伸びして、後ろで見ていた赤木さんと向き合う。


    「どうでしたか?」

    「まぁ、ようやく見知らぬ相手と戦うたびにビビる癖が抜けてきたってとこだな。
     どんな相手にも安定して自分の麻雀が打てるようになってきた」

    「俺の打ち方、ですか?」

    「何だ、無自覚だったのか?」


     赤木さんは煙草をふかしながら、呆れた顔で俺を見た。

    308 = 1 :

    「お前、俺が初めてお前の対局を見た時からそうだがな、後ろに下がることをほとんどしない。常に前へ前へ。どんな苦しい待ちだろうと、手が入りさえすれば親のさらなる大物手に対して逃げることを選ばない。
     ま、それなりに放銃もしているがな。だがむしろ、弱気に流れた時の方が放銃している印象だ」

    「要は無謀だってことですか?」

    「まぁそれも否定できないな。だが………型にはまった奴ほど、そうやって突っ込んでくる奴のことは恐ろしく感じる。
     前へ進みつつも、最小限の回避だけで相手の手を躱して突っ込み続けられるようになったら………お前、この上なく恐ろしい打ち手になれるぜ」

    「お、おお………!」


     かっこいい。

     少年心に素直にそう思った。何か少年漫画の主人公的な感じがする。


    「ほれ、また卓が開いたぜ。打ってこい」

    「はい!」


     初めて勝ちが続いたことで、俺の調子は上がりに上がっていた。

     麻雀を初めて、こんなことは初めてだった。


    (やっぱり気持ちが調子に現れるパターンか。
     なのに心の中に突っかかるものを残したまま打ってちゃ勝てないのも道理だ。ま、ガキらしいっちゃガキらしいな)
     

     赤木さんが後ろで見守っていてくれると、なんだか心が昂ると同時に、安心感がある。
     
     この人が付いてくれているだけで、並大抵のことは怖くない。


    「お願いします!」



    「さて………打つ(ぶつ)か」
    「御無礼」
    「あンた………背中が煤けてるぜ」


     と思っていた時期が俺にもありました。

    309 = 1 :

     帰り道


    「ハッハッハ………! また気持ちよく飛ばされたもんだな」

    「うう………なんすかあの人たち」


     俺たちは時間も早い冬の夕暮れ道を通って帰っていた。

     同じ卓に着いた途端、俺の思考は次の一言で埋まった。


    (わーwww。俺死んだなーwww)


     まるで全力全開時の咲を3人同時に相手にした気分だった。
     
     ちなみにあの人たちとの戦った内容を簡潔に述べると。


    半荘1回目
     親が俺で、第1打は北。
     それをタバコ吸ってたお兄さんがポンして、さらに次の巡にお兄さんは西と南を暗槓。
     運よく3巡目で張れた俺は打白。
    「ロン。字一色」
     飛びました。


    半荘2回目
     もう一度俺が起家で打9p。
    「ロン。人和・大四喜・四暗刻単騎」
     黒シャツのお兄さんに飛ばされました。


    半荘3回目
     また俺が起家でなんとダブリー出来た。
     今度はさすがに人和でいきなり飛ばされはしなかった。
    「御無礼。地和・国士十三面待ちです」
     代わりにツモで飛ばされました。


     ここまでくると意識を飛ばさなかった自分を褒めたい。

     店にいた他のギャラリーは、皆無言で何とも言えない表情で俺のことを遠巻きに見つめていた。

     なぜか店の主人がサービスでジュースを出してくれて、肩を何度か優しく叩かれた。

     ちなみに赤木さんは後ろでずっと腹を抱えながら爆笑していた。畜生め。

    310 = 1 :

    「ま、あれは規格外の化け物どもだから気にしなくてもいい。他の対局は楽しかっただろう?」

    「そりゃ、まあ楽しかったです。なんて言うか、牌が俺のことを応援してくれてるような感じまでして………」

    「それが、流れが来てるってことさ。お前に最も教えなきゃならないのは、流れとのうまい付き合い方だ」

    「流れですか?」


     これはまた、和が聞いたら憤慨しそうな内容だ。


    「ああ。賭けには何事も、流れが存在する。
     その流れが良いからって調子に乗っていると、ふっ……と流れが途絶えた時に、派手にスッ転んじまう。
     逆に、流れが来ているのに手堅く打ち過ぎて、倍満役満と行けるのに満貫程度で収めちまうのもだめだ。
     お前は流れに乗るのは、実はかなりうまい。
     ただ、今自分に本当に流れが来ているのか、来ていないか、いつ途切れるかを敏感に察知できるようにならなきゃだめだ。
     技術自体は人並みにもうできている。後は、勝負にいくら身を投じれるかってところさ」

    「はぁ………」


     流れというものを、和みたいに真っ向から否定しはしないが、かといってオカルト全開で信じているわけでもない俺は、曖昧な返事をしてしまう。

     すると赤木さんは、ややうんざりしたような感じで語り始めた。

    311 = 1 :

    「世の中にはなぁ、とんでもない化け物がいるんだぞ?
     その気になれば配牌で字牌の対子が5つあったり、配牌で国士張って地和確定だったり、上がるつもりでカンしたら絶対にドラ乗ってリーチドラ12とかして来たり…………
     まぁ、全部同一人物だが」

    「えぇ………」


     漫画じゃあるまい、と言いたかったが、麻雀に関してこの人が言うのだし本当のことだろう。

     というかこないだ部室で見せたあなたの離れ業の方が恐ろしいんですがそれは。


    「まぁ、そんな流れに乗るのがあほみたいに上手い化け物と相対したら、小手先の技術も必要なんだがな、ブラフとか。
     それは後々本当の勝負の場に立つようになったら覚えればいい」

    「そ、そうですか………・」


     この人の話は聞いてみたい感じもするし、やっぱり怖いからいいですと同時に言いたくもなる。

     でも総じて俺はこの人のことが好きだった。

     そうやって話すうちに、バス停に着く。赤木さんはここでお別れだ。


    「じゃあ赤木さん。明日も学校終わったら旅館の方に行きますから」

    「おう、じゃあな」


     小さく手を振って、笑って別れる。

     何だか、新しいおじいちゃんが出来たような感じだ。


    「さて、一応課題とかもやりますか」


     帰路を明るい気持ちで歩きながら、俺と赤木さんの日々は充実していた。

    312 = 1 :

    今日はここまでです。

    アカギの最新刊今日発売だったけど面白いよね。
    俺の好きな安岡さんも大活躍するよ。

    ゲスト3人組に期待していた人は出番少なくてごめんなさい。

    >>305 ごめんよ、原作見たことないんだ……

    313 :

    乙乙
    流れの概念がある人はsakiには結構出てきてるよね

    314 :

    乙です
    新刊出てたのか買わなきゃ

    315 :

    赤木が例えで出してた人って鷲巣様ですね。
    しっかりと覚えてたんですね。

    316 :

    乙。
    ネリーとかモロにそれだよね>流れの概念

    317 :

    むこうぶちはむしろ流れしかないからなw

    318 :

    オーラスの安岡さんはむしろ活躍しすぎや

    319 :

    >>312
    大丈夫!「轟盲牌ッ!!」とか言わせとけばそれらしくなりますって!(暴論)

    真面目な話、無理してまで特定のキャラ出してとか言わんので問題ないですぞ

    320 :

    こんばんは。
    書き溜め全然進まないうえに学校始まっちゃったねー(白目)

    そんじゃ投稿してきます。

    321 = 1 :

     その日の夜11時半。


    「うっ、ひくっ、ぐすっ…………」


     俺はリビングのソファに、カピーを膝の上に乗っけて腰かけながら泣いていた。


    「うぐ………ぐすっ」


     カピーしか他にいない静かなリビングで、俺は人目を気にすることなくボロボロと涙を流した。

     だが悲しみの涙ではない、むしろ流せてうれしい涙だ。 

     ピーンポーン………


    「ん?」

     膝に乗っけていたカピーを下ろして、玄関に向かった。

     今日は父さんも母さんもいないはずだが、誰だろうか?

     急いで顔を拭って、玄関を開ける。

    322 = 1 :

    「はーい」

    「こんばんは、京ちゃん」

    「咲?」

    「あれ、京ちゃん顔どうしたの!?」


     涙の痕を見つけた咲が、驚きの声を上げる。


    「ん、ああ。さっきまでターミネーター2見てたから。水曜ドラマで」

    「は…………?」

    「いやー、何度見ても名作だわ。最初から最後まで無駄なシーンが一つたりとも無い。
     地球が宇宙に対して誇る映画だぜ」

    「あほらし…………」


     咲がやれやれとため息をつく。


    「ああん!? お前ターミネーター舐めんなよ!? 特に2! あれを見て感動しないやつは人間じゃないね!
     溶鉱炉に沈んでしまえ!」

    「はいはいわかったわかった。ところで、ちょっと今上がってもいい?」

    「んー? いいけど、何だってまたこんな時間に」

    「いいじゃん、京ちゃんなんだし」

    「何だよそれ………」


     気温はマイナスだし、こんな寒いときに女の子をつっけどんに返すのも悪いので、とりあえず家に上げることにした。

    323 = 1 :

    「お邪魔しまーす」

    「されまーす。今日は俺とカピーしかいないぞ」

    「あれ、そうなんだ?」

    「だから日付が変わる前に帰れよ。帰りは送るから」

    「やっぱそういうところ気にするんだ?」

    「誰かさんたちがいろいろと押し付けるせいで、いろいろ気づかいが出来るようになりましてねぇ」

    「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


     部活関連の冗談を持ち出すと、咲が全速力で誤ってくる。

     あれだけボロボロ泣いてたんだ、今だって気にしてはいるのだろう。

    324 = 1 :

    「カピーちゃんこんばんわー♪」

    「キュー♪」


     もう何度も会って咲のことを覚えているカピーが鳴く。

     咲はカピーを撫でようとするが、ふと手を止めた。そのまま俺の方を振り向くと。


    「えい。ジュー」

    「冷てっ!?」


     口で効果音を出しながら、両手で俺の頬を挟んできた。

     手袋をしてなかった咲の手は冷え切っていて、背筋がぞくぞくする冷たさだった。


    「うん、温まった。お待たせカピーちゃん」

    「キュー♪」

    「何しやがる………」

    「え? だって冷たい手で触ったらカピーちゃんがかわいそうじゃん?」

    「俺の頬はどうでもいいんかよ!」


     冷え切った頬を自分の手でさすりながら、咲に文句を言う。

     とりあえず飲み物を用意しに、台所に向かう。


    「お腹壊しそうな冷水と火傷しそうな熱湯どっちがいい?」

    「お茶でー」

    「へいへい」


     仕返しではないが嫌味を言うと、完全にスルーされた。

     やかんを火にかけ、その前で腕を組んで突っ立つ。

     後ろではカピーにデレデレの咲が一方的に会話を楽しんでいる。

    325 = 1 :

    「もういいか」


     かすかにやかんの口が笛のような音を出すと、そこで火を止めた。

     どうせ後で飲める温度まで冷ますのに、わざわざ沸騰させることはない。

     多分80度くらいのお湯をお茶葉の入れた急須に注ぎ、湯呑を二つ用意する。


    「ほれ、少し冷めるの待てよ」

    「ありがと、京ちゃん」

    「ん、どういたしまして」


     咲がにっこり笑ってお礼を言ってくる。

     ふーふーお茶に息を吹きかけて、一口飲む。

     何だか小動物のようで、見ていて和んだ。

    326 = 1 :

    「…………口にすれば、当たり前のことなのにね」

    「ん?」


     何かお茶の味が変だったかと思い、俺も急いで一口すする。

     特におかしなところはない。


    「そうじゃないよ。ありがとうって、京ちゃんに言うの、久しぶりだったから」

    「ああ…………」


     なんとなく、咲の言いたいことが分かった。

     部活でこうやって皆に飲み物を出したりしても、最近は「どうも」とか「おう」とかしか言ってもらえなかった。

     面と向かってありがとうと言われたのは、結構久しぶりだった。


    「ごめんね…………」

    「いいよ別に。もう気にしてないし」

    「京ちゃん」

    「どうした?」


     咲が真下を向いてうつむくので、横から覗き込む。


    「京ちゃんは………何で、怒らないの?」

    「え?」

    327 = 1 :

     咲が涙声になる。

     横から覗く顔はよく見えないが、おそらく泣いている。


    「私たち………ずっと京ちゃんにひどいことしてた。
     なのに、何で京ちゃんは私たちを許しちゃうの?」

    「え、いや………怒ったぞ、一応? こないだ仲直りした日の昼に、部長に怒鳴ったし………」

    「そうじゃない!」


     咲が急に顔を上げて叫ぶ。

     その顔は、涙に濡れてぐしょぐしょになっていた。


    「私たち、どんなに謝っても足りない、自分たちのことしか考えないで、ひどいことばっかりしてた………!
     なのに何で京ちゃんは、私たちのこと許しちゃうの?
     立ち直ってくれたのはうれしいけど、何でそこまでして、麻雀部に居ようとするの?
     もっと怒って当然なのに、一緒に居たくないくらい嫌われて当然………なのに………!」

    328 = 1 :

     ぼろぼろと俺の目も憚らず、咲はしゃくり上げて顔を真っ赤にして泣く。


    「……………さきー」


     俺は湯呑を持って温まった手で、咲の頬を撫でてやった。


    「まぁ何でって言われたら………俺が皆のこと、大好きだからなんだろうなー」

    「え………」


     咲はキョトンとした表情になっている。


    「そもそも俺が麻雀強くなろうと頑張ってたのも、皆の隣にいたいからだしな。
     なんつーかさ………俺ってさ、しばらく一緒にいるとさ、その人のことが大好きでたまらなくなっちまうんだよな。
     優希はまぁ犬犬呼ばれるのはともかくとして、気の置けないい奴だし。
     和は見て分かるほどに超スーパー美少女で、まじめにがんばればそれだけ褒めてくれるし。
     染谷先輩は、俺のこと結構気にかけてくれるいい先輩だし。
     部長は……普段から悪ふざけがちょっと………ちょっと?、過ぎるけど根はいい人なのは感じるし………うん、根は………ね、根は」


     最後はちょっと変な強調の仕方になってしまったが、とりあえずさておく。一応事実だしね。うん。
     合同合宿に置いていかれた時も、「買い出し宜しく」とだけ書いてくような人だしね、うん。

    329 = 1 :

    「そんなみんなが麻雀やってるときは、鬼のように豹変するんだ。いい意味でだぞ?
     とにかく、皆方向性は違うけど、どんな相手にも負けず勝っていくそんなみんなを見ていると、凄く格好良く見えるんだ。
     もう心の底から、混じりっ気のない憧れとかが湧いてきて………、こんなみんなと、ずっと一緒に居たいって思うんだ」

    「あ………う………」


     咲の顔の赤さが、さらに増す。

     自分でも結構恥ずかしい言い方をしているのはわかるが、今更だ。


    「まぁ、ひたむきさが過ぎて一緒に居ると辛いのもまた事実だったけど………、やっぱ俺も、皆と同じくらい格好よくなりたいって気持ちもあったからさ。男だし? だからさ………」


     ポケットからハンカチを取り出し、ぐしゃぐしゃになった咲の顔を拭ってやる。



    「俺はお前のこと、嫌いになったりはしないよ、咲。
     こないだまで一緒に居て辛くはあったけど、嫌いにはなるはずがない。
     しかもお前だけは、ずっと俺のこと心配してくれてただろ? ありがとうな」

    330 = 1 :

    「京………ちゃ………う、ふ、ふあぁあああああ………」

    「わわっ! なんでここで泣くんだよ!?」


     咲が声を上げて泣き始めて、ぎょっとする。
     あれ? 結構いい話してたと思うんだけど。イイハナシダナーってなると思うんだけど。
     イイハナシカナー? だったの?


    「何なのさぁ……京ちゃん………。かっこよすぎるよぉ………」

    「へ?」

    「優しすぎて、かっこよすぎだよぉ………」

    「そ、そう、か?」


     怒らないことを優しいと言われるのはわかるが、かっこいいというのはピンと来なかった。

     とりあえず褒められているようなので口出ししないが。


    「と、とりあえず泣き止んでくれ、な?」

    「うん………」

    331 = 1 :

     こんな夜遅くの家に二人っきりの高校生の男女が居て、男が女を泣かせているとなると、字面にするとかなり危ないものがある。

     俺は急いで話を変えて、咲の気を逸らすことにする。


    「え、えーっと、俺がいない部活っていうのは、どうなってるのかけっこう興味あるけど」

    「ぐす………えっと、毎日優希ちゃんはタコスが足りない足りないって言ってる」


     上手く咲が反応してくれて、俺のハンカチで目許を拭いながら答えてくれた。


    「あれ? タコスの材料は部室にあるだろ?(俺が買いに行かされた)」

    「京ちゃんのタコスじゃないと、舌が満足しないんだって」

    「あれま」


     少しうれしい知らせだった。

     最近は用意したことを「よくやった犬!」とか言われこそすれ、味に関しては何も言われなかったからだ。

    332 = 1 :

    「先輩達と和ちゃんは、牌譜の多さにひーひー言ってたなぁ。テスト前にやるものじゃないって」

    「おーおー、どんなに大変か身を以って知ってくれ。咲は?」

    「…………一応、部室のパソコンで一度ソフトの使い方教えてもらったんだけど」

    「あ、うんわかった」


     咲の表情ですべて理解した俺は、そこで聞くのをやめた。

     優希も事務作業の戦力にはならないだうし、和と先輩達の苦労が偲ばれる。


    「買い物とかは、私が放課後にすることになって………今もその帰り」

    「ああ、なるほど。でも遅くないか?」


     時計を見る。もうすぐ日付が変わりそうだ。


    「京ちゃんが、何時に帰るかわからなかったから…………」

    「え?」

    「あ、えっと、久しぶりに、話したかったっていうか………」

    「久しぶりって、学校で毎日会ってるだろ。しかもまだ3日しか経ってないし」

    「それでも、一緒に麻雀打ちたいんだもん…………」


     咲が拗ねて口を尖らせてうつむく。子供か。


    「…………なら、打つか?」

    「え?」

    「今からはもう遅いけど、明日赤木さんに、roof-topで打っていいか聞いてみるよ。
     雀荘って程でもないけど、一応いろんな人と打てる場所だし」

    「本当!?」

    「ああ、出来たら明日皆で打とうぜ」

    「うん! 誘ってみるね!」

    「うん。ほれ、急いでお茶飲んじまいな。もう遅いし帰り送ってやるから」

    「ありがと、京ちゃん」


     その日はそのまま咲を家まで送り、自宅でカピーと一緒に寝た。

     帰り道で咲がやけに手をつなぎたがっていたけれど、断る理由もないから言う通りにした。

    333 = 1 :

    ここまでです。
    製作状況としては、この後のroof-topでの闘牌シーンが頭の中で固まったくらいです。
    というかどんな手で勝つかっていうのは終盤までもう全部決まってるんだけどね。
    文字にするのは面倒なのよ。


    え? 夏休みにもっと書いておけだって?
    ごめん何言ってるのかよくわからない

    334 :

    咲さんヒロインですわ

    335 :

    情景ができてもそれを言葉として形作るのは
    結構労力がいるからねぇ。
    乙乙。

    336 :

    そういやカピって何の目的で出したんだろな
    設定がほぼイかされてないけど

    337 :

    おつです

    あと確か緑茶は沸騰してないお湯で淹れると美味しいらしいから>>325では図らずもおいしい淹れ方してたってことになるね

    338 :

    咲さん最高

    339 :

    >>336
    元々は一気に合宿から県大会じゃなくて、3巻ぐらいだったか? かけてじっくり清澄掘り下げてから県大会行く予定やったんやで。
    少なくともそれで人気出たから(じっくり掘り下げて打ち切りにならなかったか、はタラレバだしね)間違ってはいない。
    なお、少なくとも京ちゃんは(のみかは知らん)全力で影響受けた模様。

    以前ブログでりつべ本人が「京ちゃんの過去はプロット全部出来てんのに入れる場所無いンゴwwwwwwww(なんJ訳」言ってるww

    340 :

    >>336
    連載当時にちょっとブームになってたから出したってだけじゃね?

    しかしそのお陰でカピバラは個人で買うとめっちゃ金かかる
    →そんな動物をペットとして飼う位の経済的余裕が京ちゃんの家にはある
    →あれ?京ちゃん割と金持ちじゃね?

    なんて二次設定が生まれてしまったな

    341 :

    でも実際カピバラってちょっとぐぐってみるだけでも
    本体価格60~70万、月の餌代だけでも最低3万以上
    その他寒さ対策も兼ねた入浴設備etcetcとか出てくるからな
    +育ち盛りの子どもがいる家庭とか割とお金持ち確定だろってなるわな

    342 :

    その辺作者も編集もぶっちゃけ何一つ考えてなかった可能性も0じゃない

    343 :

    余程捻くれた設定でもない限り、京ちゃんはお金持ち確定だよね
    まあ作者も適当に付け加えただけだろうし深い意味はあるまいが

    344 :

    金持ちで背が高くてイケメンとか

    345 :

    >金持ちで背が高くてイケメン

    ここだけ見ると嫌味なライバルキャラや寝取りキャラの属性だなw

    346 :

    京ちゃんはぐう聖。異論は認めない。

    久しぶりに投下しますぜ。

    347 = 1 :

    「えっと………ここです」

    「へぇ、麻雀打つにはずいぶんとこじゃれた感じじゃないか」


     翌日の放課後、俺は赤木さんと一緒にroof-topに来ていた。

     赤レンガに洋風窓の、いかにも明るい雰囲気のお店。

     よくある煙草の煙がすぱすぱ蔓延している雀荘とは大違いだ。

     何より雀荘には「本日メイドデー」とか書いてある看板は置いてない。


    「よぉきたのぉ」

    「お邪魔します、染谷先輩」


     俺と赤木さんは背が高いから、店内からも見えたのだろう。

     メイド衣装に身を包んだ染谷先輩が、店の入り口から顔を覗かせた。

     前に一度、インターハイが終わってroof-topで打ち上げを行った時にも先輩のメイド衣装は見たが、中々に可愛らしい。

     麻雀部の中では一番(良心的な意味で)大人びた先輩で、今もその雰囲気は抜けきっていない。

     ただ、さらに大人びた落ち着いた色合いの衣装がかえって、背伸びをしている子供らしさを出して可愛らしく見えた。

    348 = 1 :

    「おう、赤木さんも一緒かい。お二人様麻雀卓へごあんな~い」

    「いや、俺は構わない。京太郎を鍛えんのが目的だしな」

    「そうかの? ならまぁええが、うちは全席禁煙じゃけんの。タバコはこっちへポイじゃ」


     先輩が店の入り口のすぐ隣に置いてある灰皿スタンドを指さす。


    「そうかい……(´・ω・`)」


     赤木さんはしょんぼりしてから煙草を捨て、一緒に店の中へ入った。




    「おかえりなさいませ、ご主人様」

    「ご、ごしゅじんさま…………」




     出迎えたのは、やけに堂に入った動作でお辞儀をしたピンクのメイド服の和と、消え入りそうな声でお辞儀をする水色のメイド服の咲だった。


    「ん、う、うん?」


     俺は予想だにしなかった展開に対して、正しく処理を下すことが出来なかった。

    349 = 1 :

    「ほら咲さん。そんなにたどたどしいから、須賀君も困っていますよ」

    「だ、だって、京ちゃんにこの服で………その………」


     和に諫められた咲は、やけに短いスカートの裾の部分(いわゆる絶対領域)を抑えて、もじもじと顔を伏せて俺から身体の正中線を逸らす。

     羞恥心に身を焦がされていることは、傍から見ても明らかだった。


    「えっと、ただいま咲?」

    「お、おかえりなさい京ちゃん…………」


     これがあの大魔王宮永照の妹、魔王宮永咲の普段の性格だと言っても、大多数の人間は信じないだろう。

     メイド服のコスプレして恥ずかしさに悶える魔王。

     噴き出すのを堪える方が難しい。

    350 = 1 :

    「今日は京太郎をもてなしてやろうっちゅうことでな。臨時メイドデーじゃ」

    「はぁ」

    「ご主人様、お飲み物はいかがなさいますか?」

    「お、おう………じゃあコーヒーで」


     自然体でメイドさんをやっている和に、意外さを隠しきれない。

     当の本人は結構面白おかしく楽しそうにメイドさんをやっている。

     まぁ、私服が「アレ」なことを考えると、珍しい衣装が好きなのかもしれない。

     NAGANOスタイル恐るべしだ。


    「そちらの方は…………」


     いきなり声のトーンが落ちる。 

     俺の後ろで黙っている赤木さんを見た途端、和の機嫌が悪くなったのが分かった。


    「酒類はないのか?」

    「当店ではアルコールの類は提供しておりません」

    「じゃあ俺も京太郎と同じもんでいい」

    「はい。ではお席にどうぞ」


     ツンツンしたメイドさんというのもよくありそうなものだが、実際に見てしまうとなんだかしゅんとした。

     俺は赤木さんも和も好きなので、あんまりつっけどんにされると残念なのだが。


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