元スレ京太郎「俺はもう逃げない」 赤木「見失うなよ、自分を」
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501 = 1 :
(赤木さん)
(ん? 手を貸せってか?)
興味無さそうにしていた赤木さんに耳打ちする。
(ええ、ちょっとトイレに入ってもらえます?)
(…………なるほど)
俺がテーブルの下でこっそり、備え付けの調味料の中から塩と胡椒を大量に片手の中に握り込むのを見て、赤木さんがいやーな笑みを浮かべる。
赤木さんがトイレに入っていくのを見て、俺は席を立った。
「おい、お前ら」
「あん?」
身長180センチ以上の男が出てきたことに、馬鹿三人組が少し警戒を強める。
「心のこもってない謝罪なんかもらっても胸糞悪いだけだからな。
見逃してやるから、今すぐに店から出ていけ」
「はぁ? つーかお前………あっはっはっは! おま、あん時の糞雑魚かよ!」
矢木が、俺の顔を見て思い出したのか、いきなり笑い声をあげる。
「あん? 知り合いか?」
「あー、インハイ予選で最初に当たってよ。俺含めて他家に向かって満貫跳満倍満の順番にきれーに振り込んでくれたんだよこいつ」
「ぶっは、だっせぇ!」
馬鹿どもが俺を指さして腹を抑えるが、そんなことはどうでもいい。
俺は仕事のしやすいように、矢木を挑発する。
502 = 1 :
「そういや俺もアンタのこと見覚えあるな。インハイ本番でヘッタクソなイカサマがばれて、無期限出場停止になったクズだったか」
「あ?」
矢木の表情が怒りを孕んだものに変わる。
「舐めてんじゃねーぞザコ? なんだったら、今すぐここでもう一度ぶちのめして………!」
矢木が唾を散らしながら吠える。
だがちょうどやりやすい。自分より背の高い相手の顔を正面から見据えては、手元への注意が反れる。
俺は手に握り込んでいた大量の塩と胡椒を、矢木の目許に思い切りぶっかけた。
「でゃっ!?」
奇妙な悲鳴を上げて、矢木が目を抑えてうずくまる。
「お、おい矢木!?」
慌てた竜崎が矢木の隣にしゃがみ込む。少し余っていたので、こいつにも一丁。
「うぎゃぁっ!?」
堪らず竜崎も同じように悲鳴を上げる。
503 = 1 :
「み、水! 水ぅ!」
「こ、こっちだ! トイレに………!」
残った黒崎が二人の尋常ではない痛がり方を見て、俺を放っておいて二人をトイレへと引っ張る。
しかしすでに対策済みだ。
ガチャガチャガチャガチャ!
いくらドアノブを回し、押しても引いてもトイレは矢木たちを通さない。
「おーう、入ってるぜー」
「おい! 今すぐ出ろ! おい、ぶっ殺すぞ!」
「あー? 最近耳が遠くてなー? なんだって? 気にせずごゆっくりどうぞ?」
「ざけんな!開けろ! おい! こら!」
赤木さんがどんな顔で笑っているか、容易に想像できる。
頼んだのは俺だが、楽しんでくれて何よりだ。
「ひぃ、ひぃい………!」
「目が、目がぁ~~~~!!!」
「あー、店の前に川があるからそこで洗えば?」
「くっそ………!」
「な、なんでもいい! 早く、早くぅ!」
俺が厨房の前に仁王立ちして、「こっちも使わせない」という意思を表すと黒崎は観念したのか、俺の言った通り店を出て、すぐ前の川へとほうぼうの体で二人を引っ張っていった。
ま、護岸工事しっかりしてるから、川に降りるためにはもう何百メートルか歩かなきゃいけないんだけど。
橋から飛び降りれば別だけどな。
504 = 1 :
「きょ、京太郎…………」
「済みません、染谷先輩。勝手なことをして………」
呆然としてる染谷先輩に、頭を下げる。
冷静になってみると、ヤクザ関連の客にこれはまずかったか。
「いや、助かったぞい。というか、おんしこういうことに慣れてたんじゃな。いいガタイじゃから喧嘩は強いかもくらいに思っておったが」
「その、前に一度体格差を考えずに本気で喧嘩したら相手が大変なことになりまして……」
中学三年の時点ですでに180センチを越していた俺は、体格というものが殴り合いにどう影響するのか全く分かっていなかった。
それ以来、ストレートな喧嘩はしないようにしている。
そう考えると柔道とかって、加減次第で無傷で終わらせることもできるし便利だよなぁ。
「今日は念のため、もう店仕舞いしとくわ。帰り道が怖いし、和たちを送って行ってもらえるか?」
「ですね。わかりました」
お礼参りという言葉が脳裏をちらつく。
そう考えると、今日は陽の高いうちに帰路に着いた方がいいだろう。
特に和は、悪い意味で異性のターゲットになりかねない。
そうしてその日は、出来る限り手早く解散となった。
505 :
すばら
506 = 1 :
ここまでですー。
竜崎さん、キャタピラ王子こと矢木さん、黒崎さんが好きな福本ファンの方はごめんなさい。
でも福本のチンピラ悪役って言ったらこのくらいしか知らないんだよ………
鷲巣様は格が違い過ぎるんだよ………
508 :
すばら
509 :
待ってた
510 :
こういうオリキャラは無問題
今回も楽しく読ませてもらったよ
512 :
オリキャラでは無いんだよなぁ……
514 :
ごめんなさい……
5月末が応募する小説大賞の締め切りだったり、英語論文訳して発表するゼミとか、
卒研のための技術身に着けたりとか、5月いっぱいはきついです………
6月に入ると多少余裕が生まれると思うので、そこでまた更新したいと思います………
515 :
待ってます
516 :
ちゃんと計画立てて進めるのは良い事だ
気長に待ってます
517 :
こういう報告はありがたい
リアル大事に
518 :
失踪はしないで欲しいのですよ~
519 :
気長に待ってます
520 :
気長に待ってるぜ
521 :
応募する小説締め切りの夜のこと。
23:50 別途用意するあらすじなど含め、すべて提出するものを用意する。
23:54 いざ提出しようとするが、何故か肝心の小説のデータの入ったtxtファイルがアップロードできない不具合発生。
23:58 仕方なく、デスクトップパソコンで試す。こちらは問題なく動作。必要事項を急いで記入する。
00:01 「応募は締め切りました。次回ご応募ください」
実際に起こったことです。
そんな精神状態で書いたものですがどうぞ
522 = 1 :
「くっ……!」 打3s
「カン――――」
「し、しまっ――――」
「カン、カン、カン! ツモ、緑一色・四槓子!」
「ぐああああああああああああ!!!」
(5,7,9pは全部切ってる! こいつなら………!)
「リーチ!」 打8p
「御無礼、黒一色・四暗刻単騎です」
「うあああああああああああ!!!?」
「だ、ダブルリーチ!」 打中
「ロン、人和・紅孔雀!」
「ぎゃああああああああああ!!?」
40分後
「つ、ツモ………役牌のみ、で……す……」
「煤けるどころか、全身黒焦げ………だが戦い抜いたか………」
「ふふ。いいものを見せて頂きました、失礼」
「いい闘志だったぜ。実力がついたら、また来な」
「は、はひ………」
523 = 1 :
俺と半荘を打ってくれたお兄さんたち3人が店から出ていく。
俺はというと、返事をする気力があることに感謝するほどだった。それだけぼっこぼこにされた。
「おう、終わったか」
「あ、あかぎ、しゃ…………」
「なに死にそうな顔してんだ」
井川プロ特集の雑誌を読んでいた赤木さんは、卓に突っ伏した俺の頭をグシャグシャと撫でた。
やめて、ホントに脳みそ焼ききれそうなの今。
「な、何点取られてたんすかね………」
「知らん。マイナス20万越した辺りで数えるのが面倒になった」
お兄さんたちの点棒箱には、真っ黒な箱下用点棒が山盛りになっている。
途中から店にあるのを全部持ってきても足りなかったので、赤木さんに後ろで数えてもらっていたのだ。
「だーから無茶だって言ったろ? 俺でも死ぬほど苦労するぞあの卓………」
「や、やっぱりやめときゃよかった…………」
赤木さんとの修行のラスト2日。俺はこの間のお兄さんたちに、無謀にも箱下アリのルールで挑み、今こうして死にかけている。
あがれたのは最後の役牌のみだったが、途中で投げ出さなかった自分を今だけは褒めてあげたい。
にしても何なのあの人たち。途中から見せつけてくるかのようにローカル役バンバン出してくるし。別にローカル役はいいんだけど、普通の役満とも可能な限り重複させてくるし。
524 = 1 :
「にしても意外だな。お前は相当気持ちの浮き沈みが激しい奴だと思っていたが、まさかあの連中に真っ向から挑むほどやる気に満ちるとは」
「じ、自分でも無謀だとは思いますけど…………でも、やってみたかったんです」
昨日、roof-topから皆を家まで送ってから帰路に着いた時、矢木のことを思い出していた。
あんな奴に負けたくない。きっと俺は予選の時、イカサマを使っていない矢木にすら負けた。
それだけあの時の俺は弱く、同じ卓を囲んでいた連中は強かった。
いつまでもあの場所に留まっていたくない。いつだったか咲に言ったように、俺だって清澄高校の選手だと胸を張れるようになりたい。
かといって、いささか無謀が過ぎたと思うが。
でもこれでどんな相手にも物怖じしない度胸はつけられたと思う。
「少し休んだら、普通の相手ともやっておけ。感覚が狂ったままじゃ悪影響だ」
「はーい…………」
最高球速が100キロくらいなのに、メジャーの試合で9回まで投げさせられた野球少年の気分になりながら、俺はゆっくりと休んだ。
なぜか周囲にはギャラリーが出来ており、半荘打ち切った俺に拍手してくれて、店のつまみやドリンクを奢ってくれるおじさん達がいた。世界って優しいね。
525 = 1 :
「ふぅ………ん?」
店のほとんどの客が俺の周りに集まってる中、一番奥の、それこそ雀卓を無理矢理置いたようなスペースに見覚えのある顔があった。
(矢木に竜崎、黒崎…………?)
俺とあいつらのどちらが先に店にいたのかは定かではない。俺はお兄さんたちの猛攻をしのぐので精いっぱいだったし、途中であいつらが近くを通っていても気づかなかっただろう。
それはさておき、その卓の空気は妙だった。
同じ卓を囲んでいる4人目、眼鏡をかけた大学生くらいのお兄さんが、ここから見て分かるくらいに狼狽しているのだ。
手も心なしか震えているし、異様に汗をかいている。
黒崎が指を4本立てて、そのお兄さんの前でひらひらと手を振る。
するとお兄さんは、目に見えて全身を震わせた。
『一番ヒョロそうに見えるのはあいつじゃがの、一番やばいうわさがあるのはあいつじゃ……。ガキのくせに金貸しまがいのことをして、払えなくなった奴の指を切り落としたらしい……』
(まさか………!)
黒崎と指というキーワードで、染谷先輩の言葉を思い出す。
嫌な予感がした俺は、急いでその卓の様子を見に行った。
526 = 1 :
「おっ! きたきたリーチ!」
「ううっ………!」
下家の矢木がリーチをかけ、お兄さんがうめく。
学生さん手牌
2p 111334457m 西西西 ツモ:7m
矢木 捨て牌
4m 4p 北 西 6s 5p(赤) 9s 南 1m 6m 8p(リーチ牌)
聴牌。
(でも、この捨て方は………)
どれが手出しかツモ切りかわからない以上、憶測になるが俺は2pは切れないと感じた。
しかし赤5pが捨てられていることにとらわれ過ぎたお兄さんは、2pに手をかけてしまう。
(だ、だめだ!)
「リーチ!」
「ロン!」
矢木が笑みを浮かべて手牌を倒す。
「リーチ・一発・七対子・赤1。んで、裏2.跳満だな」
「ううっ…………」
やはり七対子だった。
527 = 1 :
(最初の2順で、タンヤオの線は消える。それ以前に、北と西を捨てるのと4m、4pを捨てる順番が普通は逆だ。
チャンタから純チャンに切り替えるためっていう可能性もあるけど、それも最後から3巡目の1m切りでなくなる。
4mを切っておいて、その後1mを切るっていうのは 1123m の並びから、123mの順子にする時くらいのものだ。
でも、お兄さんの手牌に1mの暗刻があるからそれもない。
それに中盤でやけにスジを増やしそうな牌を捨てまくってる。
多分、456の数字を多めに捨てておいて、最後にスジで出してきた牌を捕まえる気だったんだ)
少し冷静になればわかりそうな露骨な捨て牌。
だが焦っているお兄さんにはそれすら気づけない。典型的な悪い流れ。
「あっはっは、早めに指とお別れしておいた方がいいんじゃないかー?」
「ぃ………あ………」
お兄さんが右手を抑えてがたがたと震え出す。
指を切り落とすという噂は本当だったのだ。
(マジかよっ…………)
その様子を見ても、俺は半ば信じられなかった。
なぜ、自他問わず人の指を切り落とすなんて言う発想が生まれてくるのか。
なぜ、それをそんな嬉しそうに、楽しみに出来るのか。
528 = 1 :
「おい、待てよ……!」
「あ?」
気付いた時には、俺は矢木の目の前に躍り出ていた。
今更怖気づきそうになってしまうが、やっぱり何でもないなどとは言えない。
「指を切るって、お前ら本気でそんなこと…………」
「あ? てめぇにゃ関係ねーだろ。つーかてめぇよぉ………」
俺の顔を見て、矢木たちが怒りの表情を浮かべ立ち上がる。
当たり前だ。つい昨日、目つぶしをかましてやった相手なのだから。
ふと矢木の視線が、さっきまで俺のついていた卓に向けられる。
「ぶっは! なんじゃありゃ? 箱下点棒てめぇどんだけ取られてんだよ?」
「さぁな。…………最低でも20万だそうだ」
「にじゅーまっ、ぎゃはははははは!」
俺の言った数字に、矢木たちが腹を抱えて大笑いする。
オメーらだって同じ条件なら間違いなく同じくらいの数字になるっつの。
「あー………腹痛ぇー……。つかあれだろ? 昨日帰った後に気付いたが、てめぇ清澄の麻雀部か?
一緒に居た連中がそうだったはずだけどよ」
「それがどうした?」
「あのチビどもみてーに、てめぇはサマ使えねぇわけか?」
「え?」
529 = 1 :
サマ? 一瞬何の事だかわからなかった。
「サマって………イカサマって意味か?」
「たりめーだろ」
「咲たちがイカサマって、どういう意味だよ?」
そりゃあ前に和に訊いた話で、入部したばかりの咲は小手返しでツモ牌をごまかしたりしていたらしい。
でも、イカサマなんてしたことはないはずだ。少なくとも、俺達と打ち始めたころからは。
「おいおい、お前それ本気で言ってんのか? 公式戦何見てたんだ?
あんな連発して、嶺上ツモるわけねーだろ!」
「!」
「嶺上の出る確率知ってるか? 1%ねーんだぞ? んなもん連発できるとしたら、サマ以外ありえねーだろ!」
「っ……!」
「それにもう一匹のクソチビも怪しいもんだ。東場だけ異様に毎回配牌が良すぎる。
南場で失速すんのも、ひょっとしたら東場でのサマをごまかすためなんじゃねぇのか? 帳尻合わせによ」
「黙れ!」
気が付いた時には、俺は矢木に殴りかかっていた。
喧嘩慣れしている矢木は顔面目掛けたその拳を手の平で受け止めるが、痛みに顔を歪める。
「それ以上あいつらを侮辱してみろ…………!
そこの人の指を切り落とす前に、俺がお前らを一生麻雀の出来ない体にしてやる!」
「おいおい、図星だからってんな怒んなよ。サマ野郎」
「てめぇ………!」
530 = 1 :
ごめん、ご飯呼ばれたから行ってくる。
変なところで切ってごめん、
531 = 1 :
安い挑発だと分かっているのに、どうしてもそれを無視できない。
「実際当たらずとも遠からずだろ?
他の部員のレベルみりゃ分かるってもんだ。ここまで雑魚って言葉がぴったりな奴も珍しいぜお前?
サマしか能のねぇ卑怯者はすっこんでろよ、クソども!」
「っ!」
ガシャン!
矢木を掴むや否や、雀卓に頭から叩きつける。
その後頭部を殴りつけようと腕を振りかぶった時だった。
バキッ!
「がっ!?」
何かで思い切り頭を殴りつけられ、隣の雀卓に突っ込む。
牌を床中にまき散らしながら痛む頭を押さえて立ち上がると、横から竜崎が椅子を両手で振り抜いた体勢でいた。
周りの客が慌てて俺たちの側から逃げ出す。
「痛ぅ………!」
側頭部から、ぬめ付いた血液が流れる。頭を切ったらしい。
「はっ、言葉につまれば逆切れか? いいぜ、やってやろうじゃねぇか」
叩きつけられた鼻頭を抑えながら、矢木が臨戦態勢をとる。
他の二人も同じだ。
「オラァ!」
突っ込んできた矢木の拳を腕で受け止める。
伸ばされた腕を掴んでねじあげようとする間もなく、すぐに竜崎がまた椅子を思い切り振ってくる。
「うわっ………!」
慌てて腕で頭部を守るが、何度も執拗にガードの上から椅子を叩きつけられる。
極めつけに、脇から黒崎の蹴りがわき腹にめり込む。
もう一度派手に吹き飛び、雀卓がもう一台倒れる。
「げほっ………」
椅子を振り抜くのもそうだが、こいつらは一切容赦がない。
俺だって、誰かを殴りつける時はおっかなびっくりなんだ。だけどこいつらは、他人を傷つけることに一切の躊躇がない。
532 = 1 :
「泣き叫ぼうが許しゃしねー。
『ごめんなさい、僕たちはイカサマをし続けてきました』って、部員のお前が週刊誌辺りに言えば考えてやるがな」
「…………!」
「そっちの伝手はいくらでもあんでな。きっといい記事になるぜぇ?
現役の部員が、自分たちの功績を全部イカサマによるものだったって内部から告発したらよぉ?」
「そんなことっ…………!」
もしそんなことになったら、冗談では済まない。
赤の他人が周りで囃し立てるのならともかく、身内が自分たちはイカサマをしたと宣言したら、どんな取り返しのつかないことになるかわからない。
公式戦の映像があれば、咲たちがイカサマをしていないのは明白だ。でも、間違いなくひと悶着は起こる。
少なくとも、咲たちが今まで通りに麻雀を打つことは難しくなる。
麻雀部が出場を辞退する羽目になったり、部長はプロへの内定を取り消されるかもしれない。
現にインハイ本選でイカサマのバレた矢木は、無期限の公式戦出場資格剝奪処分を受けている。
「おらっ!」
「げほっ!?」
もしそんなことになったらという恐ろしい未来について気を取られ過ぎ、矢木の蹴りを防げない。
わき腹に爪先がもう一度めり込んだ痛みに悶絶する。
「~~~~~~っ!」
「ほらほら、どうしたぁ!? なんか言ってみろよ、イカサマ野郎!」
「だ、れが、イカサマだ………! てめぇが、その最たるもんだろうが………」
矢木は舌打ちを一つすると、もう一度拳を振り上げた。
533 = 1 :
がしっ
「え?」
その拳が、横から伸びて来た腕につかまれる。そしてそのまま
バキッ!
「ぐほっ!?」
「矢木ぃ!?」
矢木の腕をつかんだ赤木さんが、その拳を矢木の顔面に叩き込む。
矢木が俺に負けず劣らず、派手に吹っ飛んだ。
「ほれ、京太郎。立てるか?」
「は、はい…………」
「て、てめぇ! 俺が誰だかわかってんのか!?」
「知るか、そんなもん」
左手に持っていた煙草をふかしながら、赤木さんが心底どうでもよさそうに答える。
「だったら教えてやる! 俺ん家は爺さんの代からこの竜崎の親父が組長を務めるヤクザの代打ちでな、要するに俺に手を出せばヤクザのおっさん達が痛い目に遭わせるってこった!
おっと、そこで警察呼ぼうとしてる奴! 下手な真似はすんなよ? でなきゃグラサン付けたおっさんが毎月みかじめ料をせびりに来ることになるぜ!」
「ひっ………」
電話に手が伸びていた店員さんを、目ざとく矢木が見つけて脅す。
しかし一方で、赤木さんは口元を歪めるだけだ。
「ヤクザが俺を痛い目にねぇ…………」
やっぱりこの人筋モンだよ。カタギじゃないよ。
ほら、あんまりビビんな過ぎて矢木たちも戸惑ってるもん。
534 = 1 :
「……まあいい。この店は後回しだ。先に昨日てめぇらのいた店からだな」
「なっ!?」
roof-topをヤクザを使って潰す。この男はそう言っているのだ。
「まてっ! 染谷先輩は、あの店の人は関係ないだろ!?」
「は、知るかそんなもん。イカサマ使うような奴の店は、潰れて当然だよなぁ!?」
「っ………!」
「いいぜ別に? 代わりにお前がイカサマを認めて、マスコミにそう言うなら止めてやるよ。
んなことになれば、どっちにしろ店は潰れるかもしれねぇけどな」
「…………ふざけんな」
「あ?」
「ふざけんな! 自分の弱さ、力の無さを、実力のある連中を貶めることでしか目を逸らせねぇクソ野郎が!
あいつらを、誰よりも麻雀が好きで、まっすぐに頑張ってきた奴らを馬鹿にすんじゃねぇよ!」
店中を震わせる俺の叫びに、矢木たちが一瞬面食らう。
535 = 1 :
「…………いいぜ」
だがこいつらは、他人を傷つけることを厭わないクズたちはこんなことでは変わらないだろう。
だから、俺も覚悟を決めた。
「人を雑魚だのイカサマだの謗るなら、当然お前らは強いんだろうな?」
「ああ?」
「今から俺と半荘5回の勝負をしろ。お前たち3人と、俺1人だ。そして………」
俺は震える手を、胸の前まで持ち上げる。
「俺が1位になれなかったら、1回につき俺の指2本を切り落としていい」
「なっ……」
「あいつらがイカサマをやっていたなんて嘘は、口が裂けても言わない。
あいつらの麻雀打ちとしての未来は、誰にも傷つけさせない。
だから………だから代わりに、俺の麻雀打ちとしての未来を賭ける。
仮に負けても、あいつらの将来を守れるなら1人辺り指2本くらい、安いもんだ」
みんなは俺とは違う。皆才能に溢れ、輝かしい未来を持っている。
大事な皆の未来を守るためなら、命だって賭けていい。
536 = 1 :
「もし俺が5回連続で勝ったら、2度と俺たちの前に現れるな!
咲たちを侮辱したことも、染谷先輩の店で好き勝手したことも、全部土下座して謝ってもらう!
それとも怖いか? 麻雀初めてまだ10カ月も満たない奴に、春にはボコボコにしたやつに、3対1の勝負で5連続負けるのが?
大会でイカサマがばれた以上に恥かしいエピソード作るのが、そんなに怖えぇか?」
「なんだと………!」
俺の挑発を受けて、矢木がいきり立つ。
「はっ………いい度胸してんじゃねーか! ………おい黒崎」
「何だ?」
矢木が黒崎に何かを耳打ちすると、黒崎は笑みを浮かべて二言三言返した。
それを受けて、矢木は俺に向き直った。
「いいぜ………その勝負、受けてやる」
「…………! わかった。じゃあ、ここの卓で………」
「いや、場所は変える。ここじゃ色々と都合が悪いんでな。おい、竜崎。足を呼べ」
「ああ」
竜崎がスマホを取り出し、車を寄こすように命令口調で話す。きっと、ヤクザの下っ端でも呼んだのだろう。
537 = 1 :
「10分以内には車が来る。それで、俺たちの指定する雀荘で打ってもらう。
心配すんな、別にうちの組の事務所に連れ込もうってわけじゃない。
少し離れちゃいるが、一般の雀荘だ。ここより俺たちの顔が利くがな」
「……わかった。それでいい」
俺は打っていた席に戻り、荷物をまとめ始めた。
頭を切ったことを心配して、店員さん達が慌てて救急箱を持ってきてくれる。
俺は雀卓を倒したりしてしまったことに頭を下げて、手当てを受けた。
「京太郎」
「赤木さん…………すみません、勝手なことして……」
「何でおれに謝るんだ? お前が今謝らなきゃいけねえ相手なんざ、どこにもいねぇだろ。
にしても参ったな。命を懸けた勝負までは、流石に教えるつもりもなかったんだが……」
赤木さんが頭を掻き、どうしたものかとため息をつく。
538 = 1 :
「………京太郎。まっすぐに行け」
「え?」
「まっすぐ、ひたすらにまっすぐ無謀と勇敢、暴打と攻撃的のぎりぎりのところを攻め続けろ。
あの手の打ち手は、そうたいしたことはない。所詮、人を騙し嵌めることしか考えてねぇ。
そんな痩せた考えに基づいた麻雀、勢いに乗った相手を止めるのは容易くねぇ」
「まっすぐ………」
「ああ。一度強い心で勢いに乗りさえすれば、お前に分がある。迷うな」
「わかりました………」
「おい、車が来たぜ」
竜崎が顎で指した店の外には、黒塗りの車が止まっていた。
「赤木さん。俺一人でいいです」
「………いいのか?」
「ええ、赤木さんを巻き込むわけにはいきません。………下手すると、ヤクザ相手じゃ何があってもおかしくない」
「それはお前にも言えるだろう」
「かもしれないけど………大丈夫ですって。見ての通り、ガタイはいいですし、思い切り暴れれば逃げるくらいできますよ!」
俺はポージングの恰好をとって、明るく振舞う。
嘘だ。実は滅茶苦茶怖い。そもそも相手が本当に麻雀の勝負を受けたのかも定かではないのだ。
「じゃあ………行ってきます」
赤木さんと別れ、先に矢木たちの乗っていた車に乗り込む。
幸いなことに、乗った瞬間袋叩きにされるということはなかった。
車はそのまま発進し、俺の知らぬ場所へと赴く。
「さて………どうしたもんかね」
539 = 1 :
ここまでです。
大体の流れは最初に決めてあるんだけど、実際そのストーリーに向けてキャラ動かすのがスゲー難しい。
おかげで非常に不自然なシーンになりました。
次からまた闘牌だよ(´;ω;`)ウッ…
540 :
…何だかなぁ
541 :
近代麻雀な展開になってきた
ライオンとか凍牌的な
これで一皮むければ、とんでもオカルトあるなし関係なくみんあんとまともに打てるようになりそう
542 = 1 :
>>540
うん、ごめん
本当に言わんとすることはわかるんだけどこうなった
間が空きすぎて投稿を急ぎ、ろくに推敲しなかったのが悪い
543 :
おつおつ
京ちゃんが本当にまっすぐいけるのか、アカギがどうでるのか気になるところ
1つ言わせてもらえば、こんな衆人環境で部員が暴力沙汰起こしたうえに、ヤクザと関わって危険なことしたなんてバレたら、それだけで部活は活動停止か廃部、余裕でマスコミ沙汰だし、本人も退学まであるんじゃねーかな……
544 :
乙
どっちから手を出したか判断できる人が居るかどうか?
545 :
乙。
>>544
なお、まず最初に殴り掛かったのが京ちゃんな上に激高する原因となった八木のセリフもオカルト知らない勢から見たら凄い納得出来るそれな模様。
……ぶっちゃけた話、八木達の反撃だけ口封じしてゴシップ系マスコミに売れば、うん。
546 :
初出場全国大会の麻雀部員が暴力沙汰は
仮に正当防衛でも記事になるレベル
547 :
麻雀が高校生の部活として認められる世界なんだから、暴力沙汰くらい許されてるに決まってるだろ。
548 :
まああれだ、1にはまだ社会的経験がないんだ
アラフォーすこやんばりの大人な目で見守ろうぜ
549 :
読者様の典型のようなレスだな
550 :
オカルト含めて一般常識が咲世界ではズレてるからヘーキヘーキ(一部の生徒たちの服装を見ながら)
みんなの評価 : ★★
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