元スレ春香「冬馬くんかっこいいなあ……」
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151 = 146 :
>>150が何をいってるのかちょっとわかりませんね
152 :
>>151
え、ゼノグラシアに我那覇響ちゃんがいたの?
153 :
>>152
ゼノグラしらないしSS程度の知識だけど「響」はでてきたと思う
154 :
我那覇響は知らないけど響は出てきたな
155 :
春香(私が『彼』と出会ったのは、今からもう二年以上も前のことになる)
春香(当時、まだ無名のアイドルだった私の前に、『彼』は緊張した面持ちで現れた)
「――今日から、プロデューサーとしてこの会社で働くことになりました、□□といいます!」
「目指す夢は、皆まとめてトップアイドル! よろしくお願いします!」
春香(所信表明は結構だけど、よりにもよっていきなりトップアイドルだなんて)
春香(もう少し、現実的な目標にしといたらいいのに……とは思わないでもなかった)
春香(でも、『彼』の目には確かな自信と情熱が宿っていて)
春香(悪い人ではないんだろうな、というのは直感的に分かった)
春香(そしてなんとなくだけど、この人についていってみようかな、と)
春香(自然とそんな風にも思えた)
春香(……それが、私と『彼』との出会い)
春香(そして今の『私』につながる――……すべての始まりだった)
156 = 155 :
春香(『彼』がプロデューサーとして働いてくれるようになってから、事務所のお留守番と自主レッスンが日課だった私達にも、少しずつ仕事が入るようになってきた)
春香(最初は小さな仕事ばかりだったけど、そうして地道に活動を続けているうちに、私たちのことを知ってくれる人も少しずつ増えてきて)
春香(『彼』が入社してから半年ほどが経った頃には、私も他の皆も、地方の町おこしイベントのミニライブや、ローカル番組のゲスト出演くらいにはちょくちょく呼ばれるようになっていた)
春香(まだまだトップアイドルには程遠かったけど……それでも、前より確実に前進しているのが分かって、嬉しかった)
春香(こうやって頑張っていればいつかきっと……なんて、そんな風に夢を見ていた)
春香(……そんな日々を過ごすうち、私はいつしか、『彼』に対しても強い信頼感を抱くようになっていた)
春香(『この人を信じて、この人についていこう』)
春香(そう思うことに、私は何の疑いも持たなかった)
春香(――そんな、ある日のことだった)
~765プロ事務所~
P「……春香。ちょっといいか」
春香「何ですか? プロデューサーさん」
P「この前のミニライブのことなんだけどな」
春香「! は、はい……」
春香(あー、あのライブ、私歌詞間違えちゃったんだよね)
春香(あの後何も言われなかったから、気付かれてないのかなって思ってたけど……)
春香(うぅ……やっぱり怒られちゃうのかなぁ)
P「…………」
157 = 155 :
P「あのときのライブ……」
春香「…………」
P「すっごく、良かったぞ!」
春香「……え?」
P「声もよく通ってたし、何よりもお客さんに対するパフォーマンスが素晴らしかった!」
春香「…………」
P「小さな会場だったからってのもあるかもしれんが……観に来てくれたお客さん一人一人の顔をきちんと見て、想いを込めて丁寧に歌っているのが伝わってきたよ」
春香「…………」
P「春香の一番の良さは、そうやって一人一人のお客さんを大事にできるところだと俺は思う。そしてそれは、アイドルにとって最も大事なことでもある」
春香「……プロデューサーさん……」
P「あのライブは、そんな春香の良さが前面に出ていた、とても良いライブだった! だからこれからも、その調子で頑張れ!」
春香「…………」
P「……ってことを、本当はライブが終わってすぐに伝えてやりたかったんだが、あの後またすぐに対応しないといけないことができてしまって……つい、遅れ遅れになってしまっていたんだ。すまん」
春香「…………」
P「は、春香? やっぱり怒ってるのか? 褒めてやるのが遅くなったから……」
春香「ち、違います! そうじゃなくて、その……」
P「? どうした?」
春香「……怒らないんですか?」
P「え?」
158 = 155 :
春香「あ、いや、えっと……私実は、あのとき歌詞間違えちゃってたから。二番の歌い出しのとこ……」
P「ああ、そういやそうだったな」
春香「! 気付いてたんですか?」
P「そりゃお前、気付かないわけないだろう」
春香「ですよねー……って、じゃあ何でそのことで怒らないんですか?」
P「え? 何でって……」
春香「…………」
P「そんなの、ただの一つの失敗じゃないか」
春香「えっ」
P「いいか春香。失敗なんて、誰にでもあることだ」
春香「…………」
P「俺だってしょっちゅう失敗してるし、律子だって社長だって失敗する」
春香「…………」
P「大切なのは、失敗した後にちゃんと反省して、二度と同じ失敗をしないようにすることだ」
春香「…………」
P「今回のはただの歌詞間違えだから、後でちゃんと復習して、次また同じ間違いをしないようにすればいいだけの話だ。だから、あえて俺の口から言うまでもないことだと思ってたんだが……」
春香「……あっ……」
P「……春香? 一応聞くけど……お前、ちゃんと復習したよな?」
春香「え、えっと……」
P「……してないのか?」
春香「ご、ごめんなさい」
P「春香。それはダメだ。誰にも何も言われなくても、ちゃんと復習しとかないと」
春香「はい。……ごめんなさい」
P「ん。分かればいいよ。……まあでも、これもまた一つの失敗だ。良かったな、春香」
春香「……良かった?」
P「ああ。失敗したっていうことは、反省して、成長する機会を得られたってことだからな。だから春香は今また、成長するチャンスを得られたんだ。良かっただろ?」
春香「失敗は……成長するチャンス……」
P「そうだ。だからちゃんと反省して、しっかり成長しないとな。春香」
春香「……はい! 分かりました!」
P「よし。じゃあ今日はもう遅いから帰ろう。駅まで送って行くよ」
春香「はい! どうもありがとうございました! プロデューサーさん!」
159 = 155 :
春香(……このとき、歌詞を間違えたことで怒られるとばかり思っていた私は、自分の思ってもいなかったところで褒められ、また考えもしていなかったところで叱られた)
春香(でもそのおかげで、私はまた一歩、前に進めたような気がした)
春香(――失敗しても、いいんだ)
春香(そう思えたことで、私の心は随分と軽くなった)
春香(それに私には、プロデューサーさんが教えてくれた『良さ』もある)
春香(ならこれからは、その『良さ』に磨きをかけながら、たくさん失敗しよう)
春香(そしてその分だけ反省して、たくさん成長しよう)
春香(そうしたことの積み重ねが、トップアイドルへの道につながっているに違いない)
春香(だから私は歩いて行こう)
春香(いつか私をその道に導いてくれる、プロデューサーさんと一緒に――……)
春香(……この頃の私は、ただただ無邪気に、ただただ真っ直ぐに――そんな気持ちを抱いていた)
春香(そして私のこの気持ちが、『彼』に対する特別なそれへと変化するのに、そう長い時間は掛からなかった)
春香(気付いた時には、私は)
春香(……『彼』を、信頼できるプロデューサーとしてだけではなく、一人の男性としても――……明確に、意識をするようになっていた)
160 = 155 :
のヮの<とりあえずここまで
162 :
春香(それでも最初は、自分にずっと言い聞かせていた)
春香(これは恋じゃないんだって。ただの憧れの気持ちなんだって)
春香(それを一度でも自覚してしまうと、もう自分を誤魔化すことはできなくなると思ったから)
春香(でも――……)
P「春香」
春香「ひゃいっ!」
P「うお、どうした」
春香「どどっど、どうもしてないですよ? ただプロデューサーさんに急に声掛けられたから、驚いちゃっただけで……」
P「別に、普通に声掛けたつもりだったんだが……まあいいや、今度の収録のことなんだが、今ちょっと話せるか?」
春香「は、はい」
P「この前の打ち合わせでは、こういう説明だったんだが――」
春香(うわ! か、顔近い!)
P「――という風に変更したらどうか、って話があってな。俺もその方がいいと思ったんだが、春香はどう思う?」
春香「……え?」
P「いや、え? じゃなくて」
春香「あ、えっと……ごめんなさい。聞いてませんでした……」
P「おいおい……そんなに疲れてるのか? じゃあこの件はまた明日にするから、今日はもう早く帰って休め」
春香「はい……すみませんでした。……お先に失礼します」ペコリ
163 = 162 :
~同日夜・春香自室~
春香(はぁ……だめだなぁ、私)
春香(やっぱりちゃんと向き合わないといけないのかな……自分の気持ちに)
春香(…………)
春香(……好き、なんだろうな)
春香(うん)
春香(もうこれ以上は、知らんぷりできそうにないや)
春香(でもなあ、アイドルとプロデューサーの恋愛って……)
春香(それ以前に、そもそもアイドルに恋愛はご法度だし)
春香(うーん)
春香(つらいけど、流石にどうしようもないか……)
春香(はぁ……)
春香(…………)
春香「……まあでも、ずっと一人で溜め込んでるのもしんどいし……美希あたりにそれとなく聞いてみよう」ピッ
春香「…………」
美希『ミキなの』
春香「あ、美希? ごめんね急に。今電話大丈夫?」
美希『大丈夫なの』
164 = 162 :
美希『でもどうしたの? 春香。急に電話なんて珍しいね』
春香「あー、うん。ちょっと思ったことがあって」
美希『何?』
春香「えっと、私たちって、恋愛禁止だよね?」
美希『そりゃまあ、一応アイドルだしね』
春香「でも、人を好きになる気持ちは、それとは別の話だよね?」
美希『……うん? 何春香、好きな人でもできたの?』
春香「や、そういうわけじゃないけど。でもいつかそうなる可能性もあるなーって」
美希『まあ確かに可能性はあるの』
春香「もしそうなったとき、美希ならどうする? スキャンダル覚悟で、愛を貫く?」
美希『なんかいきなり重いの』
春香「あ、ごめん。まあ例えばの話だから」
美希『うーん。ミキ的にはそれはしないかなって思うな』
春香「じゃあずっと自分の中に秘めておくの?」
美希『そうだね』
春香「でも、それってすごくつらいんじゃない?」
美希『そうかもだけど、でもミキ的には、他の皆にメーワクかけちゃうことの方が、もっとヤなの』
春香「……美希……」
美希『それにミキだって、永遠にアイドルやるってわけじゃないしね』
春香「じゃあアイドルを引退したら……ってこと?」
美希『まあそのときまでその気持ちが続いてるかは分かんないけどね。でももしそうだったら、そうすればいいって思うな』
春香「…………」
美希『ただ今は、ミキはアイドルやってるのが一番楽しいから、もし好きな人ができたとしても、やっぱりアイドルの方を優先したいって思うかな』
春香「そうなんだ」
美希『っていうかむしろ、その恋の気持ちをアイドルのお仕事の方に向けちゃえー! って思うな』
春香「恋のパワーってこと?」
美希『うん。パワー』
春香「あはは。美希らしいね」
美希『そうかな? まあミキはまだそんな恋とかしたことないけどね』
春香「でも実際そうなったら、美希ならなりふり構わず突っ走っちゃいそうな気もするね」
美希『うーん。まあ確かにそうなるかもしれないの。こればっかりは実際にそうならないとわからないの』
春香「そっか、よく分かったよ、美希。どうもありがとう。夜遅くにごめんね」
美希『別にいいの。春香も好きな人できたら教えてね』
春香「……ん。分かった。じゃあまた明日、事務所でね。バイバイ」
美希『はーい。おやすみなさいなの。あふぅ』
春香「…………」ピッ
春香(ごめんね、美希)
春香(私もう、好きな人、いるんだ)
165 = 162 :
春香(……美希に聞いてみて、良かった)
春香(なんか少し、気持ちが楽になったのと)
春香(頭の中が、すっきりした)
春香(私は、プロデューサーさんが好き)
春香(でも今はまだ、この想いを伝えるべきじゃない)
春香(そんなことをしてもプロデューサーさんを困らせてしまうだけだし、私自身も、今の関係を壊したくないという気持ちが強い)
春香(だから私は、今のこの気持ちを認めて、受け容れたうえで)
春香(前に進もう)
春香(美希じゃないけど、この気持ちをパワーに変えて、全力でアイドルやってみよう)
春香(……結局、今の私はアイドルで、プロデューサーさんはプロデューサーなんだから)
春香(私が全力でアイドルやるのが、一番良いことなのは間違いない)
春香(私にとっても、プロデューサーさんにとっても)
春香「……よし! 頑張ろう!」
春香(――こうして自分の気持ちに真正面から向き合った私は、自分の立ち位置を再確認することができた)
春香(今はまだ、アイドルでいたい)
春香(ただその一心で、私はプロデューサーさんに対する想いを、アイドルの仕事に対する情熱へと転化させることができた)
春香(……つもり、だった)
166 :
Pが美希と付き合い始めちゃったとか?(震え声)
167 :
ある意味タイトル詐欺やん。
168 :
こっから冬馬絡んでくるのかね
169 :
タイトルの春香はアイドルじゃない一般人の場合の春香だし今の春香はアイドル(元かも)なんだからどうなるのかね
170 :
春香(プロデューサーさんへの想いを自覚してから、私は一層、お仕事やレッスンに情熱を傾けるようになった)
春香(今はそうすることが一番良いと、信じていたから)
先生「――はい、そこまで」
春香「……ふぅ」
先生「春香ちゃん」
春香「はい」
先生「すごく良くなってきてるわ」
春香「! 本当ですか」
先生「ええ。ここ最近、目に見えて上達してる」
春香「えへへ……よかったぁ」
先生「何か良いことでもあったの?」
春香「いえ……別に、何も」
先生「そう? でも本当、良い感じよ。ただオーバーワークはダメだから、今日はここまでね」
春香「はい。どうもありがとうございました」ペコリ
先生「いえいえ。気を付けて帰るのよ」
春香「はーい」
171 = 170 :
春香(えへへ……先生に褒めてもらっちゃった)
春香(これもプロデューサーさんのおかげだね。恋の力ですよ、恋の力! ……なーんて)
春香「……あれ」
美希「春香?」
春香「美希。まだ残ってたの?」
美希「うん。プロデューサーと打ち合わせしてたの。春香は……こんな時間までボーカルレッスン?」
春香「そうだよ。最近、先生に居残りでレッスンしてもらってるんだ」
美希「へぇ。じゃあ一緒に帰ろうなの」
春香「うん。もう私だけだと思ってたから嬉しいな」
美希「ミキも嬉しいの。でも、なんでまた居残りレッスン?」
春香「んー……前から私、結構音外しちゃうこと多かったからさ。ここらでちょっと本腰入れて鍛えてみようかなーって」
美希「…………」
春香「どうしたの?」
美希「あ、いや……春香さ、なんていうか……」
春香「?」
美希「なんか、いきいきしてるね」
春香「え? そう?」
美希「うん」
172 = 170 :
美希「春香は今までも元気あったけど、最近は一層パワー溢れてる感じがするの」
春香「そうなのかなぁ。自分じゃよくわかんないけど」
美希「……もしかして、本当に好きな人でもできた?」
春香「あはは。そんなわけないってば」
美希「じゃあ、なんで?」
春香「んー……実はこの前、電話で美希が言ってたこととも関係してるんだけどさ」
美希「? ミキ、なんか言ったっけ?」
春香「ほら、『永遠にアイドルやるわけじゃない』ってやつ」
美希「あー」
春香「それって当たり前のことだけど、でも確かにそうだなって思ってさ」
美希「…………」
春香「それならせめて、やるだけやって悔いの無いようにしたい、って思ったんだ」
美希「なるほどなの」
春香「限りある時間を、後悔の無いように……そのためには、今できることは今やっておかないと、って」
美希「春香は立派なの」
春香「……でも私に言わせれば、美希だって随分変わったと思うよ?」
美希「ミキが?」
春香「うん」
174 :
春香「だって、少し前まであんなにやる気なかったのに」
美希「あー」
春香「今じゃ『アイドルやってるのが一番楽しい』だもんね」
美希「それは多分……プロデューサーのおかげなの」
春香「……プロデューサーさんの?」
美希「うん。プロデューサーが色んなお仕事取ってきてくれるようになってから、毎日が忙しくなって……でもその分、ミキのコト、色んな人が見てくれるようになって」
春香「…………」
美希「それから、ミキ、『もっともっと大勢の人に見てほしい!』とか、『もっといっぱいキラキラしたい!』とか、そういう風に思えるようになってきて、お仕事が楽しくなってきたの」
春香「……そうなんだ」
美希「それとあとはやっぱり、プロデューサーの存在自体かな」
春香「! そ、それってどういう……?」
美希「んー。なんていうか、『支えてくれる人の存在』っていうの? 『何があっても、このヒトはミキの味方でいてくれるんだろうな』って思えるから、すごく安心できるってカンジなの」
春香「…………」
美希「それに優しいだけじゃなくて、叱るときはきちっと叱ってくれるしね」
春香「え? 美希、プロデューサーさんに叱られたこととかあるの? なんかあんまりそういうイメージ無いけど」
美希「うん、あるよ。この前ライブで歌詞飛んじゃって、そのこととかで」
春香「歌詞飛んだの? 美希が?」
美希「うん。ミキね、自分で言うのもなんだけど、歌詞とか結構すぐ覚えられちゃう方なの」
春香「それは知ってるけど」
美希「でね、その時も前の日にざーって目通して、『うん、もう完璧』って思って、その後ロクに確認もしなかったんだ」
春香「…………」
美希「で、リハでも完璧だったから、本番までヨユーな感じで過ごしてたの。そしたらいざ本番で、完全に歌詞飛んじゃって」
春香「へー。美希でもそういうことあるんだ」
美希「うん。ミキもそんなこと初めてだったから、すごいパニクっちゃって。結果的には、一緒にステージに立ってた真クンが上手くフォローしてくれたから、なんとかなったけど……」
春香「……それで叱られたんだ。プロデューサーさんに」
美希「うん。プロデューサーね、『お前がちゃんと努力した上でのミスなら、俺も何も言わない。でもお前が努力を怠った結果のミスだから、今回はちゃんと叱る』って、そう言って叱ってくれたの」
春香「…………」
美希「それから、『プロとしてお客様の前でパフォーマンスをする以上、常に最大限の努力をしないといけない』ってことも言われたの。それからミキ、どんなお仕事でも手を抜かないで、全力でやろうって思えるようになったんだ」
春香「そうだったんだ」
美希「うん。ミキね、今までパパやママからもあんまり怒られたことなかったから、こういう風に、きちんと叱ってくれる大人の人ってプロデューサーが初めてだったの。だからすごく感謝してるんだ」
春香「…………」
175 = 174 :
美希「……春香?」
春香「あ、ううん。なんでもない。でもすごいね、プロデューサーさん。美希のことよく見てるんだね」
美希「んー。別にミキだけってわけじゃないと思うケド。基本的に、竜宮以外はプロデューサーが担当してるんだし」
春香「あー、そういえばそうか。改めて考えたら、アイドル9人の担当って結構な負担だよね」
美希「うん。それでも、ちゃんと一人一人のアイドルと向き合って、褒めたり叱ったりしてくれてるから、プロデューサーはすごいって思うな。ミキ、ソンケーしちゃうの」
春香「……そうだね。ホント、すごいよね」
美希「っと。じゃあミキ、こっちの線だから」
春香「あ、うん。じゃあまた明日、事務所でね。バイバイ」
美希「バイバイなの」
春香「…………」
春香(……そうか。そうだよね)
春香(当たり前のことだけど、プロデューサーさんは私だけのプロデューサーじゃない)
春香(美希にとっても、他の皆にとっても……プロデューサーさんは、プロデューサーなんだ)
春香(…………)
176 = 174 :
~同日夜・春香自室~
春香(私にとってのプロデューサーさんは、たった一人しかいないプロデューサー)
春香(でもプロデューサーさんにとっての私は、9人いる担当アイドルのうちの一人でしかない)
春香(…………)
春香(……私だけのプロデューサーさんだったらいいのに)
春香「! って、何考えてるの。春香」コツッ
春香「プロデューサーさんは勿論、他のアイドルの皆もいてこその765プロなんだから」
春香(そうだよ。今の前提状況を変えるんじゃなくて……今の状況を前提に、私自身が変わればいいだけ)
春香(他の誰よりも、プロデューサーさんに見てもらえるように)
春香(プロデューサーさんにとっての、一番のアイドルになれるように)
春香(幸いにも、明日は全員集まっての全体練習)
春香(ここで私の存在感をプロデューサーさんにアピールできれば……)
春香「……って、違う違う」コツッ
春香(それはそれで大事な事だけど、一番の目的はそうじゃなくて)
春香(明日の全体練習は、来月に控えた765プロファーストライブのためのもの)
春香(まずはライブを成功させることを第一に考えないと……)
春香(……『プロとしてお客様の前でパフォーマンスをする以上、常に最大限の努力をしないといけない』……だもんね。美希からの伝聞だけど)
春香(それにライブに向かって頑張ることが、結果的にプロデューサーさんに対するアピールにもなるだろうし)
春香(まあ、アピールしたからどうなるってものでもないけど……)
春香(でも今は、目の前のこと一つ一つに全力でぶつかっていこう)
春香(そうするって、決めたんだから)
春香「よーし! やるぞー! 765プロー! ファイトーッ!」
177 = 174 :
~翌日・レッスン場~
律子「……じゃあ、今日の練習はここまで」
アイドル一同「…………」ハァハァ
律子「では私からの指摘の前に……まずはプロデューサーの方から、何かご意見はありますか?」
P「そうだな……」
アイドル一同「…………」
P「皆、よく踊れてると思うよ。特に春香」
春香「! は、はいっ!」
P「前の全体練習の時に比べて、格段にキレが増してきたな」
春香「!」
P「俺はダンスに関してはほとんど素人だが、それでも分かるくらいだった」
春香「ほ、本当ですか!?」
P「ああ。だからその調子で頑張れ」
春香「はいっ! ありがとうございます!」
春香(やった……! プロデューサーさんに褒められた!)
P「それから美希」
美希「はいなの」
春香「!」
P「相変わらず、抜群に動きが良いな」
美希「! ホント!?」
P「ああ。だが強いて言えば、そのせいで若干周囲から浮いてしまっているように見えることもある。今度からは周りとある程度合わせることも意識して踊ってみたらいいんじゃないかな」
美希「はーい。分かりましたなの!」
春香「…………」
春香(プロデューサーさん、なんか、美希に対するアドバイスの方が丁寧なような……)
春香(……って! 違うでしょ! 春香)コツッ
美希「春香? 何やってんの? ちゃんと話聞かなきゃだめだよ」
春香「……はい」
ドッ アハハ……
春香(うぅ……恥ずかしい……)
P「なお、今俺が美希に言ったことは、他の皆に対しても言えることだ。ソロ曲なら自分がステージの中心にいることだけを意識していれば良いが、全員または複数人で歌う曲だとそれではいけない」
アイドル一同「…………」
P「それぞれが自己主張をし過ぎると、かえって全体としてまとまりの悪いステージになってしまいかねないからだ。だから各自がそのあたりにも気を配るようにすれば、今よりももっと良くなると思う。俺の方から言えるのはそのくらいだ。全体としてはすごく良い感じだから、皆、このままの調子で頑張れ!」
アイドル一同「はい! ありがとうございました!」
律子「では次は私からね。……と言っても、全体を通して言おうと思っていたことはほとんどプロデューサーが言ってくれたから……後は、細かい指摘だけ伝えることにするわ。まず、ステージ中央での陣形が変わるところだけど――……」
178 = 174 :
律子「――……と、それくらいかしらね。では今日はこれで解散にするけど、ここは21時まで開けておくから、自主練したい人は使っていいわよ。ただし明日に疲れを残さないように。体調管理も仕事のうちだからね。分かった?」
アイドル一同「はい!」
律子「ではプロデューサーからも、最後に一言お願いします」
P「ああ。皆、ライブまで一ヶ月を切ったが、無理だけはするんじゃないぞ。誰一人欠けることなくやり遂げてこそ、初めてこのライブを成功させたと言えるんだからな。では、このままの調子で頑張っていこう! お疲れ様!」
アイドル一同「はい! お疲れ様でした!」
春香「……ふぅ」
美希「はーるかっ」ピトッ
春香「ひゃあっ!」
美希「あはは。ナイスリアクションなの」
春香「もー、やめてよ美希……」
美希「ごめんなの。はい、これ」
春香「ん。ありがと」ゴクゴク
美希「……でも春香、すごかったね」
春香「? 何が?」
美希「何がって……さっきの練習だよ。プロデューサーも言ってたけど、キレキレだったの」
春香「あー。でもそれを言うなら、美希だって」
美希「ううん、ミキはまだまだなの。確かにプロデューサーの言うように、一人で飛ばしちゃってたとこあったと思うし」
春香「…………」
美希「? どうしたの? 春香」
春香「あ、ううん。ただ私は、横で踊っててもそこまで分からなかったから、やっぱりプロデューサーさんは美希のことよく見てるんだなぁって思って……」
美希「んー。そりゃあやっぱり、一緒に踊ってる人よりは、外から見てる人の方が色々と気付けるんじゃない?」
春香「それは……そうかもだけど……」
美希「っと。ミキ、今日は観たいドラマがあるんだった。春香はまだ帰らないの?」
春香「んー。もうちょっと自主練していこうかなって」
美希「そっか、りょーかいなの。じゃあね、春香。また明日」
春香「ん。バイバイ、美希」
春香「…………」
179 = 174 :
春香(余計な事は考えないようにしよう)
春香(今はライブ……そう、ライブに集中するんだ)
響「おつかれー、春香」
真「お疲れ様」
春香「響ちゃん、真。お疲れ様」
真「どうしたの? 何か考え事?」
春香「……ううん、何でもない。それより何かな?」
響「これからさ、自分達ちょっとダンスの自主練しようと思うんだけど、春香も一緒にやらないか?」
春香「ダンスの?」
真「まあ流石に軽く流すくらいだけどね」
春香「うん、いいよ。私もどのみち自主練しようと思ってたし」
響「ホントか!」
真「へへっ! やーりぃ! じゃあ早速――……」
亜美「あれあれー? 皆で集まって何やってんのー?」
真美「真美達も混ぜてよー」
やよい「はわっ、もしかして居残り練習ですか?」
響「うん、ちょっとダンスの確認をね」
亜美「ふーん。ひびきんとまこちんはなんとなく分かるけど、はるるんまで?」
春香「うん、そうだよ」
真美「すごいねはるるん……真美、その二人と一緒に踊るのはなんかシキガミしちゃうよー」
真「尻込み……かな?」
やよい「でも最近の春香さんって、ダンスすっごく上手ですもんね! さっきもプロデューサーが褒めてましたし!」
春香「いや、そんなことは別に……」
響「でも、自分と真が春香に声掛けたのもそういう理由からだぞ」
春香「え?」
181 :
真「最近の春香は鬼気迫ってるっていうか……凄みが増してるからね」
響「それで、ちょっとその勢いというか、パワーを分けてもらおうかなって」
春香「そんな……私なんか別に」
千早「……謙遜することはないと思うわ」
春香「千早ちゃん」
千早「……最近の春香、本当にすごいもの。私も良い刺激を受けているわ」
春香「あ、ありがとう……なんか照れるね」
亜美「むぅ、このはるるんべた褒めの流れとなると!」チラッ
真美「必ず対抗心を燃やすのが!」チラッ
伊織「わ、わざとらしく見てくるんじゃないわよ!」
亜美「きゃー♪ いおりんたらこわいーん♪」
真美「いやぁん♪ 略していおいーん♪」
伊織「何よいおいんて! ……ったく、バカなこと言ってないで、春香達の邪魔するくらいなら早く帰りなさい」
真美「えー、邪魔なんてしてないじゃーん。ねぇはるるん?」
春香「え? う、うん」
真「ははは……。(ボクは早く練習始めたいんだけど……)」
やよい「伊織ちゃんはまだ帰らないの?」
伊織「うん、私はまだ竜宮曲のフォーメーション確認が残ってるから。というわけで亜美、あんたはこっちよ」ガシッ
亜美「うぇえ!? そんな殺生なー! ていうか今帰れって言ったくせにー!」
伊織「あれは真美に言ったの。ほら、あずさも早くこっちに来て!」
あずさ「はいはい。伊織ちゃんは元気ね~」
伊織「あんた達をとりまとめないといけないんだから、無理矢理でも元気になるわよ」
亜美「ひゅーっ! いおりんかっこいー!」
あずさ「それでこそ私達のリーダーね、伊織ちゃん。でもあんまり無理しちゃだめよ?」
伊織「分かってるわよ。さっきプロデューサーにも言われたしね。じゃあさっさと始めるわよ! まずは七彩の位置確認から――……」
響「……なんだかんだで、伊織もすっかり竜宮のリーダーっぽくなったな」
真「うん。ボク達も負けてられないね」
春香「…………」
響「春香?」
春香「あ、ううん。じゃあ私達も始めよっか」
千早「あの、よかったら私も入れてもらえるかしら。まだもう少し確認したい所があって」
響「もちろんだぞ、千早! 真美とやよいはどうする?」
真美「んー、真美は見とくよー。今日は流石に疲れちった」
やよい「私も見学させてもらいます!」
真「よし、じゃあとりあえず『自分REST@RT』からにしようか。真美、リズム取ってもらえる?」
真美「りょーかい!」
春香「…………」
春香(皆……それぞれが強い気持ちで頑張ってる)
春香(私も、負けちゃいられない)
春香(見てて下さいね……プロデューサーさん!)
182 = 181 :
真「……ふぅ。こんな感じかな」
響「うん、良い感じだな」
春香「…………」
千早「どうしたの? 春香」
春香「んー……もうちょっとかな。まだ若干、リズムに乗れてないところがある。私、一人でもう一回通すね」
真「春香。今日はもうその辺にしといた方が」
響「そうだぞ春香。プロデューサーも『無理はするな』って言ってたしさ」
春香「大丈夫。簡単に確認するだけだから」
千早「春香……」
真美「よーしっ! じゃあ次は真美も一緒に踊るよーん」ガバッ
やよい「うぇっ!? 真美!?」
真美「んっふっふ~。今日はもうお疲れちゃんなテンションだったけど、目の前でこんだけキレキレのダンス見せられたら、燃えないわけないっしょ~」
春香「真美」
やよい「じゃ、じゃあ私もやります!」バッ
千早「高槻さん、無理は」
やよい「大丈夫です、千早さん! 今ちょっと休憩して、元気戻りましたから!」
千早「そう? なら、いいのだけれど」
響「春香に刺激されるのは良いけど、真美もやよいも程々になー」
真「じゃあ今度はボクがリズム取るよ」
春香「ありがとう、真」
真「よし、じゃあ行くよ! 皆、最初の立ち位置に……」
雪歩「あ、あのっ!」
真「雪歩? それに貴音も。帰ったんじゃなかったの?」
貴音「……先ほどまで、別室で雪歩とデュエット曲の練習をしていたのですが」
雪歩「こっち覗いてみたら、まだ皆残ってやってるみたいだったから……。私達も、混ぜてもらっていいかな? 春香ちゃん」
春香「もちろん! 雪歩も貴音さんも、一緒にやりましょう!」
響「あ、どうせなら竜宮の三人も呼ぶか? 今ちょうど終わったみたいだし」
真「そうだね。おーい! 三人とも、こっちへおいでよー!」
伊織「……何? まだやってたのあんた達」
亜美「まーうちらも人のこと言えないけどね~」
あずさ「うふふ、でもこうやって皆で居残り練習するのも楽しいわね」
響「じゃあ折角だし、自分ももう一回やるぞ! 真もやるよね?」
真「ま、この流れでやらないわけにはいかないね」
千早「そういうことなら、私も」
春香「よーし! じゃあ765プロ、一丸となっていきますよー!」
アイドル一同「オーッ!」
183 = 181 :
律子「……21時まで、って言ったと思うんだけど」
アイドル一同「…………」
律子「春香」
春香「はひ」
律子「現在時刻を述べなさい」
春香「……22時35分……です」
律子「どうしてこんなことになったのかしら?」
春香「それは、その……皆で踊っている間に、テンションが異常に上がってしまいまして、つい……」
律子「ついって……あのねぇ」
雪歩「あ、あの!」
律子「何? 雪歩」
雪歩「わ、私が、その……途中から、混ぜてほしいって言ったから、だから……ごめんなさいっ!」バッ
春香「雪歩。別に雪歩のせいじゃ」
貴音「萩原雪歩。それを言うなら私も同罪です。……律子嬢、何なりと処罰を」
律子「いや、処罰って」
真「律子。元はといえば、ボクが春香に声を掛けたのが始まりで……」
響「そ、それなら自分だって――……」
律子「……ああ、もう。別に誰の責任を云々するつもりもないわよ。やってしまったことは仕方がないし。ただ今後はもうこういうことが無いように、くれぐれも気を付けること。わかったわね?」
アイドル一同「はーい」
律子「はい。じゃあ今度こそ本当に解散。時間も遅いから、プロデューサーに駅まで送ってもらうようにするわ。お願いしますね、プロデューサー」
P「了解。皆、家の人には連絡しておけよ。俺の方からもさっき謝っておいたから」
春香「ご、ごめんなさい。プロデューサーさん……」
P「ま、過ぎたことをとやかく言っても仕方ない。律子の言うように、次から気を付けてくれればいいさ」
春香「はい……」
P「それより春香。お前、この時間でも大丈夫なのか?」
春香「え? 何がですか?」
P「何って……電車」
春香「でん……? あっ!」
P「……やっぱりか」
春香「ど、どうしよう……。千早ちゃん……はこの前泊めてもらったし、流石に何回もお邪魔するのは……」
響「じゃあウチに来る? 春香」
春香「……えっ」
184 = 181 :
~響の家~
響「ただいまだぞー」
春香「お、お邪魔します……」
響「そんなにびくびくしなくても大丈夫だぞ」
春香「そ、そう?(でもワニとかヘビとかいるしな……)」
響「この時間なら、もう皆寝てるから。それにワニ子やヘビ香は檻に入れて外に出ないようにしとくよ」
春香「あ、ありがとう! 響ちゃん。でもごめんね? 私が急に押し掛けたせいで……」
響「大丈夫だぞ。貴音が前に来た時もそうしたし」
春香「そうなの?」
響「うん。それに今回は自分の方から誘ったしね。ま、自分の部屋だと思ってくつろいでってよ」
春香「……ん、ありがとう。本当に助かっちゃった」
響「いいって。それに自分も、春香に聞きたいことあったし」
春香「? 私に?」
響「うん。まあでもとりあえずはシャワーだな。春香、先に浴びてきちゃって」
春香「あ、うん。ありがとう。じゃあお言葉に甘えて、先に頂くね」
185 = 181 :
春香「ふぅ……生き返ったぁ」
響「あ、春香。お湯熱くなかった?」
春香「うん。ちょうど良かったよー。どうもありがとう、響ちゃん。それにごめんね、ジャージまで貸してもらっちゃって」
響「ううん、気にしないで。じゃあ次、自分入ってくるから。棚にある本とか、適当に読んでていいからね」
春香「わかった、ありがと」
響「じゃあまた後でね」バタン
春香「…………」
春香「…………」キョロキョロ
春香「……お裁縫の本にお料理の本……。へー、響ちゃんって、案外女の子っぽいの読むんだなあ」パラパラ
春香「あ、この薄くて小さな本はラノベってやつかな」
春香「何々……『時計仕掛けの林檎と蜂蜜と妹。』……ってタイトル長ッ! それに意味不明!」
春香「……はっ。思わず一人でツッコんでしまった……」
春香「えーっと他には……あ、こっちはCDラックか。どれどれ……」カチャカチャ
春香「私達のCDがあるのはまあ当然として……他には……」
春香「……! これは……」
186 = 181 :
響「ふんふ~ん♪」
春香「……あ、出たんだ。響ちゃん」
響「うん。やっぱり熱いシャワーは最高だな……って、春香。それ……」
春香「あ、うん。まさか、響ちゃんが持ってるとは思わなかったから」
春香(そう言って、私が響ちゃんの方に差し向けたのは――……男性ユニットアイドル『ジュピター』の最新シングル、『恋をはじめよう』のCDだった)
春香(これは今、『日本の女子高生の間で最も売れているCD』と言っても過言ではないだろう)
春香(現に、私の学校の友人達も皆こぞって購入していた)
春香(そんなCDが、この響ちゃんの部屋にあったってことは……これってつまり……)
春香「もしかして……ファンなの? 響ちゃん」
響「いや、違うぞ」
春香「あっさり!?」
響「トップアイドルになるには、女性ファンからも多くの支持を集めないといけないだろ? それで、今一番売れている男性アイドル……つまり、一番女性ファンから支持を集めてるアイドルってことで、パフォーマンスの参考にしようと思って買ったんだ」
春香「な、なるほど……」
春香(てっきり、響ちゃんのミーハーな一面が見れたりするのかな、とか思ったのに)
春香(まあでも、アイドルがアイドルのファンになったりとか……あんまり無いよね。そもそも仕事で普通に本人達と会ったりするし……)
187 = 181 :
のヮの<とりあえずここまで
188 :
おっつおっつ
この先がめちゃくちゃこのー木何の木ミキなる木ー
190 :
>>188
磯くせー
192 :
>>191
ここは保守の意味ないんだ
発言する前に■ SS速報VIPに初めて来た方へを読もうな
193 :
春香「……でもすごいね、響ちゃん」
響「え? 何が?」
春香「私、女性ファンの支持を増やすために男性アイドルのパフォーマンスを参考にするなんて、今まで考えたこともなかったよ」
響「あー。まあでも実践には移せてないけどな……やっぱり男性アイドルの魅力って、文字通り『男らしさ』とかによるところが大きいし」
春香「でも曲によっては男性的な雰囲気で歌った方がマッチする場合もあるかもしれないし、何よりパフォーマンスの幅を広げる上では十分に意味あると思う。だから私も聴いてみるよ、ジュピターの曲」
響「え、そう? じゃあこれ貸そうか?」
春香「ありがとう、響ちゃん。でもちゃんと自分で買うよ」
響「わざわざ買うの? ……はっはーん、さては自分にあんなこと言っておきながら、春香もジュピターの誰かのファンだったりして?」
春香「ううん、そうじゃないよ。ただ……」
響「?」
春香「やるからには、本気でやりたいから」
響「……!?」ゾッ
春香「少しでも早く、上に……いきたいから」
響「春香……?」
春香(今の私の目的が、今日はっきりと分かった)
春香(私は、勝ちたいんだ)
春香(765プロの皆に、勝ちたい)
春香(勝って、765プロで一番になりたいんだ)
春香(そうすればきっと、プロデューサーさんは私を一番に見てくれるから)
春香(美希よりも、他の誰よりも……私を)
春香(だから、そのためにできることなら何だってやる)
春香(他の皆がやってるようなことも全部やる)
春香(絶対に負けたくないから。誰よりも上にいきたいから)
春香(……待っててくださいね、プロデューサーさん。私がそこにいくまで)
響「…………」
194 = 193 :
春香(プロデューサーさんへの想いを自覚してから、その気持ちをアイドル活動に専念することへと向けてきた)
春香(特に今は来月に控えたファーストライブがあるから、とにかくそれに集中しようと)
春香(でも今日の全体練習を通じて、私の中の気持ちがはっきり見えてきた)
春香(私はプロデューサーさんに、他の誰よりも、私のことを見てもらいたい)
春香(そのためには、もっともっと上手くならなきゃいけない)
春香(最後の居残り練習が長引いてしまったのもそのためだ)
春香(やればやるほど、今の自分に足りない点、他の皆に負けている点が見えてきて……止められなくなってしまった)
春香(まだまだ色んな面で、今の私は足りていない)
春香(もっと、もっと……!)
春香「あっ」
響「? ど、どうした春香?」
春香「響ちゃん、ちょっとこのへんのスペース使わせてもらってもいい?」
響「へ? い、いいけど……何するんだ?」
春香「腹筋」
響「腹筋?」
春香「うん。日課にしてるんだ」
響「へー。そういえば千早もやってるって言ってたな。ボイトレの一環で」
春香「うん。千早ちゃんにそう聞いてから、私もやることにしたんだ」
響「そうなのか?」
春香「うん。千早ちゃんは毎日200回やってるらしいから、私はその倍の400回やるようにしてるんだ」
響「よ、400!? それってかなり多くないか?」
春香「んー、朝と夜に分けてやってるからそんなでもないよ」
響「……でも春香、今日は全体練習の上、居残り練習までしたんだから、そんなに無理しなくても……。しかもその居残り練習だって、春香一人だけずっと踊りっぱなしだったんだし」
春香「大丈夫だよ。それにきっと、千早ちゃんはこんな日でも欠かさずやってると思うし」
春香「正直、今の私の歌じゃ千早ちゃんの足元にも及ばないから」
春香「私が今から千早ちゃんに追いつこうと思ったら、千早ちゃんの倍は努力しないとね」
響「……春香……」
春香「よーし! じゃあ早速やっちゃおっと。……1……2……3……」
195 :
腹筋は回復早いしね 自重なら毎日でいけるわね
196 :
春香「――じゃあ日課の腹筋もやったし、そろそろ寝よっか」
響「…………」
春香「? どうかした? 響ちゃん」
響「あ、いや……なんていうか」
春香「?」
響「春香さ、その……無理してないか?」
春香「無理? 私が?」
響「うん。もしなんか、辛いこととかあるんだったら……」
春香「大丈夫だよ」
響「春香」
春香「今の私は、ライブを成功させたい、っていう気持ちで頭が一杯なだけ」
響「…………」
春香「だから来月のファーストライブ、絶対に成功させよう! ね? 響ちゃん」
響「……うん、そうだな」
春香「それにこのライブは、私達765プロにとっても大きな転換点になるはずだって、プロデューサーさんも言ってたし」
響「ああ。何せライブのテーマが『てっぺん目指すよ!』だもんな」
春香「そうだよ響ちゃん! てっぺん目指さなきゃ!」
響「あはは。春香は野心家だな」
春香「乙女よ大志を抱け! ですよ! なーんて」
響「あはは」
春香「じゃ、明日も早いし、てっぺん目指して早く寝よっ!」
響「……そうだな。これで明日に響いたら、また律子に怒られちゃうしな」
春香「そうそう。鬼軍曹にどやされちゃうからね」
響「もう、春香ったら。本人のいないとこでは言いたい放題だな」
春香「あはは、内緒だよ? じゃあおやすみ、響ちゃん。布団貸してくれてありがとうね」
響「いいって。こっちこそ、床で寝させてごめんね」
春香「全然。敷布団もふかふかで気持ち良いよ」
響「それなら良かったぞ。じゃあ電気消すね?」
春香「うん」
響「それじゃ、おやすみー」
春香「おやすみー」
春香「…………」
春香(……皮肉にも、今の私の気持ちはファーストライブのテーマとぴったり重なっていた)
春香(もっとも、意味は微妙に異なるけど)
春香(私はてっぺんを目指す)
春香(美希も千早ちゃんも他の皆も全員超えて――……765プロの、てっぺんを)
197 = 196 :
のヮの<とりあえずここまで
198 :
~翌日・早朝~
響「忘れ物無い? 春香」
春香「うん、大丈夫。本当にありがとうね。響ちゃん」
響「全然構わないぞ。またいつでも来てよね」
春香「ん、ありがと。じゃあまた夕方に事務所で……あっ」
響「? どうしたの?」
春香「そういえば響ちゃん、私に『聞きたいことがある』って言ってなかった?」
響「あー……うん」
春香「それって、何だったの?」
響「いや、えっと……まあ、ある意味もう答えが分かったからあえて聞かなかったんだけど……」
春香「?」
響「ほら、春香最近、めちゃくちゃ頑張ってただろ? 昨日の居残り練習もそうだけど、その前から……」
春香「あー、まあ別にそんなでもないと思うけど……」
響「いやいや、そんなでもあるぞ。……でさ、そこまで頑張れるのって、何かよっぽど重大な理由があるのかな、ってことが聞きたかったんだけど……昨日、春香と話しててそれがなんとなく分かったからさ」
春香「…………」
響「今の春香は、まず第一に来月のファーストライブを成功させたい。でもそのためには自分自身がもっとレベルアップしないといけない。だから今、ダンスも歌も人一倍頑張ってる……ってことだよね?」
春香「……うん、そうだよ」
響「だよな。自分、なんかちょっと変な心配しちゃってたぞ」
春香「心配?」
響「うん。昨日もちょっと聞いたけど、何か辛いことがあって、無理してるんじゃないかなって……でも、そうでないなら、一安心さー」
春香「その点は大丈夫。私は何も辛いことなんか無いし、無理もしてないから」
響「……ん。分かった。それが聞けて良かったぞ。……じゃあ、また後でね」
春香「うん。本当にありがとうね、響ちゃん。じゃあまた」
響「…………」
春香「…………」
響「春香」
春香「ん?」クルッ
響「……本当に、大丈夫なんだよな?」
春香「……大丈夫だって。響ちゃんってば、心配性なんだから」
響「そうか。うん。なら……いいんだ。じゃあね」
春香「うん。それじゃ」
春香(……そのときの響ちゃんの瞳には、一抹の不安が浮かんでいた)
春香(『本当に大丈夫なのか』『春香が今頑張ってるのは、もっと何か別の理由があるんじゃないか』)
春香(そう言いたげな瞳は、その一方で)
春香(『でも、春香の言うことを疑いたくない』という想いをも宿していた)
春香(……私は、そんな響ちゃんの純粋な気持ちに嘘をついていることに若干の罪悪感を覚えながらも、それに気付かないふりをして、朝焼けの中、駅へ向かって歩を進めた)
199 = 198 :
のヮの<改めてここまで
200 :
間隔短くて良いね
みんなの評価 : ★★★×4
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