私的良スレ書庫
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元スレ春香「冬馬くんかっこいいなあ……」
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春香「――――」
冬馬「?」
響「……ちょ、は、春香!」
春香「…………え?」
響「あ、あいさつ! あいさつ!」
春香「あ! ああ、ご、ごめんなさい! わた、私、○○春香って言います! よ、よろしくお願いします!」
冬馬「……『○○』?」
響「あ、ええと、春香? 今は普通に本名の方でいいんじゃないか? 別に学校の友達ってわけじゃないんだし……」
春香「あ! そ、そっか! そうだよね! な、何度もごめんなさい! 改めまして、天海春香です!」
冬馬「…………」
春香「あ、って言っても、響ちゃんと同じ、765プロに所属してるアイドルの方の天海春香ちゃんとは、何の関係もありません! 別人です!」
冬馬「……ああ。それは聞いてるけど」
春香「はうあ! ご、ごめんなさい!」
冬馬「いや、別に謝るほどのことじゃねぇだろ」
春香「ご、ごめんなさい!」
冬馬「…………」
冬馬「?」
響「……ちょ、は、春香!」
春香「…………え?」
響「あ、あいさつ! あいさつ!」
春香「あ! ああ、ご、ごめんなさい! わた、私、○○春香って言います! よ、よろしくお願いします!」
冬馬「……『○○』?」
響「あ、ええと、春香? 今は普通に本名の方でいいんじゃないか? 別に学校の友達ってわけじゃないんだし……」
春香「あ! そ、そっか! そうだよね! な、何度もごめんなさい! 改めまして、天海春香です!」
冬馬「…………」
春香「あ、って言っても、響ちゃんと同じ、765プロに所属してるアイドルの方の天海春香ちゃんとは、何の関係もありません! 別人です!」
冬馬「……ああ。それは聞いてるけど」
春香「はうあ! ご、ごめんなさい!」
冬馬「いや、別に謝るほどのことじゃねぇだろ」
春香「ご、ごめんなさい!」
冬馬「…………」
響「は、春香? ちょっと落ち着こう? な?」
春香「そ、そうだね……ごめん」
響「いや、もう謝らなくていいから。まずは深呼吸、はい」
春香「すー……はー……」
響「落ち着いた?」
春香「……うん。ありがとう、響ちゃん」
冬馬「えっと……もう、いいか?」
春香「はう! ご、ごめんなさい! ……あっ」
冬馬「…………」
春香「あうぅ……」
響「は……はいはい! まあ初対面のあいさつはこのへんで!」
春香「…………」
冬馬「…………」
響「……えーっと……」
冬馬「……なあ」
春香「!」ビクッ
響「な、なんだ? 冬馬」
冬馬「……さっきの『○○』って、何だ? 偽名?」
響「今更そこ!?」
春香「そ、そうだね……ごめん」
響「いや、もう謝らなくていいから。まずは深呼吸、はい」
春香「すー……はー……」
響「落ち着いた?」
春香「……うん。ありがとう、響ちゃん」
冬馬「えっと……もう、いいか?」
春香「はう! ご、ごめんなさい! ……あっ」
冬馬「…………」
春香「あうぅ……」
響「は……はいはい! まあ初対面のあいさつはこのへんで!」
春香「…………」
冬馬「…………」
響「……えーっと……」
冬馬「……なあ」
春香「!」ビクッ
響「な、なんだ? 冬馬」
冬馬「……さっきの『○○』って、何だ? 偽名?」
響「今更そこ!?」
冬馬「ふーん……アイドルの方と間違われないように、ね……」
春香「そ、そうなんです」
冬馬「…………」
響「まあ自分はもちろん、冬馬もアイドルの方の春香を知ってるわけだし、間違えたりするはずないからな。だから普通に本名の方でいいよね? 冬馬?」
冬馬「いやまあ、俺は別になんでもいいけどよ……」
春香「…………」
響「冬馬……そんなんだからもてないんだぞ」
冬馬「!?」
響「まあいいや。とりあえず近くの喫茶店でも行こう。春香もいいよね?」
春香「う、うん! もちろん!」
冬馬「おい、我那覇。こう見えても、俺宛てのファンレターはユニット内では一番多いんだからな」
響「冬馬はもう黙ってた方がいいぞ」
冬馬「!?」
春香「そ、そうなんです」
冬馬「…………」
響「まあ自分はもちろん、冬馬もアイドルの方の春香を知ってるわけだし、間違えたりするはずないからな。だから普通に本名の方でいいよね? 冬馬?」
冬馬「いやまあ、俺は別になんでもいいけどよ……」
春香「…………」
響「冬馬……そんなんだからもてないんだぞ」
冬馬「!?」
響「まあいいや。とりあえず近くの喫茶店でも行こう。春香もいいよね?」
春香「う、うん! もちろん!」
冬馬「おい、我那覇。こう見えても、俺宛てのファンレターはユニット内では一番多いんだからな」
響「冬馬はもう黙ってた方がいいぞ」
冬馬「!?」
~喫茶店~
響「えっと、じゃあ改めてだけど」
春香「…………」
冬馬「…………」
響「春香、冬馬のことが好きなんだって」
春香「ぶふぉっ!?」
冬馬「うおっ!?」
響「は、春香大丈夫?」
春香「ごほっごほっ……ひ、ひびきちゃ、いきなり何を……」
響「え? だってそれで冬馬に会いたいって……」
春香「ち、ちがっ……そりゃまあファンとは言ったけど……」
響「ファンってことは好きなんでしょ?」
春香「そういう意味ではそうだけど、そういう言い方したら大きく誤解を招くっていうか……」
冬馬「……なあ」
春香「! ご、ごめんなさい! ご本人を前に、私ったらなんて失礼なことを……!」
冬馬「今のあんたの水の吹き出し方、まるでお笑い芸人みたいだったな」
春香「!?」
響「そこ!?」
冬馬「いやだってほら、バラエティとかだとおいしいじゃねぇか」
響「何で今バラエティの話なんだよ! それにこの春香は一般人なんだぞ!」
冬馬「それは分かってるけどよ……」
春香「…………」
響「えっと、じゃあ改めてだけど」
春香「…………」
冬馬「…………」
響「春香、冬馬のことが好きなんだって」
春香「ぶふぉっ!?」
冬馬「うおっ!?」
響「は、春香大丈夫?」
春香「ごほっごほっ……ひ、ひびきちゃ、いきなり何を……」
響「え? だってそれで冬馬に会いたいって……」
春香「ち、ちがっ……そりゃまあファンとは言ったけど……」
響「ファンってことは好きなんでしょ?」
春香「そういう意味ではそうだけど、そういう言い方したら大きく誤解を招くっていうか……」
冬馬「……なあ」
春香「! ご、ごめんなさい! ご本人を前に、私ったらなんて失礼なことを……!」
冬馬「今のあんたの水の吹き出し方、まるでお笑い芸人みたいだったな」
春香「!?」
響「そこ!?」
冬馬「いやだってほら、バラエティとかだとおいしいじゃねぇか」
響「何で今バラエティの話なんだよ! それにこの春香は一般人なんだぞ!」
冬馬「それは分かってるけどよ……」
春香「…………」
響「まったくもう。そんなんだから冬馬は『トークが下手ですね』ってよく芸人さんからいじられるんだぞ」
冬馬「なっ! お、お前なあ、あれはその……そういうキャラの方が色々とおいしいからだっつうの!」
響「いーや絶対嘘だ。大体冬馬はそういうの計算できるタイプじゃないでしょ」
冬馬「ぐっ……う、うるせぇな! つーか、今はそんなことどうでもいいだろ!」
春香「…………」
響「はっ! そうだ! 今は春香が冬馬のことが好きって話だった!」
春香「響ちゃん!? だからそれ違うって!」
響「え? 違うの?」
春香「だ、だから私は冬馬く……天ヶ瀬さんのファンってだけで、そういうのとは違うんだってば!」
響「ふーん、そうなのか。残念だったな冬馬」ポンッ
冬馬「なんで俺がいきなり残念がられなきゃいけねぇんだよ!」
冬馬「なっ! お、お前なあ、あれはその……そういうキャラの方が色々とおいしいからだっつうの!」
響「いーや絶対嘘だ。大体冬馬はそういうの計算できるタイプじゃないでしょ」
冬馬「ぐっ……う、うるせぇな! つーか、今はそんなことどうでもいいだろ!」
春香「…………」
響「はっ! そうだ! 今は春香が冬馬のことが好きって話だった!」
春香「響ちゃん!? だからそれ違うって!」
響「え? 違うの?」
春香「だ、だから私は冬馬く……天ヶ瀬さんのファンってだけで、そういうのとは違うんだってば!」
響「ふーん、そうなのか。残念だったな冬馬」ポンッ
冬馬「なんで俺がいきなり残念がられなきゃいけねぇんだよ!」
春香「……ぷっ」
響「春香?」
冬馬「?」
春香「くくっ……あははっ」
響「春香」
冬馬「…………」
春香「あはは……ご、ごめんなさい。なんだか面白くって」
響「…………」
冬馬「…………」
春香「やっぱり二人とも、アイドルなんですね!」
響「えっ」
冬馬「……いや、今のやりとりのどこにアイドル要素があったんだよ!?」
春香「えっと、なんていうか……会話のテンポとか、ツッコミ? とか?」
響「それ、アイドル関係あるか……?」
春香「で、でもなんかアイドルって感じがしたの! やっぱり私みたいな一般人とは違うんだな~って!」
響「……春香……」
冬馬「…………」
響「春香?」
冬馬「?」
春香「くくっ……あははっ」
響「春香」
冬馬「…………」
春香「あはは……ご、ごめんなさい。なんだか面白くって」
響「…………」
冬馬「…………」
春香「やっぱり二人とも、アイドルなんですね!」
響「えっ」
冬馬「……いや、今のやりとりのどこにアイドル要素があったんだよ!?」
春香「えっと、なんていうか……会話のテンポとか、ツッコミ? とか?」
響「それ、アイドル関係あるか……?」
春香「で、でもなんかアイドルって感じがしたの! やっぱり私みたいな一般人とは違うんだな~って!」
響「……春香……」
冬馬「…………」
冬馬「……別にアイドルって言っても、そんなに特別な存在ってわけじゃねぇぞ」
春香「え?」
響「冬馬?」
冬馬「……あんたさっき、俺のファンだって言ってくれてたよな」
春香「え? は、はい」
冬馬「それは俺が、アイドルだからだよな」
春香「……?」
冬馬「俺がアイドルっていう……あんたから見れば特別な存在だったから、あんたは俺のファンになった……いや、なってくれた。そうだろ?」
春香「そ、それはまあ……そうですけど」
響「と、冬馬? 一体何を……」
冬馬「でも今言ったように、アイドルだって普通の人間だ。別に何か、特別な存在ってわけじゃねぇ」
春香「…………」
冬馬「たとえば、今ここにいるあんただって……その気になれば、なれるかもしれねぇんだ。アイドルっていう、あんたにとっては特別な存在に」
響「!」
春香「……えっ?」
春香「え?」
響「冬馬?」
冬馬「……あんたさっき、俺のファンだって言ってくれてたよな」
春香「え? は、はい」
冬馬「それは俺が、アイドルだからだよな」
春香「……?」
冬馬「俺がアイドルっていう……あんたから見れば特別な存在だったから、あんたは俺のファンになった……いや、なってくれた。そうだろ?」
春香「そ、それはまあ……そうですけど」
響「と、冬馬? 一体何を……」
冬馬「でも今言ったように、アイドルだって普通の人間だ。別に何か、特別な存在ってわけじゃねぇ」
春香「…………」
冬馬「たとえば、今ここにいるあんただって……その気になれば、なれるかもしれねぇんだ。アイドルっていう、あんたにとっては特別な存在に」
響「!」
春香「……えっ?」
春香「私が……アイドル?」
冬馬「ああ」
響「と、冬馬!? 何言ってるの!?」
冬馬「別に、一般論だよ。誰にだって可能性くらいはあんだろ」
響「そ、それはそうだけど……」
春香「……私が……?」
冬馬「…………」
響「は、春香? そんなに深く考えないで……」
春香「……なんて、あるわけないじゃないですかー!」
響「春香」
冬馬「…………」
春香「そりゃあ、現役アイドルの冬馬く……天ヶ瀬さんからすれば、そういうものなのかもしれないですけど……」
冬馬「…………」
春香「やっぱり、何の変哲も無い一市民の私からしたら、アイドルなんて雲の上の存在ですよ、雲の上!」
冬馬「……そうか」
響「……春香……」
春香「…………」
冬馬「ああ」
響「と、冬馬!? 何言ってるの!?」
冬馬「別に、一般論だよ。誰にだって可能性くらいはあんだろ」
響「そ、それはそうだけど……」
春香「……私が……?」
冬馬「…………」
響「は、春香? そんなに深く考えないで……」
春香「……なんて、あるわけないじゃないですかー!」
響「春香」
冬馬「…………」
春香「そりゃあ、現役アイドルの冬馬く……天ヶ瀬さんからすれば、そういうものなのかもしれないですけど……」
冬馬「…………」
春香「やっぱり、何の変哲も無い一市民の私からしたら、アイドルなんて雲の上の存在ですよ、雲の上!」
冬馬「……そうか」
響「……春香……」
春香「…………」
冬馬「……さて、悪いが俺はそろそろお暇させてもらうぜ」
春香「え?」
冬馬「仕事の打ち合わせに行かなきゃいけねぇんだ」
響「あー、もうそんな時間か」
春香「ご、ごめんなさい冬馬く……天ヶ瀬さん。お仕事忙しいのに、私なんかに付き合ってくれて……」
冬馬「……別に、下の名前で良いぜ。いちいち言い直すの面倒だろ」
春香「え、あ、はい! ご、ごめんなさい!」
冬馬「あと、いちいち謝るのも無しな」
春香「はぅ! ご、ごめ……んぐっ」
響「春香……」
冬馬「……それと……」
春香「?」
冬馬「もしよかったら、だけど……連絡先、教えてもらってもいいか?」
春香「えっ!」
響「と、冬馬!?」
冬馬「……勘違いすんなよ。別に何か、変な下心があって言ってるんじゃないからな。ただ、これから何か連絡取ろうと思ったときに、いちいち我那覇を経由すんのも面倒くせぇだろ」
響「……あやしい」
冬馬「そ、そんな目で見るんじゃねぇ! ……で、どうなんだ?」
春香「え?」
冬馬「連絡先だよ。もちろん嫌ってんなら、無理にとは言わねぇけど」
春香「い……いいえ! そんな、嫌だなんて! こ、こちらこそ、よろしくお願いします!」
冬馬「……ああ。よろしく」
響「…………」
春香「え?」
冬馬「仕事の打ち合わせに行かなきゃいけねぇんだ」
響「あー、もうそんな時間か」
春香「ご、ごめんなさい冬馬く……天ヶ瀬さん。お仕事忙しいのに、私なんかに付き合ってくれて……」
冬馬「……別に、下の名前で良いぜ。いちいち言い直すの面倒だろ」
春香「え、あ、はい! ご、ごめんなさい!」
冬馬「あと、いちいち謝るのも無しな」
春香「はぅ! ご、ごめ……んぐっ」
響「春香……」
冬馬「……それと……」
春香「?」
冬馬「もしよかったら、だけど……連絡先、教えてもらってもいいか?」
春香「えっ!」
響「と、冬馬!?」
冬馬「……勘違いすんなよ。別に何か、変な下心があって言ってるんじゃないからな。ただ、これから何か連絡取ろうと思ったときに、いちいち我那覇を経由すんのも面倒くせぇだろ」
響「……あやしい」
冬馬「そ、そんな目で見るんじゃねぇ! ……で、どうなんだ?」
春香「え?」
冬馬「連絡先だよ。もちろん嫌ってんなら、無理にとは言わねぇけど」
春香「い……いいえ! そんな、嫌だなんて! こ、こちらこそ、よろしくお願いします!」
冬馬「……ああ。よろしく」
響「…………」
響「えっと……冬馬行っちゃったけど、これからどうする?」
春香「…………」
響「……春香?」
春香「あ、ご、ごめん! 響ちゃん。ええと……何て?」
響「あ、いや……これからどうする? って聞いただけだけど……なんか、考え事でもしてた?」
春香「ああ、うん……。なんか色々、信じられないなあって……」
響「? 信じられない?」
春香「……うん。だって、そもそも響ちゃんみたいなアイドルと友達になれただけでも、普通に考えてありえないことなのに……その上、冬馬くんとまで連絡先の交換なんかしちゃって……」
響「あー……」
春香「ちょっと、自分でも頭の整理が追いつかないっていうか……。もしかしてこれ、全部夢か何かじゃないのかな、とか思っちゃったりして……」
響「……夢、か……」
春香「? 響ちゃん?」
響「……んーん。何でもない。それより春香、この後予定無いなら、もうちょっと自分に付き合ってくれない? 久々にショッピングとかしたいんだ」
春香「! もちろん! 私なんかでよければ、いくらでも付き合うよ! 響ちゃん!」
響「えへへ……ありがと! 春香! じゃあ、行こっ!」
春香「うんっ!」
春香「…………」
響「……春香?」
春香「あ、ご、ごめん! 響ちゃん。ええと……何て?」
響「あ、いや……これからどうする? って聞いただけだけど……なんか、考え事でもしてた?」
春香「ああ、うん……。なんか色々、信じられないなあって……」
響「? 信じられない?」
春香「……うん。だって、そもそも響ちゃんみたいなアイドルと友達になれただけでも、普通に考えてありえないことなのに……その上、冬馬くんとまで連絡先の交換なんかしちゃって……」
響「あー……」
春香「ちょっと、自分でも頭の整理が追いつかないっていうか……。もしかしてこれ、全部夢か何かじゃないのかな、とか思っちゃったりして……」
響「……夢、か……」
春香「? 響ちゃん?」
響「……んーん。何でもない。それより春香、この後予定無いなら、もうちょっと自分に付き合ってくれない? 久々にショッピングとかしたいんだ」
春香「! もちろん! 私なんかでよければ、いくらでも付き合うよ! 響ちゃん!」
響「えへへ……ありがと! 春香! じゃあ、行こっ!」
春香「うんっ!」
~ジュピター所属事務所~
ガチャッ
冬馬「ちぃーっす」
翔太「おっはよー、冬馬くん」
北斗「チャオ☆ 珍しいな、冬馬が最後とは」
冬馬「まあな」
翔太「もしかして、デートでもしてた?」
冬馬「……なわけねぇだろ」
北斗「おや? なんか今、変な間があったぞ?」
翔太「冬馬くん? もしかしてホントに……」
冬馬「だからちげぇっての。ちょっと知り合いに会ってただけだ」
翔太「なーんだ。つまんないの」
北斗「ま、冬馬は真面目だからね」
冬馬「うるせぇよ」
翔太「仕事さえきちんとやってれば、少しくらい遊んだって罰は当たらないと思うけどねー」
北斗「そうそう。それにいつか、そういう寄り道が思わぬ形で助けになったりするものさ」
翔太「あー、そうそうそれ! 僕もそういうことが言いたかった。時には寄り道も大事だよね、って」
冬馬「…………」
北斗「? 冬馬?」
翔太「どうしたの?」
冬馬「……自分の歩く道さえ、見失っていなければ……な」
北斗「えっ?」
翔太「冬馬くん?」
冬馬「……何でもねぇよ。さ、早いとこ打ち合わせ始めようぜ」
北斗・翔太「……?」
ガチャッ
冬馬「ちぃーっす」
翔太「おっはよー、冬馬くん」
北斗「チャオ☆ 珍しいな、冬馬が最後とは」
冬馬「まあな」
翔太「もしかして、デートでもしてた?」
冬馬「……なわけねぇだろ」
北斗「おや? なんか今、変な間があったぞ?」
翔太「冬馬くん? もしかしてホントに……」
冬馬「だからちげぇっての。ちょっと知り合いに会ってただけだ」
翔太「なーんだ。つまんないの」
北斗「ま、冬馬は真面目だからね」
冬馬「うるせぇよ」
翔太「仕事さえきちんとやってれば、少しくらい遊んだって罰は当たらないと思うけどねー」
北斗「そうそう。それにいつか、そういう寄り道が思わぬ形で助けになったりするものさ」
翔太「あー、そうそうそれ! 僕もそういうことが言いたかった。時には寄り道も大事だよね、って」
冬馬「…………」
北斗「? 冬馬?」
翔太「どうしたの?」
冬馬「……自分の歩く道さえ、見失っていなければ……な」
北斗「えっ?」
翔太「冬馬くん?」
冬馬「……何でもねぇよ。さ、早いとこ打ち合わせ始めようぜ」
北斗・翔太「……?」
~同日夜・春香自室~
春香「…………」
春香「……やっぱりまだ、信じられない……」
春香「なんていうか、こう……現実味が無いっていうか」
春香「何の変哲も無いはずの私の人生が、どうしてこんなことになったんだろう……?」
春香「嬉しいはず、なんだけど……いや、実際嬉しいんだけど……」
春香「それ以上に……うーむ……」
ブブブ……
春香「わ。メール? 誰だろ?」
春香「! こ、これって……!?」
----------------------------------------------------------------------------------------------
差出人:天ヶ瀬冬馬
件名:(無題)
-------------------
今日は、あんまり話する時間が無くて悪かったな。
個人的に、もう少しあんたに聞きたいことがあるんだが、もしよかったら、来週の日曜日に会えないか?
今度は、俺達二人だけで。
----------------------------------------------------------------------------------------------
春香「…………」
春香「……やっぱりまだ、信じられない……」
春香「なんていうか、こう……現実味が無いっていうか」
春香「何の変哲も無いはずの私の人生が、どうしてこんなことになったんだろう……?」
春香「嬉しいはず、なんだけど……いや、実際嬉しいんだけど……」
春香「それ以上に……うーむ……」
ブブブ……
春香「わ。メール? 誰だろ?」
春香「! こ、これって……!?」
----------------------------------------------------------------------------------------------
差出人:天ヶ瀬冬馬
件名:(無題)
-------------------
今日は、あんまり話する時間が無くて悪かったな。
個人的に、もう少しあんたに聞きたいことがあるんだが、もしよかったら、来週の日曜日に会えないか?
今度は、俺達二人だけで。
----------------------------------------------------------------------------------------------
~一週間後・日曜日~
春香(……約束の時間より、30分も早く着いてしまった……)
春香(でもいいのかなあ……人気絶頂のアイドルとそのファンが二人きりで会うとか……これバレたら絶対やばいよね……)
春香(とか考えながらも、結局こうして来てしまったわけだけど……)
春香(まあなんだかんだでなんとかなるかな……先週も、変装していたとはいえ、二人も現役のアイドルがいたのに誰にも気付かれなかったし……)
春香(それに、冬馬くんの『聞きたいこと』っていうのも、何なのか気になるしね)
冬馬「おう」
春香「うひゃあ!?」
冬馬「そ、そんな大きな声出さなくてもいいだろ」
春香「ごっ、ごめんなさい。全然気付いてなかったから……先週とは、また違った感じの変装なんですね。サングラスも、また違うのだし」
冬馬「まあな。……一応言っとくけど、我那覇に言われたからじゃねぇからな!」
春香「ああ、そういえば変って言われてましたもんね」
冬馬「……そんなに変だったか? あれ……」
春香「えっ! そ、そんなことないですよ! とってもかっこよかったです!」
冬馬「そ、そうか? そうだよな! ははっ! 我那覇め、ざまぁみやがれ!」
春香(……本当はまあ結構変だったけど)
冬馬「? 何か言ったか?」
春香「い、いいえ! 何も!」
冬馬「そうか? ならいいんだけどよ……あ、それと」
春香「はい?」
冬馬「……もうちょっと、砕けた感じで話していいぜ。つうか、変にかしこまられると、かえって話しにくい」
春香「あ、分かりまし……じゃない、分かったよ、冬馬くん。……これでいいかな?」
冬馬「……ああ。んじゃ、改めて今日はよろしくな」
春香「うん!」
春香(……約束の時間より、30分も早く着いてしまった……)
春香(でもいいのかなあ……人気絶頂のアイドルとそのファンが二人きりで会うとか……これバレたら絶対やばいよね……)
春香(とか考えながらも、結局こうして来てしまったわけだけど……)
春香(まあなんだかんだでなんとかなるかな……先週も、変装していたとはいえ、二人も現役のアイドルがいたのに誰にも気付かれなかったし……)
春香(それに、冬馬くんの『聞きたいこと』っていうのも、何なのか気になるしね)
冬馬「おう」
春香「うひゃあ!?」
冬馬「そ、そんな大きな声出さなくてもいいだろ」
春香「ごっ、ごめんなさい。全然気付いてなかったから……先週とは、また違った感じの変装なんですね。サングラスも、また違うのだし」
冬馬「まあな。……一応言っとくけど、我那覇に言われたからじゃねぇからな!」
春香「ああ、そういえば変って言われてましたもんね」
冬馬「……そんなに変だったか? あれ……」
春香「えっ! そ、そんなことないですよ! とってもかっこよかったです!」
冬馬「そ、そうか? そうだよな! ははっ! 我那覇め、ざまぁみやがれ!」
春香(……本当はまあ結構変だったけど)
冬馬「? 何か言ったか?」
春香「い、いいえ! 何も!」
冬馬「そうか? ならいいんだけどよ……あ、それと」
春香「はい?」
冬馬「……もうちょっと、砕けた感じで話していいぜ。つうか、変にかしこまられると、かえって話しにくい」
春香「あ、分かりまし……じゃない、分かったよ、冬馬くん。……これでいいかな?」
冬馬「……ああ。んじゃ、改めて今日はよろしくな」
春香「うん!」
春香「えっと、じゃあ今日はどんな感じで……」
冬馬「まあとりあえず、適当にこのあたりぶらつこうぜ。時間は大丈夫なんだろ?」
春香「う、うん。私は大丈夫。冬馬くんは?」
冬馬「俺も今日は大丈夫だ。じゃあ早速行こうぜ」
春香「うん」
春香(……『聞きたいこと』っていうのは……後で、ってことなのかな?)
冬馬「お、なんか面白そうな雑貨屋があるじゃねぇか。ちょっと入ってみようぜ」
春香「うん。……わあ、なんかごちゃごちゃしてるね」
冬馬「こういう店って、意外と良いアクセ置いてたりするんだよな」
春香「へー」
春香(……なんかこれ、普通にデートみたいだなあ……)
冬馬「? どうかしたか?」
春香「う、ううん! 何でも。あ、このチョーカーとか結構良いんじゃない?」
冬馬「……お前、割と変なセンスしてるんだな」
春香「冬馬くんには言われたくないんだけど!?」
冬馬「えっ」
春香「あっ」
冬馬「…………」
春香「……え、えっと」
冬馬「……ふっ」
春香「えっ」
冬馬「良いんじゃねーの。今の」
春香「……え?」
冬馬「バラエティとかでウケそうだ」
春香「またバラエティの話!? それはもういいよ!」
冬馬「まあとりあえず、適当にこのあたりぶらつこうぜ。時間は大丈夫なんだろ?」
春香「う、うん。私は大丈夫。冬馬くんは?」
冬馬「俺も今日は大丈夫だ。じゃあ早速行こうぜ」
春香「うん」
春香(……『聞きたいこと』っていうのは……後で、ってことなのかな?)
冬馬「お、なんか面白そうな雑貨屋があるじゃねぇか。ちょっと入ってみようぜ」
春香「うん。……わあ、なんかごちゃごちゃしてるね」
冬馬「こういう店って、意外と良いアクセ置いてたりするんだよな」
春香「へー」
春香(……なんかこれ、普通にデートみたいだなあ……)
冬馬「? どうかしたか?」
春香「う、ううん! 何でも。あ、このチョーカーとか結構良いんじゃない?」
冬馬「……お前、割と変なセンスしてるんだな」
春香「冬馬くんには言われたくないんだけど!?」
冬馬「えっ」
春香「あっ」
冬馬「…………」
春香「……え、えっと」
冬馬「……ふっ」
春香「えっ」
冬馬「良いんじゃねーの。今の」
春香「……え?」
冬馬「バラエティとかでウケそうだ」
春香「またバラエティの話!? それはもういいよ!」
春香「あっ」
冬馬「…………」
春香「え、ええと……」
冬馬「……ようやく、らしくなってきたって感じだな」
春香「え?」
冬馬「……なんでもねぇよ。さ、次行こうぜ」
春香「う、うん……」
春香(らしくなってきたって……どういう意味だろう?)
春香(冬馬くんと私は、会うのも今日でまだ二回目なのに……)
冬馬「あ、クレープ売ってら」
春香「そういえば、冬馬くんって甘いもの好きなんだよね」
冬馬「? そうだけど……何でそんなこと知ってんだ?」
春香「何でって……ラジオとかでよく言ってるじゃない」
冬馬「あー……そうか。そういえばお前、俺のファンなんだったな」
春香「何でそんな醒めた言い方なの!?」
冬馬「いや、なんかあんまそんな感じしねぇからよ……」
春香「……え?」
冬馬「まあいいや、とにかく食おうぜ。……すいません、チョコバナナクレープ一つ。お前は?」
春香「あ、えっと、じゃあ私も同じのを……」ゴソゴソ
冬馬「いいって。俺が出すよ」
春香「でも」
冬馬「いいから。今日は俺の方から誘ったんだから、これくらい奢らせろって」
春香「あ、ありがとう……」
春香(…………)
春香(……そうだ。私は今、あの憧れのアイドルの、天ヶ瀬冬馬くんと一緒にいるんだ)
春香(一緒にお店回って、クレープまでご馳走してもらって)
春香(誰がどう見たって、デートにしか見えないような、このシチュエーション)
春香(ファンであれば、もう死んでもいいと思えるほどに幸せな状況)
春香(……のはず、なのに)
春香(…………)
春香(……何なんだろう? 私の、今のこの気持ちは……)
春香(今、楽しいと感じているのは間違いない。それは間違いないんだけど……でも、)
春香(……これは、私が本当に望んでいたものだったのかな……?)
春香(…………)
冬馬「…………」
冬馬「…………」
春香「え、ええと……」
冬馬「……ようやく、らしくなってきたって感じだな」
春香「え?」
冬馬「……なんでもねぇよ。さ、次行こうぜ」
春香「う、うん……」
春香(らしくなってきたって……どういう意味だろう?)
春香(冬馬くんと私は、会うのも今日でまだ二回目なのに……)
冬馬「あ、クレープ売ってら」
春香「そういえば、冬馬くんって甘いもの好きなんだよね」
冬馬「? そうだけど……何でそんなこと知ってんだ?」
春香「何でって……ラジオとかでよく言ってるじゃない」
冬馬「あー……そうか。そういえばお前、俺のファンなんだったな」
春香「何でそんな醒めた言い方なの!?」
冬馬「いや、なんかあんまそんな感じしねぇからよ……」
春香「……え?」
冬馬「まあいいや、とにかく食おうぜ。……すいません、チョコバナナクレープ一つ。お前は?」
春香「あ、えっと、じゃあ私も同じのを……」ゴソゴソ
冬馬「いいって。俺が出すよ」
春香「でも」
冬馬「いいから。今日は俺の方から誘ったんだから、これくらい奢らせろって」
春香「あ、ありがとう……」
春香(…………)
春香(……そうだ。私は今、あの憧れのアイドルの、天ヶ瀬冬馬くんと一緒にいるんだ)
春香(一緒にお店回って、クレープまでご馳走してもらって)
春香(誰がどう見たって、デートにしか見えないような、このシチュエーション)
春香(ファンであれば、もう死んでもいいと思えるほどに幸せな状況)
春香(……のはず、なのに)
春香(…………)
春香(……何なんだろう? 私の、今のこの気持ちは……)
春香(今、楽しいと感じているのは間違いない。それは間違いないんだけど……でも、)
春香(……これは、私が本当に望んでいたものだったのかな……?)
春香(…………)
冬馬「…………」
冬馬「ほらよ、クレープ」
春香「あ、ありがとう」
冬馬「これ食ったら、ちょっとゲーセンでも行かねぇか?」
春香「うん、いいよ」
春香(……まあ、今は難しいことは考えなくていいか)
春香(今が楽しいなら、それで……それで、いいよね)
~ゲームセンター~
春香「冬馬くん、こういうとこ結構来るんだ?」
冬馬「いや、そんなでもねぇけど……あ、あった」
春香「?」
冬馬「ほら、これやろうぜ」
春香「これは……」
春香(Dance Dance Evolution……通称『ダンエボ』とか『DDE』とかいう、全身(というか主に下半身)を使って遊ぶダンスゲームだ)
春香(私はやったことはないけど、結構昔からあるゲームなので、他の人がやってるのを見たことはある)
冬馬「結構良い運動になるぜ。いいだろ?」
春香「うん、いいよ」
冬馬「よっしゃ。じゃあ対戦な」
春香「えー。現役のアイドルに勝てるわけないよ」
冬馬「まあ、いいからいいから。な?」
春香(冬馬くんはそう言って、素早く二人分のお金をゲーム機に投入した)
春香(私は慌ててお金を払おうとしたが、冬馬くんに「いいから、いいから」と遮られてしまい……そうこうしているうちにゲームが始まり、私はまたも彼の好意に甘える形となってしまった)
春香(……そして、注目の対戦結果はというと――……)
春香「あ、ありがとう」
冬馬「これ食ったら、ちょっとゲーセンでも行かねぇか?」
春香「うん、いいよ」
春香(……まあ、今は難しいことは考えなくていいか)
春香(今が楽しいなら、それで……それで、いいよね)
~ゲームセンター~
春香「冬馬くん、こういうとこ結構来るんだ?」
冬馬「いや、そんなでもねぇけど……あ、あった」
春香「?」
冬馬「ほら、これやろうぜ」
春香「これは……」
春香(Dance Dance Evolution……通称『ダンエボ』とか『DDE』とかいう、全身(というか主に下半身)を使って遊ぶダンスゲームだ)
春香(私はやったことはないけど、結構昔からあるゲームなので、他の人がやってるのを見たことはある)
冬馬「結構良い運動になるぜ。いいだろ?」
春香「うん、いいよ」
冬馬「よっしゃ。じゃあ対戦な」
春香「えー。現役のアイドルに勝てるわけないよ」
冬馬「まあ、いいからいいから。な?」
春香(冬馬くんはそう言って、素早く二人分のお金をゲーム機に投入した)
春香(私は慌ててお金を払おうとしたが、冬馬くんに「いいから、いいから」と遮られてしまい……そうこうしているうちにゲームが始まり、私はまたも彼の好意に甘える形となってしまった)
春香(……そして、注目の対戦結果はというと――……)
冬馬「……まあ、そりゃこうなるか」
春香「…………」
春香(……見事なまでに、私の惨敗だった)
春香「だって私初めてなのに、冬馬くん、難易度最高に設定するんだもん……こんなのできるわけないよ」
冬馬「いや、まあお前なら……と思ったんだけどな」
春香「?」
冬馬「でもよく考えたら、元からそんなに得意な方でもなかったよな……」
春香「……?」
春香(私には、彼が何を言っているのかよく分からなかった)
冬馬「よし、じゃあゲーセンはこれくらいにして……次は、カラオケ行こうぜ」
春香「カラオケ?」
冬馬「ああ。いいだろ?」
春香「うん、いいよ。あ、私冬馬くんの歌聴きたい!」
冬馬「よし。じゃあ行くか」
春香「うん!」
春香(……憧れのアイドルと一緒にカラオケに行き、「観客は私一人だけ」という状況で……生歌を歌ってもらう)
春香(こんなの、一生分の運を使い切ったって、まず起こりえないくらいの幸運だ)
春香(私は、自分自身にそう言い聞かせるように、頭の中でそんな言葉を繰り返し唱えていた)
春香(これでいい、これでいいんだ、と)
春香(これ以上の幸せは、ありえないんだと)
春香(そう、心の底から信じることができていれば――……)
春香(私は本当に、『幸せ』だったのかもしれない)
春香(……私は、夢にまで見ていたはずの、憧れのアイドルの生の歌声を聴きながら――……何故か、そんなことばかりを考えていた)
春香「…………」
春香(……見事なまでに、私の惨敗だった)
春香「だって私初めてなのに、冬馬くん、難易度最高に設定するんだもん……こんなのできるわけないよ」
冬馬「いや、まあお前なら……と思ったんだけどな」
春香「?」
冬馬「でもよく考えたら、元からそんなに得意な方でもなかったよな……」
春香「……?」
春香(私には、彼が何を言っているのかよく分からなかった)
冬馬「よし、じゃあゲーセンはこれくらいにして……次は、カラオケ行こうぜ」
春香「カラオケ?」
冬馬「ああ。いいだろ?」
春香「うん、いいよ。あ、私冬馬くんの歌聴きたい!」
冬馬「よし。じゃあ行くか」
春香「うん!」
春香(……憧れのアイドルと一緒にカラオケに行き、「観客は私一人だけ」という状況で……生歌を歌ってもらう)
春香(こんなの、一生分の運を使い切ったって、まず起こりえないくらいの幸運だ)
春香(私は、自分自身にそう言い聞かせるように、頭の中でそんな言葉を繰り返し唱えていた)
春香(これでいい、これでいいんだ、と)
春香(これ以上の幸せは、ありえないんだと)
春香(そう、心の底から信じることができていれば――……)
春香(私は本当に、『幸せ』だったのかもしれない)
春香(……私は、夢にまで見ていたはずの、憧れのアイドルの生の歌声を聴きながら――……何故か、そんなことばかりを考えていた)
またいいとこで切るのか……
この冬馬なら765の誰かと付き合ってる設定でも
違和感ないきがする
この冬馬なら765の誰かと付き合ってる設定でも
違和感ないきがする
冬馬「……恋を はじめようよ♪」
チャチャチャチャ チャッチャッチャッ チャッ
春香「…………」
冬馬「……天海?」
春香「! あ、えっと……す、すごいねやっぱり! 思わず見とれちゃってたよ! あはは……」
冬馬「…………」
春香「はは……」
冬馬「……なあ、天海」
春香「な、何?」
冬馬「俺、お前に聞きたいことがあるって言ってたよな」
春香「あ、ああ……うん」
冬馬「そのことなんだけどよ」
春香「……うん。何?」
冬馬「お前……本当は、アイドルになりたいんじゃねぇか?」
春香「…………え?」
チャチャチャチャ チャッチャッチャッ チャッ
春香「…………」
冬馬「……天海?」
春香「! あ、えっと……す、すごいねやっぱり! 思わず見とれちゃってたよ! あはは……」
冬馬「…………」
春香「はは……」
冬馬「……なあ、天海」
春香「な、何?」
冬馬「俺、お前に聞きたいことがあるって言ってたよな」
春香「あ、ああ……うん」
冬馬「そのことなんだけどよ」
春香「……うん。何?」
冬馬「お前……本当は、アイドルになりたいんじゃねぇか?」
春香「…………え?」
春香「私が……アイドル?」
冬馬「ああ」
春香「……ははは。やだなぁ、冬馬くん。何言ってるの?」
冬馬「…………」
春香「私みたいな一般人が――」
冬馬「ほら、それ」
春香「え?」
冬馬「お前、何かにつけて『私みたいな一般人が……』って言うだろ」
春香「それはだって、実際に……」
冬馬「本心からそう思ってるやつは、そう何回も口に出して言ったりしねぇよ」
春香「…………」
冬馬「つまり、それだけ何回も口にするってことは……自分で自分に言い聞かせたいからじゃねぇのか」
春香「…………」
冬馬「『自分は一般人なんだ』『アイドルなんて遠い世界の存在なんだ』……ってよ」
春香「…………」
冬馬「ああ」
春香「……ははは。やだなぁ、冬馬くん。何言ってるの?」
冬馬「…………」
春香「私みたいな一般人が――」
冬馬「ほら、それ」
春香「え?」
冬馬「お前、何かにつけて『私みたいな一般人が……』って言うだろ」
春香「それはだって、実際に……」
冬馬「本心からそう思ってるやつは、そう何回も口に出して言ったりしねぇよ」
春香「…………」
冬馬「つまり、それだけ何回も口にするってことは……自分で自分に言い聞かせたいからじゃねぇのか」
春香「…………」
冬馬「『自分は一般人なんだ』『アイドルなんて遠い世界の存在なんだ』……ってよ」
春香「…………」
春香「……ごめん、冬馬くんが何言ってるのか、ちょっとよく分からないよ」
冬馬「…………」
春香「そもそも私はアイドルじゃないし、別にアイドルになりたいわけでもないし……」
冬馬「……そうか。変なこと聞いて悪かったな」
春香「ううん。いいよ、別に」
冬馬「……まあでもせっかくだし、一曲くらい歌ってみろよ」ピッピッ
春香「え? これって……」
冬馬「聴いたことくらいあるだろ? 去年の紅白でも歌ってた曲だ」
春香「……そりゃ、知ってる、けど……」
冬馬「じゃあ歌ってみてくれよ。案外、様になるかもしれねぇぜ?」
春香「…………」
春香(私には、やっぱり彼の考えが分からなかった)
春香(空気を読まずに流れ出したイントロが、なぜだか無性に私の心をかき乱した)
春香(彼の言うように、知らない曲ではない。いや、むしろとてもよく知っているような……)
春香「……っ」
春香(鼓動が早まる。曲名が画面上に表示された)
天海春香 『乙女よ大志を抱け!!』
春香「――――」
冬馬「…………」
春香「そもそも私はアイドルじゃないし、別にアイドルになりたいわけでもないし……」
冬馬「……そうか。変なこと聞いて悪かったな」
春香「ううん。いいよ、別に」
冬馬「……まあでもせっかくだし、一曲くらい歌ってみろよ」ピッピッ
春香「え? これって……」
冬馬「聴いたことくらいあるだろ? 去年の紅白でも歌ってた曲だ」
春香「……そりゃ、知ってる、けど……」
冬馬「じゃあ歌ってみてくれよ。案外、様になるかもしれねぇぜ?」
春香「…………」
春香(私には、やっぱり彼の考えが分からなかった)
春香(空気を読まずに流れ出したイントロが、なぜだか無性に私の心をかき乱した)
春香(彼の言うように、知らない曲ではない。いや、むしろとてもよく知っているような……)
春香「……っ」
春香(鼓動が早まる。曲名が画面上に表示された)
天海春香 『乙女よ大志を抱け!!』
春香「――――」
春香(アップテンポの曲調が、やけに耳に障る)
春香(何故だろう。身体が、心が―――この歌を、拒絶している)
春香「…………」
春香(歌い出しのメロディーに入っても、私は一声も発することなく、歌詞の流れる画面を見つめ続けていた)
春香「…………」
冬馬「…………」
春香(部屋に鳴り響くバックミュージックがサビに差し掛かったあたりで、私はようやく口を開いた)
春香「…………ごめん、止めて」
冬馬「…………」ピッ
春香(音楽は止み、部屋には静寂が訪れた)
春香「…………」
冬馬「…………」
春香「……ごめん、冬馬くん。私……帰るね」
冬馬「…………」
春香(私はテーブルの上に千円札を置き、逃げるように部屋を出た)
春香(意外にも、彼は私を引き留めようとはしなかった)
春香(……まるで、こうなることが分かっていたかのように)
春香(何故だろう。身体が、心が―――この歌を、拒絶している)
春香「…………」
春香(歌い出しのメロディーに入っても、私は一声も発することなく、歌詞の流れる画面を見つめ続けていた)
春香「…………」
冬馬「…………」
春香(部屋に鳴り響くバックミュージックがサビに差し掛かったあたりで、私はようやく口を開いた)
春香「…………ごめん、止めて」
冬馬「…………」ピッ
春香(音楽は止み、部屋には静寂が訪れた)
春香「…………」
冬馬「…………」
春香「……ごめん、冬馬くん。私……帰るね」
冬馬「…………」
春香(私はテーブルの上に千円札を置き、逃げるように部屋を出た)
春香(意外にも、彼は私を引き留めようとはしなかった)
春香(……まるで、こうなることが分かっていたかのように)
春香(動悸が激しい。胸が苦しい)
春香(カラオケボックスを出てからずっと、私は自身の異変を感じていた)
春香(より正確に言うと、あの曲のメロディーを聴いてからだ)
春香(アイドル天海春香の代表曲――『乙女よ大志を抱け!!』 )
春香「……なんで……」
春香(なんでこんなに――……)
春香「……心が、痛いんだろう」
春香(気が付けば、私は見知らぬ路線の電車に乗っていた)
春香(おかしいと思いながらも、何故か途中で降りようという気にはなれなかった)
春香(私は、まるでそうすることが当たり前であるかのように、知らないはずの目的地を目指して電車を乗り継いだ)
春香「…………」
春香(そうして降り立った駅は――……忘れもしない)
春香(私が初めて響ちゃんと会った日に、彼女に送ってもらった駅だ)
春香「――――」
春香(駅の改札を出た私は、何かに吸い寄せられるように歩を進め始めた)
春香(カラオケボックスを出てからずっと、私は自身の異変を感じていた)
春香(より正確に言うと、あの曲のメロディーを聴いてからだ)
春香(アイドル天海春香の代表曲――『乙女よ大志を抱け!!』 )
春香「……なんで……」
春香(なんでこんなに――……)
春香「……心が、痛いんだろう」
春香(気が付けば、私は見知らぬ路線の電車に乗っていた)
春香(おかしいと思いながらも、何故か途中で降りようという気にはなれなかった)
春香(私は、まるでそうすることが当たり前であるかのように、知らないはずの目的地を目指して電車を乗り継いだ)
春香「…………」
春香(そうして降り立った駅は――……忘れもしない)
春香(私が初めて響ちゃんと会った日に、彼女に送ってもらった駅だ)
春香「――――」
春香(駅の改札を出た私は、何かに吸い寄せられるように歩を進め始めた)
春香「…………」
春香(人混みの中を、おぼつかない足取りで歩く)
春香(私は、どこへ向かおうとしているんだろう)
春香(……いや、本当は多分……分かっている)
春香(ただそれを、必死に否定しようとしている私がいて)
春香(そんなはずないよ、そうじゃないんだよ、って)
春香(そんな簡単な言葉で、自分を騙せていたなら)
春香(私はきっと、こんな所まで来ることはなかったんだろう)
春香「…………」
春香(見上げた先の小さなビル。その大きな窓に貼られた白いテープが、三つの数字を形作っていた)
春香「……『765』……」
春香(どうして私はここに来たんだろう)
春香(どうして私はこんな所で立ち尽くしているんだろう)
春香(こんな場所にあるこんな建物を、今の私は知るはずもないのに――……)
春香「…………」
春香(人混みの中を、おぼつかない足取りで歩く)
春香(私は、どこへ向かおうとしているんだろう)
春香(……いや、本当は多分……分かっている)
春香(ただそれを、必死に否定しようとしている私がいて)
春香(そんなはずないよ、そうじゃないんだよ、って)
春香(そんな簡単な言葉で、自分を騙せていたなら)
春香(私はきっと、こんな所まで来ることはなかったんだろう)
春香「…………」
春香(見上げた先の小さなビル。その大きな窓に貼られた白いテープが、三つの数字を形作っていた)
春香「……『765』……」
春香(どうして私はここに来たんだろう)
春香(どうして私はこんな所で立ち尽くしているんだろう)
春香(こんな場所にあるこんな建物を、今の私は知るはずもないのに――……)
春香「…………」
「――――」
「――――」
春香「…………?」
春香(ふいに背後から、何かが私の耳に届いた)
春香(行き交う人々の喧騒の中、それは私の意識の奥の方に、すぅっと入り込んできた)
「すみません、買い出し手伝ってもらっちゃって」
「いえいえ、ちょうど手が空いてましたから」
春香「…………」
春香(何の変哲も無いはずの、誰かと誰かの会話)
春香(でもその瞬間、私は確かに直感した)
「……あら? あれって……」
「……まさか……」
春香(ここで後ろを振り返らなければ、多分まだ私は『私』でいられる、って)
春香(だからここで振り返ることなく、さっとこの場を立ち去れば――……)
春香(きっと私は、まだ『私』のままでいられる)
春香(……そこまで分かっていたのに、私は)
春香「――――」バッ
春香(振り返って……しまった)
「…………っ」
「…………!」
春香(私の視界に、驚いた顔をした男女が映る)
春香(私はそのうちの一人、男性の方を見て)
春香(意識するより早く、その呼び名を口にしていた)
春香「……プロデューサー……さん……?」
「――――」
春香「…………?」
春香(ふいに背後から、何かが私の耳に届いた)
春香(行き交う人々の喧騒の中、それは私の意識の奥の方に、すぅっと入り込んできた)
「すみません、買い出し手伝ってもらっちゃって」
「いえいえ、ちょうど手が空いてましたから」
春香「…………」
春香(何の変哲も無いはずの、誰かと誰かの会話)
春香(でもその瞬間、私は確かに直感した)
「……あら? あれって……」
「……まさか……」
春香(ここで後ろを振り返らなければ、多分まだ私は『私』でいられる、って)
春香(だからここで振り返ることなく、さっとこの場を立ち去れば――……)
春香(きっと私は、まだ『私』のままでいられる)
春香(……そこまで分かっていたのに、私は)
春香「――――」バッ
春香(振り返って……しまった)
「…………っ」
「…………!」
春香(私の視界に、驚いた顔をした男女が映る)
春香(私はそのうちの一人、男性の方を見て)
春香(意識するより早く、その呼び名を口にしていた)
春香「……プロデューサー……さん……?」
春香(私が自分で発した、その言葉の意味を理解するより早く)
春香(眼前の『彼』は、私の目を見て、ゆっくりと口を開いた)
「……はる……か……?」
春香「――――」
春香(その瞬間、頭の中に、)
春香「…………ぃ」
春香(とめどなく、色々な、ものが、)
春香「…………い……」
春香(溢れて――……)
春香「いやぁあああああああああああああああああ!!!!」
春香(……そこで、私の視界は暗転した)
春香(薄れゆく意識の中、頻りに私の名前を呼ぶ声が、やけに耳に響いた)
春香(知らないはずなのにひどく聞き慣れた、男の人の声と、女の人の声)
春香(……こうして私は、そのすべてを思い出すことになる)
春香(自分の心の奥の奥へと封じ込めていた――その、すべてを)
春香(眼前の『彼』は、私の目を見て、ゆっくりと口を開いた)
「……はる……か……?」
春香「――――」
春香(その瞬間、頭の中に、)
春香「…………ぃ」
春香(とめどなく、色々な、ものが、)
春香「…………い……」
春香(溢れて――……)
春香「いやぁあああああああああああああああああ!!!!」
春香(……そこで、私の視界は暗転した)
春香(薄れゆく意識の中、頻りに私の名前を呼ぶ声が、やけに耳に響いた)
春香(知らないはずなのにひどく聞き慣れた、男の人の声と、女の人の声)
春香(……こうして私は、そのすべてを思い出すことになる)
春香(自分の心の奥の奥へと封じ込めていた――その、すべてを)
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