元スレ京太郎「俺はもう逃げない」 赤木「見失うなよ、自分を」
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251 = 1 :
「それを言うなら、わしも同じじゃけぇ」
それまで沈黙していたまこが、久を擁護するように間に入った。
「3年は最後の大会に集中するのが仕事。本来なら先輩でありかつまだ1年時間のあるわしが、京太郎を育ててやらなけりゃならんかった。じゃが………わしも、目先の勝利に目が行き過ぎておった。
おんしがきっと気を遣って言ってくれた、見ているだけで勉強になるっちゅう言葉で、都合よく自分の怠慢を忘れておった」
涙に濡れた眼鏡を拭い、かけなおす。
「あ、アタシも………」
おずおずと、卓に座ったままの優希が声を上げた。
「京太郎を犬扱いして、いっつもじゃれあうのが楽しかったから、京太郎もそうだと勝手に決めつけて………。
いつもタコスを作ってもらった時も、偉そうにしかお礼を言ってなかったじぇ………。
あと、人の打ち方にケチつけて、馬鹿にして本当にすまなかったじぇ………」
いつもの快活さはどこへ行ったのか、今にも泣き出しそうな子供の表情を浮かべて、京太郎に謝罪の言葉を述べる。
「私も、須賀君に謝らないといけません。
ずっと日ごろから、私たちが練習を増やせばその分代わりに雑務をこなしてくれていたのに、
お礼も一言くらいしか言わないで、それが当然であるかのように思っていました。
もし須賀君が力不足なら、放っておくのではなく、鍛えてあげなきゃいけなかったのに…………」
「みんな…………」
各々から述べられる謝罪の言葉に、京太郎は何と言えばいいのかわからなかった。
別に謝ってほしいから来たわけではない。
ましてや、こうやって皆を泣かせたかったわけではない。
そうだ、ここで終わってはいけない。
252 = 1 :
「でも、もういいんです」
「え?」
それまで京太郎に抱かれる形になっていた咲が、京太郎のことを見上げてきた。
「京ちゃん、まさか、麻雀部、やめ………!」
「あぁ、泣くな泣くな」
また目に涙を浮かべた咲を見て、京太郎が慌てる。
「俺も、それで辛くって…………。
正直、今日の帰り道で、もう麻雀も何もかもどうでもいいって、辞めようって思ってました。
こんなつらいだけの努力なんてバカバカしい。
一緒にいてみじめでしかないのなら、あんな連中の雑用なんて捨てて、毎日さっさと寝たいって。
麻雀そのものをやめようとすら思ってました。でも」
京太郎はそこで一度つばを飲み込み
「でも、ある人のおかげで、考えが変わったんです。
辛いだけの、無駄でしかない結果に終わったっていい。止まっちゃダメなんだって。
辛くても、叶えたい目標があるならそれに向かって、成功とか失敗とか、結果なんて気にしないで動けって。
そうやって努力しているだけで、俺は偉いんだって、自分を褒めていいんだって言ってくれる人がいたんです。
だから………俺、辞めません。皆と一緒に居たいです。
こんな話をした後で、待遇良くしろって言外に要求したようで申し訳ないけど…………俺、この部にいていいですか?」
「いいも何も………」
「むしろわしらがお願いしなきゃならん」
「お前以外に私のタコスを任せられる奴なんていないじぇ」
「ゆーき………でも、お願いします」
「京ちゃん。京ちゃんが私を、この部活に誘ってくれたんだよ? 京ちゃんが一緒じゃなきゃ、私やだよ?」
「咲………」
「京ちゃんが一緒にいてくれないなら、私も辞める」
「な………」
「須賀君」
「は、はい」
253 = 1 :
久に声をかけられ、緊張する。
「私は………本当にダメな部長よ。きっと全国探しても、こんなひどい部長は見つからない。
そんな女が部長の部活でも、あなたはまだ居たいの?」
「まるで、辞めた方がいいっていうみたいですね」
「うん。正直、私はもう、あなたに部長って呼ばれる資格はないと思う。
それでも、もしあなたがまだこの部に居たいって言ってくれるのなら、私は最善を尽くすと約束するわ」
「むしろ、俺がお願いする方です。部長に当たり散らしたりして……。
俺をもう一度、この部活においてくれませんか? 部長」
「本当にいいのね?」
「はい」
「わかったわ………須賀君」
「はい」
「こんな部長で悪いけど…………これからも、宜しくお願いします」
久は京太郎が先ほどしたように、腰を直角に曲げて頭を下げた。
254 = 1 :
ここまでです。
死刑だのなんだの書いてる人たちいたけど、流石にそれはないよ(´・ω・`)
スレ主はもう大学生だけど、中高の時の部活動とか思い出すと、やっぱり現役の子供たちって「自分が活躍したい」って思いがすごく強くて仕方ないんです。
ちょこっとそこら辺の気持ちも思い出しながら書いてみました。
あと京ちゃんが一度も原作とかで怒りを見せていないのを見ると、やっぱり彼は怒ること自体苦手なんじゃないのかと思います。
久の合宿ついていけず残った京ちゃんへの「買い出し宜しく」とか、私だったら無言でキレてます。
怒鳴りつけたり殴ったりはしないけど、無言になって心の中でキレてます。
でも京ちゃんはそう言ったことが(描写されてないだけかもしれないけど)ないので、多分「怒る」っていう行動選択肢がまずない人間なのかなと思いました。
清澄のみんなが大好きで、なんとなく怒る前に許しちゃう人かなって。
さて、もう少し仲直り編は続きます。
そこ過ぎたら週1更新くらいのペースになるかな。
>>235
それを言ってくれてすごくうれしい
255 :
どうせ清澄アンチが自演で荒らしてるだけだから無視でおk
257 :
乙
やった!弱小公立の私達がインターハイだ!
って言う考えが無いはず無いよね
258 :
久は特に思い入れ強いしな
259 :
うーん
スレ自体はおもしろいけど
>>1もわざわざ反応しないでスルーでいいと思うんだが
260 :
SSがよくても自分語りが多いと荒らされるで
三行以内に留めたほうがいい
262 :
乙です
続きに期待
263 :
荒らしに反応するのはちょっと良くないかな
それはともかく、京ちゃん冷遇・退部ネタは多いけど、
きちんとケジメ付けて仲直りするのは割と珍しい印象
264 :
荒らそうと思って書かれた感想と、普通の感想の区別がよくわからんよ(´・ω・`)
ゴキは許さん。
さて、投稿してくよ~
265 = 1 :
部室の中に漂う空気が、緩んでいくのを感じた。
入った直後、咲が泣いていた間なんてもう沈み切ってそこに居合わせるだけで辛かったのに、今はそれが去ったことを皆が感じている。
「えっと、部長。それでですね…………」
「何かしら?」
「その、ちょっと申し訳ないんですけれども…………」
「あ、ごめん気が利かないで。いいわ、卓に入っちゃって。
さっきまでみんな全然集中できてなかったし、仕切り直し―――」
「い、いえ、ありがたいけどそうじゃないんです」
俺はどうしたらいいかわからず、ドアの方をちらちらと見やる。
「そ、その………さっき、俺が言ってた、努力してるだけで偉いんだって言ってくれた人なんですけども」
「うん?」
「その…………その人が、麻雀好きなんだそうで、俺の話聞いたら練習を見学したいって、今外で待っていて………。
連れてきてもいいでしょうか?」
「へ?」
部長が面食らったようだった。
一山超えたと思ったら、予想だにしないお願いをされたのだから当然だろう。
「…………・うん、構わないわ。むしろ、お会いしてお礼を言わないとね」
「あ、じゃあ………、えっと、赤木さーん…………」
廊下の方に、言葉尻が消えそうな声で呼びかける。
ギイィ、と少しドアが音を立てた瞬間。
266 = 1 :
バァアアン!
「ひゃああ!?」
赤木さんが顔をのぞかせた瞬間、雷鳴が鳴り響いた。
全員その場で小さく跳び上がる。
それは、雷に驚いたからだけではないようだった。
「失礼…………もう入ってもいいのか?」
俺に負けない、いや、その身に纏う威圧感やその他もろもろで俺より大きく見える、50を過ぎた老人が入ってきたことに、皆は完全に度肝を抜かれたようだった。
恐らく、俺が初めてこの人と会った時に感じたような、その凄まじい存在感に中てられているのだろう。
「えっと、この人が、俺にアドバイスしてくれた、赤木さんです…………」
ぽかんと口を開けたまま、部長たちは呆然としていた。
そりゃハギヨシさんみたいな格好いい紳士なお方が登場するとは思っていなかっただろうが、筋モノ…………こうしてよく見れば明らかに一般のお方でない人が来るとは思ってもみなかっただろう。
白馬に乗ったヤクザがお姫様を迎えに来たようなミスマッチだ。
267 :
「……………はっ」
一番先に我に返ったのは部長だった。
慌てて表情を引き締め、赤木さんに向かい合う。
「は、初めまして赤木さん。清澄高校麻雀部主将の、竹井久と申します。このたびは―――」
「ああ、片っ苦しいのは嫌いなんだ。構わねぇよ別に。
ただ俺がお前らの麻雀を後ろから眺めるのを許してくれりゃそれでいい。タバコも吸わせてくれればいうことなしなんだがな」
ククク………と、喉の奥で笑う赤木さんに、部長はどう接したらいいかわからないようだった。
「え、えっと、構内は全面禁煙なので、ご見学は構わないのですが煙草はちょっと………」
「ま、そらそうだわな(´・ω・`)」
赤木さんはすこししょんぼりした表情を浮かべた。
「えっと、それじゃあ須賀君を卓に加えて………1年組で打ってみる?」
「わかりました。あ、じゃあ赤木さんにお茶とか………」
「阿呆、そのくらいわしたちでやるわ。お前はしばらく働かんでええ」
「は、はい………」
雑用根性丸出しで俺がお客にお茶を出そうとすると、染谷先輩に叱られてしまった。
席を入れ替えて、先輩たちは赤木さんの分の椅子を用意する。
赤木さんは用意された椅子を動かして、俺の後ろに移動した。
「ま、難しいかもしれねぇが、いつもどおりに打ってくれや」
「はぁ………」
正直後ろで妖怪に見られている気分なので、ものすごく落ち着かない。
でも準備はすぐに済み、東一局が始まろうとしていた。
268 = 1 :
東一局 0本場 ドラ 4s
東家 優希
南家 咲
西家 京太郎
北家 和
「おっしゃ、ダブリーいくじぇ!」
東一局目、もはやそれが当たり前であるかのように、優希がいきなり親のダブリーを仕掛けてきた。
切ったのは南、安牌なんてわかるはずもない。
咲はとりあえず、不要な字牌から切った。 打 北
「はぁ………」
京太郎 手牌
11m 3s44s5s77s9s 77p 發發 ツモ 9p
ドラが対子なのはありがたいが、中膨れの形だ。
七対子が速そうだが、そのせいで牌の種類はそこまで多くない。
果たしてこれでしのぎ切れるか。
とりあえず端っこから落としていくしかないので 打9p とすると、一応は通ってくれた。
次は和の第1打。 發だったので、鳴くべきか少し迷う。
(最初に対子落とししたならともかく、今は何が安牌かわからないしな。もう一枚發はあるんだし我慢我慢)
とりあえず、次に發が出たら鳴くことにしてここは見送る。
一応トイトイも視野に入れておいて損はないだろう。そんな時間があるかはさておき。
269 = 1 :
そして、優希の第二ツモ。
「おっ! カンだじぇ!」
引いて来た牌と、手の内の3牌を倒す。
カン材は8s。 そして新ドラは………8s。
「おっしゃあ! ドラ4追加だじぇ!」
「うえぇ!?」
これでダブリードラ4で最低でも親跳ね確定だ。役と裏が乗れば倍満・3倍満もない話ではない。
嶺上牌を捨てたので、そのまま上がりはしなかったものの、他3人への重圧はすさまじい。
「うぐぐ……」
咲はもう一度北を落として、俺の番がやって来た。 ツモは9s。
(8sがもう全部ないんだし、789sの順子が出来ることはもうない。
待ちの変わるカンはできないし、8sの周りは順子のない比較的安全エリアだ。
この手牌なら索子の染め手や七対子にも行けるかもしれないけど、俺も順子は作りにくくなったし、ここはツモ切りだな。対子落としで時間を稼ぐ)
ドラ2とはいえ、張ったとしても単騎待ちしかできない七対子で親跳ねリーチに向かってもしょうがない。
そう考えて、打9s。
270 = 1 :
「ローーン!」
「はぁ!?」
倒された優希の手牌は、三暗刻対々で1mと9sのシャボ待ち。
「ダブリー・三暗刻・対々・ドラ4! 裏は………乗らないけど、親倍満! 24000だじぇ!」
「のおおおおおおおお!?」
千点棒のみを残し、俺の点棒がすべて優希に持っていかれる。
「8sの周りは比較的安全だと思ったんだけどな………」
やはり9sが重なったことを喜び、まっすぐ七対子を狙うべきだったか。
そうしていれば、優希の上がり牌をすべて握りつぶしたまま安全に手を進められた。
「はっはっはー! 浅ましいじぇ犬め………あ………」
「ゆ、優希ちゃん………」
「ゆーき………」
優希がいつもの癖で俺のことを馬鹿にするが、さっきの出来事を思い出して口を閉じる。
咲と和の非難めいた視線が、優希に向けられた。
「じぇじぇじぇ………す、すまん京太郎………」
「いや……大丈夫だ」
ここでまた落ち込んだら、何のためにここに戻ってきたのかわからない。
気を取り直して、次の局へと気持ちを切り替える。
271 = 1 :
その後1本場は咲が二巡目に加槓で嶺上開花し、700・400でいきなり終わらせた。
東二局は和が優希から直撃をとり、すぐに終わる。
そして俺が親の東3局。
ドラ1s
親 京太郎 600
南家 和 26600
西家 優希 46300
北家 咲 26500
リーチもできない状態で、表示されたドラは1s。
端っこの牌で、手の内で使うのも難しい。
そして配牌は………
京太郎配牌 11s5s8s 22m3m 24p8p 中中白 ツモ:6m
何とドラが対子で、翻牌の対子も二つある。
それらを鳴ければ、それだけで親満確定だ。
とにかくこの局は飛ばされる事態を遠ざければいくらか安手になってもそれでいいので、初手は打8p。
272 = 1 :
不要牌を処理し、7巡目。
京太郎手牌
111s56s 23m 44p 白 【加カン:中中中中】 新ドラ:5s
(いける!)
鳴いた中に加カンして、新ドラを一つ乗せる。
これで翻牌1つとドラ4だ。 あと1翻で跳満まで狙える。
そして引いたツモは、5m。
(どうする? 手牌にくっつく牌じゃないし、跳満まで狙うなら白は残すべきだ。
でももう7巡。東場の優希なら今にも上がっておかしくない。
しかもみんなが役牌を易々と鳴かせてくれるはずがない。手に来るのを待ってたらやられるだけだ。萬子が伸びてくれることを期待して、ここは逃げ切る!)
迷ったのちに、白を捨てる。
しかし次巡、ツモは白。
(うぐっ………。捨てなきゃ跳満だった……)
大きく呻きつつも、仕方なくツモ切り。
さらに次巡、またしてもツモは白。ツモ切るしかない。
(なんじゃそら………!)
これで白が3連続河に並んだ。
273 = 1 :
「ふっふっふ。ドラを増やした上に東場でその遅れは致命的なミス! いっくじぇ、リーチ!」
優希が、1sを切ってリーチをかける。
そこで俺はとっさに動いた。
「カン!」
「へ?」
ドラの1s4枚で、大明槓をする。新ドラは9pで乗らない。
だが嶺上ツモは4m。いいところを引けた。そして打5m。
もしかしたら1s、中、白で三槓子を出来たかもしれないが、咲じゃあるまいと一言で片づけて終わる。
(本当ならこんな他人にドラを乗せかねないカンしないべきなんだろうけど、俺の残りは600点。
上がられりゃそれで終わりなんだから、いくらドラ増やそうが関係ない!)
京太郎手牌
56s 234m 44p 【加カン:中中中中 大明槓:1111s】 ドラ:1s 5s 9p
ともかくこれで、役牌ドラ5で47s待ち聴牌だ。
274 = 1 :
そして俺の次、和の番。ここで俺の目論見が外れれば結局優希がツモってすべては水泡だろう。
東場限定とはいえ、リーチかけたら絶対ツモることが前提とか、どういう麻雀だ全く。
和は河を見て少し迷った後、打1p。
「ポンッ」
咲がその牌を鳴き、優希の番が飛ばされる。
優希にしては遅い、9巡目でのリーチだ。多分馬鹿みたいに大きな手が入っているんだろう。
それに俺を飛ばしてしまうことへの抵抗感もあるのか、和と咲は俺を優希のツモで飛ばすという選択肢を捨ててくれた。
カンを得意とする咲は、チーよりはポンをする可能性が高い。
和はまだ河に出ていないかつ、咲の持っていそうな牌を出してくれたのだ。
心の片隅で彼女たちの良心を利用したような作戦に罪悪感を覚えつつ、俺はツモ山に手を伸ばした。
「げ………」
引いて来たのは、5s。ドラだ。
(どうしたもんかね…………)
6sを捨てて、5sと4pのシャボ待ちにすることもできる。
そうすれば翻牌ドラ6となり、5sで上がれば倍満に手が届く。
が、河を見ると5sと4pはもうそれぞれ1枚ずつしか待ちがないし、その時捨てる6sだってドラ近くかつ、優希に対して無スジだ。怖すぎる。
さらに言えばドラ5sなんてど真ん中且つドラの牌を、リーチをかけている優希はともかく他二人が捨ててくれるはずはない。
かといって、47sで待ちがまだ6枚ある両面待ちを保つ場合でも、ドラそのものかつ無スジを捨てるのも怖い。
275 = 1 :
(いや…………ここでビビっちゃだめだ)
きっと、和のような完全な確率重視の打ち方からすれば、馬鹿馬鹿しいことこの上ないだろう。
でも、俺はさっき決めた。
(どっちで振り込んだって、負けるんだ。どっちだって振り込む可能性が高いなら、より点の高い方へ行くべきだ。それに…………)
赤木さんの言葉を思い出す。
『いいじゃないか…………! 三流どころか、五流だって………! そうやって熱くいられれば、それだけで十分じゃあないか………!
怖がらなくっていいんだ……ただまっすぐ、自分の欲しいものがあるなら、それに向かうだけで………』
(前に進む気持ちを無くしたら、そこで終わりなんだ!)
打6s。その危険牌切りに、部員全員がぎょっとしたり、息を呑んだ。
しかしただ一人、赤木だけは、僅かに目を細めただけだった。
(へぇ…………)
赤木の見立てでは、56sともにリーチをかけている優希には通った。
しかし、下家の和に5sは完全にアウトだったろう。
点数に欲を出し、待ちの少ない方に向かった暴牌のようなうち回しが、京太郎を救った。
その勢いが、僅かに場を京太郎に有利に作用させたのか、次の優希の番。
276 = 1 :
(うへぇ……嫌なもの掴んじゃったじぇ………)
引いたのは5s。
優希手牌
223344s 6p77p88p 北北
6pを引けばリーチツモ平和二盃口で跳満、9pでもリーチツモ一盃口平和ドラ1で満貫。
ドラが3枚もめくれているので、十分に裏ドラも期待できる大物手。
しかしリーチをかけている以上、上がり牌以外は切るしかない。
渋々ドラの5sを切る。
「「ロン!」」
「じぇ! やっぱりぃ~~………あれ?」
同時に上がった和の声に、俺は呆然とした。ダブロンなんて初めてだったからだ。
「あ、あれ? これってダブロンありですっけ?」
「いえ………大会と同じだから、頭ハネありよ」
後ろで見ていた部長も、驚いた様子で答える。
「えっと、反時計回りに優先順位が着くから………俺?」
「ええ、須賀君のえっと………翻牌ドラ7で、親倍満ね」
「ほ、ほんとですか…………よっしゃぁ!」
両手で思いっきりガッツポーズを作る。
頭ハネなんて初めてだったから戸惑ったが、ともかく優希から24000点をそのまま取り返した。
これで点数は
親 京太郎 24600
南家 和 26600
西家 優希 22300
北家 咲 26500
277 = 1 :
となった。その時
「悪い……皆、手牌を見せてくれるか………?」
それまで無言だった赤木さんが俺の背後に立って、卓を上から覗き込んだ。
「え、あ、はい……」
咲たちが訝しみながらも、素直に手牌を倒す。
二人とも安手だが速く、咲はイーシャンテン、和はドラ筋の258s待ちだった。
「ふむ……………」
赤木さんは全員の牌と河の捨て牌、その後まだとられていない山牌を全部めくり、少しの間唸っていた。
「すまん、手間とらせたな。続けてくれ………」
「は、はぁ………」
何だか釈然としないまま、俺たちはその後も局を続けていった。
278 = 1 :
ここまでです。
闘牌シーンは間違いが許されないからめんどくさいよー
しかも中途半端なところで区切るわけにもいかないから、書き溜めた分が一気に放出される。
執筆はそろそろ終盤だけど、闘牌シーンがまたあるから嫌だ(´・ω・`)
280 :
乙乙
283 :
多少の間違いなら優しい奴らが指摘してくれるさ乙
284 :
今年から積み棒無しのルールに変更になったんだよきっと
285 :
明日明後日の投稿がほぼ不可能なので、今のうちに投稿しまーす。
286 = 1 :
20分後
半荘が終わった。
最終的な点数はこの通り。
京太郎 26900
和 31000
優希 13400
咲 28700
「だぁあ~~~! 東場であんまり稼げなかったのが痛いじぇ!」
「稼いでいても、ここまで点とられたら1位は無理だろ」
「畜生! 犬のくせに東場のアタシに食らいついてきやがって!」
「誰が犬だ! このタコ!」
「タコじゃない! タコスだ!」
「ゆーき……」
「二人とも………」
30分ほど前のあのシリアスな空気はどこへ行ったのか、俺たちはいつものようになじりあっていた。
287 = 1 :
「……………」
そしてその様子を終始無言で見つめている赤木さん。
俺が倍満を上がった後、毎回局が終わるごとに、皆の手牌と山を見ていたのだが、一体何だったのだろうか?
「京太郎………」
「は、はい」
そんなことを思っていたら、不意に声をかけられた。
無表情がいきなりしゃべりだすものだから、びっくりする。
「お前、明日から俺のところに来い」
「へ?」
「鍛えればものになる。俺が付き添ってやるから、適当な雀荘に行って打て。
この連中と打つよりそのほうがためになる」
「え、いや………」
いきなりそんなことを言われて、戸惑うことしかできない。
「すいません、赤木さん」
すると部長が、赤木さんの前に立った。
「赤木さんが、須賀君のことを叱咤激励してくれたことは、いくら感謝してもしたりません。
しかし、それとこれとは話が別です。
部外者である赤木さんに、須賀君をよそで練習させると言われて、はいそうですかということは出来ません」
288 = 1 :
「………こいつを強くしたくないのか?」
「それは………今更私に言う資格はありませんが、それでも私は彼の先輩です。
私は、自分で彼を強くしなきゃいけない義務があります」
「そりゃあ無理だな」
「…………私たちでは、力不足だと?」
部長の眉根が吊り上がる。さっきも「この連中と打つよりためになる」なんて言われて、頭に来たのだろう。
「それ以前の問題だ………ものを考えていなさすぎる。見えてるところしか、見ようとしない。
表の事柄だけ見てりゃ満足のガキ共に、死に物狂いで強くなることを決心した奴の相手が出来るはずもない」
「何ですって………!」
「…………!」
部長だけでなく、他のみんなからも敵意のようなものがにじみ出る。
特に和は、初めて咲に会った頃と似たような顔をしている。
289 = 1 :
「じゃあ、こうしよう………」
赤木さんはおもむろに立ち上がり、全自動卓で、牌をかきまぜた。
やがて配牌が終わり、積まれた山が出てくる。
「俺が今から、この4つの山から牌を表にせず無作為に14個取り、役満を作ろう。
それが出来たら、京太郎は俺が育てる。
出来なければ、お前たちを馬鹿にした詫びに、何でもしてやろう。どうだ、受けるか?」
「は………?」
みんな呆気にとられた。
いきなり何を言い出すかと思えば、めちゃくちゃな内容のギャンブルをふっかけてきた。
「そ、そんな、めちゃくちゃな。話が別………」
「受けるか、受けないのか?」
「っ…………!」
赤木さんの放つ、凄みのようなものに、皆が気圧される。
しばし無言になったのち、和が口を開いた。
「…………条件があります」
「和?」
「何だ?」
290 = 1 :
和は震えながら、毅然とした態度をとろうと胸を張る。
「赤木さんは、勝てるという確信があってこの勝負を持ち出してきたように思えます。つまり、何かからくりがあるのではないかと。ですから、役満の種類はこちらで決めさせていただきます。さらに、作るのは一つではなく、二つ別々に作ってもらいます」
「いいだろう。構わない」
「っ…………! ではまず、国士無双を」
全く動じない赤木さんに、和は息を呑んだ。
きっと胸の中では、「そんなオカルト在り得ません」と思っていることだろう。
「じゃあ、はじめるぜ………!」
赤木さんは一度大きく口元をゆがめて笑みを浮かべると、牌を見つめた。
「……………」
だが、一向に始める気配がない。
しびれを切らした和が、赤木さんをせかす。
「何をやっているんですか。時間をかけることで、どの牌が何かわかるとでも?」
「ああ」
「えっ………」
赤木さんは、低い声とともに頷いた。
「そうでもなきゃ………53年も、とても生き抜けなかった………」
言い終わると同時に、赤木さんが4つの山の各所から、牌を伏せたまま集め出した。
まずは最初の14枚。
開かれたその役は…………
291 = 1 :
「うそじゃろ…………」
「まじか………」
「信じられない………」
1pが対子の、国士無双が、綺麗に出来ていた。
しかも信じられないのは、字牌は字牌で、数牌は数牌でちゃんと分けられていたことだ。
俺は声も出せずに口を開けたまま見入っていた。
「そんな!」
和が椅子を飛ばして立ち上がり、集められた牌の裏側を調べる。
何か目印になるようなものがないか探しているのだろう。
だがこの牌は、2週間前に使いだした新品だ。しかも俺が部活のたびに欠かさず洗っている。
目立った汚れも傷もない。
292 = 1 :
「さぁ、次の役は何だ…………?」
「くっ………だ、大四喜・字一色・四暗刻単騎を」
「おいおい、役満どころか5倍か」
「い、インターハイではダブル以上は皆普通の役満としかみなされないんです!」
和が苦し紛れの理屈を持ち出してくる。
さすがにそこは一般のルールに合わせるべきだろうよ。
「まぁ構わないがな………」
赤木さんは再び山牌に視線を戻し、しばし止まった。
30秒くらいした頃に動き出し、同じように牌を集め出した。
(国士無双で字牌を一つずつ使ってるから、大四喜だけでも風牌4種を残された12枚すべて集めないといけない。さすがにこれは………)
が、そんな俺の心配は無用だと言うように………
「…………わしゃ夢でも見とるんかのう」
「ありえねーじぇ………」
「う、うそでしょ………」
「そんなオカルト在り得ません………」
現れたのは、東東東南南南西西西北北北中中 の14枚だった。
並び方も、この通りだ。
「…………俺の勝ちだな。約束通り、京太郎は俺が育てる。
なぁに、2週間もしねぇよ。10日ってところだ。…………ま、そのくらいが限界だろうしな」
最後の部分は良く聞こえなかったが、間違いなく、勝負は赤木さんの勝ちだった。
293 = 1 :
今日はここまでです。
次から京太郎修行編に入ります。
御無礼言ったり、打(ぶ)つ打つ言ったり、馬鹿みたいに鳴きまくる人とかもゲストで出ます。
ただ現状書き溜めているうち 42/51ページ吐き出しちゃってるから、余裕保つためにも投稿ペース落ちます。
>>284
積み棒?
ポッキーとかでオブジェ作るあれかな?(震え声)
294 :
乙
お友達が勢揃いww
296 :
乙
赤木しげるが人を育てる……?
勝手に育つんじゃなく育てる
297 :
清澄を出たら地獄を突き抜けた何かに飛び込まされる京ちゃん…
299 :
いつものお友達だなw
300 :
乙
面白いよ、がんばれ
みんなの評価 : ★★
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- 麦野「もう逃がさねぇ」上条「勘弁してくれよ……」 (171) - [43%] - 2012/8/23 20:00 ☆
- 京太郎「修羅場ラヴァーズ」明華「夢でも、あなたの横顔を」 (1001) - [43%] - 2014/7/11 15:00 ★★
- 京太郎「修羅場ラヴァーズ」 由暉子「誰よりも、何よりも」 (1001) - [42%] - 2014/11/5 16:15 ★★★×5
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