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元スレ八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「ぼーなすとらっく!」

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みんなの評価 : ★★★
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951 = 950 :

水着回が見たい

952 = 950 :

水着回が見たい

953 :

水着回だけに見すぎかい?

954 :

楓さん、収録始まるから戻りましょうね

955 :

>>953

956 = 955 :

>>953

957 :

たまにはこんな時間に更新を。短いけど投下するよー

958 = 1 :









凛のドラマ出演、そして楓さんの臨時プロデュースが決まった日から数日。

具体的なロケ日も決まり、俺たちデレプロ奉仕部ご一行(と言ってもちひろさんはお留守番)は早速収録現場である温泉旅館へと向かっていた。

なんでも人里離れた場所にある古き良き旅館らしく、山道を通る為バスでの移動が必要らしい。なので俺は現在進行形でガックンガックン揺れながら座席へと座っている。ちなみに一番後ろの端である。やっぱ何にしろ隅というのは落ち着くものだ。

……もっと言えば、隣に人がいない方が落ち着くのだが。



「やっぱり結構かかるものなんだね。この揺れだし、ちょっと酔いそう……」



ダウナー気味な様子で、時計を確認しながら隣でそう言う凛。
いや、つーかさ……



八幡「そんなら、前の席に座ったらどうだ。空いてんぞ」



見れば、前の方の席には誰も座っていない。
というかむしろ、このバスには俺たちしか乗っていなかった。その俺たちというのも…



「そ、それは…」

「そんな言い方はダメよ比企谷くん。あっち行けと言っているみたいだから」


959 = 1 :




メッと嗜めるように言うのは、更に凛の隣に座る楓さん。

そう。俺、凛、楓さん。その3人しかこのバスには乗っていない。いくら小型とは言え余裕あり過ぎだ。戸部の頭並にスッカスカである。



「……ていうか、逆になんでプロデューサーはこんな後ろに座ってるの?」



俺の言い方が癪に触ったのか、ジトッとした目で見てくる凛。
いや、別にそんな大した理由も無いが……ってか理由いる? 席の位置とか何となくでいいだろ。



八幡「まぁ、あえて言うなら落ち着くからだな」

「隅っこが落ち着くって……」

八幡「なんだその微妙な顔は」

「なんか卑屈っぽい」



失礼! 今この子結構失礼なこと言ったよ! 全国の隅っこ好きに謝れ! 輝子とかね!



八幡「バカ言うな。オセロで考えてみろ、隅を取ったら勝負は俄然有利になる。つまり隅さえ取れば人生勝ったも同然だと言えるだろ」

「いや言えないよ」



ですよねー。
さすが凛。もう俺に対し遠慮というものが無い。



「隅を取って、すみません……なんて。ふふっ」

八幡「…………」

「…………」



そして楓さんには何も言えないようだった。
いや俺だって何も言えませんけどね。どう反応すんのが正解なんだあれ……


960 = 1 :




そしてなんやかんや話している内に、目的地の旅館へと到着する。
周りがうっそうとした森のため着くまで外観は見えなかったが……中々立派なもんだな。

バスから降りて最初に見たときは、思わず感嘆の息が漏れた。

雑木林に囲まれた建物は、いかにもな旅館を思わせる和風な装い。昼間だと言うのに木に遮られた周辺一体は、どこか仄暗い。
見た目は若干古びた様子ではあるが、それも趣きがあると思えば風情があるように見えてくるから不思議だ。

そしてさっきから聞こえてくるこの水の音は……滝か? もしかしたら、近場に渓流でもあるのかもしれない。


なんというか……THE・旅館という感じだ。サスペンスの舞台には持ってこいである。船越さんはどこかしら?



「へぇ……凄いね」

「確か撮影の間、私たちの貸し切りになるのよね? 費用は大丈夫なのかしら……」



感心したようにする二人。楓さんは心配する所が少しばかし庶民的だ。まぁ、最近ノリに乗ってるデレプロなら大丈夫だろう。たぶん。



八幡「節約の鬼であるちひろさんの事ですし、心配は要らないんじゃないっすかね。……そんじゃ、行きますか」



荷物を担ぎ、二人を連れて宿へ入っていく。
これ、知らない人から見たら俺が美女二人をはべらせてるように……うん、見えないね。ちょっと調子に乗りました。



館内へと入ると、少しだけひんやりとして空気に包まれる。
あーなんかこの独特の香りが実に旅館っぽい。なんだろう、おばあちゃん家の匂いをもう少し高級感漂わせましたみたいな。伝わるかこの表現。

しかし人気が無いな。勝手に上がるわけにもいかないし、呼びかけたりした方が良いのだろうか。


と、俺が迷っていると不意に足音が聞こえてくる。これはもしかしなくても……



「いらっしゃいませ。ようこそおいでくださいました」


961 = 1 :




廊下の奥からやって来たのは、着物を着た妙齢の女性。
たぶん女将さんって奴なのだろう。こういう時最初に出てくる人は大概そうだって相場が決まってる(偏見)。



八幡「お世話になっております。シンデレラプロダクションの比企谷です」



一礼した後、淀みない動作で名刺を渡す。



八幡「撮影の為これから慌ただしくなるとは思いますが、よろしくお願いします」

「いえいえ。こちらこそよろしくお願いしますね」

八幡「はい。それでこっちが所属アイドルの高垣楓と渋谷凛です」



俺が視線で促すと、二人は少し前に出て礼をする。



「よろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします」



楓さんは慣れている風だったが、凛は少し緊張した様子。
それを受け、女将さんは小さく微笑む。



「私達も撮影が上手くいくよう、出来る限りご強力致します。古びた宿ではありますが、ゆっくりしていってくださいね」

八幡「はい。ありがとうございます」



その後受付まで案内され、部屋の鍵を貰い簡単な館内の説明を聞く。
てっきり和室しか無いと思っていたでの、洋室もあるのには驚いた。そして何より、まさかのゲームコーナー。この館内の雰囲気を見るに、実にレトロな予感をさせる。

やべぇな、ちょっと楽しみになっちまったぞ。なんかこういう所のゲームコーナーってめっちゃワクワクするよな。風呂入った後に誰もいない時間を見計らって行ってみよう。

っと、楽しみにするのはいいが、仕事もきちんとしなければ。確認しとかないといけない事は訊いておく。


962 = 1 :




八幡「あの、今日来たプロダクションの者の中じゃ、もしかして私たちが最後ですか?」

「そうですね。今日来られる予定の方たちはお客様で全員です。他の方たちは既に到着されてますよ」

八幡「……そうですか。ありがとうございます」



つーことは、あの人ももう来てるんだな。部屋で大人しくしていてくれればいいが……
その後いくつか質問し、礼を言ってその場を後にする。

そして受付から少し離れた所で待っていた二人の方へ向かうと、ふと凛と目が合う。目が合う瞬間である。



「プロデューサー、もうすっかり営業スタイルが板についちゃってるね」



何とも今更な事を、感心したように言う凛。



八幡「別に、こんくらい普通だろ。さすがに半年以上もやってりゃ慣れる」



まぁ、凛に言われて内心ちょっと焦った所もあるんだがな。確かにちょっと最近会社の空気に毒されてきてるよな俺。専業主夫を目指していた頃が懐かしい。いや、諦めてませんよ? まだなる気まんまんなんですよ?

と、俺が自らの夢を再確認していると、今度は楓さんと目が合う。



「比企谷くん、急に呼び捨てにするから少し驚いちゃった……ふふふ」

八幡「なっ……!?」



心なし頬を赤らめて言う楓さんに、思わず変な声が出る。
ま、まさかそこに突っ込んでくるとは。いや事実は事実だがさすがに予想外だった。



八幡「あ、あれはですね。プロデューサーである以上アイドルを紹介する時は必然的にそうなると言うか、フルネームで言っただけだし、別に呼び捨てたとかそう言うつもりでもなくてですね…」

「いいの……分かってるから、比企谷くん」


963 = 1 :




我ながら情けないくらい狼狽しながら言い訳していると、楓さんは皆まで言うなと、諭すように言ってくる。

そうか、分かってくれたか。



八幡「楓さん……」

「楓って呼んでくれても、私は気にしないから」

八幡「違う。そうじゃない」



いや呼べるわけないでしょ普通に考えて。そんな展開が来るとしたらもう俺がお婿さんにでも貰われない限りあり得ない。というかむしろ貰ってもくれても構わないんだが?

とまぁ冗談はその辺にして、とりあえず移動しよう。じゃないとさっきから刺さってくる凛のジト目にそろそろ痛みを感じ始めそうだからね!



とりあえずは各々の部屋を目指し、荷物を置きに行く事にする。


さっき女将さんに聞いた通りだと、一階に受付、大広間、大浴場と広めの和室があるそうだ。そんで二階と三階に和室と洋室の部屋があって、各階に一つずつ談話室があるとか。

談話室ってあれか? なんかちょっと薄暗くてソファとか自販機とか置いてある不思議空間だよな。中学の頃、修学旅行でリア充が夜そこで話してるの見てジュース買えなかった記憶がある。しかも全部の階で。外のコンビニまで行ったかんね俺。

そんな俺の与太話は置いといて、俺たちの部屋は三階にあるからさっさと行く事にする。ちなみに部屋は一部例外を覗いて皆個室である。



廊下を歩き階段を探していると、開けた空間を見つける。たぶんここが大広間だな。

やや広い休憩所のような場所で、いくつかのソファやテーブル、調度品等が置いてある。端の方には小さなお土産屋もあり、奥の方はたぶん大浴場だな。大広間って言うよりエントランスホールみたいなもんだろう。


そしてそんな広間の中心辺り、二人程誰かが座っているのを素早く発見する。ってあれは……!






「ん? おー楓ちゃーん!」





964 = 1 :




こちらに気付いたのか、手をブンブンと振って声を上げる一人の女性。


うわぁ……もう少し後になるかと思ったらもう出くわしちまった。自分の運の悪さが嫌になる。つーかなんか酔ってません? もしかしてもう飲んでるのか。

呼びかけられた楓さんは当然向こうへと歩いていき、凛もそれに着いていく。そうなれば、俺だけ無視を決め込むのはさすがに出来ない。……仕方ねぇか。



「お疲れさまです。早苗さん」

早苗「お疲れさまっ。それより聞いた? ここお酒飲み放題なんですって! いやー良い所貸し切りにしてくれたわ♪」



完っ全にへべれけであった。いや、今日は撮影無いから別に良いんすけどね。

茶髪のおさげ、童顔で低身長なのにやたら自己主張の強いスタイル、そしてその壊滅的な私服センス(やけにバブリー)。豪快にグラスをあおるその姿は、俺を引かせるのには充分だった。


片桐早苗。


この人こそ、俺が出来れば会いたくなかった御人である。

ちなみに、元婦警。



早苗「後で部屋に持ち込んで、一緒に飲みましょ!」

「良いですね。是非ご一緒します」



酔っぱらいに対し、実に大人な対応……ではなく、本当に飲みたいと思ってんだろうな。それぐらいは分かるようになってきました。



「それであなたが凛ちゃんね。会うのは初めてだけど、これからよろしく♪」

「よ、よろしくお願いします……?」



凛の反応が何となくあやふやだが、たぶん接し方を図りかねてるんだろうな。正直見た目は未成年と言っても違和感が無い。しかし片手にはビールジョッキ。更に楓さんをちゃん付け。そのおかげで結構な年上と判断できる。

そして、彼女の視線は遂に俺へと向けられる。やばい。怖い。


965 = 1 :




早苗「ん~?」

八幡「…………」

早苗「…………」

八幡「…………」

早苗「……キミ、前にどこかで会ったことある?」



覚えてなかったァーーーー!!

な、なんか俺が自意識過剰だったみたいで少々複雑な所もあるが、これは僥倖と言っていいだろう! そうかー覚えてなかったかー、良かった良かった。



八幡「き、気のせいじゃないですかね」

早苗「そっか気のせいかぁ」

八幡「ええ。気のせいですよ」

早苗「そっかー。あはははは」



HAHAHA、と快活に笑う彼女。


ーーが、笑顔だったのはそこまでだった。

素早くジョッキを楓さんに手渡したかと思うと、彼女は瞬時に俺の背後を取る。その酔っぱらいとは思えないスピードに、俺は完全に油断していたため反応できない。そして左足を絡めとるように俺の左足へと回し、右腕の下から自身の左腕を潜り込ませ、最後に首へと巻き付ける。こ、これはーー!



「こ、コブラツイスト!?」

「身長差を物ともしない流れるような技さばき……見事です」 グビッ

「飲んでる!?」



いやお二人さん解説してないで助け痛だだだだだだだだだだッ!!?



早苗「なーんて、忘れてるわけないでしょーが! 今このまま流そうとしたわね!?」

八幡「す、すんません……! ってかもうギブギブギブギブ……!」 グググッ


966 = 1 :




やっぱ忘れてなかったー! 一瞬でも期待した俺が馬鹿だった……
つーかさっきからその、柔らかい部位が当たってるんですけど痛みのせいで全然嬉しくない!

俺が必死にタップしていると、ようやく拘束が解かれる。し、死ぬかと思った。割りとマジで。



早苗「ふぅ……まさか、キミがプロデューサーになってるとはね。とりあえず、あたしに何か言うべき事があるんじゃない?」

八幡「……ちょっと太りました?」

早苗「うるさい口は塞ぐよ、物理的に」



ニッコリと良い笑顔で握りこぶしを作るその姿に、思わず身を竦ませる。どうやらあまりふざけるのは良くないらしい。いや当たり前なんだけどさ。



八幡「ハァ……お久しぶりです。早苗さん」

早苗「その盛大な溜め息がちょっと気になるけど……久しぶり、比企谷くん」



今度こそ、早苗さんは屈託の無い笑顔でそう言った。

ホント、嫌になるくらい懐かしい笑顔だ。



「お知り合い……なんですか?」



首を傾げ、そう訪ねてくる楓さん。ちなみに手に持ったジョッキは何故かビール満タン。いつの間におかわりしたんだ。



八幡「いや、知り合いっつーか……」

早苗「まぁまぁとりあえ座りましょ。色々込み入った話もあるわけだし♪



言い淀む俺に対し、早苗さんはまず座るように促す。手には新たなビールジョッキ。だからいつの間に持って来たんですかね。


967 = 1 :







「…お疲れさまです」

八幡「うおっ」 ビクッ



びっくりした……

ソファに座ろうとしたら既に先客がいた。そういやもう一人いたんだったな。存在感が希薄だからなのか、完全に忘れていた。



「あ、文香ももう来てたんだ。お疲れ様」

文香「はい、早苗さんと…お話していました」



長い黒髪に隠れた目元、そのか細い声は小さい割に不思議と耳に残る。


鷺沢文香。


同じくデレプロに所属するアイドルの一人だ。
なんというか、薄幸の少女って感じでとてもグッときますね。

しかしその手にハードカバー本を持っているあたり、静かに読書しようといていた所を早苗さんに絡まれたのでは? と思わなくもない。頼まれたら断り辛そうだもんなこの人。



文香「…いつかの、事務所での撮影以来…ですね。比企谷さん」

八幡「そう、っすね……」



確か、あの時も安斎と一緒の撮影だったな。何か不思議な縁でもあるのだろうか。
……つーか、こう言っちゃうとあれだが、鷺沢さんってちょっと話し辛いんだよな。お互い積極的に喋ろうとしないからかどうにも会話が続かん。趣味的な意味ではとても話が合いそうなのに。



「文香ちゃんはお酒飲む?」

文香「いえ…まだ、未成年なので…」

「そう、残念ね……」



ショボーンと、心無しかしょぼくれる楓さん。確か鷺沢さん19歳だったもんな。
この人くらい俺も気にせず話しかけられたら良いんだがなぁ。……あ、だからぼっちなのか!(名推理)


968 = 1 :




早苗「えーっと、それで何の話だったかしら?」

「早苗さんと比企谷くんの馴れ初めですよ」

早苗「あーそうそう!」



その言い方は誤解を招くからやめて頂きたい。
が、そんな俺の気持ちは知らずに早苗さんは懐かしむように話し出す。



早苗「もう3年くらい前かしらねー。あの時はまだキミ中学生だったわよね?」

八幡「早苗さんが今の楓さんと同じ年齢の頃ですね」

早苗「歳の話をするたぁー良い度胸ね? ん?」



いやあなたが始めた話題でしょうが……って痛い痛い痛い。肩を掴む手が強い!
女性に年齢の話をしてはいけない。これ基本。



早苗「その時はあたし千葉の駐在さんやってたんだけど、平日の真っ昼間から出歩いてるちょっと変な学生を見つけたの。まぁこの子なんだけど」

八幡「俺は変な人に捕まったなと思いましたよ。補導だけに」

「ぶふっ……!」



俺の発言に、楓さんは吹き出したかと思うと口を抑えぷるぷると震え始める。え? 今のそんな面白かった?
もしかしたらお酒が入って、笑いの沸点が下がってるのかもしれない。……元々こんな気もするけど。



早苗「それで話聞いてみたら案の定学校サボってたみたいでね。理由を聞いたら、その時なんて答えたと思う?」

文香「……なんと…言ったんですか?」

早苗「『ぼっちだから』って言ったのよ。あたし思わず爆笑しちゃった」


969 = 1 :




ゲラゲラと、当時を思い出すかのように笑う早苗さん。いやいやいや、何も笑えないんですが。

俺の非難めいた視線を感じたのか、早苗さんはごめんごめんと俺の肩を叩く。



早苗「いや、別に友達がいないのを笑ったんじゃないのよ? ただ、そういうのを取り繕わずにケロッと言っちゃうのが凄いなと思ったのよ。あの時は衝撃だったわ」

「なんか絵が想像つく……」

八幡「どういう意味だそりゃ」



けど、それを言うなら俺だってあの時は変な人に会ったと思ったぞ。

サボっていた俺を最初こそ注意したものの、話している内にどんどんフランクになっていって、律儀に俺の話を聞くし、頭ごなしに叱ったりしないし、なんなら何故か俺が早苗さんの身の上話を聞かされたりもして……こんなお巡りさんもいるんだなと、不思議に思ったもんだ。



「でもちょっと意外だな」

八幡「何がだ」

「いや、プロデューサーって学校サボったりとか、そういう事はしないと思ってたからさ」



凛がそう言うと、早苗さんは「ほほう」と少し驚いた様子を見せる。



早苗「なるほどねー。さすがは担当アイドルとプロデューサーって感じだわ。確かに比企谷くんはあの時…」

八幡「いいっすよ、そんな面白くもない話は」



話し始めようとした早苗さんを止めにかかる。自分の過去の話をされた所で気恥ずかしいだけだしな。



八幡「それよか、俺は早苗さんがアイドルになっていた事の方が驚きですよ。入ったの最近ですよね?」

早苗「そうねぇ、三ヶ月くらい前だったかしら。なんか今のプロデューサーくんにスカウトされちゃってね。楽しそうだったし、こんな道も良いかなって」


970 = 1 :




そう言う早苗さんは、笑顔ではあったがどこか哀愁を感じさせた。
もしかして、警官だった頃に少し心残りがあるのだろうか。



早苗「この歳でアイドルってやっぱりキツいのかしら……いや、まだ大丈夫…よね」



どうやら違うようだった。



早苗「というか、比企谷くんあたしがデレプロに入ったの知ってたのね?」

八幡「……」 ぎくっ

早苗「知ってたんなら会いに来なさいよ! なに? あたしの事避けてたわけ?」



避けてました。そらもー避けてました。いや昔の知り合いとか出来れば会いたくのが普通じゃないの? 俺がおかしいの?

しかし、新しい所属アイドルのリストの中に早苗さんの名前見つけた時は度肝を抜かれたもんだ。だって昔お世話になったお巡りさんがアイドルになってるんだよ? 驚くってレベルじゃない。出来るだけ会わないよう会わないよう気をつけていたが、まぁ、いつかはこうなるとも思っていた。



八幡「あん時はお世話になりました」

早苗「何その今更な挨拶。……まぁいいわ。こうして会えただけでも何かの縁でしょ♪」



俺の首へ腕を回し、上機嫌にビールをあおる早苗さん。
いや、だから色々と当たってるんですが……!

身を捩って、なんとか拘束を抜けようとする。


この人は昔からこうだな。こっちが嫌がる素振りをしても、全く気にせずに絡んでくる。
当時の俺はこの人のそんな所が本当に嫌いで……同時に、羨ましいと、少しだけ思っていた。



ちなみに初めて会ってから一年くらいで早苗さんは異動になり、千葉を去っていった。後に俺の中でこの一年間を『ぼっちと駐在さんの365日戦争』と名付けられる事になる。だってこの人、街で会う度に絡んでくるんだもんよ。


971 = 1 :




八幡「それで、他の人たちはもう部屋に行ったんですか?」



とりあえず、いつまでもこの話を引っ張りたくはないので話題をすり替える事にする。



文香「そう…ですね。先程までは一緒にいたのですが……恐らく」



思い出すかのように言う鷺沢さん。
夕食の時に一度集まるとは思うが、一応挨拶に行った方が良いだろうな。同じ所属事務所とは言え共演者になるわけだし。

と、そこでふと思い出す。



八幡「そう言えば、さっきちひろさんから他のプロデューサーの方たちが今日は来れない、って電話があったんですけど……あと、安斎も」

早苗「あ、そうそう。なんか仕事の都合でね」

文香「…私は、元々専属のプロデューサーはいませんし……」



やっぱそうなんか……
いや、受付で確認した時点で分かっちゃいたんですがね。一応確認せずにはいられなかった。だって確か今日来られるプロデューサーって俺だけじゃなかったか? 大丈夫なのかこの事務所……



「大丈夫よ比企谷くん。明日になればスタッフの方達と一緒に来るだろうし、今日は撮影も無いから」

八幡「まぁ、そう言ったらそうなんですが……」



確かに今日は撮影は無いし、だからこの大人二人組は楽しそうに昼間から酒を飲んでるわけで……俺の仕事なんて、精々点呼と取るのと明日の確認作業だけだ。 

しかし今回は初のドラマ収録。アイドル数人にプロデューサーは俺一人。緊張するのも仕方が無かろう。



早苗「お固く考え過ぎなのよキミは。ってか今日現場入りしたのってキャスト陣だけでしょ? 比企谷くんハーレムじゃない! やーん襲われるー♪」

八幡「…………」

早苗「……なんかごめん」



逆に謝られても困る。なんかこっちが申し訳なくなってくるし……


972 = 1 :




八幡「……とりあえず、一端荷物置きに行くか。挨拶もしておきてぇし」

「そうだね。ゆっくりするのはその後って事で」



こういう時、凛のまともさは大変ありがたい。
名残惜しそうにグラスを見つめる楓さんも連れ、広間を後にする。



早苗「終わったらちゃんと戻って来なさいよー!」

文香「…………」 ぺこ



去り際に嫌なお誘いを受けてしまったが、すっぽかしたら後が怖いんだろうな。
何より、動けずにいる鷺沢さんが不憫であった。

……つーか、楓さんを連れて夜中に押し掛けて来たりしないよな。なんかマジであり得そうで怖くなってきた。



近くに階段を見つけたので、荷物を担ぎ直して登りにかかる。ここ、エレベーターとか無いのかしら……

途中窓があったので覗いてみれば、まだ昼間だとのに薄暗い景色であった。恐らく、周りを森に囲まれている事を除いても。



「なんか、天気悪いね」

「確か予報では雨だったかしら。酷くならないと良いけれど」



二人の会話を耳にしつつ、何となく外の景色から視線を外せない。


何か、嫌な予感がするな。

それが訪れたことの無い地に足を踏み入れた緊張からなのか。それとも、未だ始まっていない新たな仕事への焦燥なのか。俺には分からない。

しかし、分かっている事もある。



俺の嫌な予感は、大体当たる。



何の根拠も無いが、ぼっち暦の長い俺だからこそ感じ取れるものもある。……なんかちょっと蘭子に毒されてないか俺。

まぁ、何も無ければそれに越した事はない。



形容し辛い気持ちを振り払うかのように、俺は踵を返して歩き出した。





973 = 1 :




   * 登場人物紹介 *



    高垣楓  主人公

    渋谷凛  助手

    比企谷八幡  狂言回し



    片桐早苗  元警官

    鷺沢文香  文学部学生

    ???

    ???

    ???



    安斎都  探偵


974 = 1 :

そして次回に続く! 今回の早苗さんエピソードは前にスレのどこかで頂いたアイディアを使わせてもらいました。あの時の方ありがとうございます。

>>940 盛大にパロってます。やっぱりクビキリサイクルが一番名作だと思うのよね。

976 :

まじ最近大した内容でもないのに作者様の自己主張がうざいな
特に俺ガイル関連が気持ち悪い上に臭い。てめえが作った作品でもねえくせにでけえ顔して偉そうにしてんじゃねえよカス
キャラクターも設定も丸パクリして勝手に書いてるんだから調子に乗って作者面するのやめろや
そんなに評価されたきゃオリジナルのSSでも書けよクズがくたばれ

977 = 976 :

作者様(笑)は偉いっすね~。どうせならトリップ付けて書き込めやビビリのクソガキが

978 :

乙です
文香キターーーーー!!
後は青森出身のお嬢様が来れば…w

979 = 1 :

八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「きっと、これからも」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434879314/

次スレ立てましたー。もうタイトルだけじゃ順番が分からんな。申し訳ない、文字制限がね……

980 = 1 :

本編完結したのに次スレとか、相変わらず亀更新ですけどよろしくお願いします。
こっちは埋めてくれりゃんせ。

981 :

おっつおっつ

982 :

乙乙!

983 :

乙乙

984 :

>>964
楓さんと凛ちゃんは初対面だった!

985 :

>>953
俺は好きだぜ、お前のそういうところがさ。
それで・・・その・・・なんだ、このスレが終わったら伝えたいことがあるんだ。
このスレが終わっても、ちょっと残っててくれないか?

986 :

バブリー早苗

988 :

>>986
なんかtrickに出てきそう
そんで犯人っぽい

989 :

???「全てまるっとお見通しだよ!」

990 :

早苗さんを平塚先生と合わせるとどんな惨事になるだろうか……

八幡とのあの絡みをみてみたい

991 :

次スレが過去ログになってんぞ?!
すごく楽しみにしてたのに・・・

992 :

新スレ落とされたみたいやな
まあ、マナー悪いといえば悪かったし仕方がないか
>>1は新スレ立てる時は書き溜めてからの方がいいな

993 :

まあ、頑張って
しえんします

994 = 991 :

そっかぁ。
>>1さん、頼むよ~
みんな待ってるぜ

995 :

次スレ落ちてた

996 :

落ちてるのに今気がついた……すいません、本当にごめんなさい……
確かにマナー違反でした。出来るだけ早急に書いてから立てようと思います。

997 :

頼むで

998 :

気づいてくれて一安心。良い子にして待ってる

999 :

アニメに美玲ちゃん出るかな‥、前回は6話に一瞬しか映ってなかったからなぁ、顔がわかるぐらいに映ってほしい


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